先月、60億キロ、7年間の長旅を終え、宇宙航空研究開発機構の探査機「はやぶさ」が帰還した。はやぶさ帰還のニュースは、日本中に感動を与え、世界に日本の技術力の高さをアピールした。
はやぶさには多くのファンが誕生し、各地の科学館を中心に上映された、はやぶさの軌跡を記した短編映画には、5万人を超える観客が動員されたとのことである。
山梨県立科学館でも、同プログラムが期間を延長して上映されていたので、私も子供を連れて鑑賞した。さまざまなトラブルを乗り越えて壮大なミッションを成し遂げていくはやぶさの姿に感動するとともに、その映像技術のすばらしさにも驚かされた。
子供も目を輝かせ夢中で鑑賞し、上映後には「イオンエンジンて何? どうしてはやぶさは燃えちゃったの?」と好奇心に満ちた表情で、多くの質問を投げかけられた。
同館は昨年度末にリニューアルオープンし、全国初の次世代最新鋭プラネタリウム「プレアデスシステム」を導入、私たちすべての命が宇宙に始まっていることを伝える独自プログラム「137億年目の誕生日」も上映している。他にも温室効果ガスがなくなった場合の地球の温度、マイナス19度を体験できる「ひえひえワールド」や、巨大なシャボン玉の内側からの風景を観察できる「スーパーシャボンカーテン」など、子供も大人も科学を楽しく学べる試みが数多く用意されている。
今、日本では子供の理科離れが叫ばれているが、同館を訪れた我が子の反応からは、理科離れは一切感じられなかった。むしろ理科離れをしているのは、数学・物理・科学といった理系科目を難しい学問と決めつけ、思考を停止してしまう大人にあるのではないだろうか。
政府は6月に閣議決定した新成長戦略の中で、科学・技術力を増強し、未来を担う若者が夢を抱いて科学の道を選べるような教育環境の整備を進めると述べている。
子供たちの不思議に思う心、科学に対する熱意を育てる活動を進展させるため、まずは大人自身が理科離れを克服しなければならない。
子供たちが夏休みの間に科学館を訪れ、子供と一緒に科学と正面から向き合ってみてはいかがだろうか。<山梨総合研究所主任研究員・矢野貴士>
毎日新聞 2010年7月23日 地方版