「大相撲名古屋場所13日目」(23日、愛知県体育館)
横綱白鵬が大関琴欧洲を上手投げで退け、初日から13連勝を決めた。初場所14日目から続く連勝を「45」まで伸ばし、優勝32回の大鵬(元横綱)が持つ歴代3位(昭和以降)の連勝記録に並んだ。それでも「こういう場所で並んだのは残念」と笑顔はなし。ほぼ手中に収めた15回目の優勝を前に、改めて日本相撲協会が決定した「天皇賜杯授与自粛」に苦言を呈した。
◇ ◇
白鵬が珍しく、緊張感をにじませた。立ち合い、長いにらみ合いの末、手を付かないまま立ち上がった。大きく息を吐いて仕切り直し、2度目で立つ。素早く右を差し込み、左上手を奪った。琴欧洲の右下手投げを腰を落としてこらえ、最後は土俵中央で上手投げ。鮮やかに巨人大関を裏返し、大鵬に並ぶ45連勝を達成した。
家族ぐるみで親交のある大横綱に肩を並べた。しかし「こういう場所で並んだのが残念。少しはうれしいけど」と表情が晴れない。「笑顔がないね」と自ら切り出し、「賜杯だけは何とかならないのかな」とつぶやいた。優勝をほぼ手中に収め、改めて天皇賜杯への思いを口にした。
日本相撲協会は野球賭博問題を受け、史上初めて優勝力士への外部表彰をすべて辞退し、天皇賜杯授与の自粛も決めた。この決定に対して白鵬は場所前「自分たちの手で国技をつぶす気だなと思う」と発言。『協会批判』とも取られかねない言葉が物議を醸した。
それでもやはり、黙ってはいられなかった。「大相撲どうこうではなく、やっぱり国技なんだからね」。再び『国技』を強調し、天皇賜杯授与の復活を訴えた。「一横綱としてではなく全力士を代表しての発言か」と問われると、「みんながそう思っている」と語気を強めた。
土俵下で豊真将の勝利を見届け、先場所に続く13日目優勝はならなかった。「何回もそういう体験をしてきた。そんなことは考えていない」。14日目の日馬富士戦に勝てば、歴代単独6位となる15回目の優勝が決まる。「やっと(大鵬)親方に並んだので、気楽に行きたい」。節目の連勝記録を乗り越え、目指すは15回目の優勝、そして15日制では史上初となる3場所連続全勝優勝だ。
記録ずくめの優勝を飾っても、天皇賜杯は授与されない。協会に横綱の思いは届くだろうか。