2010年5月28日 22時22分 更新:5月29日 2時30分
政府は28日夜の臨時閣議で、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題に関する政府の対処方針を閣議決定した。政府方針は普天間移設先として、キャンプ・シュワブの「辺野古崎地区及び隣接する水域」(沖縄県名護市)と明記。社民党党首の福島瑞穂消費者・少子化担当相は閣議での署名に応じず、首相は福島氏を罷免した。後任は平野博文官房長官が兼務する。社民党は連立政権からの離脱を検討しており、政権発足から8カ月、普天間問題で迷走を重ねた鳩山政権は最大の正念場を迎えた。【西田進一郎、横田愛】
「署名しません」
28日午後6時すぎ、首相官邸。与党3党の党首級でつくる基本政策閣僚委員会の席上、福島氏は「辺野古が明記されている案には賛成できない」と述べ、閣議での署名を拒否する方針を伝えた。鳩山由紀夫首相は個別会談に誘い「辞任でどうか」と自発的な辞任を求めたが、福島氏は「私は間違ったことはしていない」と拒否した。
福島氏が渡された閣議決定の文案は、大きく変わっていた。28日午前、首相官邸側が示した文案に「辺野古」の地名はなかった。しかし、福島氏の姿勢が固いとわかると、地名を復活し対米合意を優先。平野博文官房長官が模索した、閣僚の署名のいらない「首相発言」による決着も、首相は「安全保障をあいまいにすべきではない」として退けた。
基本政策委は更迭に向けたセレモニーにすぎなかった。福島氏はその後の臨時閣議に姿すら見せず、記者会見で「私を罷免することは沖縄を切り捨て、国民を裏切ることだ」と批判した。首相はこれまで、5月末決着の条件として、米国、与党、地元自治体の合意が必要との認識を繰り返してきたが、福島氏の罷免で、県内移設に反対する沖縄県に加え、与党合意もない不完全なものとなった。
首相は28日夜の記者会見で、5月末決着が事実上失敗した原因として「政治家たちが肩ひじを張りすぎて『全部自分たちが考えるんだ』という発想の中で、優秀な官僚の知識、知恵を提供(してもらうことを)せずに行動してきたきらいがあった」と指摘。政権が掲げてきた政治主導の未熟さを認めざるを得ず、会見で7回も「おわび」の言葉を重ねた。
そもそも政権発足当初から、外交・安保の認識が異なる社民党との連立は対立を内包していた。首相は記者会見で「根本的な部分において考え方の違いがあった」と指摘。あいまいな形で与党内調整を先送りしてきた政権の脆弱(ぜいじゃく)さは隠しようもない。
福島氏が閣外に去り、政権の基盤が揺らぐのは確実だ。社民党は28日夜、「連立のあり方について重大な決定をせざるを得ない」とする「抗議声明」を発表した。同党は30日に常任幹事会と全国幹事長会議を開き、連立離脱について対応を協議するが、「閣外協力」はしない方針で、党内で連立離脱論が勢いを増している。
一方、民主党にも「社民党切り」とも言える首相の対応に不満が募っている。閣議での署名拒否は党の機関決定であり、社民党は「福島を切ることは社民党を切ることだ」(党幹部)と反発しており、次期参院選への選挙協力に影響するのは必至。民主党の小沢一郎幹事長は28日、福島氏に電話し、こんなメッセージを送った。「あんたたちが言っていることが正しいよ」