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【連載企画】口蹄疫波紋・食肉販売業者

(2010年7月24日付)

 畜産王国を揺るがした口蹄疫。宮崎牛を提供する焼き肉店の客は減り、精肉店の売り上げも落ちた。観光客が減ったことでホテル・飲食店への卸も連鎖的に落ち込むなど、県内の食肉販売業者は大きな打撃を受けた。「復興」への道のりは厳しいが、終息が近づいたことでようやく光が見え始めた。

 1例目が発生した4月20日以降、「ミヤチク」都農工場など食肉処理場が操業を停止。供給が滞り、県内の一部焼き肉店に影響を与えた。特に品質にこだわる店はダメージが大きかった。精肉は鮮度が落ちるのが早く、ホルモンなど内臓系は約5日しかもたない。そのため、宮崎市江平西の幸加園では一時、内臓系のメニューが消えた。客足も減り、4〜6月の売り上げは昨年同期比3割の減少となった。

 同市内の別の焼き肉店も、発生後の売り上げは前年の半分。半数を占めていた県外客の客足は遠のき、同店社長は「8年前のBSEの借金が残っており、これ以上借りる余裕はない。このままでは店はもたない」と悲痛な叫びを上げる。

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 精肉店の売り上げも低迷が続く。宮崎市南花ケ島の新垣ミートは、一番の収入源だったホテルや飲食店への卸が減少。観光客の落ち込みが響き、4〜6月の収益は昨年より2割落ちた。8月はバーベキューなどで精肉の需要が増える時期だが、新垣幸洋食肉事業部長は「宮崎の経済全体が止まっている。(非常事態宣言が解除されるまで)売り上げが増える要素はない」と不安は尽きない。

 川南町の自家製ハム・ソーセージ販売店「ゲシュマック」は5月中旬、直営農場で豚の感染が発覚。1週間の休業に追い込まれた。仕入れ先を県外に変えて再開したが、「(6月初旬までは)町内に車がほとんど通らず、お客さんが来る状況ではなかった」。再開後の売り上げは前年の3割にまで落ち込んだ。

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 非常事態宣言の全面解除が迫り、復興を願う声も強まる。幸加園の長友幸一郎社長は「宮崎は元気だと全国に見てもらえるイベントが必要」と県民一体となった動きを望む。新垣ミートの新垣食肉事業部長は「終息後の活動が何より大事。県やメディアが県内外に安全、安心をアピールしてほしい」と期待を寄せる。

 6月後半から客が戻りつつあるというゲシュマック。「復興には町を挙げてのイベントが欠かせない。商品を提供するなどして盛り上げたい」と町に活気が戻る日を待ち望んでいる。

【写真】口蹄疫の影響を受け、売り上げが冷え込む食肉販売業者。非常事態宣言解除が近づき、徐々に客足が戻る店も見られる=23日午前、宮崎市南花ケ島町・新垣ミート