2009年07月08日 (水)おはようコラム 「新疆ウイグル自治区 暴動の衝撃」
(阿部キャスター)
おはようコラムです。今月5日ウイグル族の大規模な暴動が起きた中国・新疆ウイグル自治区の中心都市ウルムチでは、きのう、今度は漢民族の住民が刃物や金属パイプを持って威嚇的なデモを行い、夜間外出禁止令がでるなど緊迫した状態が続いています。加藤解説委員に聞きます。
Q1:加藤さん、現在の状況をどう見ていますか。
A1:はい、民族対立が鮮明化するという深刻な事態になったと思います。人口2000万人あまりの新疆ウイグル自治区には、ウイグル族と漢民族が、それぞれ人口の半数近くを占め、いわば二大勢力です。
しかし、今回のように、ウイグル族による数千人規模の暴動が起きたのは初めてといえます。自治区では、▼これまでも、後からきた漢民族の政治支配に対するウイグル族の反発や、▼豊かな漢民族と、貧しいウイグル族との間の経済格差に対する不満がくすぶっていました。実際、独立をめざす過激派によるテロ事件はたびたび起きていましたが、今回の暴動には、本来は独立までは目指していなかったウイグル族の一般市民まで加わり、漢民族に対する憎悪、あるいは復讐の感情が一気に噴出してしまったのです。
Q2:そのような事態になった背景には何があるのでしょうか。
A1:ウイグル族の立場からいえば、その根幹には地元政府が進めてきた、漢民族とのいわゆる「同化政策」があるといえます。
自治区では近年、ウイグル語を話すウイグル族に対して、中国語教育を強化してきました。その理由として、中国語を覚えれば、経済が豊かな沿海部に出稼ぎにゆけると奨励してきたのです。ところが実際に、出稼ぎに出たウイグル人を待ち構えていたのは、冷たい仕打ちでした。先月末、広東省のおもちゃ工場で、漢民族の労働者が、ウイグル族の労働者に襲いかかり、多数の死傷者が出ました。その映像は、インターネットを通じて、ウイグル族の人たちの間にも広まり、それまでは、現在体制の下でも何とか暮らしてゆこうとしていた人たちの心に、火をつけてしまったのです。
Q3:現地では、大規模な暴動の後も、ウイグル族の人たちと、漢民族の人たちとの対立が表面化していますね。
A3:地元当局は、暴動に加わった1400人あまりを逮捕する一方、民族間の対立がこれ以上激化しないよう、国民の団結を呼びかけています。
しかし、自治区各地では、ウルムチの暴動に共鳴するウイグル族の動きがくすぶっています。
一方、漢民族側も刃物などを持って威嚇的なデモを行うなど、いったん火が付いた感情対立は、そう簡単におさまるとも思えません。当面は、建国60周年の記念日を迎えることし10月にむけて、厳重な警戒の下で緊迫した状況が続くのではないかと思います。
投稿者:加藤 青延 | 投稿時間:08:27