【瀋陽=西村大輔】中朝関係筋によると、北朝鮮北部の会寧などで、金正日(キム・ジョンイル)総書記を批判するビラが6月下旬にばらまかれた。ビラには「将軍様(金総書記の尊称)は21世紀の輝かしい太陽ではなく、我らにもたらしたのは暗闇だった」などと書かれていたという。治安当局は事態を重視し、ビラをまいた人物の特定を急ぐとともに、出回ったビラを急ぎ回収しているという。関係筋によると、金総書記個人への批判は異例で、同国内で金総書記への不満がかなり強まっているとみられている。
関係筋によると、会寧で6月24日から25日にかけて、金総書記を批判する数十枚のビラが押収された。ビラには「金正日の時代を終わらせよう。我々は飯がほしい」などとも書かれているという。
散布の状況や内容などから、韓国軍や韓国の市民団体などが風船などにつけて散布したビラとは異なり、北朝鮮国内の組織によるとみられており、治安当局は「国家の安定を脅かす」として徹底的な捜査を始めた。治安当局は、押収されたビラを焼却する一方、まだ持っている住民がいないか、治安部隊が総動員で調査しているという。容疑者が捕らえられれば死刑、その家族も重刑を科せられるとみられている。
一方、韓国の北朝鮮専門インターネット新聞「デイリーNK」によると、北朝鮮北部の清津でも6月下旬、故金日成(キム・イルソン)国家主席の銅像の周辺などで、体制批判の内容が書かれた5千ウォン紙幣が大量に発見されたという。紙幣には「亡命救国行動隊」という団体名が書かれていたという。同市内でも治安当局が大々的な回収作業と、配布した人物の捜査を始めた。また、同市外へ移動する者に対する検査も強化しているという。