ソニー韓国人役員が退職した理由(下)

 安氏は「韓国企業の強みは誰もが知っているように、意思決定の速さだ。オーナー経営体制が時代の状況とマッチした」と指摘した。

 安氏はサムスンの秘書チーム長を務めた際、主要系列企業の社長が李健煕(イ・ゴンヒ)会長(当時)に報告するのを脇で聴いていた。報告が終わるや否や、李会長から「秘書チーム長はどう思うか」と尋ねられたという。安氏はとっさに、「社長のおっしゃる通りです」と答えた。すると、李会長は「社長と考えが同じならば、秘書チーム長は必要ない」と言い切ったという。

 安氏はそれをきっかけとして、サムスンを学び始めた。安氏は「だからといって、反論ばかりしていても駄目だ。論理で圧倒されているのに、言葉尻ばかりとらえていると、『君は負けたことも分からないのか』と非難される」という。

 安氏は「日本には第2次大戦後、オーナー経営体制を維持する企業がなく、サムスン式の討論や意思決定は不可能だ」と指摘した。

 韓国企業に今求められるのは、共存共栄を追求する新たなリーダーシップだと安氏は主張した。安氏は「韓国は経済的に自ら孤立を招いている。最近、日本と台湾の半導体業界が共同で研究や生産を行っている」と指摘した。韓国の半導体メーカーに対抗するのが狙いだ。

 安氏は「今まで韓国企業は一方的な勝利を追求し、あちこちに敵を作った」と分析した。一方、共存共栄のモデルは米アップルだ。安氏は「アップルはiPhoneを設計し、生産は台湾企業が中国で行っている。数多くの開発者がiPhone用のプログラムを制作し、開発者が売り上げの70%を持っていく」と述べた。

 安氏は「韓国企業が日本企業より本当に強くなったのか。数年間でウォン相場は1ドル=900ウォンから1200ウォンへと急落した。反対に円は30%も上昇した。今海外で商品がよく売れることに満足しては困る。本格的な競争が始まるのはこれからだ」と警鐘を鳴らした。

白剛寧(ペク・カンニョン)記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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