●移動制限解除は見切り発車だ!
口蹄疫問題で殺処分された民間種牛の一件で、東国原知事の“暴走発言”がエスカレートしている。10日以降、ブログで山田農相への愚痴を書き連ねてきたが、今度は矛先をメディアに向けたらしい。17日のブログでは「一貫性を欠いた宮崎県の対応」と知事を批判した読売の社説にかみつき、「どうしてこういうタイミングでまるでイチャモンのように記事化されるのか」とネチネチ。
かと思うと、19日には「(殺処分で)国家防疫に強いイメージを作ることが『政治とカネ』『マニフェスト実行不可能』で失墜した信頼を勝ち取る手段だった」と民主党政権をヤリ玉にあげた。
このハレンチ知事には県内外の畜産関係者が呆れかえっている。口蹄疫に詳しいジャーナリストの横田一氏が言う。
「大迷惑を被った近隣県は怒り心頭ですよ。感染地域に隣接する鹿児島県霧島市では、風評被害で旅館やホテルのキャンセルが相次ぎ、大打撃を受けた。県畜産課の担当者も東国原知事の対応を非難していて、『最初の段階の最も重要な時期に早期淘汰を行えば、爆発的な感染拡大を防止できたと悔やまれる』『動物愛護の観点から慎重論も出されたと聞いているが、県民の財産を守るために防疫を最優先すべき』とコメントしています」
さらに、「民間種牛をめぐる騒ぎは目くらましだ」といった指摘も出ている。鹿児島大教授の岡本嘉六氏(獣医衛生学)がこう言う。
「民間種牛の殺処分騒動が頂点に達した16日、宮崎県内のワクチン接種エリアの移動制限が解除されました。その間、マスコミ報道は『知事VS.農相』一色で、移動制限解除をめぐる議論が封じられた。今回の騒動は(移動制限解除をスムーズに行うための)知事の“戦術”とも考えられる。ただ、完全に感染牛がいなくなったとは言えない状況で制限解除しても、苦労するのは県内の生産者です。県外の畜産関係者は宮崎の牛が“グレー”であることは分かっているから、敬遠されてしまう可能性がありますよ」
東国原知事は今ごろになって、「安全宣言というと、すべてが終わったみたいになる」「全頭の目視検査が必要だ」なんて“逃げ道”をつくり始めた。口八丁手八丁のパフォーマンスで生産者の支持を取り付けたつもりでいるかもしれないが、痛い目を見るのは県民なのだ。
(日刊ゲンダイ2010年7月21日掲載)