金賢姫元死刑囚、後味悪い3泊4日の日本訪問

 大韓航空機爆破事件の実行犯で元北朝鮮工作員の金賢姫(キム・ヒョンヒ)元死刑囚による3泊4日の日本訪問は、後味の悪さを残して終了した。金元死刑囚を招いた日本政府は「行き過ぎた歓迎ぶりだった」として非難を浴び、拉致被害者関連の一部団体は、「まともな情報が得られなかった」として不満をぶちまけた。金元死刑囚は刺すような視線を尻目に、日本政府が準備した小型ジェット機で帰国した。

 到着初日の20日と翌21日、日本のマスコミは拉致問題の唯一の生き証人がやって来たとして、ヘリコプターまで動員して取材競争を繰り広げた。日本政府がチャーター機を手配した点、宿泊先が鳩山由紀夫前首相の別荘だった点などについても、当初は特に問題視されなかった。

 しかし、金元死刑囚が20日から21日にかけ、拉致被害者の象徴とされる横田めぐみさんの両親や田口八重子さん(別名リ・ウネ)の家族と会った際、特に新たな情報が示されなかったことからムードが変わり始めた。

 火に油を注いだのは22日の「ヘリ観光」だった。日本政府は金元死刑囚の宿泊先を鳩山前首相の別荘から東京都内のホテルオークラに変えた。この過程で、日本政府は交通渋滞を理由にヘリコプターを使った。鳩山前首相の別荘がある長野県軽井沢町から東京都の調布飛行場まで車で移動し、調布から東京江東区までをヘリコプターで移動した。通常は10分で移動できる距離だが、ヘリは40分間にわたり飛行を続けた。日本のメディア報道によると、ヘリは東京近郊の観光地の横浜、箱根、江の島などの上空を回ったという。金元死刑囚は当初、富士山を見たいと言っていたという。日本のヘリコプター運行会社によると、今回利用されたヘリコプターを1時間利用するのにかかる費用は80万円程度だという。

 日本のメディアはまた、「行き過ぎたパフォーマンス」と批判し始めた。23日付朝日新聞朝刊は、「巨額の費用と人員を投じながら、拉致問題解決につながる新情報は出なかった」と指摘した。同紙はさらに、「日本政府から謝礼」との見出しを掲げ、金元死刑囚が謝礼を受け取ったかのように報じた。ほかのメディアも鳩山前首相の別荘にすしやフランス料理などが何度も配達されたと伝えた。

 特定失踪者問題調査会の荒木和博代表は22日、金元死刑囚が滞在しているホテルを訪ね、金元死刑囚に行方不明者の写真を確認してもらおうとしたが、政府関係者に拒否されたという。荒木代表は「政府が(元工作員に)失踪者の写真も見せず、一緒にのんびり食事をしているのは本当に許されるのか。憤りを感じる。ヘリコプターの遊覧飛行は話にならない」と批判した。特定失踪者とは、日本政府が北朝鮮に拉致されたと公式に認定した人以外で、その可能性がある人たちを指す。

 結局、中井洽拉致問題担当相は23日、「ちょっと上空を飛ぶ(ことが)、非難されるとは思わない。こんなことが非難されるなら、世界中だれも情報持った人は日本に来てくれない」と反論した。同相は日本政府が金元死刑囚に謝礼を支払ったとの朝日新聞の報道については、「一切ない」と否定した上で、ゲーム機、筆箱、ボールペンなどを記念に手渡しただけだと説明した。

 拉致被害者家族は、新たな情報こそ得られなかったものの、「絶対に生きていますよ」という金元死刑囚の言葉に、「勇気をいただいた気がする」(横田めぐみさんの母、横田早紀江さん)と語った。

東京=辛貞録(シン・ジョンロク)特派員

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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