「牛と一緒に花束を」 薦田さん防疫員に託す

(2010年7月18日付)

 高鍋町の農場経営者・薦田長久さん(72)が所有する種雄牛6頭の殺処分は17日、農場から車で10分ほど離れた共同埋却地で行われた。薦田さんはそれには立ち会わず、運ばれる種雄牛を農場で見送った。

 午前9時10分、殺処分を行う県の家畜防疫員ら約10人が薦田さんの農場を訪れた。出迎えた薦田さんは「牛と一緒に埋めてほしい」と、花束や酒などを託した。

 国の現地対策チーム本部長の篠原孝農水副大臣も足を運び、「力になれず申し訳ない」と硬い表情で謝罪。これに対し薦田さんは「国や県の畜産の振興に力をいれてください」と応じた。

 間もなく、運搬車や堆肥(たいひ)を処理する重機などが到着。使用する運搬車が小さかったため、種雄牛は2頭ずつ3回に分けて埋却地に運ばれた。最後の運搬車が農場を後にしたのは午後1時すぎ。薦田さんは取材に対し、「今後は種雄牛づくりのノウハウなどを若い農家に伝えていきたい」と静かに語った。

【写真】処分される種雄牛と一緒に埋めてほしいと、家畜防疫員らに花束を託す薦田さん(右)とその家族ら=17日午前、高鍋町