【連載企画】口蹄疫波紋・イベント業者

(2010年7月21日付)
 口蹄疫に伴う非常事態宣言を受け、県内では多くの祭りやイベントが中止になった。

 先が見通せず事前準備ができなかったため、宣言の一部解除後も開催の動きは鈍い。イベントで生計を立てる関係者にとって年間最大の書き入れ時となるはずが、過去に例を見ない苦しい夏を迎えている。

 都城盆地の7、8月は連日出店が並び、花火が上がる「六月灯」の季節。今年の開催予定は、都城市商業観光課が把握する限り9件で、例年の1割以下にとどまっている。同市の花火業者は「県内の催しの半分は駄目になった」。金魚すくい用の金魚を育てる同市の養魚場男性(63)は「年間4万匹つくっているが、今年は売れないと思い、急な注文用の1万匹だけつくった」とため息をつく。

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 県観光推進課によると、口蹄疫発生後、24市町村の226イベントが中止、16市町村の58イベントが延期となった(20日現在)。県内約50の露店商でつくる「県まつり振興会事業協同組合」事務担当の長友政子さん(60)は、「6、7月に25カ所で予定があったのに、地域の祭りも神社の祭りもなくなった。お盆までゼロ。収入もゼロ」。斎藤勝理事長(67)は「組合員の8割は専業。祭り頼みの商売なので手の打ちようがない。こんなことは初めて」とお手上げ状態だ。

 打撃を受ける業種は広い。宮崎市の印刷会社は、手掛けていた大小イベントのポスターやチケットがキャンセルされ、売り上げが2割減。「しばらくはこの状態が続くだろう」と長期戦を覚悟する。

 景品などで使う菓子や玩具を卸す同市の業者は「例年なら幼稚園や子ども会がひっきりなしに来る時期なのに」と嘆く。「今年の7月は週末が多く、売り上げが伸びると見込んで発注していた。それが狂って、売り上げは7割ダウン。それでも請求だけは来る」

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 延期されたイベントへの期待はおのずと高まる。宮崎市で8月7日に開く予定だった「みやざき納涼花火大会」は9月20日に延期となった。

 同市の「まつりえれこっちゃみやざき」は7月31日、8月1日の予定を9月11、12日に変更。事業推進委員長の渡辺憲弘さん(34)は「『苦しんでいる人がいるのに』という声もあるが、中心市街地がにぎわえば商業者も潤う。活性化の契機になれば」と意気込む。会場では募金箱設置や復興を願う企画も検討しているという。(随時掲載)

【写真】各種イベントが中止になる中、9月に延期することを決めたえれこっちゃみやざき。開催に向けポスターの日程変更など忙しい日々が続く