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オバマ政権の米軍沖縄普天間基地の移設計画が新たな障害に直面している。といっても、日本でではなく、ワシントンでだ。
日本の政治問題による遅延に加え、ホワイトハウスと米国防総省は現在、米連邦議会から、在沖縄海兵隊のグアム移転に必要な予算の承認を得るのに苦戦している。
今年の初め、オバマ政権は、グアムでの新たな施設の建設を含む移設費用として、4億5200万ドルの現行予算を要求していた。だが、米上院軍事委員会と上院歳出委員会は、要求額から3億2000万ドル削減した2011会計年度歳出法案を可決した。また、下院歳出委員会も今週、要求額から2億7300万ドルを削減し、同法案を可決した。
上院歳出委員会は削減の理由として、米軍普天間基地の移設をめぐる最近の日本国内での論争を挙げ、先日の参院選での民主党の大敗が「移設の将来をさらに曇らせる」と結論付けた。さらに同委員会は、沖縄県知事がキャンプ・シュワブでの新滑走路の建設に不可欠な、公有水面埋め立て許可をまだ出していないことを指摘した(日本政府は現在、11月の沖縄県知事選の結果を待って、その後に許可を求める意向だ)。
ワシントンでみられる在沖米軍基地の移設計画に反対する動きは、予算削減だけにとどまらない。民主党のベテラン下院議員、バーニー・フランク氏も米海軍を沖縄から完全撤退させるよう要求し、物議をかもしている。
だが、議会関係者は、予算の削減は米国が在沖米軍のグアム移転計画から手を引こうとしていることを示唆するものではないとし、日本にもそうとらえてほしくないと主張した。
「われわれは、日本政府は非常に見識があり、われわれの政治システムを理解していると考えている。日本政府は、われわれの意図が、ことを円滑に進めることにあることを理解してくれているはずだ」と、ある米議員は述べる。
複数の米議員によると、議会が予算削減を決断した背景には、日本の政治問題よりも、グアムでの新施設建設にかかわる問題が大きくかかわっている。
上院歳出委員会は、グアムの水や電力、道路、下水道を含むインフラの不備を懸念しているとし、さらに非軍事的な側面に対する準備が必要になるなど計画が不十分であると述べた。
下院歳出委員会の報告書には、グアム移転に関する問題について上院歳出委員会とほぼ同じ内容が繰り返されており、予算を削減した理由を、国防省が「現行計画に基づく軍備増強の持続可能性に関する多くの懸念に対処できていないため」としている。
さらに、グアムの施設増強にとって最も問題なのが、米環境保護局(EPA)が軍のグアムへの施設建設計画を「環境への配慮が不十分」だとしていることだ。そうした懸念により、建設開始前に終えなければならない軍による環境影響調査に遅れが生じている。
「許可が得られなければ、建設はできない。建設ができなければ、そのための予算は不要だ」と、別の議員は話す。
複数の議員によると、国務省はグアム移転費用として数百万ドルの予算を昨年割り当てられており、それらはまだ手つかずだという。日本政府は見識があると話した先の議員は、その予算を使用すれば、向こう数カ月の計画作業のほとんどは継続可能だと話す。
米国防総省のキャサリン・ケスラー報道官は次のように述べている。「国務省は、予算サイクルを通じて、説明や協議、要求された情報の提供などをとおして、すべての重要な問題について引き続き議会と連携していく。法案の最終化はまだ終わっていないため、これ以上コメントすることは適切ではない」
記者:Julian E. Barnes
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