ファンケルは7月14日、同社が販売するクレンジングオイルに関する特許を侵害されたとして、ディー・エイチ・シー(DHC)を東京地裁に提訴したと発表しました。
対象となるのは、DHCの製品「DHCマイルドタッチクレンジングオイル」と「ヒットコスメミニセット(ハローキティポーチ)」の2製品。
ファンケルは損害賠償金の支払いと、該当製品の製造・販売差し止めを求めています。
今回のコラムでは、ファンケルとDHCがこの分野でどのようなパワーバランスにあり、ファンケルの自信の裏づけは何であるかを特許をベースに分析してみます。
まず、注目すべきはDHCに比べてファンケルの特許量が圧倒的であることです。(*1)
図表1は、両社の特許出願件数の年推移を示しています。
一方のDHCは年間の出願件数が1桁台で推移し、2010年5月末までの総出願件数は35件と、両社の特許出願状況には大きな開きがあります。
特に、今回の訴訟の対象となった特許の分野「化粧料(*2)」で、ファンケルが166件、DHCが18件となっています。
このことから、ファンケルの方が特許網の構築に積極的であることがうかがえます。
ファンケルのニュースリリースによると、今回の訴訟の対象となる特許は「水が付着した状態でも高い除去効果を発揮するクレンジングオイル」に関するものですが(*3)、DHCの製品もまさに同じ効果を謳っています。
ファンケルはこれまでに同様の特許を6件出願しています。
このうち1件は拒絶を受けたものの、3件が登録、1件が審査請求中で、もう1件が出願中(審査請求前)となっています。
出願中の1件についてさらに詳しく見ると、今回の訴訟の対象となった特許との類似性が高く、分割出願したものと考えられます。
このことから、同社がこの技術を中心に、強固な特許網を築こうという意思が分かります。
一方でDHCの特許群には、クレンジングオイルに関連するような出願は現時点で見られません。
この分野の参入全企業を見てみると、さらにファンケルの強さが浮かびあがります。
図表2は、特許の注目度を評価する「パテントスコア(*4)」を用い、メイクアップ除去剤(*5)に関する技術開発を手がける企業について、競合状況を可視化したものです。
このマップでは、次の3つを可視化しています。
総合力(縦軸):注目度の高い特許を多く持っている企業ほど、マップの上側へ
個別力(横軸):1件でも注目度の高い特許を持っていれば、マップの右側へ
出願件数(円の大きさ):円の大きさは、出願件数の多さ
花王、資生堂、ロレアルが総合力、件数ともに非常に目立ちますが、ファンケルは出願件数が少ないわりには以下の二点で際立っています。
1.総合力で上位にランクインしている
2.個別力で1位
これにより、ファンケルがこの分野で件数は少ないにも関わらず、光る技術を確かに持っていることが言えます。
この分野のファンケルの最もスコアの高い特許は、今回の訴訟の対象特許とは異なりますが、発明の名称は同じく「油性液状クレンジング用組成物」であり、こうした光る特許の存在を把握しておくことは、知財戦略でライバルの脅威を察知する上で欠かせません。
ファンケルのウェブサイトを見ると、同社の製品「マイルドクレンジングオイル (120mL)」の価格が1本1,785円。一方、DHCのウェブサイトによると「DHCマイルドタッチクレンジングオイル(150mL)」の価格は1,200円となっており、後発のDHCは安価な価格設定でシェアの獲得を目指しているものと考えられます。今回の訴訟の結果がどうなるかはまだ分かりませんが、ファンケルが訴訟にでた背景には、事業計画に沿った知財戦略を推進し、事業保護に努める強い姿勢が感じられます。
※ファンケルとDHCに関する特許分析データを無料でご提供いたします。ご興味のある方は、お問い合わせフォームよりご連絡ください。
*1: 権利者ベースで集計。2009年度出願分は公開されていない分もある為暫定値
*2: テーマコード【4C083】
*3: 第4358286号「油性液状クレンジング用組成物」
*4: パテントスコアは主に特許出願後の経過情報をもとに、特許1件ごとの注目度を得点化する指標です。
*5: 国際特許分類IPC:A61K 7/02が付与されたもの
※経営分析、競合調査、特許分析サービスに関する詳細は、
「企業向け」「大学・研究機関向け」「金融機関向け」の各ページをご参照ください。
特許分析のパテント・リザルト TEL:03-5835-5644 Blog Twitter
Copyright © Patent Result Co., Ltd.