金賢姫元北朝鮮工作員は一昨年秋、十数年間の沈黙を破り知人への手紙や取材に近況を語り始め、自分の教育係だった田口八重子さんと、同僚工作員に日本語を教えた同じ拉致被害者の横田めぐみさんに言及。昨春から、めぐみさんに実際に会ったと証言していた。

　一昨年10月、北朝鮮民主化フォーラムの李東馥代表にあてた手紙に「李恩恵（田口さん）が窓の外を眺め、拉致された自身の境遇を嘆いていた」と触れ、テレビで見た田口さんの息子に会いたいと心境を語った。

　その後、韓国人ジャーナリスト趙甲済氏の取材に、金淑姫という同僚工作員に日本語を教えたのがめぐみさんで、「おとなしく、よく病気になって入院した」との話を金淑姫らから聞き、写真も見たと話していた。

　昨年３月に韓国・釜山で田口さんの家族に面会した際には「85年１月、金淑姫から『84年末に田口さんとめぐみさんと３人で招待所で一緒に生活した』と聞いた」と証言を具体化させる。

　昨年５月、日本政府当局者に、伝聞として話していためぐみさんについて「実際に会ったことがある」と証言。めぐみさんの父滋さん（77）と母早紀江さん（74）が当時の状況を直接聞かせてほしいと希望したことが、訪日につながった。

　元工作員は97年にボディーガードだった情報機関元職員と結婚し２児の母。趙氏の取材に「私も子を育てたので幼いころ拉致されためぐみさんの運命が一層かわいそうに感じる」と話していた。〔共同〕