三越伊勢丹ホールディングス(HD)は22日、増床して9月11日にリニューアルオープンする三越銀座店(東京都中央区)の概要を発表した。売り場面積は現在の約1・5倍の約3万6000平方メートルとなり、有楽町・銀座地区で最大規模の百貨店となる。全国百貨店の売上高は28カ月連続で前年割れが続いており、百貨店各社は生き残り策を模索している。記者会見した三越伊勢丹HDの石塚邦雄社長は「銀座店で百貨店としてのあるべき姿を示したい」と述べ、従来の高級路線を強化する方針を示した。
増床部分は地上12階、地下3階。現在の銀座店(本館)の東側で道路を挟む形だが、地下と3階以上は本館とつながり一体化している。ブランドショップだけでなく三越伊勢丹HD自らが仕入れて販売する売り場を増やす。2階には増加する中国などの外国人観光客向けに観光案内所を置き、9階に芝生広場や託児所も設ける。三越と伊勢丹が08年4月に経営統合して以後、初の大型プロジェクトで、メーカーとの仕入れ交渉などは伊勢丹のノウハウを生かす。
百貨店業界では生き残りをかけた模索が続いており、J・フロントリテイリングは今年4月、傘下の松坂屋銀座店に米のファストファッション(低価格衣料)「フォーエバー21」を誘致した。高島屋も東京・新宿店にユニクロを、セブン&アイHD傘下のそごう・西武も「そごう千葉店」(千葉市中央区)などにユニクロを誘致し、集客力を高めるためファストファッションとの共存を探っている。
三越伊勢丹HDは「上質で新しいライフスタイルを求める顧客層はなくならない」(石塚社長)と高級路線を維持。銀座店と11年春開業予定の「JR大阪三越伊勢丹」を試金石と位置づける。銀座店の開業後1年間の売り上げ目標630億円が「成功か失敗かの目安」(同)だ。【井出晋平】
毎日新聞 2010年7月23日 東京朝刊