◇名古屋場所<12日目>
白鵬(25)=宮城野部屋=が横綱初挑戦の北太樹を切り返して無傷の12勝目。初場所14日目からの連勝を44に伸ばし、あと1勝で昭和以降3位の大鵬に並ぶ。豊真将が琴欧洲に敗れて1敗が消えたため、13日目に白鵬が勝ち、豊真将が負けると白鵬の3場所連続15度目の優勝が決まる。
圧倒的な強さで、昭和の大横綱大鵬に並ぶ45連勝と、15回目の優勝にダブルリーチだ。白鵬は初顔の北太樹を一気に土俵際へ寄りたて、最後は右の差し手を返しながら左足を掛けて、鮮やかな切り返しで勝負を付けた。
「立ち合いで良い所を取れたんで、落ち着いて前へ攻めました」と白鵬。今日は横綱相撲でしたね、と言う記者の質問にも「今まで見せてないってこと?」と、見事な切り返し。終盤にきて、心と体はいっそう充実している。
13日目で優勝が決まれば2場所連続。15日制になってからは横綱輪島が1973(昭和48)年秋、九州で達成して以来2度目の快挙だが、眼中にはない。食事などを何度もともにし、慕う大鵬の連勝記録にあと1勝で並ぶ。「非常にお世話になっている。自分でいいのかなという気持ち。勝ったら恩返しになるし、報告したい」と意気込んだ。
連勝記録がある上に、未曾有の危機に見舞われた名古屋場所。懸ける思いは、けいこ場でも明らかだ。場所中も3日休んだだけで、ほぼ毎日土俵に立って汗を流している。地方場所では場所中のけいこを休むことが多い横綱にとって、異例の光景だ。実質的な師匠の熊ケ谷親方(元幕内竹葉山)「自分が相撲界を引っ張って、こういう時こそやらないと、と自覚してきた」と話す。
「いろいろな問題があってプレッシャーはあるけど、千秋楽まで取り切ることが大事。安心せず集中していきたい」。優勝と節目の連勝を目前にしても、白鵬に気持ちの乱れは見られない。 (田中一正)
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