2009年07月05日
私の会ったマイケル・ジャクソン
6月25日14：26 LAタイム：
6月25日14：26 LAタイム、ＣＮＮの調査のよれば米国人の半数がファンである「キング・オブ・ポップ」マイケル・ジャクソンが死去、そのニュースは世界を駆け巡り、7月4日のステイプルズ・センターで行われる追悼式は、インターネットからの申し込み対象17,500席に全米から申し込みが殺到しているようです。
1987年、日本ペプシ・コーラの副社長をしていたときに、後にミュージックマーケティングと呼ばれた、マイケル初来日ツアーを「コーラ戦争」の日本版として展開した事を拙著でご紹介しましたが、今回はその時のエピソードや背景をお話したいと思います。
80年後半、アメリカでは、コカ・コーラの“ニューコーク導入の失敗“の後、ペプシ・コーラが首位となり売り上げを競う、いわゆる“コーラ戦争”が激化。そんななか、ぺプシは人気絶頂だったマイケルをＴＶコマーシャルと全米コンサートツアーに起用し、結果的にコカ・コーラとのマーケットシェアーの差を広げる事となったのです。
当時、日本ペプシ・コーラの副社長に就任したばかりだった私は、音楽好きということもあって、日本でも“コーラ戦争”を仕掛けようとマイケルの初来日ににあわせたキャンペーンを展開。全14回の公演に同行、そして最後にマイケルと直接対面することもにもなりした。
先ずはチンパンジーーのバブルスと対面：
当時米国ペプシの社員で、マイケル担当のアーロン・ウォルトンとアシスタントのスクーター（2人ともごれがきっかけとなり音楽事業で大成し、スクーターはブリトニス・ピアスを世に出し大成功）会話から「マイケル本人は公演中にはとても会えないので、まずはマイケルの親友チンパンジーのバブルスに会ったら？」となり、マイケルの宿泊先のキャピトル東急ホテル（現在は閉館中）でバブルスにご対面。
調教師の夫婦の隣のコネクティングルームに泊まってていて、ドアを開けたとたんに飛びつかれたのを覚えています。広報用にダイエットペプシを飲ませて写真をとったわけですが、勿論これは使い物にはなりませんでした。
マイケルが一番食べたかったものはケンタッキーフライドチキン：
アーロンが、ペプシの広報ネタにならないバブルスとの面談を申し訳なく思ったのか、彼が、あるとき直接マイケルにした質問「もしダイエットを気にならかったら、何が一番食べたい？」への答えを披露してくれました。その答えは「僕が一番食べられなくて残念なもの、それは勿論ケンターキーフライドチキンさ」でした。
いささか出来すぎた話で、しかもＫＦＣにとっても、必ずしも肯定的なネタではなかったわけで、勿論報道されなかった懐かしいエピソードです。
特別スイートルームのダンスフロアー：
東京の宿泊先、キャピトル東急はマイケルの希望で、友人のライオネル・リッチーに『ビートルズが泊まったホテルがある』と教えられ、ホテル側に３つの条件を出して宿泊したのです。
１．宿泊する部屋に「ダンスフロアを作ること」
２．「指定のタペストリーに換えること」
３．「シャワーはミネラルウォーターを使うこと」
キャピトル東急側は、それらの条件をすべて受け入れ、改装工事を行った。
なぜ「ダンスフロア」かと言うと、コンサート前に3時時間しっかりプラクティス（練習）を行い、コンサート後にも反省点を正すためにもう3時間踊るためだったと前述のアーロンから聞かされました。練習熱心を越えて、完璧主義者マイケルの一面がよく出ているエピソードでした。
完璧主義者マイケルのステージ：
同行した全14回のコンサートは本当にすばらしかった。本当に爆発かと思わせる火薬をふんだんに使い大音響で始まるイントロ、マイケルと豪華なバックバンドによる過去の大ヒット曲と新アルバム「ＢＡＤ」のほぼ全曲の歌と演奏、ムーンウォークに代表されるリスプなビートにあわせた振り付けの連続、巨大な大仕掛けの特設ステージと驚異的な音響、そしてこの時期のマイケルのルックスはほぼ完璧。
『Off The Wall』の頃のマイケルは、まだ少年っぽい感じが残っていたのですが、『BAD』の頃はジャケットにあるようなまさに精悍そのものだったのです。この頃の写真や記憶の中の印象と比べると、いろいろ取りざたされた最近のマイケルの姿は全くの別人のように感じます。
コンサートには二度ほど家族で行ったのですが、当時３歳の娘もマイケルの歌に合わせて一生懸命踊ってましたが、最後の数曲の前に寝てしまうという小さな事件もありました。
完璧主義のもたらしたもの：
本番の前に3時間の練習、約3時間のライブ後もその日の反省を明日に持ち越さずに3時間身体を動かして解決していく彼のステージはあまりにも完成度が高く、完璧でした。だからこそ、本人のプレッシャーも非常に大きかったと思います。
当時、コンサートに同行しながらふと「完璧なステージを演じているマイケルが本物の彼で、私生活でのマイケルは完璧さからはほど遠いフラジャイル存在」のように思えたのです。つまり「マイケルにとっての本当の人生はステージでのパーフォーマンスのみにに在った」と思うのです。その後の一連の彼の私生活にまつわる報道に触れるたびに、舞台の外のマイケルの一人の成人男子としての未完成振りを見せつけられて来たように感じたのは、決して私だけでは無いと思います。
あのマイケルを50歳の若さ失ってしまったことは本当に残念なことですが、最近公開されたロンドンに向けての練習の映像を見ても、死因の一つがこの完璧主義だったような気がしてなりません。
会えたのは14回の全公演に同行した後でした：
私がマイケルに会えたのは14回の全公演に同行した後でした。キャピトル東急ホテルのメザニンフロアの彼のフロアから直通エレベーターのある「日光の間」が選ばれ、15人ほどの限られたペプシ関係者のみのパーティーになりました。
専用エレベーターのドアが開き、現れた彼が私の挨拶に返してきた冷たい親指、人差し指、中指の三本の指の握手の時の感触と、健康そうで引き締まった体躯と端正なルックスは今でも思い出せるほど強烈でした。
もっと驚いたのは、現れた彼が話した英語は
“Hello”
“Niceto see you”
“Thank you very much”
“Good night”
の４つだけでした。
これもマイケルらしく、自分のイメージを守るために、話せば必ず意図と無関係に一人歩きする報道対策として、余計なことを話さないようにしていたのだと思います。
使用される自身のビジュアルの選定は極端に厳しく、この来日時にも使用の許可とれたものは2-3点に限られていました。ステージ上と同様に自らが望んでいる“マイケル・ジャクソン”のイメージを完璧に演じていたのだと思います。
そのときのプレゼントは、骨董品の日本刀（万一の事故のリスクを考え、刀は竹光にして）と本人の要望でミノルタのカメラにしました。残念なことにその時の写真は我が家では依然として行方不明です。
次回に続く・・・・・・