女性特有のがんの一つ「子宮がん」は、内部にできる「子宮体がん」と、入り口付近(頸(けい)部)の「子宮頸がん」に分かれる。二つは原因も発症ピーク年代も異なるが、病院や厚労省でも一緒くたに表記されがちだ。
従来は子宮のがんと言えば、ほとんど頸がんだったためだが、食生活の欧米化などで、ホルモンバランスの変化が引き起こす体がんが増加。正確に死者数などを把握するため、日本産科婦人科学会は明確に区別するよう国に要望している。
患者側として注意したいのは、国の推奨する「がん検診」は通常、頸がんを指すこと。問題なしと結果が出ても、子宮内部まで異常なしとは限らない。国立がん研究センターによると、体がんは40代後半から増加。出血などがあれば、絶対に診察を受けた方がいい。
一方、頸がんの主な原因はヒトパピローマウイルス(HPV)の感染だ。昨年、患者の約7割で見つかる2種類のHPVのワクチンが承認され、唯一「予防」が可能ながんになった。ただ、半年に3回の接種で約5万円の費用はネックだ。
山梨県など費用を公費負担する自治体もあるが、石川県でその動きはない。独自に補助する市町も、先進的に小6~中3を対象に3割を助成している能美市の他、今夏から1回あたり4500円や6000円の助成を始める小松市や津幡町と、一部にとどまる。
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記者は現在27歳。近年、頸がんの発症率が急増している20~30代のど真ん中だ。ワクチンは高いが、連載を機に初めて産婦人科を受診してみた。
頸がん検診は一般的に、出産経験の有無など問診の後、綿棒などで頸部の細胞をこすり取り、顕微鏡で調べる。結果は2~3週間で分かるという。
記者の訪れた金沢聖霊総合病院(金沢市長町)では診察は10分ほど。痛みも少なく、子宮の実物大のエコー写真も見せてもらい興味深かったが、大下陸郎医師によると「若い人の受診は少ない」。
ワクチンの有効期間はまだ不明点も多く、2年に1回の検診は重要だ。国も09年度から乳がんとセットで無料クーポンを配布し、受診を推奨している。【近藤希実】
毎日新聞 2010年7月22日 地方版