"知の暴君"日垣隆氏がサイゾーに降臨 Web3.0時代を語る!
2010年07月21日18時20分 / 提供:日刊サイゾー
――タイトルの『ダダ漏れ民主主義』は、時代を言い表す象徴的な言葉だと感じます。
日垣隆(以下、日) 密室で審議されている話が一次情報として一般へ直接伝わる時代です。議員会館の食堂で、鳩山邦男さんと与謝野馨さんの会話を、裏で聞いてる上杉隆さんがTwitterでダダ漏らすとか(笑)。密室談合の情報に個人がオンデマンドに接することができる時代ですから、それ自体は是としたいですね。当然、そこにはウソも混じっているわけですが。
――ウソも混じる大量のダダ漏れ情報を制覇して「メディア強者」になるには、著書『ダダ漏れ民主主義 メディア強者になる!』の中で「情報の断片を正しく構造化し、自己も日本も世界も相対化する力量」が必要と書かれています。
日 知識として知っているだけでなく、どこから突かれてもその問題を矛盾なく、平易な表現で説明できるように、問題を自分の中で完全に解き終えておくことです。状況が変化すれば新たな仮説を立てて再度調べ、修正して吸収していく。そういう柔軟な情報の構造化が必要ということです。そのためには自分を絶対化せずに相対化していくことも求められる。それが、タイトルにもある「メディア強者になる」というところにつながるんじゃないでしょうか。
――メディア強者と言えば、日垣さんはインターネットが日本に普及する前の80年代から、すでにパソコン通信のニフティで情報検索を始めていたとお聞きしています。きっかけは何だったのでしょう。
日 僕がライターになったのが1987年なんですが、その年にノンフィクションライターの千葉敦子さん(故人)が、『ニューヨークの24時間』(文藝春秋)という本を出された。在米ジャーナリストとしての生活日記なんだけど、彼女はまず朝起きて、パソコンを使い、ワシントンポストやニューヨークタイムスを電話回線を通じて読み、それから国立図書館にアクセスして調べものをして執筆する、なんて書いてある。「なに? 新聞が宙を舞うの?」と思ったわけです(笑)。23年前だから僕も具体的にはイメージできなかったんですが、少なくともそういう事実があることは分かった。
――事実として知り、具体的にどうされたのですか。
日 すぐに翌日、ニフティでワシントンポストのサイトにつないで「White Gate」ってキーワード入れたら検索結果がバーっと出てきた。もう、涙が出るくらい感動した(笑)。そうか、こういう時代になるのかと。すべて英語なんだけど、いずれ日本もこうなる。であれば、書いた記事を無料で読まれたら商売が成り立ちませんから、課金をどうするかが第一の課題だなとか、まぁ、暇だった23年前にそんなことを考えていたわけです。
――その10年後にはすでに電子書籍をビジネスとして展開されています。
日 13年前に著作物をPDFに乗せて配信を始めました。まだPDFのバージョンが1.0で、作成ソフトが当時は7万円くらいしたと思いますが。メディアとして残るかどうかさえ読めなかったけど。今はiPadやiPhoneでも当たり前に使われていて、こんなに一般化するとは正直思いませんでしたね。
――『ダダ漏れ民主主義』の中で、「(自身の著作物の)二割はすでに電子書籍になっている」「本にするつもりのない『変わった』ドキュメントをいくつも電子書籍化し、(略)毎日数十点が売れている。自サイト(編集部注:公式サイト『ガッキィファイター』http://www.gfighter.com)での販売なので、印税は一〇〇%」(本文P85)と書かれています。著作物を版元まかせでなく自分で直接売るという発想はいつから?
日 20年くらい前に同窓会で帰郷したときに、友達と話したら、誰も私が書いた本を知らなかった(笑)。すでに20冊程出していたんですけどね。こりゃダメだと。で、東京に戻ったその日に、往復ハガキで同窓生400人くらいに注文とったら、義理でけっこう買ってくれた(笑)。版元も「紀伊國屋より売れた」と喜んでくれて。それで、著者自身も売らなきゃダメだなと思うようになりましたね。
――日垣さんの著書は、時代を経ても読み続けられる"寿命"の長さが特徴です。『情報の技術』(97年刊、朝日新聞出版)を最近PDFで配信したところ、10万部以上売れたお話は有名です。拝読しましたが、まだ導入されたばかりの「DNA型捜査」を徹底取材し、大手新聞でさえ犯人と報じていた足利事件の容疑者を「冤罪」と科学的に主張したり、湾岸戦争における衛星の取材を通してカーナビの出現を予言したりと、内容がすべて今、現実化しています。
日 湾岸戦争は90年7月にブッシュが開戦を宣言するんだけど、実際に戦争が始まったのが半年後なんです。それまで何の動きもなかった。その動きにすごく疑問を持ったので、戦争が終わってから科学技術庁の付属図書館へ行ってデータベースから米軍関係者の論文をかたっぱしから読んだ。そこで分かったのは、ナブスター衛星って最低でも12基上げないと機能しなくて、全機揃わないと夜中に砂漠で米軍が一カ所に集まれないんですよ。そのために12基上がるのを半年待っていたわけです。そういう謎解きをしていく過程で、「動く地図」が実用化できることが分かる。で、「10年、20年先にはナビの中に入っていない街の商店は存在しない日が来るだろう」というようなことを書いたわけです。
――膨大な取材から導き出された真実というわけですが、日垣さんと言えば妥協のない取材を重ねる完璧なジャーナリストという顔と、やたらケンカを売る"暴君"の顔が浮かびます。
日 浮かばないでしょ(笑)。そもそも自分からは売らないですよ。売られたら買いますけど。
――いや、最近は特にTwitterでいろんな方に。しかも勝間和代さんとか佐々木俊尚さんとか、あまり普通の人がケンカを売らない相手にからみますよね。勝間さんには「鼻に正露丸を詰めてる」とかなんとか。
日 あれはほんの冗談です。ケンカを売ったわけじゃないので。
――佐々木さんに対しては「2011年にテレビも新聞も崩壊しなかったらジャーナリスト辞めるか」とか、今回の本の中でも、同氏の著作を指して「一冊一冊の賞味期限が半年程度と短く、オリジナリティのなさが特徴」(本文P60)なんて書いてあります。
日 (微笑みながら)売ってますね(笑)。だって、『電子書籍の衝撃』で「2011年に新聞とテレビが消滅する」って書いて話題になったわけですけど、さっきの"賞味期限"の話で言えば、2012年にその本がはたして読まれているのかって話で。彼は出身母体の毎日新聞に対するルサンチマンがマグマのようにあるみたいで、こと新聞に対しては冷静さを失う。それだと分析も見誤りますよと。勉強になる部分はありますけどね、分かりやすく書いてありますし。
――ああいうケンカは何か意図があるのですか。また、ケンカの勝ち方みたいなものは? Twitterでは「論争の訓練は今も毎日怠っていません、言論の格闘技プラス科学的根拠のフェアな組み立てと、笑いも重要かと」(7月5日)なんてつぶやいてますが。
日 意図というか、楽しいので。てか、よく探してきたね(笑)。まぁ、論争というのは智恵を磨く大きな一つの手段なんですね。やってみると自分の弱点に気づくし、そしたらそこを強化する。勝ち方という意味では、笑いという要素はけっこう重用です。笑わすとけっこう勝つ(笑)。Twitterって話題がどんどんズレてくでしょう。ギャラリーも乱入してきて、スピードも速い。15分もすると、経済学者の金子勝さんの議論が"ハゲ問題"に変わってる。ブログや2ちゃんと違って論争の場にもなりにくい。だったら、見世物とは言わないけど、わりとどうでもいいことをせっかく全国規模でやってるんだから、過敏にならずに楽しめばいいんじゃないですか(笑)
――最後に月並みな質問ですが、電子書籍の将来について。ご親交のあるアルファブロガーの小飼弾さんは「紙の雑誌類は10分の1くらいに減る」とおっしゃっています。日垣さん的には?
日 トレンドとしては弾さんの言う通りだけど、人間の習慣というのは意外にあなどれないと思ってます。今日も銀行に行ったら、窓口に人がたくさん座って待ってる。ATMで全部できるのに。ATMなんて誕生からそろそろ30年経つんですよ。人って便利だからといって一斉に飛びつくものではないですよね。私がネットに触れてからも、普及するまで20年以上は待った。合理性とは違う習慣の部分で、想像以上に時間はかかるという気はしています。
(文=浮島さとし)
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