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【コラム 私は見た!】

一勝でも二勝でも勝星を積め豊真将

2010年7月21日

 手も出せない。ましてや攻めることなど思いも寄らないという白鵬の相手との距離が、少しつまるようになってきた。具体的にいえば、白鵬の相手が保ち得る距離が違ってきたと思えることなのだ。

 この辺で、攻める仕掛けるという動きを自在に使い分けられる相手が登場してきて、それが鋭い技を持っている相手だったりすると、対横綱戦も面白い一番になり得るのだが、なかなかそう思うようには運ばない。稀勢の里がいかにも、それは早立ちというものだ、という立ち方を見せてしまったが、自信のなさの裏返しを見せられたようで、何分にも頂けない立ち方だった。

 小細工は止めて、堂々と行けよといってやりたくなる。というより国内産大関候補の名が泣くではないかといいたくなる。

 豊真将が、臥牙丸に勝ち、白鵬に追いかける者の勢いを見せた。この勢いとは突然なにかが変わったというのではない。元来力のある力士なのだが、その実力を発揮するのに、なにかが邪魔をしていたということなのだろうか。

 もともと、上位に定着して、自分なりの相撲を見せて良い人なのである。その力士が、突然今場所で十戦十勝。十勝といえば、文字通り大変な星である。自分にも信じ難いくらいだろうが、この際、今場所は間違いなくおれが上げた星だと淡々と信じ、そのことを次の場所に生かして行くことが大事だろう。今場所、私はこうした場所には、間々信じ難い星を上げる力士が出てくると、何度か書いた。それが豊真将になろうとは夢夢考えなかったが、今場所は豊真将売り出しの場所になっても、少しもおかしくない成り行きなのである。

 相撲という競技は、ひとつうまく転がると、連鎖反応に近い現象を起こすことがある。前まわしを取って押して出る。その相撲の勢いは、前頭十三枚目のものではない。

 場所は残るところあと五日である。その五日間に、どれだけの星を上げられるか。非常に楽しみになってきた。最近は取り組みを作る人たちも流動的な判断を見せてくれるから十三枚目の平幕力士の健闘をどう評価するかはわからない。だが、そうはいうものの無茶なこともできないだろうし、一でも二勝でも、豊真将が勝ち星を積み上げ、審判を悩ませてくれることを祈ろう。 (作家)

 

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