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きょうの社説 2010年7月22日
◎熱中症対策 早めの給水を心掛けよう
梅雨が明け、連日うだるような暑さが続いている。子どもたちが待ちかねた夏休みも始
まり、屋外で遊んだり、スポーツをする機会が増えるなか、注意したいのは、ついおろそかになりがちな熱中症対策だ。今月18日には石川県で男女14人、富山県で男女3人が救急搬送され、同20日には加賀市で80代の女性2人が庭の手入れや農作業中に熱中症で亡くなる痛ましい出来事もあった。特に暑さに弱い高齢者や幼児には、細心の気配りが必要である。環境省の「熱中症環境保健マニュアル」によれば、熱中症は、梅雨明けの蒸し暑い日な ど、体がまだ暑さに慣れていない時期に起こりやすい。急に気温が高くなり、湿度も高く、風が弱い日は、特に危険という。予防策として、外出時には、帽子や日傘で直射日光を避け、早め早めの小まめな水分補給を心掛けたい。屋内では窓からの日差しを避けて通風をよくし、やはり十分な水分の摂取を忘れないようにしたい。 熱中症は、気温や湿度が高い環境下で、体内の体温を調節する機能が正常に働かなくな ることによって起きる。初期症状は頭痛やめまい、吐き気などで、症状が重くなるとけいれんを起こしたり、意識がもうろうとし、死に至る場合がある。熱中症による死者は年によってばらつきが激しく、年平均で約300人、2007年は923人に上った。 熱中症は、炎天下の戸外で起きると思い込みがちだが、救急搬送される患者の3割以上 が自宅での発症である。体内の水分が不足すると汗が出なくなり、気温と湿度が高くなるにつれて体温も上昇する。暑さを我慢して蒸し風呂状態で寝ているうちに、気分が悪くなり、死亡する例もあるという。 地球温暖化やヒートアイランド現象により、熱中症のリスクは年々高まっている。とり わけ高齢者や幼児は体温の調整機能が弱く、体内の水分量が少ないため、それほど汗をかいていなくても脱水症状に陥りやすい。暑い日は、のどの渇きを感じなくても、定期的に水を飲むくせを付けるようにしてはどうか。熱中症を侮らず、暑い夏を元気に乗り切りたい。
◎先島諸島に陸自部隊 離島防衛の認識深めたい
防衛省が、沖縄県の先島諸島に陸上自衛隊の部隊配備を検討している。沖縄駐留米軍の
再編・縮小問題が外交、安全保障の焦点となっているが、沖縄本島以西の「無防備な国境の島々」の防衛に関する国会の議論は少なく、国民の関心も薄い。安全保障と海洋権益確保の面で重要性を増している離島防衛の国民的な議論と認識を深めたい。宮古島や石垣島、与那国島など日本西南端の先島諸島は、中国と領有権を争う尖閣諸島 と目と鼻の先であり、台湾、中国とも至近距離の戦略的に重要な位置にある。防衛省は中国海軍の増強と海洋進出に対応し、2005年度からの現行防衛計画大綱に「島しょ部に対する侵略に対して、実効的な対処能力を備えた体制を保持する」と明記した。しかし、沖縄本島以西の島々では現在、宮古島に航空自衛隊のレーダーサイトがある程度で、「実効的な対処能力」の整備はこれからの課題である。 日米両政府が合意した米海兵隊のグアム移転など沖縄駐留米軍の縮小は、自衛隊による 防衛体制の見直しと不可分のはずである。しかし、沖縄では自衛隊に対する抵抗感も根強い。離島防衛については、政府自身の認識も十分ではなかった。例えば、日本の領空を守る「防空識別圏」の境界線が、領土である与那国島の真上に引かれるという異常な状態が、今年6月にようやく正された。沖縄復帰前の米軍の誤った線引きを今まで踏襲してきたのである。 宮古島や与那国島に国境警備の陸自部隊を段階的に配置するという防衛省の検討案に対 して、中国や台湾を刺激し、国際交流による沖縄振興に好ましくないといった声が今後高まるとみられる。 しかし、与那国島の町長と町議会議長は昨年、現実に即して陸自部隊の配備を防衛省に 要請している。尖閣諸島周辺における中国海軍の動向や台風など大規模災害への対処、さらに自衛隊配備による地域活性化やインフラ整備に期待してのことである。沖縄の米軍基地負担の軽減だけでなく、周辺諸島の防衛と振興策についても真剣に検討する必要がある。
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