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パッピンス

2009年7月28日

  • 筆者 八田靖史

写真アイスベリーの外観写真パッピンス(アイスベリー)写真コーヒー味と五味子茶味の新商品(アイスベリー)写真氷の旗を掲げる屋台店舗写真ハングルで書かれたパッピンスの貼り紙

都内有数のコリアンタウンとして知られる東京・新大久保。夏が本格化するとともに、町のあちこちで「氷」の文字を見かけるようになった。夏の風物詩であるカキ氷の販売を知らせるものだが、そのカキ氷というのがこの町では少し違う。イチゴやメロンのシロップがかかったアレではなく、もっとたくさんのトッピングが乗る豪華版。韓国式カキ氷のことで、韓国語ではパッピンスと呼ぶ。

 パッピンスのパッはアズキ、ピンスは「氷水」と書いてカキ氷のこと。いわゆる韓国式の氷アズキなのだが、アズキだけではなくさまざまな食材が加えられる。スイカ、キウイといった各種フルーツに加え、パッピンス用の小さな餅、ナタデココ、ソフトクリーム、シリアルなど。店によってトッピングの選択はさまざまで、どのような具が乗って出てくるかも楽しみのひとつでもある。色とりどりの具で飾られた姿はなかなかに壮観で、食べる前にしばし見とれてしまう。

 だが、その外見を楽しむのは、最初の一瞬だけにとどめねばならない。韓国ではこのパッピンスを食べる前に、スプーンで念入りにかき混ぜるのを作法とする。ビビンバ(韓国式の混ぜごはん)を食べるかのごとく、と書けばいくらかイメージがしやすいだろうか。全体がアズキ色の液状になるまで、しっかり混ぜてから食べ始める。日本的な感覚ではなんとも美意識に欠ける行為に思えるが、韓国人に言わせると「最後まで味が薄まらないのでよい」とのこと。事実、試してみると確かに味は悪くない。

 近隣にひしめく韓国家庭料理店や、軽いオヤツを販売する屋台店舗など、新大久保のあちこちでパッピンスは食べられるが、昨年からは専門店も登場している。JR新大久保駅前に位置する「アイスベリー」は、韓国で展開する人気パッピンスチェーンの日本初進出店。2〜5人前までを一緒に盛り込む巨大なパッピンスを自慢とするほか、季節のフルーツやナッツ類など、トッピングメニューも豊富に用意している。今年の夏からはベースの味を、コーヒー、緑茶、五味子茶(チョウセンゴミシの実で作る韓国式の伝統茶)に切り替えたアレンジ版も新商品として提供を始めた。

 新大久保は韓国旅行を手軽に擬似体験できる町。町歩きの休憩にパッピンスを試すのもよし。韓国料理店で食事をした後に、デザートとして味わうもよし。真夏のいちばん暑い時期にこそ、ぜひ体験して欲しい涼味である。

●パッピンスの魅力

 韓国ではひとつの料理を大勢で囲み、つついて食べるスタイルを好む。鍋料理なども取り皿、取り箸はさほど使わず、直箸、直スプーンで食べるのが一般的。そんな食習慣からか、カキ氷も同じように大勢でつつく食べ方が好まれる。専門店で多人数分をひとつの器に盛り込んで提供するのはこのためで、全員がスプーンを片手に巨大カキ氷と格闘する姿は圧巻。親しい仲間と食べに行くときは、こちらもぜひ試してみて欲しい。

●店舗データ地図

アイスベリー新大久保店

東京都新宿区百人町2−3−5 2階

03−3203−8317

プロフィール

八田靖史(はった・やすし)

コリアンフードコラムニスト。1976年生まれ。東京学芸大学アジア研究学科卒業。1999年より1年3カ月間韓国に留学し、韓国料理の魅力にどっぷりとハマる。2001年に韓国料理をテーマにしたメールマガジン「コリアうめーや!!」を創刊。同名のホームページ(http://www.koparis.com/~hatta/)も開設し、雑誌、新聞などでも執筆活動も開始する。著書に『八田式「イキのいい韓国語あります。」』『3日で終わる文字ドリル 目からウロコのハングル練習帳』『一週間で「読めて!書けて!話せる!」ハングルドリル』(いずれも学研)がある。

日々、食べている韓国料理を日記形式で紹介するブログ「韓食日記」も運営中(http://koriume.blog43.fc2.com/)。 ※執筆者の新著が出ました。「魅力探求!韓国料理」(小学館)。

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