福井10−0旭川工 最後の打者を得意の「落ちるスライダー」で空振り三振に切った。福井の2年生エース藤井はマウンド上でクルッと体を反転させセンター方向を向いた。「ホッ」と息を吐き、駆け寄る仲間とグラブを合わせた。奪った三振14個。旭川工を事もなげに7安打完封した。静かにマウンドを駆け下り、涼しい顔で整列に加わった。
初回3つの三振で奪三振ショーの幕を開けた。「1回に3つ取るのは慣れてるんで…」。最速138キロ直球と、曲がる、落ちる、小さく曲がるという3種類のスライダーは威力十分だ。4回には自ら公式戦初本塁打を左翼席へたたき込み、波に乗った。打線の援護にも守られ、ピンチらしいピンチは9回の2死満塁だけ。試合後は「14三振? 公式戦最多。でも全然疲れてない」と言い放った。
自身初の甲子園だが勝つイメージは出来上がっていた。中学1年だった98年、横浜・松坂(現西武)にあこがれた。春夏連覇した甲子園でのテレビ中継全試合を録画。擦り切れるほど見て大舞台で三振を取るイメージを膨らませてきた。左足の上げ方も松坂をまねている。だから完封は当たり前。大須賀康浩監督(48)も「2、3点には抑えると思ったんですが」とうれしい悲鳴だ。
誰にも負けたくない。前日13日、同じ2年生投手の遊学館・小嶋達也が桐生商戦で15三振を取ったことに刺激されていた。「次(帝京戦)も完封したい。三振は10個くらい取りたい」。藤井は、さらなる快投を宣言した。【村野森】
◆藤井宏海(ふじい・ひろみ)1985年(昭和60年)11月20日、福井県吉田郡生まれ。志比小1年から軟式野球を始める。永平寺中ではボーイズリーグ「福井フェニックス」所属。福井では内野手兼投手だったが2年春から投手1本。170センチ、62キロ。右投げ右打ち。
(写真=旭川工を相手に7安打14奪三振の投球で完封勝ちした藤井(撮影・柴田隆二))
旭川工、エラーで先制点
旭川工は地に足が着かないまま敗れた。3回に2失策などで3点を先制されると、打撃陣も相手エース藤井に14三振を喫した。石川亮太主将(3年)は「自分たちの野球ができないまま終わった」と肩を落とし、佐藤桂一監督(45)は「先発した2年生の福田(和起)は頑張ったが、あそこまで守備が乱れるとは」。