福井７−１７帝京　帝京（東東京）が福井相手に東京代表最多の１７得点を挙げて圧勝。優勝した９５年以来７年ぶりに８強入りした。笹沢学捕手（３年）が初回の先制弾を含む４安打３打点と活躍。チームも３本塁打２０安打の猛攻を見せた。

　スコアボードに、２０安打１７得点の数字がくっきりと浮かび上がる。１試合３本塁打を含んで、東京代表として過去最多の得点をマーク。帝京ナインが記録的な猛打で、前田三夫監督（５３）へ歴代３位の蔦文也監督（池田＝故人）に並ぶ通算３７勝目をプレゼントした。

　「やまびこ打線」をほうふつとさせる猛打ショーへ導いたのは初回、３番笹沢の先制ソロだった。福井の１４奪三振男・藤井の内角直球をライナーで左翼席へ運ぶ。１、２番が連続空振り三振に倒れた直後。出はなをくじくには十分すぎる１発だった。笹沢は「カウント０−２だったのでストレートだと思った。読み勝ちです」。ボール球になるスライダーを見逃し、直球をうまくとらえた。前田監督は「あの時、藤井君が“あれ？”という顔をして動揺した。これで行けると思った」と確信を持った。

　前日の練習では、割り当ての２時間すべてを打撃に充てて、藤井のスライダーに対するタイミングの取り方を確認した。体の軸がぶれないよう下半身を安定させて、バットを振り切ることを徹底した。この日はボールを見極め、肩口から甘く入るスライダーと直球を痛打。４回には、１四球をはさむ３連続適時打で４点を奪い、早々と藤井を引きずり降ろした。

　前田監督は「今までで一番いいスイングだった。蔦先生に並ぶ試合でこういう打撃ができたことは感慨深い」としみじみ話した。「強打の帝京」のルーツは池田にある。８３年春に初対戦して０−１１と完敗。「選手の体格、打球の速さが違う。蔦監督のスキのなさを知った」。その後、蔦監督について書かれた本を読み、筋力トレを導入。四国大会に足を運んで勉強したこともあった。高校野球の多くのチームが指導する「たたきつける打撃」ではなく「振り切る打撃」で、この日も相手野手のグラブをはじく強い打球を放ってチャンスをつくった。

　これで９５年に優勝した時以来のベスト８進出。「これから納得いく野球ができると思う」。前田監督が３度目の頂点をとらえた。【鳥谷越直子】

　◆笹沢学（ささざわ・まなぶ）１９８４年（昭和５９年）４月２日、東京都生まれ。家族は両親、兄。小学３年時に豊島ファイブで野球を始めた。趣味は将棋。東東京大会は５試合に出場して１６打数８安打の打率５割、１本塁打、９打点。１８０センチ、７３キロ。右投げ右打ち。

　◆帝京９５年の優勝ＶＴＲ　２回戦で日南学園に延長１１回、２−１でサヨナラ勝ち。３回戦は東海大山形に８−６。準々決勝では創価を８−３、準決勝は敦賀気比を２−０で完封。決勝は白木隆之が星稜・山本省吾（現近鉄）に３−１で投げ勝った。

　◆東京都最多得点　帝京が奪った１７点は春夏を通じて東京の最多得点。これまで春は７２年日大三１６−０戸畑商、夏は９１年帝京１３−０坂出商が最多だった。

（写真＝１回表帝京２死、笹沢が左越え先制本塁打を放つ）

　２回戦で１４奪三振を奪った福井の２年生エース藤井宏海が、１０安打１０失点で４回途中に降板。三塁手になった４回裏、史上４６人目の２試合連続本塁打を放ったが「マウンドで何もできず申し訳ない」とうつむいた。前回出場の１１年前も、帝京に５−８と敗退しており雪辱もならず。それでも大須賀康浩監督（４８）は「最後まであきらめずよくやった」と選手以上に号泣していた。