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250円食堂が1年 脱・引きこもり、広がる支え合い

2010年7月17日

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横浜市立みなと総合高校内の「アロハキッチン」。働くのは引きこもりだった人たちだ=横浜市中区

 ネギトロ丼や野菜ごろごろカレーなど週替わりのランチが、年会費千円で1食250円。横浜などで「250(にこまる)食堂」が始まって1年たった。引きこもりの若者には調理の仕事、客には安く温かい食事を提供し、年会費は運営団体への寄付に回す。この一石「三」鳥の試みは知らないうちに世間を巻き込んでいる。

 プロジェクトを仕掛けた「K2インターナショナル」(横浜市磯子区)は、社会になじめない若者の自立支援を20年以上続けてきた。共同生活で基本的な社会習慣などを身につける「塾」事業と共に、塾生らに就労体験をさせようと、お好み焼き店なども直営する。「250」はその各店舗と、趣旨に賛同して今年2月から独自メニューで加わった東京・蒲田の居酒屋の計6カ所で続く昼時の企画献立だ。

 直営店の一つ、横浜市立みなと総合高校の学食でもある「アロハキッチン」(同市中区)が、内部5店分の計250食の材料をまとめて準備する。形が不ぞろいといった理由で格安な旬の野菜を仕入れ、全国の個人や農家、企業などから寄付を受け、原価を下げる。

 統括マネジャーの鳴海加奈子さん(34)の指導で、大量のキャベツやタマネギを刻み、カレーを煮込む主力は塾からの20人の就労生だ。平均27、28歳。うつむいて無言、手元が少々おぼつかない人もいる。だが、何年も引きこもって仕事どころではなかった以前を思えばまるで別人だ。

 「自分に存在価値があると思えると人は変わる」と鳴海さんは言う。研修扱いの就労生は無給だが、契約社員として働く塾卒業生には給料も出る。いずれは一般企業への就職も狙える。

 キッチンから数分の「お好み焼きころんぶす石川町北口駅前店」は、午前11時半の開店と同時に来る常連もいて、連日70食ほどが出る。タクシー運転手の稲垣隆夫さん(58)は「安いし、乗務の合間にさっと食べられるからね。若い子たちが頑張ってるよ」と話す。

 今は仲間2人と店をきりもりする長袋雷治店長(27)も元引きこもり。「250」プロジェクトの責任者岩本真実さん(39)は労務者の街・寿町に近いこの立地に、助けられる者が助ける側にもなれるという意味を込めた。

 自己否定を重ねてきた人に働く喜びを教え、施しとは違う「食のセーフティーネット」を作るという目的に加え、この問題に無関心だった世間を巻き込む狙いも「250」にはある。

 一日中「250」を出す「250食堂本店」が横浜市磯子区のJR根岸駅前に仮オープンした。一般からの参加協力店も募集している。問い合わせはK2家族の会(045・752・5066)へ。(織井優佳)

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