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[19758] オリ主ってなんだ?【ネタ系・短編連作】 ※おっさん独立
Name: 芳乃義之◆a9a5e664 ID:5215dd41
Date: 2010/07/21 18:29
 以前書いた作品をプロットを見直し、一期一話でお送りします。
 そのため、ハイスピードです。

 元々は【ネタ・基本一話打ち切り】昔書いたSSを晒してみる 内のその10からになっていますが……もはや原型を留めてません。

 ……どうしてこうなったんだろうね?

 追記:時系列のページは新話投稿のたびに基本更新しています。いつ頃の話か分からない場合、そちらを参考にするといいかもしれません。

 追記2:一番下に特別編を置いてあるため、最新話はそのひとつ上になります。

 追記3:おっさんナオトはとらハ板ではありません。あとは理解してください。

過去の更新

※特別編 IFおっさんナオトsts4投稿
※特別編 IFおっさんナオトsts5投稿
※特別編 IFおっさんナオトsts6投稿
※おっさんナオト独立 とらハ板じゃないですよ。
※八神はやての反逆編投稿



[19758] 無印編
Name: 芳乃義之◆a9a5e664 ID:5215dd41
Date: 2010/06/22 22:32


「お母さんなんてだいっ嫌いッ!!」


 アリシアのその言葉が時の庭園に響く。


 あっ、プレシアさんがorzった。


「いこっ、フェイト!!」


「えっ、でも母さんが……」


「いいの!」


 そう言ってフェイトの手を取って玉座の間を出て行くアリシア。


「あぁ、アリシアに嫌いって言われた、死のう……」


「いやいや早まったら駄目だから!!」


 今にも自殺しそうなプレシアさんを俺は慌てて止めた。










 さて、俺――― ナオト・タカサキはいわゆる転生者である。


 まぁ、そうは言っても特別秀でた点はない、ちょっとだけ魔法が使える程度である。


 むしろ俺の周りがおかしい。


 例えば20年以上生きているはずの俺より知識がある幼馴染(×2)とか。


 例えば魔法で身体強化しているはずなのにそれより上を行くちょっと大人しいクラスメイトの子とか。


 例えば小学生の癖してテスト全て100点の金髪とか。俺でもそれは無理だよこんちくしょう。


 例えば「ナオ君?ふっゴミなの」とか笑って言い飛ばせるような魔力量を持ったチートとか。


 おかしい、世界はこんなはずじゃなかったのに。


 まぁ、今は側にいない幼馴染の片割れはコーディネイターだからしょうがないけど。


 超高校生級ならぬ超小学生級が並んでいるのである。


 泣きたい。


 オリ主ってなんだ?


 さて、そんな平々凡々な俺だが歩く死亡フラグな幼馴染な所為で早速酷い目に遭った。


 具体的にはヒュードラの事故に巻き込まれました。


 うん、ごめん忘れてた。アリシアが歩く死亡フラグなのを。


 事故に巻き込まれて虚数空間に落っことされ、海鳴に流れ着きました。


 えっ、ちょっと待って、ごめん俺にも訳分からない。


 ちなみに落としたのはアリシ……Aという幼馴染な。


 あいつ俺のデバイスねこさんパンツァーを掴んで俺を巻き添えにして一緒に落ちたんだぞ、信じられるか?


 海鳴に流れ着いて色々大変だったが、それは置いておく。


 話したくないのは決してなのはさまにねこさんパンツァーの名前の由来をうっかり喋ったからではない。


 いや、ねこさんパンツァー向けないで、駄目、そんなでっかくてぶっといの耐えられない、「ナオ君、少し頭ひやそ」いやぁぁあああぁぁぁぁあああぁぁあ!!!


 ……ちょっとトラウマが刺激されたけどとにかく。


 まぁ海鳴での生活ではうっかりなのはさまに魔法バレして教える羽目になったぐらいだし、うん。


 アリシアと海鳴での新生活を波乱万丈、うん波乱万丈に暮らしていると原作通りジュエルシードが落ちました。


 まぁ、なのはさまに先生(といっても教えて三時間で逆に教わるほどだったが。このチートめ)をしていた俺も手伝っていた。


 途中まであー原作通りかーとか何とか思ってたらフェイトに親しげに声を掛けられました。


 …………は?


 しかも「久し振りだね」とか「元気だった?」とかまるで再会した友達のような馴れ馴れしさ。


 俺の思考をぶっちぎったフェイト空間に丸々記憶の空白が生まれました。


 で、昨日フェイトは再び姿を現し「母さんがナオトに会いたいだって」とか言われました。


 ま、まぁプレシアさんとは以前何度かお世話になったし、と付いて行くと「久し振りね」と時の庭園でそう言われました。


 その際にアリシアが生きていることを知ったプレシアさんは喜び、再会したの、だが。


 フェイトへの仕打ちを知ったアリシアぶち切れました。


 それがさきほどの出来事である。


 以上ダイジェストでお送りしました。






「アリシア……どうして……」


 うわ言のように呟くプレシアさん。


 とりあえず自殺は思い留まってくれたが、あまり状況は変わってない。


「はん、いい気味だね」


 とこれはアルフ。


 ……フェイトと一緒に出てったのかと思ってた。


 まぁ、プレシアのこと嫌っているし、本人的にはこの展開は嬉しいだろう。


「ふふっ、私なんて生きている価値ないのよ……ゲホッ、ゲホッ」


 鬱いプレシアさんだったが唐突に血を吐いた。


 ……あっ、原作でも病を患っていたの忘れてた!


「ちょ、プレシアさん、大丈夫ですか!」


「いいのよ、どうせアリシアに嫌われた私なんてこのまま野たれ死ぬのがお似合いよ……」


「完全に諦めムード入ってるーーーーーーー!!」


 自殺を抑えたがやっぱり死ぬ気満々だったーーーーーーー!!


「まったく、一回嫌われたくらいでふざけんじゃないよ」


 そう言ったのはアルフだった。


「フェイトはさ、あんたに嫌われてても何度だって仲良くしようとしてた、それなのに一回嫌われただけで情けないね」


「犬……」


「あ、あたしはあんたなんか死んでも構わないけどさ、死ぬとフェイトが悲しむんだよ」


 そう言って顔を赤らめてそっぽを向くアルフ。


 えっ、あれ、ツンデレ?


「ねぇ犬、あなた名前何て言ったかしら……?」


「アルフだよ」


「そう、アルフね」


 アルフの名前を呟いたプレシアさんはちょっとだけ穏やかに笑う。


「そうね、アリシアが生きていたならこれから仲直りしていけばいいわ。時間だって……ゴホッ、ゴホッ!」


 吐血。


「……時間はあまりないけど会えないわけじゃないもの」


 プレシアさん自身が吐いた血によって服は血塗れだったものの、さっきまでの欝だ死のうなテンションじゃない。


 確かに、生きようとする目だ。


「まさかあれの駄犬に諭されるなんて思わなかったわ」


「ははっ、その調子だよ鬼婆」


 お互い毒を吐き合う。


 だけど、それはいがみ合った立場からじゃなかった。


 これは、アルフのお手柄だな。


「そうと決まればやることが多いわね、拠点を地球に移さないといけないし、面倒な手続きも色々あるわね。アルフ、手伝いなさい」


「あたしはフェイトの使い魔なんだけどね」


 そう言うが、アルフは断ろうとはしなかった。


「ついでだからフェイトの手続きもしておきなさい、確かフェイトぐらいの歳だと学校に通う必要があったのよね?」


「まぁ、普通通っているよな……」


 そうは言うもののこの海鳴には小学校に通っていない某車椅子少女がいるわけで。


 あれが例外なのは言うまでもないが。


「そっか、学校か。フェイトにも友達増えるのかな」


「増えるさ」


 俺はアルフの呟きに答えた。


 そうだな、いきなりアリシアの妹とか紹介されてみんな驚くだろうなぁ。


 きっと驚きの大合唱に違いない。


「ああ、それとアルフ」


「なんだい、まだあたしに仕事を言いつけるのかい?」


「私の病気のことは伏せなさい」


「別に言っちゃっても問題ないじゃないか」


「フェイトを犯罪者にしたいなら好きにしなさい」


「……ジュエルシード」


 俺はすぐに思い当たった。


 願いを叶える魔法の石。


 不治の病であっても、あるいは治せるかもしれない手段。


「相変わらずあなたは頭の回転だけは速いわね」


「全然褒められてる気がしないんだけど」


 俺はそう言いながらも原作の展開からそのパターンを考慮する。


 母親に言われて集めていた場合と、自身の目的のために集め使用しようとしていた場合。


 後者は例え善意からの行動であっても、自分の意思が入っている。


 どう考えても無罪放免で済まなそうだった。


「それにフェイトに伝わったらアリシアに伝わるでしょう? 私はアリシアに無用の心配をしてほしくないの」


「フェイトに聞かれたら嘘は吐けないからそれまで黙っておくよ」


「それでいいわ。あなたは……」


 そう言いつつ俺の方を見る。


「口止めしなくても大丈夫ね」


「……意外と信頼されてるの、俺?」


「言ったでしょ、頭の回転の速さだけは褒めてるって。あなたなら必要に応じて判断できるでしょ」


 嫌な信頼だ。


 確かにアリシアより頭悪いけどさ!


「ふふっ、これから忙しくなるわね」


 プレシアさんはそう言いながら笑っていた。


 どうでもいいけど服は着替えてほしい。


 スプラッタすぎてちょっと怖い。








「つー訳でなのはさま、献上品でございます」


「ナオ君、どうしてそんな下手なの……?」


 一度刻まれたトラウマがさせるんです。


 俺はジュエルシードがいらなくなってしまったフェイトから譲ってもらい、なのはさまに渡していた。


「でもこれどこで見つけてきたの?」


 なのはの肩にいるフェレット、ユーノ・スクライアが不思議そうに首を傾げる。


 ちくしょう、フェレットが小首を傾げる仕草は可愛いじゃないか!


「ちょっと友達が拾ったのを譲ってもらった」


「でもこれ、封印されてるよね?」


 目敏い奴め。


 というのも、俺ではとてもじゃないが封印処理をできないからその言葉が出てくる。


「ま、まぁ、封印されているならいいだろ」


「……そうだけど」


 明らかに疑ってますよ、なユーノの視線。


 隠しているのはバレたが、内容までバレていない。


 大丈夫、隠し事は内容がバレなきゃ隠し事として通用する。


「ジュエルシードも半分以上集まったし、あと少しだね!」


 元気一杯のなのはさま。


 そうは言うものの実は最大の問題として海に落ちた6個のジュエルシード。


 フェイトに協力を頼むと後で色々と面倒になりやすいし、そうなるとこのメンバーで回収することになる。


 原作だとなのはやフェイト、それにクロノといった面々で一斉喚起からの封印だったが。


 一個ずつ回収できるかどうかが最大の焦点か。


 原作と同じ手順を踏むには戦力不足…………あ。


「あるじゃん、魔力不足を誤魔化す方法……」


「どうしたの、急に?」


 いかん、つい口に出してしまった。


「あぁ、ちょっと考えたんだけどな」


 そう言って大雑把にジュエルシードが海に落ちた可能性を指摘する。


 これになのはもユーノも頷き、今日は海中探索に。


 で、結界張ってやって来ました海鳴臨海公園。


 まぁ、それはいい、それはいいけどさ。


「何、この展開?」


「ナオ君?」


 やめて、そんな純真な目で俺を見ないでなのはさま。


 俺の邪な心にダメージを受けるから。


 というのもなのはさまの格好は水着姿なのである。


 その姿を実況してもいいが、俺の精神力がガリガリ削られるので割愛。


 ただその手のレイジングハートが凄まじい存在感があるが。


「どうしてこうなった?」


「どうしてって、海の中に何個あるか分からないから潜って捜すって話じゃないか」


 これはユーノ。


「魔力垂れ流して喚起させちゃ駄目なの?」


「それは最後の手段。魔法で空気を確保しつつ可能な限り潜った方が安全だからね」


 それは分かる。分かるけど。


「バリアジャケットは?」


「海の中を捜すとなると長期戦になるから少しでも節約するために見つかるまで使わないって結論出したよね?」


 それがなのはさまの水着姿ですか。


 まぁ、フェイトの妨害が消えてしまった以上、競争する必要もないからある程度時間掛けても大丈夫だしな。


「僕はこっちでフォローに回るからナオトはなのはと一緒にお願い」


「いやいやいや!」


 そもそも俺お前らよりよっぽど弱いから!


 むしろなのはさまの邪魔になるから!


「ナオ君なら大丈夫だよ」


「えっと、なのはさま?」


「だってナオ君私の先生だもん」


 それは俺への当てつけか、当てつけなんだな!


 魔法を三時間で追い抜かし、デバイス技術も一週間で追い付かれた俺への当てつけなんだな!


 こいつ俺が作れる程度のデバイスなら平気で組めちゃうんだぜ。


 俺のねこさんパンツァーを普通に簡易メンテナンスならできるんだぜ。


 そんななのはさまは最近レイジングハートを弄っているとか。


 あまりにもデバイスが機械的な辺りがなのはさまの琴線に触れてしまったらしい。


 その所為で魔法の次はデバイス関連も教えることになり、なのはさまは俺の一番弟子を自称している。


 ごめん、とてもじゃないが俺は「高町なのははわしが育てた」とか言えない。


 これが原因でどこぞの勇者王に尊敬されたら泣くよ俺。


「はい、ナオ君」


 そう言って俺の手を取るなのはさま。


「え……」


 拒否する暇もなく、空を飛び、俺たちは海上へ。


「レイジングハート!」


 なのはさまはその手のデバイスの名を呼び、俺たちは海の中へ勢いよく潜っていった……





「すごい、すごいねナオ君!」


 なのはさまは魚が悠々と泳ぐ自然の海の様子にハイテンション。


「そーですねー」


 俺はなのはさまと二人っきりという状態にローテンション。


 なのはさまは嫌いじゃないけど、一言で言えば苦手。


 だってすでになのはさまに勝てる要素がないんだもん。


 それなのに一番弟子として慕われると、苦手にもなる。


 もちろんピンク色のトラウマもあるがががががががががあがががが。


 ちなみになのはさまは移動を担当し、俺が探索を担当している。


 なのはさまって一通り魔法は使えるが、補助系が苦手であり、この辺補助魔法が得意なユーノとの相性のよさが伺える。


 それでも俺より上だけどな!


 そういった事情もあり、俺よりユーノと組むべきだろうが、あのフェレット上でサポートするとか言い出した。


 そもそも俺ってジュエルシード探索にいらなくね?


「やっぱりオリ主ってなんだろうな……」


 テスタロッサ家の乱(先日のアリシア―プレシア間の喧嘩のことである)もいる意味なかった気がするし。


「ナオ君、最近元気ないよね?」


「原因の大半はお前の所為なのですよ、こんちくしょうッ!!」


 見事オリ主(笑)にしてくれた我が原作主人公なのはさま。


 ジェイルのような生まれからチートはともかく、アリシアとかすずかとかアリサとかもそうだけどさ!


「にゃ、にゃはは……」


 俺をぶっちぎって抜かしている自覚があるのか、苦笑い。


「で、でもナオ君がいなかったらきっとこうしてユーノ君の手伝いできなかった」


「何の話?」


「いきなりデバイスを渡されても絶対魔法なんて使えなかったもん、ナオ君が教えてくれたからこうやってユーノ君のお手伝いができてる」


 できます。できてました。


 一ヶ月掛からずでフェイトを乙らせてました。


「だからやっぱり私にとってナオ君は先生なんです、私のほうが魔法が上手になっちゃっても」


 そう言って俺の手を強く握るなのは。


 暖かい手。


「あと、最初の時みたいになのはって呼んで欲しいんだけど……」


「あっ、それ無理」


「ふぇっ!?」


 なのはさまに刻まれたトラウマが服従の意を告げているんです。


 なのはさまには逆らえない。


「そういやさ、さっきは流したけどなんで水着?」


「えっ、な、なんのこと?」


 俺がそう言うのも理由があって。


 こうして海中探索しているが、簡単に言えば泡の中に入っているような状態である。


 泡というのは空気の固まりであり、その中にいるということはつまり、濡れていない。


「これなら着替える必要ないかなって思ったんだけど」


「…………ナオ君なんか知らないっ!」


「えっ、なんでそこで怒られるの、えっ、なのはさま?もしもーし……」


 そんなこんなで今回の海中探索でジュエルシードを二つも見つけ、後日何度か探索することになったのだが。


 何故かなのはさまは毎回水着姿だった。


 謎だ。






 ジュエルシードも全て回収したり、アースラにそれを渡したり、フェイトの編入やらでいろいろあったがここでは割愛する。


 とりあえずなのはさまの偽アリシア発言は吹いたけど。


 偽アリシアって、偽アリシアって……!


 そういや最近ユーノを見ないけどどうしたんだろ?



 ******


 なのはに謎のテコ入れが……
 ちょっと尺不足だったから書き足したら恐ろしいまでのなのはさまルートがががががが……




[19758] As編
Name: 芳乃義之◆a9a5e664 ID:5215dd41
Date: 2010/06/22 22:37

 ナオト・タカサキは転生者である。


 トラックに轢かれ、訪れたのはリリカルなのはの世界。


「ナオト、遊ぼ! だいすきっ」


 最初は戸惑ったが、幼馴染のアリシアやジェイルに囲まれて楽しく過ごしている。


 アリシアには特大の死亡フラグが付いていたが、5歳にしてSSSランクの俺が颯爽と助け、


「な、ナオト、日曜日暇かしら……だいすきっ」


「ナオト君、今度の休みお茶会があるけどどうかな? だいすきっ」


 アリサやすずかからは以前誘拐騒動を助けてからよく誘われ、


「駄目!ナオ君はなのはとデートするの! だいすきっ」


 なのはさまからは積極的に好意をぶつけられる。


 俺はちょっとだけ困った笑顔を見せながら、そんな毎日が楽しかった。


 だが、そんな平和な海鳴にも異変が起こる。


 ジュエルシード。


 しかし、原作知識を持つ俺に死角はなかった。


 俺が作ったどらg……ジュエルレーダーを使い、ジュエルシードを集め、


「ナオト、会いたかった、だいすきっ」


 フェイトをニコポで陥落させ、


「ナオト……だいすきっ」


 アルフをナデポで陥落させた。


 プレシアさんもアリシアが生きている報を聞いて改心し、大団円で解決である。


 闇の書事件が始まったわけだがSSSランクの俺が負けるわけがなく、ヴォルケンリッターを軽く撃退し、


 しかし蒐集行為は止められず、闇の書は完成したが、俺の声がはやての意識を呼び覚まし……!


「これで終わりだッ、エターナルフォースブリザード!!」


 いちげきひっさつ!!


 あいてはしぬ……!!


「すごい、防衛システムを一撃やなんて……だいすきっ」


 ふはははははははははは、最強オリ主ナオトの伝説はまだまだ始まったば「ディバイーンバスターーーーー!!」り……







「ナオ君大丈夫!?」


 心配してくれるなのはさまだが、今の俺は叫びたい。


「最強オリ主の夢ぐらいみせてくれてもいいじゃねーですか、こんちくしょう!?」


 そうだ、ついさっきまで俺は闇の書の中に取り込まれてた。


 その世界では最強オリ主としてうはうはだったのに! うはうはだったのに!!


 そこでも結局オチは砲撃ですか、俺のラスボスはやっぱりあんただよ、高町なのはさま!?


「魔力ランクSSSでニコポもナデポも完備。


 最強魔法エターナルフォースブリザードだって習得、頭脳も完璧。


 ハーレムだって思いのまま。まさに最強オリ主のテンプレだったのに、テンプレだったのに!


 俺みたいなパンピーならそれくらい夢見てもいいよね、いいだろ!?」


「え、えーと……」


「なのは、ナオトの言うことは9割飛ばしでいいから」


 と、フェイト。


「何か最近どんどんと辛辣になってませんか!?」


「ほら、お姉ちゃんがナオトの言うことはそれくらいでいいって言ってたし……」


「アリシアーーーーーーーーーーー!!」


 俺の癒し系になんてことを。


 フェイトはさ、まだ和む方なんだよ。少なくても他のチート連中よりは。


 たまに会話があらぬ方へ飛ぶけど。


「ナオ君、しつれつって?」 


「今だけそんなアホの子キャラやっても手遅れだからな!」


 確かに国語の成績は悪いが、それでも俺なんかより頭がいいのがなのはさま。


 そのレベルは理数系トップを独走するアリシアに唯一喰いついているほど。


 ちなみに総合点ではアリサ≧アリシア>すずか>>>なのは>俺>>フェイトとなっている。


 なのはとフェイトは文系で点を落とすためであり、フェイトに関してはその落差が酷い。


 だからこそ俺はブービーを取れているのであり、あれ俺ってそろそろ合計三十路じゃ……


「小学生にも勝てないのか俺は……」


「あー、そろそろええか……」


 ちょっとだけ困った風にはやて。


「ちょうどよかった俺をもう一回闇の書の中に……!」


「現実逃避もほどほどにな」


 現実逃避、現実逃避言われた……!


 あそこだけが俺が幸せに生きていける世界なのに。


 ……やっぱりそれは現実逃避か。


「世界は、こんなはずじゃないのにな……」


「それに関しては同意するが、何で君はこんな場所にいるんだ?」


 いつの間にかいたのかクロノ。


 えーと確か原作だと猫捕まえてデュランダルでスーパークロノタイムだっけ?


 ……ごめんもうほとんど覚えてないんだ。


「今さっきまで闇の書に取り込まれて所なんですー、どこぞの悪魔が俺ごと吹っ飛ばしてくれたんですー」


 考えてみれば人質ごと撃ったようなもんだよね、あれ。


 しかも容赦なく。


 悪魔め……!


「ナオ君、何か変なこと考えてない……?」


 ジト目ななのはさまに俺は思わず目を逸らす。


「考えてた、やっぱり考えてたよね!」


「そんなことないですよ」 


「ある!」


「ない」


「あるもん!」


「ないもん」


「あるったら!」


「いや、だから君たちは……」


 頭を抱える執務官様。


 そこから何とか話が進み、はやて以下ヴォルケンリッター達と作戦会議が決まったのだが……




「……え、なにこのポジション?」


 ナオト・タカサキ、配置されたポジション、応援。


 ようするに役に立たないから端にいろ、っていうことらしい。


 いや、俺があのチートどもに並べられるわけないからいいけどさ。


「暇だ……」


 視線の先ではAs恒例のスーパーふるぼっこタイムのお時間。 


 あー、でもちょっとだけ闇の書欲しかったかもなぁ。


 だって最強オリ主の夢だったら見てたかったし。


 それくらいいいよね?


 あっ、スターライトブレイカががががががががががががががggggggg……………………!!


 ……トラウマ再発しました。








「ナオトまた首突っ込んだだって?」


 事件後、俺とアリシアは寒い雪道を歩く。


 はやてとリインフォースが別れを告げたその帰り道。


 アリシアに少し付き合って欲しいと言われ、俺は付いてきた。


「少しだけ」


「フェイトから全部聞いてるんだけど」


「あいつ……!」


 アリシアに全部話すなよ。


「何だかんだでナオトって放っておけないのかな、やっぱり」


「うん?」


「ナオトは馬鹿だってこと」


 そう言いながらアリシアは笑った。そして呟き。


「なのはが羨ましいな……」


「何怖いこと言ってやがる」


 アリシアがなのはさまみたいな魔力を持ったら俺死ぬぞ。


 いや、絶対死ぬ。


 あのジェイルを撲殺した事件は忘れてないぞ。


「というかさ、どこ向かってるんだ?」


「あれ、言ってなかったっけ?」


 ちょこん、と首を傾げるアリシア。


 その仕草がちょっとだけ可愛い、じゃなくて。


「言ってない言ってない」


「あはは、ごめんね。お母さんに会いに行こうって思って」


 アリシアの口から母親、プレシアさんが出てきたことに内心驚く。


 現在も続いているテスタロッサ家の乱。


 元々の原因がプレシアさんにあると考えれば因果応報とも言うべきなのだが、アリシアの口から会うなんて言葉が出てくるとは思わなかった。


 一時期は本当に酷かったからな……


 俺は遠い目をしてしまう。


「はやてを見たらやっぱり家族って大事だなぁ、って」


 寂しそうに。


 アリシアは遠くを見ながら。


「……」


 俺はどう答えるべきか分からなかった。


 プレシアさんの体を日々侵していく不治の病。


 知らないはずのアリシアが、本当は知っているようで。


「ナオト?」


「何でもない」


 だから俺は何も言わなかった。


 問題の先送り。


 本当はよくない気もするが、せっかく仲直りしそうなんだ、今言うのも無粋な気がする。 


「それならフェイトを誘わなくてよかったのか?」


「…………え?」


 ありえないようなものを見るような目。


 おかしい、確かに変なことを言ったはずじゃないのに。


「やっぱりナオトって馬鹿だ」


「どうせ天才どもの考えなんて分かりませんよ」


「はいはい不貞腐れない」


 ホント、オリ主って何だろうな?


 (笑)?


「ナオトも管理局の人に頼んで両親に会いに行ったら?」


「ああ、それだけど実は大変なことになってた」


「大変って何があったの?」


 いやね、クロノから聞いたとき目が点になったよ。


「えーとまず俺たちが時間移動してるって話は知ってるよな?」


「まぁ、そりゃ」


 その所為で管理局はえらい騒ぎになったとかクロノに愚痴られた。


 事故とはいえ、初の時間移動が確認されたのである。


 アリシアも知った時は呆然としてたからな。


「で、まぁ俺の両親もあっさり見つかったんだけど」


「それで?」


「家族が増えてた。具体的には妹」


「よかったじゃん」


「年上だけどな」


「…………は?」


 戸籍上俺は新暦34年生まれで新暦65年現在で戸籍上で31歳、実年齢だと10歳というカオスなことになっている。


 要は空白の21年間が存在してしまっているのだ。


 ここからが問題で、その空白の21年間に両親が第二子を作っていたこと。


 その結果、戸籍上では妹になるのだが、実年齢は向こうの方が上になってしまっている。


 アリシアみたいにまだ同い年の妹がいる方がマシだった……


「それは、大変だね……」


「つーかお前らってどうやって仲良くなったんだ?」


「うん?街で偶然会ってフェイトみたいな妹が欲しいな、私もお姉ちゃんみたいな姉が欲しいって話になってじゃあ生まれは違えど私達は~みたいな感じ」


「なにそれ?」


「翠屋の誓い。あとで本当に姉妹だったのが分かったけどね」


 なんだその桃園の誓いみたいなのは。


 こいつ三国志知っているのか? 知っているような気がする。


 聖祥が誇る超☆小学生メンバーの一人だからな。


 本当、転生分のアドバンテージぐらい平気で抜くからな、このチートども。


「話は戻すけど、妹さんは置いておいて両親は?」


「それ自体難しいんだよ、お前らと違って」


 何度も言うが向こうには21年の空白が生まれてしまっている。


 どんな風に会えばいいんだろうな。


 アリシアみたいに馬鹿な喧嘩引き起こした方が楽なんだろうな、とか思ってしまう。


「21年って長すぎて想像付かないや……」


 俺は後ろを何となく振り返る。


 アリシアと歩いて来た雪道。


 すでに遠くの足跡が今も降る雪で消えてしまっている。


 よく道を指して人生のように例えるが、俺たちはその足跡がこの雪道のように途中で消えてしまっている。


「そう考えるとジェイルとかもどう会えばいいんだろうなぁ……」


「うん。ジェイル君、元気かなぁ……」


 こっそりジェイルについて調べたけどやっぱり指名手配になっていた。


 まぁ、元気にマッドサイエンティストやっているってことだろう。


 それにしてもジェイルに絡んで近い内に何かあった気がするんだけど、何だったかな。


 もう原作知識とか覚えてないなぁ……ホント。


 チート連中に戦える数少ない切り札なのに。


「でも事件も終わったし、俺はコタツでのんびりしてるかな」


「結局里帰りしないんだ?」


「いいよ、かったるいし」


 そういうものの、こんなのが通じるのは就労年齢が低い管理局だから通じる。


 何しろ10歳にはある程度自身で責任持てるとか日本じゃ考えられん。


 だからこそ会わないって選択肢ができた。


 まぁ、リンディさんとか微妙そうな顔だったけど。


「冬休みはぬくぬく過ごすぜひゃっはー!」


「ナオトってそういうのがフラグだって気付かないよね……」


 そうアリシアは呆れた風に呟いた。






 後日、ニアSランクの魔導師に襲われたが、それはまた別の話。


 フラグだ何て言うからフラグになるんだよ!



 ******


 As編完ッ!!
 マテリアル編は流されました。





[19758] sts編(多分15禁)
Name: 芳乃義之◆a9a5e664 ID:5215dd41
Date: 2010/06/22 22:49

「汝、ナオト・タカサキはこの女、ヴィヴィオを妻とし、死が二人を分かつまで、神聖なる婚姻の契約のもとに、愛を誓いますか?」


「…………」


「新郎?」


 神父の声で俺は思わず現実へと意識を戻す。


 隣にはウェディングドレスを着た金髪オッドアイの少女、ヴィヴィオ。


 大人の姿で、俺の視線に気付くと少しだけ恥ずかしそうに顔を赤くしながら笑った。


 可愛いけどさ、可愛いけどさ!


「何で俺こんな場所で結婚式なんかさせられてるわけ?」


 ナオト・タカサキ、ゆりかごで結婚式をさせられてます。


「約束したからだよ」


 いや、うん、分かってるよ。


 俺だってもう長くこの世界にいるもんだから原作なんてすっかり忘れてたぐらい。


 すっかり忘れてたからヴィヴィオがレリック埋め込まれて聖王モードになることなんて忘れてたよ。


 そんな大事なことも忘れてヴィヴィオと結婚するの~!とか微笑ましいこと言うから大きくなったらなんてお約束なこと言ってしまったのが運の尽き。


 まさか本局襲撃事件後に拉致られるなんて予想外でした。


「とりあえずジェイル呼んでこい、ぶん殴るから」


「ドクターなら研究所なのでいません」


 ナンバーズの、何番だかが答えた。


 俺はこの場に助けてくれそうな人がいるかと、見回すと……いた。


「そこのナカジマさんちのギンガさんヘルプッ!」


「私はそんな美人で素晴らしい管理局員であるギンガ・ナカジマではなく戦闘機人のプロトゼロ・ファーストです」


「目逸らして言ったぁ!!」


 そんな目を逸らして言っても説得力ないよ!!


「くそっ、覚えてろよ……」


 俺は睨みつけるがさらりと受け流された。


「パパ?」


 どうどう、落ち着け俺……


 相手は幼女。こんなのごっこ遊びの一環だ。


 この場ぐらい口先だけの魔導師として切り抜けてやるぜ。


「ち、誓います……」


 だから言うのはただ。言うのはただなんだ。


「汝、ヴィヴィオはこの男、ナオト・タカサキを夫とし、死が二人を分かつまで、神聖なる婚姻の契約のもとに、愛を誓いますか?」


「ちかいます」


「指輪の交換を」


 神父の言葉に従って前もって用意されていた指輪を交換する。


 俺の手から付けられた指輪を見て、ヴィヴィオは嬉しそうに笑う。


 ああ、もうごっこ遊び、ごっこ遊び!


「それでは最後に、誓いのキスを」


 指示に従って次はキス。


 …………キス?


「さぁぶちゅーっといくっす!」


「キース、キース!」


「黙れギャラリー!!」


「そうだぞ。これは神聖な儀式だ、囃し立てるもんじゃない」


 銀髪眼帯ロリっ子の一声で静かになる。


 いやさ、そうじゃなくてさ、そうじゃなくてさ!


 落ち着け、KOOLになれナオト。


 これはごっこ遊び、ごっこ遊び、ごっこ遊び、ごっこ遊び!!


 ちょっとずらして頬にキスするくらいなら大丈夫、大丈夫!


 そうそうごっこ遊び、ごっこ遊び、ごっこ遊び、ごっこ遊び、ごっこ遊び、ごっこ遊び!!!


 ゆっくりと顔を近付ける。


 赤みを帯びたヴィヴィオの顔。


 二人の距離がゆっくりと近付き……


「~~~~~~~!!」


 キスされた。


 舌、舌が入ってる!?


 たっぷり一分ぐらい口の中を蹂躙された後、やっとヴィヴィオが離れた。


「え、えっと……」


 顔が真っ赤なヴィヴィオ。


「は、はずかしいね、なんか……」


 そう言うが、俺は完全に腰が抜けてへたり込んでいた。


 思考真っ白。


 しかし周囲の視線に気付き、俺は復活する。


「って、誰だアホなこと吹き込んだのは!?」


 睨んで周囲を見回す。


 顔を背けたのが一人。


「け、決して大人とかそんな単語に引かれたんじゃないぞ、本当だからな!」


 さっきの銀髪眼帯ロリっ子だった。


 ジーザス、まだ常識人だと思ってたのに!?


「チンク姉……」


「違うといっているだろーーーーーー!!」


 ギャラリーが騒ぎ出す。


 ただし、俺はそれ所じゃないが。


「それでは式を終了します」 


 神父が宣言した。


「陛下、おめでとー」


「陛下、おめでとうございます」


「ヴィヴィオおめでとう」


「パチパチ」


「ヒューヒュー」


 そう言って口々に賛辞を送るナンバーズ(ギンガ含む)。


 ああくそ、何だこの四面楚歌。泣きたい。


「みんな、ありがとーーー!」


 嬉しそうに手を振るヴィヴィオ。


「さぁ陛下、ブーケトスを」


「うん!」 


 そう言って手に持ったブーケを投げる。


「IS・ライドインパルス!」


 空中でキャッチする女性。


「トーレ姉、それは卑怯っす!」


「IS使われたらさすがに無理だって」


「お前達、戦いは非情だと言っただろう」


 涼しげにそう返すが、ぶっちゃけブーケ片手じゃあまりにも台詞に緊張感がない。


 しかし、これで結婚式も終わりか。


 長い、長い戦いだった……


「えへへ、これでふーふだね」


 そうにこやかに笑うヴィヴィオも今なら笑って流せる。


「いいえ陛下、まだですわ」


 しかし待ったをかけたのはメガネの人。


「まだ初夜が残っていますわ」


 俺は思わず噴いた。


「しょや?」


「ええ、そうですわ。式は云わば心を繋げる儀式。それに対して初夜というのは体を重ねる儀式。心身が一体となって初めて夫婦と名乗るのに相応しくなるのです」


「さすがクア姉!」


「いいこと言った!」


「どこもいいこと言ってないから!?」


 俺は叫んだ。


 そこのメガネ、自慢げに髪をいじらない!


 くいっ、と袖を引かれたのでそちらを見ると上目遣いのヴィヴィオ。


「しょや、しよ?」


 ……ちょっとくらい、いいよね。


 思わずそう傾きかけてしまう。


 いやいや待てよ俺ここで落ちたらロリコンという名の性犯罪者じゃないか待てよ落ち着けくーるになろうぜ。


「焦れったいわね。陛下、押し倒してしまいなさい」


「うんっ!」


「へっ……」


 元気のいいヴィヴィオに押し倒されました。


 ちょ、顔近い顔近い!?


「む~、あばれないの! えいっ!」


「あぐ……」


 バインドされた。


 う、動かない…………


「陛下、違いますよ」


「ふぇ?」


 ヴィヴィオに声を掛けてきたナンバーズの、誰?


 さっきまでいなかったような……


「こういう時の縛り方の作法はこうです」


「う、うん……」


 そのままバインドでの拘束姿を変えられる。


「ノー!Mは駄目、やめて!?」


 足がMの縛り方。


 ちょ、これは酷い!辱めを受けている!?


「こういったことはアドバンテージを取らないと駄目ですよ」


「さすがドゥーエ姉様、やることが一味違うッ!!」


 メガネ黙れ。


「そこの美人なギンガ様、今性犯罪の現場が起きてます!助けて!!」


 もう一度、ヘルプコール!今度こそ、今度こそ!! 


「性犯罪? いいえ性教育です」


「管理局員ーーーーーーーー!!!」


 こんなだから管理局は腐敗するんだ。


 いつか絶対復讐してやるんだから!


「そーそー性教育性教育」


「うむ、性教育なら仕方ないな」


「ドキドキ」


「ワクワク」


 興味深げに見るなそこの数の子ども!?


 というかこいつら全員ジェイルのところで修理されてこい!!


「これからどうすればいいの?」


「何もしないでください、お願いだから!!」


「大丈夫ですわ、陛下には私達が付いてますから」


 そう言って微笑むメガネ。


「お前らがむしろいらないよ!」


 悪影響与えすぎだろこの悪い大人ども。


「服を脱がせるんだ!」


「ふーく、ふーく!!」


「お前らノリノリすぎだな!!?」


 こんなキャラだったかこいつら?


 原作覚えてないけど絶対違う、言い切れる。


 そんな風に叫んでいる間にヴィヴィオに上を脱がされた。


「おおぉーーーーー!!」


「見世物じゃねぇ!!」


 叫ぶが誰一人聞きやしない。


「ふわぁ……」


 ヴィヴィオが顔真っ赤にして目がトロンとしていた。


 分かる。


 俺の本能が逃げろと叫んでいる。


 あれはあの忌まわしき星光戦争でなのはが見せた目だ。


 助けが入らなかった今頃……ガタガタブルブル


「陛下次は下ですよ!」


「う、うん……」


 現実逃避している間に、ヴィヴィオの手が俺の下着に移る。


「やめ、そこは後生だから、お願い……!」







「ナオ君、ヴィヴィオ、大丈夫!?」


 砲撃音と共に吹き飛ばされる扉。


 そこにいたのは、我らがなのはさま。


「……で、何しているんですか我が主は」


 と、ジト目な俺の従者である星光さんこと星光の殲滅者。


「ねぇ、ナオ君。説明してくれるよね?」


 俺の状況を見てなのはさまの一言。


 俺は被害者だと叫ぼうとして、


「しょやの途中なの!」


 先に致命の一撃を撃たれました。


「ヴィ、ヴィオ……?」


「うん、パパと結婚したの!」


 なのはさまの困惑を他所に勢いよく頷くヴィヴィオ。


 終わった……なにもかも……


「そっか、ふーん、そうなんだ……」


 怖ッ!


 なのはさまがいつもより数十倍怖い!?


「高町なのは、順序を間違えてはいけません」


 しかしそんななのはさまを止めてくれたのは星光さん。


「まずはゆりかごを止めるのが先決です」


 ごめんッ!ドSとか内心散々言ってたけどもう言わないから!!


 そしてありがとう、我が相棒!!


「そ、そうだけど……」


 星光さんの正論に納得しないまでも頷くなのはさま。


 さすがなのはさまと星光戦争で渡り合っただけある。


「ここは砲撃魔法、威力の高い収束魔法を撃ち、内部から崩壊させましょう」


「う、うん……」


「ただ、砲撃魔法に偶然巻き込まれる人がいるかもしれませんが、事故ですし、仕方ありませんね」


 と、こっちを見ながら。


 ん?


「あぁ、うん。そうだね、砲撃魔法に巻き込まれ事故は付き物だもんね」


 笑いながらこっちを見ながらなのはさま。


 ……え、ちょっと待って。


「ええ、よくあることです」


「うんうん、よくあることだね」


 にこやかに、二人。


「ないからないから!!」


「合わせますよ!」


「うん。レイジングハート!」


『All,light』


「オムライスじゃねーーーーーー!!」


 俺が叫ぶがなのはさま達は無視。


 です、よねー。


「ヴィヴィオ! バインド解いて、今すぐ!!」


「全力全開……」「集え明星……」


「だめなの、まにあわない……!」


 二人のデバイスから光が集まってててててて……


「スターライト」「ルシフェリオン」


「えっ、ちょっと待って私まで射線に入って……」



「「ブレイカーーーーーーーーーーーーーーッ!!!」」



「「「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」」


「クア姉ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
 








 後日、なのはさまトラウマ同盟に新たな会員が加わった。現在会員3名。随時募集中。


 あとヴィヴィオはレリックが壊され大人モードになることができなくなったとか。


 でもこの頃のヴィヴィオはまだよかったなんて俺は未だ知らなかった……



 ***

 ほうげきまほうの、まきこまれじこにはじゅうぶんちゅういしましょう

 一応完結。星光さんとかは同時に挙げた時系列で確認してください。
 機会があれば短編でちらほら適当なシーンを書きたい。

 というかナンバーズが誰だか分からない……
 書いてていいのかな、これ……?



[19758] このSSにおける時系列
Name: 芳乃義之◆a9a5e664 ID:5215dd41
Date: 2010/07/14 19:11
新暦38年

・ナオト・タカサキ、アリシア・テスタロッサと出会う。

・ナオト、ジェイルと出会い、親友に。二人でアリシアのスカート捲りを敢行。

・ねこさんパンツァー完成。ジェイル、生死の境を彷徨う。



新暦39年

・ジェイル、管理局上層部の指示を受け、ヒュードラに細工。

・ヒュードラの暴走事故。ナオトとアリシア、虚数空間に呑み込まれる。

・ジェイル、引き起こしたことに強く悔やみ、自身の能力と管理局に強い憎悪を持つ。


無印―4年前

・ナオトとアリシア、海鳴海岸に漂着、発見者によって病院に搬送される。

・同二人、孤児院へ。


無印―2年前

・ナオトおよびアリシア、聖祥大付属小に入学。アリシア、高町なのは達とクラスメイトに。

・アリシア、アリサ・バニングスと間違えられ、誘拐。

・上記事件をきっかけにナオトとアリシア、なのは達と仲良くなる。(少女達との出会い編)


無印―1年前

・ナオト、魔法の訓練をなのはに見られる。なのは、ナオトに弟子入りするものの、三時間で追い抜く。

・なのは、デバイスの構造に興味を持ち、習う。一週間でナオトのレベルに追いつく。

・ナオト、なのはがトラウマに。(ねこさんパンツァー開発秘話)


無印(新暦65年)

・ジュエルシード、海鳴にばら撒かれる。原因はただのエンジントラブル。

・ユーノ・スクライア、なのはにジュエルシード捜索を協力。ナオト、なのはに協力することに。

・なのは、月村屋敷にてフェイト・テスタロッサと出会う。

・温泉にてナオト、フェイトと出会う。なのはとユーノの前にアルフ、ジュエルシード争奪戦に敗北。

・ナオト、街中でジュエルシードを発見。なのはに渡す。

・フェイト、街中でアリシアと出会う。翠屋にて義姉妹の契りを結ぶ。(姉妹の契り編)

・時の庭園にて、ナオト、プレシア・テスタロッサと再会。

・テスタロッサ家の乱。アルフ、プレシアと和解する。

・なのは、ナオトと海中デート(なのは視点)。なのは、水着を褒めてもらえず密かにショック。

・ジュエルシード、全て回収完了。

・アースラ到着。ジュエルシード引渡し後、ユーノ、スクライアに帰る。

・プレシア、海鳴に引越し。フェイト、聖祥大付属小に編入。

・この頃、聖王教会にて聖王の聖骸布が盗まれる。聖王の遺伝子流出。ジェイル、ノリでナオトの遺伝子もセットでばら撒く。


As(新暦65年)

・プレシア、病院にて八神はやてと出会う。家族について諭す、が途中で発狂はやてドン引き。

・はやて、闇の書の主になる。

(この頃、七夕編)

・なのは、ヴォルケンリッターに襲われる。フェイトが救援に駆けつけるも、敗北。

・魔導師連続襲撃事件を調査していたアースラとなのは達合流。

・ナオト、無限書庫活用案を出すもユーノ不在に気付く。が、本局?からウーノ派遣により無限書庫活用案が実現する。

・ナオト、闇の書の中に取り込まれる。

・闇の書の防衛システム撃破。闇の書事件解決。テスタロッサ家の乱、終結。

・ナオト、雷刃の襲撃者および闇統べる王に襲われるも不意を突いて(アホの子、うっかりな子的意味で)撃破。星光の殲滅者に請われ彼女の主に。 (勘違いマテリアル編)


空白期

・なのは撃墜。執刀医はジェイル。ナオトとアリシア、ジェイルと再会。

・ナオト、ジェイルとの共同でストレージデバイス、闇の写本を開発。

・プレシア死去。ジェイルとフェイトの出会い。

(この頃、月明かりのアリシア編)

(この頃、修学旅行編)

・ナオト、デバイスの店を持つ。

・なのは退院。なのは、再度ナオトに魔法の教えを請う。星光戦争勃発。 (仁義なき星光戦争編)

・空港火災。はやて、自分の部隊を持つことを決意する。

・フェイト、ジェイルと何度も会い、親交を深めるが真実に気付かず。 (幼馴染ズ+1お出掛け編)

・なのは主導、ナオトアリシアジェイルの協力でセイクリッドハート開発。しかし廃スペックに使用者現れず。

(この頃、砲撃ヒロインズ談義編)

(この頃、姉妹談義編)


StrikerS(新暦75年)

・機動六課結成。デバイス開発部にナオト、はやての強権により民間徴用され所属させられる。ちなみに主任はアリシア。

・ナオト、スバル・ナカジマに尊敬の念で見られ、困る。ティアナ・ランスターから教えを請われ、さらに困る。

・列車でのレリック回収作戦。

・ホテル・アグスタでの攻防戦。なのは、ナオトにドレス姿を見せるもスルーされ凹む。

・なのは、訓練中にぶち切れ。ナオト、トラウマ再発により発狂。 (ティアナ撃墜編)

・フォワードメンバーの休日。しかしレリック発見により休日終了。

・ヴィヴィオ保護。ヴィヴィオ、ナオトに懐き、結婚する宣言。ナオト、大きくなったらと言ってお茶を濁す。

・本局襲撃。ヴィヴィオ、誘拐される。大きくなると聞いてヴィヴィオ、レリックを埋め込むのを了承。

・聖王のゆりかご起動。ナオト、拉致られる。

・フェイト、ジェイルの真実を知り、涙を流しながら逮捕する。 (涙のホームラン編)

・ヴィヴィオ、大きくなったため約束通りナオトに結婚を迫る。言質を取られナオト、泣きながら式を挙げる。

・内部からの砲撃によりゆりかご墜落。JS事件解決。ナオト、ヴィヴィオ、クアットロ入院。


アフター

・マリアージュだとかVividとかForceとか何かあったけど全部スルー。

(この頃、女こまし編)

・第二次星光戦争勃発。ナオト、家出する。

・ヴィヴィオ、管理局員に。ここから聖王伝説が始まる。

(この頃、アインハルト・ストラトス取材編→ナオト・タカサキ取材編)

・とある圧力により親子間における法改正案が提出される。アインハルト・ストラトス、胃に穴が空き、入院。

・上法案、アインハルトの必死の努力により廃案に。しかしこれが原因で第二次ベルカ諸王戦争勃発。

・ナオト、管理局より「誰でもいいから結婚しろ」と強要される。しかし逃亡したため、広域指名手配に。

・ナオト捕まる。特例により重婚という方向で決着。




[19758] 事件ファイル
Name: 芳乃義之◆a9a5e664 ID:5215dd41
Date: 2010/06/28 18:30
ヒュードラ暴走事故

 新型魔導炉が暴走し、次元震を引き起こした事件。

 死者および行方不明者多数。

 ナオトやアリシアのように時間移動した者はなく、二人はある種奇跡の生還者ともされる。

 主に利権が絡み管理局上層部よりジェイルに細工を命じられた。

 これが原因となり、プレシアはプロジェクトFに、ジェイルは復讐に走ることになる。




アリシア誘拐事件

 金髪で聖祥の制服を着ているという曖昧な情報の所為でアリサと間違えられ誘拐された事件。

 ついでにナオトも巻き込まれて一緒に誘拐された。

「お宅の娘は預かった」「は?」という会話で誤誘拐が明るみに。

 ナオトがあまりの展開にブチ切れ、「茶番だーーーーーーー!!」と叫びながらねこさんパンツァーを振り回した。

 あるいは唯一ナオトが無双した事件とも。




ねこさんパンツァー製作秘話

 ねこさんパンツァーができるまで。

 アリシアのスカートの中はねこさん。以上。というか後はジェイルがボコされたぐらい。

 その際のあまりのアリシアの形相にナオトは錯乱して「やった第三期完ッ!!」とか叫んだ。

 口が滑ってなのはに言ってしまったがためにナオトのトラウマに。




聖骸布盗窃事件

 聖王教会より聖王の聖遺物である聖骸布が盗まれた事件。

 その後、聖王の遺伝子が各地にばら撒かれることとなる。

 ジェイルはその際、プレシアのプロジェクトFで産まれるクローンをアリシアの忘れ形見と感じ、自分は代わりにナオトの忘れ形見として聖王の遺伝子とセットでナオトの遺伝子をばら撒いた。

 これが原因となり、ヴィヴィオはナオトの実の娘ということとなる。

 これに対するヴィヴィオのコメント「ノーカウントだもん、ノーカウント!!」



ジュエルシード流出事故

 ジュエルシードが管理外世界である地球の海鳴にばら撒かれた事故。

 事故原因は輸送船のエンジントラブル。

 発掘担当者のユーノが現地でなのはやナオトに協力を要請、回収に当たる。

 主になのはが回収し、一時謎の妨害があったものの、自然と消え無事回収を終了とする。

 けっしてPT事件ではない。



テスタロッサ家の乱

 アリシアとプレシアによる大規模な親子喧嘩。ただしほとんどアリシアの一方的。

 原因はフェイトに対する虐待。

 一時はプレシアが自殺しそうになったりと色々と大変に。

 同年クリスマスにアリシアのほうで心境の変化があり、和解。収束した。

 この期間中、プレシアの前でアリシアの名前が出ると発狂する。要注意。




闇の書事件

 闇の書に関する一連の事件。アースラスタッフが担当。

 本局より派遣されたウーノによって無限書庫が有効に活用された事件でもある。

 これにより無限書庫が見直され、発掘および探索に秀でたスクライア一族に依頼されることとなる。

 ちなみにウーノ派遣にはジェイルがナオトとアリシアの生存を知る→これこれこういう人材を捜している→よしウーノ派遣となっている。

 その間、研究所が回らなかったらしい。



マテリアル事件

 ナオトがスピード解決したため闇に葬られた事件。

 雷刃の襲撃者に襲われるも、「あっ、UFO」であっさり撃破。

 闇統べる王に襲われるも、倒れた所で相手が油断し、辛勝。

 最後に星光の殲滅者が現れた際には土下座して「魔力でも何でもあげますから砲撃は勘弁してください」と言った。

 しかし、彼女が派手に勘違いしていたため、ナオトが闇の主に相応しいとか言い始める。

 ある一言でナオトが深く傷ついたものの、結局、彼女は従者に。

 この事件後、一時は八神家敵対ルートかと冷や冷やしていたらしい。



高町なのは撃墜事件

 なのはが任務中に撃墜、重体で病院に運び込まれた事件。

 当時活躍していたなのはや、それの後見人であるハロオウン家を妬んだグループがジェイルに依頼したことで起きた。

 彼女の手術執刀医、および主治医はジェイル。せめてもの償いとのこと。

 この事件をきっかけにナオトとアリシアはジェイルと再会することとなる。

 なのはのリハビリは辛く、大変だったが、ジェイルは最後まで医者として彼女に接した。

 その後、なのははジェイルが指名手配犯だと気付くが、悪い人でもなかったし、今度お話してみようと思っていたらJS事件まで会う事がなかった。



第一次星光戦争

 なのはと星光の殲滅者による仁義なき闘い。

 お互いが領土を主張し、侵し合い、しまいには砲撃の撃ち合いにまで発展した。

 しかし、ナオトが倒れたことによって停戦。

 以後緊張が高まっていたが……



JS事件

 ジェイル・スカリエッティによって引き起こされた事件。彼の名前から事件の名は来ている。

 レリックを巡る攻防戦だが、実のところあまり関係なかった。

 ジェイルの目的である管理局への復讐。そのために本局を襲撃したり、ゆりかごを飛ばしたりした。

 しかし、それらは陽動であり本命はドゥーエの最高評議会の暗殺。

 その後は彼の残したデータにより管理局内での大逮捕劇だったとか。

 ジェイルは逮捕後の裁判で境遇などから情状酌量の余地があるとして、執行猶予付きで釈放となる。

 彼はナオト達と派手に遊んだりするものの、この事件後、一度も開発に関わらなかったとか。




第二次星光戦争

 なのはと星光の殲滅者による仁義なき闘い。part2。

 歩く核爆弾ヴィヴィオがきっかけで長きに渡る停戦が終わり、開戦。

 心身共に(約一名身体変わらず)成長した二人の攻防はさらに危険な方向に。

 ナオトは思わず家出し、アリシアに匿ってくれと頼んだ辺りで運命は決まった。

 後に皆揃って語る。「嫌な事件だったね」




第二次ベルカ諸王戦争

 ヴィヴィオによる法改正案が彼女の副官であるアインハルトによって廃案されたことにより、引き起こされた戦争。

 戦争、というかぶっちゃけヴィヴィオとアインハルトの決闘。ただし被害は甚大。

 これが原因でナオトに結婚命令が下され、重婚まで認められた。

 なお、この戦争は『アインハルトの見えないところだったら全て黙認』で和睦が成立、決着。

 アインハルト「もうゴールしてもいいですよね……」





[19758] 人物紹介
Name: 芳乃義之◆a9a5e664 ID:5215dd41
Date: 2010/06/28 18:34
主な登場人物


ナオト・タカサキ

 主人公。オリ主(笑)。

 頭脳はアリシアなどに負け、魔力はなのはなどに全力で抜かれる。

 魔力ランクはDランクだが、ねこさんパンツァーのリミットを切ることで瞬間的な火力はAランクまで跳ね上がる。

 それによる零距離爆破魔法はなのはの装甲だって抜ける。ほんの少しだが。この魔法のおかげで比較的防御の低い雷刃の襲撃者や闇統べる王を撃破した。

 あと、空も一応飛べるが速くは動けない。浮くので精一杯。

 最強オリ主の夢を見る。ただし星光の殲滅者の所為で色々と致命傷。

 新たなデバイス、闇の写本を手に入れたが、物置に捨て置かれている。

 もてるが、嬉しくないとか。

 店を持ったが、あまり客は来ない。

 最近ではさすがになのはが好意を寄せていることには気付いている。

 トラウマ:なのはさま スターライトブレイカー ルシフェリオンブレイカー ピンク色の閃光 とにかく砲撃



アリシア・テスタロッサ

 メインヒロイン、ただし出番薄め。

 本人も戦闘要員じゃないのが原因だと分かっている。

 ナオトを初めに凹ませた幼女。

 デバイス作りはソフトウェア中心。割とバランス重視。

 ねこさんパンツァーを振り回してナオトをボコすことしばしば。

 フェイトの着せ替えさせては鼻血を出すこともしばしば。

 出番がなくて凹むこともしばしば。

 スカートの中はねこさん。ニャー。




なのはさま

 =高町なのは。砲撃魔導師。

 魔導師、デバイス技術どちらともにナオトの指導を受けているため、弟子を自称する。

 ナオトのトラウマ。トラウマの9割は彼女。

 ほぼハードウェア専門だが、デバイスを作らせると廃スペックに。誰も使えない。

 魔導師殺しと呼ばれる教導官。教導すればしごいて殺し、前線に出れば砲撃で殺し、デバイスを作らせれば廃スペックすぎて殺される。

 実際に死者が出るわけじゃないが、被害甚大。

 彼女の砲撃でゆりかごが落ちたのは有名な話。




フェイト・テスタロッサ

 アリシアのクローン。だが妹として振舞われている。

 実際アリシアとの仲は良好。

 しかしクローンのはずなのに胸が本人より大きい。よく揉まれる。

 ナオトとはフラグがまず立たない。姉さんの好きな人だから、とかそういう理由。

 フェイトさんに略奪なんて考えは基本ないんです。

 ジェイルとは仲がいいが、どちらかといえば父親的な感情を抱いている。

 

星光さん

 星光の殲滅者。闇の書の構築体。ナオトの従者。

 ナオトを派手に勘違いし、彼こそが闇の書の主に相応しいと思っちゃったちょっと痛い子。

 一時は闇の書の主にしようと画策するが、最近は割とどうでもよく思っている。

 闇の写本に存在が埋め込まれており、守護騎士のような存在。

 ナオトの店の店番をしている。あとはデバイスのテスト。その際、テストと称してナオトに砲撃を撃ち込んでいる。

 星光戦争を経て、料理の勉強を始めた。

 体型が変化しない所為でなのはからよくそのネタで攻められる。

 ちなみにベルカ式にも精通しており、接近戦もこなせる。が、砲撃した方が早い。

 


ジェイル・スカリエッティ

 ナオトとアリシアの幼馴染。マッドサイエンティスト。

 幼少時のヒュードラの件が原因で、自身の能力と管理局を憎むことになる。

 しかし意外とノリと勢い的なことを多々やる。なにかあったら大体こいつが犯人。

 元々ゆりかご自体陽動であり、彼の目的は最高評議会の暗殺。

 成功後はほとんど遊びモードに入った。

 フェイトが苦手。ナオト達と遊んだ際にジェイル・スカリエッティ(フェイトの中ではジェイルさん≠スカリエッティ)の愚痴を永遠と聞かされたため。

 逮捕後、残った管理局の上層部との通信ログやら境遇やらで情状酌量の余地ありで執行猶予付きの釈放されてしまった。




ユーノ・スクライア

 フェレット。ジュエルシードの事故で海鳴にやってきた。

 そして次元震が起こらず、何事もなく回収してしまったため、普通に帰ってしまった。

 なのはがナオトのことが好きなことに気付いており、所々でフォローが入る。

 闇の書事件の際に呼び出されたが、到着は事件終了後。空気が読めない。

 その後無限書庫の司書に就任。何とか原作通りに。

 しかし残念ながらそもそもstsでは彼の出番はあまりない。



プレシア・テスタロッサ

 大魔導師。すっごい優秀な科学者。

 ヒュードラの事故でアリシアと生き別れる。その後はプロジェクトFに没入することになる。

 フェイトは残っていたアリシアの遺伝子データから産まれた。

 原作通りフェイトとアリシアが違うことでフェイトに辛く当たる。

 しかしそれが原因でアリシアに嫌われる。因果応報。

 その期間中、アリシアの名前が出ると発狂する。

 病を患っており、アリシアと再会した時には余命は長くなかったが、それでも晩年は幸せだった。



アリサ・バニングス

 天才少女。その才はアリシアと二分するほど。

 一年時に、彼女と間違えられアリシアが誘拐したことがきっかけでナオトやアリシアと仲良くなる。

 なのはがナオトのことを好きなのを、なんであれをとか思いながらも応援している。

 アリシアとキャラが所々被る上に名前まで似ているということに若干悩んでいる。



月村すずか

 魔力で身体強化したナオトを軽く越える身体能力を持つ人外。頭脳でもナオトを越えてる。

 ジャンピング土下座の練習を目撃して、ちょっと可哀想な人だと思い始めている。

 魔法を知ってから猫好きなこともあってねこさんパンツァーを密かに狙っていたが、手に入れることはなかった。

 もちろんねこさんの由来は知らない。



エリオ・モンディアル

 プロジェクトFによって生み出された少年。

 その関係で一時期は施設にいたが、現在はフェイトの保護下になる。

 荒んでいた時期もあったが、テスタロッサ家にいることですっかり大人しくなった。

 フェイトのことを尊敬しており、手助けしたいと思っていた。

 実は初恋はアリシアであり、その関係で彼女には頭が上がらない。

 ちなみにキャロとは六課設立以前から面識がある。



キャロ・ル・ルシエ

 アルザス地方にある部族の少女。ただし事情により追放された。

 その後、施設をたらい回しにされた後に、フェイトに保護される。

 アリシアと特に仲がよく、基本的に家事の大半は彼女から習った。

 彼女がアリシアのことをお姉さんみたいと言った所為で第二次テスタロッサ家の乱勃発の危機になった。

 幸いキャロの機転で実際には起きなかったが。

 彼女が幼少時に過ごしていたル・ルシエの部族は一夫多妻かつ、かなりの早婚なため、多少なりとも性知識を持つ。

 その癖純真なため、色々と無防備。よくエリオが困る。

 その関係でナオトとアリシアやなのはの関係をちょっと誤解している。というより早く赤ちゃん抱いてみたいなぁ、とか思ってる。

 重婚案を出したのも彼女。

 ナオトにとっての隠しボスだが、隠されたボスのため、ナオトは多分永遠に気付かない。



高町ヴィヴィオ

 地上最強の生物。聖王様。

 ナオトの遺伝子上の娘。ただし彼女“が”認めない。しかしパパと呼ぶ。

 なのはの娘になったが、それとてナオトを狙うため。

 ナンバーズ(タイプゼロ・ファースト含む)という悪い大人に囲まれて余分な知識ばっか得る。


 以下聖王様ガイドライン

・地上最強の生物

・管理局の生きた伝説

・そもそも存在自体が伝説

・立ちはばかる敵は瞬きする間に終わっている

・というか瞬きする前に終わる

・攻撃が当たらない

・当たってもレアスキルで無効化

・一撃がオーバーキル

・誰だよこいつ生み出したのは

・「勝てるのはパパだけ、ただしベッドの上のみ!」とは本人談



アインハルト・ストラトス

 ヴィヴィオの副官。またの名を管理局最後の良心。

 カリムに土下座されヴィヴィオの副官に就任。が、これが間違いだった。

 ヴィヴィオが築く始末書の山、終わりのないクレーム。

 それでも引き受けた以上は、と健気に頑張った。

 しかし、ヴィヴィオの聖王教会経由による圧力により結婚に関する法改正案にさすがの彼女も倒れ、入院。

 だが、それでも不調を押して廃案へ尽力、見事勝利する。

 ヴィヴィオの外付け良心回路として多大な喝采を受けた。

 あまり知られてないが古代ベルカの覇王の正統な血統であり、本人は魔力弾をキャッチして投げ返すという大道芸をこなせる。



八神はやて

 ああいたね、そんな人。


アベさん

 ヴィヴィオの部隊に所属する陸士。

 体格のいい、イイオトコ。

 十分に問題児なのだが、アインハルトは彼の真実を知らない。





ナオトの妹

 名前のない設定だけの女性。実年齢はナオトより上。

 年上として姉らしく振舞いたいが、その前に出番がない。

 というか、名前すらない。

 管理局員でランクは空戦B。少なくともナオトより上。



[19758] 勘違いマテリアル編
Name: 芳乃義之◆a9a5e664 ID:5215dd41
Date: 2010/06/23 19:52


「いやね、もう予想付いてたよ、うん」


 偽フェイトに偽はやて。


 本人達の言葉通りなら闇の書の残滓で作られた存在。


 性格は違うが、姿が似通ったそんな二人と会えば嫌でも思う。


「…………」


 黒いバリアジャケットに身を包み、その手には細部は違うもののレイジングハートのようなデバイス。


 偽なのはさま。


 どうみても砲撃が飛んできます、ありがとうございました。


「無理無理ッ、なのはさまは無理! 魔力でも何でもあげますから砲撃はご勘弁を!!」


 頑張ってマスターしたジャンピング土下座を今こそ!


 練習中をすずかに見られ、可哀想なものを見るような目で見られたけどさっ!!


「ええっと……」


 ちょっと困った、というか視線を逸らしながら偽なのはさま。


「私は他のマテリアルたちと違い、あなたの魔力を蒐集するつもりはありません」


「へっ、そうなの?」


「はい」


「砲撃は?」


「とりあえずは」


 とりあえず、とりあえずと言ったかこの偽なのはさま……!


「ナオト・タカサキ、あなたには闇の書の主になっていただきたいのです」


「……………………………………は?」


 あまりの発言に俺は一瞬呆然とした。


 えっ、闇の書?


「えーと、ワンモアプリーズ?」


「だからあなたを、闇の書の主に」


「いやいやいやいやすでにはやてがいるでしょ!?」


 最後の夜天の主とか何とか呼ばれてたじゃん。確か。


「はい、ですが今回はそのこととはあまり関係ありません」


「えっ、あれ?」


「順に説明します。闇の書、いえこの場合は夜天の書と言い換えますが、それが喪失したのはいいですか?」


 リインフォースが還ったあの雪の日のことか。


 アリシアがプレシアさんと和解した日でもあるからよく覚えている。


「その際、全てが失われたわけではなく、残滓となってこの世界に残りました」


「ふんふん」


「その残滓が残っていたデータを用いて造り出したのが、私たちマテリアルと呼ばれる存在です」


 確かになのはさまもフェイトも闇の書に蒐集されたし、はやてに至っては主だ。


 あるいはデータが残っていてもおかしくない。


 なのはさまの偽物を作るのは俺的にどうかと思うけど。


 主に俺のトラウマ的意味で。


「私たちの目的は魔力を蒐集し、闇の書を再生させることです」


「だよなぁ……」


 そもそも再生プログラムとか転生プログラムやら面倒なもの山積みな代物だし。


 これも再生プログラムの一環か何かといったところか?


「あれ、で何で俺が闇の書の主になってほしいとかはやてが関係ないとかそんな話に?」


「守護騎士……ヴォルケンリッターは完全に切り離され、闇の書自体も管制人格は無く、一度失われてます。ですのであなたを新たに主にすることは難しくはありません」


 だからはやては関係ない、と。


 でも、ぶっちゃけそっちはどうでもよかった。


「じゃあ何で俺が闇の書の主になってほしいかは?」


「あなたはその奥底では強い魔力を望み、あまたの女性を侍らせる欲を持ち、それにさきほどのマテリアルとの戦いでも卑怯なことを平気でする狡猾さも持っています」


「ないから! 最後はまぁ、とにかくどっからそんな話が出てきたわけ!?」


 確かに不意打ちとか平気でやって勝ったけど!


 他のはどこから来た。


「それに、あの魔導、エターナルフォースブリザードと言いましたか。一炊の夢とはいえあれほどの魔導、想像しえるものではありません」


「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 取り込まれた時!?


 取り込まれた時なんだな!?


 確かに、ハーレムで最強オリ主とか望んじゃったけどさ!!


「あぁ、エターナルフォースブリザードは相手は必ず死ぬという魔法……非殺傷設定をも無視した魔法を平気で使う残忍さもありましたね」


「ぎゃふうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」


 傷が、傷口が開く!!


 なんて凶悪な精神攻撃をするんだ!?


「強い力を望み、深い欲を持ち、狡猾さや残忍さを兼ね備えた者、魔力こそ少なくともいままでの闇の書の主の中でこれほどの者はいませんでした」


「もうやめて、俺のライフはゼロよッ!!」


 そんなの違う!


 俺じゃないから!!


「それ明らかに勘違いだから!」


 マテリアル作った責任者誰だよ!?


 アホの子うっかり勘違いとか闇の書再生させる気ないだろ!!


「あなたなら闇の書を、その破壊の魔導を十全に使うと私は思ってます」


「もうやめてよっ、この勘違い娘ッ!!」


 なんで俺が闇の書復活させて暴れないといけないんだよ。


 というかオチは海鳴海上大決戦の防衛プログラムが俺に置き換わるだけだろ。


 つまりイコール……


「砲撃はやめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」


「……頭は大丈夫ですか?」


 頭……!?


 頭の心配された……!?


「そ、そんな男を主にしたいの君は!?」


「むしろ狂人な方が闇の書の主に相応しいですね」


 ……あれ?


 何で好感度が上がるのおかしくない?


「どうしても俺を闇の書の主にしたいの?」


「なってくれますか?」


「やだよそんな死亡フラグ!」


 なのはさまに殺されるよ!


「どうしてもですか?」


「どうしてもだ!」


 偽なのはさまは小さくため息を吐く。


「あまりこういった手は使いたくなかったのですが……」


「砲撃!? 砲撃なんだな!?」


 とりあえずと言ったのは忘れてないぞ、大丈夫!


 なのはさまの砲撃を何度も受けてきたんだ、ちょっとくらいだいじょうぶぶぶぶぶぶ……


「…………その予定はなかったのですが、撃たれたいみたいですので、ルシフェリオン」


 そう言って彼女はデバイスを構える。


 ん、あれ撃つ気なかった?


「ちょ、ストップ、撃たなくていい、撃たなくていいから!?」


「いえ、せっかくですのであなたの杖となる我が魔導をお見せしましょう……!」


「ノーセンキュゥーーーーーーーーーーーー!!」


 撃たれました。






「えー、撃たれ損した気もしないけど何だっけ?」


「……復活が早いですね」


「よくボッコボコにされてれば早くもなるよド畜生ッ!!」


 痛みは慣れるって聞いたけど砲撃なんか慣れたくないよ!


「あなたが闇の書の主になる話ですが、なってくれませんか?」


「ならん!」


「仕方ありません」


 だから俺はそんな見え見えの死亡フラグなんか踏まないと言っているのに。


 彼女は少しだけ躊躇いを見せて、言った。








「闇の書の主になってください。だいすきっ」





「…………は?」


 ごめん、耳がおかしくなったかも。


 今、何か理解不能な単語が混じってた。


「えっと、ごめんもう一回」


「闇の書の主になってください。だいすきっ」


「空耳じゃなかったーーーー!!」


 あれか、闇の書に取り込まれた時の!?


「えっ、なんで?」


「あなたは闇の書に取り込まれた際にあらゆる女性にこの言葉を言わせてました。なのでこう言われるのに弱いはず。だいすきっ」


 ごめん、さすがにタイミングは読んでほしい。


 真面目にギャグやられても見てるほうが辛いだけだから……!


 俺は彼女の肩を叩く。


「もう、いいんだ……そんな無茶しないで……」


「では、闇の書の主になって……!」


「ああ、なってやるから無茶するな……」


 俺は涙が出そうになるのを堪える。


 う、ん……あれ?


「ついなるって言っちまったーーーーーーー!!」


 俺から同情心を引き出させるなんて、恐るべし……


「ではさっそく他の魔導師から魔力の蒐集に行きましょう」


「ストップ、ストップ!! ノーカウントだ、ノーカウントッ!!」


 俺は叫ぶ。


「言ったことを早速なかったことにするのはさすがですが、今回は譲れません」


 だから何でそこで好感度上がるの!?


 よーし、待て俺。


 何とか死亡フラグを避けてこいつを納得させるんだ。


 そうすればとりあえずOKだ。


「いいか、今は闇の書事件が終わって緊張が解けきってないんだ、こういうのは時期が必要なんだ」


「……雌伏の時ということですね」


 納得してくれたけど、何でだろう釈然としない。


 とりあえずこの問題を何事もなく永久に先送りさせないと……!


 でもまぁ、せっかくだから。


「なぁ、“だいすきっ”ってもう一回言ってくれ」


「…………」


 冷たい視線。い、いいだろ別に!?


「だいすきっ」


 ま、まぁ、悪い子じゃないし、後々矯正すれば大丈夫だろ。


 ごめん、全部面倒投げた。







 ちなみに割と早く勘違いは解けたがその代わりよく砲撃を喰らうようになった。


 マテリアルSのSはドSのSらしい。


 ***


 マテリアルの娘、星光の殲滅者との出会い。
 勘違いが酷かった……



[19758] 仁義なき星光戦争編
Name: 芳乃義之◆a9a5e664 ID:5215dd41
Date: 2010/06/25 19:58

 どうしてこうなった?


「ナオ君」


「主」


「「どっち?」」


 俺に突き刺さる二対の視線。


 その手にはそれぞれレイジングハートとルシフェリオン。


「あ、あっち!」


 俺は明後日の方を指して叫ぶ。


 そして逃げ……


「バインド!?」


 あっさり捕縛。


「ナオ君がはっきりさせないのがいけないんだよ」


「ええ、主は少しその辺の配慮が欠けてますね」


「あはははは、そうなんだ……」


 笑いしかでないよ。


 もうやだ、こんな生活。












 そもそもの始まりはなのはさまが撃墜され病院から退院してしばらく経った日のことだった。


「ナオ君、私に魔法を教えて!」


「三時間で俺を追い抜いたことを忘れるんじゃねえですよあんたって人は!?」


 今でも俺に深いダメージがあるんだぞ、あの一件。


「ええ、主は忙しいのであなたに教えることはありません」


 と、奥からひょっこりと顔を出す星光さん。


 ちょ、おま、顔出すなよ!?


「ナオ君。その子、誰?」


 自分と同じ顔の少女。


 元々なのはさまがモデルとなって生まれた存在だからそりゃ似るに決まってる。


 性格は似てない……いや、過激な辺りが似ているか。


「星光の殲滅者といいます。彼の守護騎士、みたいなものだと思っていただいて構いません」


「そうなんだ」


 とりあえず納得はしてないが、引っ込めてくれた。


 こいつに関しては突っ込まれると不味過ぎるんだよ。


 存在そのものがグレーを通り越してブラック過ぎる。


「そうじゃなくて、ナオ君に教えて欲しいのは魔法そのものじゃなくてどちらかというと心構えとかそんな感じの」


「なんでまた?」


「入院とかリハビリとかしている時に思ったの、魔法を覚えてみんなの役に立って、うかれっちゃって基礎を疎かにしちゃったな、って。だから原点に戻って」


 そう言って。


「もう一度なのはに魔法を教えてください」


 頭を下げた。


「えっ、ちょ、やめっ!? なのはさま、頭を上げて!?」


 むしろ慌てたのは俺。


 えっ、なんで俺なのはさまに頭を下げさせてるの?


「むしろそれならなおさら主に教わるのではなく訓練校でもやり直してくるべきですね」


 冷静に突っ込む星光さん。


「私はナオ君がいいの!」


 そう言うなのはさまだが、俺はちょっと考える。


 なのはさまが言うように心構えとかならさすがに教えることはできる。


 そしてこれはなのはさまの何かあったらとりあえず砲撃という困った悪癖を治すチャンスでは!?


 ついでになのは“さま”脱出の機会もあるかも!?


 これは、受けるべきだ!!


「よし、それなら俺が教えよう」


「うん!」


「…………」


 そう、これがいけなかったんだ……







「あの、星光さん。何でそんなにくっ付いているん?」


 とりあえずちゃぶ台を囲んで簡単に教えていたのだが、何故か星光さんがくっ付いて来た。


「いえ、別に」


 さらっと流された。


 いや、流しちゃ駄目だから。


「むぅ……」


 なのは様の視線が痛いです。







「なのはさま、なのはさま」


「どうしたのナオ君?」


 やたら近くから聞こえる声。


「そんな引っ付いて書き辛くない?」


 ぴったりと横にくっ付いているなのは様。一応教えるに当たってノートに纏めているが、絶対書き辛い。


「ううん、全然」


 そう言って再びノートに書き始める。


「…………」


 とりあえず反対側の星光さんの視線が痛かった。







「ナオ君、今日はシュークリーム持ってきたの!」


 そう言ったなのはさまの手には袋が。


「お母さんに教えてもらいながら作ったの」


 さすがは喫茶店の娘。


 普通においしかった、おいしかったけど……


「む……」


 味わえませんでした。







「主、クッキーを作ってみたので味見してもらえませんか?」


「ふえっ!?」


 星光さんの言葉に驚くなのはさま。


 俺も驚いた。


「えっ、あれお前料理できたの?」


 だって一回も料理してるの見たことないし。


「初めてですが、多分大丈夫です」


 そつなくこなせるタイプだからな、うん。お約束なガリッ、なんて音がするクッキーじゃないだろ。


 星光さんはクッキーの一つを取り、


「あ~ん」


 と俺の口の前に。


「にゃ!?」


 えっ、あれ何でこんな展開になってるの?


 あ~んなんて初めてだよ?


「主?」


「ああ、うん……」


 俺はクッキーを食べる。


 あれ……おかしいな、何か隣からの視線が痛すぎて味が分からないや…………






「今日はお疲れ様でした」


 今日の授業も終わり、なのはさまを労わったのは星光さん。


 ん、あれ?


 なのはさまもそんな星光さんの様子に首を傾げる。


「では、また明日」


「う、うん……」


 きっといがみ合うことの愚かさに気付いたんだ。


「では主、帰りましょう。一緒に」


「!!」


 全然気づいちゃいねぇ!?


 煽ってる煽ってる!?


 俺はぷるぷると震えているなのはさまを呆然と見ながら星光さんに連れられていった……







「あれ、なのはさまその荷物は?」


「今日は泊まるの!」


 なのはの発言に噴く。


 こいつら、どんどんエスカレートしてやがる!?


「主の迷惑を考えてください」


 今日だけは頑張れ星光さん!


「ナオ君、いいよね!?」


 そう言ったなのはさまだが、俺の視界の隅ではレイジングハートが点滅していた。


 脅してるよ、このお方!?


「あはははははは、しょうがないなぁ……はぁ」


 ごめん、屈した。







「主、背中を流します」


 なのはさまが泊まった日、風呂に入っていると乱入してきたのは星光さん。


「……なななななな!!」


「日本語でお願いします」


 日本語だよ!? そ、そうじゃなくて!!


「なななななに入ってきてるの!?」


「だから背中を流しに」


「一度もそんなことしたことないよね!?」


 というかそんなキャラじゃないよね、君ぃ!?


「だめーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」


「なのはさままで!?」


 えっ、なんなのこの状況!?


 確変!?


 確変かッ!!?


 何があった俺の人生!?


「ナオ君の背中は私が流すの!」


「ではどうぞ」


 あっさり引いた星光さん。


 ……あれ?


「ふぇ?」


 二人首を傾げる。


 そんな俺たちに星光さんは爆弾を放り投げた。


「私は前を洗いますので」


 俺は風呂場から逃げ出した。







「レイジングハート」


「ルシフェリオン」


「ちょ、ストップ、デバイス起動させないで!?」


 それぞれのデバイスがその手に。


「そろそろ決着を付けましょう」


「お互いの得意分野で、だね」


 =砲撃。


「私の方が先にナオ君の側にいたの!」


 あっ、ディバインバスター。


「主の側にいるのが従者の務めです!」


 ブラストファイアー。


「この泥棒猫!」


「元々あなたのものではありません!」


 二つの閃光。


「スターライト」「ルシフェリオン」



「「ブレイカーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」」



「のぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


 二人の収束砲撃魔法にトラウマが!!トラウマががががががががががが……………………








 この後さらにエスカレートしていくが、俺が倒れたことにより二人の争いは沈静化した、したのだが……


 ヴィヴィオの所為で再燃し、さらに過激な戦いになるのだが、それはまた別の話。


****

 この頃からなのはさんはぐるっ、とキャラが変わっていくことになります
 





[19758] アインハルト・ストラトス取材編
Name: 芳乃義之◆a9a5e664 ID:5215dd41
Date: 2010/06/24 19:34

 ―――えー、本日は管理局でも特に人気の高いアインハルト・ストラトス二等空尉に密着取材します。


 ―――よろしくお願いします。


「……よろしくお願いします」


 ―――テンション低いですね。


「ヴィヴィオさんに無理矢理スケジュール捻じ込まれましたから、はぁ……」


 ―――あぁ、道理で。


「……?」


 ―――何で企画が通ったのかとか社内で持ちきりだったんですよ。聖王様が関わっていたなら納得です。


「最近ヴィヴィオさんの嫌な納得感に慣れてしまっている自分が辛いです……」


 ―――聖王様だから、の一言で納得できるのもすごいですよね、あの人。


 ―――やはり聖王だけあってカリスマもあるんですかね。


「そんなカリスマだったらむしろ放り投げて欲しいくらいです」


 ―――苦労してますね。


「出来ることなら辞めたいくらいです」


 ―――聖王様が止まらなくなるので止めてください。


「分かってます」






 ―――この書類の山は一体……?


「始末書です」


 ―――…………冗談ですよね。


「冗談なら幸せだったんですけどね」


 ―――ということはもちろん聖王様の?


「ええ……!」


 ―――ちょっとストラトス二尉! 落ち着いて落ち着いて!!


 ―――し、しかし聖王伝説はやはり本当なんですね。


「その伝説は知りませんけど、まぁ、だいたい、予想は付きますので、多分あってると思います」


 ―――そうですね、せっかくですから聖王伝説の真偽について聞いてみましょう。


「どうぞ」


 ―――では、聖王様がランクDの犯人相手にSSSランクの広域殲滅魔法を撃ち込んだ。


「それでしたら撃ちました。おかげで周囲にまで派手に被害が出ました」


 ―――伝説の中でも眉唾ものの奴だったんですけどね、これ。


 ―――人質を取って立て篭もった犯人を人質ごと吹き飛ばした。


「せめてもの救いは非殺傷設定になっていたことでした」


 ―――容赦ないですね。


 ―――もうこの時点で次を聞くのが怖いんですが。そ、そうですね、ファザコンについては?


「……嫌な事件でした」


 ―――えっ、ちょ、ちょっと待ってください、何があったんですか!?


「すいません、あのことは、私の口からはちょっと……」


 ―――凄い気になるんですけど!?


「ヴィヴィオさんの逸話に関して他に確認したいことはありますか?」


 ―――いえいえ、もうそれはどうでもいいですから、そっちを聞かせてくださいよ!?


「それで、どこまで話をしたんでしたっけ?」


 ―――スルーですか!?


 ―――はぁ、その件はまた後日聞くとして、本日のご予定はどうなっているのですか?


「今日の午前は事務処理で午後からは訓練です」


 ―――これですか?


「ええ、これです」


 ―――聖王様は仕事しないんですか、明らかにこれらはあの人の仕事ですよね?


「任せると進まないんです。それに、これでも最近は少ないほうですし」


 ―――これで、ですか?


「これでです」


 ―――……頑張ってください。


「……そうですね」






「こんにちはー」


 ―――こ、これは聖王様……こんにちは……


「な、なんでいきなり引かれるの……」


 ―――いえ、ほら、噂……いえ、様々な武勇伝で…………


「ヴィヴィオさんでしたら、別によほどのことを言わない限りは大体大丈夫ですよ」


「うぅ、アインハルトが苛める……」


「私は毎日始末書とクレームで苛められてます」


「うっ……」


 ―――仲、いいんですね。


「うん、一緒に遊び行ったりすることもあるしね」


「その度にフォローに回されてますが。というか休日にまで始末書増やさないでください」


 ―――あっ、それと今回の取材にOKを出してありがとうございます高町一尉。


「うん、こういった番組に出てみたいなぁ、とか思ってたけどやっぱり恥ずかしいし、アインハルトの端にでも映ってればいいかなって」


「それで勝手に人のスケジュールをいじらないでください」


 ―――というか恥ずかしいとかいう感情があったのが驚きです。


「もー、私だって恥ずかしいって思うときとかあるよ!」


 ―――例えば?


「パパの前で脱ぐ時とか?」


「今のはカットで」


 ―――問題発言スルーですか。


「慣れてますから」


 ―――嫌な慣れですね。


 ―――それと編集の際にはカットしておきますので。


「お願いします。これでも聖王教会のトップを兼ねてますから下手な発言を公共の電波に乗せるわけにはいかないので」


 ―――あぁ、そう言えばそうでしたね。


 ―――聖王様言われる由縁もそこから来ているのに忘れそうになります。


「今ではすっかり信心も離れてしまっていますし、はぁ……」


 ―――あれ? ストラトス二尉も聖王教会にも身を置いているんですか?


「はい、一応騎士位も授かってます」


 ―――ベルカの騎士!


「えぇ、私自身はどうでもいいんですが、主に政治的理由で」


「っていうかアインハルトって向こうだと上から数えた方が早い位地位上だもんね」


 ―――トップはあなたですけどね。


 ―――しかしベルカの騎士ということはそれなりにお強いんですか?


「強いっていうか、クロスレンジだったら私でも勝てるかあやしいくらい?」


 ―――いやですね高町一尉、あなたに勝てる存在がいるんですか?


「う~ん、実戦なら距離とっての飽和射撃の押し潰して勝てるけど、格闘限定ならアインハルト、私より強いよ」


 ―――……マジ、ですか?


「うん」


「そもそも実戦でそんな状況があるわけない時点でヴィヴィオさんの方が上です」 

 ―――いえいえいえ、聖王様ってオールマイティだけど特に近接戦闘に優れているって話じゃないですか!?


 ―――それより上って十分強いですから!!


「そう言われる割にはあまり近接戦闘しませんが」


「だって纏めて吹っ飛ばした方が実戦だったら早いもん」


 ―――そして大量に無駄な被害を出して始末書の山ですね。


「……ええ」


「あぅ……」


 ―――むしろ高町一尉が大人しくしてストラトス二尉が前線に出れば丸く収まるんじゃないですか?


「えー、それじゃあ管理局入った意味ないのに」


 ―――困った人ですね。どうすれば大人しくなるんですか。


「う~ん、パパと愛欲の日々なら?」


「あの人にそれだけの甲斐性はありません。あっ、今のヴィヴィオさんの発言はカットで」


 ―――はいはい分かりました。





 ―――さて高町一尉にして格闘戦なら勝てないと言わせたストラトス二尉ですが……


 ―――ちょ、見えません、二人とも早くて私も! カメラも! 追いつけません!!


 ―――聖王の右腕は伊達じゃなかった!!


「あー、もう! 広範囲魔法行くよッ!!」


「ッ!! 今日は見学者がいるのを忘れないでくださいっ!!」


 ―――って虹色の光がーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!






 ―――えー、少々事故がありましたが、取材の方を続けます。


「ええと、カメラの人運ばれましたけど、大丈夫ですか?」


 ―――代理が入っただけですから、番組は大丈夫ですよ、ええ!


「……そう、ですね」


 ―――しかし聖王伝説というのを見た気がします。


 ―――さすが聖王様、私たちまで平気で巻き込むとは一味違いますね。 


「好意的に言えば、何事も全力でやっているだけなんですけど、はぁ……」


 ―――SSSランクの全力は誰も耐えられませんからね。


 ―――虹色の世界の先が見えましたよ。


「それは大丈夫ではないですから今すぐ病院へ行った方が……」


 ―――いえいえ、ここで私が帰ったら番組終了しちゃうじゃないですか!


 ―――このままストラトス二尉の私室を見るまでは!


「あっ、アベさん。この人ヴィヴィオさんの一撃で頭を打ったようなので病院へ運んでください」


 ―――えっ、ちょっと、そこの局員さん引き摺らないでくださいよ!


 ―――番組終了しちゃうじゃないですか!


 ―――あっ、ちょ、アーーーーーーーーーーーーーーーー……



 放送終了

 ***

 アインハルトとヴィヴィオを出した結果がこれだよ!
 ナオト不在。



[19758] 女こまし編
Name: 芳乃義之◆a9a5e664 ID:5215dd41
Date: 2010/06/25 19:31

 あれは、不幸な事件だった。


 事件っていうより、なんていうか、災難……?


 そう! あれは災難なんだから!!


 そうだから、うん、そうなんだから……


 いきなりだったからちょっとドキッ、てしただけで……


 その、あんなナオ君でもいいかな、なんて全然思ってないんだから!


 えっ、何でカメラ回ってんの!?


 勝手に回さないでってば!!


 ちょっと、私の話を聞いてってば!!


 早くカメラ止めてよ!!







「こんにちはー」


「こんにちは、ナオ君いるー?」


 その日、なのはは娘であるヴィヴィオを連れてナオトの店にやってきた。


「……あれ留守かな?」


 店内を見回すが、誰もいない。


 なのはにとっては宿敵とも言える星光の殲滅者もいないのだから、首を傾げた。


「でも店は開いてたし……」


 そんな風に疑問に思っていると、奥から物音。


 そのままふらつき、柱に寄り掛かる形で姿を見せるなのはをロリ……幼くした姿の少女、星光の殲滅者。


「高町なのは、あなたでしたか……」


「ど、どうしたの……!?」


 宿敵だが、同時にその実力をよく理解している彼女がそのような無様を晒すことになのはは驚く。


「いますぐヴィヴィオを連れて逃げなさい、早く……!」


 そのまま彼女はガクリと倒れた。


「えっ、ちょっと待って、ナオ君は大丈夫なの!?」


 彼女の身に何かあったのなら必然的に主であるナオトにも何かしらあったと考えるべき。


 なのはの中で焦りを感じる。


 自らの相棒、レイジングハートを起動させようとして……


「あれ、なのは来てたのか?」


「ナオ君!?」


 奥からひょっこりと顔を出すナオト。


 あまりの自然体に思わずぽかんとする。


(あ、あれ……?)


 違和感を感じつつなのはは慎重に聞いた。


「え、えっと大丈夫なの?」


「さっき星光ちゃんにも言われたけど俺は大丈夫だよ」


「そう、なの……?」


「心配性だなぁ、なのはは」


 そう言って笑った。


 その笑顔がいつもより魅力的で、彼女は思わず少しだけ顔を赤くする。


「うん? あれ私のこと今……」


 呼び捨てだった。


 なのはにとって何度言っても直してくれなかった懸念事項。


「どうしたんだ、なのは?」


「やっぱりナオ君いつもより変だよ!」


「そんなことないさ。もし俺が変だとしたらきっと」


 一歩なのはに近付き、


「なのはが俺を変にさせちゃってるのさ」


 そう言った。


「なななななななな何言ってるのナオ君!?」


 顔を真っ赤にして全力で下がる。


 おかしい。


 そうだ、砲撃を撃てばいつも通りトラウマで叫ぶナオ君に戻るはず。


 あまりのパニックに思考が危険すぎる領域に達しているが、なのはは気付かない。


 レイジングハートを起動。


 バリアジャケットに身を包む。


「あぁ、なのはにはやっぱり白が似合ってて綺麗だよな」


「~~~~~~!!」


 カウンターの直撃だった。


 そのまま湯気が出てふらつく。


 そしてノックアウト。


「あぁーーーーーー!!」


 店内に叫び声。


「ヴィヴィオもパパといちゃいちゃするーーーーー!!」


 そう言って走って抱き着いた。


 それをナオトは優しく抱き返した。


「えへへ……」


 嬉しそうに笑う。


「ヴィヴィオは今日も元気でいい子だな」


「うんッ!」


「でも俺としてはもう少し大人しい方がいいかな?」


「そうなの?」


 可愛らしく首を傾げるヴィヴィオ。


「あぁ、ヴィヴィオも小さくたって立派なレディだからな」


「ふぇ……!」


 初めてナオトから女性扱いされてヴィヴィオもまた顔を真っ赤にする。


 しかしナオトのターンはまだ終わらない。


 彼はそのまま軽くヴィヴィオの額にキスした。


「パパからのキス、えへへ……」


 その一撃に彼女は遠い世界へと旅立った。


「ナオト、ちょっと欲しいパーツが……って、何これ」


 店に入るなり、その惨状に驚くアリシア。


「アリシア、今日はどうしたんだ?」


「あーうん、ちょっとデバイスのパーツを見に来たんだけど……」


 そう言いながらも死屍累々とも言える状況に視線が泳ぐ。


 倒れてたり、湯気が出ていたり、違う世界行っていたり。


「何があったの?」


「別に何もなかったよ」


「どう見てもあったってば!?」


 アリシアは思わず突っ込む。


「あぁ、ごめん一つあったな」


 そう言って、アリシアに笑い掛けながら。


「アリシアが来てくれたことだな」


「なななな何恥ずかしいこと言ってるの!?」


 彼女は思わず顔を赤くして動揺してしまった。


 おかしい。


 あのヘタレなナオトはこんなこと言うようなキャラじゃない。


 頭脳派ヒロインとしてすぐに原因を探そうとして。


「アリシアはパーツが欲しいんだっけ?」


「そ、そうだけど……」


 ナオトの言葉に警戒しながらもアリシアは頷く。


「でも俺はアリシアが欲しいな」


「ニャーーーーーーーーーーーーー!!」


 ストレート入ってストライクッ!!


 アリシアは直撃を受けて倒れた。


「そ、そこまでですよ、主……」


 しかし、最初に彼の攻撃を受け倒れた星光の殲滅者はゆっくりと立ち上がる。


「何があったかは知りませんが、これ以上被害が出る前に終わらせます」


 ルシフェリオンを構えながら。


「意地っ張りで可愛いなぁ、星光ちゃんは」


「なななななな何を言っていますかッ!」


 一歩、ナオトは彼女に近付いた。


「それ以上近付くと、ルルルルルルルルルルルルシフェリオンブレイカーですよ!」


 さらに一歩。ナオトは近付く。


「撃たないよ、星光ちゃんは」


 一歩。


「止まってください。止まらないと撃ちます、撃ちますよ」


 しかしナオトは止まらず、もう一歩。


「止まらないと……」


「止まらないと?」


 ナオトの姿はすぐそこだった。


 手を伸ばせば届く距離。


「あ、ああ……」


 震える。彼女の中で分からない感情がごっちゃになる。


 ナオトは優しく彼女を背中から抱き締める。


「俺は星光ちゃんのことがだいすきっ」


 そして耳元に囁いた。


「星光ちゃんは?」


「私は……」


 そう言って星光の殲滅者は、ゆっくりと。


「私も……だいすきっ」


 ゆっくりとデバイスを下ろした。








「これより、緊急会議を行います」


 しばらくして、全員が復帰した後、アリシアは他のメンバーを見渡しながら、宣言した。


「で、いつからこうなってたの?」


「今日、主と会った時にはもう」


 そう言って答えたのが星光の殲滅者。


「昨日は?」


「ジェイル・スカリエッティと飲みに行ってそのまま朝帰りでした」


「朝帰り!?」


「なのははそこに喰い付かない」


 なのはを窘めながら、アリシアは正直に思う。


(いま、犯人でたんじゃ…)


 人物紹介にも何かあったら大体こいつのせいと書かれるほどのジェイル。


 その迷惑度合いは折り紙つき。


「うーん、ヴィヴィオはこっちのパパの方がいいかな……?」


「ヴィヴィオ?」


「な、なんでもないよ!!」


 慌てて首を振った。


「と、とりあえずジェイル君のところに行こっか、今の所一番怪しいし」


「ナオ君は?」


「ん~、バインド掛けて猿轡噛ませておけばとりあえず大丈夫でしょ」


「そ、そのままパパをお持ち帰りしてもいいかなっ……?」


「はいはいヴィヴィオは自重してね」








「で、ジェイル君弁明は?」


「いきなり来て何だね!?」


 すでに臨戦態勢のなのはと星光の殲滅者を後ろに控えさせ、アリシアはジェイルに聞いた。


「ほら、もう犯人だって分かってるんだからとぼけなくたって大丈夫でしょ」


「だから私には話が見えない!?」


 思わず叫ぶジェイル。


「主をあんな風にしたことです」


「あんな風?」


「い、言えないってば、あんなナオ君……!」


 さきほどまでのナオトの行動を思い出して顔を赤くするなのは。


「いまいち話が見えないのだが……」


「ナオトがおかしくなってたの、正直あれはもう別人なくらい」


「そう言われても、私の家を出た時には普通……いや、そうだ、ちょっと待つといい」


 ジェイルは立ち上がると、棚を確認する。


「あぁ、やはりそういうことだったか」


「話が見えないんだけど」


「家を出る前、ナオトが酔い覚ましを飲みたがっていたからね、渡したのだが、いや、すまない別の薬を渡してしまっていたよ」


「……何の薬?」


「惚れ薬、異性が惚れる様になる薬だよ」


「なんでそんなの間違えて渡しちゃうの!?」


「というかそんなのがあることには突っ込まないのですか?」


 叫ぶアリシア、それを突っ込む星光の殲滅者。


 ぶっちゃけアリシアからすればジェイル君だからの一言で解決する。


 安心の納得感。


「……あとでクアットロに頼んで貰おうっと」


「あれ、何か言ったヴィヴィオ?」


「ううん、何でもないよ」


 なのはの言葉にニコニコと笑うヴィヴィオ。


「で、どうすれば元に戻るの?」


「そうだね、魔力が異性を虜にするフェロモンを出すわけだからその魔力を吹き飛ばせばあるいは……」


「じゃあいつも通りだね」


 アリシアは少し、ためいき混じりにそう言った。


「何かすごい引っ掛かるんだけど……」


「まぁ、否定はできませんし」


 そう言いながらデバイスの先をナオトに合わせる二人。


「あっ、ジェイル君もこっちね」


「全力全開……」「集え明星……」


「いや、アリシア!? ここでは私まで当たってしまう1?」


「スターライト」「ルシフェリオン」


「ほらおしおきおしおき」


「「ブレイカーーーーーーーーーーーーーーッ!!!」」


「「ぎゃあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」」


 仲良く吹っ飛ばされました。





 後日、こっそり薬を分けてもらおうとしたヴィヴィオだが、それをなのはに見つかって怒られるのだが、まぁ平和なひとコマということで。


 ***

 出だしはふと気付いたので追加。そのついでに一瞬ティアナがよぎったけど、自重しました。
 「だいすきっ」は何があったんでしょう。
 元々WAKAMEから来たネタでしたのに。小学生が「抱いて」はまずいので、「だいすきっ」と置き換えただけでしたのに……
 どうしてこうなった。



[19758] 涙のホームラン編
Name: 芳乃義之◆a9a5e664 ID:f298d3ec
Date: 2010/06/25 19:56

「ジェイルさん、どうして……!」


「これは私の復讐だよ、フェイト、いやフェイト・テスタロッサ!!」


 混乱を目的とした本局への襲撃。


 それはジェイルの目的に対する目を背けさせるためのパフォーマンスだった。


「復讐……?」


 フェイトは怪訝そうに聞いた。 


 彼は、何を思い、こんなことへ走らせたのか。


「君はアンリミテッドデザイアというものを知っているかね?」


「アンリミテッド……デザイア……?」


 初めて聞く単語だった。


 フェイトはデバイスを構えたまま、油断なく首を横に振る。


「簡単に言えばアルハザードの技術を用いて人を作る計画、その開発コードが、アンリミテッドデザイア」


「でもアルハザードは実在しないはずじゃ……」


「実在しているとも」


 ジェイルは少しだけ自嘲気味に笑う。


「歴史の裏側へ沈められた世界、言ってしまえば私はある意味その世界の最後の出身者になるのだよ」


 名前でしか聞いたことがないのだがね、と付け足しながら。


「管理局の技術の進歩の裏には私のような者がいたのだよ」


「そんな……嘘だ……」


 管理局の真実にフェイトは僅かに落ち込んでしまう。


「嘘だと思うならここを調べてみるかね、管理局上層部との通信ログが残っているからね」


 そうジェイルは笑う。


 実際、ジェイルは何人もの管理局員と繋がっていた。


「他にも、例えばルーテシアも実験素体として私の所に送られた、秘密裏にね」


 その時のことを彼はよく覚えている。


 研究所を管理局員に襲撃され、迎撃したそのしばらく後のこと。


 襲撃そのものは彼にとって当然のように受け入れていた。


 まだ正義感に溢れた局員がいたのかと彼は何となく思ったほどである。


 その男、ゼスト・グランガイツとはまた色々とあったのだが、それはともかく。


 捕らえた管理局員の一人、その局員の生後間もない娘が送られてきた時はさすがにジェイルも眉を顰めた。


 保護するのではなく、違法研究の実験素体として送る。


 それほどまでに管理局は腐っていた。


「でも、どうして復讐なんて……」


 言い方は悪いが、管理局と内通している以上、大抵の問題は裏で処理できてしまう。


 だからこそ、危ない橋を渡る必要はなかったはず。


「……ヒュードラの暴走事故」


「! 母さんの……」


 フェイトの母親であるプレシアが当時開発主任として携わっていた魔導炉。


 しかし起動テストで事故が起き、ナオトとアリシアの二人は時間を移動し、プレシアはプロジェクトFを目指すこととなった。


「くだらない権力争いの一環でね、あれが完成されるのを恐れた一派がいた。そしてそれを妨害するために切り捨てやすい、それでいながら優秀かつ適任者がいた」


「まさか……」


「ハハハハハ、あれは私が引き起こしたのだよ!」


 そう、狂うように笑いながら。


「いつまでもナオトやアリシアと居られると思っていた! 二人に引っ張られながらも楽しかったあの日々が!!」


 叫ぶ。


「それを壊したんだ! 腐れ切った管理局と、そこから生み出された忌々しい力を持った私が!!」


 叫ぶ。


「だから私は誓った!! 管理局への、私を生み出した最高評議会と、二人を殺してしまった私自身への復讐を!!」


 ジェイルは叫んだ。


 自らの想いを全て乗せ。


「でも、姉さんもナオトだって生きてるのに……!!」


「あの時は歓喜したよ、生まれて初めて神に感謝したとも!」


 初めて、初めてナオトとアリシア生存の報を聞いたとき、ジェイルはそれこそ盛大に笑った。


 あそこまで楽しくて、嬉しくて笑ったのは、彼にとって久し振りだった。


「だったら、なんで復讐なんて……!」


 そう、再会した三人は仲良く遊んでいた。


 流れていた時間の差を気にしないかのように、本当に。


「もうすでに賽は振られていたのだよ」


「それでも、止めることはできるはずだった!」


 ジェイルはその言葉に、遠くを見ながら。


「私だって悩んださ、それくらい」


「だったら!!」


「あの事件が、全てを決めてしまった」


「なんの、こと……?」


「高町なのは。彼女の撃墜も私の仕業だよ」


「えっ……」


 フェイトを始めとする多くの人物に大きく影響を与えた事件。


 一時は歩けなくなるかと思われた重傷。


 なのはがほぼ後遺症もなく全快したのも、奇跡とも言われたほどだった。


「もちろん誓って言うが、私の意志ではない。管理局からの依頼だよ」


「そんな……でも、断ることだって……」


「その力が当時にはなかった。私は分かっててナオトの友人を傷付けたのさ」


 あれほど、ジェイルにとって辛いことはなかった。


「で、でもなのはの主治医は……」


 目の前にいるジェイル。


 あの出来事があってナオト達三人は再会したのだ。


 フェイトはそのことをしっかり覚えていた。


「あれが私にできる最大限の償いだった。そのために危険な橋も渡った。正直よくナオト達の前に顔を出せたものだと思っているよ」


 それでも、あの二人は何も聞かずにただ再会を喜んでくれていた。


 それがたまらなくジェイルには嬉しく、同時に辛かった。


「あの事件があって私は覚悟を決めた。二人に顔を出せなくなってもいい、ただもうあのようなことが起きないためなら命だって投げ出そうと」


「……ッ!」


 悲しすぎる話だった。


 違法研究をするジェイル・スカリエッティという人物の、その背景を考えていなかった。


「私は……」


「君は執務官。私は悪の科学者、違ったかい?」


 フェイトはその言葉にゆっくりと頷く。


「はい…………ジェイルさん。いえジェイル・スカリエッティ、あなたを逮捕します……!」


 涙を流しながら。


 ゆっくりとバルディッシュを構え直し。


 フェイトは、宣言する。


「そうだ。それでいい、フェイト・テスタロッサ!」


 ジェイルのその言葉に確信を持って彼女は決意した。


 彼の復讐劇を終わらせる。


 ジェイルを捕まえ、全てを……終わらせる!


 そしてそれを、彼自身が望んでいる!!


「バルディッシュ、リミットブレイク!!」


「……え?」


 彼女の手には、巨大とも言うべき大剣。


 バルディッシュのリミットブレイクフォーム、ライオットザンバーカラミティ。


 フェイトの最大の一撃を放つ、必殺の姿!


「ちょ、ちょっと待った、待ってくれたまえ!?」


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 そのまま彼女はジェイルへと、全力でバルディッシュを振り切る!


 吹き飛ばされるジェイル。


 そして、フェイトは宣言した。


「ジェイル・スカリエッティ、あなたを逮捕します!」


 ジェイルをバインドで拘束し、フェイトはゆっくりと目を瞑る。


「全部……終わったんだね……」


 大丈夫。


 管理局は変わっていける。


 道を間違えていたけど、あなたの意思は受け取ったから。


 これからが大変だが、フェイトの心はとても晴れやかだった……



 ***

 横にあるモニターではこの間ずっとナオトとヴィヴィオの結婚式(sts編参照)が流れています。





[19758] 姉妹談義編
Name: 芳乃義之◆a9a5e664 ID:5593919f
Date: 2010/06/28 18:39

「はぁ……」


「どうしたの、ため息なんて吐いて?」


 フェイトのため息に思わず声を掛けるアリシア。


「エリオやキャロのことなんだけどね」


「あの二人がどうしたの?」


 アリシアは妹が保護責任者をしている二人の子供を思い浮かべる。


 エリオが陸士訓練校に入校し、キャロが保護監察官に就くまではテスタロッサ家で暮らしていた。


 執務官という仕事柄忙しいフェイトに代わってよく面倒を見ていたが、問題はないはずだった。


 母であるプレシアが亡くなり、フェイトも家を空けることも多かったため、実質アリシアの方が接していた時間は長かったが。


「私のこと、態度が少し余所余所しいなぁ、って……」


「自業自得だけどね」


 フェイトの言葉をばっさり切り捨てた。


 アリシアからすれば二人のフェイトに対する評価はこうなっている。


 ちょっと頼りないようでやっぱり頼りになる人。


 尊敬しているが、同時にちょっと困っているとか相談も受けたことがある。


 執務官という職に就き、次元世界を飛び回る彼女は確かに尊敬される。


 その反面、心配性で過保護というか溺愛しているので、二人が困っている姿をよく見かけていた。


「うー、姉さん何か方法ないかな?」


 上目遣いにアリシアを見るフェイト。


 うん、やっぱり私の妹は可愛い。


 完全に同じ遺伝子のはずなのに胸の差が開いているのが納得いかないけど。


 そんな風に思いながらアリシアはフェイトの願いを叶える方法を考える。


(私が言って何とかなる問題でもないしなぁ……)


 距離的に言えばフェイトよりアリシアの方が二人に近い。


 一緒にゲームしたり家事したり勉強見てあげたり。


 少なくてもフェイトより二人のことを知っている気がするとアリシアは思う。


 尊敬って言葉が出る辺りで親近感があまりないってことでもあるのだから。


(要はその尊敬とかそういうのを吹っ飛ばすのが早いかな)


 むしろ駄目な所を見せる位の勢いで。 


 意外とフェイトってそういう駄目な所多いし。


 そうすれば少しはあの二人も親近感が沸くだろうと、アリシアは結論付ける。


 問題は。


「んーその前にフェイトって休み、次はいつ頃取れそう?」


 そう、休日の問題である。


 三人が会えないことには意味がない。


 訓練校で寮暮らしのエリオはまだいい。


 自然保護隊に属するキャロも、物理的な距離とかの問題があるが、休みだけを見ればフェイトに比べればかなりマシ。


 実際何度かアリシアに会いに来てくれることもあった。


 ただ、ここにフェイトの休日を重ねるとなると大変になる。


 執務官という立場はそれこそ長期に渡って家を空けることなんて多々ある。


 実際アリシアがいなかったらエリオやキャロは施設で暮らすことになっただろう。


(ん? あれ、私が一番暇多いの?)


 一応家長なのに。


 ちゃんとデバイスマイスターとして局員のデバイスのメンテナンスとかで毎日仕事してるのに。


 さすがにフェイトの執務官と比べるのは酷だが、決して悪い職ではないはず。


「うーん、この間も違法研究していた研究所を検挙したけど、肝心のジェイル・スカリエッティの足取りは掴めないし……」


 落ち込みながらもフェイトがちょっと難しそうな表情で語るのを聞きながらアリシアは呟く。


「いっそジェイル君を突きだそっかな……」


 フェイトと天秤に掛けたらどっちかなんて一発だし。


 ナオトが気付いてて無視しているのに倣ってジェイルを放っておいたが、この際フェイトに真実を話して突き出そうかと画策する。


「ジェイルさんがどうしたの?」


「あーうんこっちの話、何でもない」


 さすがにそれは最終手段として頭の隅に置いておきながらアリシアは首を振って答えた。


 足取り掴めないと言うが、何度も会ってるのに、と思いながら内心ため息を吐く。


 不謹慎だけどこのネタだけでフェイトの駄目っぷりがよく分かる。


「なのはだって気付いてるのにね……」


「うん?」


 さっきから首を傾げるフェイトが可愛いなぁ、とか思いながらアリシアはさらに悩む。


「とりあえず私の方からエリオやキャロにはそれとなく言ってみるけど」


「お願いっ!」


 そんな期待した目で見ないで!


 お姉ちゃんにハードルを上げさせないで!!


 そんな姉の心の叫びが妹に届くわけがなく。


「やっぱり姉さんに相談してよかった」


 そう嬉しそうに微笑むフェイトの姿に、またアリシアの中でハードルが上がった。


「あははははははは……うん頑張るね……」


 ちょっと虚ろな笑い声が出たけど気のせい。


 可愛いフェイトの頼みに全力全開で頑張らないと、とアリシアは鼓舞する。


 悲しい現実逃避だった。


 とりあえずナオトにこれは愚痴ろう。


 うん、そうしよう。


「そういえばナオトは最近どうしてるの?」


「え、えっと、ど、どうって?」


 そんな風に思っていたらフェイトから話題が出て一瞬アリシアは焦る。


「うん、最近会ってないからちょっと気になって」


「あー、立場柄会わないよね」


 世界を駆け回る執務官とクラナガンにひっそりと立つ一軒の店。


 デバイスのメンテナンスをナオトに頼んでいるならまだしも、それはアリシアの仕事であるため、機会がまったくない。


 むしろあの店にしょっちゅう顔を出すなのはが異常である。


(それも惚れた弱みなのかなぁ……)


 そうすると照れ隠しの砲撃になるのか、とアリシアは思う。


 照れ隠しで砲撃では普通恋どころではないのだが、まぁお互い特に進展もなさそうなのでアリシアとしては放置している。


 アリシア的にはナオトは押したら逃げるタイプだと思っているため、無理に会う理由もない。


 所謂ヘタレ。


「近くを通ったら顔を出したら?」


「うん、そうするね」


 フェイトが頷いた所で、アリシアはふと思う。


「でも何で急にナオトのこと?」


「この前、六課の件で会った時にちょっと話が挙がって」


「理由は分かったけど、いや分かってないのかな、私?」


 友人であるはやてが部隊長となって新たに設立する機動六課。


 それに関してはアリシアもそちらに参加するのは決定しているため、無関係ではないが、かといってやっぱりナオトが話に出る理由が分からなかった。


「うん、はやてが楽しそうにナオトのこと聞いて来たけど私もしばらく会ってないから分からないって言っただけで、話は終わったんだけど……」


「なんだろ、嫌な予感しかしないんだけど……」


「あー、うん……」


 困ったことに二人の共通の友人であるはやてという人物は時々悪ノリが酷い。


「ナオトを引き抜くにもそもそも管理局員じゃないし」


「私もそれを思ったんだけど」


 教導部隊に属しているなのはや、執務官のフェイトを内に加えるだけで相当無茶だが、さすがに管理局員ではないナオトはそういう手は効かない。


 でもはやてのことだからあまりいい予感はしないだろうと、アリシアは思う。


「うーん、まぁ私からもはやてには聞いておくね」


「うん、お願い」


 そうは言ったものの、アリシア的には不安しかない。


 とはいっても友人に迷惑は掛けても害は及ぼさないはずなので、そこまで酷い話にはならないはずだが。


(まっ、いっか)


 何だかんだでナオト本人はともかく、彼の周りは強固だから大丈夫だろう、とアリシアは結論付ける。


「あー、そうそう六課って言えば話は戻るけどエリオとキャロ」


「うん、エリオとキャロがどうしたの?」


 フェイトの反応にアリシアは一瞬きょとんとする。


 ……まさか、あの二人。


「一応聞くけど二人から何か聞いてる?」


「え、えっと姉さん、二人に何かあったの?」


 うん、確定。


 何で私に話してフェイトに話さないんだろうと、アリシアは内心頭を抱える。


 そういう話はフェイトにきちんとするように言ったはずなんだけどなぁ、と彼女はため息を吐いた。


 大体理由は想像付くが。


 実際、キャロが保護観察官になるって話はフェイト大反対で家族会議の末、認めさせたし、エリオもほぼ同じ。


 エリオもキャロもフェイトの助けになりたいと思っているが、フェイトはむしろ逆でただ家に帰ってきた時、おかえりなさいと言ってくれれば満足だろう。


 この辺の両者の見解の違いを毎回調停してきたアリシアを引き入れたいが故に、先にアリシアに話が来るのだろう。


 今回の話自体もつい最近のことだったため、まだフェイトに話をしていなかったのだろう。


「あーうん、ちょっと相談されてね」


「姉さんばっか相談されてずるい!」


 そう言って怒った表情も可愛いなぁ、とかアリシアは思いながらしかし宥めないと思う。


「私だけじゃなくてフェイトの方にも相談してって言っておいたから。保護責任者はフェイトなんだからって言ってあるからその内話をしに来るんじゃないかな?」


「姉さん……」


 厳密にはそのフェイトを認めさせるためにフォローして欲しいって話だが。


「だから二人のお願いもしっかり聞いてあげてね」


「うん、うん……!」


 そう言って何度も頷くすごい嬉しそうなフェイトにアリシアの心はとても痛かった。


 とりあえず騙しているようで悪いが、これは双方の意見を取り入れただけ。


 アリシアはそう結論付けた。


「うん、ナオトに愚痴ってこよ……」


 それくらいいいと思う。


「フェイト、私はちょっと出掛けてくるね」


 アリシアは身支度を整えると、フェイトに外出を告げる。


「あっ、うん行ってらっしゃい」


「行ってきまーす」


 家を出て、アリシアは空を見上げる。


 うん、今日もいい天気。


 そんな風に思いながら彼女は一歩目を踏み出した。




 後日、エリオとキャロの六課参加に関してテスタロッサ家家族会議が開かれるが、それはまた別の話。
 
 ***


 エリオとキャロの好感度はアリシア>フェイトとなっています。
 細かい相談されたり、一緒に何かしたり。
 
 しかしナオト不在なだけでこんなに平和になるとは……







[19758] 少女達との出会い編
Name: 芳乃義之◆a9a5e664 ID:5593919f
Date: 2010/06/30 19:52
「だから私の気が済まないのよ!」


「あーもう、私は気にしてないの!」


 休み時間に廊下を歩いていると、すぐそこの教室から大声が聞こえてきた。


 一つはアリシアの声。


 もう一つは、何だろう、むしろ罵倒されたくなるような……あ、アリサ・バニングスだったか。


「そういう訳にはいかないのよ!」


「何事もなく終わったんだからいいの!」


「それはただの結果論よ!」


 他のクラスだからあまり入りたくなくなかったが、俺は仕方なく顔を覗かせる。


「あっ、ナオトからも言って!」


 目敏く俺を見つけては助けを求めるアリシア。


「待て待てその前に事情を話せ」


 事態がよく分からん。


 つーか、何があった?


「この間の誘拐騒ぎのこと! 私は何もなかったからいいって言ってるの!」


 教室がざわつく。


 俺は少しだけ頭が痛くなってきた。


「とりあえずな、そんな話大声で言うなよ……」


 さすがに誘拐とか何事かと思われるぞ。


「う、うん、そうだよ。アリサちゃんも一旦落ち着いて」


 紫色の髪の大人しい少女、確か月村すずかの言葉に隣でこくこくと頷くツインテール、高町なのは。


 廊下ですれ違った程度には見たことがあるが、彼女が……かの有名な少女。


 今サイン貰ったら後でプレミアつくかな?


 しかし、少し周りの騒がしさが上がってしまったので場所を変える。


「で、そこの第三者、状況プリーズ」


 場所を移した後、俺は月村に話を振る。


 こういうのは主観が入らない方がいい。


「えーと、その前に名前知らないんだけど……」


 困った風に月村。


 あ、そっか。さすがに他のクラスの奴の名前までは知らないよな。


「ナオト・タカサキ。日系なんたら人って奴だから名字のタカサキが後だからな」


 なんたら部分にはミッドチルダという固有名詞が入る。


 が、地球にはそんな国……というかそんな世界は知られてないので、うーん聞かれたらイタリアと答えておくか。


 その前に日系外国人とかこいつら分かるかどうか不安になってきた。


「そうなんだ、私は月村すずかといいます、こっちが……」


「高町なのはです!」


「アリサ・バニングスよ」


 ごめん、お前ら全員知ってる。


 ここで大きいお友達に大人気で、とても本人には聞かせられない内容の話も出回っているとか言ったらどうなるんだろうか?


 ……絶対言えねえよ。


「で、自己紹介したところで話は戻すけど、そもそも誘拐の件とか出てきたけどどういう話になったんだ?」


「えーと、タカサキ君はアリシアさんの誘拐事件の話は」


「知ってる。つーか、当事者」


 まぁ、アリシアの誘拐事件というのは簡単に言えばそこのバニングスと間違えられて誘拐された話になる。


 聖祥の制服を着た金髪の小学生なんて普通何人も該当しない。


 そこで犯人がバニングスと間違えアリシアを誘拐してしまったというのが、件の事件となる。


 ちなみに俺も一緒に誘拐された。


 事件は間違いが発覚後、俺がOHANASHIして平和的に解決した。


 いいな、高町式OHANASHI。便利すぎる。


 この時は、まだ俺は高町のOHANASHIというものを知らなかったのだが、それは置いておく。


「うん、それでねアリサちゃんが謝りたくて」


「そうよ! 私のせいで何かあったりしたら……!」


「何もなかったからいいの! それに誘拐されたことを謝らなくていいんだってば!」


 ああ、大体納得。


 確かにお互いの事情は察せる。


 バニングスは自分の代わりに誘拐されたことを気にしている。


 アリシアは何もなかったし、別に誘拐自体バニングスが悪いわけじゃない。


「それで、大体こんな感じになっちゃって……」


「うん……」


 困った風な二人。


 まぁ、こういう時は大人な俺が仲裁するんだろうなぁ、はぁ。


「ところでバニングスさんや」


「何よ」


「に、睨まなねーで欲しいんですが……」


 俺にはMの趣味はないんだって。


 罵られてもそんなのご褒美でも何でもないんだから!


 ……本当なんだからな!本当なんだからな!!


「もちろん俺も巻き込まれたからには謝罪をくれるよな」


「それは、まぁもちろん」


 よーし、言質は取った。


 俺は内心ガッツポーズ。


「じゃあ一回俺とアリシアに奢りな、それで終了。お互い後腐れなし」


「……は?」


 えっ、割と綺麗な裁き方だったけど、問題あった?


「こういうのは下手に続くぐらいだったら適当に落とし所を着けるのが一番なんだよ」


 お前らより年上なめんな。


 こういったことだったら俺の方が上なんだよ。


 うん、この世界で出来た幼馴染二人に学で負けていることは見えないことにする。


「バニングスもお小遣い大丈夫だな?」


「ま、まぁ別に無駄遣いしてるわけじゃないしね」


「アリシアは?」


「……まぁ、私は別に気にしてないけど、確かにあれこれ言い合うのもどうかと思うし」


 とりあえず二人からこの案での了承が決まったので決定。


 俺は手を何度か叩いて言った。


「じゃあこの件に関しては終了。つーことでどっかちょうどいい店ない?」


「あっ、それならなのはちゃんのお家がいいかも」


 そういや忘れてたけど高町って実家は喫茶店だったっけ。


 いや、本気で忘れてたわけじゃないけど、そんな話あったなレベルだからな、アニメだと。


「それじゃあそれで決定。はい解散」


 俺はそう言って話を完全に終わらせる。


 で、俺に向いた視線が一つ。


「えーと、高町?」


「う、うん……」


 ちょっと困った風に頷く少女。


 ……何かしたっけ?


「どうしたんだ?」


「あっ、うんすごいなぁ、って」


 すごいって。


 俺そこまで凄いことしてないですよ。


 むしろ誘拐事件の方が凄かった。


 無双はいいものだ。


「うん、喧嘩止めなくちゃって思ってたんだけど、どっちも悪くないからどうしたらいいか分からなくなっちゃって」


「そんなもんだって」


 どちらかが悪いなんて話はありがちで、実のところあまりない。


 一方的な悪なんてそうないもんだしなぁ。


「そういう時は両方が納得する話で終わらせればいいんだよ」


「ナオトって何で稀にいいこと言うんだろ……」


 ねこさん黙れ。


「今何かすっごい変なこと考えなかった?」


「そ、そんなことないですよ」


 鋭すぎるだろ。


 エスパーか、お前は。


「そっか、うん……」


 そんなやり取りを他所に何度も頷く高町。


 まさか将来喧嘩両成敗とか言って両方に砲撃撃ったりしないよな?


「あ、あの……!」


「お、おう何だい?」


 気が妙に入った高町にちょっと気圧される。


「名前で呼んでいい?」


「どうぞ」


 高町なのはのよく分かるお友達講座。


 お互いの名前を呼ぶ。


「ナオト君」


 そう高町は俺のことを呼んだ。


 うわ、なんだこれ恥ずかしい。


 呼び捨てされるよりよっぽど恥ずかしいぞ。


「ごめん、やっぱ駄目」


「ええぇ!!」


 本気で驚く高町。


「ナオト……さいてー……」


 すっごい冷たいアリシアさん。


 やめて、俺のライフポイントが削れるから。


 仕方ない、と俺は高町にフォローを入れる。


「いいか、高町。何も名前で呼ぶだけが友達じゃない」


「そうなの?」


 そう言って小首を傾げる高町。


 可愛いとかちょっと思っていたりしないよ?


「渾名、ニックネーム、愛称。まぁどれでもいいけどお互いが納得した呼び方でもいいんだ。なっ、ねこさん」


 殴られた。


 滅茶苦茶痛かった。


「それは私が納得してないから駄目だからね」


「えぇと……」


 少し視線を泳がす高町。


「つまり名前で呼ばなくても、好きな風に呼んでくれればOK」


「えっと、じゃあナオ君で」


 あんまり変わってなかった。


 でもまぁ、さっきより大分マシだった。


「……よかったね、ナオ君」


 ねこさん黙れ。


 そう思ったら殴られた。


 超痛い。このエスパーアリシアめ。


「と、とりあえずこれからよろしくな」


「うん!」





 で、放課後俺のプランに沿って翠屋でゴチになりました。


 あまりにもおいしいし、他人の金だからついつい追加頼んだけどまぁいいよな。


 そこで死にそうになって「お小遣いが……今月のお小遣いが……」なんて呟く金髪なんか見えないんだからね!



 ***

 この頃のナオトはまだ普通のオリ主。
 なのはさまとか星光さんとか聖王とか色々と不在ですし。

 ちなみにアリサの家は金持ちですが、彼女のお小遣いは普通の小学生と大差ありません。




[19758] ティアナ撃墜編
Name: 芳乃義之◆a9a5e664 ID:5593919f
Date: 2010/07/01 20:31
 それはある意味必然の出来事だった。


 恒例の模擬戦。


 なのは対スバル&ティアナの戦い。


 二人はなのはに認めさせるために今までの訓練を無視した戦い方を仕掛ける。


 が、それに対して戦技教導官であるなのはは危険を顧みない行動に。


「少し頭冷やそうか……」


 キレました。


 高まる魔力。


 そして。


「いやああああぁぁぁぁあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああ!!!」


 叫び声。


「ふぇ!?」


 思わず素に戻るなのは。


 訓練ということを忘れ、三人は声のした方を見る。


 ビルの屋上。


「ごめんなさい、マジ許してくださいなのはさまあああぁぁぁあぁあ!!!」


「落ち着いてナオト! 大丈夫だから!」


「そ、そうだぞしっかりしろ!なのはは決してこっちに向けてるんじゃなないんだからな!!」


「ヴィータも落ち着いて!」


 混乱が起きていた。


 発狂するナオト。


 僅かに混乱を隠しきれていないヴィータ。


 そしてそれを必死に宥めるフェイト。


「えぇと……」


 なのははちょっとだけ困ったようにスバルとティアナを見た。


 それぞれが気まずい表情を返された。


 ぶっちゃけなのはも気まずかった。


 素に戻ってしまったのが今だけはとても辛かった。


「く、訓練はここまで! 二人とも撃墜されて終了!」


 とりあえず勝負は決していたので、なのはは宣言する。


「今回の問題行為に関してしっかり纏めて提出すること、以上!」


 そして逃げ出した。


「ピンクの光は、ぴんくのひかりはあああぁぁぁぁぁぁぁあぁぁ!!!」


「おおお思い出させるんじゃねえ!!」


「二人ともお願いだから落ち着いて!」


 とりあえず午後の訓練は中止確定だった。







 ラウンジに気まずい空気が流れる。


 幸いヴィータはすぐに復帰し、さきほど出現したガジェットの迎撃へとなのはやフェイトと共に向かった。


 心配されたが、当人曰く暴れた方がマシらしいとか。


「ナオトさん、大丈夫かな……」


「いつものことだし、大丈夫じゃない」


 心配そうなフォワード陣に反してすごい気楽そうなアリシア。


「あの、確かに訓練を無視するような行動をしました。でも、どうして強くなろうって思ったらいけないんですか?」


「別に強くなろうということそのものは誰も怒っていない」


 腕を組み、壁に背を預けながらシグナムは言った。


「しかし無茶や無謀と履き違えるな」


「……でも!」


 ティアナは叫ぶ。


「私たちって大概無茶とか無謀ばっかしてきたんだよね」


 アリシアは思い出しながら。


「ナオトなんて毎回よくやるし、なのはなんて……」


「……あれか」


 頷くアリシア。


「ちょうどいい機会だし、知ってもいいかもね。例の事件」


「例の……事件?」


「なのはの撃墜事件。シャーリー、ちょうどいいから記録あるから映しちゃって」


「はい」


 アリシアの指示に従って端末を操作するシャーリー。


 モニターに映される入院したなのはの姿。


「これ……!」


「ひどい……」


 包帯を全身に巻かれ、何本もの点滴が打たれている彼女の姿は、とても痛々しかった。


 多くの人物に、陰を落とした事件。


「過度のトレーニングとハードなスケジュールによって蓄積された疲労が原因になったの」


「え……」


 ティアナは呆然と、アリシアのほうを見る。


「主治医、まぁ私の友達なんだけど、その人の見立てだと本来なら魔導師としての人生は絶望的だって話だけど」


 その後、必ず後遺症なく治すと宣言していたことを思い出して苦笑しながら。


 その友人、ジェイルのことはアリシアは強く信頼している。


 今思い返せば指名手配犯である彼にとって病院に潜り込むのは大変だったはずだろうに、とも。


「復帰するのだってリハビリだって山ほどしてたし」


「……」


「基礎を学び直すの! とか何とか言ってナオトの所にも通い詰めてたし」


 ナオトの所から戻ってきた後から頭のネジが一本外れていたが。


 それは今回の話には関係ないため置いておくが。


「データ見せてもらったけど、今回の二人の行動だって最終的になのはに防がれたでしょ?」


「……はい」


「それで次は?」


「……え?」


 アリシアの言葉に、ぽかんとするティアナ。


 少しだけ苦笑して、アリシアは言葉を続ける。


「だから机上で悪いけどこの場で続きしようって話。なのはの代わりが私で悪いけどね」


 そう言いながら彼女は端末を操作する。


 バインドで縛られているスバルと、若干距離を取って構えているティアナ。


 戦術に関しては門外漢だが、アリシアもなのはの戦闘スタイルは熟知しているし、この状況ならばまず負けない。


「っていうか、本当に砲撃撃って終わりだけどね。二人とも対策ある?」


 慌てて首を振る二人。


 実際、スバルはバインドを外せなかったし、ティアナも砲撃を防ぐ術がなかった。


「まぁ、これは模擬戦だからいいけど。失敗とかを次に活かせばいいだけだし。でも」


 そう繋げて。


「実戦で同じことがあって次があるの?」


 告げた。


「シグナムさん。確認取るけど犯人が非殺傷設定守ってることってどれくらいあるの?」


「そうだな。私が相手しただけでも逆に守っているほうが珍しいくらいだ」


「まぁ、つまりそれだけ命の保障がないってこと」


 その言われてティアナの背中に冷や汗が流れた。


 殉職した兄。


 彼のことを嫌でも思い出す。


「私たちは誰にも無茶とかして欲しくないって思ってるの、なのはの基礎中心として訓練もそこから来てるくらいだし」


 そう言って。


「分かったらとっととなのはに言われたレポートを纏める! 以上!!」


「「はい!!」」


 そう言って部屋を出て行くスバルとティアナ。


「待機はまだ終わってないんだがな……」


「別にいいでしょ、それくらい」


 シグナムの呟きにアリシアは笑って答える。


「そうだな、あの三人が遅れを取ることなどあるまい」


「っていうか負けたらそれこそフォワード陣じゃ対処できないし」


「違いないな」


 別に二人とも六課のフォワード陣を信用していないわけではない。


 どちらかといえばなのは達への絶対の信頼。


「しかし悪かったな、憎まれ役をやらせて」


「いいの、こういったことは慣れてるし。むしろさ」


「何だ?」


「あそこで逃げたなのはが問題だと思う……」


 そのアリシアの言葉に、シグナムは何も言えなかった。





 そして、戻ってきたなのはとティアナは無事和解できたのだが。


「この間はドレス見せたのに無反応だもん、ナオ君の馬鹿!!」


(あれ……?)


 話がいつの間にか変わっていることに気付いたが、しかし手遅れだった。



 一時間。


「でね、この間はお母さん直伝のシュークリームをおいしいって言ってくれたの!」


(そろそろ終わらないかなぁ……)


 ちなみに心配で周りにいた面々はすでに全員帰っていた。



 二時間。


「それでね、ナオ君はね……」


(あー、あの星綺麗だなぁ……)


 すでに話を聞いてなかった。





 結局、ティアナが解放されたのは日が昇ってからだった。


 とりあえず彼女は思った。


 もう惚気話は二度と聞きたくない、と。



 ******

 コンプエースを読んで一言。
 砲撃避けたら砲撃喰らってた。さすがなのはさま。

 しかしMMドM言われているナオトを見てたらコンプエースもあって、エクスタシーナオトなんて思いついてしまった。
「そうそう。俺最近砲撃にはまっているんだよなー」
「よっしゃ、こいやーーーーーーっ! 砲撃カモーーーーーーーン!!」
「砲撃いやっっっほーーーーーーーぅ!!」
「さあ、逝くぜーーーっ!ヘイ、砲撃カモーーーーーン!」
「感じる……これが俺のエクスタシー!!」

 なんだこれ。



[19758] ナオト・タカサキ取材編
Name: 芳乃義之◆a9a5e664 ID:5593919f
Date: 2010/07/01 20:30

 ―――本日は、かの聖王様の父親として悪名高いナオト・タカサキ氏の取材に来ています。


「この間は大丈夫だったのか……」


 ―――心配してくれてありがとうございます。ちょっと色々ありましたが無事現場に復帰できました。


「そっか……」


 ―――鬼畜と名高いですが、意外と優しいんですね。


「ちょ、ちょっと待った、鬼畜って何!?」


 ―――有名な話じゃないですか。高町親子とか特に。


「冤罪、冤罪だからな!」


 ―――あっ、この近くに親子丼のおいしい店があるんです、経費で落ちますし、お昼に如何ですか?


「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


 ―――……軽いジョークだったんですけどね。


 ―――もしかしてこれは意外と真実だったりするんですかね。


「そんなわけありません」


 ―――こんにちは、えーと。


「あぁ、私はせいこ……いえ店員Aと呼んでください」


 ―――お若いですね。


「そうですね、そろそろ完全に下り坂な誰かとは違いますので」


 ―――どこかで見たことある気がするんですが……


「気のせいです」


「ふぅ、何とか復帰完了……」


 ―――お帰りなさい。


「まったく事実無根なのに、まったくもってどこからそんな話が上がったのやら……」


 ―――色々話題に挙がるからだと思います。


 ―――聖王様の関係で。


「ヴィヴィオって何であんな自重しない子に育ったんだろうなぁ……」


「そもそも育ててないじゃないですか」


 ―――確か聖王の遺伝子が組み込まれた人造魔導師になるんでしたっけ、聖王様は。


「まぁ、公然の秘密だからなぁ……」


 ―――ある垂れ込みですが、聖王様と式を挙げたとか。


「どこだよ、その垂れ込み!?つーか数の子だな、数の子なんだな!!」


「あれはただの子供のごっこ遊びなので大したはなしではないです、ええ」


 ―――あの、店員さん、それならなんでデバイスを構えているんでしょうか。


 ―――しかもどこかで見たことあるデザインなのですが……


「ただのやり場のない怒りです」


 ―――そ、そうですか。


「それにしても本当、ヴィヴィオには困りましたね」


「少しは大人しくなってほしいなぁ」


 ―――それはきっとタカサキさんの今後に掛かっています。


 ―――ぜひ頑張ってください。管理局のために。


「責任重ッ!!」


 ―――以前お会いした時もそれほど酷い性格ではなかったので大丈夫ですよ、きっと。


「あの子も外面はいいですし」


「代わりに倫理観が致命的だけどな」


 ―――局員としてそれはどうなんでしょうかね。


「人材不足の弊害でしょう」


 ―――人の足りなさには相変わらず管理局の悩みですからね。


「不景気で失業者続出の日本に言ってやりたいなぁ」


 ―――97管理外世界ですか。


 ―――確かタカサキさんを始めとする有名人の多くがあそこの出身者でしたね。


「……俺って有名人のカテゴリなの?」


 ―――主に聖王様効果で。


 ―――噂によると管理局でも色々とマークされているそうですし。


「マジですか?」


 ―――マジです。


 ―――と、本題を忘れるところでした。


「本題?」


 ―――ええ。


 ―――ずばり関係者が口を閉ざした事件を当事者から語ってもらおうと。


「ブルブルブルブルブルブルブル」


 ―――タカサキさん?


「世界はこんなはずじゃなかったのに……ははは……」


 ―――壊れましたね。


「まぁ、あれをある……彼の口から語るのは少々酷でしょう」


 ―――店員さんも知っているんですか?


「……嫌な事件でした」


 ―――貴方もですか!?


 ―――その、語って貰えないでしょうか?


「……嫌な事件でした、としか言いようがありません」


 ―――そ、そこまで言うんですか……


「あぁ、刻が見える……ははは……」


 ―――タカサキさんは大丈夫なんでしょうか。


「……ちょっとお待ちください」


 ―――えっと、店員さん。タカサキさんを奥に連れて……


 ―――ってなんか今凄い音がしました! ドゴンッって!!


「えーと、お待たせ」


 ―――な、なにがあったんですか……


 ―――こ、こちらまで轟音が聞こえてきましたよ?


「ちょっと砲撃を少々……」


 ―――え、えぇと?


 ―――砲撃を少々、ですか……?


「あるじ……いえ、店長はすでに撃たれ慣れているのでタフなのです」


 ―――嫌な慣れですね。


「その半分はこいつだからな……」


 ―――魔導師なんですか、店員さん?


「一応砲撃を得意しています」


 ―――……性格は似てないですけどなんか被ってませんか。


「あ」


 ―――あ、ってなんですか、タカサキさん。


「ルシフェリオン、セットアップ」


 ―――デバイス出してど、どうするんですか?


「パイロシューター」


 ―――魔力弾撃たないでください!


 ―――ダメージが地味に痛いじゃないですか!!


「まぁ、こいつなのはさまと一緒に見られるの嫌がるし」


 ―――はぁ、そうですか、ってなのは……さま?


「あーうん、トラウマで反射的に。昔は違ったんだけどなぁ」


 ―――遠い目!?


 ―――本当、あのエースオブエースと何があったんですか!?


 ―――こちらが掴んでいる情報ですと幼馴染だとかいう話ですが。


「子供の頃にちょっとな」


 ―――背中が煤けてますよ……


「さっき砲撃喰らったからなぁ……」


 ―――そういう物理的な話じゃなくてですね。


 ―――まぁ、でも嫌いじゃないんですよね?


「……ノーコメントで」


 ―――男らしく言っちゃいましょうよ!


 ―――なんならここだけのオフレコでいいですよ!!


「下手なこと言うと隣からルシフェリオンブレイカーが飛んできそうだし」


「主が私のことを理解してくれていて嬉しいです」


「呼び方言い直せよ!?」


 ―――……実はそういう趣味なんですか?


 ―――ご主人様~、とか言われるのが実は好きなんですか?


「ねぇよ!?」


「主が望むのなら……その、ご主人様、と」


 ―――……やっぱり鬼畜ですね。


「なんで俺がそう呼ばれないといけないんだぁぁぁぁぁ!!」


 ―――走って行っちゃいましたね。


「主はヘタレなので」


 ―――そうですか。


 ―――タカサキさんが行ってしまったので、店員さん。最後に一言どうぞ。


「当店ではデバイスの修理から販売まで手広く行っています。ぜひお気軽にお越しください」


 ―――見事な棒読みですね。


 ―――それでは、みなさんまた会いましょう!!


 ―――しかし、結局あの事件を聞けずじまいでしたね……


 ***

 取材編第二回。
 時系列的にはアインハルト編後になります。
 傍から見れば鬼畜ですよね、彼って話。

 次回以降の更新はしばらくアテにしないでください。
 休止、とまではいかないですが、かなり遅くなります。




[19758] 月明かりのアリシア編
Name: 芳乃義之◆a9a5e664 ID:5593919f
Date: 2010/07/02 23:06

 月明かりだけが照らす夜。


 彼女の重さを肩に感じながら、俺は空を見上げる。


「ごめんね、ナオト……」


 辛そうな声で、彼女―――アリシア・テスタロッサは呟いた。


「謝られてもな」


「うん、ごめん……」


 また謝った。


 ここまで弱気なアリシアを見るのは二度目だ。


 一度目は確か、海鳴に来て間もない頃だった。


 頼れるものがない状況は、さすがのアリシアでも堪えたのか、こんな風に一晩弱気だった。


 あの日も、こうやって一晩一緒にいて、肩に頭を預けていた。


「フェイトには伝えたのか?」


「あはははは……実は言ってなかったり」


 少しだけ冷や汗を掻いて答えるアリシア。


 ……この時期でそれはまずいだろ。


「ったく、ちょっと念話で伝えるぞ」


「お願い。あっ、フェイトに何か聞かれても何も聞かないでほしいって言って」


「はぁ……」


 俺はため息を吐くと、フェイトに念話を発信する。


『フェイト、聞こえるか?』


『ナオト!? ごめん、今ちょっと忙しいからまた後で!!』


 本当に大変そうな声だった。


『ストップ、どうしたんだよ一体?』


『姉さんがいないの!!』


 ……ああ、今さっきフェイトに伝えてない言ったもんな、このねこさん。


 フェイトも今は尚更不安がるだろうし、仕方ない。


 意外とフェイトもアリシアに劣らず結構シスコンだし。


『それなら今俺のところにいるから気にしなくていい』


『……えっ、そうなの?』


 不意を突かれたのか、ぽかんとした声が聞こえてきた。


『本人からは何も聞かないでほしいって』


『……そっか。ごめんねナオト、姉さんのことお願い』


 真剣な声で。


 フェイトはそう言った。


『フェイト?』


『私の前じゃ絶対に姉さん何も言わないから。だって私は姉さんの妹、だから』


 そう言ったフェイトの声が、あまりにも寂しそうに聞こえてしまう。


『それじゃあ、おやすみナオト』


『あ、ああ……』


 すぐに元通りの声色に戻ってしまい、俺は曖昧に頷きの声を出してしまう。


 何だか変な会話だった……


「ナオト……?」


「フェイトには伝えたぞ」


 こういう時念話が使えないアリシアは不便だ。


 って、そういえば。


「携帯電話は?」


「あー、多分置いてきちゃったかも」


 携帯電話を携帯しなかったら意味ないだろ。


「それでフェイト何か言ってた?」


「よろしく頼まれた」


「フェイトの前ではいつも通り振舞ってたんだけどね、やっぱ無理だったかな……」


 ため息を吐きながらアリシアはそう呟く。


 フェイトもそうなんだが、アリシアも結構不器用なんだよな。


 生き方が正直な所為か、ふとしたきっかけでぶつかりそうになる。


 それでもしっかり自分でどうにかしてるのはさすがなんだが、今回みたいな場合はさすがに彼女のメンタルでも耐えられなかった。


「何かお前らは分かってるけど俺にも説明しろよ」


「ただの麗しい姉妹愛」


 そう軽口を叩くが、いつもよりキレがない。


 内心ため息が出そう。


「ナオト、寒い」


「毛布使うか?」


「うん」


 そのまま俺たちは二人で一つの毛布。


 昔もこうやって、アリシアと二人で一晩過ごしたなぁ、と思う。


「暖かいね」


「毛布一枚でか?」


「ううん、ナオトが」


 そう言って、アリシアは目を瞑る。


 穏やかな表情。


 普段からこれだけしおらしい方が、いやそうしたらフェイトみたいになるか。


 しかしそれにしても、無防備すぎる。


 年頃の娘さんとしてどうなんですか、と言いたくなる。


「アリシア、男女七歳にして同衾せずって言葉があってな」


「誤りだけどね、正しくは席を同じくせず」


 ……うわーん。


 これだから天才は。


「でも、うん、そっちの方が今はいいかな……」


 アリシアはそう呟いてから。


「ねぇナオト、キス……してみる?」


 爆弾を落とした。


 俺はぽかんとしてアリシアを見る。


 待て、慌てるなこれはアリシアの罠だ。


 その柔らかな唇、じゃなかったその巧みな口が……って卑猥に聞こえる、じゃなくてナオトさんはそんな見え見えの罠には引っ掛からないですよ。


 落ち着いている落ち着いている、よーしよしよし。


「ん……」


 目を瞑ったままのアリシア。


 視線は自然と、その唇に吸い寄せられてしまう。


 転生して幼い頃は特になかったが、最近では少しずつ性欲が沸き始めている。


 前世では女性に関して縁もなかったのに、この状況。


 ごくりと、喉が鳴る。


 俺はゆっくりと目を閉じ。


「…………」


 何もしなかった。


 結局、この一線を越えるのがどうしようもなく怖くなってしまった。


 ……本当にオリ主ならもっと上手くやれるのにな。


「……バカ」


 アリシアの声が微かに聞こえる。


 つーか聞こえたからな。


 むしろ聞こえるように言っただろ、ねこさんめ。


「ヘタレ」


「ヘ、ヘタレじゃないやい!」


 そう強がって見せるが、ごめん俺もヘタレたと思ってる。


 絶対言わないが。


 ヘタレを認めるのって男として無理。


「うん、でも、そんなナオトだから安心できるんだよね……」


 そう言いながら毛布で少しだけ顔を隠す。


 あーそうですか、俺は安全なんですね、男としてどうなんでしょうね、それ。


 そこまで言われたらやってやるよ、やってやるさ。


 男の意地が掛かっているんですよ、これ。


「ナオ……!?」


 俺はアリシアの手を掴み、彼女に唇を重ねる。


 生まれて初めてのキス。


 唇を重ねるだけの軽いキスだが、それでもやっぱりただ触れるのとは違った。


「うぅ……」


 顔を離すと、顔が真っ赤なアリシア。


「……バカ!」


 そしてそのまま毛布ですっぽり顔を隠してしまった。


 俺は無言でゆっくりと自分の唇をなぞる。


 うん、多分俺の顔も真っ赤だ。


 今夜は、眠れそうにない。


 俺は月を見ながら、そう思った。






「あっ、姉さんお帰り」


「ごめんねフェイト。お母さん亡くなって間もないのに」


「ううん、私は姉さんの胸でいっぱい泣いたし大丈夫だから」


「あはは……やっぱりお見通しなんだ……」


「姉さんはナオトの胸を借りて泣いたんだよね?」


「あーううん、ナオトに元気貰いすぎた、かな」


「姉さん、顔赤いけど大丈夫?」


「大丈夫だから!」



 ***

 更新頑張りました。本当に忙しくなるのに。

 アリシアさんが10万pvと感想100を前に本気を出しました。
 いつ頃かはアリシアがラストにちょろっと言っています。
 いや、何故か途中で挟めなかったんです。




[19758] 七夕編
Name: 芳乃義之◆a9a5e664 ID:5593919f
Date: 2010/07/07 22:11

『ナオ君、起きてる?』


 夜遅く、なのはさまからの念話。


 こんな時間に念話を送ってくる自体、そうそうないからちょっと気になった。


『何かあったのか?』


『う、うん、実は外に出られるかなって……』


 外に出られるかといえば出られる。


 ただし、よくはない。


 ぶっちゃけ孤児院という環境上、この時間だと抜け出すという手段しかない。


『もちろん無理だったら諦めるけど……』


 少しだけ寂しそうな声。


 どういう訳か、なのはさまは俺に外に出てほしいらしい。


 ……まさか闇討ち?


 いやいやなのはさまだったら正面から正々堂々全力全開で俺を吹っ飛ばせる。


『……ちょっと待ってろ、すぐ出るから』


 そうなのはさまに告げて孤児院を手早く抜け出す。


 実を言うと孤児院を抜け出すのは常習犯のため、慣れていたりする。


「ナオ君、こっちこっち」


 小さな声で呼びながら俺に手を振るなのはさま。


 バリアジャケット姿でレイジングハートを片手で持ちながら。


 俺の足が止まる。


「まさか……闇討ち!?」


 くそ、なのはさまの性格からしてそういったことはしないと思ったのに。


 むしろやるとしたら正面からディバインバスターだと思ったのに。


「違うってば!!」


 顔を真っ赤にして叫ぶなのはさま。


 しかし俺は騙されない。


 その手のブツが全てを物語っている。


「騙されない、俺は騙されないからな!」


「うぅ、何でそんなに避けるのかなぁ……」


 お前俺への数々の所業を忘れたとは言わせないぞ。


 この、悪魔め……!


 俺は警戒を強めながらも、なのはさまへ今回の用件を聞くことにする。


「で、なのはさまは俺を呼び出して何の御用でしょうか?」


「ナオ君との距離が遠くなってるよぉ……」


 そんな呟きが聞こえるが無視。


 てめぇ、この間のスターライトブレイカーとか忘れてないからな。


 ジュエルシードごと俺を吹き飛ばしやがって。


 今なら原作であれを喰らったフェイトに心底同情できるわ。


 ちなみにアリシアが生きていたことによる盛大なバタフライ効果でフェイトはスターライトブレイカーを撃たれていない。


 だってジュエルシード争奪戦ほとんどやらなかったしな、なのはさまとフェイト。


 フェイトも聖祥に転校してきてもうなのはさま達とも仲良しだが。


 それはともかく。


「あのね、ナオ君とこれからお出掛けしたくて」


 なのはさまの発言に俺は空を見上げる。


 満天の星空。


 誰がどう見ても夜、それも遅い時間だった。


「子供は寝る時間ですよ」


「ナオ君も同い年なの」


 残念ながら精神年齢では大人です。


 ただしお前らの所為で大人のプライド粉々だけど。


「そうじゃなくて今日は特別なの!」


「特別?」


 俺はそう言われて思い返す。


 そう言われても、何かあったかと空を改めて見上げて、納得。


 空に流れる星の河。天の川。


 7月7日、彦星と織姫が一年に一度だけ逢える七夕の日。


「もしかして星を見たいとか?」


「うん!」


 俺の答えに嬉しそうに頷くなのはさま。


「他にメンバーは?」


「ナオ君だけだけど……」


 何で俺だけ?


 テスタロッサ家の乱が絶賛継続中なので、同じ孤児院にいるフェイトとかにも念話で話をすればいいのに。


 そうじゃなくても携帯電話を持ってないアリシアはともかく、アリサやすずかも誘えばいいのに。


「まぁ、抜け出しちゃったし、付き合うけどさ」


「えへへ……」


 嬉しそうに笑うなのはさま。


「で、どこで見るんだ?」


 俺はざっと候補を考える。


 海鳴公園とかあまり周りに建物もないし、見上げるのにいい場所だし、あるいは山のほうに行くのもありかもしれない。


「実は特等席があるの」


 そう笑って、俺の手を取るなのはさま。


 そして彼女の体から漏れ出すピンクの光。


 なのはさまの魔力の光。


「お願い、レイジングハート」


 彼女の体が浮かび上がる。


 そしてそのまま釣られるまま俺の足が地面を離れ、微かな浮遊感。 


「ストップ、今ねこさんパンツァー持って来てない!」


 あれないと空で浮くことすら出来ないのに。


 万が一なのはさまが手を離したら地面へと落下だぞ!


 この高さならまだいいけど、さらに上空行ったらアウトだぞ!?


「……じゃあ絶対離さないでね」


 なのはさまはそう言って、俺を掴んだまま高く、空へ飛ぶ。


 海鳴の街並みが眼下へ広がっていく。


 そして、視線を上げれば。


「すごいね……ナオ君」


 手を伸ばせば届きそうな星々の光。


 その一つ一つが輝き、川を作り出す。


「……」


 俺はただ呆然と天の川を見上げる。


 夜空を見上げることはあっても、ここまで感動したことはなかった。


「綺麗だ……」


「ふぇ!?」


 特等席とはなのはさまもよく言ったものだと思う。


 魔法という地球にはない技術。


 それを使って初めて来れる、特別な場所。


「確かに特等席だな……」


「うん……」


 手を取り合って。


 俺たちはただ空に流れる川を見上げる。


「ナオ君は何か願い事した?」


「まったく」


 そんなこと言ったら微妙そうな顔をされた。


 しかし実際、転生した分の年齢が加味されていることもあって七夕とか今更だし。


 アリシアとかフェイトを引っ張りながらノリノリで短冊に書いてたけど。


 アリシアは見せてくれなかったが、フェイトは恥ずかしそうにはにかみながら見せてくれた。


 母さんと姉さんが仲直りしてくれますように、と。


 テスタロッサ家に関してはプレシアさんの自業自得感はするが、まぁ俺も早く仲直りしてくれることを願っている。


「なのはさまは?」


「……内緒だもん」


 顔を赤くしながら恥ずかしそうにそう言った。


 お前もかよ、なのはさま。


 まぁ、願い事なんて口にするのも恥ずかしいもんな。


 しかし、そういえば。


「スターライトブレイカーって直訳で星の光を破壊する、なんだよな」


「な、なんでこのタイミングでそんなこと言っちゃうの!?」


 なのはさまが怒ってしまったので星をのんびり眺める雰囲気ではなくなってしまった。 


 いや、ごめん。さすがに俺も悪いと思う。

 ***

 水樹奈々のアルバム聞きながら別の書いてたらふと今日が七夕だと気付きました。やっつけ2時間。

 ちなみにこの頃はまだSLBによるナオトのトラウマも浅い方。ネタに出来るぐらいには。



[19758] ねこさんパンツァー開発秘話編
Name: 芳乃義之◆a9a5e664 ID:5593919f
Date: 2010/07/08 18:36

「君の事は馬鹿だ馬鹿だと思っていたが、私は今本気で思ってるよ!?」


「いやぁ、照れるなぁ」


「褒めてない!!」


 でも馬鹿はある種褒め言葉だと俺は思うよ。


「うーん、でもナオトが馬鹿なのは今さらだし」


 と、こちらはアリシア。


 我が友人たちは容赦がないと俺は思う。


 俺、天才少年とか巷で呼ばれていたんだよな?


 まぁこいつらはそれを上回るスペックなのが俺涙目なんだけど。


「しかし二人ともこいつの素晴らしさが理解できないのか……」


 その手にある俺が初めて自作したストレージデバイスを改めて見る。


 70cmほどの柄に先端に取り付けられた球状のコア部分。


 コア自体は外装に覆われ、なんというかでかいマラカスのような形になっている。


「しかしこのデザインといいパンツァーファウストみたいだね」


 ジェイルの言葉に俺は成る程と思う。


 たしかにでかいマラカスよりよほど的を射ている。


「しかしこのままだと少しラブリーさがないな」


 だってそれだとまんま質量兵器みたいだし。


 俺はそう思って先端に猫の絵を描き加える。


 手早く仕上げたが中々可愛い猫の絵だ。


「よし、こいつは今日からねこさんパンツァーと」


 言い切る前にアリシアからねこさんパンツァーを奪われてそのまま殴られた。


 無駄に頑丈に作ったから痛かった。


 くそぅ、ちょっとしたお茶目なのにこの前のことまだ根に持ってやがる。


「今のはナオトが悪いけどね」


「そう言ったジェイルだが実は密かに思い出しているのであった」


「ジェイル君……!」


「冤罪だ!」


 ねこさんパンツァーをジェイルに振り下ろすアリシア。


 ついでだからアリシアにはねこさんパンツァーの耐久力テストをやってもらうか。


 鈍器じゃなくてデバイスなんだけどな、あれ。


「ナオト、これはもうストレージではなくアームドデバイスだ!」


 ねこさんパンツァーで殴られながらジェイルは叫ぶ。


 大事なことだから何度でも言うが無駄に頑丈だし。


「死ね、死んじゃえッ!!」


「私はナオトと違って繊細なんだ! 死ぬ、死んでしまう!!」


 アリシアがそろそろジェイルを撲殺しそうだった。


「ご乱心だ、アリシアがご乱心だ!?」


「止めてくゴフォゥ!!」


 全力で殴り飛ばされるジェイル。


 そのまま倒され、ピクピクと小さく痙攣するだけで動かなくなった。


「ナオト……?」


 そのままゆっくりとこちらを見るアリシア。


 えっ、あれ、こっちに飛び火した…………?


 ねこさんパンツァーに僅かに付着した血。


 ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!

 とりあえずジェイル死んだしもうsts終了のお知らせだぜやったね確かプロジェクトFもジェイルが関わったからフェイトも生まれなくなっちゃたね第一期も終了じゃんはははプロジェクトFがないならエリオもいないじゃんつーかキャロも保護されないしライトニング分隊どうするんだよってジェイルいないから機動六課結成されないねヴィヴィオも生まれねープレシアさんジュエルシードどうするんだろあれそういえば空港火災でギンガ誰が救助するんだろいややっぱりジェイルいないなら起きない可能性もあるのかそれより数えると登場キャラが一気に少なくなるじゃないかあーははははははむしろ最悪闇の書事件で地球終了のお知らせじゃねさすがアリシア一瞬で全てのフラグ砕きやがったあれ戦闘機人もジェイルがかかわっているんだっけそれならスバルもギンガもいないかもだし何だこれジェイルを最速終了のお知らせで全部終了のお知らせだったのかよあはははははははははははははこれはもう叫ぶしかねぇ!!


「やった第三期完ッ!!」


 つーかむしろ!!


「リリカルなのは完ッ!!」


「ナオトは落ち着いてってば!!」


「ねこさんパンツァァァッァァァアアァァァ!!?」


 殴り飛ばされました。









「まぁ、こんな感じで阿鼻叫喚だったんですよ」


「そ、そうなんだ……」


 引き攣った顔のなのは。


 お前がねこさんパンツァーの由来を聞かせてくれなんて言ったのに。


 本当に、今思い出しても酷い話だった。


「でもなんで猫を描いたの?」


「そんなのこの間ジェイルとアリシアのスカートをパンツメクレェェェェェ!って叫びながら捲った時にな」


「……うん」


「スカートの中がねこさんだったんだよ、とても可愛らしい」


 俺はその時の光景を思い出しながら、小さく頷く。


 隣に座っていたなのははゆっくりと立ち上がる。


 さっきから持ってたねこさんパンツァーをこちらに構えながら。


「あの、なのはさん何でデバイスを向けているのでしょうか?」


 そしてピンクの光が集まっているような。


 もしかして砲撃?


 いやいや、なのはがそんな危ないことを人に向けてやるわけ……


「ナオ君、少し頭ひやそ」


 えっ?


 全力全開で砲撃で吹っ飛ばされました。


 いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!






 で、後日。


「おはようございますなのはさま!」


「ふぇ!?」


 あはははははは、無理無理。さすが某カード蒐集魔法少女を見習え言われるなのはさま。


 俺ごときのようなオリ主(笑)が主人公様に適うわけないじゃないか。


 オリ主ってなんだろうな?


「あっ、荷物持つッス!」


「なのは……」


「なのはちゃん……」


「違う、違うのアリサちゃん、すずかちゃん!お願いだからそんな引かないで!?」


「そ、そうよね、ごめんねなのは」


「う、うんごめんねなのはちゃん」


 何度も頷くアリサとすずか。


 その姿になのはさまも小さく安堵の息を吐く。


 しかし。


「なのはちゃんがどんな趣味でも私たち親友だからね」


「ええ、私たちは優しく見守ってるからね」


「にゃあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
 

 朝の海鳴の街になのはさまの叫びが響いた。


 ***

 まだなのはさまのターン。

 とりあえず酷い話でした。
 あの長文は自分でもあれが限界です。無理すぎる。
 こうしてなのはさまは悲劇のトリガーを引いてしまった。
 ナオトが悪い気がしないこともないが。




[19758] 幼馴染ズ+1お出掛け編
Name: 芳乃義之◆a9a5e664 ID:5593919f
Date: 2010/07/09 07:11

「あっ、ナオトこっちこっちー!」


 待ち合わせ場所に着くと大げさに手を振るアリシア。


 あいつはいくつになってもあの辺は変わらないな。


「おっすねこさんにフェイト」


 小さく手を振り返すと、それに合わせてアリシアの隣にいたフェイトが小さく手を振り返してくれた。


 アリシアやなのはさまにしてもフェイトみたいな慎ましさは必要だと思う。


 まぁ、フェイトもある一点に関してはまったく慎ましくないが。


 どことは言わない。


 ちなみに星光さんは冷静だが物騒でもあるのでもちろん除外。


「もう、いつまでもねこさんじゃないもん!」


 相変わらずねこさんと呼ばれるのを嫌うアリシア。


 愛され続ける渾名なのに何でそんなに不満なんだか。


「よし分かった、そこまで言うなら俺も一考しよう。で、今日は?」


「黒レースだけど……」


 あっさり教えてくれたアリシア。


 ねこさんじゃないアリシアは色々と怒られそうだぞ、まったく。


「ね、姉さんッ!?」


「あっ…………」


 フェイトの声にアリシアも自分のミスに気付いたが、後の祭り。


 もうすでに今日のアリシアのスカートの中を俺に知られてしまった!


「ナオト、ねこさんパンツァー」


 俺のデバイスを要求してくるが、誰が撲殺されると分かってて渡すか!?


 いつまでもほいほい渡す俺だと思うなよ!


「すまない、少し遅れてしまった」


 ちょうどいいタイミングで今回遊びに行く最後のメンバー、ジェイル。


 以前、なのはさまの入院をきっかけに再会し、こうしてたまに一緒に遊びに出掛けたりする。


「ジェイル、そこのねこさんだけど今日から黒レー」


「フェイト、ジェットザンバー」


「やっぱり何でもねーです」


 ごめん、目の前で大剣が見えてたらさすがに無理。


「つーか何でそんなあっさりアリシアの言うことに従うんですかあなたは!?」


「うーん、でもほら今回はどう見てもナオトが悪いし……」


 くそ、さすが姉さん大好きっ子。アリシアに素直に従いやがる。


「ちなみにそれを俺に振ったら明日からフェイトさまって呼ぶからな!!」


「うっ、それはちょっと……」


 多分、というか絶対なのはさまを思い出して心底嫌そうなフェイト。


 ふははははははは、俺の勝ちだな!


 これぞ自身のトラウマすら利用する知的プレー!


「あっ、フェイトそれ私でも振れる?」


「う、うん。細かい制御はバルディッシュがやってくれるから可能だけど……」


 と、ここで姉妹の、というかアリシアから不穏な気配。


 えっ、あれ嫌な予感がするんだけど?


「ほら、明日からナオトにアリシアさまって呼ばれるのもいいかなー、って」


「ナマ言ってすいませんでした!」


 ジャンピング土下座。


 フェイトならまだしもアリシアに様付けはかえって屈辱だぞ。


「相変わらず仲が良くて羨ましい限りだね」


 俺たちのやり取りを見て小さく笑うジェイル。


 ごめん、本当にそう思えるなら今すぐ眼科へGo!してほしい。


「ジェイルさん、こんにちは」


「ああこんにちはフェイト」


 そうやって当たり障りのない挨拶をする二人だが、すでに俺は噴出しそうだった。


 フェイトは執務官として広域次元指名手配犯である一人の男を追っている。


 その名はジェイル・スカリエッティ。


 言うまでもなく、目の前にいる俺やアリシアの幼馴染ジェイルのことである。


「ナオト、この二人って傍から見ると面白いよね」


「傍からならな」


 どういう訳かフェイトは気付かないため、ジェイルに対して好意的だったりする。


 そして時折無自覚にジェイルを精神的にズタボロにするのはご愛嬌。


 指名手配犯である“ジェイル・スカリエッティ”は嫌っているからなぁ。


「それで、今日はどうするんだい?」


「まぁ、適当に休みが重なったから集まっただけだけどね」


 そう笑うアリシア。


 つっても俺は年中空けられるけどさ。店番を星光さんに任せればいいだけだし。


 ジェイルは、どうなんだろ?


「まぁ、無難にボーリングとかカラオケとかは?」


「カラオケはちょっと……」


 少しだけ困った風にフェイトは言う。


「あー、ナオトどういうわけかフェイトに色々歌わせるもんね」


 それは仕方ない。


 中の人的に。


 同じ理由で他にも一部よくマイクを渡したりする奴がいたりする。


 この間はアリサにガチの電波ソング歌わせて汚物を見るような目で見られたけど。


「うーん、せっかくいい荷物持ちもいるし繁華街のほうに行ってみるとか」


「おい待てそこの黒レー」


「ナオト、何か言った?」


 すでにフェイトからバルディッシュを借りていた。


 ザンバーも準備OKですかそうですか。


「何も言ってないですよ」


「そっか、そうだよねー」


 ニコニコと。


 うん、俺は何も言ってない。


「ところでナオトももちろん荷物持ちしてくれるよね?」


「馬車馬の如くお使いくださいお嬢様方」


 プライド?


 そんなの言ってる内は子供だよ子供。


 人間諦めがとっても大事なのさ。


 才能とかさ!!


「ちょっと待ちたまえ、さり気なく私まで荷物持ちにカウントしてないかい!?」


「えっ、いつものことだろ?」


「いつものことだよね?」


 ジェイルの発言に対して俺たち幼馴染のほぼ同時に。


 ごめん、俺らからすればジェイルのポジってこれだよね?


「……そうだった、何だかんだで君らに巻き込まれて私が一番割を食っていたね」


 懐かしむように。


 ジェイルは、小さく頷いた。


 どうしても俺とアリシアとではジェイルとは生きてきた時間が違う。


 同い年だったのが、いつの間にかジェイルだけ一世代分くらい離れてしまっている。


「ジェイル君……」


「気にしなくていいとも。こうして再び同じ時を過ごせるなら私にとってそれで幸せさ」


 そう言って穏やかに、笑ってみせた。


 何か今だけはフェイトがジェイルのことが気付けないのも頷ける気がした。


 ラスボスだ、って予備知識があった俺でもJS事件だったか、今のジェイルが事件を引き起こすように見えない。


 凶悪犯という先入観があるフェイトには気付けというのも少し辛いかもしれない。


 一番の理由は平時における天然っぷりかもしれないが。


「ナオト」


「どうしたんだ、ジェイル?」


 繁華街の散策で決まり、先を歩く姉妹とその後ろを歩く俺たち二人。


 先導するアリシアとそれに引っ張られるフェイトを眺めながらジェイルがふと声を掛けてきた。


「前から聞こうと思っていたが、君は、君やアリシアは私のこと気付いているんだろう、ならどうして何も聞かないんだい?」


 抽象的だったが、すぐに理解。


 言うまでもなく、ジェイルが犯罪者であること。


「いやうん、突き出そうかと思ったけどさ、ジェイルが昔の目をしてたから、かな」


「昔の目?」


「全てがどうでもよさそうな目」


 俺の言葉に思い当たる節があったのか、ジェイルは小さく頷いた。


 いやぁ、それにしても懐かしいな。


 ガキの頃からやたら死んだ目をしてるからむかついて無理矢理引っ張ったら三期ラスボスだったからな。


 間違いなく俺の中で一番びっくりな出来事だった。


「本当、ナオトには適わないと思う時があるね」


「俺はお前らに適わないっての」


 この世界の奴らは揃いも揃ってチートだし。


 転生オリ主って大抵その精神年齢の高さと前世の知識とかが武器のはずなのに。


 原作知識もすでに原作って何? なレベルだし。


 結局その原作知識も一番大事な時に忘れてたら役に立たないんだけどさ。


「ナオト、私は」


「ナオトー、ジェイル君、置いてくよーー!」


 気付けばテスタロッサ姉妹と距離が離れていた。


 つーか、アリシアの足元にある大量の紙袋。


 この短時間にどれだけ買ったんだよ。


「ジェイル、言い掛けたみたいだけど、何だったんだ」


「…………いや、君が、君たちが幸せであるといいな、と思っただけだよ」


 ジェイルはそれだけ言った。


 きっと三期が、いやJS事件が始まったらこうして遊ぶこともできないんだろうな、と思う。


 本当、こんな日が続くといいな。


「アリシア、私は、頭脳労働だと言っているだろう!」


「頑張れ男の子!」


「生憎と私は男の子と言われるような歳ではないとも!」


「あ、あの、ジェイルさん、自分の分は持つから」


「君は気にしなくていいさ、悪いのは自重しないアリシアだからね」


「何でだろ、ジェイル君にだけは言われたくないんだけど」


「気のせいなのではないかね」


 軽口の応酬をする二人に俺は苦笑しながら追いつく。


 今日もミッドチルダは平和でした、って所かな。


 犯罪者が一人お休みだしさ。

 ***

 ほのぼのなお話。
 何故かフェイトはアリシアかジェイルと大抵絡む。


 くろがね様の感想を見て少しだけ最速完結ネタを妄想してみました。
 あれ、主なメンバーで確実に勝組なのはルーちゃんぐらいしか見当たらなかった件について。

 ジェイルが関わらないのはなのはを始めとする地球生まれ組、しかし最悪闇の書で地球滅亡、ティアナは六課消失で飛躍の足掛かりを失う、キャロはたらい回し、アギトは実験動物扱い、ルーちゃんは逆に母親が失われず幸せに育ちました。みたいな。



[19758] 姉妹の契り編
Name: 芳乃義之◆a9a5e664 ID:5593919f
Date: 2010/07/11 21:47

「最近ナオト忙しいし、暇だなぁ」


 街を一人歩きながら、アリシアは呟く。


 最近ではアリシアの友人であるなのはと一緒にナオトはどこかへ出掛けている。


 遅くにナオトが帰ってくることもあり、彼女としては心配だった。


「ついでに隠し事してるみたいだし」


 それもなのはと二人で、ある。


 ずっと一緒だった所為か、アリシアとしては何となく面白くない。


「ナオトのくせに生意気だ」


 少しだけ不満そうに彼女は歩く。


 ふと、向こう側を歩く少女にアリシアの足が止まる。


 見知った顔。


 向こうもこちらに気付いたらしく、アリシアの顔を見て呆然とした。


「…………」


「…………」


 おそらく向こうも突然の出来事に驚いているだろう。


 当たり前だった。


 アリシアからすれば見知った顔だが、それは鏡越し、つまり自分の顔だった。


「え、えーと……」


 少しだけ困った顔をしてしまう。


「ど、ドッペルゲンガー?」


「ドッペルゲンガー?」


 アリシアのそっくりの少女は小さく首を傾げる。


(うっ、何かちょっと可愛い……)


 何かそういった仕草が妙に似合ってしまう雰囲気の少女だった。


 意味もなく悔しいとアリシアは思ってしまった。


 まぁ、ドッペルゲンガーでもないわけだし、世の中似た人物三人はいるわけで。


「なんかこうやって会ったのも縁かも。私アリシア、あなたは?」


「フェイト、フェイト・テスタロッサ」


「え……」


 今度こそアリシアは驚いてしまった。


「えっと、どうしたの?」


「ううん、ちょっと驚いただけ。私も姓がテスタロッサだから」


「そうなんだ」


 そっくりな顔に同じ姓。


 アリシアは何となく運命を感じてしまう。


 あっ、そういえばフェイトって運命って意味だったっけ。じゃあ私は運命と出会ったんだとかアリシアは連鎖的に思い浮かぶ。


「せっかく知り合えたしうん、今日は暇?」


「ううん、母さんにお土産を買わないと」


「お母さんかぁ……」


 アリシアは少しだけ遠い目で空を見る。


「ごめんなさい、もしかしてアリシアは……」


「ううん、大丈夫。別に死んだ訳じゃないからね、いつかまた会えるから」


 心配してくるフェイトにアリシアは笑う。


 世界すら違う遠い場所だが、母親であるプレシアは生きている。


 アリシアにとってはそれで十分だった。


「えっと、ごめん」


「もう、謝らなくていいの。じゃあせっかくだから私もお母さんへのお土産選ぶの手伝ってもいい?」


「うん。私この街のこと詳しくないから、おいしいケーキとかがある店知らないかな?」


「それならあそこかな」


 アリシアはフェイトの言葉に頷く。


 すでに彼女の中で目的地は定まっていた。






 カランカランと鳴るベル。


「こんにちはー」


「あら、アリシアちゃんと……えーとそっちの子は?」


 喫茶翠屋のパティシエ、高町桃子は来店した娘の友人とそのよく似た少女に不思議そうな顔をする。


「あはは、フェイトって言って、今日知り合ったの」


 楽しそうにアリシアは笑って答える。


「それに名字も同じだからびっくりしちゃった」


「そうなの」


 アリシアの話に相槌を打つ桃子。


「それで今日はおいしいケーキの店を探してるって言ってたから連れてきたの」


「あら嬉しい」


 アリシアはそこで一旦フェイトの方に向き合う。


「ここはね、私の友達の家がやってるお店なの」


「そうなんだ」


 フェイトはアリシアの言葉に頷きながら並べられたケーキを始めとする洋菓子を見る。


 どれもおいしそうで迷ってしまうほどだった。


「悩む?」


 そんなフェイトの姿を見て桃子は訊ねた。


「う、うん。どれもおいしそうだから」


 そんなフェイトの様子に二人は優しく見守る。


「そうだ。せっかくだからどれか一つだけでも食べてみる? ケーキ一個くらいなら私のお財布でも奢れるし」


「でも、そこまでしてもらう訳には」


「いいんだってば」


 アリシアの申し出に断るフェイト。


 しかし押しの強いアリシアにフェイトは戸惑ってしまう。


「じゃあ今日はアリシアちゃんが新しいお友達を連れてきたからその記念に私が奢っちゃうわ」


 そんな二人のやり取りを見て助け舟を出す桃子。


「いいの!?」


 真っ先に反応するアリシア。


 実を言えば財政面に余裕がある訳でもなく、フェイトに奢ると言ったが、財布的には楽ではなかった。


「一個だけだけどね」


 微笑を浮かべながら桃子。


「い、いえ、そこまでしてもらう訳には」 


「いいのよ、子供は黙って甘えるものなのよ」


 桃子自身そう言ってから、内心寂しく感じてしまう。


 状況が状況だったとはいえ、大事な時期に娘を甘えさせることもできなかった不甲斐ない自分に軽い自己嫌悪を感じながら。


「…………はい」


 そう言われてフェイトは頷いた。






 ケーキを一口食べるフェイトをニコニコ顔でアリシアは見守っていた。


「えっと、私の顔に何か付いてる?」 


「ううん、何でもない」


 そうは言ったものの、やっぱりアリシアの視線にフェイトは小首を傾げる。


「駄目、この子可愛過ぎるよ……」


 同じ顔の少女に対してそれは自画自賛のように聞こえるがそういう訳ではなく。


 やはりそういった一つ一つの仕草がアリシアの琴線に触れてしまうのだ。


「あ、あのね、フェイト」


「う、うん」


「私のこと、お姉ちゃん、って呼んで?」


「え、えっと……」


 アリシアの申し出にフェイトは少しだけ困った表情を見せるが、小さく頷いて。


「お、お姉ちゃん……?」


「もう一回! できれば名前を最初に付けて!」


「アリシアお姉ちゃん」


「駄目ッ、もう我慢できない!!」


 頼んだこととはいえ、あまりの破壊力にアリシアは立ち上がりフェイトを後ろから抱き締める。


「わわっ……」


 後ろから抱き締められちょっと混乱するフェイト。


「私フェイトみたいな妹がほしい!」


 あまりにもストレートにアリシアはそう言った。


 フェイトは黙って自身を抱き締めるアリシアの腕に触れる。


「私、アリシアのことお姉ちゃん、って呼んでよく分からないけどすごい胸が温かかった。うん、多分私も」


 小さく頷きながら。


「私もアリシアみたいなお姉さんがほしいんだと思う」


「フェイト……!」


 彼女の言葉に力強く抱き締めるアリシア。


 それはアリシアにとってあまりにも嬉しい言葉だった。


「く、苦しいよ……」


「あっ、ごめんね」


 感激の余り思わず力一杯抱き締めてしまったことに反省。


「でも私たち血が繋がっているわけじゃないし」


「そうじゃないよ、家族はきっと心が繋がっていれば家族になれるよ」


 アリシアは頷きながら。


「だから今日から私はフェイトのお姉ちゃん。気軽にお姉ちゃんって呼んで」


「お姉ちゃん」


「どうしたの、フェイト」


 アリシアは当たり前のように返す。


「お姉ちゃん……」


 ゆっくりと涙を流しながら、もう一度。


「ど、どうしたの、フェイト!?」


「ううん、よく分からないけど、嬉しくて……」


「……そっか」


 そうアリシアは言って。


 フェイトが泣き止むまで優しく抱き締め続けた。






「じゃあフェイト、また会おうね!」


「うん」


 アリシアと別れ、翠屋で買ったケーキが入った袋を片手にフェイトは一人笑う。


「アリシアお姉ちゃん」


 そう呼んだだけで心が温かくなる。


「ふふっ……」


 すごい幸せだとフェイトは思う。


 今日は姉が出来て、この間はナオトとも再会できて。


「あっ、そうだナオト」


 母さんにナオトと会ったことを伝えよう。


 面識があったはずだと、フェイトは思い出しながら。


「うん、母さんナオト覚えているかな」


 フェイトは小さく頷く。


 彼女はまだ、それがどれだけの影響を与えるかまったく知らなかった。



 ***

 なお、姉妹が買ったケーキはプレシアがフェイトへのケーキプレ……もとい非情に廃棄しました。


 どうでもいいですけどナオトのくせに生意気だ、なんて書いたら砲撃されるナオトの図が浮かびました。
 元のゲームやっていませんけど。



[19758] 砲撃ヒロインズ談義編
Name: 芳乃義之◆a9a5e664 ID:5593919f
Date: 2010/07/12 22:45

「…………それで、ご用件は」


 異様に重い空気の中、先に口を開いたのは星光の殲滅者。


「…………ナオ君、いる?」


「不在です」


 なのはの言葉に星光の殲滅者はぴしゃりと答えた。


 実際ナオトは不在であり、今日は彼女が一日店番をしていた。


「…………そっか」


 なのはは小さく頷く。


 せっかくの休日でナオトが経営する店まで訪れたが、空振りしてしまった。


 確かにナオトは店を空けていたりするので、十分ありえる話なのだが。


「それで主はどのような用件で」


「あなたには関係ない」


 なのはのその言葉に小さく眉を顰める星光の殲滅者。


 彼女自身、なのはのことは嫌っていないが、どうしても主であるナオトに関しては話が変わる。


「残念ながら私は彼の従者です。主のことならば私にも関係があることです」


「むぅ…………」


 逆になのははこの少女のことをあまり快く思っていない。


 自分そっくりで気付けば想い人の傍にいた子。


 普段から近い場所にいるのだから心中穏やかではなかった。


「どうしましたか?」


 悪い子ではないのは確かだが。


「ううん、何でもないよ。でも従者でもナオ君に自由な時間が必要じゃないかな?」


「ですからこうして主は出掛けているのです」


 うぅ。


 手強いなぁ、となのはは思う。


 ナオトから彼女の存在は聞いている。


 闇の書の残滓から生まれた存在。


 紆余曲折あってナオトの従者になったらしいが、詳しい話はまったくしてくれなかった。


 ただ遠い目をして、「若さ故の過ちだったんだよ」と呟いていたのだが。


「何があったんだろう……」


 まさか口にするのも恐れ多いようなことがあったとも思えないし。


 というか、まだその頃は私たち9歳だし。


 色々と性知識が増えてくる今のような年頃とは違う。


 少しそういった関係になった自分とナオトの姿を想像し、なのはの顔が自然と赤くなる。


「少し顔が赤いようですが、風邪ですか?」


「な、何でもないッ!」


 まさか目の前の少女に心配されるとは。


 ふと、なのはは星光の殲滅者のことをあまり知らないことに気付く。


 ナオトのことがあってなのはは忘れていた。


 ちゃんとお話してみて、そうすれば分かり合える。


 お互いがぎくしゃくする要素であるナオトもいない今が、もっともちょうどいい機会だとなのはは思った。


「そういえばナオ君のこと主、って言うけど何があったの?」


「別に、結ばれただけです」


「ふぇ!?」


 頬を赤く染めながらそんなことを彼女は言った。


 もちろん主従契約がですが、と星光の殲滅者は口に出さず心の中で付け加えた。


 しかしそんなことに関係なく暴走したのがなのは。


「じょじょじょ冗談だよね!?」


「冗談ではありません、それに結ばれる時、私はあんなことを言ってしまうとは」


「な、何言ったの!?」


 言うまでもなく「だいすきっ」のことである。


 そんなことなのはが知る訳ないが。


「それは言えません」


「教えてってば!?」


 しかし星光の殲滅者は断固として口を割らなかった。


「そういえば主と呼ばれるのも微妙な表情をしていましたね」


「それより何言ったの、ねえってば!!」


 華麗にスルー。


「そうですね、主のことを呼ぶのを変えてご主人様と今度お呼びするのもいいかもしれません」


「にゃ!?」


 クールにご主人様と呼ぶ星光の殲滅者。


 一瞬でさきほどなのはの頭をよぎった想像がさらに活性化される。


「駄目、駄目、絶対駄目だって!!」


「……ならあなたがやってみますか」


「…………え?」


 その言葉になのはは少し思い浮かべてみる。


 メイド服を着てナオトをご主人様と呼ぶ自分。


「そういえばナオ君、ノエルさんとか見てはしゃいでたような……」


 ふと月村家での出来事を見て思い出す。


 もしかしたらナオ君も意識してくれるかもしれない。


 そのまま、うん……えへへ。


 妄想が過ぎて頬を赤くしながら破顔する。


 後ですずかちゃんに頼んでメイド服を借りよう、とか何とか思いながら。


「……確か主の言葉を借りるならばこういう時は妄想乙、でしたか」


「…………」


 ギギギ、という擬音がしそうなほどなのははゆっくりと星光の殲滅者の方へ視線を向け、そして。


「にゃああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」


 痛恨のミスに激しく自己嫌悪。


 あまりにも痛々しい妄想をしていた。


 描写も阻まれるほどに酷い妄想だった。


 どれくらい描写が阻まれるかといえば具体的には板違いなほど。


 あとは皆様の逞しい妄想力にお任せします。


「……うぅ、穴があったら入りたいよぉ」


 心を深く殲滅され、項垂れるなのは。


「……主にそういった所を見せればあるいは改善されるかもしれないのですが」


「…………何か言ったの?」


「いえ、何でもありません」


 わざわざ彼女に塩を送る必要もないと、なのはの言葉に小さく首を振った。


「ただいまー」


 と、そこで帰ってくるナオト。


「あ」


 あまりのタイミングの悪さに思わず出てしまう一文字。


「ナナナナナ、ナオ君!?」


「うおっなのはさま!?」


 あまりの動転ぶりに思わずレイジングハートを即座にセットアップする。


「ちょ、えっ、何、いきなり何なの!?」


「とととりあえずバスター!!」


「俺なんかしたーーーーーーーーー!?」


 溜めなし砲撃にそのまま吹っ飛ばされるナオト。


 ちなみに何かしたかはなのはの妄想の中のナオトが色々とナニかを。


「……さて、今日もいつも通りですね」


 吹き飛ぶナオトを見ながら、星光の殲滅者は呟いた。


 
 ***

 具体的な時期を決めていないSSだったり。
 ぶっちゃけいつでもいいぐらいのノリです。

 星光さんとなのはさま、はたしてどっちが自重しなかったのか。

 今回はいつもに増して短い……
 まぁ、これくらいのノリならかえっていいかもしれません。




[19758] 修学旅行編
Name: 芳乃義之◆a9a5e664 ID:5593919f
Date: 2010/07/15 17:45
 体のバランスを崩し、転びそうになるなのはさまの手を取る。


「あ、ありがと……」


 少しだけ気恥ずかしそうな笑顔。


 ……すごい調子が狂う。


 可愛いとかまったく思ってないよ。


「ごめんね」


 そう呟くが、むしろ俺がそう言いたいくらいだった。


「リハビリは順調なのか?」


「うん」


 なのはさまが撃墜されて、一時は酷かったものの、現在はリハビリ中。


 さすがに修学旅行という行事を休みたくなかったらしく、一時的に退院を許可された。


 まぁ、魔法は使用禁止されているが。


「まだ完全じゃないけど日常生活をする分には大丈夫だって」


「そっか」


 俺は小さく頷く。


 なのはさま、かなり欝だったからな、見ていて辛かった。


「みんなから聞いたよ、ナオ君すごい荒れてたって」


「あれはただの自己嫌悪」


「でもあれは私が悪いのに」


 おそらく俺が魔法を教えたから間接的に俺が悪いんだ、とかそういう自己嫌悪だと思っているだろうが、そういう話じゃない。


 原作知識を持っていたはずの俺が、事件そのものを忘れていたこと。


 確実に防ぐことも可能だったのに、全て手遅れになってから思い出したこと。


 アリシアのヒュードラの件は結果的に助かったが、それは結果論。


 それもあれは避け辛いことだったが、今回はなのはさまに一言注意すればよかった。


 それだけで、こうして辛い目に遭うこともなかった。


 無力な自分が嫌になってしまう。


 あー、くそ、オリ主って何だろうな。


「ナオ君……」


 掴んでいた手を今度はなのはさまから握り直される。


 俺はそこで現実に引き戻される。


「怖い顔してる」


「……悪い」


 はぁ、修学旅行中なのにな。


 と、そこで他の班員、つまりはアリサとすずかがいないことに気付く。


 ちなみにこういうメンバーなのは単純にクラス分けから。


 アリシアやフェイト、はやては別のクラスになる。


「なぁ、他の連中は?」


「……えーと、あれ?」


 なのはさまも気付いたのか、首を傾げる。


「はぐれた?」


 俺はすぐにアリサの携帯電話に掛けるが、繋がらない。


 っていうか、明らかに切られたぞ!?


「なのはさまは?」


「あっ、うん繋がったんだけど……」


「だけど?」


「二人っきりにしてあげたから頑張りなさいって」


 あ・い・つ・ら…………!


 俺がなのはさま苦手なの知ってる癖に。


 いや、どう考えてもなのはさまの気持ちも知っているからそのためだろう。


 本当に、どうしたもんかな。


「どうしよう……」


 困った風に俺を見るなのはさま。


 あぁ、やっぱ調子狂う!


 こんな調子だったらまだ砲撃撃たれる方が、いややっぱなし!


 むしろこっちの方がいいに決まっているじゃないか、ははははははは。


「言葉に甘えるか?」


「……え?」


 俺の言葉に呆然としてから。


「い、いいの?」


 うん、ごめんなのはさま、ずっとこの調子なの?


 俺は頷くと、満点の笑顔を見せてくれた。


 しかしどうしても撃墜のこともあるから負い目を感じちゃうなぁ。なのはさまに優しくなっちゃう。


 砲撃の一発でも受ければ、いやいやいやいやむしろ飛んでこない分いいんじゃないか。


 毎回毎回ガタガタブルブルしてるのにこなかったらむしろ撃ってほしいとかMかよ、ツンデレかよ。


 そんな末期な人間なんかじゃないからな。


「どうしたの?」


「何でもない」


 不思議そうななのはさまにそう笑って答える。


「ナオ君、行こ…………あ」


 繋がったままの手。


 それに気付いて頬を赤くする。


 俺もそれを見て少しだけ顔を紅潮させてしまう。


 ちょっと可愛いかも、とか何となく思ってしまう。


 いやいやなのはさまがこんなに可愛いわけがない。


 落ち着け落ち着け、砲撃がこないからそう思っちゃうだけだろ、うん。


「なんだろ、今すごいナオ君に撃ち込みたくなったんだけど」 


 ねこさんエスパーなみに鋭すぎだろ。


 しかし、こいつはそういう危ない言動に気付いているのか激しく不安。


 俺の身の安全的な意味で。


「ねぇ、ナオ君」


「どうした?」


「ナオ君がこうして優しくしてくれているのはやっぱり魔法が使えないから? それとも怪我してるから?」


 俺の手を握りながら、決して離さないように強く握りながら。


 なのはさまは、言った。


「…………」


 難しい問題だった。


 どっちも答えとしては間違っていない。


 でも、正解かと問われれば、やっぱり合っていない。


 例えるならテストでなら△しか上げられないようなものだった。


 ああ、別に例えなくても答えとしては変わらないのか。


 俺は頭を小さく掻く。


「例えばさ、俺が魔法が使えないから、って言ったらなのはさまは俺に振り向いてもらうために魔法を捨てるのか?」


「そんなことしないよっ!」


 少しだけ怒った声。


 うん、意地悪な質問だよな、これ。


「じゃあ怪我してるとか言ったら、俺に優しくしてもらいたいからまた怪我するか?」


「それは絶対ないの!!」


 ありえないという風になのはさま。


 いや、そういう精神病があるんです。


「それはさておき、何で優しくなっちゃうのか、って言われたら俺の自己満足」


 あるいは罪の意識か。


 きっと原作を知ってしまっているから思い悩む。


 知っていたはずなのに。もっと最善に出来たはずなのに。


 無力なのに、俺だけはさらに上を見てしまう。


 PT事件……いやジュエルシードの事故がいい終わり方してしまったのもいけなかった。


 だからさらに上の結果を目指そうとしてしまう。


 もちろん、だからといってプレシアさんがあの時に亡くなるとかそれがいいとは口が裂けても思わないが。


「いっそ隕石でも降ってきて記憶飛ばないかなぁ」


「それ、記憶の前に死んじゃうよ……」


 その通りでした。


「まっ、修学旅行中の話じゃないし、デートでもするか」


「え、えぇ!? ナオ君今デートって?」


「今は優しくなってる期間中なんです」


 砲撃ないからトラウマもないし、きっと。


「じゃ、じゃあなのはって呼んで!」


「……なのは」


「う、うん」


「さま」


「にゃぁぁぁぁーーーーーーーー!!」


 ごめんやっぱなのはさまを呼び捨てに出来なかった。


 頑張ってみた結果がこれだよ!


「じゃあ行くか……なのは」


「今言えてた、言えてたよね!?」


 冷や汗だらだらだが。


 ごめん、これが俺の精一杯。


 俺たちは手を繋ぎながら、ゆっくりと足を並べて歩き始めた。

 ***

 なんということでしょう。
 砲撃魔として恐れられるなのはさまでしたが、魔法を取り上げるだけでこんな可愛らしいなのはちゃんに変わりました。

 あるいは魔法を捨てればナオ君ルートが開けるかもしれません。


 実は一回修学旅行書き上げて全消ししました。
 さすがに自由行動で秋葉原はない。
 チートにして改造魔なのはさまとか最先端をぶっちぎる月村家の令嬢すずかをセットにしても。
 この二人は普通に秋葉原を歩けそうで困る。
 パーツ漁りで、ですが。


 どうでもいいおまけ

 虚偽性障害について

 簡潔に説明すると、構ってほしいために自傷行為や病気の虚偽をすること。
 原作でも幼少時にはまったく構ってもらえず、また逆に重傷を負っていた士郎には家族の皆がそちらへ行ってたこともあり、そしてなのはが撃墜後、フェイトやヴィータに過保護なまでに心配されたことで、味をしめてこの精神病に掛かる可能性は十分に考えられるんじゃないかな、とかふと思った。
 ついでにこれってヤンデレの症状の一つとしてたまに出てきます。真面目に。
 すいません、ただの戯言です。




[19758] 八神はやての反逆編(New)
Name: 芳乃義之◆a9a5e664 ID:5593919f
Date: 2010/07/21 18:35

「えー、あなたは包囲されている、大人しくパパを離せー!」


 拡声器越しのヴィヴィオの声。


 うん、さすがにパパと周囲に響き渡るのは恥ずかしいんだけど。


「せ、聖王が怖くて仕事なんてできるかー!」


 微妙に震えながらも叫んで返すはやて。


 俺をロープでぐるぐる巻きにして、その手にバイブを持ちながら。


「うー、こうなったらパパごと薙ぎ払うしか……」


 お前もどこぞの砲撃コンビみたいに物騒なこと言うな。


「はっ、その瞬間ナオトのお尻がアー!やで!!」


 バイブを手にはやての声。


 な、なんて恐ろしいことを言い出すんだ、この狸!


「ダメーーーー! パパの前も後ろもヴィヴィオのなの!!」


 とやっぱり拡声器越しに以下略。


「お前のものになった覚えはねぇぇぇぇぇぇぇぇぇええぇ!!」


 とりあえず周囲の誤解を解くために必死に叫んだ。


 俺、自分の純潔の前に娘の手で社会的に抹殺されそうです。


「大丈夫だよ、パパ!絶対助けるからね!!」


「せめて、チェンジ。チェンジしてーーーーーーー!!」


 必死の願いだった。


「はぁ……えーえー、八神はやて陸佐。あなたの要求は何ですか?」


 埒が明かないのか、ヴィヴィオの副官、ストラトスの声が聞こえてきた。


 あー、よかった。


 ヴィヴィオの外付け良心回路がやっと動き出してくれたらしい。


 しかし、声がすでに疲れきっているのは気のせいだろうか。


「そんなの、決まってる。私はここにいるって出番を作るために!」


「あー、未だに出番なかったもんな、お前」


 具体的にはAs編のみ。


 名前はちょくちょく出てたけどその程度だし。


「私もあんまり出番ないもん!」


「キャラ立ちしてるヴィヴィオちゃんには言われたくない!」


 あー、うん。確かにキャラ濃いよなぁ、ヴィヴィオ。


 開幕パパを犯そうとしたことは決して忘れないからな。


「だからこれはこんなはずじゃない世界への反逆なんや!」


 そう、力強くはやてはアホなことを言った。


「…………ふら」


「アインハルトしっかりして!? 倒れちゃ駄目だってば!!」


 ちょ、えっ、ストラトスが倒れたのか!?


 あまりにバカすぎて気持ちは分かるけど、気持ちは分かるけどさ!


 俺にとって現状唯一の味方なんだけど!


「ここでナオトをアー!させたキャラとして私はレギュラーになる!」


「それは私がやるの!!」


 あれ、何だろう。


 これって二人の女性が俺を取り合ってる構図だよね?


 何でこんな嬉しくないの?


「そ、そういえば他の連中は?」


 俺はあまりの事態に戦慄しつつ、話を逸らすためにはやてに聞いてみた。


 ほら、ヴォルケンリッター見えないし。


「私の身勝手な反逆にあの子らを巻き込めへん。それに」


 そう首を振りながら言った、が。


「管理局でのシグナムとかヴィータとかシャマルとかリィンの妙な人気は何
や!? 私が主なのに! いたら出番なくなるやろ!!」


「それが本音か!?」


 全て台無しだった。


「と、ところでザフィーラは?」


「いやな、本当はこれの代わりにザフィーラに頼もうとしたんやけど逃げられてな」


 その手のバイブを弄りながら。


 さすがに忠義に篤い守護獣も逃げるか、そりゃ。


 あと少しで腐女子ホイホイな構図が出来てたのか、おい。


「ふ、ふふ、これで私は新世界の神になれる……!」


 バイブ片手に目が逝った姿はシュールだった。


 結婚遠のくぞ、って今更だった。


「待て、早まるな!それをやったらネタキャラとして永遠に言われ続けるぞ!」


 すでに手遅れとかは聞こえない、聞こえないからな!


 俺の身の安全の前にはそんなの関係ないんだから!


「出番がないのは首がないのと同じなんや! 私は出番のために悪魔とだって契約したる!!」


「いつから芸人になった!?」


 管理局員だろ、お前!?


 確かに気付けばフェードアウトしてたけどさ。


 それとこんなこと派手にやって大丈夫なのかよ。免職決定だぞ。すごい今更だが。


「ずるい!パパに突っ込まれて突っ込めて」


「ははははは、私の時代始まった!!」


 羨ましそうなヴィヴィオとハイテンションなはやて。


 しかし、何故かヴィヴィオが言うとまったく健全に聞こえないのは仕様なのか?


 あっ、片方元から健全な意味じゃなかった。


「もうやだ、こんな世界……」


 世界はこんなはずじゃないことばかりなのにな。


 ハハハハハハハハハハハハハハハ…………


 リリカルなのはのDVD全話見直したいなぁ、あはははははは…………


「さーて、ナオト覚悟はええかぁ」


「よくないよくない!!」


 俺はブンブンと首を横に振る。


 現実逃避してる場合じゃねぇ!


「大丈夫大丈夫、天井の染み数えている間に終わるから」


 そんな台詞言われたくなかった。


 えー、俺こんなところで純潔散らされるの?


「いくで、これが私のぜんりょくぜんか……ヘボふぁ!?」


 あと一歩というところではやてが吹っ飛ばされた。


 何者かによる綺麗な拳技を打ち込んでの一撃。そして一拍置いての着地音。


「……これ以上、ベルカの痴態を晒すわけには……いきません……!」


 アインハルト・ストラトス。


 ヴィヴィオの外付け良心回路として名高い彼女だった。


「えっと、大丈夫か?」


 倒れた聞こえたし。


「はい。あそこで倒れている訳には、いきませんから」


 無茶苦茶辛そうだった。


 うん、頑張れ。超頑張れ。負けるな。みんな応援してるからな。


「しかしヴィヴィオさんが八神はやて陸佐の目を引き付けてくれて助かりました。おかげでここまで気付かれずに接近できましたので」


 まぁ、あれだけ俺が泣きたくなりそうな会話を続けていればなぁ。ははは……


「パパ、大丈夫!?」


「へぶっ…………!」


 急いで飛び込んできたヴィヴィオ。


 お前今はやて踏んだだろ。


「…………縛られたパパ、じゅるり」


「ヴィヴィオさん」


「何でもないよアインハルト!!」


 とりあえず誤魔化すならその涎をどうにかしろマイドーター。


「じゃ、じゃあアインハルト、私はパパといちゃ……コホン、保護のために連れてくから現場の方よろしくね」


 縛られたままの俺を引き摺って行こうとするヴィヴィオだが、それを鉄壁の防御力を持って彼女の襟首を掴んでブロック。


 ナイスだストラトス。


「どこまで連れて行く気ですか?」


「ちょっとそこのラブホ……じゃなくてホテルまで。ほらパパだって辛い思いしたんだから休ませないと」


 そう笑いながら言うが、誤魔化しきれていない。


 ほら、ストラトスの眼が鋭いですよ、我が娘。


 彼女は黙って近付くと、縄を切って俺を自由の身にしてくれた。


 切ったのが手刀なのは、まぁいいや。ヴィヴィオだってできるし。


「タカサキさんは今日は帰宅してゆっくり休んでください。後日今回の謝罪として伺いますので」


「むー、またアインハルト勝手に仕切って」


 膨れ顔のヴィヴィオは無視。


 つーかこいつら相変わらず階級逆転してるよな。


 にしてもさすがストラトス。一部の掲示板では管理局を乗っ取れるとまで言われているだけある。


 そもそもヴィヴィオの手綱を握っているだけで拍手もの。


「な、なぁヴィヴィオちゃん。私の上に乗ったままでいないでほしいんやけど…………ガクリ」


 あ、はやて死んだ。


 まっ、いいか。




 ちなみに後日、店に菓子折り付きで訪れたストラトス+1(ヴィヴィオ)の話によるとはやてはお咎めなしだとか。


 というのも緊急時での対応を想定した演習だとか。ちなみに抜き打ち。


 しかも俺の扱いは善意の協力者だった。協力した覚えはねえよ!


 凄い胃が痛そうだったストラトスを俺は密かに応援した。


 ベルカの未来の何割かは君が担っている。




 ところで星光さんや、何でそんな引っ付いているの?


 えっ、私が別行動していた為に主を危険に晒してしまったから今後は常に共に行動しますって?


 いや、あのヴィヴィオの視線が死ぬほど辛いんですが。


 ちょ、ストラトス助けて! って困った顔で視線逸らされたよ!?


「これがママから(勝手に)受け継いだ全力全開!!」


 ってその魔法は!?


「スターライトブレイカーーーーーーー!!」


 またこのオチかぁーーーーーー!!



 蛇足だが星光さんはスターライトブレイカーを避けていた。


 理不尽すぎる。

 ***

 はやての話なのにオチはいつもの。
 元々この話、というかはやての出番がないネタは考えていました。
 ただ、特別編だと普通に出てくるから微妙かも。 

 せっかくなので出番の少ないヴィヴィオ&アインハルトも絡めた結果、こうなりました。
 どうしてこうなった。
 しかもはやて地味でしたし。


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