2010年7月21日0時9分
安価で大量の労働力を強みに「世界の工場」として経済発展してきた中国の位置付けが変わってきている。
今年に入って賃上げを求める労働者のストが頻発。経営側は数十%という大幅な賃上げをのまざるを得ない状況となっている。結果として、最大の強みであった賃金の低さが崩れてきている。
さらに、外資による工場進出に加えて国内企業の生産拡大も進み、労働市場が逼迫(ひっぱく)。必要な労働力をなかなか集められない状況で、これが賃金の上昇に拍車をかけている。
加えて元レートも将来的には一定の上昇が避けられない見通しであり、輸出競争力の低下が懸念されている。
そうした状況を受け、ユニクロをはじめこれまで生産拠点を中国に集中させていた企業が、ベトナムなどへ分散させ始めている。
こうした動きを逆の側面からみてみると、賃金上昇はすなわち、中国の消費者の購買力上昇を意味する。年収が5千ドルを超える中産階級が数億人という巨大市場が、すぐ隣に出現するのである。
こうした変化をいち早くとらえ、急拡大する中国の内需をいかに獲得していくのかに戦略のかじを切っていくことが必要である。
もちろん、中国勢をはじめ、韓国勢などとの競争はさらに激化するであろうが、連日、大型バスで大量の中国人観光客が秋葉原を訪れ、炊飯器やデジカメを大量に買って帰るのを見てもわかる通り、中国の消費者には根強い日本ブランド神話があるのも事実である。
「世界の工場」から「世界の市場」へと変わりつつある中国市場をいかに制するかが、今後10年の企業の成長を左右するといっても過言ではないのではないだろうか。(H)
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「経済気象台」は、第一線で活躍している経済人、学者など社外筆者の執筆によるものです。