日本赤軍のテロを支援、北に3億7800万ドル賠償命じる(下)
プエルトリコ連邦地裁判決
パレスチナ人による攻撃だけを想定してきたイスラエル当局は、PFLPの支援を受けた日本赤軍による無差別テロの前になすすべもなかった。ごく普通の服装に、バイオリン用のバッグを持った、安田安之、奥平剛士、岡本公三の3人は、台尻の金属板を外したチェコスロバキア製の自動小銃を取り出し、巡礼団やほかの乗客、乗務員らに向かって無差別に乱射し、さらに駐機中の飛行機に手りゅう弾を投げた。安田と奥平は警備隊との銃撃戦で死亡し、岡本は逮捕された。この事件で、民間人26人が死亡し、約80人が負傷した。イスラエル人の犠牲者の中には、1973年から79年まで大統領を務めたエフライム・カツィール氏の兄で、科学者のアーロン・カツィール氏も含まれていた。
この事件に北朝鮮が関与していたか否かをめぐり、論議が本格化したのは、昨年初めのことだ。イスラエルの人権団体「シュラト・ハディン」が昨年2月、北朝鮮が日本赤軍によるロッド空港乱射事件を支援したとして、遺族に代わり、3000万ドル(約26億円)の損害賠償を求める訴訟をプエルトリコの連邦地裁に起こしたのだ。同団体は訴状で、「国家レベルでの支援がなければ、テロ行為は困難だ。当時、北朝鮮は軍事訓練の基地や施設、兵器、爆発物、逃げる場所、宿舎、通信手段、装備、資金、運送手段などを提供した」と主張した。さらに公判でも、同様の調査結果や資料を提出し、北朝鮮が具体的に関与していたことを認める判決を勝ち取ったことになる。
北朝鮮はまた、2006年にイスラム教シーア派武装組織「ヒズボラ」の攻撃で死亡した人の遺族や、負傷した人の家族らからも、損害賠償請求訴訟を起こされている。
だが、北朝鮮は、今回の裁判の結果を受け入れ、損害賠償金を支払うことはない、と米国メディアはみている。その場合、米国に北朝鮮の資産はないため、差し押さえられるものもないことになる。だが、1972年のロッド空港乱射事件に関する裁判の結果は、北朝鮮が関与したとされる、ほかのテロ事件の裁判にも影響を与える可能性があるという点で、象徴的な意味を持つものだ。また、2006年のヒズボラによるテロ事件に関する裁判は、北朝鮮が国際的なテロ活動を引き続き支援しているという疑惑を持たれていることを示している点で、大きな意味がある。
北朝鮮は、1987年の大韓航空機爆破事件を受け、翌年1月に米国の「テロ支援国家」リストに掲載されたが、ブッシュ政権下の2008年、リストから削除された。米共和党のサム・ブラウンバック上院議員らは、北朝鮮のテロ支援国家への再指定を求める活動を展開しているが、国務省は現在に至るまで、北朝鮮によるテロ支援を立証できる十分な証拠を確保できていないとして、慎重な姿勢を見せている。
ニューヨーク=朴宗世(パク・チョンセ)特派員