2010年7月20日
婚外子差別/結婚制度守るのに適切な措置
最高裁大法廷がこのほど婚外子差別が憲法に違反するかが争点の裁判の審理に入ることを決め、合憲との判例が見直される可能性が生じてきた。その目的は、立法府がなかなかこの差別問題点に手をつけないためであるとの見方が出ている。だが、これが不必要な差別か、適切な措置かはしっかり吟味していくべきだ。
割合が極めて少ない日本
これまで、婚外子の差別に対しては、結婚制度を維持するために、ある程度、やむを得ないものとして受け止められてきたといえる。なぜなら、婚外子も嫡出子と同じように財産相続できるなら、結婚外での関係により、子供をつくるということが半ば容認されたような形となるからだ。
日本は欧州諸国に比べると、極めて婚外子の割合が少ない。フランスやデンマークなど北欧諸国では、婚外子の割合がほぼ5割を超えている。わが国ではたとえ婚前に妊娠しても、それを契機に結婚をし、生まれてくる子供が婚外子にならないようにする方法がしばしば取られている。
それだけ結婚制度に対する評価が高いと見ることができる。婚外子に対しても、嫡出子と同様の権利を認めることで、わが国の出生率を高めるべきだとする意見もリベラルな学者などから出されているが、それには反対である。
家族は社会の安定を守る上で極めて重要な要素であり、これが婚外子も嫡出子も全く同じように受け入れられる社会になった場合には、結婚制度のあり方を根底から揺さぶることになる。なぜなら、夫婦以外での性的な関係を容認することになり、社会の秩序がそれを通じて急速に崩れていくことは明らかだからだ。
ただ、婚外子といっても決して不倫関係によって生まれた子供ではなく、シングルマザーになっていた女性が、別の男性と結婚して子供をもうけた場合、最初の子供は、たとえその女性の子供であっても、結婚制度の下で生まれていないために婚外子となってしまう。
こうした実例などを基に、婚外子の相続を、結婚後に生まれた嫡出子の半分にすることは、不条理な差別であるとの主張がある。だが、こうした例外的事例を前面に打ち出して、いわゆる不倫によって生まれる婚外子の差別も撤廃しようという議論は本末転倒である。また生まれてくる子供に罪はない、として婚外子差別の撤廃を求める議論もある。
しかし、一部の差別的状況を強調して、全体の秩序を崩していく結果を招来するようなことがあってはならない。それは、男女共同参画の推進のために、男女混合名簿を導入し、男の子、女の子も同様に「さん付け」で呼ぶのと同じ行為といえる。必要な区別を差別として撤廃することで、従来の伝統的な日本のよい側面を破壊することになりかねないからだ。
慎重な審理を期待する
家族制度にダメージをもたらす婚外子一般の差別撤廃という措置には反対である。最高裁には、慎重な審理を行うよう期待したい。