「大相撲名古屋場所9日目」(19日、愛知県体育館)
東幕下4枚目で26歳の城ノ龍(しろのりゅう)=境川=が仲の国をずぶねりで破って4勝1敗で勝ち越しを決めた。一連の野球賭博に関与しながら出場が認められた5力士では“勝ち越し第1号”。謹慎している多数の力士が十両から降格確実なため、城ノ龍の十両昇進が濃厚に。来場所は賭博への関与の度合いが明暗を分ける、皮肉な番付編成になる。幕内は横綱白鵬が鶴竜との全勝対決を制し、自身の連勝を41に伸ばした。豊真将も全勝を守った。
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表情は暗かった。勝ち越しにも、笑顔をみせることなく「何とかして勝つという気持ちが強かったから」とポツリ。十両でないこと、賭け金が少なかったことなどの理由で謹慎処分は免れたが、城ノ龍にとっては、重い十字架を背負っての土俵が続いている。
東幕下4枚目なら通例、4勝どまりなら十両昇進は難しい。だが、今場所は十両の4力士が全休扱いの謹慎となっている影響で、幕下に十両昇進のチャンスが広がった。4勝1敗の城ノ龍は、あと2番を落としても昇進できる可能性が高い。
自分が野球賭博に関与しながら、多数の謹慎者がいるおかげで新十両に手が届く皮肉な状況だ。本人も自覚しているのか、野球賭博については「(境川)親方は自分を子どものように扱ってくれました」と、はぐらかすばかりだった。
16歳だった2000年に、モンゴルから鳥取城北高校に相撲留学。03年初場所で初土俵を踏んだが、けがに泣かされた。3年前に左ひざのじん帯を切り、昨年5月にはけいこ中に左目の網膜はく離を起こした。
一度は引退を覚悟しながらも、目の手術の手配をしてくれた師匠への恩返しのため現役を続けた。境川親方(元小結両国)は自分たちが野球賭博した管理責任を問われ謹慎中だ。「親方は親の代わりですから」と城ノ龍は後悔の思いをにじませた。殊勝な言葉を口先だけで終わらせてはならない。