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西淀川虐待死の初公判 検察側、弁護側双方が書類読み上げ

 大阪市西淀川区で昨年4月、松本聖香さん=当時(9)=を虐待し衰弱死させたとして、保護責任者遺棄致死と死体遺棄の罪に問われた母親の松本美奈被告(35)の裁判員裁判の初公判は12日午後も大阪地裁(樋口裕晃裁判長)で続けられ、検察側、弁護側双方が証拠書類を読み上げた。平成18年3月の保育園卒園式で聖香さんが笑顔で松本被告と手をつなぐ映像が映し出されると、女性裁判員は涙をぬぐいながら見入った。

 双方の冒頭陳述要旨は次の通り(敬称・呼称略)。

 検察側

 ■事案の概要(略)

 ■犯行に至る経緯

 平成20年10月、被告は内縁の夫、小林康浩=起訴=と同居を開始。小林が聖香の勉強の面倒を見る。聖香が怠けると殴り付けた。

 ■虐待行為の内容

 21年3月10日、小林が「勉強を怠ける」といってほおをつねり、あざができた。被告は虐待の発覚を恐れて学校に「体調不良で休ませる」と虚偽の申告をする。3月中旬から小林が顔などを殴打する暴行を繰り返すが、被告は黙認。ほおをつねるなどした。

 ■不保護の状況

 3月末以降、聖香が極度に衰弱して身動きさえ不自由なことを知りながら、小林の愛情を失うことを恐れるあまり、聖香への愛情を失った。虐待が発覚するのを恐れて診察を受けさせず、1日に雑炊1、2杯しか与えなかったうえ、ベランダなどでそのまま寝かせるなど十分な睡眠や栄養をとらせなかった。4月4日、玄関で失禁したことに小林が激怒。顔を殴打するなどの暴行を加え、ベランダに追い出して放置し、翌日午後、衰弱死させた。

 ■死体遺棄の状況

 虐待が発覚しないように被告らは共謀し、4月7日未明、奈良市内の墓地に穴を掘り、聖香の死体を埋めて虚偽の捜索願を提出した。

 ■争点

 (1)保護義務の根拠(2)極度の衰弱を認識していたか(3)必要な保護をしなかった(不保護)といえるか(4)小林との共謀の有無(5)保護は不可能だったか(6)不保護の動機(7)不保護が死因か

 弁護側

 ■被告の生い立ち

 被告は平成9年、前夫と結婚した。11年には長女、12年には聖香ら双子が生まれた。16年、大阪市西淀川区にマンションを購入し、転居してお好み焼き屋を始めたがうまくいかず、前夫はパチンコに入り浸るようになった。夫婦関係は冷えていった。被告は経済的自立を誓い、昼はもちろん、水商売で深夜まで働くようになった。

 ■小林との関係

 そんな中、20年9月に知り合ったのが小林。10月、被告は双子と小林の家に引っ越し、前夫と離婚した。

 小林は子供たちに「しつけ」をするようになった。はじめは虐待ではなかった。初めて「切れた」のは21年1月、双子が前夫の家に行って帰るのが遅れたとき。双子の妹は前夫の家に戻ると言ったが聖香は「ここにいたい」と答えた。

 ■事件の経緯

 3月10日、小林が聖香に切れた。翌日から虐待がエスカレートしていった。切れて怒鳴る、殴る、ける、ベランダに出す。度々食事も抜かれ、聖香は弱ってきた。被告は栄養をつけさせようと雑炊を作り、食べさせていた。

 4月4日、小林はナイフも持ち出した。被告は必死にかばったが、止まらなかった。翌日聖香がベランダで亡くなり、被告は呆然(ぼうぜん)となった。

 被告は聖香を愛していた。もっとできたことがあったとの思いに苦しみ、後悔している。表面だけでなく背景や被告の心情も踏まえた判断をしてほしい。 

 

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