2010年07月16日

周囲からのサポートが低いと、死亡率が高い。

オランダの一町の20−59歳の地域住民11,163人を平均19年追跡したところ、周囲からの理解や評価などの度合いが低いグループの死亡率は、高いグループより1.23倍高かった。論文はAmerican Journal of Epidemiology 2010年7月15日号に掲載された。

周囲からのサポートは、「過去1ヶ月に、他の人との接触で次のような経験をしましたか」という質問に対して、ポジティブな側面を8項目、ネガティブな側面を8項目挙げ、それぞれを経験した頻度を「なし」から「しょちゅう」までの4段階で回答してもらい、その回答を点数化した。

ポジティブな側面としては、「温かさや親しさ」「評価」「誰かと楽しい時間を過ごした」「理解と共感」「誰かからの助け」などの項目をたずねた。ネガティブな側面としては、「無理解」「誰かからけなされた」「過剰な関心」「誰かから避けられた」「人が進んで助けてくれなかった」などの項目をたずねた。ポジティブな側面とネガティブな側面のそれぞれの点数によって、対象者を3グループずつに分けた。

平均19年の追跡期間に、対象者の7.2%が死亡した。周囲からのサポートのポジティブな側面が高いグループと比べて、中等度のグループの死亡率は1.10倍と誤差範囲の上昇にとどまったが、低いグループの死亡率は1.23倍と高かった。一方、ネガティブな側面が低いグループと比べて、中等度のグループと高いグループの死亡率は高くなかった。

著者らによると、周囲からのサポートが低いと健康度が低く死亡率が高いことを示す研究はこれまで多数あったが、周囲からの関わりのポジティブな側面とネガティブな側面とを分けて、長期間の死亡率との関係を調べたのは今回が初めてという。

周囲からのポジティブなサポートが高いと死亡率が低くなるメカニズムとして、喫煙や飲酒などの行動が改善される点と、感情や気分などの心理が改善される点の二つを、可能性として著者らは挙げている。

一方、周囲の関わりのネガティブな側面が強くても死亡率が高くならなかったのは、著者らの仮説に反する結果だったとして、さらに研究が必要と考察している。

⇒肥満度や血圧などの生物学的要因だけではなく、周囲の人からのサポートが寿命を左右する可能性を示した研究。人は他者との関係性の中で生きていて、その関係の質が健康にも影響する可能性をうかがわせるデータと言えるだろう。

論文要旨

ytsubono at 06:00論文解説  この記事をクリップ!
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