民主党の鳩山由紀夫前首相は18日、室蘭市東町の鳩山事務所で室蘭民報社の単独取材に応じた。次期衆院選に出馬するかどうかの判断について「身の処し方を皆さんと相談して、統一地方選(来年4月)までに考えたい」と明言し、17日の東胆振連合後援会拡大役員会での発言と同様に、首相辞任直後の不出馬発言の事実上の撤回とも受け取れる、揺れる心境を披露した。結論先送りの理由について「(慰留する)いろいろな意見を聞き、自分の美学だけですませていいのかという判断に至った」と述べた。
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鳩山前首相は進退判断の先送りについて「不出馬は国益を考えて判断したつもりだったが、これまでに多くの人から『国益に資する生きざまはほかにもあるだろう』と指摘された」と語った。
そうした意見の中でも「不出馬発言の直後に斉藤修弥総連合後援会長から『後援会に相談してもらいたい』、民主党の国会議員一期生からも『自分たちを育ててほしい』と言われたのが大きい」と語り、さらに「室蘭民報の『地域の発展のために尽くす責任がある』との記事も読んだ」など、翻意を促すさまざまな声の影響を指摘した。
進退判断のポイントとしては「これまで力を入れてきた日ロ関係やアイヌ民族の問題、CO2
25%削減、東アジア共同体などの道を切り開くのに、バッジを付けていた方が働きやすいか、そうでないのかを判断材料にしていきたい」と述べた。
仮に不出馬を決めた場合の道9区後継者選びについては「ずるずる、ぎりぎりでの判断は悪影響を与える。1年ぐらいをめどとして、有望な新人を見いだしていく。ただし、私一人が責任を負うのではなく、後援会、党と相談して選びたい」と、一定の役割を果たしていく考えを述べた。
首相辞任の理由については「自民党を飛び出したのはクリーンな政治を求めたから。その自分が政治資金の問題で批判を受けるのは、青天の霹靂(へきれき)で深く反省してきた。クリーンな政治をこなさないと、信頼を得られない。ツートップが政治とカネで批判を浴びているのは耐えられなかった」とし、「政治とカネ」を一番に挙げた。
民主党大敗に終わった参院選を振り返り「私と小沢幹事長(当時)が身を引き、菅総理が誕生して支持率もV字となって高まったが、首相の消費税発言で国民に唐突感を与えたのではないか」と分析。菅首相らの責任論については「執行部が敗因を分析し、是正策を国民に理解してもらうことが大切。その上で執行部の責任を議論すべき」と総括が先決と強調した。
9月の党代表選へ向けたスタンスは「参院選の総括とも絡んでくる。総括で大敗の責任が前政権となるのか、新執行部となるのか。議論をみないと一概には言えない」とした上で「大事なのは党の結束を図ること。私の役割は亀裂を未然に防ぐことだと思う」と、自身がまとめ役として一定の役割を果たさなければならないという認識を示した。
(山田晃司)
◆―― 鳩山さん、一生かけ恩返し
民主党の鳩山由紀夫前首相は18日、前日の東胆振・日高に続き西胆振入りし、地元後援会に次期衆院選不出馬発言の真意などを説明。同日夕に帰京した。出席者の慰留を求める意見に対して「総理を終えて任務を終えたのではない。やり残した仕事はある。少し時間をかけ身の処し方を考えたい」と述べ、来春の統一地方選まで進退を再考する。
鳩山前首相は同日午後、伊達、登別、室蘭3市での後援会拡大役員会に順次出席。不出馬発言を謝罪し経緯を説明した。
伊達では中山智康道議が「ロシア外交と北方領土、普天間問題、CO2削減は決着がついていない。すべてバッジなくして進められない」と強調。登別では「今朝の新聞を読んで悩んでいることが感じられた。泥臭く執念深く理想を追求してほしい」と出馬を求める声と拍手で沸いた。
室蘭では続投にエールを送る意見の中、「日本一の後援会と思うなら、なぜ斉藤会長や幹部に相談しなかったのか」と厳しい意見も出た。
鳩山前首相は「相談なしで言及したのは申し訳ない」と述べ、「一議員としてまだやるべき仕事はある。ロシア外交、東アジア共同体を友愛の精神の中で構築したい」と意欲を示した。「総理を辞めたから室蘭、北海道をさよならするとは思っていない。一生かけて恩返しし、育てていただいた気持ちに応える道を探りたい」と地元の思いに応えた。
総連合後援会の斉藤修弥会長は、進退判断を統一地方選までとした点について「半年ほどかけて、各地域の意見を聞きたいという考えでは」と説明した。
加藤徳治郎幹事長は「各地区の意見を整理し、進退の結論が出るまでの後援会活動の方向性を出したい。郡部でも前首相が説明する機会を設ける」考え。
鳩山前首相は同日、民主党道9区総支部の滝口信喜代表代行と会談。党道9区として説明の場を設け、来月以降にも東・西胆振と日高の3カ所で調整することを確認した。
(粟島暁浩、松岡秀宜)
◆―― 「やるべきことある」
「まだやるべきことがあるぞ」―。伊達、登別、室蘭の順に開いた後援会会合。出席者は一様に慰留を口にした。厳しい中にも励ましの声が続いた。
■ 伊 達
「きょうの声を聞き一安心した。北海道開発は遅れ室蘭圏も厳しい状況。地域の議員として頑張ってほしいのは各後援会長の総意。きょうからが後援会の新たなスタート」と西胆振連合会の渡辺源之会長は言い切った。虻田後援会の高清水幸夫幹事長も「肉声を聞いてまだやって頂けると受け止めた。これからも支える。今後は地元を含めた活躍を期待したい」。
■ 登 別
「西胆振は鳩山さんのおかげで成長したという印象が少ない」とは栄町の筑野武志さん。「地域のためにも力を振り絞り、頑張ってほしい」と付け加えた。北海道肢体不自由児者福祉連合協会の畠山重信理事は「鳩山さんの努力で障害者の自立が前進したのは間違いない。障害者1級の所得を生活保護世帯と同等まで引き上げるなどやるべきことはまだある」と引退撤回を切望した。
■ 室 蘭
「このまま政治生命を全うしても支持する。ただ政治に未練があるのなら続けてほしい」という和菓子・波満屋の浜長隆店主。女性の支援団体「鳩の会」会長で室蘭市後援会婦人部長の栗林芳枝さんは「首相辞任、不出馬発言は本当にがっかりしたが、演説を聞き未来が明るくなった。次も選挙に出て国政を務めてほしい」、老舗眼鏡店・中正メガネの須飼龍三社長は「代議士は鳩山家ではなく“室蘭家”から立ったんだ。もう少し辛抱するべき」と話した。
(山田晃司、粟島暁浩、松岡秀宜、野村英史)
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