正論 2010年5月号
バッシング衝撃の真相

トヨタは本当に過ちを犯したのか
“黒幕”に金を出していたのはトヨタ訴訟の弁護士たちだった


アメリカで今、トヨタ・バッシング・シンドロームとでも呼ぶべき異常な報道が続いている。三月十日に複数の米メディアが伝えたところによると、二〇〇五年製の旧型プリウスがニューヨーク州の道路を走行中に急加速して石壁に衝突し、運転していた五十六歳の女性が怪我をした。その二日前にはカリフォルニアで、ジェームス・サイクスという男性が車を追い越そうと加速し、そのままアクセルペダルが戻らず暴走したというニュースが全米を駆け巡った。トヨタに関するネガティブなニュースはすべて大々的に報じられる。トヨタがいくら火消しに躍起になっても、焼け石に水のような効果しかない。メディア側は冷静さを失っているようである。だが、果たしてトヨタは、本当に過ちを犯したのか ――。


セイラーの悲劇

最初に断っておくが、私はトヨタを擁護する立場でもなく、批判する立場でもない。一介のジャーナリストとしてトヨタが直面している問題を昨秋からずっと取材してきた。トヨタの対応の遅れが今回の騒動に発展した由々しい一因であることは疑いの余地がないが、一つ一つのニュースを精査し、何か裏がないか疑うことも必要である。特に今、トヨタが置かれた状況は決してノーマルと言えない。アメリカはもちろん日本のメディアまで、トヨタに対して端から悪意があるような報遣が散見される。

こうした中、私は世界的ベストセラーとなった『ザ・トヨタウェイ』の著者であり、トヨタ研究の第一人者であるミシガン大学教授のジェフリー・ライカー博士に、問題の核心についてインタビューを試みた、衝撃的な情報が次々に出てきたこのインタビューは、ダイヤモンド社のビジネス憎報サイト「DIAMOND online」に全文掲載しているので興味のある方はお読みいただきたい。ライカー教授は、「電子系統の欠陥のためにトヨタ車が急加速して誰かが亡くなったという証拠など一切ない」とした上で、トヨタ側に非はないのか-と聞く私に、次のよう言った。

「こう答えよう。もちろん、サンディエゴで起きたレクサスの事故は悲惨なものだった。しかし、あのときメーカーの違うフロアマットを置いたのはレクサスのディーラーであり、しかも事故車は代車だった。問題は、ペダルにくっついたフロアマットだったのだ」

ライカー教授の言う「レクサスの事故」とは、カリフォルニア州サンディエゴ郊外で起きた死亡事故のことで、「セイラー事件」の名で知られる。そしてこの事故こそ、トヨタ・バッシング・シンドロームの発端であった。

二〇〇九年八月、地元警察官マーク・セイラーの運転するレクサスES350が二百キロ近いスピードで暴走、「ブレーキが利かない」と絶叫する緊急コールを発した直後にほかの車に衝突し、セイラーと妻、娘ら家族四人が死亡した。この時の緊急コールは数え切れないほどアメリカで放送され、高速道路の柵を破壊して斜面の下まで横転したレクサスの写真はネット上を駆け巡った。

トヨタによれば、事故車はフロアマットの敷き方に問題があった。ペダルにフロアマットがくっつき、戻らなくなったのだ。そして、ライカー教授が指摘するように、「メーカーの違うフロアマットを置いたのはレクサスのディーラーであり、しかも事故車は代車だった」。

フロアマットが原因だとするトヨタの主張に、疑問を感じる人がいるかも知れない。現に、アメリカのメディアでは、電予制御や車体構造に問題があるとする報道が目立つ。セイラー一家と同様、レクサスの急加速を経験したロンダ・スミスという女性は今年二月、米下院の公聴会で「アクセルを踏まないのに百六十キロまで加速した」という恐怖の思いを涙声で証言し、電子制御の問題を認めないトヨタ側を激しく批判した、

だが、公聴会で彼女が言わなかったことがある。

スミスが急加速を経験したのは二〇〇六年だが、スミスの苦情を受けたNHTSA(米運輸省道路交通安全局)が検査官をテネシー州に送って調査したものの、得られた唯一の結論は、彼女がフロアマットを二枚敷いていたことだけだった。しかもアメリカ人好みの、全天候型のゴム製フロアマットが、元のマットの上に敷かれていたのである。スミス自身も二〇〇七年、「こういうマットが敷かれていたことは悲しいことだ」と語ったという。

スミスは急加速を経験後、自分の車をすぐに売ったが、レクサスのディーラーが調査してもその車には何の異常も見つからなかった。車はその後、他のユーザーのもとで二万七千マイル(約四万三千キロ)走行しているが、その間、急加速の不具合は生じていない。


サイクスの策略

冒頭で取り上げたカリフォルニアでの急加速も、報道には腑に落ちない点が多い。旧型プリウスを運転していたジェームス・サイクスという男性は、記者会見で「車を追い越そうとしてアクセルを踏んだら、そのままペダルが戻ってこないで引っ掛かったままになった。ブレーキを踏んだが車は止まらなかった」と証言し、ブレーキシステムの問題を強調した。しかし、米トヨタ自動車販売のドン・エズモンドはAP通信の取材に対し、こう答える。

「すべてのプリウスで、ブレーキとアクセルペダルを同時に踏んだ場合、車輪への力を切断するコンピューターシステムがついている。どのようにしたら、このブレーキ・オーバーライド・システムに、サイクスが経験したようなことが起きるのか不可解に思う」

車両検査ディレクターのダン・エドマンズも、Edmunds.comというサイトの中でこう断言する。
「サイクスと同じ世代のプリウスで実験をしたばかりだが、その実験では、右足でアクセルを踏んでスロットルを大きく開けたまま、左足でブレーキペダルを踏んだ。その車でブレーキとスロットルが重なった場合、エンジンの回路が分断され、ブレーキが完全に支配する。それがハイブリッドの性質ゆえ、プリウスに存在するプロテクションである。サイクスが言っていることはあり得ない」

つい最近も“トヨタ側がサイクスの経験を同車で再現しようとしたが、できなかったと公表した。

なお、サイクスの弁護士によれば、トヨタを提訴する予定はないという。その理由は、サイクスの“前歴”と関係がありそうだ。

サイクスは二〇〇八年、米破産法七章に基づく破産申告をしており、七十万ドル(約六千三百万円)以上の借金があった。加えてローンが払えず、過去に何度も車を差し押さえられている。今回問題になったプリウスが唯一残されたリース車である上、あと二〜三カ月でリースが切れ、手放さなければならなかった。

二〇〇七年にサイクスから家を購入したという人物は、米フォックスTVに「この男惟の事故を知った瞬間に、私はこの男にはangle(策略)があると思った。その策略が何かはわからないが」とコメントし、こう付け加えた一「家を買ったとき、サイクスはこの家に問題があることを隠していた。買った後は修理するだけでも二万ドルかかったので、サイクスを訴えたが、その途中で彼は破産宣告した」

また、冒頭で取り上げたもうひとつの事故、ニューヨークの急加速も、NHTSAの調査の結果、「車のコンピューターシステムに残された記録によれば、スロットルがフルオープンのまま、ブレーキを踏んだ形跡はまったくなかった」という。

一方、トヨタの歯切れは悪い。少しでも運転手のせいにするようなことを言えば、間髪いれずメディデが牙をむいてくる雰囲気になっているからだ。

米ABCテレビは、二月二十二日のワールドニュースで、トヨタ車の急加速原因が電子制御装置の欠陥であることを立証したとする南イリノイ大学のデイビッド・ギルバート教授の実験映像を放送した。ギルバートは公聴会でも同じ内容の証言をして注目された。だが、ABCは三月十一日、編集段階で実験映像を別の映像に差し替える“インチキ”操作を行っていたことを認めた。

なぜ、米メディアは一方的なトヨタ・バッシングを報じるようになったのか。ライカー教授はこう言う。
「急加速問題に関する苦情はトヨタに限らずどのメーカーでもかなり前からあったが、元をたどればLAタイムズの記者がトヨタ車の加速問題に焦点を絞って報道し続けたことが、さらに事を大きくした」

LAタイムズの記者たちは、ショーン・ケインという人物からの情報を元に記事を書きまくった。ケインは“Safety Research & Strategies”というウェブサイトを持っていて、そこに、トヨタ車の負傷事故やトヨタ車の安全問題に関する情報ばかり載せていた。

「問題は、ケインの資金はトヨタに対して集団訴訟を起こす弁護士たちが出しているということだ」(ライカー教授)

即ち、集団訴訟で莫大な賭償金額を勝ち取るためのメディア作戦が奏功していると解釈しても過言ではないだろう。レクサスにフロアマットを二枚敷いて恐怖の急加速を経験したロンダ・スミスを公聴会の証言台に立たせたのも、このショーン・ケインだった。

ライカー教授の分析は、二月十三日付のウォールストリート・ジャーナル紙(WSJ)でも裏付けられる。WSJには、ケインの資金が自動車メーカーを提訴する原告の弁護士から出ていることが記されている。

元々消費者の擁護者として八面六腎の活躍をし、盛名を馳せたラルフ・ネーダーの下で研究をしていたケインは、二〇〇四年、これは儲かるビジネスだと一念発起して営利目的の組織を作った。それ以来彼はトヨタ車の意図しない加速に関するリポートを追跡してきた。「セイラー事件」が起きたとき、このチャンスを逸しては絶対にならないと言わんばかりにメディアに登場し、トヨタ・バッシングに躍起になった。表向きは「車両の安全」を提唱しているように見えるが、実際は自動車メーカーを訴える弁護士のshill(軽蔑的に「広報」という意味)にすぎないと、フォード自動車の広報にいたジェイソン・ヴァインズはWSJに語っている。ケインは一月末、五十一ページの報告書をリリースしたが、その中で、トヨタとレクサスの所有者のうち少なくとも二千二百六十二人が急加速を経験し、八百十五件の衝突、三百四十一件の負傷、十九件の死亡が一九九九年以来にあったと報告している。

私が愕然としたのは、三月二日に放送されたNHKの「クローズアップ現代」に、このケインが登場したことだ。しかも黒幕として取材したのではなく、まともな取材対象者としてのインタビュー映像が流されていた。少し調べればこの男が今回の騒動の黒幕といえる存在であることがわかるはずなのに、NHKの番組づくりには疑問を持たざるを得ない。ケインはLAタイムズだけではなく、他の大手の媒体、しかも日本の公共放送まで動かすほどの影響力を持ったということだろうか。

先述したデイビッド・ギルバート教授を証言者として公聴会に送り込んだのもケインだった。ケインは意図せぬ急加速の原因は電子制御スロトルシステムにあるというスタンスを取っているが、それを裏付けるためにギルバートに資金を出して研究させた。依頼されたギルバートは四時間以内に欠陥を発見したと主張し、その欠陥についての情報をトヨタにも直接流した。トヨタ側はそれを元に調査したが、意図しない加速の点からみて、ギルバートの主張が有効でないと反論した。しかしギルバートの主張はABCニュースに取り上げられ、実験の様子がインチキ映像とともに放送された。

ギルバートは公聴会でも同じ内容の証言をしたが、三月八日、トヨタは異例の公開実験でギルバートが実施した試験を再現。その際、外部の專門家として招かれた米スタンフォード大学のクリス・ガーデス准教授は「ギルバート教授の誠験は現実に起こり得るかどうかの検証が欠けている」とし、同じく外部の専門家であるエクスポーネント社の技術者も「ギ
ルバートがやったことは人為的な回線の変更で、現実の利用環境では起こり得ないと指摘した。興味深いのは、同様の回線の変更をGMや他の車で実験すると、いずれもエンジンが急に高速回転する現象が見られたことである。


豊田社長の通訳

豊田章男社長が二月二十四日に米下院の公聴会で証言したのは、こうした四面楚歌の状況下であった。

民間企業の社長が公聴会に召喚されることは稀有で、異常な事態と言えるが、これを米メディアはどう受け止めたのか。

早速噛みついたのが、NYタイムズ紙(電子版)である。トヨタ社長が通訳をつけたことを、「返答を慎重に考えるための時間稼ぎにも使った」と批判した。確かに、あのような場で通訳を使うことは微妙な問題である。昔ミノルタがハニウェルに特許侵害で提訴ざれたとき、私は担当したカリフォルニア州の陪審員の一人にインタビューしたことがある。その中で陪審員が最も苦痛だったと語ったのは、「通訳」だった。ハニウェルが雇った通訳とミノルタが雇った通訳が、訳し方一つで言い争いになる場面が何回もあったという。私自身アメリカで数回裁判を経験しているが、一切通訳をつけていない。豊田社長はアメリカに留学しMBAも取得したというから、通訳をつけなくても証言できただろう。あるいはNYタイムズ紙が批判するように、時間稼ぎに使ったのかもしれない。もしもトヨタのような世界に名だたるグローパル企業の社長が英語を駆使できないとすれば、それはそれで大いに恥ずべきことだ。

とは言え、中途半端な英謡力で通訳なしでやると質問を誤解したり、正確な英語でない発言の揚げ足を取られる場合もあるから、なかなか難しいところだ。実際、公聴会で豊田社長と共に証言した稲葉北米トヨタ社長は通訳なしで証言したが、明らかに自分の発言の揚げ足を取られる場面があり、返答に窮しているのがはっきりわかった。ほぼ完璧なバイリンガルでないと、全米が注目する公聴会のような場ではやはり通訳をつけざるを得ないのだろう。ただし、通訳をつけることで印象がよくなることはないことを知っておくべきだ。

もっとも、米メディアの全てがトヨタに批判的だったわけではない。三月十日付のFinancial Advisory.comはこう書く。
<やくざのような労組のメーカーが何年も暴騰価格でオンホロ車を生産している一方で、トヨタの役員らが自分たちの車に関する間題について証言するために米議会にまで行進させられているのはジョークである>
<(GM、クライスラーは).そのまま倒産させるべきだったのに、彼らこそ救済された理由について、議会で証言すべきだった。もし倒産させていれば、トヨタのような優良企業が生産するもっとはるかに質がいい車を得ることができるからだ。今度GM、フォード、クライスラーが質の悪い車を世に出して、リコールが行われたら何が起きるか見るのが楽しみだ。そのときに今トヨタが呼ばれている公聴会が、政治的資本を得ようとする政治家の集まりが営むkangaroo court(吊るしあげ裁判)であったことがわかるだろう>

そもそも公聴会というのは議員たちにとって、地元の有権者に頑張っている姿を見せる「劇場」にすぎない。トヨタがNHTSAの元高官を社員として雇っていることを追求する議員もいたが、こういう「回転ドア」的なことは世界中で行われており、「元高官を雇うのはお手柔らかにしてもらうためである」と証言できないことが分かっていながら問い質すのだから、やはり議員は冷酷である。

全米自動車業界アナリスト協会会長を務めたことがあり、著書に『GM帝国の崩壊』などがあるマリアン・ケラーは、公聴会での豊田社長についてこう語る。
「質間した議員からすると、はぐらかされた感があり、かなり失望させられる回答だったかもしれないが、公聴会の性質から考えるとよくやったと思う」

ライカー教授も言う。
「議員たちは、無礼な物腰で最初から悪意を持ち、有罪だと決めつけて質問をしていた。豊田社長を有罪になった殺人者のように扱っていた。針のむしろの状態で、豊田社長は真相の究明と会社の改善について真摯に取り組むと何度も冷静に繰り返した」

何より、米国民の多くは今もトヨタに信頼を寄せる。二月二十日から三月二日までに米ライス大学が厳密なアンケート調査を行った結果、トヨタ車所有者の同社に対する信頼は、これだけのリコールにもかかわらず揺るぎないことが分かった。


キングの愚問

豊田社長は公聴会で、電子制御スロットルシステムには問題が見つかっていないと強調したが、なかなか信用してもらえなかったようだ。公聴会に登壇した証言者は、利害関係のない、純粋な人ではなかった。先述したように、ロンダ・スミスもデイビッド・ギルバートも、ショーン・ケインという“黒幕”が送った人物であった。これでは被告の弁護人がいない裁判と同じである、議員たちが公聴会で本当に真実を求めようとするなら、利害関係のない第三者を証人にすべきである。

私は三月中旬にニューヨークにいたが、CNNは著名ブロードキャスターのラリー・キングが豊田社長にインタビューした二月二十四日放送の番組を、何回も再放送していた。「トヨタは間違っていた」というメッセージをサプリミナル効果で視聴者に植えつけようという底意が感じられた。その中で、キングが「トヨタは運転手のせいにしていないのですね」と念を押す場面があったが、愚問であろう。というのも、実際のところ多くの事故が運転手のエラーであるからだ。過去二十年間エンジン全開時にブレーキペダルを踏むと、ブレーキが優先することはトヨタの車で実験され、証明されている。過去十年間にNHTSAが記録した「意図しない加速」の苦情は二万四千件ほどあるが、トヨタ車が占める割合はほんの一部であり、二〇〇四〜〇九年ではフォードの「意図しない加速」の方がトヨタよりも多い。アメリカでは〇九年に五百件の自動車のリコールがあり、二〇一〇年に入ってトヨタ車以外ですでに三十件以上のリコールがあるが、こちらはあまり問題にされていない。

カーネギー・メロン大学のフィツシュベック教授は、CNBC放送に出演し、リコールされたトヨタ車を一年間運転して死亡する確率について「百万分の二」と答えた。これは落雷に当たる確率と同じレベルであり、一マイル(約一・六キロ)を歩く間に死ぬリスクの方が十九倍高いという。

それでも、トヨタヘの風当たりはまだまだ収まりそうにない。三月十二日、カリフォルニア州オレンジ郡の検察当局は「欠陥を知りながら、車の販売を続け、州民を危険にさらした」として、トヨタ自動車本体と米国トヨタ自動車販売を相手取り、同郡上級裁判所に民事訴訟を起こした。

多くの事故が運転手のエラーから生じるという事実は、トヨタに限らずどの自動車メーカーにも当てはまるが、今の状況でトヨタにそういうことを言わせない雰囲気を作っていることも、フェアではないだろう。

三月十一日付のニューヨーク・タイムズ紙は、トヨタ車の大量リコールに関連し、UCLAの心理学を專門とするリチャード・シュミット名誉教授の寄稿を掲載した。その中で彼は、急加速の原困の多くはブレーキとアクセルの踏み間違えだと指摘している。彼は一九八○年代にアウデイ5000の急加速が多発し、大量リコールになった時の調査に直接関わっている。ブレーキがアクセルよりも優先されるシステムがあっても、運転手がブレーキを踏んでいると勘違いし、実際にはアクセルばかり踏んでいれば役に立たないと、彼は警鐘を鳴らしている。


ライカーの助言

ライカー教授は、一向に収束する気配のないトヨタ・バッシングの理由をこう説明する。
「トヨタは世界最大の自動車メーカーであり品質と安全において高い評価を受.けていた。そこにサンディエゴで『セイラー專件』が起きた。これほどセンセーショナルなニュースはない」

そこに、数年間トヨタに関する憎報だけを集中的に集めていたショーン・ケインという人物がいて、彼はまるでこの時を待っていたかのごとくメディアを利用してトヨタを追い詰め、さらにNHTSAを動かした。この間に他のメーカーが車両をリコールしても大したニュースにならなかった。

ただ、トヨタ側にも問題はある。前出のマリアン・ケラーは、アメリカの一般人のトヨタは対するイメージは以前とそれほど変わっていないとしながらも、トヨタ側の広報の失策も今回の騒動を大きくする一因になったと話す。「何かを隠しているのではないか」という印象を与え過ぎた、と言うのだ。

再びライカー教授が言う。
「今回の騒動を奇貨としてトヨタがより一層の改善に励むことは間違いない。確かに短期間で成長がはやすぎたかもしれないが、今やるべきことはまず問題を封じ込めることだ」」

時間はかかるだろうが、トヨタはいずれ信頼を取り戻し、世界一のグローパル企業として他の自動車メーカーの追随を許さない地位を獲得するだろう。私はそう信じている。(敬称略)



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