参院の京都の投票率(選挙区)は53・71%で全国で4番目に低い数字でした。政治に対する関心が京都は低いのでしょうか。
全国に目を向けると有権者は昨年8月の衆院選で「政治改革」を求め、自公連立政権でなく民主党中心の新しい政権を選びました。ところが、先日の参院選では民主党が大敗し、自民党が改選第1党になる復調を遂げました。
民主党大敗の原因について、菅直人首相の消費税引き上げ発言、「最低でも県外へ移設する」と言われていた普天間飛行場移設問題の迷走、政治とカネをめぐる問題などが指摘されています。
国会で法案を通すには、衆院(480人)と参院(242人)で過半数の賛成を獲得して可決しなければなりません。あるいは、参院で否決されても衆院の3分の2以上(320人)で再可決すれば法案は成立します。ところが現在、民主党は衆院で305人、参院で106人です。衆院では多数派でも参院では少数派という「ねじれ」になっています。どのように国会を運営していくかが民主党に問われるわけですが、一番手っ取り早いのは他党と連立を組むという手法です。参院で過半数になるため、16人以上の数集めをするか、衆院で15人以上増やして再可決に持ち込めるようにすればよいという勘定です。
このため新聞各紙とも連立のシミュレーションとして現在、連立を組んでいる国民新党、新党日本に加え、みんなの党や公明党、社民党など、さらには自民党との大連立などを紹介しています。
連立を議論するならば、今回の有権者の声を最大限に反映し、その期待を実現するためにはどうあるべきかを考えてほしいものです。参院選で有権者が望んだ声とは、民主党大敗の原因を裏返して語れば、「消費税の増税反対」「普天間基地の県外移設」「カネにクリーンな政治」ということになります。これらの有権者の声を実現したいと民主党が本気で考えるならば共産党と社民党に連立を申し入れるのが一番現実的ではないでしょうか。確かに参院で共産党、社民党の議席を足しても116議席で、過半数には届きません。しかし、衆院では321議席になります。衆院で再可決が可能な数字です。
民主党から言いだしにくいのであれば、共産党や社民党から民主党に「連立しないか」と申し入れたらどうでしょうね。民主党が有権者の声に応えるなら、また、共産党や社民党が公約を実現したいのであれば、「中道左派連立政権」は選択肢の一つとなるのではないでしょうか。
一笑に付されることは分かっています。とても現実的とは私にも思えません。しかし、1票で政治が変わらない、という投票に対するあきらめムードを打ち破るためにも、民主党をそして他党を揺さぶるためにも、このような意外性を政治に期待したいものです。【京都支局長・北出昭】
毎日新聞 2010年7月19日 地方版