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仲間信じ続けた378球 伝習館・相浦投手 高校野球2010年07月12日 高校野球福岡大会9日目の11日、3回戦8試合があった。春の九州大会4強の飯塚をはじめ柳川、筑陽学園などシード5校と小倉、糸島、筑紫のノーシード3校が決勝大会進出を決めた。福岡工大城東の松田は筑紫台に対し8回を無安打に抑える好投を見せた。12日には、延長15回引き分け再試合の田川―嘉穂東が予定され、この勝者で19強が出そろう。
◇ (糸島4―0伝習館) 糸島は3回、西村から三者連続の二塁打で3点を挙げ、試合の主導権を握った。伝習館は打線が中村に散発4安打に抑え込まれた。 ◇ 23年ぶりの決勝大会進出への願いは、エースの右腕に託された。伝習館の相浦紳吾君(3年)は1回戦から一人で投げ抜いてきた。打撃では4番を任され、チームにとって欠かせない存在だ。内角を直球でぐいぐい攻め、走者がいれば変化球で打たせて取る――。守備からリズムを作るチームは相浦君に頼った。 昨年の新チーム結成後、公式戦で負けが続いた。練習試合でも勝てない。夏から秋にかけて相浦君の肩の故障が大きかった。チームは泥沼状態に陥った。だが、5月の長崎遠征で息を吹き返した。寝食をともにし団結が深まった。地元高校との練習試合でようやく勝利し、自信も得た。 初戦の終盤、相浦君は足がつった。「大丈夫か?」と心配する江島武幸監督に対し、相浦君は「まだいけます。絶対投げます」と即答した。期待を感じ取っていた。 決勝大会進出をかけた3回戦、毎回のように走者を背負う苦しい展開にも辛抱強く投げ続けた。3回、変化球が抜けた甘い球を痛打され、3点を失ったが、その後は持ちこたえ、味方の反撃を待った。飛球が強い風にあおられ、失策につながる場面もあった。そのたびに、江島監督の言葉を思い出していた。「打たれてもエラーが出ても顔色を変えず、前を向け。そしたら仲間は助けてくれる」 最後までマウンドを降りず、相浦君は164球を投げきった。「絶対に点を取り返してくれると信じていた」。だが、壁は厚かった。江島監督は試合後、相浦君に近づき、「ナイスピッチング!」と笑顔でたたえた。 この夏、相浦君が投じた球は378球。「弱くても毎日こつこつ練習すれば勝てるとわかった。これからの人生でも毎日頑張ればいいことがあるはず。楽しかったです」。一球、一球、仲間を信じて投げられたことが、敗れても充実した表情のゆえんだった。(新垣亮) 福岡ニュース
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