独立行政法人「石油天然ガス・金属鉱物資源機構」の本部が入居しているオフィスビル(左)。JR川崎駅(右)の目の前にある=28日午前、川崎市、朝日新聞社ヘリから、川村直子撮影
経済産業省所管の独立行政法人「石油天然ガス・金属鉱物資源機構」の本部を川崎市から東京都内に移転させる計画が浮上し、波紋を広げている。経産省が移転を盛り込んだ法案を今国会に提出中だが、実現した場合、役職員への手当が都内勤務で上積みされ、年間の人件費が総額1億8千万円アップする計算になるためだ。
政府は財政悪化を受け、国家公務員の人件費を2割削減する方針。そうした状況に逆行する可能性がある移転計画を、民主党議員は「税金の無駄遣いにつながる」と批判。同機構関係者からも「移転の必要性を感じない」と疑問視する声があがっている。
同機構は2004年の設立の際、本部をJR川崎駅前のオフィスビル内に置いた。当時、行政機関などが都内に過度に集中しないよう拠点を東京以外に置くことが国で推奨されていた。だが、経産省は今年2月、同機構の都心部への移転を含む機構法改正案を国会に提出。同省によると、「国際的な資源開発競争の激化に対応した組織強化」が目的で、移転理由については「要人交渉を行う都内に拠点がある方が便利。省庁との連絡も密に出来るので有益だ」としている。
この法案に関心を持った民主党の川内博史衆院議員(鹿児島1区)が経産省に照会。その回答で、移転により、本部勤務の役職員計約400人の報酬・給与は年6%増え、現在約30億円の人件費総額が1億8千万円膨らむ計算になることが判明した。役員の年収は100万円上がるケースもある。同機構の役員8人のうち4人は、旧通産省など中央官庁出身の天下りOBだ。
人件費アップの理由は、勤務地ごとに金額の異なる「都市手当」。他の都市部よりも物価が高いとして、国家公務員と同様に東京が勤務地の場合に最も多く支給される。個々の給与を抑制する制度変更には、同機構が職員の労働組合と合意する必要がある。