【萬物相】暴力教師

 「彫刻のような美男子」といわれる俳優チャン・ドンゴンは、映画『友へ チング』(クァク・キョンテク監督)の中で、キム・グァンギュに実際に殴られた。教師役を演じたキム・グァンギュは、「こんないい加減に勉強しているのか」と怒鳴り、腕時計を外して、チャン・ドンゴンのほおを力いっぱい殴った。また、ユ・オソンに対しても、「お前の親父は一体何をやってるんだ」と言ってほおを殴った。こうした暴力教師役の名演技で、それまで無名だったキム・グァンギュは、助演クラスの名俳優へと飛躍した。

 ユ・ハ監督の映画『マルチュク青春通り』でも、制服姿の軍事教練担当教師が学校を震撼させた。映画の中で、教師が生徒に体罰を加えるシーンは日常茶飯事だった。ユ・ハ監督は、「軍事独裁政権の縮小版といえる教室の様子を描いたアレゴリー(寓話)だ」と主張した。『友へ チング』や『マルチュク青春通り』は、1970年代に学校に通った監督たちの実際の体験に基づいた作品だ。頭髪や服装の規制が厳しかった時代に中高生だった世代が作った映画の中で、学校はたびたび、抑圧や処罰の場として描写された。

 小説の中でも、学校の教師らによる権力の行使が赤裸々に描かれている。チョン・サングクの短編小説『偶像の涙』は、暴君のように振舞う生徒を、力ではなく知略によって追放する担任教師を通じ、見えない権力の有り様を描写している。だが、最近流行している若者向けの小説では、教師による暴力をありのままに描いている。

 イ・ヒョンの若者向け小説『われわれのスキャンダル』は、中学2年生の教室を舞台に、教師による暴力の一部始終をビデオ撮影するという内容だ。担任教師が、校内の不良グループに関与した生徒を洗い出そうと、生徒全員に白い紙を配り、「知っていることをそのまま書け」と命じた。教室全体を緊張状態に陥れた教師は、口を開いていない生徒を指名し、「お前、今何と言った」と問いただした。そして生徒が「悪口を言った」とうその自白をするまで、ほおを殴り、その自白を理由に、さらに激しい暴力を振るった。生徒たちはその様子をビデオ撮影し、教師や学校との戦いを繰り広げた。

 ある小学校の教師は、6年生の児童らに暴行を加える場面を撮影した動画が公開され、解職された。「手の平で殴られれば、その勢いでたちまちひっくり返る」といわれるほど、暴力教師として知られた教師だった。この教師をはじめ、感情に任せて生徒に対しやみくもに体罰を振るう教師には、その横暴ぶりから別名が付けられた。かつては卒業後のエピソードの一つとして語られた教師の体罰は、今やビデオで撮影されるようになった。今こそ、はっきりとした体罰の基準を設けるべきだが、理想としては、体罰が完全になくなり、そのうち「われわれが忘れ去ったもの」となる時代が来るのが望ましい。

朴海鉉(パク・ヘヒョン)論説委員

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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