アウトドアブームが高まる中、海や山へ出かけてキャンプ、バーベキュー、 庭で焼肉パーティーなどをする機会も増えてきました。
しかし、そのバーベキューなどをするときに使われることが多い「ゼリー状の着火剤」でやけどをした、 という事故情報が国民生活センター危害情報システムには過去8年間で50件寄せられています。 特に8月の事故が多く、実際に着火剤を使用した人だけでなく、 周囲にいる人もやけどをするなどの事故が起きています。
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全身にやけどの例も
1993年4月〜2001年6月30日までに危害情報システムに寄せられた着火剤の事故情報は50件。 このうち、25件(50%)は、重症事故(治療3週間以上または入院を要した事故)です。
50件のうち、49件はやけどの事故で、やけどをしている部位は、顔が23件で最も多く、 次いで手や足が19件、胸・腹などが4件、全身のやけども3件あります。 事故は、主にメチルアルコールを主成分としたゼリー状の着火剤(以下、着火剤)で起きています。
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8月が最も多い
事故の発生月は、キャンプ、バーベキューなどアウトドアでの活動が多くなる8月が最も多く13件で26%、 次いで5月が11件(22%)です。
=着火剤って?=
着火剤とは、木炭やマキなどに火を起こしやすくするために補助的に使われる燃料です。
柔らかいポリ容器に入って絞り出して使うゼリー状や固形タイプなどがあります。 成分はアルコールや灯油、木材繊維などで、商品は多種多様です。 年間の出荷個数は、50万個を超え、このうち最も多いのがゼリー状の着火剤です。
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つきだしによる
引火・爆発事故
着火剤に一度火をつけたにもかかわらず、 明るい屋外では炎が見えにくかったり、まだ燃えていないと思い、 再度着火剤をつぎたすことによる事故です。
また、火の気があるところに着火剤をかけることによっても事故は起きています。
つぎたし以外の
引火・爆発事故
気化した着火剤成分に火がついた際に引火・爆発する事故。
点火するために炭につけた着火剤や 使用後キャップを開けたまま放置してあった着火剤容器の中で 揮発してガス化した成分に引火して 爆発音とともに炎が噴き出る事故です。
着衣着火事故
着衣着火事故
CASE1
友達と観光スポットの広場でバーベキューを始めた。 炭の上に着火剤をつけて点火した。 炎が消えかけたので、再び着火剤を炭の上につぎたしたところ、 1〜2分後炎が上部に噴き上り、顔、腕に2度のやけどを負い、 3週間入院することになった。
(2000年 40歳代男性)
CASE3
近くの公園でバーベキューコンロの中の 木炭に着火剤を塗り、それを交互に重ね点火したら爆発し、 着火剤が飛び散り近くにいた幼児3人がやけどを負い そのうち1人は重症を負った。 事故後やけどの箇所はケロイド状になり、 今でも皮膚がひきつった状態である。
(2000年 3歳女児)
CASE5
河原でバーベキューをしようとしていた。 着火剤を使って火をつけようとしたところ、 その着火剤が子どもの服につき燃え広がった。 父親が子どもを抱いて川に飛び込んで消した。
(1999年 5歳女児)
CASE2
庭でバーベキューをしたとき、紙に火をつけて炭に火を起こそうとしたが着火しないために、 前の年に購入して半分残っていた着火剤を炭に向けて容器からつぎたしたところ、 火のついた着火剤が膝に飛び散り、手で払ったが手の甲と足首方向へ、 重度のやけどを負い、 家の網戸にもこげ穴ができた。
(1996年 40歳代男性)
CASE4
バーベキューのため炭に火を起こそうとして着火剤を使用。 ライター状の物で火をつけたら 着火剤が飛び散り全身に20%の大やけどをした。
(1998年 30歳代女性)
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着火剤は使い方によっては危険である ことを知っておくことが大切です。 特に子どもに使わせないことはもちろん、絶対子どもの近くでは使用しないこと。
一度火をつけたら、着火剤の「つぎたし」は絶対しないこと。
着火剤の主成分であるメチルアルコールは、揮発性が大きいためガス化して引火しやすいものです。着火剤は、キャップを開けた状態では決して置かないようにしましょう。また、揮発したガスは想像以上に広がって炎が広範囲に及ぶことがあるので、着火剤に点火するとき、十分に安全な距離をとるようにしましょう。
燃えた着火剤が飛び散ったり、揮発した着火剤に引火し、その火が衣服に引火して大きな事故になっています。必ず近くにバケツ数杯の水や湿らせた布などを準備しておきましょう。
火のついた着火剤が飛び散り、皮膚に付着した場合は、湿らせた布などで上から押さえ火を消した後、冷水で患部をよく冷やし、すぐに医師の診断を受けること。ふき取ったり、払い落とそうとすると、やけどの範囲が広がる原因になることがあります。
着火剤の主成分のメチルアルコールは毒性が強いので、揮発したガスを吸い込むと中毒のおそれがあります。室内や換気の悪い場所で使わないこと。また、口の中に入れたらすぐ吐かせ(吐き)、少しでも具合が悪かったらすぐ医師に診てもらいましょう。また、皮膚に付着した場合には、メチルアルコールが皮膚から吸収されるのですぐ水で洗い流すこと。
キャンプなどアウトドアレジャーは、不便な場所が多いため、火災や救急の対応が遅れがちになるので十分注意しましょう。
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着火剤は危険物
着火剤に関する関係法令
着火剤の主成分のメチルアルコールは、引火点が低く、火がつきやすく、「消防法」の規制の対象となっています。
●消防法
メチルアルコールは、「消防法」」上では「危険物」に指定されています。ゼリー状着火剤は「第2類 可燃性固体」の中の「引火性固体」で、危険等級は最も低い「3」になります。「引火性固体」は「火気厳禁」で、着火剤には通常「火気厳禁 引火性固体 危険等級3」と表示されています。
着火剤を使ってテストしてみました
着火剤を購入し、テストしてみたところ、次のようなことがわかりました。
爆発のおそれがある濃度になる
●着火剤の主成分であるメチルアルコールは、揮発性が大きく、引火しやすく、その蒸気の重さは空気とほぼ同程度なので、広く拡散して爆発性混合ガスを作りやすい性質であることがわかっています。 そこで、ひなたに置いてあったバーベキューコンロ(以下コンロ)に炭を並べ、着火剤をまんべんなく炭に塗って、コンロの表面を覆っ?$H$3$m!"GzH/$9$k$*$=$l$,$"$kG;EY$K$J$k$3$H$,3NG'$5$l$^$7$?!#
爆発音とともに引火
●ひなたに置いてあったコンロに炭を並べ、着火剤を塗って15分後に着火したところ、爆発音とともに揮発してガス化した成分に引火爆発することが確認されました。一瞬の炎は上方向だけでなく、コンロ横の通気孔からも噴き出しました。
●着火剤は気化するのがわかりにくいため、炭などに塗った後、ガス化して引火する危険のあること、まして爆発する危険のあることは一般の消費者にはあまり知られていません。
天気のよい日、野外では、着火剤や炭が燃焼していることが見えにくい
●メチルアルコール含量が100%近い着火剤の炎は、明るいところでは見えにくく、燃焼中かどうか確認できない場合がありました。また、炭の燃焼も確認できない場合がありました。
●そのためか思わず着火剤をつぎたしてしまうことが多いようです。
残量が少ない容器に引火爆発
●着火剤の残量が少ない容器を火種に近づけるとガスに引火し爆発音とともに大きな火炎が燃え広がりました。
●マヨネーズのような容器入りの着火剤は、マヨネーズと同様、全部絞り出そうと思っても、容器の壁面や底にいくぶんかは残ってしまいます。しかし、容器の中の空気は爆発するおそれがある濃度になっているため、使った後、扱い方によっては、容器に引火爆発することも考えられます。
注意表示の内容がわかりにくい
●警告マークや安全な取り扱い方についての注意点は表示されていましたが、文字数が多すぎたり、文字サイズが小さいなど読みにくい印象を与える商品が目につきました。着火剤や炭に火がついていると見えないために、火がついていないと勘違いしたつぎたし事故が起きているのにもかかわらず、火がついているかどうかの確認方法の表示はありませんでした。また、揮発するメチルアルコールの有害性についての表示も十分とはいえませんでした。
2001年8月発行「くらしの危険No.249」より