ニュース:政治 RSS feed
中国人の生活保護大量申請で制度の不備明らかに
中国・福建省出身の日本人姉妹の親族とされる中国人48人が入国直後、大阪市に生活保護を大量申請した問題は、入国管理や生活保護をめぐる制度の不備を次々と浮かび上がらせた。現状では入国審査は形式的で、就職先の実態も調査しないまま在留資格を認めており、そのまま生活保護に申請が集中。大阪市では、過度の財政負担に「もはや制度は限界」と悲鳴をあげており、国に対して今後、制度の抜本的な見直しなどを要請していく方針だ。
■「極めて不自然」
「住むところも仕事もない」。5月18日、入国直後の中国人3人が外国人登録のため大阪市西区役所を訪れた。付き添っていた市内在住の中国人男性は彼らの家系図を示し、ワンルームの3室に10世帯25人が暮らしている窮状を訴えた。
結局、中国人の親族48人全員が保護受給を申請。これに対し市は、「入国直後に一斉に受給申請しているのは極めて不自然」として6月29日、緊急会見を開いた。
「事実関係を問い合わせたが、会見を開くまで何も回答がなかった」。平松邦夫市長は、在留資格を審査し、定住者として認めた大阪入国管理局の対応に不信感をあらわにした。
■審査は形式的
大阪市は、入管難民法第5条が定める「生活上、国または地方公共団体の負担となるおそれのある者は上陸できない」との規定を根拠に、今回の入管の対応を問題視する。
48人の扶養を約束した身元引受(保証)人は、同郷出身の中国人2人だけ。来日後の雇用予定先として大阪府内の5社を記載した陳述書も提出されたが、入管が従来、雇用予定先まで実際に調査することはなく、形式的な書類審査にとどまっていた。
48人の在留資格を申請した弁護士も「書類の内容は虚偽ではないが、内定を確約するものでもない」と、あくまで“形式的”であることを強調する。
■各種制度に不備も
入管難民法は平成2年に改正され、日系2、3世と配偶者は就労制限のない定住者の在留資格が認められた。
この法改正の背景には、当時の好景気で労働力不足に悩む経営陣の意向もあったとされ、改正後は日系ブラジル人や中国残留邦人の親族呼び寄せも急増した。
厚生労働省によると、21年度までに帰国した残留邦人は6646人。ただし、在留邦人が親族として呼び寄せた2世や3世の数については「把握していない」という。
20年4月には、在留邦人の生活を支援するため月額最大約8万円を支給することなどを盛りこんだ改正帰国者支援法も本格施行されたが、2世や3世などの親族は主な施策の対象外とされ、受け皿は生活保護しかない。
しかし、大阪市では生活保護受給者の急増で財政を圧迫、制度そのものが限界にきている。平松市長は入管に審査の厳格化を求めるとともに、「生活保護という観点だけで市に判断を委ねるのは間違い。国として制度そのものの抜本的な見直しが必要だ」と訴える。