平幕鶴竜、豊真将全勝ターン/名古屋場所
<大相撲名古屋場所>◇8日目◇18日◇愛知県体育館
東前頭6枚目の鶴竜(24=井筒)が、大関琴欧洲(27)との全勝対決をすくい投げで制し、初のストレート給金を決めた。先場所まで4場所連続負け越し、さらに場所前には自らも仲間内での花札を申告して、謝罪会見に立ち会った。逆風の中での土俵だったが、大好きなサッカーW杯の選手の言葉が精神面強化のヒントになった。9日目は過去12戦全敗の横綱白鵬(25)に挑む。全勝はほかに白鵬と東前頭13枚目豊真将(29)の3人。平幕2人の全勝ターンは、07年夏場所の出島、普天王以来2度目となった。
土俵際だった。体勢は鶴竜の方が不利だった。16センチ高い幕内最長身203センチの琴欧洲の圧力をはね返し、左からのすくい投げで巨漢を裏返した。初日からの連勝も、昨年秋場所での自己最長「5」を大きく伸ばした。「最後は体が反応した。必死だった。ストレートで勝ち越し? うれしいですね」と、細い目をさらに細めて笑った。
初日を1週間後に控えた4日に白鵬らと謝罪会見を行った。相撲協会への上申書に2年前の仲間内での花札を申告していた。軽微な賭博だったが、野球賭博の影響で世間の逆風は厳しく、初日の取組後に「反省!」とヤジを浴びた。所属力士が初日から17連敗した阿武松部屋勢など、賭博関与部屋の力士の多くが成績不振に陥る中、鶴竜は「自分の相撲を取ることだけ考えた」と平常心を貫いた。
先場所まで4場所連続負け越し、もともと精神面の強化は急務と考えていた。大好きなW杯を観戦しているうちに、試合後の選手インタビューに注目するようになった。「どういう気持ちでプレーしているのか、すごく勉強になった」。パスではなくドリブルを選んだ理由、相手の疲労まで考慮に入れたプレー、目線だけのフェイント…。一流選手の決定的なプレーの裏には、すべて根拠があったことに感銘を受けた。一瞬の判断や駆け引きは、相撲に通ずると夢中で聴いた。
9日目は過去12戦全敗の白鵬と全勝対決となった。「どれだけ成長できたか確かめたい。明日も同じような気持ちを持てれば、いい結果が出るんじゃないかな」。元横綱朝青龍関には1度も勝てず、後悔の思いは今も強い。「横綱に勝ちたい。朝青龍関がいなくなって余計思うようになった」と打ち明けた。千秋楽翌日の26日にはモンゴルに帰国し、国民に信仰されているスフバートルのアルタン・オボー山を登る予定。小学生以来2度目。まずは初の横綱超えという大きな山に挑む。【高田文太】
[2010年7月19日9時17分 紙面から]
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