口蹄疫:感染疑いのスーパー種牛の「忠富士」 殺処分に

2010年5月22日 10時55分 更新:5月22日 12時54分

エース級種牛の口蹄疫感染疑いについて沈痛な面持ちで会見する高島俊一・宮崎県農政水産部長(中央)ら=宮崎県庁で2010年5月22日午前2時32分、加古信志撮影
エース級種牛の口蹄疫感染疑いについて沈痛な面持ちで会見する高島俊一・宮崎県農政水産部長(中央)ら=宮崎県庁で2010年5月22日午前2時32分、加古信志撮影

 宮崎県で口蹄疫が多発している問題で、農林水産省と県は22日未明、国の特例措置で同県西都(さいと)市に避難していた「宮崎牛」のエース級種牛6頭のうち、最も精子供給量の多いスーパー種牛「忠富士(ただふじ)」が感染している疑いが強いと発表した。22日以降に殺処分される。家畜伝染病予防法は、同じ農場の家畜の殺処分を義務付けているが、県は国と協議して、残る5頭については経過観察措置とした。

 忠富士など6頭は、県畜産改良事業団(同県高鍋町)が人工授精用に生産する冷凍精液の主力牛。年間15万本のうち6頭で全体の約9割を賄っていた。特に忠富士は、最大量の年間3万7900本の冷凍精液を供給。

 事業団では6頭を避難させた2日後の15日に感染が確認され、次代を担う種牛や、引退した「安平」など49頭を含む308頭が殺処分される。

 県の畜産再興を担う6頭のうち、スーパー種牛を失うことに関係者には衝撃と落胆が広がった。

 県庁で会見した高島俊一・県農政水産部長は「事業団にいる時に感染した可能性が高い。県畜産界のエースを失った。大変申し訳ない」と陳謝した。【小原擁】

 ◇ことば・忠富士

 約22万頭の子牛の父となったスーパー種牛「安平」の遺伝子を受け継ぐ宮崎市産の種牛。913キロの大型で、生殖適齢期の7歳。肉質は霜降りが多く、肉に厚みがあり、ステーキなどに使われるロース肉が多く取れる。昨年の県畜産共進会肉牛の部でグランドチャンピオンに輝いた。

 ◇「ショックが大きすぎる」三重の松阪牛関係者

 三重県松阪市の松阪牛連絡協議会副会長、瀬古清史さん(61)は約500頭の肥育牛を育てているが、その半数が「忠富士」から生まれた子牛だ。

 「ショックが大きすぎる。6頭の中でも、忠富士は性格が優しくておとなしく、健康で大きくなりやすいし、霜も入りやすい。三拍子も四拍子もそろった牛だった」と声を落とした。

 「宮崎とは付き合いが長かったので、6月ごろまでは何とか耐えたいと思っていた。でも一番大切な種牛がやられてしまった今、他県からの買い付けを早く検討しないといけない」と話す。

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