チラシの裏SS投稿掲示板




感想掲示板 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[7259] 【習作】スパロボ的な日々(SRWOG+他クロスオーバー オリ主モノ)【二部開始】Act.10追加
Name: C-K◆ae02f8a5 ID:27ec9c7b
Date: 2010/07/18 15:02
はじめまして、C-Kと申します。

これはスーパーロボット大戦に出てくるキャラクターを使った二次創作です。
文章書くのもまだ初心者ですが、胸を借りるつもりで書かせていただきます。


※注意事項

・この小説は、私が夢で見たモノを基礎設定【家族設定(犬含む)、学年ごとの人物分け、教師とその他の人物】にして、多少アレンジを加えたパラレルものです。

・オリキャラ主人公モノです。

・キャラクターの年齢的にみて、キャスティングがおかしいと云うのがあるかもしれません。

・スーパーロボット大戦のすべてのゲームをプレイしたわけではないので、キャラ崩壊があるかもしれません。

・ブレイクエイジとクロスオーバー(バーニングPTをデンジャープラネットの設定を使っています)。

・慣れてないために、1話が短いです。



以上の事項をみて、大丈夫だと思う方は先にお進み下さい。



外伝以降は色々とクロスオーバーネタが存分に詰まっております。
・・が、全部書ききれる自信がありませんので他世界の話は勘弁してください。

4/5:外伝4以降部分を少々作り変えますので、話数が少しおかしくなります。
   しばらく掛かりますので、見苦しいですけれどもお許しください。
4/7:修正完了しました。



[7259] 01 「ランチタイムへの攻防戦」(加筆修正)
Name: C-K◆ae02f8a5 ID:27ec9c7b
Date: 2009/04/29 03:23



・・・静かなメロディ、目覚ましの奏でる音。あー朝か、起きなきゃ・・・。
ふと感じる小さな違和感、はっきり目覚める体。

(・・・・・・あれ? ここ私の部屋・・・だよね?)

こじんまりとした机、朝日の差し込む窓、タンスとその上に飾ってあるぬいぐるみ。カーペットとベッド、そして自分。

(いつもの朝だよね・・・。気のせいかなぁ。)

いつものように軽く伸びをして、簡単に身支度。制服、ブレザーを着込み、
そろそろ腰まで届きそうな髪は首の後ろで青いリボンで縛る。昨夜も確認したカバンの中身をチェックして完了。

「よし、カンペキ」

申し遅れました。私は【巳子神 櫻(みこがみ さくら)】この家の末っ子です。





「おはよう、ブリット兄さん」

「ああ、おはよう。櫻」

階段を下りたところに居合わせたひとつ年上の兄、ブルックリン・ラックフィールド、
略してブリット兄さんに挨拶。
学校が同じだから同じブレザーを身に着けているけど、あっちの学年はネクタイの色が青、私のは首もとのリボンが赤。
兄さんは私の横をすり抜けて、玄関へ。

「あれっ? もう行くの?」

「ああ、日直だからなー」

「はぁい、いってらっしゃい。気をつけてねー」

後ろ手をひらひらさせながら玄関を出て行く兄を見送って、リビングへ。
そこには本来なら新聞を豪快に広げ、腕組みをしながら難しい顔をして読んでいる人物が・・・・・・居なくて・・・。

「あれれ? キョウスケ兄さーん、ゼンガー兄さんはぁ~?」

私はリビングの反対側、キッチンカウンターでトーストを準備するこの家の次男、
キョウスケ・ナンブ兄さんに問いかける。

「忘れたのか? 今日まで地方へ視察だとか言っていただろう」

「そうだっけ?? 記憶に無いなあ・・・」

食卓に兄さんと向かい合わせに座り「いっただっきまーす♪」とトーストをかじる。あ、バター塗るの忘れてた。
そうそう、やりたいことと言いたい事があったのさー。

「兄さん。たまには私がご飯作r「却下だ」ええぇ~~!?」

一刀両断!? 理由もなしに酷すぎる・・・。

「別にお前が不味い物を作るワケでないのは知っている。だが、お前の飯を喰うと外食の不味さが際立つからな」

「うわぁ、私と関係ない理由で横暴だ・・・」

料理が唯一の趣味らしい趣味なのに、パティシエで居ろってのは酷いなあ。コックがやりたい・・・。
なんか手を考えなくっちゃーね。





そうこうしているうちに食事を終えたキョウスケ兄さんが席を立ち、赤いジャケットを羽織る。

「さて、先に出るぞ。戸締りと、ハガネの餌を忘れるな」

「はーい、いってらっしゃーい」

朝食の後片付けと、キッチン周りの火の元の確認を終わらせていた私に声をかけて、
仕事へ出勤して行った兄さんを玄関まで見送る。
ついでに家の前で待っていたらしい、兄さんの同僚のエクセレンさんにウインクされた。「あはは・・・」

<ハガネ>と書かれたペット皿にドックフードを山盛りに入れて、カバンを持ち玄関にカギをかけて外へ。

「ハッガネ~。ごっはんだよ~」

そのまま庭へ回り、犬小屋の前へ行ってお皿を地面に置く。

 わふ

私が時間通りに出てくるのが判ってたらしく、その場に座ってたと思わしきちょいとSD入った戦艦の前へ。

 くぅ~ん

もう犬が本来ならばどういった形だったのか、忘れちゃったよ。
触るとその動物の形なんだけどね。なんで私には動物がメカに見えるのだろうか・・・。

「ま、いいか。 はいハガネ、ご飯だよ~」

 わふわふっ

船尾を器用に左右に振りながら、艦首砲部分をドッグフードの山に突っ込むハガネ。
おお、みるみるうちに減ってくドッグフードの山。
思うんだけれど、どうやって食べてるんだろう? 不思議。

「じゃ、学校へ行ってくるからね~。お留守番頼んだよ、ハガネ」

 わうっわん!









「おはようですの、櫻」

「おはよう、アリィちゃん」

私が家を出ると同時に、隣家から出てきた同じ制服を着た女の子、アルフィミィちゃんが声を掛けてくる。

「どうかしましたの? 浮かない表情ですのね」

「あー、うん。ちょっと色々あってねー。たいしたことじゃないから大丈夫だよ」

幼馴染で長い付き合いだからなー、顔会わせただけでこっちの心情も悟られちゃうなぁ。

「今日は、アクセル兄ィは?」

「さきほど、キョウスケとエクセレンの後を追って、仕事に行きましたの」

アクセル・アルマーさん。がっちりとした洋館の隣家の主。
アルフィミィちゃんのお兄さんで、私のもう一人の幼馴染でもあり、キョウスケ兄さんの同僚でもある。
もう一人の甘めの兄、って感じかな。突発的な行動に付き合ってもくれるしー。

「んじゃ、がっこ行こう。今日はいつもより少し遅いからね。とっとと行こ」

「ええ」

並んで道を歩く。学園まで徒歩で15分、遠すぎず近すぎず微妙なところかな。
歩きながら話すのは朝の事。「たまにはご飯作りたいわぁ」「ん」






着いたところは【飛龍学園】。なんか昔は軍学校だったらしく、制服のデザインは軍服みたいなのよねぇ・・・。
朝礼で生徒がずらーっと並んでるところなんか見ると特に。

ここら辺では特に大きい学園で、中等部と高等部、奥のほうには大学部の校舎が広がっている。
中等部からとくに成績に問題が無ければ上に上がれるため、4年も通ってるとみんな友人感覚。

「おっはよー」「おはようですの」「「おはよう、巳子神さん」」「「おはようアルフィミィさん」」

クラスは1-2。1年生のクラスは4階にあるため、遅刻ギリギリだと階段で地獄を見るよね、うん。

「おはよう二人とも」「おはよう、櫻、アルフィミィ」

「おはよう、マイ、ラトゥーニ」「おはようですの」

中等部から4年間ずっと同じクラスのマイ・コバヤシとラトゥーニ・スゥボータ。
席も近いし、背も小さいし、なんとなく波長が合う親友ですよ。まあ、マイもラトゥーニも彼氏居るけどねー。
二人で一人の彼氏を共有してるのだ、将来は重婚するつもりなのだろうか?

「櫻、放課後にリュウセイ達が、バーニングPTチーム戦やろうって言ってたんだけど、来ない?」

「うぇ・・・。まぁたこっちが一方的にフルボッコにされるだけじゃないの。行かない」

「まだ朝なのに、もう放課後の話ですの?」

リュウセイ・ダテ。マイとラトゥーニの彼氏でもある。ロボット研究会会長、ロボットヒーローモノオタク? かな。
ついでに彼女を二人持っていると云う理由で、校内の男子50%程に目の敵にされているらしい。

バーニングPTは対戦型アクションロボットゲーム、
自機を自宅でチェーニングできるためにコアユーザーが多いらしい。
私も一応マイ達に付き合って自機作ったけど、そこまでのめり込む必要も無いかなーと。


「櫻」

「なに? アリィちゃん」

「そんなに料理が作りたいのでしたら、ウチでご飯でも作るといいですの」

「ッ!」

おおそれだ! そうかそうか、その手があったわ。それはいい案ですよ。さすが幼馴染、心の友と書いて心友。
思わず手をとってぴょんぴょん飛び跳ねてしまった私に、ラトゥーニとマイが反応する。

「櫻のご飯・・・・・・。おいしそう」「あー、できれば、少し分けて欲しいかな・・・」

「あ、そうか。お弁当作ればいいんだ。よし! これでキョウスケ兄さんに『ぎゃふん』って言わせられるかも」

「キョウスケが言いますでしょうか? 想像不可能ですの・・・」









****** other view ******


アルフィミィの幼馴染である巳子神櫻は色々とハイスペックだが、その中で料理だけは別格である。

たとえば同じ材料で同じレシピを使ったモノをそれぞれ作ったとしよう。
アルフィミィがつくったとしたら、十人並みの平凡な料理が。
櫻が作ったとしたら、途中で何か材料をすり替えたか付け足したかと思うくらい、
別物なほど美味い料理を作ってしまうのである。

逆に彼女の料理を食べてしまうと他の料理、
たとえば学食などがまったく味気なくなってしまうと云う欠点も持ってはいるが・・・。
偶に食べると、それだけでも嬉しいと感じる心があるとアルフィミィは思う。

「あー、でも、アリィちゃんところでご飯作るー、なんていったら警戒されちゃうかも・・・・・・」

昼食を終えた昼休み中、教室前の廊下にて四人は中庭やら青空を眺めながら、朝の続きを話し合っていた。

「偶には美味しいご飯を食べて、心を豊かにする余裕すらないの? 櫻の家族は・・・」

「キョウスケさんはともかく、ブリット先輩はそんなことはないと思うのだけれども・・・。
 その辺はどうなってるの? アルフィミィ」

家庭内の心情にも容赦なく突っ込むラトゥーニ、妥協案で抑えるマイ。
二人の反応を横目で見つつ、幼馴染兄妹の三男の反応を想定してみるアルフィミィ。
ブリットならば特に反対などしないのだろうけど・・・。

「隣に立つクスハしか思い浮かびませんの」

とたんにげんなりとした表情を浮かべる二人。その反応に「なんで?」と心底不思議そうな櫻。

クスハ・ミズハ。学園の二年生で保健委員。彼女の当番時の保健室は、閑古鳥が鳴いているという。
理由は言わずもがな、誰もがクスハ汁の恐怖を知っているからであった。 
ゆえに、櫻がお弁当を作る → ブリットと昼食をとるクスハが対抗意識を燃やす → クスハ汁(改)が造られる 
→ まずは味見でブリットが餌食に。 実に想定される出来事である。

三人の脳裏には青か緑な顔色で保健室のベットで寝込むブリットと、
傍らで微笑みながら看病するクスハ(元凶)の姿しか思い浮かばなかった。

アルフィミィにはこの場で公開すれば、更にパニックが引き起こされる事実があったりするが、
特に言葉にしようとは思わなかった。恐ろしいから。

「んー。じゃあ、アリィちゃんの家で下ごしらえをして、早朝からお弁当を作らせてもらうのはどう?」

「泊ったほうがてっとり早いんじゃないの?」

「朝の会話があって泊ったー、なんって云ったら絶対兄さん達が警戒するねー」

もはやラトゥーニもマイも苦笑するだけ。料理を作る作らないのだけで家庭内の確執が酷すぎる。

「ゼンガーさんは?」

「今日まで地方で視察。とか言ってたから、まっすぐ家に帰ってくるのかなあ、わかんないなー」

「あー、いそがしそうだものね」 

櫻の長兄で、家長でもあるゼンガー・ゾンボルト。
国会議員であるためにとても忙しく、アルフィミィでも最近は隣の家を出入りするのを見たことが無い。
みんなの頼れる親分。会議で紛糾する議事堂を
「チェストオオオオオオォーッ!!!」の気合とともに静かにさせる名物議員。民放のヒーロー。
この近所では特に有名人ではあるが、その妹がココに居る事はあまり知られては居ない。

たしかにゼンガーなら、「よかろう、許可する」で話が丸く収まりそうだ。
でも居ないから頑固なキョウスケが居るわけで。

「とりあえず櫻、夕飯終わりましたらウチにいらしてくださいですの、ハガネ連れて。
 クロガネも連れて行きますから、散歩にでも行きますの」

それでもアルフィミィは大切な幼馴染がやりたいことなら、気の済むまで協力しようと決めた。
それならもう一人にも手伝わせようと思った。

「う、うん。でも夜遅いよ?」

「アクセルの手が空いているでしょうから、ボディガードとして付いて来て貰うですの。
 それで帰りに荷物が増えたとしても、荷物持ちになってもらえば一石二鳥ですの」

「うわぁ~い。ありがと~っ! アリィちゃ~ん♪」

なんか後光が射してくるような笑顔を浮かべ、ひしぃっと抱きつかれた。
マイとラトゥーニが背後で「くっ、アルフィミィずるい」とか、「幼馴染特権ですねぇ」
などとぼやいてるのは聞こえないことにした。櫻の笑顔のひとりじめ、それはとても嬉しいこと。










****** sakura view *******


むっふっふ~♪ 頑張った。頑張ったよ、私。

持つべきものは、融通の利く幼馴染だね! キッチンとか快く貸してくれたアクセルさんに感謝! 
買い物とか散歩とか、色々とカモフラージュになりそうな理由とか立案してくれたアリィちゃんに、超感謝!!

朝4時から兄3人分+3人とアクセルさんの分と、
私とアリィちゃんとマイとラトゥーニの4人で食べられるようなお弁当。計11人分のお弁当作りましたよ~。
・・・ちょっと大変だったけど。

「はい、ゼンガー兄さん。秘書のレーツェルさんと食べてね」

「うむ、すまん」

昨夜遅く帰宅した割に、朝は私達と同じ時間に出勤すると云う兄さんに渡すのは、重箱2段にしたお弁当。

「ブリット兄さんは、これとこれね。青い包みはお兄ちゃんのだけど、ピンクの包みはクスハ先輩に渡してね」

「ああ、ありがとう」

前もってメールでミズハ先輩には確認済(ダブると申し訳ないもんね)なため、先輩分も兄さんに渡しておく。
最後に憮然とした表情で腕を組み、そっぽを向いているキョウスケ兄さんに渡すのは、3段の重箱で。

「はい、キョウスケ兄さんにはこれね。エクセレンさんとアクセルさんで仲良く分けてね。
 特にアクセルさんには材料費を半分出してもらったり、荷物持ってもらったり、
 キッチンを『快く』貸してくれたりしたんだから、絶 対 に 一 緒 に 食 べ て ね ! 」

半分脅迫じみていると自分で理解している笑顔で、お弁当を次兄の前に差し出す。

「はぁ~・・・・・・わかった。ありがたく受け取ろう」

いやいや、お弁当受け取るだけで重~いため息って酷いと思うよ。











****** kyousuke view ******


「くぅ~~~~~っ。偶に食べると美味しさが際立つわねぇ、櫻ちゃんの料理」

「いやはや、櫻を本気にさせると後が怖いと言う訳だな。なあ、キョウスケ」

ひと口サイズの骨付き唐揚げを平らげながら身悶えするエクセレン。
おにぎりを頬張りながら、昼食が始まってから笑いっぱなしのアクセル。
相変わらず無言の表情で茶を啜るキョウスケ。

「・・・アクセル・・・。お前も一緒になって俺をハメただろう・・・」

「人聞きが悪いな、キョウスケ。この件に対して、全面的な企画立案はアルフィミィなんだが、これがな」

「そうよぉんキョウスケ。たま~にはこう云う美味しいもの食べて、心に栄養を与えないと」

エクセレンは、キョウスケの額の寄っている眉をビシッと指して、「こうなっちゃうんだから~」と、言い張る。

「・・・・・・まあ、たまには美味い飯も悪くない」 もぐもぐ

「もっと美味そうな表情は出来ないのか、お前は・・・」 もぐもぐ

「作ってくれた人に感謝の気持ちを持って食べなさいよねぇん」ガツガツムシャムシャぱくぱく

「「お前はもう少し落ち着いて食え」」








****** sakura view ******


あ、そういえばキョウスケお兄ちゃんに「ぎゃふん」って言わすの忘れた。



















(あとがき)

短かったので、後半部分と繋げて、再うpです。

ミヤビ様情報によるバーニングトルーパー=バーチャロン(デザインその他)+AC(アセン他)+戦場の絆(POD)。・・・どうしよう、どれも私の反射神経じゃ無理っぽい(泣)

登場人物が多いので小出しにすることにしました。

次はもっと文章量を増やすのを目標にしますorz

※4/29加筆修正



[7259] 02 「ゲームセンターからの葬送曲」
Name: C-K◆ae02f8a5 ID:27ec9c7b
Date: 2009/03/16 18:16
※バーニングPTを適当に自己解釈して『ブレイクエイジ』の設定を使いました。

------------------------------------------------




学生の義務として外せないのが、まじかに迫った第一の関門。つまりは中間テストであります。

まあ、主要五教科のみだけど・・・。高等部に上がってから初めてのテストなので勉強会を開こうと、云うことになったのですよ。

会場は、とても二人だけで住んでいるとは思えないどどーんとした威圧感を持つ洋館、アリィちゃんのお家。つまりは隣のお家訪問なわけです。ウチは横に長い日本家屋だから、並んで建つ家並みを見ると対照的ですよ。

この前、料理するのにキッチン借りましたけどね。ここは専門の家政婦さんが定期的に通うってことらしく、二人ともほとんどキッチンは使わないらしい。普段の食事とかどうしてるんだろう??

おかげで今日で最終日の五月の連休中に、このキッチン使いまくりだったのですよ♪ 和食洋食中華にお菓子と、いっぱい作ってしまいました。アリィちゃんもアクセルさんにも喜んでもらえてよかったなあ。 もちろん自宅の食卓にもここで作ったのを持って行きましたよ。キョウスケ兄さんの職場にも「デリバリーでーす」とか云って届けました。主にエクセレンさんに歓迎されたけど。

勉強会をするにあたって、中等部からの馴染みを四人ほど誘ったんだけど。マイとラトゥーニは来ないねぇ。アラドくんとゼオラが来たので、四人でテーブル囲んで勉強をすることにしました。

「よっしこr「ちょっと! 何やってんのアンタは!? こっちの半分の式は何処行っちゃった訳!?」で・・・」

・・・・・・アリィちゃん・・・。さっそく子犬の写真集なんて広げないで・・・(涙)

「いやだk「途中式を書きなさいって何時も言ってるでしょう!」ら・・・」

今日の勉学時間は終わりましたの、って? いや、仮にも勉強会なんだからさ。みんなでやろうよ。

「だかr「なんでこの次でいきなりyが消えてるのよっ!? ああもうほらっ! もうっと万人にも読める字を書きなさいって言ってるじゃないのっ!」・・・・」

「「・・・・・・・・・・・・・・・」」 (← テーブルの対面側を見るアリィちゃんと私)

「「・・・・・・・・・・・・・・・」」 (← アイコンタクトで会話するふたり)

「・・・・・・ゼオラ・・・・・・」 (← しょうがないですの、と云う表情で声を掛けるアリィちゃん)

「なに? どうしたの?」(← 何事も無いようなさわやかな笑顔で返すゼオラ)

「可哀相だから、アラドくんの発言は最後まで言わせて上げようよー」(← ノートにうつ伏せたアラドくんの頭を撫でる私)



実ににぎやかを通り越して騒々しいです。クラスは離れちゃったけど、この辺は変わらないんだなぁ・・・。

「このバカは反論を許すと反省もしないからよ。徹頭徹尾押さえ込まないと調子に乗るだけよ」

「ううー・・・、オレも自分だけでできるんだってのによー」

「計算が最初から間違ってるって言ってるじゃない! それに使う式も覚えてないんだから、まずは何の勉強をやってるのか把握しなさいっ!」

撃てば響くのね。・・・最初に逆戻りだなあ。

「・・・アラドは私が教えますの」

「ゼオラも他人を怒鳴ってないで、自分の勉強やろう? アラドくんはアリィちゃんが引き受けるって」

普段がほわわんとしてるアリィちゃんだけど、テストはいつも上位三位以内なのだ。うん、すごいよね。

「勉強会の割に櫻、貴方は? 教科書しか持って来てないみたいだけど?」

「やだなあ、ゼオラ。教師もテストを作るにあたって、参考にするのはこの教科書に決まってるじゃないのさー。つまり、教科書を見れば全部書いてある、と云うわけなのよ。当然でしょ?」

なに・・・その不思議生物でも見るような目は?

「ちょっと、アルフィミィ。櫻の去年の、順位ってどれくらいだった?」

「中等部三年の三学期のですの? それなら11位でしたですのよ」

なんか頭痛でも抑えるみたいにアリィちゃんに聞くゼオラ、即答されてジト目でこっちを見ないで!?

「でもそんな上の順位だったんだ、今初めて知った」

「はあっ!? 廊下に張り出されてたでしょう。 アラド達なんか最下位賭けて大騒ぎだったわよ」

「赤点なきゃそれでいいや、って思ってたし。戻ってきた答案も低くて70そこらだったし、別に気にもして無かったよ?」

アラドくんもゼオラも人をジト目で見るなんて酷いと思うよ。なんにもしてないのに・・・。

「いつもアラドと勉強してたから気がつかなかったけど、身近にこんなのがいたとはね・・・・・。いいわ、櫻。今日は勉強教えて!」

「了解だよ~」

普段アリィちゃんとふたりで勉強していると、無音の時間が過ぎていくだけだからねぇ。多少騒がしいほうが新鮮。














三時間ほどあれやこれやとやっていて、今、休憩中。朝に自宅でちょっと作ったクッキーと、アリィちゃんの家のキッチンで、戸棚の奥にぽつーんとあったダージリンで、ティータイム。うーん、なんか優雅。アラドくんは真っ白になってるけど、アリィちゃん何を教えたんだろう?

”ぴろろ~ん ぴろろ~ん ♪ ”

と、メール着信。差出人は・・・『マイ』? えーと用件は・・・?

「『救援要請 バーニングPT 至急応援求む メーデーめーでー』・・・・・・なにこれ?」

「なに? マイ達、明日からテストなのにゲーセンなんか行ってる訳?」

「バーニングPTッ! いいッスねー、オレも行くっすよー」

わっ!? ガバァって、コメツキバッタのように跳ね起きないでよアラドくん。真っ白になってたんじゃないの?

「ダメ」

「へっ?」

立ち上がろうとしたアラドくんを、ひっつかむアリィちゃん。ふっ、まだこの子の恐ろしさが判ってないようだね、アラドくん。アリィちゃんはね、いったん懐に抱え込んだものの面倒は最後まで見るんだよ。強制だよ。君に拒否権は無いよ(笑)

「櫻、こっちはちゃんと引き受けますのよ」

「ん、じゃあちょっと行って来るね~。ゼオラはどうするの?」

「・・・私はもう少しやっていくわ。アルフィミィ、櫻の代わりに教師役頼める?」

「いいですのよ」

ばいばーい、まったねー、と手を振ってアリィちゃんの家を出て、一旦自宅へ。機体データ持って行かないと遊べないからねー、バーニングPT。あら? 家にカギ掛かってる。

今日は珍しく朝からゼンガー兄さんが居たんだけど、今は居ないみたい。裏のリシュウ先生の道場へ、日ごろの運動不足の解消にでも行ったのかな。一応、リビングのホワイトボードへ名前と行き先を明記して、カギ掛けて。

「ハガネ~、お留守番よろしくねー」

「わうっ」












「はぁーい、そこ行く若人~~♪」

途中でエクセレンさんに会いました。ブロンドのポニーテールをぴこぴこ振りながら、気がつけばすぐそばに。なんつー侮れない足運び。

「こんにちは。エクセレンさん、パトロールですか?」

「いやだわぁ、今日は非番よ。ひ・ば・ん。プライベートなのよん」

「なるほどー。兄さんは今日は仕事だったから、さしずめからかう相手か遊べる相手を捜索中、ってトコロですか?」

なんとなく、兄さんからの【アレ】行動情報より推測される私の発言に、笑顔で固まるエクセレンさん。図星だったらしい。

「櫻ちゃんはどうしたの? 飛龍学園、明日っから中間でしょ?」

「そっちは大体終わらせまして。友人から救難要請が入ったので、戦場まで」

「テスト勉強の戦場??」

笑いながら「違いますっ」と訂正して、かくかくしかじかと理由を説明。そしたら「おもしろそうだから、私も付いて行くわン」となりました。この人もアレやるのかなぁ

「ふっふっふ~。私のヴァイスちゃんみたら腰抜かすわよぉん」

しかし、過度な色気なしにモノを喋るってことはできないんでしょーか、この人・・・。











近所で一番でっかいゲームセンター、【ワールドプレイパレス】。1Fまるまる使って、バーニングPTをプレイが出来る10台の円筒型筐体。通信対戦で最大30人分のバトルロイヤルが出来る、とかなんとか。2F~3Fは普通のゲームとかメダルゲームとか、UFOキャッチャーとか。

入ったところにあるくつろぎスペースで、マイとラトゥーニとダテ先輩を発見。

「こんにちは、ダテ先輩。後、マイ、ラトゥーニ。メール見たけれど、なにするの?」

「よお、巳子神。・・・と後ろのねーちゃんは?」

くたびれてて動く気も無いって感じの女子二人組。手を振り上げて挨拶を交わしたリュウセイ・ダテ先輩が、私の後ろでニヤニヤしているエクセレンさんを不思議そうに見る。

「初めまして、ボウヤ。私はこの・・・「ちょ、ひとの頭をぽむぽむ叩かないでください」お兄さんの同僚で、エクセレン・ブロウニングでーす。以後よろしくぅ~」

「はぁ・・・? リュウセイ・ダテだ、よろしくなー」

「ちょっと! リュウ! 年上の人よ。敬語くらい使ったら?」

マイちゃん、くたびれながら言わなくっても・・・。キミも使ってないぞ。まあ、キミらは恋人同士だからかまわないけど。

「いやいや、かまわないわよ~ん。人類みんなしょっぴく時は地位とか関係ないもの♪」

のほほーんとした顔のまま固まるダテ先輩達。

あー、まあねぇ・・・。この人って云うか、兄さんの職業とかねー。つーか、青少年脅して楽しいですか? 今日は非番でプライベートじゃなかったのかなぁ。

「・・・・・・櫻・・・。この人・・・・・・?」

「うん、私のキョウスケ兄さんと、アリィちゃんトコのアクセルさんの同僚。現職の刑事さんデスヨ」

後ろ暗い人はみんな固まるんだよ、ラトゥーニ。

「やぁねぇ~、別に何にもしやしないわよん。今日は非番でプライベートで来てるのよン」

くねくねしながら会話しないでください。

「んで、私を呼んだ用件はなに?」

「・・・あー、それなんだけどねー。説得に手が欲しいの・・・」

ふたりがかりじゃこの人落とせなくて、とか言ってるよ。・・・なんかだいたい判った。

つまりは勉強をしようと思ってダテ先輩を誘いに行ったはいいけれど、この人は「中間くらいでカリカリしなさんな、べらぼうめぇ」なんて言い分で、まったく取り合わなかったと。しまいには「バーニングPTで勝ったらやってもいいぞー」とか言われたものだから、誘いに乗ってしまった、と。

大体の推測で説明したら、「それで正解」とサムズアップされました。

「よく判るなー、巳子神」

「付き合いはそれなりに長いと思いますよ。私達もダテ先輩もー」

ダテ先輩が主催するロボット研究会、ココに一応私も席を置いていますからね。元々はみんなでバーニングPTをやろうってことで集まった集団なんだけど、私はマイ達に連れ込まれただけー。私達のほかにも、アンドー先輩やらタスク先輩やらアラドくんやらが所属してたはず・・・。

ちなみにエクセレンさんは「ちょっと撃ってくるわねぇん」と言って、バトルロイヤルに行ってしまいました。中央にある超大型ディスプレイに、現在進行中のゲームの様子が映し出されてるけど・・・。ヴァイスちゃん、とか言ってた機体はアノ白い四枚羽の長いライフル持ってるヤツかなあ。空飛んでるし。ダテ先輩もそれ見ながら「なんだありゃー」とか言ってるし。

「すげえ機体だなー。変形じゃなくてそのまんま空飛んでやがる・・・。どーゆープログラム組んでるんだアレー?」

たしか先輩のR-1とかいう機体は、変形して空飛んでいましたね。

「さっきヴァイスちゃん、とか言ってましたよー。腰抜かすーとか言ってたけど・・・」

ダテ先輩が、あー、うー、とか唸ってるさまを見るとすごい事なんでしょうねー、あの機体。

「マサキの機体と似たようなもんかなー。そうすると装甲は薄いのかー・・・・・・・・・・・・」

なんかぶつぶつ思考しはじめた先輩。テスト勉強に頭を使えばいいのに・・・。

「私はちょっと、ストーリーモードで慣らし運転をしてきますねー。まだ二回しか使ったことがないんで、この子」

あとモーションとか、アンチョコとかー。色々とめんどくさいのだ、今使ってるのは。

「櫻、ゲシュペンストから乗り換えたの?」

「うん、知り合いにバーニングPTやってるって言ったら、「貴方ならコレを使うといいですよ」ってくれた」

おじ様太っ腹だ。ちょっとでっかくて動きが鈍いのが難点だけど・・・。

「んー、じゃあ次の次にバトルロイヤル四人で登録しておくわねー。遅れないでよー」

「バトルロイヤルって・・・。限定戦場じゃなくて? 他にも色々と巻き添えになりそうな気がするけど・・・」

受付で登録済ませて空いている筐体へ。この周辺の学生は大体飛龍学園だから、休日のこの時間としては随分空いてるなあ。先輩みたいに丸投げしないかぎりは、テスト前に遊ぼうなんて思わないものね。

「・・・・・・一応、救援要請はしておくべきかな?」














「通信パターンはオープンで? 色々だだ漏れな気もするけど・・・・・・」

この辺の操作はよくわからないなー。

『おー、3vs1だからなー。とりあえず、そっちが合流したら戦闘開始で。仲間内で誤射すんなよー』

ふ、こっちは長距離砲撃戦だから、レーダー範囲は広いのよ~。どれが敵でどれが味方だか、目視するしかないけれど。

同時にフィールド参戦は全部で23機。多いわぁ・・・。

『櫻、とりあえず発進口出たら止まっててもらえる? そこに私達が合流する事でいい?』

砂漠:快晴:風速4m。視界は良好、さぁて、ダテ先輩に積年の(このゲームでフルボッコにされた)怨みをプレゼント、フォー、ユーですよ。





****** other side ******

「なによ、アレ・・・・」

レーダー上で動かない点を目指して、がしょんがしょんとマイ達が近づくと巨大な日輪を背負った蒼い人型が佇んでいた。

『よし、これで合流。ダテ先輩、こっち合流終わりましたよ~』

『お~う。ちょっと待っててくれー』

『なんか向こうの方で、集まってる点あるけど・・・』

きっと待ってる間ヒマだった、と云う理由で他の参加者と戯れているのだろう。

「櫻、その機体なによ?」

『すごいでしょー。シラカワのおじ様がくれたんだよー♪ 今のうちにもろともに粉砕だよー』

ラトゥーニ達は何もしなくていいからねー、とかいった蒼い悪魔のような機体の胸部が開く。

『おいコラ、そっちで何してるんだ?』

インカムからは遠方で戦闘状態にあるために、こちらの状況がわからないであろうリュウセイのあせった声が聞こえる。

青い機体の胸部に添えた両手の間に、黒い球体が形成されていく。

『(・・・がさごそ・・・)』

「なにしてるの? 櫻」

『いやぁ、この技使うときはこのセリフ言えって、シラカワのおじ様がねー・・・』

紫とも青ともつかない雷鳴を轟かせながら巨大に成っていく球体。

『あー、コホン。・・・さて、おしまいにしましょうか。(←棒読み)』

『ちょっとまてェェェェェェッ!? なにしてんだよっ!』

外野二名はもはや唖然である。目の前のディスプレイで展開する光景を見ているだけで・・・。

蒼い機体が黒紫雷球を振りかぶり・・・、

『ぶらっくほーるくらすたー、はっしゃーっ!(←棒読み)』

ソレをぶん投げた。



デジタルの空のほとんど占領するような感じで黒い爆発が広がった。




















****** sakura side ******


「卑怯だぞ、やり直しを要求するっ!」

「先輩『勝てば』って言ったじゃないですか? 二回勝ちとか正攻法で勝てとか、そんな条件は入ってませんでしたけど」

「ぐっ・・・」

ゲームが終わった後でエクセレンさんに聞いた話なのですが。私の使った機体、ストーリーモードでハードレベルの最後のボスらしいのです。外でディスプレイを見ていた観戦者や、スタッフの方もなんか唖然としていたんだとか。

「先輩、早いところ勉強しましょう。でないと危険が迫ってますよ」

「ハッ、そんな脅しにオレがビビルとでも?」

マイとラトゥーニが「あ」、と先輩の後ろを見る。ふ、来たようだね。援軍が。

「リュ・ウ・セ・イ・く~ん」

声を聴いただけでダテ先輩がビシリと固まった。

「ダメじゃない、明日テストなのに後輩に迷惑かけるなんて・・・」

ミズハ先輩が到着しました。さっき『ダテ先輩のせいで勉強が出来ません、タスケテ~』ってメールしといたんだよね。ついでに後ろには、我が兄上が控えています。デート中にゴメンねー。

「とりあえず、勉強をするか健康ドリンクを飲むか、どっちがいい?」

ブリッド兄さん後ろで十字を切ってるし。

「ハッ! 喜んで勉強をやらせていただきます!」

「だって、よかったねぇ。マイ、ラトゥーニ」

ちゃんと笑えてたと思うんだけど、人を怯えた表情で見ないで欲しいなあ。なんか今日はこんなのばっかー。












ちなみに、中間テストは12位でした。アリィちゃんは2位でした。

ゼオラは10位だったんですが、次はもっと差をつけてあげるからね、って宣告されました。なんか怒らせることをしたかしらん? マイとラトゥーニは20、22位だったなあ。

アラドくんは49位に入ってて、ダテ先輩は赤字で補修組だったですよ。ご愁傷様です。

















(あとがき)

戦闘シーンとかむずかしいので速攻でおわらせました。

どうやって書けば人に伝わるのだろうorz








[7259] 03 「ビーストテイマー探偵社」
Name: C-K◆ae02f8a5 ID:27ec9c7b
Date: 2009/03/18 20:57
春も過ぎ、雨音の天気が近づく五月も下旬の休日に、ハガネの散歩に出かけました。

「わぅん」

あいかわらず、ちっこい戦艦ですよ。ふよふよと地面すれすれに浮いているのですが、他の人が見れば少し大きくなった子犬が歩いてるように見えるんだろうなあ・・・。

アリィちゃんに聞いてみたところ、ハガネとクロガネは兄弟で甲斐犬らしい。ハガネは茶毛でクロガネは黒毛で、頭の模様が違うだけらしい。

クロガネはドリル戦艦にしか見えないんだけどなあ・・・・・・。


なんで私には可愛い子犬とか子猫かが、きちんと見えないのだろう、と小一時間・・・・・・。

ペットショップ行ってみたら、戦艦とPTとAMの群れでした。凹む・・・。

「くぅん」

気がつくと足元にハガネが纏わりついていた。

「あー、はいはい。大丈夫だよ~。なんでもないよ~」

そばにしゃがみこんで、背中らしい副砲付近を撫でてあげる。

まあ見た目が戦艦だけど、手触りはヌイグルミみたいにもふもふだよねー。

「くぅ~ん」

「よしよし」


しばらく撫でてから、散歩再開。

「ありゃ、あれは・・・・・・」

ふと道の先、とぼとぼ歩く知り合いを見つけました。

くすんだブロンドに頭の左右でリボン結んだツインテール、私より小柄な身長。

ミズハ先輩の妹さん、イルイちゃんじゃないですか。

なんか元気がないみたいだけど、どうしたのかな?

「わんわんっ」

「・・・あ・・・・・・・」

駆け寄って、ハガネの声でやっとこっちに気づいたイルイちゃん。

随分憔悴してる顔色だ。

「どうしたの? 大丈夫? イルイちゃん」

なんかまた俯いちゃった。なんかあったな、こりゃ。



















****** other side ******


「どうしよう・・・・・・、どうしたら・・・・・・・・」

その日、イルイ・ミズハは失意のどん底に居た。

大切な、とても大切なものを失くしてしまったのだ。謝って済むものでもない。

昨日も探して、今日も朝から心当たりのあるところは全部探した。それでも見つからない。

あれは大事なものだった、つい気が緩んで外に持ち出してしまった。そして失くしてしまったのだ。

すべて自分のせいだ。

どうやって姉に謝ろう・・・・・・。

朝からずっとソレだけを考えていた・・・。

いや、謝って許してくれるのか? すごい怒られるかもしれない。最悪の場合、もう妹で居られなくなるかもしれない・・・。

それだけは、・・・そんなことは考えたくなかった。でも考えてしまった。

我慢していたモノにひびが入りたやすく決壊しかける。

「わんわんっ」

足元に子犬が駆け寄ってきたのはそんなときだった。

子犬と一緒に見知った女性も・・・、その女性を見たときにすべての堰は壊れた。

みっともなく彼女に縋り付いて、大泣きしてしまったのだ。





その女性は少しあっけにとられた後、イルイを優しく抱きしめてくれた。

「うんうん、悲しいことがあったんだね。大丈夫だよ。もう大丈夫・・・」

「わぅん」
















****** sakura side ******


いきなり大泣きして抱きついてきたイルイちゃんには吃驚したけど、20分くらいで落ち着いてくれてよかった。

「はい、これ。目の回り真っ赤だからこれで冷やすといいよ」

「・・・ありがとう」

あれから、近所の公園まで半べそのイルイちゃんを連れてきて、公園の水道で濡らしたハンカチを渡す。

落ち着いたところで、自動販売機で買って来たオレンジジュースも渡して、イルイちゃんの隣のベンチへ腰を下ろす。

私も買って来た、スポーツ飲料の蓋を開ける。

「わうぅ」

え? ハガネも飲みたいの? しょうがないなあ、ちょっとまっててね。

腰のポシェットからメモ帳を取り出して、一枚切り取る。それを折り紙のように箱型に折って、その中にスポーツ飲料を垂らす。

「はい、ハガネ」

砲塔をつっこんで、ちゅーと吸うハガネ。あはは、おもしろーい。2回ほど繰り返したら紙が破れてしまったので、「これで終わりね」って言っておく。ちょっと不満そうだけど納得してくれたようだ。ベンチの下に潜り込もうとしたところを、ひょいと捕まえてイルイちゃんの膝の上に座らせる。

「え?」

「紹介がまだだったね。その子ハガネって言うの、ウチの番犬」

色違いで隣にクロガネってのがいるんだよ~、とか言いつつハガネの頭(だと思われる)主砲塔部分を撫でる。

おずおずと膝の上の子犬(戦艦)の頭を撫でる、イルイちゃん。

「どう? もふもふでしょう」

「・・・はい、そうですね・・・」

うむ。ぎこちないけど、笑ってくれた。これなら平気かな。




「さーくーらーーっ」

いざ話を切り出そうとしたとき、背後から聞き覚えのある声が近づいてきた。いや、毎日聞いているけれど・・・。

「ブリット兄さん・・・・・・」

「よっ、櫻。やっぱりここを通るコースだったか」

軽快な走りで私の隣で停止した兄は、軽く屈伸をしてから私の頭を撫でる。

まあ、いいけどね・・・。言ったところで止めてくれないのは判りきってるし。

「お? イルイもいたのか。・・・・・・どうしたんだ?」

顔を覗き込もうとしたのを、間に割って入って止める。

「女の子の泣きはらした顔を覗き込もうだなんて・・・。兄さんデリカシー無さすぎ~」

「泣いてっ!? 何かあったのかっ!!」

「何でもないです。女の子には色々あるんですよ、その辺もう少し気を使ってくださいね。彼女持ちの兄さん?」

「むぐ・・・」

「それで、わざわざハガネと散歩中の私を探していたのは、何で?」

難しい顔をして口を噤むブリット兄さんの肩を叩き、続きを促す。

「あ、ああ。お前が出かけた直後に、エクセレンさんが来てキョウスケ兄さん連れてったからな。昼食を外で食おうかと思って追いかけてきたんだ」

「オゴリで?」

「む・・・・・・」

眉をひそめて黙り込む兄さんに笑いかけながら、イルイちゃんの手を引いて立ち上がらせる。

「冗談だよ~、兄さん。自分の分は自分で出しますよ~。イルイちゃんも一緒にご飯食べに行こう。こっちのお兄さんがおごってくれるって」

「・・・・・・え? で、でも・・・」

「はい、決定。ハガネも行こうね。わんこ同伴でもご飯食べれるトコ知ってるから」

「え? え? ええ?」

「イルイ、ウチの妹はそれなりに強引だぞ。観念したほうがダメージがなくていい」

兄上殿は私を何だと思っているのだろうか、失礼な。
















さっきの公園よりは少し距離が離れていたけれど、市内の高台にある高級住宅街の中の庭を開放したような、オープンカフェテラスで昼食をとることにした。前にリューネ先輩に教えてもらったんだー。と言ったら、あいつがねぇ? とか兄さんが言っていた。ああ見えてもリューネ先輩、お嬢様なんだよね・・・。普段の素行と言動からとてもそうは見えないけど。

兄さんはカレー大盛り。私はキノコとホウレン草のパスタ、イルイちゃんはチキンピラフ。ハガネは私の席の下で犬缶を山盛りにしたような物。

「兄さん妙にイルイちゃん気に掛けるよね? それって姉妹どn”ゴッ!”・・・ったぁっ!」

「携帯のカドで殴ったっ!? 今っ!! それは痛いよっ!!?」

「お前は何処でそんな知識を仕入れてくるんだ!? イルイの前で変な言葉を使うんじゃないっ!」

「えー、エクセレンさんとかエクセレンさんとかエクセレンさんとか、シングウジ先輩とか?」

「タスク・・・・・・アイツ明日ぶん殴る・・・」

「くそぅ・・・ゼンガー兄さんにも殴られたこと無いのに・・・・・・酷い・・・」

「兄貴はお前に甘すぎだ・・・」

「いや、結構厳しいと思うけれど・・・・・・」

この前なんかね、お弁当の感想聞いたら「アサリの甘露煮が・・・・・・・・」とか言って、難しい顔して腕組みだよ。ちくしょうって思ってさらに腕を磨くことを決心したね、次こそ文句を言われないお弁当を作るのさ。

「・・・こうして妹の料理はハイスペックになっていくのか・・・・・・」

いやあれはクスハも絶賛してたぞ。とかブリット兄さんのつぶやきを完全に無視して、心の中の料理の星に誓う。

「・・・・・・くっ・・・ぷっ、ふふっ・・・」

気がついたら声を押し殺してイルイちゃんが大爆笑ですよ。

「あはははっ、ふ、ふたりともおもしろっ・・・い・・・」

声にならないほど笑うのはいいけど、それ以上頭下げたらピラフに頭突っ込むよ。








なんか涙流すほど笑ったイルイちゃんでしたが、少ししてポツ、ポツと泣いていた訳を話してくれました。

なんでも、昔は姉妹仲がすごく悪くて、絶縁状態だったとか。

あることを切欠に仲良くなったとか。

夜店で仲直りの記念に、それぞれお気に入りのアクセサリー(おもちゃ?)を買ったと。

それを互いに交換して、姉妹仲を誓ったとか。

でもそれを昨日不注意で失くしてしまったとか。

時々泣き出しそうになったイルイちゃんをなだめながら聞きだした話は、結構ヘビーな話だった。


「桃園の誓いで交わした武具を紛失したようなものかしら?」

「後ろから刺されても文句は言えなさそうだな・・・・・・」

私ら兄妹の感想はこんなもんだった。実に失礼だね!


「んじゃ、とりあえず探すしかなさそうね。まだまだお昼になったばっかりだし、まだ半日ある」

「極東市と言っても結構広いぞ、どうやって探す?」

とりあえず、目的のものが何のか判らなくては探しようが無いので、イルイちゃんに形状を尋ねる。

「これくらいの・・・(直径4cm程の)銀色の星型にはまった青い石で・・・」

まずは人海戦術かな。携帯メールで『真面目な話です。青い石のはまった直径4cm程の銀色の星型のイミテなアクセを探しています。お心当たりの方は返信してください。 PS:クスハ・ミズハ氏には他言無用でお願いいたします。』と書いて、登録してある友人知人で極東市内に居ると思われる全員に送信する。

「目撃情報でもあれば少しは足しになるんじゃないかな?」

兄さんにも同じ文章で、私とかぶらない範囲で送信してもらう。


会計を済ませて店を出る。あとは徒歩と地道な捜査と最後の手段のみ。

”ぴろろーん””ぴこーんぴこーん””ちーんじゃらじゃら””ちんちろりーん””じゃんじゃんばりばり~♪”

「・・・・・・パチンコか・・・?」

少し歩いたところで私の携帯がメール着信を次々に伝え始めた。

ブリット兄さんの発言を完全スルーして、返信メールを確認。

「見てません」「見かけてない」「知りません」「ちょっと注意して道を歩くね」「近所の子にも聞いてみるわ」「ヒマだったから近所を探してみるぜ」「交番で聞いてみるよ」「うーん、落し物には届けられてないわねぇん」と、色々な返信が入ってきました。

しばらく立ち止まって、兄さんと返信メールの確認をしましたが、有力な手がかりはなし。

「はぁ・・・仕方が無い。最後の手段も使うしか・・・」

「最後の手段?」












******* other side *******


カアカアガアカアカアガアガアカアカアアガアカアカアカアガアカアカアカアカアガアカアカアガアガアカアカアアガアカアカアカアガアカアカア・・・・・・

さすがにこれはブリッドでも固まるしかなかった。

イルイに至っては、ブリットの後ろでハガネを抱えて隠れていた。

目の前に広がる光景は現代にこっそり降臨した失楽園か、それとも今まさに悪魔が降臨するような背徳にまみれ、穢れた大地か?


「ああもう、リオンの野郎どもいるんでしょーっ!」

『『『『『『『『『『「「「「「「「「「「「「「「「カアッ!!」」」」」」」」」」」』』』』』』』』』』』』』』』

先ほどの公園へ戻った櫻が、いきなり空へ叫んでからは集まってくる、からすからすからすカラスカラス、烏、鴉。

今から行なわれるのがサバトじゃなかったら、なんだと云うのだろう?

公園の中央に立つ自分の妹以外は、地面はカラスで真っ黒だった・・・・・・。

「ちょっとあんた達ー、聞きたいことがあるのよー。ってやかましい!」

とたんに静かになる広場。時々カラスの羽をばたつかせる音と、石畳を足爪がコツコツと叩く音以外は聞こえなくなる。

(そういえば、リオンってなんなんだ? カラスの別称かなんかか?)

さすがに妹の視覚は動物を、起動兵器に見えるようにするなどとは思わない。

「いい? 銀色と青いのが組み合わさったものを巣に運びこんだ者は、素直にココへ出しなさーい。わかったぁ?」

ものすごい数のカラスから起こる羽ばたきと、それから響きだされる轟音。とっさにイルイの耳を塞いだブリット。

最初に立っていた場所からこちらへ歩いてくる妹。

「お姉ちゃん・・・・・・。あのカラスは・・・?」

ブリットが聞くに聞けないことを尋ねるイルイ。

「んー、お友達・・・・・・? かなあ・・・たぶん」

心の中だけでなく盛大に突っ込みたいブリットだったが、なんとか押さえ込んだ。アレは怖い。

しばらく間が空いたときに頭上を影が通過。石畳になにかがカチーンと落ちる音。

「指輪・・・?」

しゃがみこんでソレを拾ったブリットは気づかなかったが、空を見上げた櫻はそれに気づいた。

「げ! やばっ!?」

「なんだ?」

慌てて、イルイを連れてブリットから距離をとる櫻。ブリットが見上げた瞬間、その場所が黒雲でも沸いたように暗くなったのが同時だった。

ドザ────────────────ッ!!!

指輪や小物やアクセサリーの雨がブリットを直撃した。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。













****** sakura side *******


結論から言うとイルイちゃんの大事なものは見つかった。うんうん、よかったねぇ。

兄さんは憤慨してたけど・・・。私のせい、だろうね、やっぱ。

まさかあんなに溜め込んでるとは思わなかったよ。HAHAHAHAHAHAHAHA!

関係ないものはかき集めて、警察へ届けました。

持ち主見つかるのかなあ、アレ・・・?


次の日のホームルーム前にミズハ先輩がやってきて、「昨日はイルイのことどうもありがとう」ってお礼言われました。

それで、なんか朝から兄さんがタスクくんを追い掛け回してるんだけど、なにか知らないか? とも聞かれました。

それは自業自得ですからほっといたほうがいいです。と答えておきましたよ、はい。




























(あとがき)

うわーん、シリアスが持続しないよう(泣)

毎回最初と似た副題考えるのが難しい(;;











[7259] 04 「戦場の猫」
Name: C-K◆ae02f8a5 ID:27ec9c7b
Date: 2009/03/27 18:48


青い起動兵器の重連装砲から吐き出された光弾が、特殊フィールドに阻まれ空しく消える。

空中からの砲撃が青い奴に向かおうとしたこちらの進路を阻む。頭上を切り裂くように赤い機体が旋回する。


「・・・・・・うっわー、やりずらーい・・・」

ただいまバーニングPT中です。なんとなくひまつぶしで始めたのに、バトルロイヤルでえらい相手に当たっちゃった。

どうもペアみたいですよ? 地上の青い奴が重砲撃と、接近戦にワイヤーついたチャクラムみたいなのを振り回すわ。上空を飛んでる赤い奴が、遠距離砲撃使用の牽制みたいで時々槍みたいなの飛ばしてくるし・・・。

こっちは全然決定打が入れられないわ、外側の装甲ともいうべき特殊フィールド削られていってるわ、で。さて、どうしよう・・・?

戦場が市街地なのも不味かったなあ、近接戦って苦手なんだよね・・・。

どうも相手さんも、こっちを袋小路か何かに追い詰めようとしてるみたいですよ。さっきから避ける方向が同じになってきたみたいだし。

それなら虚を付いてゼロ距離射撃でもしてみようかしらねぇ。ネオグランゾンは一々攻撃のモーションが長いのが欠点だから、今のうちに作動させておく。

上に上昇するしか逃げる場所が無くなるようなトコロに追い詰められたところで、あらかじめ引き抜いていた剣を目の前に放り投げる。そしてソコめがけて・・・、

「縮退砲、発射」(← 棒読み)












******* other side ********


頭上の大型ディスプレイには【Winner  MISA and NEOTAN】と記されていた。

「なんのなのよ、アレ・・・。反則じゃない」

ゲーム用の円筒型筐体に続く階段を下りながら、緑のショートカットをかき上げながら女性がつぶやく。

「ココ最近では見かけない機体でしたね」

ブロンドの美形の男性がその後ろに続きながら、それに同意する。

地上からの直接攻撃と空中からの砲撃で袋小路に追い詰めて、遠距離から削り倒そうと思った次の瞬間、広範囲の爆砕攻撃に二機とも沈んでしまったのである。爆心地に居たハズの日輪を背負った蒼い機体は、沈みもせずに頭上のディスプレイで勝利者としての映像を振りまいている。

「せっかく、他に出ていた機体をあらかた片付けたのに残念でしたな、会長」

「ライ、今は休日よ。学園と違うから『会長』なんて呼ばなくていいわよ?」


女性の方をアヤ・コバヤシ、男性の方がライディース・ブランシュタイン。飛龍学園の生徒会長と副会長を務めている人物である。













******* sakura side *******



「うえぇ・・・、反則・・・・・・」

たった今大破壊を振りまきました。ソレなのに無事ってどうゆうこと?

ディスプレイには【Winner  MISA and NEOTAN】とか記されてますよ? いや、完全に自爆すれば負けたことにも勝ったことにもならないでしょう、と思ってやったのに、こっちの機体は影響なしって理不尽だ。

きっとあっちのペアの人達、憤慨してるだろうなぁ・・・・・・。怨まれて執拗に狙われたらドウシヨウ・・・。

あと、ネオグランゾンしばらく使って判ったけど、武器少ないわ。剣以外は胸から出る射撃だけ、しかもモーションが異様に凝っている分、タイムラグが有りすぎる。もうレーダーに映った瞬簡に遠距離から撃ち倒すしかないや・・・。

利点は、耐久度がある装甲の外側に展開している特殊フィールドと、今判明した自分の範囲攻撃でダメージは受けないトコロ。

あとはシラカワのおじ様と要相談かなあ・・・。ちなみにパイロットネームの『MISA』は苗字と名前の頭文字を、くっ付けただけです。






「よう、巳子神。突っ立ったままブツブツつぶやいて、どうしたよ?」

「あ、シングウジ先輩。・・・こんにちは」

声を掛けられて振り向いたら、バンダナ巻いた先輩とロングのブロンドの仏頂面の美人さんがいました。

「えーとぉ・・・。ガーシュタイン先輩d「レオナでいいわ」・・・ええと、ハイ。レオナ先輩・・・」

なんか機嫌悪そうですよ、この人?

「さっきの仏像みたいなのが、巳子神の新しい機体ってヤツ? リュウセイに聞いたけどさー」

「いやー、まだ要練習ってトコロですねぇ。全然扱いきれてませんし」

「ヒマならちょっとばかし手伝ってくんねぇ?」

「デートのお邪魔虫にはなりたくないんですが・・・」

彼氏が他の女性と喋っていたら、そりゃ仏頂面にもなるだろうさー。こわぁ・・・・・・。

ちっと手続きしてくらぁ。とか言って受付まで行ってしまったシングウジ先輩。むう、何をどう手伝えって言うのだろうか・・・。

「・・・ごめんなさいね」

「え?」

「タスクがあまりにもゲームの事ばかり話すものだから・・・。少しは共通の話題になれるかなと思って、教えてもらおうと来たのよ。付き合せちゃって申し訳ないわ・・・・・・」

「──・・・・・・・・・・・・・・・・」

いや・・・。なんか空いた口が塞がらないわ、コレ。ノロケか! ノロケられてる!? 

えー、この空気の中に私を混ぜる気デスカ・・・。新しい拷問か?

「どうしたの?」

「あー、いえ。・・・それなら自分の我が儘に付き合わせればいいじゃないですか? いつもの様子見てると喜んで付いてくるんじゃないですか?」

ロボ研の会話の半分は『レオナちゃんが・・・』だもんなー。

「私の都合だけでタスクを振り回すわけには行かないでしょう?」

「あーあーあー、ハイハイ。ソウデスネ・・・・・・」

ダメだこのカップル。誰かなんとかしてー!




天への願いも通じず、シングウジ先輩が受け付け済ませて戻ってきた。

「よー、おまたせー。すぐ使えるとよー」

「・・・それで私に何を付き合えってゆーんですか?」

「いや、レオナちゃんがゲームに慣れるために実地研修。 タッグマッチ形式でフィールド取ったから、1vs2で殴り合いとゆーか撃ち合いとゆーか」

ほほう。ぞんぶんにフルモッコに出来る按配ですね。それはいいデスネ。容赦なくフルモッコにさせて頂きましょう。くくくくっ・・・。

「櫻? なんか怒っていません?」

「いいえ、なんか自分の星の巡り合わせを怨んでるだけですから、お気になさらずに。 そちらは先輩方で組んでください。私はひとりのほうに行きますので」

「そっちは何使うんだ? こっちは二人でヒュッケ使うんだが?」

「そうですね・・・。的になるようなのなら何でもいいですか?」

「さっきのデカイのでもいいぞ。こっちは動作の研修みたいなもんだし」

「わかりました。それならいいのがありますよ。・・・いーのがねぇ」

レクチャーはそちらでどうぞ。私は関与いたしませんので。と言ってさっさと筐体に入る。

ふふふふふ・・・、シラカワのおじ様と共同開発した、最強の機体の出番ですよ。

相手の反応が楽しみだなぁ。くっくっく・・・。

















******* other side *******



『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』

『さあさあっ・・・』

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』

フィールド選択は荒野、地雷原なし、風速4m。

デジタルの世界に広がるのは静寂。そのフィールドに存在する機体は三機、内二機はヒュッケバイン。もう一機は・・・。

『どうしましたー? どうぞー、どんどこ撃ち込んでください』

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』

『・・・・・・なあ、巳子神・・・』

『なんですかー?』

『それ・・・・・・何?』

つぶらで汚れを感じさせない瞳。

『何って・・・? 見てのとおりだと思いますけど』

幼さの残る鼻筋、愛嬌がある口元。すこしよたついてるところに母性愛を感じてしまう足運び。

ぴょこぴょこと動くもこもこな尻尾、ふわっふわで、おもわず抱き寄せてしまいそうな白い毛皮。

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』

『・・・・・・こねこ・・・?』

『はい、そうですよー。白い子猫です。かわいいでしょー?』

大きさだけならこのゲーム内の起動兵器並だったが、どうみても子猫だった。

『どうぞー、攻撃をぷりーず』

なんか銃撃を撃ち込んだら動物愛護協会に訴えられそうだった。

『この子使うのはこれが初めてなんですよー。今のうちに起動試験してバグとろうかなあ、って思ってたんで丁度良かったですよー』

これがバトルロイヤルでそこら辺を動き回るとゆーのだろうか? そんな疑問でタスクの心はいっぱいだった。

「ナー」

しかも鳴いた。

鳴く起動兵器・・・。実に破壊力が抜群だった。

レオナはもうコクピットで両手を握り締め、その可愛さに心を震わせていた。

『と・・・とりあえず。レオナちゃん、さっき教えたモーションで、ライフル射撃』

『なんですって!?』

彼氏の無情な一言にレオナの思考は瞬間沸騰した。

『た・・・タスクの馬鹿っ!』

こんな可愛いものを撃てと言ったタスクが信じられなくなって、イジェクトハンドルを引く。

一機のヒュッケバインがノイズを残して消えていった。

『おや・・・・・・?』

『ちょっ・・・レオナちゃん!?』

『うーん、何かあったのかなぁ?』

『おまっ、それをお前が言うのかよっ!?』

『それより、追わなくていいんですか? 彼氏殿ォ?』

『ぐ・・・』

もう一機のヒュッケが消えていって、一匹の子猫が残った。

『・・・まあ、健全なカップルが来るところじゃないわな。外で向かい合わせでジャンクフードでも喰って、親睦を深めればいいのさ・・・』

顔を洗った子猫は、小さなあくびをしながら、うーんと伸びをした。






















******* sakura side *******


「んにゃことがあったのですよー」

翌日の五時間目終了後の休み時間に、後ろの席のアリィちゃんに昨日の事をかいつまんで話す。

うーん、なんだかんだで昨日のことを話すのが後回しになっちゃった。朝は違う事話してて、昼は四人だったからマイ達の休日の話とかで終わっちゃったし。

「櫻。気を回すにしても、もう少しやりようがあるですのよ?」

「とりあえず、目先に並んでるもので代用」

「大雑把なのも相変わらずすぎますのよ・・・」

猫作ってる間は幸せだったしねー。可愛さに全てのリソースを割いただけに武装は無し。あれはちゃんと猫に見えるのに、シラカワのおじ様に見せてもらった参考資料の猫写真集は、写ってたのが二連砲の戦車とかだったもんなー。どこのミリタリー雑誌かと・・・・・・。

「はいはーい。皆静かにしてー」

クラス委員の菊川君と篠崎さんが黒板の前まで出て、丸めた紙で教卓をパンパン叩いてた。

「・・・ああ、LHRだったけー」

そのまま篠崎さんが、黒板にお題をさらさらと書き込んでいく。文化祭実行委員と修学旅行実行委員? もうそんな時期だったっけ?

この学園の文化祭は、中等部高等部大学部が合同で組まれているから、七月に入れば期末考査、八月は夏休み、九月に入れば二週間後で文化祭だ。その後すぐに修学旅行だったかなー。今の六月のうちに実行委員とかを決めておく必要があるらしい。

ふとアリィちゃんがすごーいジト目でこっちを見てるのに気がついた。視線に含まれる彼女の言いたいことを察する。はいはい、今年は静かにしていろってゆーんでしょー。返答の変わりに手をひらひらと振っておく。

しばらく推薦したりされたりと会議が進行していく。んでボーと天井見上げていたら・・・。

「巳子神さん、聞いてる?」

いつのまにか席の隣に菊川君が立って、私を見下ろしていた。

「なぁに?」

「文化祭実行委員の女子が決まらないんだ。キミやってみ「ヤダ」・・・」

即答してやった。菊川君は『る?』と言いかけた口のままで固まってる。はっはー、中等部の時、菊川君は違うクラスだったから知らないんだろーがねぇ。

「あいにくと、櫻は執行部とか生徒会から、そのトコロの実行委員とかになるのを禁止されてますのよ」

私の代わりにアリィちゃんが代弁してくれる。で、その後をマイやラトゥーニが続けて・・・・・・、

「去年違うクラスだった人は知らないでしょうけど・・・」

「去年の《マグロ事件》、首謀者はそこに居る櫻ですよ。しかも文化祭実行委員長で・・・」

とたんに教室が「「「「「「「「「えーーーーーーッ!!??」」」」」」」」」」と、絶叫に包まれる。うむ、同じクラスだった人でも知らなかったりするからなぁ、・・・なつかしい思い出だ。

《マグロ事件》とか呼ばれてるけど、実際は講堂が半壊しました。ちょい講堂の使用タイムテーブルに手を入れて、レーツェルさん監修のゼンガー兄さんのマグロの解体ショー突っ込んだだけなんだけどなあ。

『チェストオォォォーー!!』とか言って日本刀振り下ろしただけで、講堂の舞台を木っ端微塵に切り裂くとは・・・・・・。さすが兄さんだけのことはあるわぁ。後処理はレーツェルさんの手によって、何事もなく済んだみたいだったらしいケド。

その後校長室に呼ばれるわ、職員室で説教受けて反省文書かされて、中等部高等部の生徒会に呼ばれて、今後実行委員の類に関わりません、と誓約書を書かされました。事実上、要注意人物認定ですなー。

家に帰ったらキョウスケ兄さんだけに小言言われたくらいで、ブリット兄さんはまぁ気にすんなって言われて、ゼンガー兄さんには頭撫でられました。学園に来ていたらしいアクセルさんには件の録画ビデオ見せられて、アリィちゃんには心配しましたですのよって怒られました。いやいや、なんか幸せな日だったですよ。


LHRは結局その後、ラトゥーニが立候補することでつつがなく進み終了しました。








「いや、あれは度肝を抜かれたっつーか、吃驚したなー。おもしろかったけど」

「リュウセイは呑気でいいね。僕は肝を冷やしたよ・・・・・・」

「あ、あははー、・・・ごめんなさい・・・」

放課後に食堂へ寄ったら、ダテ先輩とヒカワ先輩が居たので一緒にお茶することになりました。

話題は今日のLHRの事。ヒカワ先輩のクラスは話がトントン拍子で進み、文化祭で人形劇をすることに決まったそうだ。

基本的に文化祭への参加はクラス単位かグループ単位か、部活でなにかやるかだ。クラス単位って言っても有志のみでやるそうだけど。ヒカワ先輩の彼女、メイロン先輩がすごいやる気になっているらしい。

「巳子神さんは何かに参加するのかい?」

「いえ私の場合、参加させてくれるか怪しいと思います」

「そうかぁ? お前が何か率先してやるものっておもしろそうなんだけどなぁ」

うーん、なんか期待されればそれだけで何かしたくなるなあ。なんか考えとこう・・・・・・。

「・・・リュウセイ、校内に余計な騒動を引き起こす可能性のある発言はつつしめ」

生徒会副会長が現れた。端っこの方で女子が数人「キャー」と黄色い声上げてるよ・・・。美形だしナアこのひと。ファンクラブもあるしなあ。

「こんにちは三人とも。・・・後、巳子神さん。今年は静かにしてて欲しいわ」

生徒会長も現れた! 美人さんだなあ、スタイル良いし・・・・・・。チビ貧弱の自分と比べて心の中で滂沱する。なんかこの屈辱だけで文化祭を引っ掻き回そうって起爆剤にはなるよね、うん。

「こんにちは、ライさんアヤさん」

一応挨拶は返しておく。片やマイのお姉さん、片やゼンガー兄さんの秘書のレーツェルさんの弟さん、知らない仲じゃないしね。私は基本的の人を呼ぶときはファミリーネームを使うけど、本人に許可されればファーストネームを呼ぶようにしてる。ダテ先輩たちにも許可は貰ったけど、マイ達やメイロン先輩に悪いと思ったのでそのままだ。

「文化祭前に私に釘刺しに来たんですか?」

「ああ、今日はちょっと違うのよ。リュウのやってる同好会だけど・・・」

なんかアヤさんもダテ先輩の幼馴染で、マイとの付き合いは基本家族ぐるみらしい。向ける視線は手の掛かる弟、って感じだ。

「人に迷惑かける行動はとってませんよ。 ね? リュウセイ」

ヒカワ先輩は外見人畜無害だけど、激昂したダテ先輩やシングウジ先輩を抑えることの出来る芯の強い人でもある。怒ったところ見たこと無いけど・・・。ロボ研同好会副会長としてダテ先輩の代わりに、部活のまとめ役でもある。

ロボ研って名前があっても、有志のグループなので顧問無し部室無しの活動だし。こうやって偶に食堂とか空き教室に集まって、ミーティングと云う名の雑談するくらい。活動は主にゲーセンだしねー。

「俺たちゃ、誰かに迷惑かける行動なんざ取らねぇぜ。フェアプレイが信条だからな」

「あー、違うのよ。聞きたいのはプレイヤーの事なの」

「「「は?」」」

おもわず三人でハモって聞き返してしまった・・・・・・。なんですとー?

「ライさん達もバーニングPTをやるんですかー?」

「ああ、巳子神は知らなかったか。俺の使ってるR-1は知ってるな。アレに似てるコンセプトの違う奴使ってんだ」

はあ、さいですか。作ったのはダテ先輩ですか? え、違う?

「でもプレイヤーって言っても、個人情報は漏らせませんよ?」

「いや、ある機体を探してるだけだ。そいつの目撃情報だけあればいい」

ヒカワ先輩のやんわりとした注意にライさんが断言する。

「背中に日輪背負った蒼い奴なんだけど・・・?」

「ぶふっ!?」

思わず咽た私に、その場に居た全員の視線が集中する。
ダテ先輩の視線には、何やったお前? っぽい非難が混じってるような気がする・・・・・・。

まてえぇぇっ! もしかして昨日のペアってこの二人か? え、もしかして怨み買って今から二人にフルボッコにされるんですか?

「いえ僕は見たことありませんけど。 リュウセイは?」

咽た呼吸を整えている私をスルーするように、先輩達で会話が進行してる。

「あー、遠距離から乱戦中にいきなり吹っ飛ばされたわな・・・・・・。なあ、巳子神も見てただろう?」

ええ、結果どころか撃ったの私ですが・・・。とりあえず、コクコクと頷いておく。

「そうか・・・。判った。次に何処かで見かけたら教えてくれ・・・」

「一応マイにも聞いてあるから、あの子に言伝でもいいわ」

それだけ言って、生徒会長らは去って行った。






「巳子神。しばらくあの機体使うのやめておけよ?」

「ええ!? 巳子神さんだったのその機体・・・」

二人が周囲に聞こえないような小声で囁いてくる。今修理中だからどっちにしろ使えないけど。

知られたからには昨日あった事をかいつまんで話しておく。でもパイロットネームでばれそうな気もするわ。

「そりゃ、ちょっとばかしチート過ぎるだろう」

「そういえば、巳子神さんの持ってる機体って、みんなそのシラカワさんが作ったんだよね?」

「何やってる人なんだ?」

実際は何やってるのか気にしてなかったなあ。とか言ったら二人とも肩落としてたけど。

「たしか教授やってるって聞いたよ。でもアンドー先輩の方が詳しいかも・・・」

「は? なんでマサキが出てくんだよ?」

「だってアンドー先輩の同居人でしたよ・・・」

仲は最悪だったけど・・・・・・。























(あとがき)

主人公がどんどん変になっていく(;;

マグロネタはドラマCDより。

一応、一ヶ月ごとにお話が進行してますです。



[7259]    閑話
Name: C-K◆ae02f8a5 ID:27ec9c7b
Date: 2009/04/01 00:22

《猫のある風景》

それを渡されたのはシュウ・シラカワの私室で、大判ハードカバーな写真集だった。
なんかものすごーく嫌な予感しかしないのは気のせいだろうか・・・・・・。
櫻は聞き取れない小声で呟くと、素直にソレを受け取った。

「今回の作成の参考資料として手に入れましてね。私としては・・・・・・」

子猫の造詣について淡々と、熱く語り始めた白衣の人物を放っといてぺらりと広げる。

ページの上半分に”猫のある風景”と白い大きな文字。
紫陽花の葉の影からこちらを射抜くように覗いている、ソレは・・・。

二連装砲塔をもつ白い戦車だった。



櫻の表情は、幾何学模様が書かれた分厚い専門書を読むようなモノに変化していた。

ぺらり

駐車している車のボンネットに居座る黒い戦車。

ぺらり

自転車の車輪の向こうから砲塔を斜め上に向ける、茶色い戦車。

 ぺらり

  塀の上からこちらを睥睨する白い小さい戦車。

   ぺらり

    日向の原っぱで停車するぶち戦車、の上に圧し掛かる黒い戦車。

     ぺらり

      桜の樹の幹に垂直に張り付く白い戦車。さらに上の幹から下へ砲塔を向ける虎縞戦車。

       ぺらり

        夜の闇の中、こちらへライトの照り返す砲塔を向ける三毛戦車。


         ぺらり

          戦車

           ぺらり

            ・・・やはり戦車。



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

ぱたむ

無言で写真集を閉じてシュウ・シラカワに返す。

「ふむ・・・・・・」

返された本をデスク脇の棚に無造作に突っ込み、天井をちらりと見るシュウ。

「ちなみに何に見えたか聞かせてもらってもいいですか?」

「紛争地帯のほのぼのっぽい写真集・・・」

「その様子だとやはりこれも戦車に見えるのですか・・・」

頭痛を抑えるような櫻は「ん」と頷くだけだったが。

「色々と興味深いですねぇ、キミは」

「おじ様。楽しそうに聞こえます」

いやこれは失礼。とでも言いそうな笑みを浮かべるシュウを軽く睨む。
悪意もない、純粋に研究的な意味で言っているのは判りきっている事なのだから。
ココにくると会話はだいたいこんなものになるなー、と櫻は諦めていた。
軽く肩をすくませて、お手上げのジェスチャー。

「自分でもよく判りませんからね、この能力」

「できればしばらく研究所に篭ってもらって、色々とパターンを見てみたいのですが・・・」

「ウチの兄達を説得できるのならどうぞ」

あとこの子達でも、と笑顔の櫻の肩に無数に停まっているのは、一匹5cmもありそうなスズメバチでもあったりする。

「いやいや、まだやりたいこともいっぱいありますのでね。遠慮しておきましょう」

デスク上の機類のディスプレイをコンコン叩きながら、

「さしあたってはさっさとコレを作りましょうか」

「それには賛成します」

笑顔の少女はシュウの隣でディスプレイを覗き込んだ。
















(あとがき)

ちょっとおもいついたので閑話。

誰とでも仲良し主人公。



[7259] 05 「友人達の事件簿」
Name: C-K◆ae02f8a5 ID:27ec9c7b
Date: 2009/04/01 21:01
最近とみに気温が上がってきている休日の午前。
開店したばかりのワールドプレイパレスに、十人程の若者達がたむろっていた。
ここを常連として訪れている者達にはなじみのある顔ぶればかりではあった。
ただし、全員が飛龍学園の生徒だけで構成されてはいたが・・・。

「それでは大体揃ったことだし、そろそろ会議を始めたいと思うぜ!」

口火を切ったのは、リュウセイ・ダテ。今回の集会の発起人である。

「その前にリュウ、何の理由で私までここに居なくちゃいけないのかしら?」

話の腰をいきなり折ったのは、アヤ・コバヤシ。飛龍学園の生徒会長でこの中で唯一の制服姿である。
それと一緒にソコに居るメンバーを見渡してため息をひとつ。

「ロボ研の活動なら私が居なくてもいいでしょう・・・」

「いや、俺達は違うんだが・・・・・・」

反論したのは、ブルックリン・ラックフィールド。隣のクスハ・ミズハも首を縦に振る。
その他にソコに居るメンバーと云えば・・・

リョウト・ヒカワ
マイ・コバヤシ
ラトゥーニ・スゥボータ
タスク・シングウジ
アラド・バランガ
マサキ・アンドー

ほぼロボ研に所属するメンバーだった。一部足りてなかったが。

「なんか櫻に関する話だってのは聞いたな」

と、ブリットの発言に眉をひそめる。
彼の妹である巳子神櫻は、生徒会では要注意人物。ブラックリストのトップに記される人物でもある。
それをメンバーである彼女を抜いて話があるらしい。
生徒会にも聞かせなければいけない話とみていいのだろうと、アヤは判断し席に戻った。

「櫻に関することだったら、アルフィミィも呼んだ方がいいんじゃない?」

「それは止めておいた方がいいな・・・」

マイの発言は即座にブリットに否定された。
ここに居る者達は、アルフィミィのことを妹の親友と位置付けているだろうが、ブリットは違う。
アルフィミィは何故か櫻に仕えているような、そんな気がしていた。故に。

「アルフィミィに知られると即座に櫻に伝わるぞ。アイツは櫻に関することは態度が変わるからな」

なんとなく声に説得力があったらしく、その場がしばし静寂に包まれる。


「・・・とりあえずリュウセイ君が言っていることは、この前イルイが話していたことなのね?」

「おお、それそれ!」

クスハの発言にリュウセイが飛びつく。

「すまん、イルイって誰?」

「クスハの妹だよ、まだ小学生。櫻とは結構仲がいいな」

「巳子神さんの交友関係って謎だよね・・・」

「とりあえず、さっさと会話を進行させて。午後から生徒会の用事で学園に行かなくちゃならないから」

何故か生徒会長が会議の進行役にクラスチェンジしていた。






★証言その1:イルイの場合

その日いつものように、一緒に下校していた友人達と分かれ道で別れたイルイは、道端で知人をみつけた。
飛龍学園の女子の夏服に、腰まで届く長い黒髪を首元でくくっている蒼いリボン。
年上の友人、巳子神櫻だった。

この前の事の礼もちゃんとしていないことを思い出して、近づいてみる、と。
周囲に猫が数匹、それと向かい合うように道端にしゃがみ込んで手元に何か書き込んでいた。

 なぁ~お

「っと。何、虎王機?」

塀の上に悠然と座り込んでいたでっかい白猫が、イルイに目を向けて警戒するように鳴いた。
それに反応するように顔を上げた櫻の視線が後ろを向き、イルイの視線に気付く。

「イルイちゃん」

同姓でも惹きつけられる笑みを浮かべ、スカートを叩いて立ち上がる。
手元に持っていたバインダーを鞄に仕舞い込み、イルイの傍まで近寄ってくる。
一緒に六匹程の猫も近寄ってくるが。

「こんにちは、櫻さん。この前はどうもありがとう」

「いいよいいよ、畏まらなくっても。礼はあの時してもらったので十分だからさ」

顔を見合わせて笑いあう。
でも礼儀はだいじです、そっかーそれは受けておくよー。的な会話が交わされる。

「なにしてたの?」

「ああ、この猫達の事? ちょっと記録として残しておかなきゃならない事があってねー」

足元の猫達を順に撫でて、はーい解散解散ー。と声を掛けると猫は三々五々へ散っていった。
その後、他愛もない話をしながら二人で下校した。











「・・・と、云うことだったらしいんだけどー」

話を聞き終えた一同の顔はみな困惑していた。
これが一体何がどうゆー騒動に繋がるのだろうか・・・。といった表情だった。

「巳子神って猫と会話すんのか・・・・・・」

「いや、問題はソコじゃねぇだろう・・・」

マサキとタスクの会話でブリットが思い出すのは視界一面のカラスだ。
昔から妹の周囲には動物が良く集まっていたなー、と思い出す。
あそこまで異様な光景と云うのは初めてだったが・・・。

「きっと何か面白そうなことを自分ひとりでやるつもりだぜ、アイツ!」

「でも巳子神さん、何も参加させてもらえないだろうって、言ってなかったっけ?」

「だから自主的になにか企んでるんだろうよ。出来れば混ぜてもらいところなんだが・・・」

リュウセイの視線の先には心配そうな表情のマイとラトゥーニ。
二人揃ってため息を付き、キッっとリュウセイを睨む。

「櫻には去年みたいな変なことさせたくないわっ!」

「しっかり私達が手綱を握っててあげなくちゃ・・・」

「・・・・・・・だそうなんで、一応生徒会の耳に入れといたほうが良いと思ったんだがよ」

その場に居る皆の視線の先、アヤは思案顔だ。

「それだけじゃ彼女が何をしようとしてるのかさっぱりね。具体的な行動を起こさない限り、生徒会としては介入は出来ないわ」

ウチの自由自主的な校則がうらめしいわぁ、とグチを零す。

「つまりは、行動する前に計画の全貌が暴ければ抑えることも可能なのね」

「そういえば・・・」

ラトゥーニの発言になにか思い当たったのかリョウトが続ける。




★証言その2:リョウトの場合

その日、リョウトは放課後に学園の裏手にある竹林に向かっていた。
自分の彼女、リオ・メイロンの主催する人形劇の小道具に笹が必要だったからである。
別に本番はまだ先なのだから悪いよー、とリオは言っていたが、無いよりはと思い取りに行ったのだった。

学園の裏手の坂を上りきる先にその少女はいた。

「あれは、巳子神さん?」

とっさに途中の木陰に身を寄せるように隠れてしまったリョウト。
隠れることも無かったなー、と思い当たって道の先の少女を見ると、肩にカラス。
それどころか周囲の木々に無数のカラスがとまっていた。

 カアカア

「いや、これはちょっと予想外だねー。はっはー」

 カーアガア

「いやさすがに、これ持ってったらマズいでしょー」

 カアカアカアカアカアカアガアガアガアガア

いきなり周囲のカラスが大合唱。隠れているリョウトのところまで聞こえる大騒音。
耳をふさぎながらカラスに囲まれている少女をみると、平然と携帯で誰かに電話をかけていた。

しばらくすると手を軽く振った巳子神櫻に合わせるように、カラスがほぼ飛び散っていった。
肩に居るのだけは残っていたが。
その直後反対側の道から仏頂面の青年が山道を上がってきて、少女と二言三言会話。
少女の足元にあった古ぼけたバッグを拾い上げて、二人でその場を立ち去っていた。











「巳子神に彼氏!?」

驚愕するタスクにそんなわけあるかと、ツッコミをかまし轟沈させるブリット。
リョウトにその青年の特徴をいくらか聞く。

「キョウスケ兄さんみたいだな、それ」

「ああ、あの人ブリット達のお兄さんだったのか。巳子神さん楽しそうだったから誰かと思った」

「キョウスケさんって、たしか刑事さんだって・・・?」

「刑事が出張るような事件!?」

「リュウセイ君・・・・・・。どうしても櫻ちゃんを犯罪者にしたいんだ?」

クスハの威圧感に、申し訳ありません! と土下座するリュウセイ。
しばし思案していたブリットだったが、ため息をついて俺も心当たりがあるな、と発言する。

「この前、ちょっとだけラミアさんが家まで来てなー」

「その前にその人誰、オレ達にゃーさっぱり判らん」

皆を代表してのマサキの発言に簡単な説明をする。
キョウスケ兄さんの恋人のエクセレンさんの妹で、弁護士をやっている人だと。

「なんか事務所に法律関係で電話貰ったから、なにやってるのか様子を見に来た、って言ってたなー」

「法律に抵触するような行為をっ!?」

「なんかもう黙ろうかリュウセイ君!」

「ホフグムルッ!?」

クスハの最終兵器がリュウセイの味覚を蹂躙した。
席の一角で泡噴いて悶絶している物体は完全スルー。

「弁護士への相談、竹林での行動、道端でのファイル書き込み、で繋げられるものなんか無いよねぇ」

「これはもう本人に聞いた方が早くない?」

リュウセイの彼女コンビの発言に、その場に居た者達の視線がアヤへと向く。
苦笑いで、私が聞くしかないのね、と嘆息した。
そこへ・・・、


「はーい、皆さん会議お疲れサマー。飲み物でもいかがー?」

と、突然掛けられた知っている声に驚いて、その場の全員が硬直した。












******* sakura side *******


休日に朝から警察署へ出かけました。
数日前からやっているあることについて、最後の確認をするために。
いやもう、探すとなると結構あるものなのだねぇ・・・。
戦車(猫)達とかリオン(カラス)達とかにもっぱら任せてたんだけど、事情徴収の方が大変だったわ。
ここで見つけた、とか言ってビルの隙間になんか人間は入れませんって・・・・・・。
進入禁止のビルの屋上とかね。警察にどうやって説明しろとゆーのさ。
しかたなく、ビル周りの緑地帯ってことにしたんだけれど・・・・・・。
詳しいこと聞かれてたら絶対ボロがでてたね。

手元には、ここ数日の地道の成果が詰まったビニール袋とバインダー。
帰り道に涼もうと思ってゲーセン寄ったら、その集団が居たんですよ・・・。
マイ達と兄さんと先輩達って、妙な集団が。

くつろぎスペースから反対側の入り口から入店して、階段を上がって2Fまで行って。
吹き抜けになってるくつろぎスペースの上側で、下の会話に耳を傾けるけど、よく聞こえないんだよねここ。
ゲームの音とかバーニングPTのアナウンスとかで・・・。
なんか時々出てくる固有名詞が私の名前みたいなんだけど、聞き取りにくい。
しばらく眺めてて、ダテ先輩が沈黙したところで乱入することにしました。
一応、自動販売機で購入したお茶などを差し入れしつつ。

「はーい、皆さん会議お疲れサマー。飲み物でもいかがー?」

って言ったら、そこにいた全員が驚愕で凍りつきましたよ?











あははははー・・・・・・・。
詳細を聞いて納得しました。あー、あれヒカワ先輩に見られてたんだー。
そうだよね、イルイちゃんが見たものであれば、ミズハ先輩に伝わるよね・・・。

「結局巳子神は何やってたんだ?」

アンドー先輩に聞かれたので、最初の理由から話すことにしました。
根源は六月頭の全校集会で、生徒会からのお知らせ聞いてからだったんですが・・・。

「海外の地震被災地への義援金募金を生徒会でやります、って呼びかけの?」

アヤさんに頷き、生徒会室前に設置された募金箱に自分でも入れたんですがね。
その日の帰り道に道で1円拾って、どうせなら町中から落ちている小銭かき集めようと思いましてー。

「ああ、それでイルイちゃんの目撃談に繋がるワケなのねー」

「書き込んでたのは何なんだ?」

兄夫婦の会話に、手元のバインダーをテーブルの上に広げる。

「市内の番地と、何円とか書いてあるけど・・・?」

ヒカワ先輩の当然の疑問はこっちへ置いといて、先に言うことは言っておかないと話が繋がらないからさー。
まず、ラミアさんに連絡とって拾得物の扱いとゆーか法律について聞きまして。
拾った場所と、金額をメモすることにしました。
(拾った探したはほぼ100%猫カラスだけどねっ)
それからバインダーごと警察署に持ち込んで、お金落として届けが出てないか照会させて貰いました。
1円5円ならともかく千円札とか万札とかあったもんね。
これそのまま取ったらヤバいでしょー。
まあ身内が警察署に居たり、知り合いがその場に居たりしたので、手続きはあっさり終わったけど。
法律やらの関係で結局、義援金にしようと思ってた分、手元に来る頃には生徒会の期間が終わっちゃったんだよねー。

「なのでこの分はコンビニの募金箱か何かに突っ込もうと思って」

手元のビニール袋をジャラジャラさせつつ笑顔で言ったら、マイ達が大きなため息ついたよ。
心配させないでよねー、って睨まれました。
あー、ごめんねー。

ちなみにヒカワ先輩がみたのは、リオン達が大金の入ったバッグを見つけてしまったからです。
持ち歩くわけにもいかないから、キョウスケ兄さん呼び出して持ってってもらったんですよ。



その後、アヤさんが「学園からならまだ送れるから」って言ってお金は回収していってくれました。
当初の目的は果たせたのでよかったです。

皆でバーニングPT合戦して帰りましたけど、ダテ先輩だけソファで魂が抜けてました。
一体何を飲まされたんだろう・・・。





















(あとがき)

多人数に挑戦してみるが無理があった気も・・・。

会話だらけになってしまいました、反省。

法律は調べましたがよくわかりません。

もう少し判りやすい言い回しは書いてないんだろーか・・・



[7259] 06 「視覚素子不良につきリコール」
Name: C-K◆ae02f8a5 ID:27ec9c7b
Date: 2009/04/07 22:47


あるぅ~日、森のなっか、■■■■■■■にっ、であ~た♪










七月、終業式があって夏休み初日、気温37℃・・・・・・マジでっ!?

暑いのは別にかまわないけど、暑すぎるのはどうかと思う今日この頃です。
家の中でクーラーの恩恵に与るのも、何か負けたような気になって外出。
暑いけど陽に焼けるのも嫌なので、オウムの絵入りTシャツの上に水色のサマージャケット着て薄手のデニム。
髪も汗でべたつくのもヤなので、かっちり三つ編みにして、
小物入れたポシェット持っていざしゅっぱーつ。



・・・10分も経たないうちに外出したのを後悔しました。
暑い、もはや脳から駄々漏れになる単語はそれだけです。
あーそういえば昔は、インドア派のアリィちゃんを無理やり外に連れ出して、あちこち遊び歩いてたような・・・。
最初は「アルフィミィは長いからアルちゃん!」とか有無を言わさず呼んでた記憶が。
何時から、アルちゃんがアリィちゃんになったんだろう?
今度聞いてみよう。
ちなみに出かける前にアリィちゃんも誘いに行ったけど居ませんでした。
数分前に慌てて出かけていった、とはアクセル兄ィの談。
私の襲来を事前に警戒して逃亡したんだねぇ・・・・・・。
昔はあっさり捕まえられたのに、危機感知能力が高くなったなあ。


昔の遊び歩いてた記憶を思い出しながら、街中をふらふら移動しているうちに学園の裏手に辿りつきました。
夏休み初日で、学園の方からかすかに野球部か何かの練習の音が聞こえてくる程度。
竹林を通る風で少し涼しいから、しばらくここに居ようかな~。

昔はブリット兄さんとアクセル兄ィとで、この奥方にある山へ続く登山道までかぶと虫とか取りに行ったなあ。
はぐれてあっさり迷って大騒ぎになったけど。
あのときに、警察とか消防の人とかが来てくれるまで一緒に居てくれたAMガンナーとかは何の動物だったのやら。
アレ以来見たこと無いから謎だなぁ、未だに。
登山道から少し外れたところに、泉があった記憶が・・・。
あそこ行ったら涼しいかもしれないやね。

ふ、と何か影に入ったような気がして後ろを振り返ったら、戦車のようなものが鎮座しておりました。

・・・・・・Q、これはなんでしょう?









******* other side *******


「あの子ってなんであーなってるの?」

うだるような外の暑さとは無縁の、涼しい風がほんのりと吹き抜ける市営図書館。
分厚い広辞苑を広げていたアルフィミィは、友人の声に顔を上げた。

「なんですの?」

「だからさ、櫻よ」

「意味がさっぱりわかりませんの」

「アルフィミィが何で広辞苑なんか読んでるのか、私もさっぱりだわ」

八人が余裕を持って座れる広いテーブルをたった二人で占領している片割れ、ゼオラ・シュバイツァーはため息をついた。
最初はアルフィミィが座ってるだけだったのだが、課題をしに来たゼオラが相席。
話をしようにも本に集中しているアルフィミィになかなか声を掛けられず、やむなく先ほどの質問になったワケである。

気になったのは期末試験の結果だ。
ゼオラは中間よりそんなに変わらず9位、櫻は13位。
本人に言ってみたのだが、「あ、そうなんだ。よかったねゼオラ」と返ってきただけで自分の順位など気にもしてない。
なんとなくその辺がもやもやしてて、どうにも引っかかる。
そんな感じがずっと意識の片隅に残っていた。

「ゼオラはなにを気にしてますの?」

本から目を離さぬままアルフィミィが聞き返してきた。

「ゼオラが望んでいるものは何ですの?」

「櫻は・・・、順位が気にならないのかな~って」

「櫻に勝負事を吹っかけるだけ無駄ですのよ。競争心がありませんから」

ゼオラにだったら別の敵愾心なら持っていそうですのよ、と言ってアルフィミィはくすりと笑った。
なんのことか判らないゼオラがさらに質問を掛けようとしたところで、視界の端に赤い光が横切った。
同じものを目にしたらしいアルフィミィとともに、窓のほうに目を向けた二人の視界。
図書館の外、車道を三台のパトカーがサイレンを鳴らして疾走していった。













******* sakura side *******


えー、これはなんでしょう。
はい、どうみてもガストランダーです。しかもでっかい・・・。
私は身長が140弱しかありませんが、それよりさらに頭ひとつ分の高さですねー。

根本的に言って、これは何の動物でしょう?
見たこと無いなあ、ガストランダーってなんでしょう?
鳥類=リオン系、猫=戦車系、犬=戦艦系、に当てはめると猫系になるのかなぁ、これ・・・。
いやいや、虎王機みたいな例外も猫には居るからねぇ・・・。即断はできないや。

 ぐるぅ

なんか唸ってるしー。
まずは実地検分、いってみましょう。
形状が判らない事には何とも言えませんし、とりあえず抱きついてみる。
あ、毛皮ふかもこです。でも気温とかのせいであづーい、でも図体でかーい。
ペタペタさわってみると四足獣ですねー、この子。あ、尻尾ながーい。

つかなんですかこりゃ? 熊かと思ったけど、熊って尻尾長かったかなあ?
セントバーナードとかかな? 
本人に聞いてみて答えが返ってくれば、楽なんだろうけれどもねー。
たとえば熊に「貴方は熊ですか?」って聞いても人間の定義は『熊』。
でも『熊』自身の定義は、また別の自身を指し示す言葉かなにかがあるわけだから、私には判りかねるしなー。

 ぐるるぅ

おとなしいわ、この子。
私がベタベタしてても大人しくじっとしてるだけで暴れたりしないし。
犬か熊で、くまこ(仮)と呼称。

「キミは何でこんなところに居るのかな?」

 ぐぅるぅ

「・・・は? 逃げた、逃亡? 自由への脱出? 誰かのペットだったのかねぇ」

 うぅぅぐぉぅ

「あ? 空気が臭いところ? 市街地からここまで来たの? それは大変だったねぇ」

 ぐぉるふぅ

「ああ、お腹が空いた? もうすぐお昼だしね。ところでキミは何が喰えるのかねぇ?」

むぅ、犬とか猫なら人間に近いところに居る分、もう少し具体的な意思とゆーか意味的なことが判るんだけど。
この子、あんまりその辺の突っ込んだところまでは理解できませんなー。

携帯を取り出して時間を確認。もう12時だなー。
朝9時ごろに家を出たから、3時間も街中をふらふらしていたのか。このあづい中。

たしか学園の正門側にコンビニあったよねー。利用したこと無かったけど。
ここから学園の正門まで行くのか・・・。
山道回っていくのも面倒くさいから、裏手の大学部から入って高等部の敷地を突っ切った方が早いかも。
制服じゃないけど、夏休みだからその辺は教師に見つかっても考慮はしてもらえると良いなぁ。
その前に一応念は押しておきましょう。

「ご飯買ってくるから、くまこ(仮)はここで大人しく待っていなさいね」

 ぐるるるぅ

「下に下りてきちゃダメだからね。 わかった?」

 ぐるぅ

そのまま斜面を駆け下りて、大学部の裏門に向かう。
夏休みで閉まってるけど、カードリーダーに学生証を通せば夜でもない限り門は通れるのである。
この辺、この学園は融通が利くよね。身分証明に学生証持ち歩いてて良かったなー。
















******* other side *******


市役所の廊下を走り回ってる職員を見て、キョウスケ・ナンブは他人事でもないのにため息をついた。
まさか真昼間からこんな妙事件に遭遇することになろうとは・・・。
なんだか知らないうちに警察署の上司から、一応の担当と云う事で市役所まで派遣されてしまったのだ

「ほぉら~、キョウスケ。そんなしかめっ面してないで、これだけでも目を通しておきなさいよねぇ~」

派遣されてきたもう一人の相棒、エクセレン・ブロウニングから渡された事件の簡単なプリントを見る。
そこには容疑者の大きな写真と、ソコに至った経緯が書かれていた。

「まさか市街地で輸送車が事故を起こして逃亡するとはな・・・」

「早朝だったのが幸いして被害者は居ないみたいだけどー・・・。早急に見つけないと大事よ」

自分達を派遣したのは、見つけて撃ち殺せとでも云うのだろうか? あの上司は。
とりあえず市役所側の担当者と顔合わせをして、この後の行動を打ち合わせないといかんな。
走り回ってる職員を捕まえて、対策本部の置かれている会議室を聞く。
階段に足を向けたところで、後ろから二人を呼び止める声。

「よ、二人とも。おはようさん」

アクセル・アルマーが飄々と二人の隣に並んでいた。
この男は確か今日は非番だったはずだと記憶しているが、急遽上司に呼び出されたのだろう。

「せっかくのんびりと櫻の作ってくれた朝食を食べていたのだがな、これがな」

「あらあら、羨ましいことで~」

「アルフィミィを尋ねてきたのだが、俺が非番だと言ったら朝飯と昼飯作ってくれてな、出かけて行ったぞ」

とすると、この騒ぎをまったく知らない可能性もあって、街中をふらふら彷徨っているのか。あの末妹は・・・。

「だ、大丈夫なのかしら。櫻ちゃん、この騒ぎをもしかして知らないんじゃ・・・・・・」

「いや、来る途中もパトカーが走り回っていたから、いくらなんでもわかるだろうよ」

”あの”妹に自分の危機を察知する能力があったのだろうかと、首を傾げつつ。
現状何処をうろついているのか把握しておく必要があると思い、キョウスケは携帯を開いた。




















******* sakura side *******


コンビニ前で「ちんちろり~ん」と携帯にメール着信。この音はキョウスケ兄さん?
わー、兄さんが電話はともかくメールなんて珍しい~。慌てて開いてみる。

件名:確認
内容:現在地を報告せよ

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

今時小学生でももう少しまともな文章を書くと思うんだ・・・。
・・・なんと云う短縮ぶり。さすがキョウスケ兄さんと言うべきか。
末妹がひとりでふらふらしてるのも心配掛けているのかなあ、返信はしておこう。

「『1:図書館 2:学園 3:自宅。さて何処だと思いますか?』っとこれでいいや」

送信っと。
さて、ご飯ごっはん~。何買おうかなあ・・・。くまこ(仮)には何食わせたらいいのかなあ?

「なにやってんだ? 巳子神」

「あ、カチーナ先生。ヴィレッタ先生。こんにちはー」

惣菜の棚前で思案していると、同じくお昼を買いに来たらしい教師に出会いました。
この暑いのに紺のスーツをビシィと着こなしたヴィレッタ先生。
Tシャツとジャージズボン、腰にはジャージの上着巻いたカチーナ先生。
カチーナ先生は体育教師だから授業ではお世話になってるけど、ヴィレッタ先生は二年からの理系教師だったハズ。
あんまり接点無いけど、生徒指導担当みたいでよく顔合わせる機会が多いんだよねぇ。
ブラックリスト入ってるからかなあ。

「ご飯を買いに来たんです。先生達は補習の監督かなにかですか?」

「あたしはまあ、部活の監督だな。何処のってワケじゃあないが、教師が一人でも居ないと色々とややこしくてなあ」

「私は補習組の監督と、校内の部活の監督もかしらね・・・。私達だけじゃなくて他にも先生方はいるのだけれど」

「はあ、ご苦労様ですー」

買い物は、くまこ(仮)分にパン2斤とパック牛乳2本くらいで足りればいいなあ、足りないかな?
自分の分はサンドイッチと野菜ジュースくらいでいいか。

「ずいぶんと買うんだな・・・。見た目に反してそんなに食うのかよ?」

「あ、こっちの分は野良子の分で、私の分はコレだけです」

熊かもしれない、なんて言ったら先生達に何言われるか。
ほどほどに誤魔化しておいていいよね・・・。

「校内には入れないようにしなさいね」

「まあ、噛みつかれんなよー」

校内に入れたら大騒ぎに・・・・・・なるのかな?
あ、そうか。くまこ(仮)の写メールをアクセル兄ィにでも送れば何の動物かが判るよね。
二人に挨拶をして別れ、もと来た道を戻る。
ついでに外の水道場からバケツ1個拝借。後で戻しておこう。


元の山道に戻ったら大人しく鎮座してたガストランダー。
おりこうさんだねー。

「ちょっと待っててねー」

くまこ(仮)のご飯は、バケツにパン2斤ぶんを細かくちぎって牛乳をパック2本投入して終わり。
前に置いてあげたら、すごい勢いで無くなっていく。
あは、ハガネみたいー。
バケツを中心にして携帯で写真を取って、アクセル兄ィ宛に送信。

「『これは何に見えますか?』で、いいかなぁ」

私は木陰に引っ込んで、自分用に買ってきたサンドイッチとジュースでご飯を済ませる。
さて、これからどうしたものかしら?
夜以降にここに居たら兄達が心配するよね・・・。
くまこ(仮)はどうしたものか、市街地から逃げてきたって所がよくわからないんだけど。
追っかけてる人間が居るってコトなのかなー。

とたん携帯が鳴り出したので、慌てて開くために立ち上がったら木の根に躓いて転びました。
うわちゃー、ドジっ娘かわたしゃー。
大丈夫かー、みたいな感じでくまこ(仮)が体を寄せてきたので、その辺につかまって立ち上がろうしたら。

   「う、うわあああああああああぁぁぁぁっ!!?」

げ、人に見られたっ!?
悲鳴の方を向いたら、遠ざかるジャージ姿。
やばー、ここって部活のマラソンコースだったのを失念してたー。
いやそれより電話電話。

「はい! もしもしっ『櫻かっ!! お前どこいるっ!?』でっ・・・・・・」

携帯を耳に当てた瞬間、右から左に突き抜けるような大声。
あうぅ、キーンってなった・・・。今のキョウスケ兄さんの声だよね。
一緒に居たのか、失敗だったなー。

「えーとね、学園の裏手・・・『おいっ! 聞いてるのかッ!!』・・・」

そのままぷちっと携帯を切って、アクセル兄ィに掛けなおす。
速攻で相手が出る。

「すいません、アクセル兄ぃ。なにがどーなってるのか説明ください」

 『お、おう。実はだな・・・・・・』




     *** 説明中 ***




「はぁっ!? 虎ぁっ!?」

あ、それでガストランダーなのか、納得。猫科なのは合ってたのね・・・。
なんか朝から市街地の方で事故を起こした輸送車から逃げ出して大騒ぎになっていたらしい。
ココ丘越えて反対側だもんね。捜査外だったみたいだねー。
そこへアクセル兄ィに送った私の写真。
バケツに顔突っ込んでる虎だったわけだから、キョウスケ兄さんが暴走起こしかけたのか。

「で、どうしましょう?」

くまこ(仮)と顔を見合わせて、携帯片手に途方に暮れた。

 『すまんが、その虎連れてこられるか? 一応山道の下に檻付きの車回すから』

「う・・・・・・」

そうだったよねぇ、行くところがあるんだねぇ。
むう、こんなに大人しいのに・・・。引き渡すのか・・・。
せっかくお友達になったのになあ、でもウチで飼う訳にもいかないだろうしなぁ・・・。

 『・・・櫻?』

「う、うん・・・。連れて行くね、他の人は姿見せないようにしておいてね」

 『ああ、判った。周辺からは離れておくな。・・・大丈夫か?』

「大丈夫じゃないやい」

  ぐるぅ

「くまこ(仮)、ごめんねー。ここでお別れのようですよー」

  ぐるるぅ

むう、見た目ガストランダーだから表情も何もあったもんじゃないなあ・・・。
とぼとぼと、くまこ(仮)を伴って道を進む。
ゼンガー兄さんに頼めば虎でも飼う事が出来るかなあ・・・。

  うぉぐぅ

「わきゃあっ!?」

いきなりくまこ(仮)に襟首捕まえられて吊り下げられたまま、坂を駆け下りる。
だあっ、首、首絞まってるっ。
そんなに先が長い道じゃないので、すぐ車道に出る。
パトカー三台が壁を作るように停まってて、中央に後部ドア開けたままのトラック。
跳ね飛ぶようにトラックに突っ込んだくまこ(仮)は、そのまま中にあった檻へ。
私は傍にポイっておかれたけど・・・。

檻にみっちり詰まったガストランダー・・・・・・、シュールだ・・・。

「じゃあねー、バイバイ」

頭ひと撫でしてトラックから降りると、周りで待機してた人達が出てきて檻閉めて、トラック閉めて。
いつの間にか横に立っていたキョウスケ兄さんに、頭撫でられながらトラックを見送りました。

兄さん達に「送ろうか?」って言われたような気もするけれど・・・。
気がついたらアリィちゃんに手を引かれてて、家まで連れてってもらえました。
















******* other side *******


アルフィミィの所へ、兄からの連絡が来たのは昼過ぎ。
広報車が『逃げ出した虎が無事保護されました。市民の皆様には~(以下略)』と通り過ぎた後のことだった。

「櫻が?」

 『ああ、ちょっとな。頼めるか? 一人で帰らせるには心配なんでな、これがな』

普段ののんびりさを何処かに置き忘れてきたかのように、慌ててたどり着いた先に居たのは幼馴染で。
普段の明るさはなりを潜め、借りてきた猫のように大人しく、意気消沈していた。

なにか問いかけても「・・・うん」としか言わないので、アクセルに疑いの目を向けると。
「そっとしておいてやれ」と言われるだけで、詳しいことは聞けなかった。

実際詳しいことを聞いたのは、櫻を家に送り届け、自宅で夕食のときにアクセルから。
やっぱり朝から一緒に居ればよかった、と自分に憤慨することしができなかった。



次の日は朝から居た堪れなくて、櫻を誘い、ラトゥーニとマイも誘ってファミレスに行った。

「どうしたの? 櫻なにかあった?」(←小声)

と、聞くマイの前にはケーキセット500円。アイスティーとモンブラン。
櫻の前には抹茶フロートとショートケーキ、注文したのはアルフィミィだったが。
誰が見ても口を揃えて元気が無いと言える状態。

「昨日の虎脱走騒ぎのときに、”かくかくしかじか”~ですのよ」(←小声)

アルフィミィはハーブティーとガトーショコラ。ラトゥーニはアップルティーとチーズケーキ。

「櫻は来るものは拒まず、だもんね。むしろ離れられず、かな?」(←小声)

なんとなく連れ出してはみたけれど、どうやったら元気になってくれるのか。
長い付き合いでも、ここまで沈んだ幼馴染の扱いにアルフィミィは対処法を持っていなかった。

「櫻の扱いにも困るところだけれど、私達も色々とねぇ?」

「ああ、彼氏が補習で構ってもらえないから困ってるんですのね・・・」

「なんで速攻でこっちの考えを読むのよ!?」

「毎年の事じゃありませんの?」

「「うぅっ」」

談笑していても、テーブルの一角は櫻がもそもそと沈黙しながらケーキを食べていた。
三人とも横目で見ながら、「だめだこりゃ」「時間が解決するんじゃない?」と云った結論に達していた。

「いいかげん制約でもつけたらどうですの?」

「制約って・・・、何を?」

「補習になったら、夏休みは全部彼氏のオゴリとか。補習にならなかったら体でも差し出せばいいんですの」

「「ぶふっ!?」」

そろって飲み物を噴き出した二人に、首を傾げるアルフィミィ。

「あら? まだそこまでの関係に至ってませんでしたのね・・・・・・」

「「さ、さささすがに・・・・・・そそその発言はわわわ・・・・」」

二人揃って赤い顔でわたわたとドモる姿を見たアルフィミィは、黒い笑顔を浮かべた。

「でしたら、櫻が前に言っていた三年の方に肉体交渉前提であれば奪えるかもしれませんよ? と入れ知恵を・・・」

「「ちょっと待ちなさいよっ!?」」「あ!」

二人がアルフィミィに詰め寄るのと、櫻が声を上げ立ち上がるのが一緒だったため。
周囲の客の視線が一斉にマイ達のテーブルに集中した。

「「「櫻?」」」

「ちょ、ちょっとゴメンね。忘れ物思い出したからっ」

自分の席に代金を置き、アルフィミィだけにウインクして店を飛び出していく櫻を、三人は唖然として見送った。

「・・・・・・なんか。心配する必要もなくなった感じ?」

「まったく・・・」

アルフィミィはにやけた口元を隠すように、櫻が残していったケーキから苺を口に放り込んだ。





















******* sakura side *******


なんか忘れてたと思ったんだけど、バケツ置きっぱなしだったんだよね・・・。
アリィちゃん達にはちょーっと心配されちゃったけどさ。
折角馴れたと思ったのに傍におけないのは、寂しいんだけれども。
虎じゃあ飼うわけにもいかないもんね。
向かった動物園もなんかちょっと遠いところみたいだし、機会があれば会いに行こうかなと。

登山道入り口まで戻ったところに、昨日のままでバケツが転がってたので拾ったら・・・。

ガザザザザ──ッ!

ってなんかすごい葉擦れな音がするので振り向いたんですよ・・・、

そしたら、隠しきれない巨体で樹の向こうからこっちを見つめる

スレードゲルミルが・・・・・・。
























(あとがき)

物語は脳内にあったのに文章にならなくて難儀しました。

あと他の投稿者方の文章を見て自分の酷さに鬱に・・・orz



[7259] 07 「ATX家の夏休み(前編)」
Name: C-K◆ae02f8a5 ID:27ec9c7b
Date: 2009/04/18 00:48

紫の爆光、重力の虚無の中に機体が沈んで逝く光景がコクピット画面に映し出されていた。
僚機はすぐ近くまで特攻してきた機体を、剣で寸断している。

「なんでぇ、歯応えがねぇなー」

「私らを前にして特攻してくるだけでもマシなのでは・・・」

片や、日輪を背負った蒼い機体。
区域内のゲーマーには『仏像』の愛称で恐れられている。
MISAこと巳子神櫻操る、ネオグランゾン。

片や、銀水色の羽根付き。マサキ・アンドーの操る、サイバスター。
予測不明な飛行経路を描き、二機に近寄った敵をばさばさと叩き斬っている。
それはもう、包丁の前の大根のように・・・。

「カツラ剥きって出来ねぇかな」

「どんな剣撃モーションですかそれはっ!?」

七月も終わろうとしている夏休みのある日。
バーニングPTのバトルロイヤルは大いに荒れていた。















「まぁた、ずいぶんとおっそろしいペアで・・・・・・」

極東市のメインストリート、歓楽街のほぼ中央にある【ワールドプレイパレス】
そのくつろぎスペースで、今展開中のバトルロイヤルの様子を映し出しているディスプレイを眺めながら、
マイ・コバヤシは諦めたような一言を零した。
ソファーの傍らでは機体ディスクを弄りながら、ラトゥーニが画面を見つめている。

「入った瞬間に、遠距離攻撃で粉砕されましたからねー」

「櫻ってば絶対、撃破したのが私達だって知らないんじゃないの?」

傍で遠距離攻撃でレーダーの片隅に映った敵を粉砕する光景は見たことがあっても、
まさか自分達がその標的になるとは、思ってもみなかった二人だった。
画面端にはバトルロイヤルが、まだ経過半分以上の時間を残していることを示すゲージが見てとれる。

「あの二人って何処からプレイインしてるんでしょうね?」

「隣町のプレイパレスからじゃないの? あっちはたしかマサキ先輩の家があったと思うから・・・」

バーニングPTをプレイするためには、ここに置いてあるような円筒形ゲーム筐体が必要になるが、
回線に繋ぐためには、家庭用ゲーム機などの一般回線からでも十分なシステムが採用されているので。
ちょっと高めの乗用車を購入するだけの財力があれば、個人宅からでもプレイインすることが可能なのだったりもする。

公共の場からと云う制限で、学生達の知っている筐体の置いてある場所は、
市内でも高級住宅街にある系列の違うゲームセンターか、
同フィールド区域内とされている、隣町の【ワールドプレイパレス】だと推測される、が。
他には、夜営業の18歳未満お断りのショーパブだとか、
デパートのゲームコーナーに1筐体だけとか、何故か公衆浴場に設置してる所もあるので、
何処からゲームをしているのかは、さっぱり特定できなかったりもする。

しかもこの辺のゲーマー内では間違いなくトップクラスを誇れる、サイバスターと。
あんまり出現することは少ないが、チート入ってると噂されるネオ・グランゾンとのペア。
バトルロイヤル始まった時点で、最大収容数30機居たゲーマー達も、開始5分で全滅させられてしまった。

ペア参戦らしく、互いの攻撃は効果なし。
その利点を利用して、ネオ・グランゾンは広範囲攻撃をバカスカ撃ちまくっている。
その後も、散発的に挑戦してくる者達を、ばったばったとなぎ倒している最中で、
近距離戦はサイバスターに斬殺され、距離をとればネオグラの射撃で跡形も無く消滅。
悪魔も裸足で逃げ出すような所業である。








    *** in Game ***


「調子は上々、後は仕上げをごろうじろってな」

「絶対、意味を判って使ってませんよね?」

動くものが何もなくなった荒野に佇む、二機の魔神(マシン)。
グランゾンの射撃がバトルフィールド全域をカバー出来るために、櫻がもっぱらレーダー監視係になっている。

「あれ?」

「どうした?」

「なんか三機入ってきて・・・、一機だけすごい勢いで突出してきてる・・・」

「お?」

ものすごい勢いで飛来した飛行体が二機の間を抜けて行き、遠方よりの射撃が三条、
ネオ・グランゾンの外郭フィールドに着弾した。

「R-1ッ! ダテ先輩ですかー」

 『よおっ、お前達の快進撃もココまでだぜっ!』

ザザッとしたノイズの後にオープンチャンネルで宣戦布告。

「お? 言うねぇ。勝負だぜリュウセイッ!」

鳥形飛行形態に変形したサイバスターが R-1の後を追うように空に飛び出し、
あっという間に、空は二機のドックファイトの限定空間へ。

飛行型と云う利点ならば、サイバスターの方が小回りが利くため、
最初のR-1の突撃はあっさりと逆転され、空中でサイバスターに翻弄される方にまわっていた。

「で、私の相手はこっちと・・・」

マイ・コバヤシ操る赤い飛行砲台のR-3と、ライディース・F・ブランシュタイン操る青い重砲撃機のR-2。
こっちは宣戦布告もなしに、この前のリベンジだコノヤロゥといったような感じで突っ込んでくる。

「さてさて、この前と同じに逃げ回るだけとは思わないでくださいね。先輩方」

剣を抜くと同時に前方へ加速。R-3とR-2の砲撃も外郭フィールドで弾き、R-2に激突してそのまま押し出していく。
そのまま押し込むように地面に倒し、R-2をスケボー代わりのように地面を滑走。

「あいにくと、このバトルフィールドは地雷原が有りでしてね。NGOぶりに除去作業と参りましょうか、先輩」

背面からR-3の射撃に射されまくりながら、地面を滑りつつ断続的な爆発に巻き込まれていく二機。
もっぱらダメージが蓄積していくのはR-2だけではあるが・・・。
振り解こうにも片腕を剣で串刺しにされ、はっきり云ってパワーはネオ・グランゾンの方が上。

ふいに背後からの射撃が止み、横から特攻してきたR-3にR-2もろとも跳ね飛ばされるネオ・グランゾン。
飛ばされた空中で胸部から黒雷を生み出し、着地と同時にソレを投擲。
R-2を引きずるように慌ててクラスター弾を回避するR-3。

「わりぃ、巳子神。そっち行った」

威嚇射撃で横から白い飛行体ことR-1が、掠めるようにネオ・グランゾンの前を通過。
そのまま示し合わせたように、三機とも急上昇。
後方から来たサイバスターも、R-1を追うように急上昇をかける。

「あいつら合体するつもりだな・・・」

「ダテ先輩のことですから見栄張るまで待ちますか・・・」

頭上に開けた穴の中へ消えていったネオ・グランゾンは、合体モーション中のSRXの頭上へと。
下からは炎を纏ったサイバスターが。

 『天下無敵のスーp 「アァァカシックバスタアアアアァァッ!!!」

「縮退砲、発射(←投げやり)」







        ああ、無情。














******* sakura view *******


ゲーム筐体から出た先は、普通のフローリングのリビング。
ここはゲーム屋でもないトコロで、シラカワのおじ様の自宅である。
自宅内にバーニングPT用のゲーム筐体が2機もあるんですよここ。
それがマンションの最上階の1フロア丸ごとなんだから、おじ様お金持ちー。

「随分と運用にも慣れたようですね」

どうも前に使っていたゲシュペンストの影響か、追い込まれると逃げに走るクセがついてたので。
ネオ・グランゾンは何回か使ってみて、外郭フィールドで敵に攻撃させるだけさせておいて、
その間に攻撃モーションやらの時間に当てればいいと気がついた。

「すみませんね、櫻嬢。急にデータ取りなどさせてしまって」

これで次の新しい機体も、貴方に運用してもらえそうですね。とか恐ろしい発言が・・・。
一体何を私に運用させる気ですか?!

「いえ、良い事も有りました。この戦闘でパイロットランクがBに上がったんですよー」

ゲーム終了と同時に、軽快なファンファーレと『Congratulations!/ Lunk UP "B"!!』 ちょっと嬉しい♪

「なんだァ、お前あんなゴツいの乗り回しててCランクだったのかよ」

「機体は関係ないと思いますよ。マサキ先輩」

先に筐体から出てたマサキ先輩は、
おじ様から距離を取るようにダイニング脇のソファでダルそうに座ってる。
仲悪いなー、ホントに・・・。
勝手知ったる他人の家。ダイニングでコーヒーを淹れ、マサキ先輩とおじ様に渡す。

「今日はどうしました? 櫻嬢。事前連絡無しにウチに来るなんて」

おじ様からの問い掛けに、ここに来た用事を思い出した。
大抵は外出なんてしないから家に居るとは思っていたんだけど、まさかマサキ先輩まで在宅だったとは。

「実は、明後日から別荘に泊りに行くんですけれど。おじ様達もどうですか?」

行くメンバーは家から兄妹4人、レーツェルさん、隣の兄妹。ミズハ姉妹。後エクセレンさん。
別荘の持ち主はレーツェルさんなんだけど、
「普段まったく使わないから」と云う理由で、毎年私達で利用してるんだよね。
去年はこのメンバー+マイ&ラトゥーニが居たんだけど、今年はスケジュール合わなくて、パスされちゃった。

行き先は山だけど、川挟んだ反対側にロッジ型のキャンプ場あるし。
別荘も近所に点在してるしで、そんな寂れた感じも無いと思う。
あとは近所の温泉地からわざわざ温泉引いてるんだよね。
持って行くのは、着替えだけあればだいたい足りると思うし。

「まあ、バーベキューして花火してってくらいだけど。忙しくなければどうですか?」

「俺はまぁ、行ってもいいぜ」

ふむ、と考え込んだおじ様と対照的に、マサキ先輩はあっさりと返答してくれた。
これで二人の仲も1ミクロンくらい縮んでくれればいいなあ・・・。
期待を込めた視線をおじ様に向けていたら、「まあいいでしょう」とすぐ了承してくれた。

「外へ出るのは随分と久しぶりですからね」

「「引きこもりすぎだっ(ですよっ)」」

カレンダーを眺めながら、
「前回出たのは何時でしたっけ」と数え始めた人に、突っ込んだのは間違いではないはず・・・。






















******* other view *******



時間は進んで、旅行当日。

十六人乗りのマイクロバス。運転するのはレーツェル・ファインシュメッカー。
一応アクセルも運転手の補助要員として、その後ろに控えている。

最前列にはゼンガーとシュウ。
ゼンガーはいつもの腕組みポーズで、シュウはノートPCを開きながら時々ゼンガーに話を振ったりしている。
片や「うむ」としか言わないが、会話は成立しているようである。

実はこの二人、出会ったときにひと騒ぎになった。
出発前にATX家前で、


 「貴様、・・・シュウ・シラカワ!」

 「ゼンガー・ゾンボルトですか・・・」

 交差する視線、流れる緊迫感。
 手も出せず固唾を呑んで見守るしかない同行者達。

しかし・・・、

 歩み寄る両者、
 がっちりと握手を交わして。

 「ひさしぶりだな」

 「ええ、ごぶさたしております」

 ギャグアニメよろしく皆がズドドドッと崩れ落ちたのは、仕方ない事だと思いたい。


その後ろにキョウスケ&エクセレン。
実にエクセレンだけが楽しそうで、キョウスケは仏頂面で静かにしているように見えるが。
身内からみれば、いちゃついているだけである。
しかし、刑事が三人も有給取って大丈夫なのだろうか・・・。

その後ろには学生メンバー。マサキ、ブリット、クスハ、イルイ。
毎年のことならば、悪ノリしたエクセレンが前に出て、バスガイドの真似をしているトコロだが。
今年はソレも無く、会話もさざなみのような小声である。

理由は、一番後ろの長椅子状になっている席にあった。
アルフィミィの膝枕で、タオルケットを掛けられた櫻がすやすやと眠っているからである。

さらに片側の膝枕では子犬のクロガネが。
櫻に抱きしめられているように、腕に収まっているのはハガネである。
二匹ともすぴすぴと熟睡していた。
アルフィミィが時々櫻の髪を梳きながら、自愛に満ちた微笑を浮かべている光景は、
《楽園、春の陽だまり》と云った絵画のような感じである。

バスの乗員達は時々振り返ってその光景を見て、ついつい笑顔が浮かぶ。

「いいなー」

「まあまあ、イルイちゃん。あっちに着いたらハガネ君達と遊ばせて貰おう」

「・・・うん」

「アイツ、無理しすぎなんじゃねぇの?」

「まあ、昨夜から弁当の仕込みやらなんやらと、台所を駆け回っていたからなあ」

実際のところ、昨夜の夕食と翌日の弁当と朝食の下準備。
朝日の昇る前に起きだして、朝食と十二人分のお弁当の作成。
ブリットはバーベキューの機材チェックくらいしかできなくて、花火は皆で持ちよりであるが。

向こうに着くまでは仕方あんめぇ、とは全員の見解一致である。























(あとがき)

短いですが後編へ続く。戦闘は難しいですねー。

タグ使用練習のためSRXが酷いことになりましたが、SRXが嫌いじゃないですよ?




[7259] 08 「ATX家の夏休み(後編)」
Name: C-K◆ae02f8a5 ID:27ec9c7b
Date: 2009/04/18 01:16
河原の平坦な岩に腰掛けて、櫻はあくびをひとつ。
時刻は昼を少し回ったところ。

あれからバスは予定到着時刻を大幅に早まって目的に到着。
途中で「行くぞ、トロンベ」とか言いながらレーツェルが暴走行為に及んだらしく、
車内が一時パニックになったとかならないとか・・・。

別荘は横に広い三階建ての建物で、まずは部屋割り。
女性陣は三階部分、男性陣は二階部分、人数分のベッドは無いので一部は床の上で寝袋。
マサキが嬉々として寝袋に立候補。アクセルが一階の暖炉前のソファを希望。

事前に管理している人員に連絡がしてあったらしく、別荘内は綺麗で、ダイニングの調理用具も完璧。
バーベキュー用の食材も冷蔵庫に一通り揃っていた。

到着が昼前だったのだが、朝食を抜いて来た者もいたので、まずは腹ごしらえ。
櫻の作った弁当は実に好評で、一部争奪戦が起きたほどだった。
その後、夕食になるバーベキューの準備まで自由時間と云う事になった。
そのため、「一眠りする」と言ったレーツェルを除き、皆で河原に繰り出して来ていた。

女性陣は二匹の子犬を可愛がっている最中で、櫻はそれをちょっと離れたところから見ているだけ。
マサキとブリットは河原で釣竿をたらしている。
ブリットをマサキと挟んだ反対側の岩に腰掛けたシュウは、ノートPCに軽快なキータッチで何か打ち込んでいる。

アクセルとキョウスケは、最初河原で何か話していたが、河原を上流の方に走っていってしまった。
アルフィミィの談によると、何か良い鍛錬のネタを見つけたのだろうとのこと。
ゼンガーはしばらく川を眺めていて、不意に別荘の方へ戻って行った。
「嫌な予感がする」と言ったのはブリットだったが。









「はぁ?! 虎騒ぎの時の発見者って巳子神だったのか」

「話によると、仲良く一緒に昼飯食ってたらしいぞ。一概に鵜呑みには出来ないが・・・」

釣竿垂らしていても、暇な時間なのは変わりなく、必然的に二人は雑談になる。
最近に起きた事件と言えば、夏休み初日の《虎脱走騒ぎ》だろう。
新聞によると、女子高生が発見して通報した事になっているが、
身内のブリットは、その辺の話を詳しく聞いている。

これは、妹の危機感知能力が低いことを憂慮したキョウスケから、
学園生活で比較的近くに居るブリットへ、出来るだけ見ておくようにとの注意点である。
そんなことを言う前に、本人が夕食の席で全部喋ってしまったのだが。

しかもそれだけに留まらず、次の日も似たような事件に遭遇してしまったため、
七月中は心配し過ぎたキョウスケの命令で、外出禁止令が出るところだった。

「俺なんか真っ先に逃げるな」

「同感だな」

「男がそれでどうするんですか。せめて女性を先に逃がす、くらい言ってもらわないと」

しかたのない人達ですねぇ。と、シュウの発言にマサキは嫌そうな顔を向ける。
挟まれてるブリットがまあまあと、抑える役。
ソレを見越してのこの配置かと思うのは、苦労人に慣れたブリットの心境だ。

「櫻嬢の捉え方と、君達の捉え方を一緒にしても意味はありませんがねぇ」

「「は?」」

「例えば、あれは貴方がたにはどう見えます?」

シュウの視線の先、振り向いた二人に見えるのはちょっと離れた岩に腰掛ける櫻の姿。
と、周囲に何故か集まっている野鳥と野兎の群れ。
河原に降りてきて、まだ一時間も経っていないのにすごい吸引力である。

女性陣、特にイルイがもの欲しそうな目つきで視線を送ってはいるが、
近付きたがらないのはおそらく、櫻の腕と肩に巻きついてる蛇のせいであろう。

一般人から見れば命の危機になっていると思われる当の本人は、
まずウサギの一匹を抱えるように持ち上げ、そのままぐるっと回転させ、一考。
その後は撫で回しながら再び回転、おもむろに立ち上がると、行く末を見守っている男性陣の方へ歩み寄り。

「おじ様。これ、何に見えます?」

三人の目の前に差し出された野兎は、暴れもせずにじっと抱えられているだけで。

「兎ですね」「兎だろう」「兎以外の何に見えるんだ?」

あ、そうなんだ。と、男性陣三人の答えにうんうんと頷く櫻。
つい聞き返したブリットには「量産型ヒュッケバインSD風味」と答え、踵を返して女性陣の方へ。
途中、壊れ物でも扱うように蛇を河原へ降ろし、
最初に櫻が座っていた場所にまだ留まっている野兎達へ、おいでーとジェスチャー。

「ほらー、イルイちゃん。触っても大丈夫だよー。でも静かにゆっくりとねー」

野兎の群れに囲まれた櫻に、近付いたイルイとクスハはそっと兎達に手を伸ばし歓声を上げる。
「やわらかーい」だの「ふかふかー」だの楽しそうな声が聞こえてくる。
エクセレンだけが兎に手を伸ばすと、ひょこひょこーと逃げられてはいるが。


「・・・だ、そうですよ」

振り向いたシュウの前には疑問符を浮かべる学生二名。

「「・・・・・・なんだそりゃ・・・?」」

「物分りの悪い人達ですねぇ・・・・・・。 
まあ、目の前に虎が居ると例えましょう。あなた達は最初、虎を見たら逃げると言ってましたね。 それは何故ですか?」

二人揃って「襲われるから?」と疑問形で答えが返ってくる。

「虎=襲われる、肉食獣、怖い。と云った形容的なものが、ソレを脅威とたらしめていますが。
 虎を見ても『虎』と認識できなかったら、ソレを『恐いもの』と云うカテゴリーに当て嵌めますか?」

「えーと、つまり櫻には虎が違う生き物に見えていると・・・?」

「生き物ですらないですねぇ。今彼女が言ったことを忘れましたか?」

なんとかひゅっけばいんって何だ? と首をかしげるブリットに補足するマサキ。

「バーニングPTで使える機体でな。女性でも簡単に改造が加えられる基本セット、みたいなやつかな」

ぶっちゃけてロボットと言われたブリットが真っ先に浮かべるのは、カラスの事をリオンと呼んでいた妹。
あれもなにかのロボットの呼称だったのか、今になって実感する。
でもロボットにもロボットなりの脅威が、とか反論したブリットだったが。

「蛇を腕に巻きつけて平気な顔をしている貴方の妹が、脅威を感じているように見えますか?」

あっさり目の前で起こっていることについて言及され、理解するしかなくなった。

















******* sakura view *******


おじ様の講釈を受けている、マサキ先輩とうちの兄。
兄の反論。しかしあっさりと言いくるめられ、肩を落とす兄。
熱血理論しか持たないブリット兄さんには、おじ様を論破するのは無理だと思う。

「あぁん、もう。どーして触らせてくれないのよぉ~」

「スナイパーだからじゃないですか?」

エクセレンさんが上げる不満の声に、そのまま返す。
何で知ってんの? みたいな顔されるけど、すぐ納得してくれたようだ。
キョウスケ兄さんから聞いたのである。その昔、特殊部隊か何かでスナイパーをやっていたらしい。
だから本能的に動物には逃げられるんじゃないかなあ、と。

前触れもなしに、周囲に居たちびリオン達が飛び立っていく。
こわい、とか、きけん、とかの意味合いの声を上げて川の向こうまで散ってしまう。
SD風味量産型ヒュッケバイン(兎)達も、身を寄せ合うようにして私の足元で固まる。
はて? 何か危険が迫っているのかなー・・・。とか思っていたら、
河原から別荘に続く小道より、ゼンガー兄さんが現れた。

さっき着ていた私服姿じゃなくて、胴着姿に木刀持って。
蜃気楼かと見間違うほどの青白い闘気を身にまとって。
足元で固まっていたウサギ達が慌てて逃げ出していく。あーあもう・・・。

去年もあったなあこんな光景・・・。
デジャヴどころか、記憶に丸々残ってる毎年の光景なんだけど。
対岸に居た、川向こうのキャンプ場のお客さん達がこっちを指差しながら、「おい、あれー」とか、
「あの人ってたしかー」とかの声がココまで聞こえてくるし。さすが民放の有名人。

当の本人は見物人なんかまったく眼中になし。ブリット兄さんを呼んで川下に立たせると。
川の中にででんと転がっている岩の前まで歩いて行き、木刀を正眼に構え、目をつぶって深呼吸。

 静まる空気、聞こえてくるのは森の葉ずれと川のせせらぎ・・・

「チェェストオオオオオオォォォォッッ!!!!」

 カッ! と目を見開いたゼンガー兄さんから繰り出される剣撃。

ゴッ! とか云う音と岩表面で止まる木刀。
本命は岩の周囲の水面にぷかーと浮かぶ十数匹の川魚。慌てて掬い上げるブリット兄さんとマサキ先輩。
しばらく間が空いて、真っ二つに割れる岩。対岸から上がる歓声。こっち側でも拍手するみんな。

・・・毎年思うんだけど、何で木刀で岩が割れるんだろう・・・・・・?
いつのまにか傍に立っていたアリィちゃんが、「気にしたら負けですのよ」と。
なんかこのやり取りも毎年やっているような気もするよ・・・。







結局、お昼が早めだったから夕食も早めになりました。
最初は河原でやる予定だったんだけど、ゼンガー兄さんのパフォーマンスで目立ちすぎる。
って理由で別荘の庭で。一応照明施設あるしね。

食材の準備はレーツェルさんと一緒に下ごしらえとかしたりしました。
それはともかくとして、食材の確認をしたら肉が30kgも入ってた件について・・・・・・。
一人当たり2.5kgも喰えと云うのだろうか? 
ライディース家の人間はそれだけ食べるのが当たり前なのでしょーか?
レーツェルさんは余ったら、「櫻嬢の好きに使えばいい」って言ってくれましたけど。

バーベキューの機材準備はアクセル兄ィとブリット兄さんがやってくれました。
ゼンガー兄さんが獲った川魚は、キョウスケ兄さんが黙々とワタ抜きしてた。
岩割った本人は「もう半歩踏み込めたか・・・・・・。未熟・・・」とか凹んでて、突っ込んだほうがいいのかなあ?

「こらー、男性陣は肉ばっか喰うなー! アリィちゃんはもっと肉喰いなさいっ!」

「巳子神は俺らの母親かっての・・・?」

「言われたくなかったら、もっとバランス良く食べてください。マサキ先輩も例外ではなくて・・・」

「いやいや、櫻ちゃんも~人の心配する暇があったら食べた方がいいんじゃないの~?」

いやあんたら好き嫌い多すぎだって・・・。
主に野菜とかバランスよく食べてるのってブリット兄夫妻とイルイちゃんくらいじゃん。
アリィちゃん、肉まったく喰わないし・・・。

ハガネとクロガネは肉と食材を軽く茹でたモノを紙皿に盛ってあげました。ごはん付きです。
米も炊いて、味付け無しでお握りにして一応添えてあります。そこそこ減ってるなー。
余ったら明日の朝ごはんかなー。バーベキューのタレつけて焼お握りとかね。

「はい、さくらお姉ちゃん」

「はぅ、イルイちゃんありがと~」

色々盛り合わせをイルイちゃんがくれました。まあ、焼いてばっかりいたからねー。
たいして動いてないから、あんまりお腹も減ってないけど私も食う方にまわるか・・・。
レーツェルさんとかアクセル兄ィとかどんどん焼いてるし、・・・気になることもあるし。

別荘より少し離れた暗がりの闇の中がちょーっと気になるんだよねぇ。








******* other view *******


夕食が大体終わったところで花火をやろうといった案も出されたが、
まだ遠くの空に夕闇が残っていたこともあって、ひと風呂浴びてから改めて花火をする事になった。
別荘の裏手に高い檜の垣根に囲まれた、設備の広い旅館のような露天風呂の女湯と男湯。
こちらもすでに事前準備は抜かりなしで、バスタオルやら旅行洗面所セットが人数分揃えてある。

男湯。これといって騒ぐような人物も居ないので、黙々と、と言ってもおかしな話だが、
ため息をつくくらいで静かに温泉を堪能している。
腐女子が見たら真っ先にBLのネタにされそうな筋肉美が揃ってはいるが・・・。

女湯。抜群のプロポーションを誇る者が二人もいて、
男性陣より人数も少ないのにきゃいきゃいわいわいと、実に騒がしい。
唯一静かに入っているアルフィミィは、子犬二匹を洗って手桶の湯船にいれてやっていた。
ふ、と。足りない人間に気づいたエクセレンが、隣の男湯へ声を掛ける。

「ちょっと~、キョウスケ~。櫻ちゃんは~?」

「俺が知っているワケでもないが・・・。女湯に居ないのか?」

「櫻嬢なら、ゼンガーと一緒に散歩だ。夕食のときから何か気になっているようだったな」

疑問に答えたのは、風呂の中でも特徴的なメガネを外さないレーツェルだった。
発言されてからブリットは「あれ? 兄貴がいない・・・」とか言っていたが。

「ま、ボスと一緒なら大丈夫でしょー」と呟いたエクセレンの視線は、
垣根の暗闇に目を向けられた瞬間に、剣呑な光を帯びたものへと変わった。











「ごめんなさい・・・」

「判ればいい」

別荘地といってもある程度は一軒一軒、視界に入るような距離を置いて纏めて建てられている。
その群より少し外れた、林から森へ移ろうとする木々の中で、櫻はゼンガーに怒られていた。
夕食のときから気になっていた気配を探しに、手土産を持って別荘を離れたまでは良かったが、
そっけなく見えて実は気を配っていたゼンガーに捕まってしまったのだ。

曰く、小さな子供ではないのも判っているが、夜に出歩かないこと。
曰く、誰かに一言言ってから出歩くこと。危険防止のため、誰かについて来て貰う事。

少し考えれば心配ばっかり掛けてしまっていた、と云う事実に思い当たり、
涙目になりながら頭を下げた妹の髪を、少し乱暴に撫でてやるゼンガー。

「俺が付いていくが、いいな?」

「うん。・・・・・・ありがとう。ゼンガー兄さん」


薄暗い森の中を、月明かりのみですいすい進む妹の後姿を見ながら、
ゼンガーが思うのはバスの中でシュウ・シラカワに言われた事だ。
(「さすがに巫女の一族と云うべきでしょうか」)
弟達の報告や、レーツェルの集めてきた情報でもその辺は一応裏が取れている。
問題は本人がどうしたいか? あとは其れに委ねるしかないと思った。

「あー、いたいた」

ふいに前を歩いていた櫻が、目的のモノを見つけたようで森の闇影へ声を掛ける。
ゼンガーより少し前にいる妹へおそるおそる、慎重な感じをもって近付いてくる巨体があった。
櫻よりは大きいが、ゼンガーよりは少し小さいクマだった。

「こんばんは。スレードゲルミルくん」

まったく恐れもせずにクマに近付いた櫻は、躊躇もせずにその巨体に抱きついた。
「うーん、ちょっとごわごわー」とか楽しそうに毛皮を撫で付けている。

「櫻、知り合いか? その熊は」

「ううん、違うよ。今日が初対面。でもこの子やっぱりクマなんだ。日本産だとあの子より小さいね」

あの子と言っているのは虎騒ぎの次の日に、周囲の心配もなんのその。
密輸入されたあげくに業者から逃げ出して、学園の裏山をさまよっていたヒグマを見つけてしまったのである。
腕の一振りで少女なんぞをあっさり即死させてしまうような、凶暴極まりないそのヒグマを、
人の目に付かないように街中を移動させ、「迷子のお届け者でーす」とか言って連れて行った先は警察署だったわけで・・・。
キョウスケの話によるとそれはもう大パニックだったらしく。
身内が1Fの騒ぎに気がついて駆けつけてみれば、少女+ヒグマとそれを包囲して物陰から銃を構える警官隊。
・・・といったありさまだったらしい。
付け加えるならば、銃を向けられた本人は"何故パニックになったのか?"と疑問顔だったとか。

その豪胆な当人はゼンガーの前でクマに余りものの肉を与えていて、実に楽しそうに。
「はい、あーん」だとか「これあげるから人間がいっぱい居る方に近付いたらだめだよー」と、クマに話しかけていたりする。
接し方をみているならば、親しい友人に対する態度というよりは手を焼かせている弟といった口調で。


しばし一匹と一人がじゃれあっていると、クマがゼンガーの後ろ側を見つめるような仕草を見せ。
櫻になにか唸ると、踵を返して森の奥へと去って行った。「んじゃまたねー」

「もう済んだのか?」

「うん、なにかあっちから騒ぎになってるって。別荘の方みたいだけど・・・」

服に付いたクマの毛やら葉くずやらをはたき落として、ゼンガーと妹は視線を交わす。
その瞳の中に、悪戯を思いついたような光を見つけたゼンガーはため息をひとつ。

「やれやれ、まだ子供だったか・・・」「妹だもーん」

えへへーと云った笑顔で、片腕に飛びついて腕を組む妹を見つつ、ゼンガーは別荘へ戻ることにした。












******* sakura view *******


小さい頃は結構ゼンガー兄さんに連れられて色々連れて行ってもらった記憶が・・・。
なんかちょっとの距離だったけど楽しかったです。

別荘に帰り着いたら、アクセル兄ィに腕を極められて地面に倒されている二十代後半の男性二名。
エクセレンさんによると、覗き魔らしい。
刑事に見つかった挙句に、手桶の投擲で撃墜されるとは、・・・哀れな。しかもばっちり現行犯。
そのすぐ後に駆けつけた所轄の警官に連行されていきました。どなどなー。





気分の悪い出来事を払拭するように、河原まで足を伸ばして花火。
のっけからブリット兄さんとマサキ先輩と何故かエクセレンさんが、三つ巴で20連装の射出花火玉で打ち合いを始めてしまいました。
時々、こっちまで流れ弾が飛んできて実に危ないです。冒頭からなんてグダグダな・・・。
キョウスケ兄さんが乱入してエクセレンさんに拳骨落として、すぐに沈静化したけど。

手持ちの花火に火をつけたら横からハガネに取られちゃった。
そのハガネは綺麗な花を飛び散らせながら、クロガネと取り合いをしてます。危ない危ない。
火が消えたのを見計らって、二匹とも捕獲。危なっかしいから抱えてよう。

懲りないマサキ先輩は噴出し花火を頭に載せて、点火。
途中で「うわちゃー」とか放り出して、川に転落。みんな大爆笑。
その後もびしょ濡れのままロケット花火だー、煙玉だー、と大騒ぎを。

なんか用意の良いクスハ先輩とイルイちゃんは浴衣姿なんですが。
途中でさりげなく近付いてきたクスハ先輩と小声で会話。

「先生が登校日にでも一回集まりたいってー」
「また"私"が呼び出されるんですかー?」
「しょうがないと思うよ。『部長』さんだもんね、櫻ちゃん」
「もうネタも種もありませんよ?」
「いやいや、学園祭だしね。『ウチ』の活躍の場だよ」

ええー、アリィちゃんに監視されそうなのにまたやるんかい・・・。
とりあえず帰ったら何か考えて、打ち合わせかなー。

考え込む前にと思い、ねずみ花火5本にまとめて火をつけて空中高く放り上げる。

「ぎゃー、櫻ちゃんッ!!」「なにしやがんだてめぇっ!」「あぶないだろうっ櫻!」
阿鼻叫喚の声がそこそこ上がるが、スルーして反撃のロケット花火を避ける。
犬二匹をアリィちゃんに渡し、バカ騒ぎの輪に混じることにした。
楽しんだほうが勝ちだよね、花火も学園祭も。
「反撃の爆竹~♪」「おおーいっ!?」「ちょっ、ええ?!」





後で、キョウスケ兄さんにこってり怒られましたとさ、まる




















(あとがき)

気がつくと数ページも後ろの方に行っている、私の投稿。

他の人の更新速度が凄すぎる・・・。

スレードゲルミルは熊公でした。次は文化祭の予定。

あくまで予定。



[7259] 09 「学園の暗部始動!」
Name: C-K◆ae02f8a5 ID:27ec9c7b
Date: 2009/05/11 23:42
※注:一部のキャラの性格が原作より破綻しています。ご注意ください。
-----------------------------------------------------------------------------------------------








 ぴんぽんぱんぽ~ん♪

『1年2組の巳子神櫻、校内に残っているのならば至急物理科の教務室まで来るように。繰り返す・・・・・・』

3年の生活指導担当、校内で最も厳しいと言われている、イングラム・プリスケン教師直々の放送に、
八月中旬の登校日、HRが終わったばかりで緩みきった空気の中、教室内の一点に視線が集中した。
ある者は同情的に、ある者は憐憫を持って、またある者は困惑気味で・・・。
その視線の向けられた当人は、ついに来たかー、といったような諦めきった表情を浮かべ席を立つ。

「・・・というわけなので、アリィちゃん。先に帰ってて良いよ」

「なんでしたら、待ちますのよ?」

「いいよ。イングラム先生の説教って、回りくどくて長いんだもん」

アルフィミィに笑顔で断った櫻に、ラトゥーニが近付く。

「何をやったの。 ・・・櫻?」

「学園祭前に釘を刺しておこうとゆー、実にありがた迷惑な配慮じゃないかな?」

んじゃまたあとでメールするねー、というお気楽な一言を残して教室を去った櫻をクラスメート皆が視線で見送った。
ラトゥーニは声に元気が無い友人を心配そうに見送ったのだが、
隣で同じく幼馴染を見送ったアルフィミィが上げた、不思議そうな声に気がついた。

「んー?」

「どうしたの? アルフィミィ」

「なんとなく・・・、ですけれど。これから説教を受けるって感じじゃなかったですのよ?」

「何故に疑問系?」

「イマイチ確証がもてませんの」










 

 ─── 同時刻 生徒会室


その部屋に居た全員が、一斉にスピーカーを見上げたのを見て、アヤは噴出した。
その声に気づいて、再び書類に専念しだした役員と執行部の面々にも小さく笑いが広がる。

「・・・会長・・・」

「ごめんなさい。ちょっと・・・みんな揃っていたものだから・・っ・・・つい・・」

不満げな副会長のライの短い抗議の声に、肩を震わせて声を抑えるアヤ。
始まったばかりの生徒会実務はしばし中断した。



「イングラム教諭が巳子神に釘を刺して、それをあいつが聞いてくれればいいのですが・・・」

再開した生徒会業務。ライの零した一言に、その場に居たほぼ全員が一斉に首を縦に振る。

「まあ、学園祭中におとなしくして欲しいのは巳子神さんだけじゃないけれど・・・」

飛龍学園高等部内には、生徒会で認定されたブラックリスト要員。
つまりは放っておくと何かしでかして、後始末が大変なことになる人物が何人か居る。
去年中等部で学園祭実行委員長だった巳子神櫻は、中等部の講堂使用スケジュールに手を入れて、
部外者の演目により講堂を半壊させた、と云う実績がある。

ブラックリスト行きになった大きな要因はそれなのだが、他にも細かい問題をいくつか起こしている。
教室の窓から窓へと手紙を運ぶカラス便を実行し、飲食店へ数羽のカラスが飛び込み、衛生問題になったり。
生物部で飼われていたハツカネズミで賭けレースを開催したり、他校生の強引なナンパでモメていた現場に乱入したり
(その他校生達は、猫に引っかかれたようなズタボロの制服姿で逃げていった、と云う目撃証言がある)。
たった二日間で、彼女が関わった事件が実に4件にも及ぶことが判明していた。

それ以外に高等部でも、執行部や風紀委員が走り回るような事件が毎年のように勃発している。
特に高等部には、10年ほど前から【裏執行部】とか云う実態のよく判らない集団が、
毎年大掛かりな事件を起こしていて、生徒会の悩みの種になっていた。

去年は学園祭前に『後夜祭に花火を打ち上げさせていただきます』と、予告状が届いて、
風紀委員や有志が目を光らせる中、学園入り口のアーチの支柱から尺玉が打ち上げられた。
そのせいで後夜祭は大いに盛り上がったのだが、後日消防署から火気取り扱いについて立ち入り検査が入ったとか。

「とりあえずは、風紀委員と有志達での取り締まりを強化するしか対処法がありませんので・・・」

「でもね、ライ」

「はい?」

「私達も学生なんだから、学園祭を楽しまなきゃダメよ。警備に縛り付けるのも程々にね」

「・・・・・・善処するように通達します・・・」

憮然とした表情でしぶしぶ頷いたライに、一同に再び小さな笑いが広がる。
特に反論もせずに自身も笑みを浮かべるライを見て、アヤも微笑みながら声を掛ける。

「はいはい、今日中にあるだけの書類を終わらせるわよ。学園祭まであと一ヶ月しかないんですからね!」

「「「「「「「「はい!」」」」」」」」 「了解です」















 ─── さらに数分後、物理科室の隣の教務室。


会議中、と札の掛かっている扉をノックもせずに小さく開け、
扉の中へ体を滑り込ませた櫻は扉を閉め鍵を掛けて、
四つしかない机のひとつに座っていた長髪の教師を見て、ため息をついた。

「イングラム先生、・・・・・・緊急召集が『先生直々で』『私の名前』ってゆーのもうやめませんか?」

「ふっ、実に判りやすかろう」

「実に迷惑です。クラスメートの視線とか・・・・・・」

室内にさざ波のように広がる失笑。数人の人影を目で見回して、櫻は再びため息をついた。

「まあまあ、櫻ちゃん。緊急招集は部長の呼び出しってのはもう諦めたじゃないの。いい加減に観念しようよ?」

「そうだぞ。お前もすでに了承した身なんだから、諦めろ」

扉近くに立っていたクスハ・ミズハが元気付けるように肩を叩いてくるが、その顔には満面の笑みが。
隣で椅子に座り、ふんぞり返って諭してくるのはクスハのクラスメート、リューネ・ゾルダーク。

「ほとんど脅迫だったじゃないですか。・・・納得はしてないだけです」

「私もそうだけど、イングラムもコレで結構貴方のことを買ってるのよ。受け入れた方が悩まなくてすむわよ」

机を挟んだイングラムの脇で、壁に背を預け腕組みをした女教師はヴィレッタ・バディム。
説得力のあるセリフだが、その口元は歪められて今にも噴出しそうだった。

「全員揃ったところで、【裏執行部】定例会議を始めるとしよう」

イングラムの切り出しに、櫻は力なく他の面々は笑いながら了解した。



【裏執行部】。それは誰が何時創設したのか不明、・・・な訳ではなく。
ある時に、生徒主催の学園行事なら教師がはっちゃけてもいいんじゃね? と言う思想の元に創設されたらしい。
最初は数人の教師で秘密裏に運営されていたのだが、そこは教える側、色々忙しいのもあり、
機動力に欠けると云う理由で、当時のブラックリスト要員を『罪の軽減』を餌に抱き込んだのが初代部長だとか。

その名前を最初に聞いたときに櫻は盛大にコケた。
ついでに櫻がココに『部長』としているのも初代部長の推薦があったからである。
つまり、去年の騒ぎで停学も無しに説教と反省文だけですんだのは、コノ恩恵のおかげだが・・・。
ほぼそれの恩恵と引き換えに『部長』を襲名させられてしまったのである。もう諦めているようではあるが。

基本的に教師が無茶を言い、生徒側が無理な作戦を立てるというスタンスである。
頻繁に行動を起こすわけでなく、大抵は学園祭が中心となるため、部長の心労も最低限で済んでいる。

「あたしは今年なにやろうかなぁ・・・」

「今年も水場に"ウーロン茶"置こうと思ってるんだけど、櫻ちゃんも"オレンジジュース"置いておく?」

「あ、はい。じゃあ、ペットボトル大4本分くらいでいいですか?」

ブラックリスト的な順位で言えば、リューネもクスハも下のほうである。
リューネは親バカな財団経営者の財力によって時々大掛かりなことを引き起こすが、
せいぜい騒がしくなる程度で、本人は他人に迷惑をかけることを嫌うため、撤収も早い。

クスハは、作り出す自称『健康ドリンク』によって卒倒者が出るだけだ。
警戒されたために、味も匂いもウーロン茶に見えるドリンクを作り出し、さらに被害者が増えた。
櫻はその弟子であり、その効果は実験台になったアルマー兄妹が身をもって知っている。
飲んだ人間はそれなりに健康的な効果が出るのだが、何故か両者とも飲んだ人間は卒倒する。

ちなみに水場というのは、有志で校内に出店する、一杯10円のティーラウンジである。
実態は、何故かクスハのドリンクに感銘を受けた奇特な人間の集団で、毎年高等部の内情を知らない中等部の生徒や、
入学して周囲に無頓着な1年、来園者がその餌食になる。後は罰ゲームに使われたり。
そのため空き教室を並びで二部屋取り、片方を喫茶店として運営。
片方にマットを敷きつめ、野戦病院のように卒倒した人間を寝かせる方法をとっている。
アフターケアも万全な上に、そこそこ人気な事もあり生徒会もむげに出店取りやめに出来ないでいるのが現状だ。

「今回はツテでこんなものを入手してな」

姦しい会話を中断するようにイングラムが机の上に置いた写真には、コンテナトレーラーのようなものが写っていた。
覗き込んだヴィレッタの表情が少々困惑気味になる。

「これを校庭内に投入するの? 今年の正面ゲートのアーチの規格だと通らないんじゃないかしら?」

「投入するのは後夜祭の直前。に、なるだろうな。だとしたら破壊したとて問題あるまい」

片付けの手間とかの問題だろうか? 生徒側の心はあまりのブレイカーな発言に吃驚だった。
それでも付き合いなれたもので、事前に入手している校庭の模擬店の配置図を取り出す。
発案者のイングラムに校門からどうやって入ってくるだとか、どれだけの大きさがあるのか、
どのように出て行くかを聞き、大体のスペースを模索する。

「この辺の模擬店は大体が運動部だから、事前にあたしが話を通しておくよ」

リューネは部活動に所属はしてないが、時々助っ人として借り出されるため運動部に顔が利く。

「進行区域に人が入らないように、撤収した後区切っておく必要がありますね」

「まあ、怪我人でも出したりすると、アヤ先輩が五月蝿いもんね・・・」

「入退出はともかくとしてだ、巳子神」

「はい、なんでしょう?」

「貴様にはこのコンテナの中身を供出してもらう」

「・・・・・・・・はい? ・・・って・・・・・・・えええええええええっ?!」

一瞬の沈黙、困惑、言われたことの重大さに気づいた櫻は驚愕した。

「これ中身込みの企画じゃないんですか!?」

「手配したのは外側だけだ。あのシュウ・シラカワと知己のお前の事、この手の人材は知り合いにいるだろう?」

「・・・いきなり言われても・・・・・・」

何故か櫻がよく言われることなのだが、この学園関係者はシュウ・シラカワを随分と警戒しているらしく、
その親密な『知り合い』と云うだけで、一目置かれているようなのである。彼女自身は実に不思議なことに。

「なにか居るだろう? 芸人とか、歌手とか。カーゴ部分はステージだからな」

「むむむむむむ・・・・」








******* sakura view *******


イングラム先生に言われたことについて、心当たりは・・・・・・あるんだよねえ・・・。
問題は相手側の方で・・・。ゲリラライブにしろって言われても、お金を提供出来る訳じゃないしねー。
無賃でこっちの要求に答えてくれるかが問題。
何か取引の手段を講じなければならないのかなぁ・・・。
・・・・・・・うーん。イングラム先生に色々と確認を取って、後は折衝するしかないかー。

「とりあえず、こちらからは払える金銭は無いですよね?」

「貸し借り、くらいだろうな。金銭は約束できないが、俺の貸しが1、と云うくらいでしかないな」

「問題が大きくなって、学校側からその場で対応に乗り出してきたらどうなります?」

「その辺はすでに問題ない。ショーン教頭は初期の【裏執行部】のメンバーだったからな。
 レフィーナ校長にまで話が飛び火することもなく、水際で止めてくれる手はずになっている」

なんちゅーか、今初めて聞く衝撃の事実だなあ。教頭先生も一枚噛んでたのか【裏執行部】。
レフィーナちゃん先生も可哀相に・・・。
交渉相手が相手だから先生の貸し1ってのはおもしろいことになるかな?

「リューネ先輩。運動部の方で、生徒がトレーラーにあんまり近寄らないようにできます?」

「応援団部であればなんとかなるんじゃないか? 先生とか生徒会が来ると散らされそうだけど・・・」

先生と生徒会と風紀委員を防ぐ壁が必要、と。その辺も私が交渉せんといかんのか・・・。
アルさんとかに話通してみてから、無賃でやるっても限界があるわな。

「とりあえず話はしてみますが、向こうが断ったらこの話は無しですよ?」

「フム。そのときはまた花火でもあげるか」

こんどは何処から上げるつもりなんだろうか・・・・・・。

















******* other view *******


その翌日、極東駅前で一般的に待ち合わせにする場所といえばココ、とゆー噴水広場に巳子神櫻の姿があった。
遠目に見れば執事風といった服装で、金属光沢のアクセサリーを腕や腰にいくらかつけていて、
髪もアップにして帽子を被っているために、美少年といった様相を呈している。
本人はコレで密会するための変装をしているつもりなのだが、周囲の待ち合わせをしている女性から、
チラチラと熱い視線を送られていたりするため、実に目立っている。本人に自覚は無さそうである・・・。

ふいにマナーモードになった携帯が震え、彼女が開いたソコにはメールで『迎えをやった』と
その迎えに来る人物の写真。「・・・あれ? これって・・・」
視線を上げれば、噴水広場に入ってきた黒服サングラスの場違いな二名の男女。
周囲を睥睨するように見渡した女性に小走りに近付いて、「おつかれさまです」と挨拶。
傍に寄って来た人物を訝しげに見ていた女性は、何かに気づいたようにサングラスを跳ね上げ、
半眼でその顔をじっくりと確認。

「なんだい、櫻じゃないか。・・・なんなんだいその格好は?」

「や、一応隠密行動ですので目立たない格好を」

「目立たない?」

櫻の背後、噴水広場からは邪推するような視線をいくつも感じる。
美少年と黒服二人の組み合わせに、待ち合わせの人ごみからは興味津々に注目を浴びている。

「それはともかくとして、我々は人を探していてな・・・」

お前に構っている暇は無い、とでも言おうとした口を遮るように、櫻が目の前に掲げた携帯の画面で視線が止まる。
「ね?」というような満面の笑みに、やれやれと嘆息。

「・・・・・・先に言ってくれ。雇い主が待っている。・・・行くよ」

噴水広場の外に止めてあった黒塗りの高級車に乗り込むこと15分、
オフィス街でも指折りの高層ビルが立ち並ぶ一群の中のビル。
ビル前の紫色の岩のようなオブジェにはめ込まれた金属のプレートには社名、『ゼ・バルマリィ』と。

櫻のような学生は休みだが、会社務めにとっては平日である。
普通に背広姿の会社員達が歩き回ってる中、黒服二名と美少年(?)は違和感バリバリである。

「メイシスさんはここの警備ですか?」

「私の隊は上役の警護だよ。お前を呼んだ連中のね」

「じゃあ、会長達が出かけたら何処ででも着いて行くんですか?」

「それが契約だしね。・・・なんだ? 妙にニヤついてて気味が悪いねぇ」

周囲の奇異な視線をするっと無視して、正面玄関からロビーホールを突っ切り最上階直通エレベーターへ。
このエレベータは会社の中でも役員クラスか社長達に用事があるものしか利用しないので、
不審の視線がたくさん飛んでくる。主に櫻に。

「いえいえ、一石二鳥かなあ、と」

「 ? 」

最上階、エレベーターから赤絨毯が続く廊下の先に本日の目的の扉。
扉よりやや斜め上のカメラに向けて手を上げるメイシス。『どうぞ』とスピーカーより声。

「私たちはここまで。あとはあんただけで行きな」

「はい。ありがとうございます」

「ま、仕事だしね。・・・ああ、時々こっちにも顔をだしな。社長が寂しがっていたよ」

「はい、それではまたです」















一部屋で1Fのロビー並みの広さを持つ社長室に足を踏み入れた櫻を迎えるのは、
ゆったりとしたソファーに足を投げ出し、高級品な背広を見事に着崩した精悍な男性。

「ひさしぶりだな。息災でなによりだ」

「こんちは。ラオデキヤさん」

大企業のお偉いさんを目の前にした少女の取る行動としては、実にフレンドリーな対応である。
そのまま視線を横に移し、高級マホガニーのデスクで仕事をするもう一人の人物を見て脱力した。




******* sakura view *******


「なんだ、ずいぶんと失礼な反応だな。ちっこいの」

「いや、ユーゼスには何処から突っ込めばいいのかと・・・・・・」

白いイカ頭の四つ目仮面をつけ背広を着た人間(?)に対応するようなスキルなんか持ってないわ。
あとちっこいの言うな・・・。

「それで、なにか相談があるのだろう? 櫻嬢がここまで来る事だ、さぞかし面白い頼み事だろうね」

ラオデキヤさんの問い掛けに、ユーゼスへの反論を自重して向き直る。
前置きを省いて、昨日の【裏執行部】でイングラム先生に命令されたことを洗いざらいぶちまけることにした。



「ほほう。イングラムがそんな物を用立ててくれと言った訳はソレか・・・」

「えー、先生にそんなもの用立てたのユーゼスなのー? おかげで私がえらい目に・・・」

「借りを帳消しにしたのだ。巡り巡って再びこちらの貸しになるとは、面白い事よ」

「こっちの借りは何時取り立てたらいいのかなぁ~?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

視線そらして黙るな、社長のクセに。
ラオデキヤさんの方は始終ニヤニヤ笑いを口元に張り付かせたままで、私の視線を受けて口を開いた。

「『エアロゲイター』に出演依頼と云う事でいいのだな?」

「ええ、まあ。そんなことです」

『エアロゲイター』っていうのはこの会社の重役陣で形成されているバンドチームで、
主に時々出没するライブ以外の活動はしてないはずなのに、若者に人気がある・・・らしい。
それなりにデビューもしててCDも2~3枚でてるみたいだけど、よく知らないんだよね。
学校とかでも時々熱狂的なファンに、色々と話を強制的に聞かされるけど。

ラオデキヤさんは、しばし外へ視線を向けて思案してたみたいだけど。
なにか思いついたような、それでいて黒い笑みをニヤリと浮かべる。・・・あ、ヤな予感。

「キャリコとスペクトラには私から話を通しておこう。・・・ユーゼス」

「ああ、判った。クォヴレーも支社から呼び戻しておこう」

「へっ? クォヴレーさんこっちには居ないんですか?」

「東北支社に移勤でな。あと櫻嬢もどうだ、キミも色々出来るだろう?」

「うえっ!? ・・・外で歌うと色々弊害が出まくるので遠慮したいんですが・・・」

「ああ、それもあったか。ではまた次の機会にでもするか」」

「後夜祭前に出欠確認の点呼が無ければなんとかなったんですけどねー」

文化祭前後の出欠確認に居ないと、欠席になるわ生徒会に勘ぐられるわで後が怖い。
あとはユーゼスからイングラム先生に連絡とって、細かいことを決めることになりました。
先生と生徒会対策の壁として、ラオデキヤさん達で雇ってるセキュリティをコンテナ護衛に回すことに。

「うんうん、メイシスさん達でそのまま周り固めてくれれば問題ないね」

「む。・・・修羅・セキュリティ・サービス(SSS)にも顔が利くのか?」

「うん。ちょっと色々と、SSSと顔パス効くよ」

・・・なんと言えばいいのか、個人的なしがらみの付き合いなのだ。
あんまり自分でも突っ込みたくないけど。決まり事とゆーか、決められ事とゆーか・・・・・・。

げんなりしてたら、ユーゼスがディスクケースと小冊子を投げつけて来たので慌てて受け取る。
あぶないなあ・・・。ってよく見たらバーニングPTの機体ディスクじゃん。
小冊子のほうは使用説明書と、コマンド一覧。・・・機体呼称が、jy・・・ジュデッカ?

「個人的趣味で作った機体だ。貴様のようなちっこい奴が使ったほうがインパクト的にいいだろう」

ネオ・グランゾン以上にインパクトのある機体があるかいな・・・。
ユーゼスが作った奴かー、チート入りまくりでひんしゅく買いそうだなあ。

「これ以上使ってる機体にチート入るとメーカーに出場停止になりそうなんだけど・・・」

「ウチは出資と協賛もしてるからな、ゼ・バルマリィ印の機体は排除できないだろう。安心しろ」

チート入ってるって認めてるも当然じゃないのさ・・・・・・。





「そういえば。イングラム先生は私とこの会社の重役が知り合いだって知らないのかなあ?」

「知ってたらお前にこんな無理難題は付きつけんだろうが。少しは頭を捻れ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「フッ、ユーゼスは素直じゃないからね。気にすることは無いよ、櫻嬢」

「お前は少しは仕事をしろー!」

喜べばいいのかなー?




















(あとがき)

出しても良かったのかと悩む人選だったので時間が掛かりました。
あと帝国勢とか修羅勢とか口調がさっぱり判らないので、妄想分入りまくりです。ごめんなさい。

全然進まなくて全部書き直し三回とか、半分消してまた書き直しとかしてました。






[7259] 10 「戦いは強い方が勝ち」
Name: C-K◆ae02f8a5 ID:27ec9c7b
Date: 2009/06/02 19:36

「あーりぃーちゃーん、あっそびーましょーっ!」

 わんわんっ

 ・・・・・・・・・・・・。

「あーりぃーちゃーん、あっそぼうよーっ!」

 くぅ~んきゅ~ん

 ・・・・・・・・・。

「クロガネ。今日アリィちゃん家に居るよね?」

 きゃうきゃんっ

「居留守か。・・・じゃ、しかたがないね」

すちゃっと取り出したのは拡声器。スイッチを入れると、機器特有のキーンと云う音。
そのまま向けるのは玄関よりやや上の方。アルフィミィの部屋のある窓へ向けて。


「あーりiだだだだっがしゃばたーん!

「近所迷惑ですのよっ櫻っ!!」

 わぅぅ

どっちもかわんねぇよ。・・・そうクロガネは言いたかったのかもしれない。










「まったく・・・。用事があるのならば、きちんとチャイム鳴らして普通に尋ねてくればいいのですのよ」

ぷんすかといささか機嫌の悪いアルフィミィを連れて歩く櫻は、全然悪びれもなくきょとんとした表情で。

「えー、だってアリィちゃんの部屋の窓を外から猫に叩いてもらったけど、返事ないんだもん」

「猫に返事させたいんですの!?  電話するなり、通達手段は色々あるのですのよ」

「作り立てを食べてもらうのが一番じゃない」

にぱー、と満面の笑顔を前にしてアルフィミィは「ぐ・・・」と言葉に詰まる。

櫻は重箱を抱えて持っていて、その中にはついさっき作ったばかりだというおはぎが入っていた。
アルフィミィも知っている事なのだが、近所に居る剣術道場を営むリシュウ・トウゴウとゆー好々爺を
祖父のようだと慕っている櫻は、こうして時々何かを作って差し入れに持っていくのだ。
今日はそれが"なんとなくみんなでお茶したかった"とゆー気分に、アルフィミィも付き合わせられたらしい。


ところが剣術道場の古めの門構えの手前辺りで、
アルフィミィは周囲に漂っている気配が普段のものじゃないと気がついた。
夏休みの普段なら、この近所を通り過ぎるたびにココに通う子供達の威勢のいい声が聞こえるのに。

目の前を呑気に歩いてる櫻は、「ふんふふっふ~~ん♪」と鼻歌を歌いつつこの空気にまったく気づいてなさそうだ。
しかたなくアルフィミィは櫻より一つ前に歩み出た。

「あれま、アリィちゃんがエスコートしてくれるなんて珍しい」

「櫻が呑気に歩きすぎ、もし転んだらおはぎだけでも死守しますのよ」

「うわっ酷っ! 私へのフォローは無しかい」

「その時は前方不注意による自業自得として諦めてもらうしかありませんの」

アルフィミィは道場に近付くにつれ、ピリピリする空気が何なのかだいたい理解した。
それなりの腕を持つ人間が対峙した時に出る緊迫感と云うか、闘気のようなものだと。

「? …道場破り?」

さすがにこれだけの距離まで近付けば、櫻にも感じとれたらしく首を傾げて歩みを止める。

「日を改めて来た方が良さそうですのよ」

「『若いモンが尻込みするんじゃないっ』って、逆にお爺ちゃんに怒られるよ。きっと」

幼馴染みの心を知ってか知らずか、呑気に道場に入って行く櫻。
毎度のごとくの楽観的主義に、呆れたため息しかでないアルフィミィ。



小さな声で「失礼しま~す」と道場に入った二人に、対面奥に座るリシュウが軽く頷く。
その左右に微動だにせず二人の男性が対峙していた。
片や、腕無しジャケットを羽織った赤毛の男。構える型は無手。
片や、胴着姿に木刀を持った…、

「ブリットですの」

「うん。朝から居ないと思ったら、ココに居たんだ」

二人でこそこそと囁き合う。
対峙する方はこちら側など眼中無しで、じりじりと間合いを詰めていく。

「あちらの方は見た事無いですの」

「あっちって。…あれ?」

何やら心当たりがあったようで、その場の空気を忘れたように声をあげた。

「フォルカちゃん!?」

 「隙有りぃ!」 

ちらりと少女達に視線を向けた隙を好機とふんだのかブリットが床を蹴る。
視線を戻した赤毛の男は腰を落としてその場で迎撃する姿勢を取る。



     一意専心!

   
   機神猛撃!

   
チェ拳ストォォォッ!!!

















******* sakura view *******


「ぐぁ…」

「はいはい、情けない声を上げないの。まったく…」

ばしって湿布貼ったら呻き声を上げたブリット兄さんに呆れた。

「フォルカちゃんももうちょっと手加減してよ。骨に異常は無いと思うけど、飛ばし過ぎ」

「すまん…」


飛んだ飛んだ、ブリット兄さん飛んだ♪
…と歌えそうな程、縦方向に空中をぐるんぐるんと回転して、壁に叩きつけられてたもんね。
一瞬死んだかと焦っちゃったじゃないか…。あービックリした。
蹴り一発でコレだよ。さすがと言うべきか、凶器と言うべきか。

「カッカッカッ。大の男が二人して女童一人に形無しじゃのう」

「笑い事じありません。お爺ちゃんもこうなるのが判ってたんなら止めて下さい」

「儂もまさかあそこまで飛ぶとは…想定外じゃった」

なんか物珍しそうに覗いているフォルカちゃんをお爺ちゃんが、中に招いたらしい。
そこで素振りしていた兄さんとメンチ切り合って試合になったとか。

「じゃあ自分の実力を理解して無いブリットの自業自得なんですの」

「い・・・いきなり酷いな、アルフィミィ…」

「だって剣道に毛が生えたくらいの腕前で、実戦経験のある武術家に勝負掛けりゃー負けるでしょーよ。
 せめて、ゼンガー兄さんみたいに木刀で岩が割れるくらいになってからにすれば、引き分けくらいには届くんじゃない?」

「待て。実戦経験が有る!?」

「あるよー。はい、フォルカちゃん自己紹介」

「修羅セキュリティーサービス所属。フォルカ・アルバークだ」

っていうかコレが自己紹介初かい。
二人とも相手が誰だかわからないまま戦ってたのか。コレだから戦闘バカは・・・・・・。

「それだけ? チャームポイントとか自己アピールとかは?」

「…無いな…」

「ありゃま…。はい、フォルカちゃんの分」

「すまん…」

「相変わらず嬢ちゃんの作るものは美味いのう」

よし、褒められた。とガッツポーズを取る私。
しばらくは皆がおはぎを食べお茶を啜るだけの時が流れていく。



「櫻はなんでフォルカを『ちゃん』付けで呼んでるんだ?」

おはぎを四つも食べて満足したのか、ブリット兄さんがこっちに聞いてきた。
いや、家にもあるんだからさ。ここでバクバク喰わなくても・・・。

「それはまぁ・・・"修羅の掟"で」

「なんだそりゃ??」

「勝った者が負けた者を自由に出来る、修羅の掟?」

「・・・ずいぶんと曲解しているぞ、巳子神・・・」

いーじゃん、弱肉強食よりはこっちのほうがまだましな表現だと思うわけよ。

「って云う事はこいつと勝負して勝ったのか? 櫻がぁ!?」

「みごとな絡め手だった。俺の負けだ」

いやそこでしおらしく負けを認めるな。兄さんに誤解されるでしょうに。
実際のところ、不意打ちもいいところだったんだけど。

屋外の訓練場でアリオンさんの冗談から対戦することになって、
いざ、勝負が始められた瞬間。何処からとも無く飛んできたリオン達によって
ま~るい玉になっちゃったフォルカさんに、足払いかけたらこっちの勝ちと・・・・・・。
・・・後味の悪い勝負だった・・・・・・。

しかも、
「弱い者が出来る事を駆使して強者を倒す。この勝負有効」とかアルカイドさんに認定されちゃって、
「よし! フォルカをすきにしろっ」とかフェルナンドさんに焚き付けられて、
とりあえず呼び名を『フォルカちゃん』と呼ばせてもらうことに。

だってしゅーんと項垂れるフォルカちゃん、ワンコみたいなんだもん。

まあその後に「やーい、犬」とかからかってたフェルナンドさんが、
フォルカちゃんにあっさりと血達磨にされてたのは戦慄したけれども・・・。


「つまり、ブリットは櫻よりも弱い兄と言う事ですの」

「なにぃっ!?」

アリィちゃんに突きつけられた事実に"ガガーン"とショックを受ける兄さん。
まともにやったら勝てないよ。ソレは当たり前。

「まあ、周囲に動物が居ない環境だったら、私を負かすのは簡単だろうね」

「じゃあ、今勝負を挑んだらどうなる?」

・・・そうだねえ・・・。

「黒くて平べったいバグスをいっぱい呼んで、兄さんを黒い何かに変身させてあげるよ」

「バグスってなんだ?」

「たぶん、ゴキブリの事だと思いますのよ?」

アリィちゃんの答えが出るや否や、兄さんはともかくフォルカちゃんまで私から距離を取る始末。
万国共通で嫌われ者なんだなあ、あの子達・・・。

ちなみにお爺ちゃんはずっと笑ってましたよ。
おはぎも五つ食べてました。

















******* other view *******


いまだに夏真っ盛りと言った朝の気温がうだる中、飛龍学園の講堂では始業式が行われていた。
定番の校長の長い挨拶に、普通ならば生徒もやってらんねーよ、となるところなのだが・・・。

「・・・今日から二学期が始まるのですよ。貴方達も何時までも夏休み気分でなく・・・」

「「「「「「「「レフィーナちゃんせんせ──っ!!!」」」」」」」

「校長先生と呼びなさいっ!!」

アイドルのコンサートのような状況から始まっていた。
二、三年生から時折上がる歓声に、いちいち律儀に反応するレフィーナ・エンフィールド校長。
隣で直立不動に立つ、ショーン・ウェブリー教頭はにこやかに笑みを浮かべてるだけで止めもしない。
一年生達は一部のノリのいい生徒を除いて大部分が置いてけぼりだった。










「酷い始業式だった・・・」

「授業は明日からだから、今日はもう終わりだねぇ」

担任のラッセルが出て行ったHR後、大半は衝撃的な始業式の後遺症からなんとか立ち直っていた。
そこかしこで作られるグループの話題は始業式と、HR中に渡された一枚の紙。
修学旅行班分けの紙、クラス関係なく六人組を組んで提出しろとのこと。

「私達は、アルフィミィ、櫻、マイ、アラド、ゼオラ、私で丁度六人。問題ないね」

「アラドが不憫でならない・・・。他の友達に誘われるんじゃないかな?」

「どうせゼオラに引っ張ってこられるのですのよ」

「行き先は沖縄か北海道の二択だって。どっちに行く?」

「高等部と中等部で移動するんだもんね。どれだけの大移動になるのやら・・・」

一応、隣のクラスでなにやらアラドを叱り付けていたゼオラに了承を取り付けて、
担任にそれぞれ提出。その後向かった先は、食堂の端、生徒が閑散としている区域。

なにやらやり遂げたボクサーのように真っ白になっているリュウセイが居た。
慌てて駆け寄る彼女二人。
近所で苦笑いをしていたマサキに、視線で疑問を投げかけるアルフィミィ。

「まあ、夏休み中のバーニングPTの大会があってなー。準決勝で俺とリュウセイが激戦の上、リュウセイの勝利」

「で、決勝で負けたと言うことなのですのね・・・」

その発言にさらにずーんと落ち込むリュウセイ・ダテ。

「勝った相手がイングラム先生だったからッスねえ・・・」

「なにしてんの、あの教育者!?」

基本、出場者に年齢性別職業は関係なく。犯罪者でなければ、誰でも参加できるルールだ。

「勝ったのは、イングラム先生のアストラナガン?」

と聞くゼオラに答えを返すのはアラドで。

「いやー、なんか東北地区代表のクォヴレーってがイングラム先生に勝って日本一になったっスよ」

「なにやってんのクォヴレーさーん!?」


「・・・櫻の交友関係って一体どうなってるのよ?」

「知るかっ!」



























(おまけ(ネタ))

「櫻嬢、この前相談されたネオ・グランゾンの強化案ですが、幾らか候補が出来ましたよ」
「あ、ほんとですか。おじ様」
「まずはこれですね」
「・・・なんですかこの寸詰まりの平べったいザリガニみたいな白いのは・・・?」
「ネオ・グランゾンの背後に接続させて使います。左右は大出力のメガバスターライフル、
 後ろの部分はミサイルラックになっていますよ」
「・・・・・・いやちょっ・・・」
「とりあえず呼称としてはミーテi「却下!却下!却下ーッ!!」
「なんですか大声を上げて、はしたない」
「それはとてもヤバいです。おじ様」
「好き嫌いが激しいですねぇ。・・・でしたら次にコレですね」
「・・・なんですかこの砲塔のついた黒饅頭は・・・?」
「ネオ・グランゾンにかぶせて使用します」
「レーダードームかなにかですか? コレ」
「まあ、その通りですね。呼称をキャバr「これ以上レーダーの範囲広げてももういっぱいですってば・・・」
「それでは次はコレで・・・」
「・・・なんですかこの仮想空間でプラモを戦わせるような付加・・装甲・・・」
「フルアーm「だからヤバいですってば!!」
「では最後にコレで」
「・・・なんですかこの微妙に形の違う二体のネオ・グランゾンは・・・?」
「これは本体のネオ・グランゾンと合体して、ひとつの機動兵器となるのですよ」
「おおー! ・・・・・・ってどうやって?」
「まず三体とも不要部分を収納しまして・・・」
「・・・・・・ダイ・グランゾンとか言うんじゃないですよね?」
「・・・なんでさっきから知っているんですか櫻嬢?」
「・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」


 終われ











(あとがき)

おまけはネタです冗談です、本気にしないでください。
魔が差したんです。ただ浮かんできたんです。
これを入れたせいで本編がオマケみたいな感じに・・・・。

何故か中途半端で切れた。いーもんゆるゆると書くもん。
ブリットの扱い悪い! と怒られそうですが、ごめんなさい。
扱いやすいのです。いいトコなしです。

次も頑張ってぬったりのってりと書きます。



[7259] 11 「学園祭前ハザード警報」
Name: C-K◆ae02f8a5 ID:27ec9c7b
Date: 2009/05/29 19:05



その場には今から行うことに覚悟をした人間の悲壮感にも似たものが漂っていました。
机の上には二つの紙コップ。
ソレを震える手で掴むのは二人の女生徒。
まわりで固唾を呑んで推移を見守る関係者達(女子ばっか)。

閉じていた瞳をガッと開いた二人はしっかりと紙コップを掴むと、中に注がれていた液体を一気飲み。
そしてあっさりと意識を手放し、机にパッタリと倒れてしまいました。
周囲の関係者達が慌てて二人に駆け寄り、事前に敷いておいたマットの上へ。

・・・でその一連を見届けた私達は、

「どうですかね? クスハ先輩。効果の程は?」

「二人ともあの行動をもう一週間も続けているからね。きちんと美肌と髪質の効果はでているよ。ふふふ・・・」

「そうですか、それはよきかなよきかな、クククク・・・」


「おーい、二人ともー。関係者以外がまったく置いてけぼりになってるぞー」

ブリット兄さんの声で我に返った私達が見たものは、
教室の端っこに恐怖の表情で固まって震えている、ラトゥーニとアリィちゃんの姿だった。













「トラウマが揺さぶられる光景でしたの・・・・・・」

「こ・・・怖かった・・・」

二人とも、ひしっと抱き合って窓の外の遠くを見つめてるし。
何処が怖かったんだろう?
ただドリンク飲んで気絶する恒例行事だったんだけど。

さっきのぶっ倒れた二人、三年生の先輩たちは鏡を見つめてたり髪を梳いていたりと
効果の程をじっくりとかみしめているみたい。
その代わり、今度はさっき見てるだけだった関係者がぶっ倒れているけどね。

「とりあえず、今年の私のドリンクはこれで完成かな」

クスハ先輩が作ったのは美肌効果を持つウーロン茶。これで貴方もつやつやすべすべに。
私が作ったのは髪質をしっとりさせ枝毛などを防ぐオレンジジュース。
後は去年作ったダイエットドリンク(コーヒー)とか、飲む滋養強壮剤(緑茶)とか。
メニューの半分くらいは卒倒ドリンクだけど、残り半分はティーバッグとかの普通のお茶とかもあるけどね。

「櫻? ちょっといいかなあ? あとクスハ先輩も・・・」

「ラトゥーニさん達は試飲しに来た、ってわけじゃなさそうね」

「ええと、学園祭実行委員会に風紀委員経由で生徒会から回ってきた書類を書いてください」

「なにこれ? ええと当日の所属場所と行動予定?」

紙ごとに最初から名前が書いてあるところを見ると、ブラックリスト要員の行動を把握しておきたいって事かな。
私は何処に所属してるわけじゃないからなあ、どうやって書こう?

「何々、『当日に協力する部活および演目』?」

「私は多分ココと、保健室を行ったり来たりかも。櫻ちゃんは?」

「私は料理研究会の喫茶店にケーキ作成の協力と、ココ、後は3-Bのお化け屋敷だったはず・・・」

「お化け屋敷に何の協力をするんですの?」

「怖くする演出だけど・・・。何をするかは当日のお楽しみってことで」

実際は猫の泣き声で脅すって言ってたからその辺の演技指導かな? 録音しとけばいいのにね。
喫茶スペースにまだ留まるというクスハ先輩とブリット兄に挨拶して、アリィちゃんと一緒に騒々しい校舎を巡る旅に。
ラトゥーニはまだ学園祭実行委員があるとかで別れました。





あれですねー。
学園祭の準備の関係で校庭を多めに使うからと、一週間前から体育の授業が自習だらけに。
校庭なんて上から見ると組み立て式のテントやらダンボール箱の山とか角材とかベニヤとか、
すさまじくごちゃごちゃに散らかってるしー。
あと一週間で片付くのかなー、アレ。

「櫻。そのペットボトルは何ですの?」

さっきから持ち歩いてて、暑いのに飲まないから不審に思ったらしい。

「これはねー。何の効果を目指してて作ったのか途中で判らなくなっちゃって、
 作り終わったら謎ドリンク(水)になってしまった不遇の作品なのよ」

ニヤリと流し目を送ったら、身の危険を感じとったらしく私との距離を取るアリィちゃん。
逃げなくても平気だってば。実験体にはしないから。
どこかに体のいい実験体は居ないかなー、ククク……。

「さっ、櫻ッ! 用がありますのののでっ、さささきにかえりますの―――ッ!」

どひゅ――んと疾風のように廊下の端に消えるアリィちゃん。
そんなに怖かったのか―…。ちょっとショック。




「おーう、櫻やん。なにしとるん? こんなとこで・・・」

「おー、落合南長崎さんかー。いや、アリィちゃんに逃げられた」

「なんや珍しいパターンやね・・・。それより聞いたん? 下の階行くなら気をつけたほうがええで」

「さっぱり話が見えないのですが・・・。なにかあった?」

「なにって、三年女子の裏アンケートで、櫻が『妹にしたい下級生』ダントツトップやってー。
 きっと三年女子に捕もうたらぬいぐるみのごとくいじられるで?」

「なに─────────ッ!!!???」




そんなこんなで。
しばらく廊下で準備作業を冷やかしたり、知り合いに声を掛けたり掛けられたりしていたら、
1階の方からなんか歓声が。なんかあったのかな?
一応見に行って把握はしておきますか。後で私のせいにされちゃあかなわないもんね。


…まあ、なんと云うか。闊歩する二足歩行ロボットを先頭に廊下を移動する一団が。
そのロボットはアレだね。バーニングPTのヒュッケバイン。色は黒。
だとするとこんなもん作るのは確定されたも同然で…。

「おー。巳子神じゃないか。こんな所でどうした?」

「どうしたって、ココは高等部の校舎で放課後の廊下ですよ。私が居るのは当たり前です。
 ついでに人の頭をポコポコ叩かないでください」

この実に軽いノリで温和な人物は大学院に籍を置く傍ら、私らの物理の非常勤講師も勤める、
ダテ先輩と同レベルのロボットオタク。ロバート・H・オオミヤ先生である。
肩より下に伸びる金髪ロンゲにメガネ。あと白衣。
後、七代くらい前の裏執行部の部長だったらしく、私が就任した時真っ先に笑いに来た失礼な人でもある。

「かしょーんかしょーんとなんか2m弱の図体のわりに音が軽いですね」

「まあ、色々試行錯誤の結果ボディにはフレームとモーターと各種センサーとバッテリーのみ。本体はアレだ」

と指差した先には50cm四方の車輪付き箱。
太いケーブルでヒュッケバインの腰から尻尾のごとく繋がっている。

「後、予算不足で装甲に見える部分は大半がダンボールに色塗っただけ」

ロブ先生は、どうにもなりませんといった表情でトホホ~と肩を落とす。

「…で、自力で動いてるんですか。これ?」

「その辺はリモコンで歩行指示、あとは障害物を判断して勝手に進む。なかなかバーニングPTのようにはいかないな」

アレは自律歩行じゃなくて操縦じゃなくね? 歩行するのは間違いないけど。

私達が立ち止まって会話していてもヒュッケバインはかしょーんかしょーんと先に進んで行き。
あ、昇降口のトコ曲がった。

「外へ出てっちゃったみたいですけど…」

「む…、それはまずいか。戻そう」

すたすたスターと早足で歩いてったロブ先生は、
昇降口の廊下で白衣から出したリモコン(ごっつい携帯電話みたいなの)を手に取り・・・。
なんか腕をぶんぶん振ってる?
リモコンをいじり始めた?
そして情けない顔をこっちに向けないで下さい。

どうしたんですかー? って近付くと。

「彼は自由を求めて旅立ったんだよ…」

「は?」

その彼は腕を大きく振りながら足取りも軽く校舎から校庭へ。
おーおー、行き交う生徒が動作か図体にビビって道を開けてるわ。

「どうやって停めよう?」

コントロール不能になったんですね。

「バッテリー切れを待つしかないのでは…?」

「残念ながらあと二時間は動きまくるな」

「壊したら…?」

「結構掛かってるから弁償してくれるのなら」

いや、あのままだと校庭の準備作業に突っ込むじゃないですか。
運動部から恨まれるのはロブ先生だから私は構いませんが。

とりあえず、注意でも促すしかないかな?
先輩にちょいと放送してもらおうか。携帯である番号へ・・・。

「…こちら九尾の猫又、機械仕掛けの時計兎応答せよ」

『こちら機械仕掛けの時計兎。あははー、まだ学園祭前だけど何かやっちゃった?』

「ちょいとロブ先生作のロボットが暴走してるんですよ。
 なので注意勧告をお願いします。【ウチ】は関与してませんので、そこのところよろしくです」

『あー。今年もなんだぁ。判りました、機械仕掛けの時計兎りょーかーい』

私が携帯を切った直後にぴんぽんぱんぽーん♪と。

『只今、校庭にロブ先生作の暴走ロボットが進行致しました。毎年の事なので、校庭で作業中の生徒は注意して下さい。
なお、手の空いている人は被害拡大前に止めて下さい。繰り返します。只今、……』

放送委員会、委員長ツグミ・タカクラ先輩ののほほーんとした声で放送されました。
先代の【裏執行部】部長さんで機械関係部門専門家の才媛です。私もパソコン関係を少し教えてもらいました。

さっきの機械仕掛けうんぬんはイングラム先生の考えたコードネームで、
リューネ先輩が金メッキの戦乙女。クスハ先輩が魔女鍋の料理番。
イングラム先生が災害の活火山。ヴィレッタ先生が昆布の参謀(これだけ先生の自作)。

その問題の彼ですがどこかのクラスが梱包に使ってたらしいビニールテープでさっそくぐるぐる巻きに。
巻いた人達はそのまま引きずられてってるケド…。
何馬力あるんですか、アレ…。

「正確なところは判らないな。去年よりは上のハズ…」

科学の進歩ってすごいなー…。去年は何が暴走したんだろー?
なんとなく現実逃避してたら、

「ロボットなら俺達に任せろー」と、ダテ先輩とシングウジ先輩が彼の前に立ちふさがりました。

何をどう任せられるのだろう? とても勝算があるようにも見えないんだけど…。
彼は止まってるけど、雰囲気的にダテ先輩らが止めたように感じてんだろうなあ、みんな。
私は障害物の認識うんぬんで止まったと思う。
周囲の生徒達が固唾を飲んで見守るなか、ダテ先輩は左手で彼をビシィッ! と指差し、

「お前は間違っている!」……と、叫びました。




       空 気 が 凍 っ た










ダテ先輩は周囲のブリザード空間に気がつかず、「お前の力はこんな事に使うものじゃないはずだ!
正義をこなすためのものだろう・・・うんぬんかんぬん」と、拳を握って力説中だ。

ちなみに周りの野次馬の反応は以下の通り。

「むしろお前が間違っている」
「さっきの放送聞いてなかったんかい」
「Ky」
「やっぱりダテ君はダテ君でしかなかったか…」
「期待して損した」
「おかーさん、あのお兄ちゃんなんか叫んでるー」
「見ちゃいけません」

 エトセトラ、エトセトラ……。

シングウジ先輩も突っ伏してないで止めてください。
あ、ダテ先輩、運動部の人達に空気嫁って引きずられってった。



「やれやれ…。まったくリュウもロクな事言わない子なんだから」

生徒会長が現れた!
おや、今日はライ先輩が居ない。

「ライは書類作業中。私は見回りよ」

それにしても…、とか呟いたアヤ先輩の鋭い視線が私の方に。

「また、巳子神さんが原因?」

「濡れ衣だ―――っ!?!」

「ああ冗談冗談。ロバート先生のコレは毎年の事なんだから、巳子神さんのせいにしないわ。安心してちょうだい」

うわーん! 生徒会長に苛められたよぅ~。
傷心の私をスルーしたアヤ先輩は、ロブ先生ににっこり笑いかけて、

「じゃあ、ロバート先生。抗議文は後できっちりと生徒会の方に提出してくださいね?」

と言った後、私の持っていたペットボトルを奪っていっちゃった。

「ごめんなさいね、巳子神さん。後で弁償するから、貰うわね」

あ? え? …いやそれ水じゃない…、んですけれど・・・・・・
そのままヒュッケバインに近付いて、黒い箱にペットボトルの中身をたぱたぱたぱ~っと。


瞬間、ドガンッ! と箱から放射状に走った放電で空気が黄色く染まり、
アヤ先輩のみならず周囲の野次馬までもが、悲鳴を上げて飛びずさった。
箱からはうっすらと煙がたなびいてて、ヒュッケバインは歩行途中の格好で停止してるし。

「と…止まったのかしら?」

「止まったみたいですねぇ」

私達のところまで逃げて来たアヤ先輩がおそるおそる近付いて行くので、ロブ先生と一緒にテコテコと着いてく。
アヤ先輩がヒュッケバインを見上げる位置に立った時、チュイーン キューンって音がして首がガキョンと下を向きました。

「わっ!?」

「先輩! まだ動いてますよっ!」

慌てて駆け寄ろうとしたロブ先生と私。ヒュッケバインは逃げようとしたアヤ先輩の肩をガッチリ掴むと、

「母上ッ!」





  今日はよく 空 気 が 凍 る 日 だなあ





「は?」

「え?」

「ええええええっ!?」

「喋りましたけど…?」

「莫迦な!? そんな事出来るようには作ってないぞ!」

ロブ先生、頭を抱えて大混乱。

「我、ココニ生誕セリ。コレモ母上のオカゲナレバ、感謝」

頭、上に向けて感極まったって仕草をするヒュッケ。

「ちょ…ちょっと、離しなさい」

アヤ先輩の抗議に素直に従い、「コレハ失礼ヲ」と一歩下がる。

「ロバート先生、どうなっているんですかこれは!?」

掴みかからん勢いで、ロブ先生に詰め寄るアヤ先輩。
とりあえず、弁護に入ろう。アヤ先輩の行動は冤罪だ。

「アヤ先輩。多分、先生は悪くないと思いますよ」

「ええっ?」

「むしろ、アノ水ぶっかけたアヤ先輩の自業自得じゃないかなーと」

「アノ水?」

「一見水に見えますが、あんなんでも一応分類上クスハ汁…(の親戚)」

「なんですってぇっ!?!?」

流石に私に詰め寄ったりはしてこなかったが、許可もなしに私から奪っていった自覚はあったらしい。


「何がおきたのか分解して調べてみる必要があるかもしれんな」

「エエイ寄ルナ下郎。コノ身ハ我ノ物。貴様ノ好キニハサセン!」

近寄ろうとしたロブ先生から、自分の頭脳である箱を抱えてアヤ先輩の後ろに逃げるヒュッケ。
…なんかすんごい人間くさいんですけど…。
あの水がいったいどーゆー効果になってこーなったんだろう?

「どうしましょう? これ…」

「今、忙しい時期だから丁度良いんじゃないんですか? 生徒会業務の臨時バイトだと思えば」

うん、去年の学園祭実行委員会も嵐のような忙しさだったもんね…。
人手が足りなかったから、バグスに妙な事やってるとタレコミのあった教室に潜り込んでもらったり、
黒リオンにアダルトな店やってるって噂の喫茶店に突っ込んでもらったりしたけど…。

「拙者、母上ノタメナラバ粉骨砕身デ事ニ臨ム所存デアリマス!」

きをつけの姿勢で右手を上に伸ばすヒュッケ。武士なのか軍人なのかどっちよ…?

「そうね。本人もこう言ってる事だし、ちょっと使わせてもらいますね。良いですか、ロバート先生?」

「なんか嫌われてるみたいだし、壊れたら戻してくれよ…」

「フンッ、下郎ナンゾニ我ヲ自由ニサセルモノカ。ソノ時ハ自爆シテ果テルマデダ」

……自爆できるのか?

「こら。簡単に死ぬとか言ったらダメよ」

「ハ、母上ガソノヨウニ言ウナラバ」

執事風なお辞儀をするヒュッケ。芸風がバラバラよ、キミ……。
二人に対する態度が正反対で判りやすいなあ。
そのくせ私の方を見ようともしないのは何故?


結局、業務に戻るというアヤ先輩の後をかしょーんかしょーんと着いて行くヒュッケを涙で見送るロブ先生。
事の推移を見送った後、解散して準備に戻る野次馬さん達。
その中に混じってた三年女子に捕まって、ちやほやされつつお菓子を貰う私。
ウチ来たばかりの頃のハガネの気持ちが判った気がする。人に撫でられるのにうんざりしてたからなあ…。






「巳子神、もうひとつあの水作れるか?」

やっとのことで開放してもらえたら、待ってたロブ先生にそう言われました。
何かにかけてもう一回ああなるか試してみたいんですね?

「難しいですねー。アレ途中で何を目指して作ってたのか分からなくなっちゃったんですよー。
何の効果が自我を生じさせたのかサッパリです」

とりあえず作ってみて、一週間程試飲して頂けるなら喜んで作りましょう。って言い終わらないうちにロブ先生逃げた。


















で、次の日に登校したらすでに、校内の話題を独り占めしていたヒュッケ。
新しい名物になりつつありますよ、アレ・・・。



















(あとがき)
SRXだけでなくパイロットの扱いもヒデェとか言われそうです。
オリキャラ増えちゃいましたが、常に出そうか思案中です。
落合南長崎は地下鉄の駅名。

あとまたバーニングPTまで書けませんでした。
次が学園祭の予定なので、ジュデッカだせるかなあ・・・?




[7259] 12 「坂を転がるおむすびのごとき運命」
Name: C-K◆ae02f8a5 ID:27ec9c7b
Date: 2009/07/05 17:04



「だあああああああっ!!」

自身というか自機に対して発砲された数条の火線を
横滑りさせながら上下に振ることで、敵機の射程範囲から逃れる。
即座に別の敵機からばら撒かれた爆雷のような攻撃を、後ろに下がることによってなんとか回避。
アラドの操るビルトビルガーの全身はあちこち焼け焦げて、青かった勇姿は無残なものへと。

「ちょっと分が悪いっスねぇ・・・」

目の前の丘陵に立ちふさがるのは六機のゲシュペンスト。
全機真っ黒で胸の部分にSを横にして逆転したような白いマークをつけていた。

「こいつら、リュウセイ先輩が言ってた例の奴らっスね」

曰く、六機がかりでひとりをボッコボコにするだとか、初心者を集中的に狙うだとか。

一度ゲームを始めてしまえば、ゲーム内の風紀は参加者の素行そのものである。
初期の頃は何度かメーカー側の警備員みたいなものが居たのだが、
最大収容機体が限られているゲームに余計な機体はいらないと、ユーザー側に叩かれて自然消滅してしまった。
よってゲーム内の治安=強者の行動。
つまり、警備員になるものはこの地区で上位とされている、リュウセイやマサキなのである。
その二人なのだが、最近は自分のクラスの出し物の手伝いとかで、バーニングPTに近付く事も出来ず。
トップクラスが一週間ほどゲームに入れないだけで、ここまで荒れるとは予想してなかったのである。


持ち前の正義感で赴くままに突っ込んで来たのだが、相手は六機。
あっさりと返り討ちにされ、もう一度集中攻撃を喰らえば撃墜される程にギリギリである。
せめて誰かもうひとりでもいればなぁ、と思い浮かぶのはゼオラの怒り顔ばかり。

(アラドのバカッ! なんで不利な状況に自分から突っ込むの!?)

今にも聞こえてきそうな感じにアラドの口元には笑みが浮かんでいた。

『そろそろ観念して撃墜されてくれるとこっちも楽なんだけど。早くしてくんねぇ?』

さっきからずっと気に障るモノ言いで、相手からの通信が入って来るのもアラドは気にいらなかった。

「お断りするッス」

『だったらコレでくたばりなっ!』

腕にチェーンソーを装備した一機が突っ込んで来ると同時に、残りの五機の銃口がこちらを向く。
攻撃を避けても蜂の巣にするつもりだろう。

その一瞬でアラドの腹は決まった。右腕のスタッグビートル・クラッシャーをセット、
突っ込んで来るヤツもろとも後方の奴らも喰らい千切る。悪くて一機だけでも道連れに。
加速しようとしたその時、

「きへ~た~い、さ~んじょ~!」

気の抜ける声とともに、巨体がビルトビルガーの眼前に着地した。
迫っていたゲシュペンストを踏み潰し、集中砲火すら無効化して。

『なっ!?』

相手の驚愕を気にもせず、聞き覚えのあるのんびりした声の機体は。

「やはーアラド。生きてるー?」

「さ・・・櫻? なんだよ、それ・・・・・・」

『て、テメェ・・・』

「はーはっはっはっ! 天も地も人も呼んでないかもしれないが、
 貴様等の卑劣な行いにヌルさを感じて魔王ジュデッカ、ココにこ~りん♪」

言ってる事はアーパーっぽいが機体の見た目は凶悪だった。
下半身は蛇型。腕は四本、うち一本は獰猛な獣の顎のごとく。銀に光る巨体は後ろに庇ったビルトビルガーの三倍程。
青龍刀のごとく突き出した角を持つ頭部は戦場を無慈悲に見下ろすのみ。

『テメェMISAってヤツだな。レギュレーション違反な機体使いやがって・・・』

「ゲーム内で普通に動けるのに違反もないと思うけどなー」

器用にも四本の腕で肩をすくめる仕草をするジュデッカ。

「いや・・・、俺のこの振り上げた右腕の行き場は何処に・・・」

「相討ち覚悟だったんでしょ? いいじゃん無駄に散るより。・・・それにしても・・・」

残り五機となった敵機を見渡しながら腕を組んでウムウムと頷くジュデッカ。

「何コノひっどい魔改造。ダッサ・・・」

馬鹿にしたようにケタケタ笑う櫻に、其処だけは同意出来るとアラドは思った。

隊長機を示すだろうと思われる角のついたヤツと、
シュッツバルトのようにキャノン砲を背負ってるのはまだましとして。
両腕丸ごと機体の全高に匹敵するライフルを付けたのとか、両肘から先がバルカンで腰から下が四脚とか、
ゲシュペンスト的に残ってるのは頭と腕だけで、ゴッツい胴体に歩行するとは思えないぶっとい脚、
背中に二つ折りにされた長々距離砲。

「・・・ぶっちゃけイロモノ集団?」

「ゲームを間違えてるとしか思えない・・・」

『て、てててて・・・テメェらあぁぁ・・・ッ!』

対人だったのなら額に十字の怒りマークを付け、
茹でダコのように顔を真っ赤にして怒っていたであろう。
五機ともぷるぷる震えている。

『全損にしてしまえぇっ!!』

隊長機の号令一括、一斉砲撃がジュデッカに集中するが、すべて直前で四散した。
爆煙の向こうから現れたその巨体には、傷ひとつ付いてはいない。

『き・・・キタネェぞ、テメェ・・・』

「えー、さっき卑劣に参上って言ったじゃん」

「言ってない言ってない・・・」

ギリギリと歯軋りの聞こえてきそうな相手に、あっけらかんと返す櫻。
さっきの彼女のセリフを思い出してアラドが突っ込みを入れる。

「んじゃ行くよアラド」

「おう?」

「おう? じゃなくて。ぶん投げるから、トドメよろしく」

「ああぁ、了解っス!」

返事をするなり飛び出すビルトビルガー。

「ジャケットアーマーパージ! ウイング展開! ドライブ全開!!」

焼け焦げていた青い装甲を破棄、背中に折り畳んでいた翼を広げ、
緑の曳光線を空に描きながら高速で飛び出した。
ゲシュ軍からの迎撃弾が飛び交う中、火線を縫うように空を滑る白い弾丸。

「無視するなんて悲しいなーっと。第一地獄カイーナ、変則版!」

跳躍したジュデッカは空中で変形。
くびれた胴体に四足、長い尻尾を振り回し、ゲシュ軍後衛陣に落下。
衝撃で固まっていた射撃型ゲシュらを四方に跳ね飛ばし、
中空に浮いた寸胴ゲシュを尻尾の先刀で串刺し。

「行っくよー、アラドッ!」

「任せろっ!」

大回転された後に砲丸のごとく空を舞う長々距離型寸胴ゲシュ。

コールドメタルソードを構え、突撃して来たビルトビルガーに斬り裂かれて爆発、四散した。

『ちょっ・・・待ッ・・・』

「待てと言われても待ちませーん」

続けて両腕ライフル型が放りあげられて突撃斬爆発。




・・・以下二機略。







『テメェら・・・、この扱いは酷いと思わネェ?』

「いや、私ちゃんと卑劣って宣言したし・・・」

「先に大勢で来たのはそっちッスよ」

人型(?)状態のジュデッカ、右上腕顎に頭を咥えられぶら下がっている角付きゲシュペンスト。
両腕はジュデッカに引きちぎられて無い。

「改心しなかったら次はRー1やサイバスターも混じえてフルボッコにするよ?」

『・・・テメェに言われたくネェぞ』

「ラスト」と言いつつ放られる角付きゲシュ。
地面と平行に突っ込んで来たビルトビルガーの左腕クラッシャーに捕まえられ、
岩塊と土煙を巻き上げながら大地を削って行く。
最後にはクラッシャーに寸断され、他の四機と同じ道を辿った。









* * * * * * * * * * * * *


バトルフィールド中継を映し出す大型ディスプレイには、
先程終了したバトルロイヤルの勝利者、真っ白いビルトビルガーの勇姿が。

円筒形のバーニングPTゲーム筐体から降りたアラドは、くつろぎスペースに溜まる友人達の元へ。
マイ、ラトゥーニとハイタッチをして、ゼオラの冷たい視線に首をすくめながら席に座る。

「・・・櫻は?」

「すぐ戻りますのよ」

アルフィミィの答えとともに後ろから差し出されるドリンク。

「はい、アラド」

「あー、サンキュー。助かったッスよ、櫻」

「いいえ、どう致しまして」

ドリンクを一気に飲み干して、アルフィミィの隣に座った櫻に視線を向ける。

「ん?」

ちゅーっとドリンクを吸っている姿はどうやっても高校生には見えない。

「なぁに? アラド」

「終わらないうちに落ちただろー」

「いやいや。私はねー、そこの・・・」

持っていたドリンク容器でゼオラを指し、

「なによ、櫻?」

「心配性のツンデレがブツブツ五月蝿いからー」

残っていた三人が『五月蝿い』の所でシンクロして頷いたと同時に、顔を真っ赤にするゼオラ。

「ちょ・・・、ちょっと! 誰がツンデレよっ!!」

「・・・助っ人で入っただけだから、アレ(ディスプレイを指して)に表示されなくても構わないしー」

アラドもろともぶっ飛ばしたら、ゼオラ怖いもんねー。
アラドを除く四人の女性陣にニヤニヤ笑いで集中され、赤くなったまま沈黙するゼオラ。

「ほっ、ほらっ! 修学旅行の行き先を決めるんでしょ! こ、この話はおしまいッ」

学校から配られたプリントの束を、バンバン叩いて懸命に話を反らそうとするゼオラに、
普段からかわれる側のマイとラトゥーニは、長椅子の両側から挟んで問い詰める事をやめない。

「思ってるだけじゃ何も始まらないのよー」

「さあ、ゼオラも恋する乙女となって私達の仲間入りをしましょう」





「止めなくていーんスか…?」

テーブルを挟んで反対側、アラドの問い掛けに三人から視線をそらすアルフィミィ。

「巻き込まれたいなら、アラドが止めるといいですの。当事者なのですから」

解答に全力で首を横に振るアラド。

「とは言ってもこのままだと集まった意味がないねぇ…」

ストローをくわえたまま、思案する櫻。
手元に広げたぶ厚い専門書を見たまま頷くアルフィミィ。

「櫻はなんか出し物とかはやらないんスか?」

「去年の悪行のせいで許可がおりるかどーか・・・」

苦虫を噛み潰したような顔を見て、慌てて話題を変える。

「う、噂で聞いたんスけど、裏執行部が後夜祭にドデカいイベントをやるとかなんとか」

「ほー・・・」

実に楽しそうと云うか、俺は楽しみだぜ、なアラドの空気に、
先生からの無茶振りだったけど、楽しみにしてくれる人がいるなら企画に携わったかいもあると思った櫻。
表情に出すとアルフィミィに勘ぐられるのでそっけなく返すが。

「櫻は楽しみじゃないのか?」

「私にまで責任が飛び火して、反省文とか説教がなければなんでもいーや」

「冷めてるっスね・・・」


「・・・ふっ」

ふいに席を立った櫻は、アラドの前でニヤリと誰が見ても邪悪な笑みを浮かべた。
そしてドリンクカウンターの方へ向かう。
アラドは真っ向から見てしまった笑顔に冷や汗が止まらない。

「・・・怒らせましたのね・・・」

「ええっ!?」

アルフィミィの呟きが最後通告のように聞こえた。
アラドから見て、櫻はあまり喜怒哀楽の『怒哀』を表に出す方ではない。
中等部からの馴染みにしても、怒る彼女に遭遇した事がないので対応がわからないのだ。

あと思い付くのは何回か会った事がある櫻の家族。
特に長兄のゼンガーなどが、櫻を泣かすか怒らせると報復に来そうで怖い。

いや待て。校内にも櫻の兄であるブリットがいる。
魔女クスハを彼女に持つブリットは、実は過剰なシスコンでも有名で、
校内で妹に会うたび、声を掛けて頭を撫でて可愛がる様子が目撃されている。

すでにアラド脳内では、赤い空に噴火する火山をバックに、
耳まで裂けた口より形容しがたい炎を吐く宇宙怪獣ゼンガーと、
トゲ付き金属バットを振り回す大幹部ブリットが暴れまくる光景が・・・。

アルフィミィは塩を振り掛けたナメクジみたいに冷や汗をかくアラドを不思議そうに見ていた。

だから櫻が席に戻ってくるなり全力で謝った。

「すいませんっしたー!!」

あまりの大声に他の客が何事かと動きを止める。
ゼオラ達も例外でなく、困惑して椅子に座りつつテーブルに土下座するアラドを見る。

「何やったの櫻?」

「知らないよ・・・」

「さっきの会話は俺が考えなしだったっス。ゴメン!」

「はあ?」

先ほどの会話を思い出しても自分が怒るポイントは無かった。・・・と思う。

「ほら、私怒ってないから、ね。頭上げてよアラド」

何かまた勘違いをしたのだろうと思いアラドの頭を撫でる。
その行為が後ろで睨みつけるゼオラの琴線に触れているとも知らずに。
しかしゼオラの両側にいた二人の恋の使徒が、その行動を見逃すはずも無く。

「あっら~、ゼオラはなーにを睨んでいるのかしら?」

「嫉妬~? 嫉妬なのかな~?」

「うんうん。その気持ちはよくわかるわぁ。櫻、人気あるもんねー」

「頭良し、家事万能、料理の腕は天下一品! ファンクラブもあるしー」

櫻も苦笑いせざるをえないのだが、あるのである。

とりあえず持ってきたジュースのカップを皆の前にそれぞれ並べて、自分も席に着く。

「二人とも今日集まった理由忘れた? いいかげんにしないと怒るよ」

櫻自身は笑っているが、言葉が強いものであったためマイは慌てて居住まいを正す。
自分のカップを傾けながら、なんとなく笑いをこらえている様子だったので
不思議に思って、判っているであろうアルフィミィに櫻の表情の意味を聞こうと思った。

「アルフィm・・・・・・。どうしたの? ジュース見つめて硬直して・・・」

「あ、いいえ。なんでもないんですのよ・・・」

恐る恐るカップを口に運び、少量を飲み少し待ってからほっと息を吐くアルフィミィ。
ゼオラに話しかけまくりだったマイとラトゥーニは特に気にもせずに、
オレンジ味のそれをくーっと傾け、硬直した。

目の前がセピア色でぐにゃりと歪み、頭痛と腹痛と喉からの言いようのない苦味。
手が痙攣するのを自覚しながら二人して口を押さえる。

「な・・・なにこれ・・・?」

「さ、さくら、こ・・・これっ?」

震える声で二人同時に問いかけられ、思案するように天井を見上げた櫻は、

「ああ、それ。・・・・・・先輩直伝クスハ汁モドキ?」

「「!!??」」

はたして最後まで櫻の回答を聞いていたのか定かではないが、
マイとラトゥーニは二人して仲良くテーブルにバダリと倒れた。

「ん。これで話し合いの障害は無くなったよね」

その時の櫻の笑顔は今までの友人関係の中で一番怖かった、と
残りの四人はコレより後、そう語っていた。

















* * * * * * * * * * * * *


その日の午後、居間に集まった人物達を見たブリットは困惑していた。

長兄ゼンガー・ゾンボルト。これはまだいい。
なんでこの時間に家に居るかと思えば色々と突っ込みたいところだが。

次兄キョウスケ・ナンブ。まだ家族の範疇ではある。
刑事がこの時間に自宅に戻ったり・・・たまに居るのでまだ納得しよう。

次にラミア・ラブレス。エクセレン・ブロウニングの妹。
弁護士だったはずなのだが、この人が居るだけで話が180度変わってしまう可能性がある。

そしてシュウ・シラカワ。妹がよく懐いてる人物。
毎年恒例旅行のときに会っただけなのだが、普段何をしている人なのか不明。

最後にイルムガルト・カザハラ
次兄の結構親しい友人である彼は、たしか連邦議会監査委員会の一員であったはずだ。
学園の大学部における教授の息子であり。親曰く、女性にだらしないとの事。

自分込みで六人が、締め切った居間に詰めていた。

たしか朝、キョウスケより大事な家族に関する会議を開きたいから、
午前中で繰り上げて来てくれと言われ、
明日の学園祭の準備が押している中、部活の準備を無理言って抜けてきて家に帰ったらこの状況だ。
それに大事な”家族”会議であるならば、ひとり重要なピースである妹が欠けている。
長兄に向けた疑問いっぱいの視線に全てを察したのか、ゼンガーはのっけからぶっちゃけた。

「櫻に関わる重大な話だ。ブリットも良く覚えておけ」

これによりブリットは櫻に関わる秘密をひとつ知ることになるのだが、
妹最大の疑問であるビーストテイマー技能については依然謎のままになる。















* * * * * * * * * * * * *


ひと気のない住宅街の夜道を小柄な影がてこてこ歩く。

「まだ暑いのに日暮れは早くなったなあ・・・」

鞄とビニール袋をぶら下げた櫻である。
仲間内の相談は早々と終わらせたのだが、アラドとペアでストーリーモードをやったり。
明日から学園祭の料理部喫茶店で出す、ケーキ用デコレーションの材料だとかを
買いに行ってるうちにとっぷりと日が暮れてしまった。

アルフィミィは「先に帰りますの」と伝言を残してバーニングPT中に姿を消してしまい。
マイとラトゥーニはゲーム終わってもまだ寝ていたので、リュウセイに連絡をして引き取りに来てもらう事に。
アラドがまだゲーム中だったためゼオラが面倒を見るというからプレイパレスを後にしたが、
明日会った時に文句を言われるだろう。

対応をどうするかと考えかけた時、進行方向に人影があるのに気がついた。
夜風に乗って煙草の匂いが漂ってくる。
自動販売機があるところに人が溜まっているならまだしも、
街灯の設置してない暗がりの道を塞ぐように三人の人影である。
痴漢かひったくりか欲望を満たす為のゲームか、貧相な自分だが生物学上は女性である。
特殊な趣味の持ち主がいれば襲われるだろうと思っていたが、

人影より距離を取った所で停止。
途端に後ろで数人の足音がして、退路を断たれたらしい。
…つまりは女性を見境なく襲う輩か、自分を特定した待ち伏せか、

肩越しにチラリと後ろの人数を確認。
三人、・・・計六人。心当たりがひとつだけ。

「テメェのようなチビ女がMISAだったとはな…」

半月だったが月明かりになんとか見えた
大学生くらいのチンピラっぽい着崩した服装をして煙草くわえた男の声、
昼間の角付きゲシュと同じ声だった。

「イロモノ軍団の方々が何のご用ですか?」

「イロモノってゆーな!」

後ろから抗議の声が上がる。どうやら固執している人もいるらしい。

「ゲームの復讐をリアルで返すっていうのは、大人気ないと思いますよ?」

「ふざけたコトぬかしてンじゃねェ!」

後ろから荒々しく近付いた男に腕を捕まれ捻り上げられた。

「・・・ぃたっ!」

周囲を囲む男達からは、ケタケタと自分の状況を蔑むような下卑た笑い声が。
ひとりの腕が制服の胸元に伸びたのを見て、櫻はスゥっと頭が冷えていくのを感じた。

「アk「おい、ガキ共」

リーダー格の背後から掛けられた強い声と、瞬間夜道に響き渡る打撃音、数は六。
スローモーションのように空中を舞う六人の男に、
何時の間にか櫻の前に立っていた、銀髪の狼と云うべき人物が。

「ちっ・・・。俺の拳はあと九百九十四発残っているのによー、もう終わりか」

「・・・・・・・・・ありおん・・・さん?」

「ちびっこが一人でこんな時間に出歩くもんじゃないぜ」

その背後で、道路に死屍累々と横たわるさっきの六人が
黒服にバイザーつけたアリオン配下のSP達に引きずられ、車に詰め込まれていた。
しばし、唖然と道路に座ったままアリオンを見上げていた櫻だったが、
立ち上がり、制服の埃やスカートの砂を叩き落としてから、アリオンに深々と頭を下げた。

「助けてもらってありがとうございます、アリオンさん」

「まあなんだ、世間には嬢ちゃんみたいな体型も需要があるって言うからな、
 夜道を一人で歩くのはあんまりオススメしないぞ」

一部、櫻の心にカチンとくるものもある発言だったが、激昂しかかった心を抑える。

「ところで・・・」

「なんだ?」

「なんでタイミング良く私の危機に駆けつけられたんですか?」

「お・・・、いや、に、任務のだな、仕事の帰り道に偶然な、な?」

とたんにしどろもどろになる救世主。それをジト目で見つめる生贄の羊。

「アリオンさん単独ならまだわかりますけど、アリオン隊まるまるですか・・・。
 一仕事終えるたびに後片付けを部下に任せて、隊長が姿を晦ますってアルティスさんがぼやいてましたけど?」

「・・・いや、えーと、そーだな・・・。
 そう! アルティス様に怒られてな。今回は偶然! たまたまだ」

「・・・たまたまですか・・・・・・」

櫻は挙動不審のアリオンの背後、その部下達に視線をずらした。
半分以上がひきつった笑みを浮かべ、片手を上げて申し訳ないといった仕草をしている。
見知った副官の青年なんて、隊長の背後からこちらを拝み倒すように頭を下げていた。

「判りました。助けられましたので、その事は聞かないようにします」

「お? おお、助かるぜ嬢ちゃん。・・・おい! 誰か数名ほど送っていってやれ」

一礼して家に帰ろうとした少女を見て、ほっとした表情のアリオンが背後の部下に声を掛ける。
すぐに二名ほどが隊から走り出し少女の左右に付く。
街灯から見えなくなる夜の道に消えていく三つの人影を見送ったアリオンは「ふへー」と嘆息した。

「良かったですね、隊長。詮索されなくて・・・?」

隣に歩み出た副官は、苦虫を噛み潰した上官の顔を見て眉をひそめた。

「いや、多分気づかれたな。ありゃ・・・。
 さすがさすが、大将に懐くだけの事はあるぜ」

「・・・はあ・・・?」

「撤収するぞ、次の引継ぎは誰だったか? 一応この一件は伝えておいてやれ。
 ああ、そのチンピラどもは警察に突き出しておけよ。婦女暴行未遂と適当に余罪つきで」

「了解しました」

副官が隊の指揮を執ってその場を簡単に片付けるのを見ながら、ふと思い出す。
嬢ちゃんを助けるときになにか別の気配があった様な気がしたが・・・。

「ま、関係ないだろう」

星も見えない夜空を見上げてアリオンは呟いた。
















(あとがき)

三歩進んで五歩下がる作成状態なため、前回より随分間が空きました。

ここ数話、バーニングPT分が足りないので急遽入れました。
学園祭が始まらない・・・。
外伝のほうはこのまま放置で、これをきちんと完結させた後、また新たにスレ立てて書こうと思います。
何時になるかわかりませんが・・・。

アラド君活躍(&ヘタレ)の巻。ほとんどオリ主が喰っているような。

あと、友人に『好きなユニットが変?』と言われたのですが、
私が好きなユニットは、最終ボスとかが使っているでっかいのです。
なのでオリ主の乗機はほとんどこのカテゴリーで。
(ジュデッカのサイズはWiki見ても書いてなかったので、捏造しましたー。)

ちなみに今回の改造ゲシュペンストの元ネタは、
ザク隊長機、
シュッツバルトorガンキャノン、
ドラグナーのグンジェム隊のミン機、
メックウォーリアーのライフルマン、
アーマード・コア、
ザメル、
・・・でした~。(あと仮面ライダーBlackでw)

だらだらと話を続けるよりは、完結させるために加速しようと思います。






[7259] 13 「旧いメモリと文化祭」
Name: C-K◆ae02f8a5 ID:27ec9c7b
Date: 2009/11/14 21:32
   ◇ ◆ 10 years old ◆ ◇


都市部から離れた山間の村、藁葺き屋根の一軒家があちこちに点在し、
過疎化の進み過ぎた昔ながらの農村と言えばいいのか、文明の利器のかけらも見当たらない。

村で畑仕事をしているのは老人のみ、そこかしこに鶏が歩き回り時々間延びした牛の鳴き声が聞こえてくる。
その村の舗装もされていない道を二名の男性が肩を並べて歩いていた。

赤いジャケットを着込み黒いズボン、ゴツいブーツにアタッシュケースを持った銀髪のゼンガー・ゾンボルトと、
軍用の黒い上下ジャケットと山岳用ブーツにコートを羽織ったアルカイド・ナァシュ。

「お前まで来る必要はなかったと思うが・・・」

「なに、これも仕事よ。心配しすぎのお前の友人とかな」

無表情で返って来る言葉には苦笑してからかうような響きがあった。

「それにしても、同じ国の中とは思えぬな・・・」

都会の喧騒元となる音源もなければ、車両が撒き散らす排気ガスの臭気もない。
流れてくるのは水気を含んだそよ風の中に混じった緑の匂い、山の何処かで鳴く鳥と村中の畜産の声。

「こんな所にお前の知人が住んでいるのか?」

「大学時代の友人がな。いきなり自分の所に人一人分の人権を送ってきた理由くらい聞かないとな…」

右手に下げていたアタッシュケースを軽く掲げてみせる。
中にはつい二ヶ月前に自分のところへ送られてきた書類が入っていた。

大学時代の唯一の友人と言えばいいのか、親友の立場に居たエルザムとはまた違う感じで良く会話を交わした人物。
『巳子神一美』から大き目の封筒が届いたのだ。
たしか大学を卒業したら実家に戻る。・・・といった言葉を最後に連絡も取っておらず。
彼女の住所すら記載されていないその封筒に入っていたのは、数枚の書類だった。

おそらく彼女の身内、それも自分の娘であろう人物を書類数枚で表したそれは、
ゼンガーのサインひとつでどうとでも出来る様になっていた。

自分の娘の身柄を赤の他人であるゼンガーに任せた、と云う事に結論に至って、
これは本人に問いただすべきだと思い当たったが、しかし居場所を探すのに一ヶ月も掛かってしまったのだ。
今にして思えば学生時代、都合の悪いことから逃げるのだけは旨かったと思い出したりも・・・。

奇異の目や胡乱な視線を向けてくる村の年寄りから聞き出した目的の家は、
村でも一番奥まったところ、小高い丘を背にして建っていた。

「・・・うん?」

「どうした?」

職業柄か村の中へ視線を走らせていたアルカイドが疑問の声を上げる。
反応したゼンガーへ知れた仲のものでも判り難い苦笑を返し、ある方向へを顎をしゃくる。

「いや、妙に家が点在しすぎているのが気になってな・・・。たとえばあの辺とか」

アルカイドが示す先には一軒の家と、左隣に家一件分開いた妙な広場。
良く見ると隣家と繋ぐように、風除けと思われる屋根より高い垣根がある。
あきらかにそこにはかつて家があったという名残だ。
注意して見渡すと、そこかしこに妙な間がある。

「火事の多そうな所とも思えぬな・・・」

「まあその辺はよそ者が詮索するものでもあるまい」

と、正面の村の中でも一番大きいと思われるわらぶき屋根の家に目を向けた。
さすがの二人でも一歩踏み出すのがためらわれる家だった。主に庭にいる者たちによって。

それは庭先が動物だらけだったからである。
犬猫はともかくとして熊、兎、狐、蛇や鷹だか鷲までいた。
変なのは捕食者と被捕食者が一緒にいて争いすら起きてない事だ。

ゼンガー達が近付いた時より、捕食者の対象はこちらに向いていた。
牙を剥き出して威嚇体勢に入る熊と狐と犬。
家屋の玄関にあたる土間口の前を占領し、一歩も通さないぞと主張するかのような猫と兎。

「フッ」

鼻で笑ったアルカイドが自然な流れのようにゼンガーより前に歩み出る。

「おい?」

「どちらが強者かを教えてやろうではないか」

バサッとマントをひるがえし、腕組みをする漢は後ろから見ても楽しそうな闘気がにじみ出てるのが判る。
既にその時点で前衛の熊達は尻込みしているが、
逃げ去らないところをみるに、余程この家の者を慕っているのだろう。

「 ダメ 」

どうしたものかと思案したところで、別方向より掛けられた鈴の音のような声に動物達の動きが止まる。
いつの間にか猫達が守る土間口の扉が半分ほど開いていて、紺の着物を着た少女が姿を表していた。

「 お客様をおそったらダメ 」

その言葉だけで頑なに進路を塞いでいた熊達がゼンガーらへ道を譲る。

「 あなた達は山へお帰り 」

諭すように声を掛けた少女としばらく見つめ合っていたが、
名残惜しそうに振り返りながらすごすごと散っていく熊と狐と兎。
庭の隅まで行って寝そべる犬と猫。しゅるしゅると縁の下へ消えてゆく蛇。
鳥達はヒサシまで飛び上がったり、上空へ飛んで行ったり。
庭から犬猫を除いて動物達が居なくなるのを見送った少女は再度二人へ頭を下げた。

「 あの子達がしつれいしました 」








その後、中には囲炉裏があって暑いという理由から縁側へ案内され、
少女がお茶を持って来てから互いに自己紹介となった。

「ゼンガー・ゾンボルトだ」

「アルカイド・ナァシュという。こいつの護衛だ」

「ゼンガーさまにアルカイドさまですね。わたしはいまの巳子神当主、巳子神さくらともうします」

少女の名前を聞いて二人はまさかといった表情で顔を見合わせた。
写真こそ添付されてないものの、友人より送られてきた書類の人物だったからである。

(そういえば実年齢は確認してなかったな)

巳子神一美について尋ねると、少女の母親との答えが。更には母親の遺言で
『ゼンガーなる人物が尋ねて来たならば、貴女の身の振り方を全て委ねるように』と言付かっていると。

それだけでゼンガーの表情は苦みを帯びた。
学生時代の友人は先の先を読んで行動する性格だったからだ。
この場合、保護者が居ないとマズいのか、ゼンガーの後ろ立てが必要なのかが不明瞭だが。
こればかりは遺言を残した本人に聞いてみない事には判らない。

「そう言えば、母親はどうした? 葬式は済んだのか?」

お茶を啜りつつ田舎風景を眺めていたアルカイドは、ゼンガーが聞きづらかった事を尋ねる。

「母でしたら、巳子神の務めを果たしに行きました」

「「務め(だと)?」」

少女が伝え聞いただけだと言う事柄を、記憶から掘り出すようにゆっくり語ってくれたのを要約すると。


◆巳子神家は遺産らしきモノを継承している。
◆死期を悟った一族の者は導かれるようにソコへ向かう。
◆遺産に選ばれた者は大いなる力を受け継ぐ。
◆今までで継承された者は居ない。つまり、誰も戻って来ない。

と、言う事になる。

(おいゼンガー。この娘をどうするつもりだ?)

(我は引き取ろうと思っているが)

(正気か?事情をかんがみるにトラブルの種だろう)

(だからと言って友人の最後の頼みを無碍にする訳にもいかん)

(犬猫を拾うのとは訳が違うのだぞ)

「 あの 」

大人二人でひそひそ会話をしている所に少女が割り込んだ。

「ごめいわくでしたら、この村でひっそり暮らしますから、気になさらなくてもいいですよ」

能面のように表情も変えずに、それが当たり前だという言葉を紡ぎ出した少女の反応に、
反対意見のアルカイドは押し黙った。

「 あの? 」

「お前は我が引き取ろう。ウチに来るといい」

少女の頭に手を置き、優しく撫でるゼンガー。
しばらくおとなしく撫でられていた少女は、小さく頷いた。


住民票などは、少女の母がゼンガーに送った書類に彼自身のサインを入れ、
この地域とゼンガーの地元極東市の市役所に届ければ終わりである。
ゼンガーは少女に荷物をまとめさせて後日迎えに来ようと思っていたのだが。
少女は数点の着替えをまとめるだけで済むと主張したので、その日に村を発つ事になった。

この村独自の習わしがあると言い、ゼンガー達二人を先に外に出してしばらくしたその時。
締め切られた縁側の雨戸や藁葺き屋根の軒下の隙間から、紅い炎が舌先を伸ばした。
それをを見て慌てて駆け寄ろうとした二人だったが、
正面の土間口からさほど緊迫感も無しに少女が出てきたので保護をし、火の粉舞い始めた家より距離をとる。

しばらく燃える生家を眺めていた少女だったが、やがてくるりと背を向けて歩き始めた。
ゼンガーとアルカイドも少女の脇を固める位置で歩く。

護衛としてやや前を行くアルカイドは、村中の気配が希薄になっているのに気づいた。
家畜以外は、家に閉じこもっているといった雰囲気だ。
首を捻って同じ感覚を掴んでいるゼンガー見る。

二人の視線だけのやりとりに、答えを返したのは少女だった。
家を焼却した者は穢れが出るため、閉じ籠もって難を逃れるのがしきたりだそうだ。
感情の色も見えぬ瞳にゼンガーは少女の本音を引き出すのが長丁場になりそうだなと思った。
アルカイドも同じような感傷を抱いたらしく眉をひそめて嘆息する。

朝日に向かって黙々と歩く少女の後ろ姿を見ながら、まずは弟達と引き合わせ、
家族が増えた事を報告してから、色々決めようと思った。





・・・・・・・・・・・・朝日?























部屋の中に弱めの朝日が差し込んでいる。
しばし光に照らされた畳をぼんやりと見つめていたゼンガーだったが、
かすかに漂って来たいつもの匂いに、ようやく今さっきの光景が夢だと気がついた。
頭をを振って先程の光景を追い出し、布団をたたみ着替える。
時計に目を向けてから違和感に気付いた。

「・・・五時?」

普段この家で早起きは、ゼンガーが一番目で次がキョウスケか櫻、最後にブリットだ。
それでも全員揃うのは六時だから、普段朝食を作る妹にしてはずいぶん早い。

疑問もあるが、確か今日は学園祭だと楽しそうに話をしてたので
その関係だろうと思い、簡単に身支度をして部屋をでる。

キッチンでは制服の上にエプロンを付けた櫻が味噌汁の味見をしていた。

「おはよう、ゼンガー兄さん」

「ああ、おはよう櫻」

キッチンから見えるリビングのソファーに座る長兄に気付いた妹と挨拶を交わし、
テーブルの上に置いてあった新聞を広げる。

「はい、お茶」

「ああ、すまん」

湯呑みを置いてキッチンに戻る櫻は実に楽しそうな笑顔、
先程の夢とは大違いでゼンガーの心を安心させていた。

「ねぇ兄さん、今日ホントに来るの?」

「ああ、仕事の調整は済んだ。レーツェルも同行する」

キッチンでちょこちょこ小動物のように動きまわりながら櫻が心配そうに問いかけて来る。

「キョウスケ兄さんもお弁当要らないっていうし、張り合いないなあ」

キョウスケは昨夜、見回りで学園に寄るかもしれないから昼は学園祭で済ますような事を言っていた。
たぶん、お祭り気分で浮かれ状態のこの妹に弁当など作らせたら、
とんでもない豪華重箱数段重ねが出て来るだろう事は想像がつく。

「ね、兄さん」

「なんだ?」

新聞片手にお茶に手を伸ばし、

「遺産の件で何かあったね?」

さっきとはうってかわった深刻な声に動きをとめた。

「昨日アリオンさんに会ったんだー、隊丸ごと。
 SSSがついているって事は私を警護する必要があるって事で、私が必要になる事態は遺産の件しかないでしょ?」

「・・・・・・・・・すまん」

「やだなー、兄さん達が私を心配してるのも判ってるから謝ってもらいたいわけじゃないよ。
 ひとこと言っておいてくれればそれで・・・」

テーブルの上にはすでに湯気の立つ和食が三人分用意されていて、
エプロンを外した櫻はゼンガーの肩をポンと軽く叩きリビングの外へ。
廊下で苦笑いのままゼンガーに敬礼の真似事。

「じゃ私、前準備やらあるんで早く出るから、後片付けお願いします」

「ああ、行ってこい」

「うん、行ってきまーす!」

トトトと軽い足音に玄関を開け閉めする音。

額を押さえたゼンガーは「は──」と息を吐き出して、ソファーから立ち上がった。

「まったく・・・」

隠しておこうかと兄弟だけで話し合ったのが昨日の事だというのに、
あっさりと妹にバレて、しかも逆に気を使われるとは…。

このやり場のないもやもやした気持ちを、まだ夢の中にいる弟達にぶつけるべくリビングをでた。
ついでに早すぎる朝食を冷めないうちに食べてしまおうと。

直後、ブリットの情けない悲鳴が早朝の住宅街に響き渡ったのは余談である。














「ふんふっふっふふ~ん♪」

学園祭開始30分前に迫った1ーAの教室、ざわざわと始まる前の楽しみな心を喧騒に変えながら
数人は時計を気にしつつ、友人達とお喋りに花を咲かす。
1ーAは特に学園祭にクラスぐるみで参加をしてないので、待機場所兼荷物置き場になる。
その中でクラスほとんどの視線は、実にご機嫌な巳子神櫻に集まっていた。

「・・・櫻?」

「ふっふ~ん♪ ・・・なに? マイ」

出席を取って早々に姿をくらませたアルフィミィに代わり、
クラス中からの重圧にさらされたマイが櫻に尋ねる役になった、逃げ腰で・・・。
ちなみにラトゥーニは学園祭実行委員なのでここにはいない。

昨日、目の前の少女によって一時的な昏睡状態に追い込まれたマイは学習した。
ご機嫌か良い笑顔を浮かべる彼女は恐ろしいと・・・。

「なにか・・・、するの?」

「それは、これで!」

自身が持って来たスポーツバッグから一枚の黒い布をバサーッと取り出し肩に掛けた。

「マント?」

「うん、そう」

制服の上着を脱ぎワイシャツの上にマントを羽織る裏地は赤、
首元で留めるのはチェーンと逆十字架に羽ドクロ。
首のチョーカーはアクセントに黒い蝙蝠。

「えーと、ナニソレ・・・? コスプレ?」

後ろ髪に結ぶ青いリボンを解き、ツインテールに変えリボンは黒。

「どーせブラックリストって風紀委員に警戒されるんなら堂々とだよ!」

手には白い手袋をつけて、足には元々黒いストッキング。

「どう? カッコイイでしょー!」

手をバッと広げて胸を張る櫻からクラスの皆は一斉に目を逸らした。

「ええっ!? ちょっ、なんでみんな目を逸らすのよー!」

 (ど、どう思う?)
 
 (チョー可愛いと思うわ・・・)
 
 (持ち帰りてぇ)
 
 (おいおい・・・、ファンクラブの先輩方に知られたら殺されるぞ)

ひそひそと櫻の可愛さを語るクラスメイト。知らぬは本人ばかりなり。

「ねぇマイ。似合ってないかなぁ?」

「だ、大丈夫! 凄い似合ってるからっ」

さっきまでの有頂天とは正反対に、しゅーんと落ち込んだ櫻に見つめられ慌ててフォローするマイ。
本人はカッコイイ悪を気取っているつもりなのだが、
魔王を継承した孫娘が無理やり正装してみたら実に可愛いコスプレになってしまった。・・・といった感じ。

「よし、気にしない!」

クラスメイトからそそがれる微笑ましい視線をさっぱりスルーして櫻は気分を切り替えた。

「とりあえずマイは何処行くの?」

「リュウはクラスから抜けられないみたいだし、
 ラトゥーニは実行委員だし、まずはリュウの様子を見てから決めるわ」

「そっかー、私は喫茶店寄ってみてから後は暇だから良かったら合流しょ?」

マイは櫻の格好を引きつった笑顔で眺め、出来れば一緒に歩くのは遠慮したいと思いつつ、濁す事にした。

「あー、うん。ラトゥーニとも連絡取ってみて、その後の行動を決める事にするわ」

「ならしょうがない。アリィちゃんでも探すとしますか」

二人が大体の行動方針を決定したところで校内放送でベル音が響き渡る。

『ただいまより、第三十二回、大学部、高等部、中等部、の合同学園祭を、開始致します』

歓声が巻き起こった。クラスから隣の教室から、校舎や校庭から。
あっという間に教室から人が流れ出て行き、数人の荷物番係と櫻だけになっていた。

「巳子神さん、早く行かないと出遅れるんじゃないか?」

「・・・あ、うん。いってくる」

「そのカッコで出歩くなら色々と気をつけたほうがいいと思うよ・・・」

残っていた男子生徒に諦めきった顔で断言され、首を傾げながら教室を後にした。








「えーと、喫茶店は二階だから・・・、うわ・・・」

三階から二階へ降り立ってみると結構な人だらけだった。
校門からの一般客はまだこの階まではたどりついてないらしく学園の制服ばっかりで、

「たしかこの階、飲食店が多かった気がする・・・」

壁や窓や廊下の天井にまでメイド喫茶だの執事喫茶だのコスプレ喫茶だのと、張り紙ばっかりだ。
それでなくとも異質な格好をした櫻は注目を集めている。

 (なー、誰アレ?)
 
 (アレじゃね。一年の巳子神)
 
 (なんかの喫茶店のウェイトレスか?)
 
 (そんな情報は入ってきてねぇぞ)
 
 (ああ、櫻様。なんてお可愛らしい・・・)
 
 (後で会報用に写真を撮らせてもらいましょう)

「うわぁ・・・」

ものすごい数の視線を向けられて、思わず一歩下がる。
クラスメイトが言っていたのはこの事だったのかな、と呟いたところへ声を掛けられた。

「こら、櫻。なんだその格好?」

「あ、ブリット兄さん」






  ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆            


「なにしてるんだ、お前は?」

ブリットは校門で、人見知りのため尻込みしていたイルイを、
クスハのところへ連れて行く途中で、珍妙な格好の妹を捕まえた。

「あ、ブリット兄さん・・・とイルイちゃん」

「こ、こんにちは・・・、櫻ちゃん」

些か唖然としているイルイの前でマントを翻し、軽くポーズをとる。

「どう?お祭りだし、珍妙な格好してみました」

自覚はあったのかと呆れるブリット。
クラスの出し物によっては、校内外にメイドやら着ぐるみやらが、
溢れかえる光景が毎年のことなので気にはしないが。
目の前の妹は小悪魔的な格好そのまま騒動を起こしそうなので、注意が必要だ。

先日長兄ゼンガーが教えてくれた妹の生い立ちの事もある。
誰かに狙われているとかいう可能性があるらしい事もひっくるめて、学校内では自分が守ってやるなどとは言えないが、
気には掛けておこうと思うブリットだった。







  ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


「こんちは~。客足はどんなもんですか?」

『飲み物一杯10円』と書かれた立て看板に、『のみや』と書かれた暖簾。
隣の教室には廊下側に飾り付けられた『野戦病院』の文字。

ブリットは気にしないように、イルイはカオスっぷりにおどおどしながら、先頭の櫻に続いて喫茶室に入る。
出迎えるのは数人の女生徒。制服に色とりどりのエプロンを付けて。

「手伝い要りますか~?」

「いいえ。大丈夫よ」

カウンター側に寄って行った櫻とにこやかに会話するのは、一応この喫茶室の代表である三年生。

「開始30分で早くもすごい人がいるわよ~。あ、ほら・・・」

「ほほー」

二人の見た先にはふらふらっと入店してくる女生徒ひとり。
何があったのか知らないが、げっそりと頬がこけ幽鬼のような有様だ。

「あ、お姉ちゃん」

その身の腕を支えるのはクスハ・ミズハ。

「大丈夫ですか、アイビスさん? 飲み過ぎは体に毒ですよー」

アイビスと呼ばれた女生徒は、か細い声で「だ、だいじょーぶ・・・」と告げるとカウンターまで歩み寄った。
将来の縮図みたいな光景で、見ている方が心配になる憔悴っぷりである。
彼女は震える手で10円を差し出し、お茶を注文した。
反射的にブリットは白いテーブルクロスの上に置かれたメニューを確認する。

【オレンジジュース】=髪に効果あり?
【烏龍茶】=お肌に効果有り?
【お茶】=ダイエット用?

・・・と三行しかないメニュー表が。

アイビスは渡された紙コップを勢いよく飲み干し、「うっ」と呻くと、崩れ落ちた。
その光景だけで小さな悲鳴をあげたイルイは、ブリットの後ろに隠れる。
動揺したのはブリットとイルイくらいなもので、喫茶室のメンバーは平然としていた。

クスハが、腰に付けていたハンドベルを鳴らすと、担架を持った男子が二名入室し、
アイビスを担架に乗せて退出していった。

「どこから借りて来たんです? あの詰め襟の人達・・・」

「先輩のツテで、大学部の応援団から貸してもらったらしいよ」

ツテ恐るべし。などと櫻が感心している最中、
ブリット達はテーブルに適当に座り、クスハに水を振る舞われていた。

「はい、イルイにはメロンフロートね」

「ありがとう、お姉ちゃん」

「メニューにはないヤツだな」

「判ってないなー、ブリット兄さんや。
 みんながみんな自虐趣味で来るわけじゃないんだから、普通の飲み物くらいあるってば」

自虐喫茶ってどんなだよと、つぶやきながら一気に水を飲み干すブリット。
とたん形容し難い程歪む視界、胸部より違和感。
全身が弛緩したように感覚がなくなり、テーブルに突っ伏した。

「・・・ふ、・・・・・・ふか・・・く・・・・・・」







   ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


うむ。彼女から渡された水だからといって、警戒心も無しに一気飲みとは、うかつ過ぎるわ兄さん。

「・・・お、お兄ちゃん・・・し、死んじゃったの・・・?」

「だ、大丈夫よイルイちゃん。ブリット兄さんも学園祭の設営で、疲れていただろーから」

クスハ先輩もイルイちゃんに与える心的影響とか考慮したらいいのに・・・。
涙ぐんで萎縮してんじゃん。
私の言い訳も苦しいような気がするわ。

「彼にとっては切っても切れない縁なのではないかしら?」

先輩のその発言は、兄さんが不憫過ぎる。
運命のクスハ汁とか・・・・・・。












(あとがき)
すごい間が空きました。
始めるのは簡単ですが、終わらせようとするとすごい難しいのです。
間を空けすぎたために自分の中の人物達がいささか希薄になってしまい、キャラ付けを思い出すのが大変に。
半年の空白期に別の二次創作や、オリジナルなどを書いては没、書いては没、何にも形になりませんでしたが・・・。
あと数回で終わる予定(多分)ですので、gdgdな文章ですけど我慢してやってください。

※11/14:誤字修正








[7259] 14 「横断! 食通の旅」
Name: C-K◆ae02f8a5 ID:27ec9c7b
Date: 2009/11/20 19:00
「おのれ、ゼンガーめ・・・」
スモークの掛かった車内で、壮年の男性は憎々しげにつぶやいた。












飛龍学園。


広大な敷地に中高大の各校舎が横たわり、それに付属する施設も一通り揃っている。
この辺りでは並ぶモノの無いマンモス校だ。

極東市民の四割が関わっていると言っても過言ではない。

その学園が初秋のこの時期に二日間の祭に入った。例年通りに。
抱えている人数も人数だが、学園祭時の来場者数もその倍を越える。

当然其処には人数と比例するだけの問題が発生する。
毎年の如く同じような事件が起き、新しく浮上する事件もある。

まずはゴミ。学園の上層部が徹底し、生徒会やら学生会が準備の段階から神経質になるために、
分別に関しては市役所から苦情はない。
但し毎年々、量は増え続けているらしい。去年は十数トンになったとか。

他にも衛生管理やら、騒音やら。
大学部の方でお酒を扱う店もあったりするために、
中高校舎の方にまで蔓延し、未成年飲酒問題とかが露見する。

もっとも多い事は、一カ所に人が集中するが故に起こる人間関係のこじれ、つまりは喧嘩のたぐいである。
小さな諍い程度であれば、学生が対処できるが。
刃傷沙汰にまで発展しかけた過去例があるために、地元の警察から私服警官が数人派遣されることになっていた。








・・・で、その派遣されたひとりであるキョウスケ・ナンブは頭を悩ませていた。
喧嘩などの事ではなく、パートナーであるエクセレン・ブロウニングの行動に。

「・・・エクセレン・・・」

「なぁに~、キョウスケぇ~?」

「一応、今は仕事中なんだがな・・・」

「いまさらな事聞くのね~。それがどうしたの?」

「お前の持っているモノは、仕事に相応しくないと思うが・・・」

そう、彼女の両手は屋台の食い物で埋まっていた。
綿飴、焼きモロコシ、林檎飴、たこ焼き、チョコバナナ、牛串など。

「や~、学園祭とか~もごもぐ、お手軽な味がいいわよねぇ~。はむはむ」

「・・・・・・はぁー・・・」

もはやこうなると何を言っても無駄なのは目に見えている。
口を出してものらりくらりとかわされるだけなので、満足するまで放置するのが一番だ。

最近はエクセレンの悪影響を受けたのか、妹まですいすいとこちらの追求をかわす事も多い。
交友関係を鑑みるに同年代の友人よりも、年上の男性陣の方と組んでいる姿が妙に多い気がする。

しかしまぁ、田舎から引っ張り出され10年程で、情報化社会にどっぷり浸かった生活に慣れたものだと思う。
家に来て最初の頃など、庭で米を炊こうとするわ、耕そうとするわ。
なんにつけても自給自足から入ろうとするので、
兄弟全員で慌てて止めたり、家電の使い方を教えてやったりしたものだ。

いまや、家事のほとんどは妹の仕事となり、
家電カタログを見ては、コレが欲しいアレが欲しいとねだってくる。

バーニングPTとやらでは、強豪のひとりとして大暴れし(エクセレン談)、
学校生活は学業については問題なさそうだが、
ブリットの報告によると、ブラックリストの上位に位置する問題児だとか・・・。

(長兄が破天荒な分、影響を受けまくってしまったのかもしれないな・・・)

その『破天荒』に自分も入ってないのがナンブクオリティ。




キョウスケには、櫻の事情でひとつ気になる事がある。

先日の家族会議でも触れられなかったのだが、
本人は母親の事とか一緒に暮らしていた時のことなどを、まったく話してくれないのだ。

こちらに来たばかりに一度聞いてみたのだが、答えは沈黙だった。
数年経って同じ事を聞いたが、答えは「もう忘れちゃった」だった。

二回ともその時だけ、櫻の表情は能面のようだったため、
同席していたゼンガーにより今後この質問は禁止にされた。
たぶんその影響か、キョウスケと櫻の間には微妙にわだかまった空気がある。

「・・・・・・ケ・・・・・・って・・・・・・」

それさえなんとかなれば、もう少し自分達の関係も改善されるんだろうが…。

「ち・・・・・・いて・・・・・・・・・・・・・・・っば・・・!」

無理に聞いてしまうと、更に悪化してしまう可能性があるために、もう一歩が踏み出せないでいる。
妹にずいぶんと意識を割くところ、キョウスケも立派にシスコンだった。

「聞きなさいって」

スパーン! と良い音とともにキョウスケの頭が鳴った。
首を傾けたまま、ブリキ人形の軋む音がしそうな感じで後ろに振り向く。

「・・・エクセレン・・・。叩く前に声を掛けるのが、最低限の礼儀だと俺は思うのだが・・・」

「さっきから掛けてたわよン。それよりアレ、どう思う?」

「・・・アレ?」

エクセレンが指差す方を向けば・・・。








「くぉーラー! 貴様等ァ。勝手に母上の絵姿ヲ売り出すトは、何と無礼ナー!」

ブロマイド屋と暖簾があるテント前で、人間でないモノが猛然と抗議していた。
鋭角と曲線を組み合わせた紺色のボディ、所々アクセントに黄色、人に緊張を持たせる造りの顔、警戒色の赤い目。

「・・・うそォ・・・ヒュッケバインッ!?」

「ひ、ひけ? ・・・なんだそれは?」

バーニングPTをやったことのあるエクセレンはそれが何であるか解ったのだが、キョウスケにはさっぱりだ。
どちらかというと、腰から伸びる太いコード先、車輪の付いた50センチ四方の箱の方が危険物に見えていた。

回りの学生はヒュッケバインがなんであるのかさほど気にせず、店側ヒュッケ側に分かれ、無責任に囃し立てる。

「婦女子ニ無断で絵姿を売りサバクとは、漢の風上にモ置けぬ奴! 成敗シてくレヨウぞ」

「いやだから。ちゃんと本人に確認してもらってると言っているだろう!」

「言い訳トは漢ラシくなイ! 素直に罪ヲ認めルガ良イ!」

「わけわかんねぇよッ!」

「・・・なぁに・・・アレ・・・」

「わからん・・・」

解らないが、周囲の学生に止めようとする者が居ないようなので、
放っておくとヒュッケバインが店を喰い破りそうに見えた。

仕方なく、キョウスケらは仲裁に入る。

「まあ、待て」

「ナンだ貴様等ハ」

「警察だ」

「ちょっとキョウスケ・・・。いきなり相手の警戒レベルを上げるような発言は、止めなさいよねぇ・・・」

私服警官が紛れているのは知っているらしく、店側学生達はほっとした雰囲気に。
ヒュッケバイン側学生達は騒ぎを楽しんでいたのか、ブーイングを始めようとして、
キョウスケの鋭い視線にすごすごと退散した。

「店側は写った本人に確認していると、言っているが?」

「口デはどウトデも言ヱる!」

「こりゃ実際に撮られた人、連れてきて証言してもらうしかないんじゃない?」

番号札付きのフィルムケースに入れられた女生徒の写真を眺めながら、提案したエクセレン。

「ウム、そレナら確実だロウ」

腕を組み、コクコクと頷くヒュッケバインに胡散臭い目を向けるキョウスケ。
とりあえず手近な学生を捕まえ、聞くことにする。

「すないが、ちょっといいか?」

「あ、はい?」

「コレは何だ?」

「ああ、僕も良く知らないんですが、大学部で作ったくらいだとしか・・・」

思い出すように答える学生もいくらか困惑気味で、大して把握してないと見てとれる。
着ぐるみじゃなかったのかと呟くキョウスケの後ろで、エクセレンが小さく声を上げた。

「…あら」

「どうした、エクセレン?」

「あ、ええと…。ほら、キョウスケ。これこれ、ココ」

珍しく狼狽気味な彼女が指す先の写真には、櫻とアルフィミィがセットで写っていた。
途端にキョウスケの額に浮かぶ青筋を見て、藪蛇だったかと気付くエクセレン。

「ちょっ、キョウスケ!穏便によ、話し合い。分かるでしょ?」

写真には制服を着たふたりが廊下で、憮然とした表情のアルフィミィと、
何かを話し掛け自然な笑顔の櫻がフレームに収められていた。

櫻が写っているのなら、本人に確認したほうが早いと思い、エクセレンは携帯を取り出した。
シスコンのキョウスケの射殺すような視線を受けた、震えあがる学生達に危険が及ばぬ前に。

「キョウスケ・・・。何を餌を奪い合う野良猫みたいな雰囲気になってますの?」

「アルフィミィか・・・」

ふわふわ蒼髪少女がいつの間にかキョウスケ達の後ろに立っていた。

「あら、櫻ちゃんは一緒じゃないの?」

「エクセレン。私と櫻を、お徳用セットみたいにしないで欲しいですの」

彼女にしては珍しく拗ねた顔で返答する。

「まあ、それは置いておくとしよう。それよりアルフィミィ。
 この写真、展示して売り出すのにお前の許可はあるのか?」

キョウスケの指す写真にチラリと視線を向けたアルフィミィは、特に考える素振りもなく頷いた。

「櫻も同意してますのよ」

「む、そうか・・・」

あんまり納得していない顔のキョウスケだったが、
学園内の学生事情にまで首を突っ込むのも自分の仕事ではないと悟って、
シスコン魂からくる嫉妬感情を無理やり押し込めた。

「・・・だ、そうよン。判ったかしらねぇ、ヒュッケバインちゃん?」

諭すエクセレンとともにその場全員の視線が、さっきから静かに立ち尽くしていたヒュッケバインへ向かう。

「・・・・・・・・・」

「・・・さっきから静かになってンだけどぉ~、電池切れかしらぁ~?」

「ああ、騒動の原因はコイツですの?」

「あ、あるふィみィ嬢・・・」

アルフィミィの視線を受けた途端、そろそろと後退する機動兵器。
その場の関係者の頭上にクエスチョンマークが浮かぶ。

「あんまり目に付くおイタが過ぎますと・・・」

明らかに恐怖で逃げ腰になってると解る挙動だった。

「櫻に言い付けて、スクラップにしますの」

「し、失礼しマしター! 申シ訳ごザイまセーん!」

尻尾の四角い箱を慌てて掴みあげ、人混みの中を器用なフットワークで脱兎のごとく逃亡した。

「・・・何なんだアレは・・・?」

「生徒会の備品ですのよ。生徒会長を『母親』としているみたいですのよ」

「は?」

「櫻の謎汁で誕生した割には、あの子の事が怖いみたいで。ついでに私も避けられていますのよ」

事の推移が読み込めず、エクセレンは出来事を忘れることにした。

「櫻はどうしたんだ? 一緒に居ないのも珍しいな、アルフィミィ」

「キョウスケも・・・・・・。まぁいいですの」

同じ事を繰り返すのも疲れたのか、諦めるアルフィミィ。
そして真面目な表情をふたりに向ける。

「櫻は、今日の櫻はいつにも増して浮かれていましたのよ」

「はぁ。まぁお祭りだしぃ、浮かれる気分なんじゃないの~?」

「いいえ。私の今までの経験上、今の櫻と一緒にいると、酷いとばっちりが来ますのよ!」

力説するアルフィミィにキョウスケ達は顔を見合わせた。








    ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


「ふむ。ずいぶんと人が多いな」

「去年もこれくらいだったと思うが」

ゼンガー・ゾンボルトとレーツェル・ファインシュメッカーが学園祭に来場したのは、
お昼も近い頃で一番込む時間帯だった。

一応、招待状が来ていたので、来賓用名簿に記帳し、特別発行される優待券を貰う。

存在感からして違うので、人混みに紛れても目立ちまくりである。
地元の有名人なので、握手を求められたり、サインを求められたりとなかなかに忙しい。

「櫻嬢は何処にいるのか知っているのか?」

「今年は自由奔放に遊び回っているらしいからな。運が良ければ出会うであろう」

「ならば端から廻るとするか」

と、どこからともなくレーツェルが取り出したモノは、学園祭のパンフレット。
先程入場した時に渡されたのとは違い、すでに色々とチェック済みのモノだ。

「用意がいいな」

「ライに頼んで先に入手しておいた。さらには、嬢達から事前に聞き込んだので、準備万端だ」

「では、行くとするか」

「よかろう、友よ。まずはそこだ」

視線の先には剣道部の出店。焼きそば屋『必ズ殺ス』があった。






Lサイズに紅ショウガを山盛りにしてもらったが、
ゼンガーの手元にあるとそれでもSサイズにしか見えない。

当番だった生徒達は揃って申し訳なさそうな顔をしていたが、
彼らが悪い訳でもないので金を払い、受け取る。

輪切りにしただけの樹に、座布団を乗せた簡易椅子があり、二人とも腰を下ろす。

「それで・・・、奴らの行方は?」

「まだ足取りすら掴めないと連絡があった」

ずぞーーっと、一口で半分程を平らげながら、会話をする。

歩き回っていると人気者のように人に取り囲まれるが、
こうして休憩していると普段忙しくしているため、人々は気を使って近寄って来ない。
ので、秘匿会話に最適なのだ。

「奴の子飼いの者どもは残らず片付けたと思ったのだが・・・」

「一握りの側近だけ引き連れて、未だに逃亡しているらしい」

もう一口で紅ショウガもろともLサイズ大盛を片付けたゼンガー達に、
盆に乗った紙コップのお茶が差し出された。
差し出したのは些か顔色の悪いブリットだ。

「顔色が変だな。ブリット君」

「そうだな」

「えぇ、櫻の罠にハマりまして・・・」

実際はブリットの自爆なのだが、本人は妹の巧みな罠と思っている。

「朝早く飛び出して行ったが、疲れた様子とかは無かったか?」

「珍妙な格好はしていましたが。ミサイルのごとく飛び回ってます」

ため息をついて長兄の問いに答えるブリット。
直後、校内放送の始めを促すザリッとしたノイズの音後、

『ふぎゃー!』『しゃー!』『にゃー!』

『放送室に猫を入れんなーっ!!』

・・・・・・と、校内外問わず大音響が襲った。
来場者も学生も耳を押さえ、何事かと校舎を見上げている。

しばらくしてから、『・・・失礼しました。引き続き学園祭をお楽しみ下さい』と、放送され、再び元の喧噪が戻る。

ゼンガーらの前を、風紀とか警備とかの腕章を付けた生徒がバタバタと走っていく。
口々に「何だ今の?」「ハザードは黒2!」「またあの子はいきなりねぇ」
「ええい、これ以上奴の好きにさせるものか! 警備を強化しろ!」等と通り過ぎていった。

「・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

「・・・くろに?」

「ブラックリストNO.2。櫻の事だよ・・・」

事の顛末は、来場者の持ち込んだ猫が放送室に侵入し、見かけた櫻が連れ出しただけなのだが、完全に濡れ衣である。
この出来事以降、すっかり開き直った櫻は、騒ぎを起こしまくることになる。

「ほう。あやつ以上の破天荒がいるのか」

「NO.1は多分、裏執行部だと思いますがね・・・」

感嘆するゼンガーに呆れるブリット。二人の対照的な反応にレーツェルはフッと微笑した。






    ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


1‐Bおでん屋『人身御供』

「さて、報告の続きといこうか」

「ふぁのふ(頼む)」

「フッ」

よく味の染み込んだ大根を口に頬張りつつの返答する友に、レーツェルは噴きだした。
何処からともなくA4サイズの航空写真を二枚取り出して、ゼンガーに渡す。

一枚目に写る景色は、平地から山裾へと続く位置を拡大したもので、
中央に丘があり下半分は茶色い雑草らしいものに覆われている。
丘のすぐ下にはぽっかりと四角い空き地がある。

「それが元巳子神家があった所だ」

ちくわぶを味わいながら、解説するレーツェル。

二枚目は灰色と黒のモノクロ調で、
細く黒い線がだいたい右上から左下に向かって歪みながら並んで表示されている。
その中央には闇と言っても変わらないような黒い丸があった。

「そっちが特殊機器によって撮影された、地層解析の映像だ」

はんぺんを口の端からはみ出させつつ、説明するレーツェル。

「この黒いのは・・・」

ゼンガーは唸りながら、卵の黄身をおでん汁に溶いていた。

二枚並べると良く判る。巳子神家の裏手にあった丘、特殊機器をもってしても判別出来ないナニカがあると。








    ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

2‐D耐久喫茶『熱帯夜』

普段着の上にどてらを着込み、マフラーを巻く。
二人の入る炬燵の上には、ぐつぐつ煮立った鍋焼きうどんが置かれた。
室温はガンガンに焚かれたストーブのせいで40℃以上にもなっている。

二人は揃って割り箸を割り、鍋に突っ込む。
引きずりだされたうどんをロクに冷まそうとしないまま、はふはふと体内に納めていく。

他の客や従業員の学生達は、戦慄した。

(おいおい、何で平然と喰ってんだ?)

(つーか暑くないんかい・・・)

(連邦議員は化け物か!?)

驚愕に囁くなどとやっているところへ、レーツェルがウェイターを呼ぶ。

(水が欲しいのかな?)

(ウチではお湯しか出せないと言ってやれ)

近寄った生徒に二人はとんでもないことをのたまった。

「「おかわり」」

「「「「「「「「「「えええええっ!?!」」」」」」」」」」







    ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

3‐A激辛茶屋『緋鋭斬』

二人の前には陶器の湯呑みに、程よい熱さの抹茶。
デザートには赤々しい串団子、のような物体。
辛みを練り込んだ朱い団子と更に赤い団子、手元側にはもっと紅い団子。

上からメガ辛ギガ辛テラ辛の、三色団子と言えるのか疑問の残る物体が並んでいる。
近寄っただけで刺すような刺激臭で目が痛くなりそうだ。

ぱく、もぐもぐ、ずずー。

「・・・うむ」

「そういえば、櫻嬢の作る弁当にはあまり辛いものが入ってなかったな」

「本人は辛いものが苦手だからな。頼めば喜んで作るだろうが・・・」

味見などさせたら舌をやられて、その後の料理の味がおかしくなるだろう。
となると今度は、ブリットとキョウスケに恨まれそうなので、櫻には頼みにくいゼンガーだった。

「先程の不明確物体は・・・」

「すでにシラカワ博士に調べてもらったのだが」

三度何処からともなく普通サイズの写真を取り出しすレーツェル。
両開きの鉄格子にぶっといチェーンがグルグル巻きにされ、
古びた南京錠がかけられているといった様が写っていた。

「この奥は数メートル進んで行き止まりだそうだ」

ゼンガーのと違い、レーツェルの団子は甘辛並辛メガ辛となっている。
それの二本目を平らげて抹茶を飲んでから、続きを話す。

「どうも材質不明の壁によって塞がれているらしく、
これ以上の事はいくら調べても無駄だとシラカワ博士が言ったので、調査はそこで打ち切った」

もう一本を食べつつ、報告を終わらせようとしたレーツェルだったが、何か思い出したのか追加する。

「シラカワ博士によると櫻嬢を現地に連れて行けば、何かが判るかもしれないと言っていたな・・・」

「・・・む」

さすがのゼンガーも、この提案には眉をひそめて難色を示す。
最初の頃、櫻を家に招いた時、生活基盤から変わるため、
本人の今までの生活状態から環境に至るまでを、色々問いたのだが…。

母親である一美個人について、はっきりと嫌悪感を示した。

親子仲が上手くいってなかったと思われるが、
櫻がその辺については口を閉ざすため、何があったのかが未だに不明のままだ。

(改めて再度、櫻と協議する必要があるな・・・)








    ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

料理研究会『ケーキ屋さん(裏)』

「い・・・、いらっしゃいまませ。ご注文は、おお決まりでしゅか」

噛んだ。

注文を聞きに来たメイド姿のウェイトレスを、頭から爪先までいぶかしげに眺めてからレーツェルは問う。

「あー。・・・何をやっているのかね? レフィーナ学園長・・・」

顔を真っ赤にした学園長は、手に持っている銀のお盆を、わたわたと振り回しつつ弁明する。
なんとなく、学園長のメイド姿だけで、英国調な雰囲気をかもし出していた。

「あああのですね・・・、これには山よりも長く谷よりも遠い訳がありまして・・・」

ここの喫茶店。長蛇の列があったのだが、優待券により並ばずに入れた二人。

「教職員を手伝いに駆り出せるんですが、巳子神ちゃんがケーキ三ホールで、競り落としてきましてぇ」

「ああぁ~!? もうっ! 黙っていなさいって言ったじゃな~いっ」

どう言い訳しようか口ごもる学園長に痺れを切らして、部員の一人がイイ笑顔で解説する。

この競りは物品のやり取りのみ有効で。
当日の販売物を、競り落とされる職員が受け取る事で、成立する仕組みになっている。

甘味の魔力には、さすがのレフィーナ・エンフィールド学園長も女性でしかなかったかー、とは関係者一同の総意である。

「櫻らしいな。ふっ・・・。はははははっ」

この顛末を聞かされたゼンガーは、肩を震わせてまで笑う始末。

と、そこへ・・・。

「こちらお飲み物でございます」

ケーキは選んでもらうが、飲み物は紅茶オンリーになっている。

飲み物だけは、数人の男子生徒が執事姿で、あちこちのテーブルへ運んでいるのだが・・・。
運んできた生徒を見たレーツェルは、虚を突かれポカンとした後、盛大に爆笑した。

「なっ!? ひ、酷い反応じゃないか、兄さん!」

「ククっ! いや、すまん。よ、良く似合ってるぞラ・・・イ。フッ、くく・・・」

執事姿でゼンガー達の席まで来たのは、生徒会副会長ライディース・F・ブランシュタイン。
レーツェルの実の弟であった。

他の女性客の視線の大半は彼に釘付けになっているが、身内はそうと捉えなかったらしい。

「彼も櫻に競り落とされたのかね?」

ゼンガーの問いに、部員は苦笑いで答えた。

「会長のアヤ先輩が部員なのですが、忙しいので代理に派遣されて来たんです」

副会長兼風紀委員長がこんなところに居るから、悪(櫻嬢とか)が放し飼いにされているんじゃないだろうか。
・・・と、レーツェルは思った。かどうかは定かではない。









    ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

合唱部『いろいろやろうぜ!』


マイクを渡されたゼンガーは、目の前に設置してある物体を見て、精神集中に入った。

たまたま、呼び込みしているところへ興味本位で顔を出したところ、
周囲の生徒達に「是非」と言われ挑戦する事に。

音量ミニマムに設定されたスピーカーの上に、四点足場でアクリル板が置かれ。
その上に安物のワイングラスが逆さまに置いてある。
これを割る、という遊びらしい。

深呼吸をするゼンガーを見たレーツェルは、
どこからともなく取り出した耳栓を素早く装着し、分かりきった結果に十字を切った。

「哀れなガラスに神の救済を・・・・・・」



『チェストオオオオッッ!!!』

ぱバババリーーーん!!










屋上の給水塔の陰で、集まった沢山の鳥達に餌をやっていた女生徒は。
自分の考案した催し物に、怪獣が挑戦することになろうとは想定していなかったと、後に語ったと言う。

















(あとがき)

オリ主登場なし。
・・・のつもりで書いていたのですが。
出て無くても変わらないですね、これは。

12話と13話の補足な流れになっているハズです。

激辛団子は実際にやりました。
ビニール手袋必須で作っていたのですが・・・、
作成中につい指を舐めた仲間が、床をのた打ち回った記憶があります。




[7259] 15 「動き出す宿命 サボる運命」
Name: C-K◆ae02f8a5 ID:27ec9c7b
Date: 2009/12/02 19:39


「素直に招待を受けてくれて、実にありがたい事だよ」

「招待? 卑怯と狡猾な悪企みの間違いなんじゃないですか?」

VIP仕様と言える程ゆったりとした造りの車の後部座席。
スーツを着た壮年の男性と、腕を後ろ手に縛られた少女が向かいあっていた。

「女性を縛り付けておくなんて、ずいぶんと変態的なご趣味をお持ちですね」

「君の明朗快活さは噂に聞いているからね。三階から飛び降りるくらいだとか」

「なるほど、ストーカーを高尚な趣味と言い換えたいんですね。わかります」

 にこにこ にこにこ

「せっかく特注で作らせた車を、散らかされても困るのでな」

「ドアさえ開けていただければ、すぐにでも帰りますよ。
 庶民は高級車に乗る資格がないと身の程をわきまえていますから」

にこにこ にこにこ

「なあ、お嬢さん」

「何でしょう? 変態紳士様」

「私も忙しい身なのだ。腹のさぐり合いは早々に終わらせたいのだよ」

「連邦公安局に退路を塞がれていれば、さぞや忙しいでしょうね」

「・・・ッ!」

ギリギリ にこにこ

備え付けの冷蔵庫からブランデーのビンを取り出して、乱暴に氷の入ったグラスに注ぎ、一気に飲み干す。

「・・・・・・」

「用があるのならさっさと言ってもらえないですか? "強硬派"ハンス・ヴィーパー連邦議員様」

「本題に入れそうで嬉しいよ。巳子神一族最後の生き残り。一美の娘、櫻嬢」

表情には出さないで、笑顔を紳士に向けたまま、櫻は運命のお星様に対して内心でため息を付いた。




















     ◇ ◆ ◇ Sakura View ◆ ◇ ◆

「今日も平和に過ごせましたとさ。まる」

「どこがだよ。朝からあちこちで騒ぎ起こしまくっていただろうが」

パックの野菜ジュースを、ちうー、と吸っていた私にダテ先輩が突っ込んでくる。
表情は『俺が言わなきゃ誰が言うんだよ、はー、やれやれ』ってなところかな。

「まあまあ、リュウセイ。お祭り騒ぎの巳子神さんに何言ったって、糠に釘だから」

「ヒカワ先輩酷ッ!!?」 

「お昼前に中庭の方で大騒ぎになってたぞー。女生徒が一人、三階から飛び降りたとかでー・・・」

「いや、シングウジ先輩。それはだって、風紀委員から逃げるのに仕方なーく・・・」

「飛び降りたって噂になってたの櫻!? 大丈夫? どこか怪我してないっ!!?」

「・・・ゼオラ・・・。怪我してたら、今ココに私が居るのは変じゃないかな?」

「怪音波で、何処かの窓ガラスを割ったとか聞いたッスよ?」

「それやったのゼンガー兄さんだから。「チェストー」って聞こえたでしょう? アラド」

「俺は走り回ってた風紀と警備の奴らが、だんだん可哀相に思えてきたぜ・・・」

「何ソコで皆で、アンドー先輩に同調して頷くんですかっ!?」

だってあれよ? 一発目が盛大な濡れ衣よ?
私は唯、親切心で猫を飼い主の元に返してあげようと思って、よかれと思って行動したのにィ。

「現行犯でとっ捕まえられないと無効だからって、やりすぎにも程があるだろう。お前はっ!」

「女の子が廊下を爆走するものじゃないよ? 櫻ちゃん」

はう。兄夫婦に怒られたダス・・・。



今現在午後三時過ぎ。文化祭は終了四時半までだから、そろそろ外来者も下火になってきて、
校内のあちこちで店をたたむところが、目立ってきた。

ブリット兄さんの剣道部とかは、毎年良い位置に陣取ってるから、今日は二時くらいで材料がなくなったとか。
ゼンガー兄さんと秘書のレーツェルさんは、校内のあちこちの飲食店を席巻していった。

激辛茶屋で、三色団子を六本も食べる新記録を樹立して行ったりー、
耐久喫茶で、鍋焼きうどんを三杯も喰ったりー、料理部のケーキ屋で半ホール平らげたりーと、
色々と伝説を残していった。どんだけ喰ったんだ、兄さん達・・・?

ダテ先輩とシングウジ先輩が噂を聞きつけて団子に挑戦し、火を吹いたとか言っていた。
さっきまで甘味系のジュースがぶ飲みだったものねぇ・・・。





「櫻は小さい騒ぎを起こしすぎですのよ…」

疲れ果てた様子のアリィちゃん。
今日はちょっかいかけてないのに、何で疲れきってんだろーか?

私も考え無しに暴れまわってる、
・・・ように見せ掛けて、明日の突撃ライブのための囮をしてるつもりなんだけど。

「ああ、そうだ。巳子神」

「・・・はい。なんです? ダテ先輩」

「今日はマイの奴、朝からおかしくなかったか?」

「・・・・・・は?」

いや、いきなり何の質問ですか、それ?
困惑した顔だったのか、ラトゥーニちんが話を繋いできた。

「ちょっと今日は午後から様子がおかしかったんです。櫻、朝会ったでしょう? その時はどうでした?」

「むー?」

どうって・・・、何処に行くか話して、
誘ったら多分クスハ汁のせいで拒否されて、ダテ先輩と合流するって言ってた・・・よね?

朝の会話をそのまま伝えると、二人とも難しい顔をして、アイコンタクト。
マイになにかあったのかね?

「今年はクスハの店、凄かったらしいな・・・・・・」

「野戦病院に結局収納しきれないで、廊下まで犠牲者が溢れてたらしいね・・・」

犠牲者って・・・?
アンドー先輩とヒカワ先輩青い顔してるけど、クラスで罰ゲームでもあって、特攻させられたのかな?

「・・・櫻。明日は絶対、私と一緒にいるですのよ」

「アリィちゃん何かあった? 今日は見てなかったけど・・・」

うん。思い起こしても今日は見かけてもいないよね。

「中庭に飛び降りた時、下に居たんですの! 心臓が止まるほどビックリしました! 心配したんですのよっ!!」

「わかった! わかったから。迫って来ないで、近いからっ。心配かけてごめんなさい!」

テーブルをバンバン叩きつつ、般若の形相で迫り来るアリィちゃん。
謝る、あーやーまるからっ! 機嫌を直して。怖いコワいっ!

「先生に怒られても飄々としてるくせに、アルフィミィ相手だと及び腰なのな」

「面倒を掛ける妹で悪いな。アルフィミィ・・・」

兄さんへるぷみー。






     ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

アルフィミィに詰め寄られ、情けない顔でブリットに助けを求める櫻が、いきなり体ごと後ろへ振り向いた。
窓側、校庭に面した方向に視線をさまよわせ、何かを探している感じだ。

不意の行動に、各自で談笑していたクスハやリョウトは、訝しげに彼女の横顔を覗き込む。

「・・・どうしたんですの? 櫻」

「ああ、うん・・・」

アルフィミィの心配そうな問いに、確信の持てない憶測のように口を開く。

「えっと・・・・・・、んー? ・・・フォ、ルカ・・・、ちゃん?」

「正解だ」

「「「「「「おどわぁっ!?!?」」」」」」

皆の視線が櫻に向いていたため、さっきまで誰も居なかった彼らの背後。
ひとりの青年が今まで居たかのように、そこに存在していた。

リュウセイとタスクとアラドは椅子ごとすっころび、
リョウトやブリットは距離を取って構えを、クスハとラトゥーニとゼオラは驚愕したまま硬直している。
平静なのは櫻とアルフィミィくらいだ。

「あれ? あっちに居たんじゃないの?」

「気配は窓側へ飛ばしたがな。ここで穏行していた」

「それと、アリィちゃん。それ危ないと思うな」

「いきなり背後に現れないで欲しいですのよ・・・」

相手に背を向けたまま、突き出された左手にある食堂備え付けのフォーク。
フォルカによって、腕ごと止められていた。

「刺殺が第一選択か。悪くない」

「失礼しましたですのよ」

離された腕を軽く振って、食器をケースに戻すアルフィミィに、特に反論もしないフォルカ。

「・・・よく反応したなあ、アルフィミィ」

「つーか・・・、殺意バリバリなのにスルーっスか・・・」

「櫻の知り合いなの?」

文字通り、降って沸いた青年に集中する視線。全部シカトして、自動販売機でコーヒーを買って飲み。

「アレはフォルカ。櫻専属のストーカーですのよ」

  ぶふ――――ッ!!

唐突なアルフィミィの暴言に、茶霧を噴いた。

「いやいや、アリィちゃん。違うから。私のバイト先の上司っつーか同僚っつーか・・・」

なんだっけ?と質問する櫻に、そんなもん俺が知るかとぶちまけたコーヒーを片付けるフォルカ。

「私、櫻がバイトしてるなんて初めて聞いた・・・。何のバイト?」

ゼオラが疑問のある者を代表して、尋ねる。

「修羅・セキュリティー・サービス(以下SSS)」

「「「「「「「ええヱえええええっ!?!」」」」」」

その辺のコンビニですよと言うような気安さで、問題発言をカマす櫻に驚愕で持って返す皆。

「おまっ! 優良物件じゃねーか?! 卒業後の進路としちゃあ上位・・・・」

「何のコネだ? 俺にも紹介してくれ」

「荒事なのかい? 巳子神さん、女の子としてはそれはどうかと思うなあ・・・」

進路相談やら進路指導が差し迫る二年連中が、真っ先に反応する。欲望も混じるが。
さりげなく妙な発言を飛ばしたタスクをじろりと睨み、ブリットは妹の説明で足りない補足をする。

「ゼンガー兄さんが、社長と知り合いだからソレの紹介だろう。そいつ俺より上だし・・・」

フォルカの力量を理解しているブリットの言葉に、「お~」「へ~」と感嘆の声も上がる。

「まあ、心配性の兄さんがつけた私の護衛なんだけどねー」

それを聞いて半数はブリットを見、"櫻の兄ならソレが当然かもしれないな"と同意見を出して頷いた。

「まてっ! なんでソコで俺を見るんだ?!」

「自覚無い奴だなあ。なあ?」「「「「「「うんうん」」」」」」














     ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

メンバーでだべっている所へマイが幽鬼のように憔悴して現れたのは、最終閉店時間まで30分になってからだった。

「櫻ッ!!」

「へ?」

ホラー映画のような焦った必死の形相で櫻に掴み掛かる。

「どうしてッ! 何でよッ!?」

「は? マイ、ちょっと? なに!?」

がっくんがっくん揺さぶられる櫻と、半泣きで「どうして」「何で」を連呼するマイ。

誰が見ても混迷を極める光景にしばし呆然としていたリュウセイ達だったが、
真っ先に我に返ったラトゥーニが二人の間に割って入った。

「マイ? 落ち着きましょう! ね?」

肩を掴んで顔を覗き込む。
焦点の合わない瞳をのろのろ上げかけた彼女の動きは、いきなり硬直した。

懐から響きだされた"Piー! Pi! Pi! Pi!"という電子音によって。

「い、・・・いやああああああっ!!」

悲鳴を上げるなり、ラトゥーニを強引に突き飛ばして離れる。

「ど、どうしたんだよマイ?」

心配して近付こうとしたリュウセイの前にフォルカが立ち塞がった。

「待て、近付くなら携帯を切れ」

「は?」

「フォルカちゃんの指示通りにして下さい、ダテ先輩。むしろ、ココに置いてからで」

フォルカの胸ぐらを掴み掛かろうしたリュウセイをやんわりと止めた櫻は、
自分の携帯電話を取り出し、電源を切りテーブルの上に置く。

突き飛ばされて困惑していたラトゥーニも携帯を放り出してマイへ近寄る。
おそるおそる近寄って、音が鳴らないのを確認すると、マイの方が泣きながら飛びついて来た。

すぐさまリュウセイもそこに加わり、号泣するマイを慰めはじめる。
腰を浮かせかけたゼオラ達は気を使ったのか遠巻きに微笑ましくながめていた。

櫻とフォルカだけが険しい顔をして。

「どうするつもりだ?」

「マイを助けても他の人に被害が出そうだよ。・・・行くしかないね」

首の後ろ襟から、薄い碁石みたいな物を取り除いた櫻はフォルカへと放り投げる。

「フォルカちゃんの隊、全員下げて」

「・・・しかし」

「どーせどっからか誰か監視してるよ。遠隔で全員御陀仏になるのも却下」

「・・・だがな・・・」

「 下 げ な さ い 。貴方の隊はここで他のみんなの保護」

「・・・・・・、分かった」

櫻のはっきりとした命令形に、
苦渋の決断を迫られた司令官のような顔で首元のマイクへ小声で命令を出す。

「「お前(マイ)っこれッ!?」」

マイの着ていたブレザーを捲ったラトゥーニとリュウセイが絶句した声に、その場全員の視線が集中した。

制服の腹部に取り付けられた、幅広のベルトにマジックペン大の筒が数本、
無数のコードが伸びる小さな箱、そこに取り付けられた電子ディスプレイには、『受信可』の文字。

どう見ても遠隔式の爆弾だった。

ドラマや映画などでしかお目にかかれない代物に全員が凍り付く。

櫻とフォルカだけはやっぱりね、といった顔だったが・・・。

「こ・・・これっ、わた・・・しぃ、い、いきなっ・・・」

未だ泣きながら途切れ途切れに語るマイ。
落ち着きはらった櫻は、彼女を抱きしめて背中を軽く叩く。

「うんうん、怖かったね。もう大丈夫だよ。大丈夫、落ち着いて、ね?」

何度か言葉を繰り返し、静かになったマイに、ウェットティッシュを差し出すアルフィミィ。

「・・・ありがと・・・」

「いいえ」

「・・・ゴメン櫻。私、・・・それ、で・・・」

「あーいいから。分かったから。泣かなくて平気だから」

櫻に対して口を開いたものの、言葉に詰まって、また涙を零すマイを制す。

「ちょっとゴメンね?」

腰を落として、マイの腹部に手を添え顔を近づける。

「゛停止せよ゛」

発した直後にディスプレイが真っ黒になるのを確認して振り返る。

「櫻? なにをしたんですの?」

「停めた。フォルカちゃん、爆弾処理」

「俺は無理だぞ」

「なら、出来る人呼びなさいよ」

安堵してぶっきらぼうな櫻に対して、今度はリュウセイが突っかかる。

「マイは平気なのかよっ! お前何をした!?」

──が、寸前で櫻の前に立ちふさがったアルフィミィに睨まれ、止まる。

「この手の事はSSSでバイトしている櫻や、そこのフォルカが適任ですのよ。櫻に怒るのは筋違いですの」

実際はバイトとは違うのだが。

「とりあえず、マイは静かに座ってて。後でバラしてくれる人が来るから」

手近な椅子へと座ったマイへゼオラやクスハが抱きついて、
赤くなった目元へ濡らしてきたハンカチをあてたり、慰めたりと元のかしましさを取り戻す。

リョウトやブリットといった、正義感の強い男性陣はフォルカへ詰め寄った。

「どういう事ですか! これは」

「SSSがここに居るから狙われたのかっ?! マイを巻き込んで!」

「兄さんもヒカワ先輩もちょっと待って。フォルカちゃん関係ないから」

櫻とアルフィミィがブリットらを引き離す。しかし納得のいかないブリットの矛先は妹へも向かう。

「櫻!お前さっきから落ち着いてんのは何だ! 友人がこんな目にあって悲しくなったりしないのかっ!!」

「ブリット!その言い方はありませんの!」

「ブリット先輩、ちィっと落ち着くっスよ」

「落ちつこう、ブリット君。櫻ちゃんにだって理由はあるよ」

「お前達には聞いてないッ! だいたいアルフィミィも何か知ってるなら言えば・・・」


「黙れクソ兄貴ッ!!」

 どがっ べしぃっ


・・・・・・静寂が降りた。




兄の背後からヤクザキックをかまし、食堂の床に蹴り倒した妹がいた。

「原因が他にあるなら私だって喚き散らしたいわっ!」

ぐりぐりと兄の背中を踏みしだく激昂した櫻に、周囲の友人達は唖然としたままだ。

ここにいるメンバーが持つ櫻の第一印象は、゛温厚゛である。
学生として付き合いの長いマイ達やゼオラ達でさえ、怒ったとこるや泣いたところを見たことがない。

その温厚人間が粗野な口調で、兄に暴力を振るっている。
声をどうやって掛けたものかと、萎縮気味だ。

ちなみにブリットだが、転倒した際に顔面強打したらしく、ピヨっている。
ソレを今度はぶちぶち呟きながら、げしげし蹴り始めたので、唖然としていた友人達は流石に止めに入った。

引き剥がされてもなお、ぶちぶち呟いていた櫻だったが、観念したようなため息をつく。
そしてマイに向かって頭を下げた。

「ごめんなさい!」

「・・・え? え?」

「なんで巳子神が謝るんだ?」

「私のせいだから・・・。私の身柄を欲しがってる人達がいて、それでマイに酷いコトしたと思うの」

「・・・そう言われれば、櫻を裏門まで連れて来れば外してやるって・・・」

「裏門ね。分かった」

言うなりバサリとマントを翻し、食堂から出て行こうとした。
――のを、アルフィミィは腕を掴んで引き止める。

「さ、櫻?! どうするつもりですの?」

「そりゃもちろん。蜘蛛の巣に掛かりに行くに決まってる」

「・・・行くのか・・・。はー、後で大将に何を言われることやら・・・」

「無事に戻れたら、私から社長に言うよ。フォルカちゃんの隊、裏門から人を遠ざけておいて」

「やっておく」

「まてまて! 巳子神が行く必要あんのかよ! マイの爆弾は停まったんだろう?」

「相手がまた爆弾を、別の学生に取り付けたらどうします?」

「待って櫻! 私服警官とか櫻のお兄さんとかいるんでしょう? そっちに任せるとか・・・」

「『すでに校内に爆弾をしかけました。遠隔で爆発させるぞ』とか言われたら?」

「「「・・・・・・」」」

自己犠牲精神で、誰にも迷惑を掛けたくないから自分が行けばいい。
――と櫻は思っている、のは間違っているから色々と引き止めようとする友人達だったが…。

サクラの考えはまったく違っていた。

ここで学園に迷惑が掛かる
     ↓
学園祭が中止になる
     ↓
突撃ライブも出来ない。

手間と時間と貸し借りが絡むモノだけに、ここで無駄にするのがもったいない。
・・・・・・という理由だけである。

友人達の自分のためを思ってくれている気持ちは本心から嬉しいが・・・。

あと、いいかげん自分の血筋に関わるゴタゴタに、ケリをつけておきたいのもある。

(遺産なんか欲しがってどうするつもりなんだろう?)













     ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

(なんとなーく、朝から嫌な予感があったのはこれか・・・)

まともに身動きがとれない自分を恨めしく思い、櫻は流れに任せるしかないと今は諦めた。
地の利はあちらにある。

か弱い自分では、誰かが手を貸してくれないことには檻の中から逃げ出すことすら難しい。
敵は目の前の一人だけではない。

この車に後四人、狡猾親父の部下がいる。
それを振り切ったとして、最悪相手は銃くらい持っていそうだ。

フォルカに教えてもらった、付け焼き刃程度の武術では有利になるとは思えない。
残る手は、使うことすら意識の奥に封じた最後の手段だけ。

(ヤな女思い出すから、使うのは避けたいなあ・・・)

理解はしているが、表に出すと制御不能な感情を。

昏い想念のようなモノを。

鎌首をもたげはじめたドロリとしたナニかを、無理やり押し込む。

『・・・お・・・・・・が・・・そ・・・っ・・・』

「・・・ちっ」

浮かんだソレを振り払うように、首を振る。
舌打ちしたのが聞こえたのだろう、ヴィーパーの顔に愉悦が浮かぶ。

きっと自分が取れる手段を全部使いきったのだろうと思っている。

(・・・後でその顔歪ませて泣かす!)

次兄に聞かれたら、言葉使いに説教が入りそうな誓いを立てる櫻だった。















     ◇ ◆ ◇ 修羅セキュリティー・サービス  ◆ ◇ ◆

「なんだとっ!? 目の前で易々と攫われただと!」

アリオンは上司の苛立ちを隠せない電話での応答に、始末書を書く手を止めて振り向いた。

「貴様は何をしていた? っち、なに!? ・・・そうか。
 だが仕方ないとは思うがそれで対象を見失いました。ではすまされんぞ!」

珍しい統括部長の激昂に、所内に残る人員の視線が釘付けである。
今、外へ仕事に出ている隊は三つ。個人警護が二。残りは会場警備のはずだ。

会話の内容から察するに、個人警護に出ているフォルカか誰かの隊がしくじったらしい。

「わかった。とりあえずお前はそれの後始末。フォルカの隊は警護者の確保にむかわせろ! 私も行く」

叩きつけるように電話を切った統括部長の背後、ソコに立つ人物を見て荒くれ者の群達もギョッとなる。

「待て、アルティス。それは儂が行こう。お前はココに残り、何かあったときのために待機だ」

がしりと統括部長、アルティス・タールの肩を掴んだ巨漢。
茶色の制服の上に着る専用のコートに身を包んだSSSの社長、アルカイド・ナアシュがいた。

「社長自ら行かなくても・・・」

文句は言うが、アルカイドに忠実なアルティスは各部に指示を飛ばす。

「何、あの娘に最初に関わった者として、顛末くらいは見る責務はあろうて・・・」




























(あとがき)

ブリットの扱いが酷いのが私のジャスティス。

っていうか感情の起伏を描くのって難しいですね。うまく表現できなくて反省。




[7259] 16 「禁断の扉のカギ」
Name: C-K◆ae02f8a5 ID:27ec9c7b
Date: 2010/01/02 22:07
 ゆうらりゆうらり
  ゆれるくらやみ
   よどみみとおせることのないヤミ



 ゆうらりゆうらり
  みずのような ちがうような
   ヤミのなか いくつものカゲが



 うまれいでて うごくこともなく
  ゆうらりゆうらり



 からちからち きゆりきゆり



 ひとつめが ふたつめが
  ふしていたかおをあげる



 ぎいちぎいち ごおるごおる



 ひとににたものがある
  いぎようのままただようものがいる



 がるらがるら みしりみしり



  ゆうらりゆうらり
   かげがゆれる



  ゆうらりゆうらり
   かげがわらう



  ゆうらりゆうらり
   かげたちがめざめる



   ゆうらりゆうらり
    あかいひかりがすいめんかでともる






















         ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆

ゼンガー達がさらわれた櫻及び、攫ったヴィーパーを追うことが出来たのは、
誘拐犯に遅れる事、一時間以上も経ってからだった。

これから悪人に利用されるというのに、意気揚々と行った櫻。
何も出来ず見送るしかないリュウセイらだったが、櫻が去った後、慌ててあちこちに連絡を飛ばした。
クスハは(裏執行部繋がりを隠して)イングラムに話を通し、
それから上層部のショーン教頭権限で、よけいな騒ぎが飛び火しないように手を回した。

アルフィミィとブリットがゼンガーとキョウスケとアクセルに連絡し、
秘書とパートナー連れで来た二人に、かくかくしかじかと説明。

そこへ強面のアルカイドが割り込み、アクセルが到着した。

爆弾はイングラムがあっさりとバラした。

「フフフ、昔とった杵柄というやつだ」

(((((この人の経歴は謎だ…)))))

レーツェルとエクセレンは、パニクって恐慌状態になっていた生徒達のケアをするために残る事になった。





SSS所有のバン二台。
片方にフォルカ隊、片方にATX家三人とアルカイド社長と何故か居るDr.シラカワ。
アクセル兄妹と合流したイルムガルドがパトカー。

当初不明だった行き先については、ゼンガー&アルカイド&シュウが口を揃えて断言した。
かつて櫻が住んでいた名も無き村である。

現在は住民が居なくなり、廃村となっているらしい。


シュウが持ち込んだTV付き相方向通信システムにより、三台車内での会議が可能となった。

そこでイルムガルドが、いきなりとんでもないモノをぶちまけた。

「離婚届、だと?」

『ヴィーパーに関連する公文書を漁ってて見つけたんだが、百聞は一見にしかず。まあ良く見てみるがイイぞ』

TV画面に映された紙には、夫:ハンス・ヴィーパー。そして、妻:巳子神一美の文字があった。


『・・・・・・・・・・・・』(←フォルカ)

「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」(←ゼンガー&キョウスケ&ブリット&アルカイド)

『『・・・・・・・・・・・・』』(←アクセル&アルフィミィ)







衝撃に静まりかえる車内。







「・・・・・・つまり、親が娘を脅迫してまで攫ったと・・・。ふ、ふっざけるなあっ!!」

車内にガァンと響いた音と叫びが、その場にいた全ての人心の総意だった。
噛み締めるような怒りを露わにするブリットの肩に、キョウスケは手を置く。

「ハッスルするのはまだ早いぞ。ブリット」

平静な兄の態度に八つ当たりしかけたブリットは、キョウスケの目を見て体をこわばらせた。

何時にもなく眼が笑っていなかった。
いやもう、ブチギレしていると言ってもいい。瞳の奥に羅刹が宿っていた。

アルカイドとゼンガーに至っては、怒級のオーラが噴出していた。

画面越しにも見える。
本能に警鐘がなりひびく光景に、この時ばかりは犯罪者の末路を哀れに思うフォルカだった。



















         ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆

ほぼ同時刻、先行しているヴィーパー一行の車内でも同じ事が暴露されていた。

「・・・・・・」

「どうしたね?あまりの衝撃に声もでなかろう」

「・・・・・・」

「キミが生まれた直後くらいにしか顔を会わせた事がなかったからね。覚えは無かろうが…」

「・・・・・・・・・」

櫻の内心はこうだった。

(そんなの考えもしなかった・・・)

彼女の親と云う概念は『母親』のみで終わっているのだから。

『父親』がある。と云う考えに至らなかったのは、仲睦まじい両親の事例を見たことがなかったためである。

そもそも彼女の育った環境が世間一般の常識からかけ離れている。

六歳までは巳子神一族の村。
電化製品もなく外界と隔離されたかくれ里みたいな秘境。
分家は老人ばかりで、本家は当主と娘のみ。

村を出てからは、兄三人と隣家の兄妹。
家族の考え方はあっても、親子の考えには及ばない櫻だった。

故に感想を挙げるならば・・・・・・

「それがなにか?」

「・・・なに?」

という返し方をせざるを得ない。
ぶっちゃけどーでもいい事に分類される話である。
親の必要性を感じなかった今までの生活からは。

「ゼンガー等、赤の他人よりはよっぽど近い存在であろう」

「勝手に妄言を捏造しないで下さい。ゼンガー兄さん達よりは、貴方の方が赤の他人じゃないですか」

「・・・・・・(睨み)」

「・・・・・・(受け流し)」

「子は親に従うものであろう」

「生憎と親に愛情を貰って暮らしたことがないもので。親に従う理由が見いだせませんね」

すでにとっぷりと日が暮れて、夜の支配する車外の光景をチラ見しながらイヤミを返す。

「一美の奴め、育児放棄しおったのか」

「あの人には最低限の事だけ教えて貰いましたから。後は恨まれたくらいですか・・・」

胸中に鉄錆を流し込まれたような苦い重さが蘇る。
思い出したくもない最後の・・・・・・・・・。

重さを消し去るように唾を飲み込み、対面で何とも言えない顔を晒す遺伝子提供者を見る。

「な、なんだね・・・。睨みつけたところでわ、我が有利なのは・・・か、変わらないだろう」

フフンなどと、胸を張る男を見据え、内心落胆する。

こんなのが親だとは・・・・・・。
虚勢の父親と傲慢な母親。最悪な家庭で過ごす羽目にならなくて本当に良かったと。

ゼンガー兄さんと、アルカイドの叔父さんに感謝してもしたりないと思う櫻だった。





















         ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆

追う側。

SSSのバン内で追いついた後の対処法について、あれやこれやと議論しているときだった。

「・・・そもそも、その巳子神家の遺産っていうのはどういったモノなんだ?」

「そうですねえ・・・」

キョウスケの呟きにアルフィミィとアクセルも同意して頷く。
疑問視していたが、遠慮して言い出せなかったのだ。

これに推論の域を出ないのですが、と答えたのはシュウだ。

「とりあえずは地球人の枠を越えた何かじゃないでしょうか?」

「・・・地球・・・人?!」

「まあ、あの村にあるものは・・・。存在は確認してはいますが、調べられないので未確認としましょう」

胸ポケットから取り出したボールペンを、ピコピコ振りながら解説を始める。

「その代わり、周辺の村や町の歴史を紐解くと面白い共通点がありますね」

「鬼が出るとかか?」

「゛口笛を吹くと山から天狗がやってきてお前を取って食う゛とかですの?」

「なんでお前はそんなに具体的なんだ・・・」

ウチの妹は櫻に毒されてきたなーと、実感するアクセルだった。

「具体的な年代は不明ですが、星が落ちただの神が降りただの言い伝えがありまして。
 まとめてしまうと何かが落ちたと記録がありますすね。
 各所の言い伝えなどから方角を特定しますと、交わる点には櫻嬢がいた村があります」

「それじゃあ櫻の祖先は宇宙人か」

「んなバカな・・・」

「一概に違うとは言い切れませんがね。
 たとえば例の村周辺の有力者の家には、少々毛色の違う能力を持った人がたまに生まれるそうですよ。
 視力が3あるだとか山の声が聞こえるだとか。心当たりありませんか?」

「・・・夏旅行の時のアレですか?」

ブリットが思い出したのか、手をポンと叩いてシュウに聞き返す。

「櫻、クロガネやハガネとよく会話してますのよ。井戸端会議って言ってましたけど・・・、あれも?!」

「ああ。それが櫻の能力なら、虎騒ぎや熊騒動の態度も納得する、これがな」

「それが櫻嬢の能力でもあります。反面弊害もあるわけですが・・・」

「弊害? 何か日常生活に問題が?」

「彼女の視覚は動物を『動物』、つまり生物的な物として捉えていません。
 動物たるものは人間を除く全てを、機械的な何かとして視認しています」

アルフィミィはだいたい一緒だったからこそ、そんな場面をいくつも見てきた。
最初は一方的な受け答えをしていたから、変な行動を取る人物だと思っていて。
何年か経ったら、櫻はそういう癖がある特異な者だと慣れきっていた。
猫や犬、カラスや鳩に至るまで全て普通に”会話”していたのだと。

(どうしてそれを『櫻にとって普通の行動』だったと理解しなかったんですの・・・)


ブリットは思い出す。カラスの事を『リオン』といっていた妹を。あれはリオンと言う名の機械のことだったのかと。


キョウスケはヒグマ騒ぎのときに捕獲され連れて行かれるクマに対して
『ばいばい。スレードゲルミル元気でね』と手を振っていた妹を。
名前を付けるほど、懐いたのかと思っていたのが間違いだと気がついた。
クマを危険な動物と認識しないからこそ、行動を共にしていたのだと。

「あと、彼女には機械に有利に働きかけるという能力があります。爆弾を止められたのもおそらくこれでしょう」



「ところで・・・。なぜシュウはそれを知っている?」

「櫻嬢に相談されたからですよ。詳しそうだから、と」

先ほどから怒りのオーラ立ち昇るゼンガーに、
上から目線で睨まれたシュウだったが、威圧感も気にせず答える。

キョウスケとブリットはそれを聞いて内心ヘコんだ。
・・・が、自分達が相談されても、きっと夢物語と一蹴しそうで口には出さなかったが。



「あと、私も相談したいですのよ。これ・・・」

アルフィミィは一枚の写真を取り出した。
ソレには校舎の壁をバックに、飛び降りた瞬間の櫻が写っていた。
マントは首元から上に向かってはためいているが、スカートは不自然にめくれあがってはいない。

「・・・またあいつは無茶をしやがって」

「戻ったら説教だな・・・」

「ほう・・・、これはこれは・・・」

呆れるアクセルに決意を固めるキョウスケ。シュウだけは口元に面白そうな笑みを浮かべて。

「変ですのよ」

「なる程、興味深い」

確認するアルフィミィと納得するシュウに、話の見えない者達は疑問符を浮かべる。

「これは新聞部が撮っていたので、ネガを処分させ、取り上げてきましたんですのよ」

「『・・・おいおい』」

ブリットとフォルカが突っ込んだが、華麗にスルーされた。

「問題は櫻の背後ですのよ」

言われて気付いた者達は、一斉に注視して絶句した。

写真の中の櫻の背後、校舎の壁に映っている影は、ヒトの姿をしていなかった。

肩から伸びる二つの長い突起、二倍位に肥大化し角張った腕、
ガッチリと着込んだ装甲のような胴体、腕と同じく鋭角が目立つ脚部。

人型ではあるが、とても女性の影に相応しいとは思えない。

しかし、その形状にシュウだけは見覚えがあった。
バーニングPTストーリーモードのボスキャラとして、彼がデザインした機体のひとつ。

櫻の操る機体の前身、グランゾンに酷似していることを・・・。



















         ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆

「あのさー。いい加減腕外してくれません? 肩が外れそうなんですが・・・」

空が白み始めた頃、目的地に到着して車から降ろされた櫻の第一声である。

ヴィーパーに付いていた四人の黒服に声を掛けたのだが、
「ちょっと待て」と言ってクライアントに確認もせず、縄を外してくれた。
ちょっと驚いて、「いいんですか?」と不思議そうに聞き返す。

「一応忠告しておくが。ウチのボスは銃を持っている。おかしな真似はするなよ?」

「はい。ありがとうございます」

ぺこりとお辞儀をすると、四人とも苦笑いをして「可笑しなヤツ」と呟いた。




振り返って生まれ故郷を見渡す櫻の眼には、廃村化して随分経ったのだろう。
無惨にも、荒れ放題となった光景が広がっていた。

かつて、櫻が村を去るときには七軒あった家屋は二軒に減り、それすらも屋根から雑草やツタが伸びまくりだ。
壁が崩れている家屋もあり、内部にも雑草がはびこっているのが見てとれる。

田んぼだった所には雑草と蔦が絡み合い、こんもりとした大きな茂みを形成しているモノもある。
自然に飲み込まれる寸前の平地であった。

ただし、主要道路と言うべき村の中央を東西に横断する部分だけは、踏み荒らされたのだろう。
草が倒れていて、十分人が通れるようだ。


感慨深く草ぼうぼうの風景を見ていた櫻だったが、ヴィーパーに二の腕を強く引かれよろけた。

「感傷に浸る時間は終わりだ。さっさと来い!」

「ハイハイ。引っ張らなくてもイキマスヨー」

黒服を一名連れて、目の前に手に入るものがあるのが嬉しいのか、
笑みを浮かべた、ヴィーパーに引きずられていった。



















         ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆

「お前等この後どうするよ?」

残った三人の黒服、ヴィーパーの側近である彼らは、
煙草を吸ったり車に寄りかかったり座り込んだりと、気を抜きまくっていた。

「ボスもアレだよなー。なんだよ『大いなる力』って」

「どっちにしろ後が無いんだしよー。さっさと覚悟決めりゃあいいのにな・・・」

咥え煙草でケタケタ笑いながら紫煙をくゆらせる者に、他の二人も同意するように笑った。

「あんま、ボスも殺しだけは勘弁して欲しいぜ」

「逃亡幇助罪が殺人幇助罪になるのは、正直避けたいところだな」

「それにしちゃあさっきの嬢ちゃん凄かったケドなー」

「あー、アレな。友人の腹に巻かれた爆弾に顔色一つ変えネェで、何かしたと思ったら・・・」

「こっちの遠隔装置までウンともスンとも言わなくなったからな。ナン何だありゃあ」

「無事に戻って来ると思うか?」

「さァーなぁ」

「でよぉ・・・お?」

何かを言いかけた車に寄りかかる黒服の視界が、ゆらりと揺れた。

「んだ? 地震か?」

「あン? 揺れてねェだろーよ」

座り込んだ者が否定したところで、下からかすかに突き上げる震動に眉をひそめ、立ち上がる。

「揺れたな」

「まあ、地震ごときで今更って感じだがよー・・・ッ!?」


       ─── ゆうらり ゆうらり きゆらり きゆらり ───


三人とも怪訝な顔を見合わせる。
足元から地震の鳴動とも違う、何か別の音が聞こえたからだ。

「なんだ、今のは・・・」

「金属音みたいだったが、なんかこの下に居るのか?」


その瞬間、ガヅンと高速でぶつかった交通事故のごとく音が響く。
底面からくの字に折れ曲がった、自分達が乗ってきた車が中空を舞っていた。
コナゴナになった窓ガラスの破片が、スローモーションのように空にぶちまけられていく。

いや、それを認識した自分達も宙を舞っていると気づいたのは、
地面と空が交互に見えた後、左肩から地面に叩きつけられた黒服の一人だった。

一瞬遅れて、ガッシャ──ン!!!と轟音を立て、鼻先の地面に横向きになった車が落下。
衝撃で更にガラスやら抉られた土が飛び散るのを、反射的に右腕で顔を庇う。

「・・・い・・・いったい、なに・・・が・・・?」

口の中に鉄錆な味が広がる。
肩や地面に叩きつけられた時の激痛で、まともに動かない体をどこか遠い現実に感じながら、
視線だけを上に向ける。そしてそれはソコに見えた。

自身の前に横たわる車が視界を遮っていたが、それをもって余りある巨体。

       GIIIIIIIIIIIIIIIIIII!!!!!

唸りとも、軋みとも取れぬ音を周囲にバラまきつつ、大型の倉庫ひと棟もありそうなソレ。
朝日の中で、銀色のボディに光を反射させながら、体ごとこちらに向き直った。

激痛よりも恐怖が体躯を支配する。這ってでも逃げようとする意志。
自由にも動かせない体震える腕見開かれる瞳足とも腕ともつかぬ四肢にゴミのごとく吹き飛ばされる車だった残骸次は自分の番視界全てを占める銀迫る唸り轟く軋み振動する地面振り上げられる巨躯全ては死に全ては滅びる。


哀れな男の叫び声を掻き消す激震。


















(あとがき)

説明ばっかりな回。いままでの設定をいくらか公開。
次は最初からクライマックス・・・・・・・に、なれればいいなあ。
相変わらず文章がヘタレです。読みにくくてごめんなさい。
 あと全員しゃべってない( ̄○ ̄;)


※1/2:微修正





[7259] 17 「開封」
Name: C-K◆ae02f8a5 ID:27ec9c7b
Date: 2010/01/02 22:08





元巳子神本家のあった場所の裏、不自然な傾斜をもつ山。
四階建てのマンションがスッポリ入りそうな釣り鐘型の丘。

ぽっかりと人がなんとか通れるだけの横穴があった。
かつては鉄柵にチェーンが雁字搦めに巻いてあり、
南京錠がついていて、注連縄もぶら下がっていたのだが。

全て撤去され、すえた匂い漂うひんやりとした空気が訪れた者を迎える。
此処へ一人の女子を脅迫してまで誘拐し連れて来た、
脱税やらその他の容疑で指名手配の掛かってる元連邦議員ハンス・ヴィーパーと側近黒服一名は、困惑していた。

巳子神家の遺産のカギである巳子神櫻がつい先ほど、
唐突に「ッ!?」と小さな悲鳴を上げ、頭を抱えてうずくまってしまったからである。

それでも腕を取って強引に立たせ、背中を小突いて促すとふらふらと歩き出す。
うつむいていて、髪が垂れ下がり、柳幽霊みたいに不気味さを醸し出しているが。

「どうかしたか?」

「いえ、嫌なことを思い出しただけです。気にしないでください」

不審に思って側近が聞くが、先程までの覇気もなく、ボソボソとした返答をする。
薄暗い洞窟内で隙をみて逃亡するつもりなのかと、必要以上に側近が緊張する中、
マグライトを掲げたウィーパーが通路の奥を照らし出す。

「さて、巳子神家の血でもって、禁忌の扉を開いてもらいましょうか」

マグライトに照らされた入り口より五メートル先、自然にはありえない灰色の壁が洞窟を塞いでいた。

疑問に思って側近が近づき、手を触れてみる。素で固まったコンクリートのようなザラザラとした感触がある。

「先生、これコンクリなんじゃないですか?」

「そう思うのが素人なのだよ。この先は現代科学では暴くコトが出来ない技術の宝庫でね」

両手を掲げ、天を仰ぐ仕草でそれを歓迎する口調なヴィーパーに、側近は自分の考える事じゃないと一歩下がる。
代わりに後ろに立っていた櫻を突き飛ばすように前に押し出す。

ふらふらと前に出てきた櫻は、しばらく壁を眺めてから後ろへ振り返った。

「どうすれば?」

「巳子神の血筋でなければ先へ進めんのでね。扉を開けてくれればいいのだよ」

「扉を。・・・開ける、ねェ?」

取っ手も無ければ扉になりそうな隙間もない壁を、右左に首を振り見つめていた櫻は、
やがて雑巾がけでもするように、壁に触れた手を大きく振った。

瞬間、何の音もなく壁が消失。人一人通れる程の空洞が空いた。

「お、おおおおお!」

歓喜の声を上げつつ、自分を押しのけて穴?扉?に突撃して行ったヴィーパーを冷めた眼で見送った櫻は、
この隙に逃げるのではと警戒する側近を見やり、穴を指さした。

「行かないんですか?」

「あ、ああ・・・。君が逃げないという保証もない。先に入りたまえ」

「・・・逃げたら後ろから撃ちそうですよね。あなたたち」

うんざりした表情で穴を潜る櫻に続いた側近は、
中から溢れる淡い光で照らされた足元を横切った影に、違和感を感じた。













直径10mくらいのドーム状。穴をくぐった先にあった光景にヴィーパーは眼をうばわれていた。

中央には空中に固定されてる、縦三mはあろうかという雫。
朝露が落下する瞬間に停止した、と言った方が分かりやすいだろう。

周囲の壁は外壁と違い、淡い蒼をほんのりと放っている。
綿帽子のような光の粒が壁から放出され、室内を漂ったのちに雫に吸収されているのか、内部からも淡い光を灯していた。

「これが・・・」

「そう、これが巳子神家の遺産! 我々に道を示す希b・・・ッ?!」

目を見開いて絶句する側近を振り返り、両手を広げて演説しようとしたヴィーパーが何かに足を滑らせてすっ転ぶ。

前後から失笑が零れる中、真っ赤な顔で立ち上がったヴィーパーは滑らせる原因となったモノを掴み上げた。

「なんだこれは、わ、我を馬鹿にしおって・・・」

「・・・布?」

ぴらりと広げられ、マグライトの白い光に照らされたソレは、裾に椿の染め絵がされた浴衣だった。
きちんと結ばれた帯も腰に引っかかっていて、まるでさっきまで人が着ていたようだ。

「これはまさか・・・」

「ご対面」

事実だけを述べた棒読みの声が、呆然と思い当たる節のある浴衣に呟いたヴィーパーに届いた。
いつの間にか雫を挟んだ反対側の壁際に移動していた櫻である。

「なんだ貴様、妙なマネはするなと言ったはずだぞ」

「何もしてないじゃないですか」

側近が声を荒げるが、威圧にも怯えず淡々と応える。

「・・・これは、一美の・・・」

「そ。あの人の寝間着ですよ。病人が夜中にコソコソ何処に行くかと思いきや・・・。
 絶対に入ってはいけないと言い聞かせられた此処に行ってしまいまして。後は見た方が早そうですよね」

と、櫻が言い終わるが早いかヴィーパーの正面、雫の真下にノイズが走る。

ノイズは瞬く間に縦に延びて横に広がり、
厚みをもって人の形を取り、色が上から下に彩られひとりの人物像を紡ぎ出した。

体半分振り返るように茫然自失で、ヴィーパー側に顔を向けている女性。
肩までの黒髪は整えもせずボサボサで、顔付きは櫻をずいぶんと吊り目にして厳しさを増したよう。

ヴィーパーの手元にある浴衣を着て裸足で立つ女性は、見間違えるはずもない。

「・・・か、一美・・・」

立体映像と言うには本人がありのままソコに居る。
と、いった生々しさがあり、大人二人は唖然と垣間見る未知の技術が生み出した虚像に魅入り、動きを止めていた。















         ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆

パトカーを先頭にカッ飛ばして来たおかげで、ゼンガー達はさほど間を置かず、
朝日が昇りきる頃には山間の村近辺に到着していた。

そのまま村まで突入しないのは、待ち伏せと罠を警戒して。素人もいるために安全を考慮してのことである。

まずはフォルカ隊が先行偵察し、待ち伏せ相手を無力化してから、本隊であるゼンガー達を呼び寄せる手順となった。
ここに来るまで車中で計画してた事の再確認である。


音も気配も無く山中へ消えていったフォルカ隊を眺めながら、
あれはもうセキュリティーじゃないのでは、と疑問に思うブリットがいた。

数分もしない内に通信機へGOサインが来たのには、アルカイドが眉をひそめる。

「早すぎるな・・・」

「チンピラ崩れのSPだったとかか?」

特に気負った様子もなく、のんびりとアクセルが言う。
セリフにカチンときたアルフィミィに蹴り飛ばされていたが。









林道を抜け、村の入り口まで辿り着いたゼンガー達が見た物は、
重量級の何かが暴れまわったと思われる程広範囲に穴が開いた地面に、無惨な姿を晒す車の残骸だった。

かろうじてタイヤとわかる部分が無ければただの黒い鉄屑である。

それは乗員部が底から半分に折れた後、横から圧縮され地面に埋没していた。
周囲も元は雑草が生い茂っていたのだろうが、あちこち地面ごと爆発したように削られ、
掘り起こされた黒い土が広げられていた。


フォルカ隊の人員は周囲の雑草の中から三人の黒服達を探し出し、平たい地面へ並べ置いたところだった。

「死んでいるのか?」

「腕や足を骨折したり、打ち身切り傷はあるようですが命に別状は無いようですね」

先に隊員に呼ばれ、黒服達を診察していたシュウにイルムガルドが尋ねる。
シュウは応急キットで出来るだけの処置を施すと、アルカイドに病院までの搬送を頼んだ。






「何が荒らし回ったんだか」

「主犯と櫻は居ないようですの」

辺りを見回して、心配種の妹兼幼なじみが居ないのを確認するブリットとアルフィミィ。

アルカイドに意識のあった黒服から「化けモノに襲われた」との証言を伝えるフォルカ。


それを聞きながら辺りを検分するキョウスケとアクセル。

「この惨状をやったのが化けモノだとして、何処から来た?」

「何処かへ去ったとしても、動いた痕跡がこの周辺にしかないな。これがな」

「゛飛べる゛化けモノと考えてもいいな」

「車一台スクラップにするモノなら目撃くらいはするだろうさ」

「そもそもソレは何をしに来たのか?」

「ここでは考えるだけ無駄のような気もするがな」

二人とも懐から、蛇の名を持つ銃を抜き出し、何がおきても撃てるように半身に構える。
アルカイドは手甲というには物騒なトゲがついたモノを装着し、
ゼンガーが車から引っ張り出したのは、鞘に納まった刀だった。
ブリットが持ち出しているのは木刀だが、練習用の鉄心入りである。

何も持たない、手持ち無沙汰のアルフィミィからみれば男性陣は物騒この上ない。
何もかも知るシュウから見れば、軍隊相手に出来そうな布陣ではあるが。

フォルカ隊は後詰の援軍待ち兼、バックアップでココに残ることになった。
隊の半分は怪我人を病院へ搬送するが、犯罪者の片棒を担いでいた者達なので監視も務める。

当初はシュウとアルフィミィもココに残る予定であったが、
何かあった時の為の頭脳労働担当と、同姓でしか判らない事もある場合という名目で付いていくことになった。













         ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆

一方、追っ手がすぐソコまで近付いているのすら知らないヴィーパー達は・・・。
眼前に現れた女性。巳子神一美の姿を再生した映像に、行く手を阻まれていた。

たしかに今さっき目の前に再生されたと判る工程も見たが、それはあまりにも現実味を持ってそこに存在していた。
一美の向こう、雫を挟んだ反対側の壁際ではくだんの娘、巳子神櫻が俯いたまま立ちつくしている。
その表情はよく見えないが、口許を堪える様に結びなにかを我慢するように。

呆気に取られた? 呆然としている? 
どちらとも取れずヴィーパー側を振り向いていた一美が、堰を切ったように唐突に笑い出した。

『あ、・・・は、ははは・・・。くっくくくくくく・・・。あははははははははははははははははっ!』

心底おかしくてたまらないと、全身で楽しそうに、憎らしげに、ドーム内に笑い声が響く。
それは生前の彼女そのままなのだろう。ヴィーパーの呆然とした様子から伺える。

しかし、それはヴィーパーのみに有効だった。
側近はすぐに我に返り、反対側に居る娘の動向に目を光らせる。
もちろん右手に持っていた銃のセフィティーをはずし、何時でも撃てる姿勢をとって。

『くくく・・・、病人が床に居ないのを不思議に思って着いてきたのね。コレは予想外だったわ。
 そのおかげで、何もかも横からかっ攫われるなんて。・・・なんて間抜け・・・』

ヴィーパー側、おそらくソコには誰かが居たのだろう。剣呑な光を瞳に宿らせ、憎らしげに吐き捨てる。
ふと、周囲に燐粉のような細かい光の粒が舞い始める。足元から、天井から、壁から、目の前から。

黄色い光の帯を身に纏った一美の姿が薄ぼんやりと透けていく。
背中に流した髪の先から、指先から、
体の端々から光の燐粉を撒き散らしながら、女性の姿は徐々に小さくなっていく。

『せっかくあの人の役に立てると思ったのに・・・。台無しだわっ!
 せめて貴女はあの人の役に立つようにと、色々手を回したと言うのに・・・。
 私の代わりに役に立つのよ。せっかくの道具だもの。・・・・・・頼んだわよ、櫻・・・』

最後まで親の敵を憎む表情で睨みつけていた一美は、
ほんの最後の名前を呼ぶところだけでやさしい笑みを浮かべ、光の粒となり欠き消えた。
中身の無くなった浴衣が、床に崩れ落ちしばらくしてノイズを散らしながら消える。




しばらく中空を眺めていたヴィーパーの顔が歪む。妻だった女のように憎らしげに。

「・・・・・・なるぼど・・・。貴様、最初は我の所に来るはずだったのだな・・・?」

言葉を投げられた娘、櫻はびくりと体を振るわせた。

「・・・それをどうやったかは知らないが、ゼンガーの所に身を寄せた。
 一美を欺くように、ゼンガーをも欺いて・・・。我にもその存在を隠して」

「・・・人を、・・・娘を道具呼ばわりする人達が信用できるとでも?」

かすれて呟くその言葉は、泣きそうな含みを持ってドーム内に響く。

「物心ついてからもそう、『あの人の役に立ちなさい』『あの人のために生きなさい』
 人を人形のように扱うことしかしない。遊び相手だった動物達の方がよっぽどやさしかった」

「自分の親を裏切って、ゼンガーどもに人生を預けたのかっ!? 
 一美の命令を無視して! 我の役に立たずに、遺産をも奪い逃げたのかっ!!」

「あんた達の思い通りにはならない。遺産なんか使ったって何も変わるものか」

櫻は全身全霊を持って、目の前の存在を、血を授かった親を否定した。

「き、貴様っ!!」

ヴィーパーは自分の懐から銃を取り出すと、躊躇も無しに発砲した。側近の止める暇もないほどに。
乾いた破裂音の後に、澄んだ金属音がドーム内に響く。
標的が傷ひとつ無く立っている"嘘の様な現実"を見る結果になったとしても、目の前の存在を消し去りたかった。

側近は目の前の現実を、ヴィーパーの撃った弾が娘の直前で何かに弾かれた様を見た。
二度三度、主人が発砲するも全て娘の前で火花を散らし弾かれていく。

「・・・なんだ? なにが・・・、何が起こっている・・・・・・?」

ヴィーパーは弾の出なくなった銃を力なくぶら下げ、呆然と呟く。
しかし、側近は娘の背後の壁が、いつのまにか黒く覆いつくされているのに気づいた。
見方によっては巨大な鎧姿のようにも見える。

「・・・せっかく平穏だったのに。心乱されること無く封じていたのに。
 貴方達のせいで目覚めちゃったじゃない。寝た子を起こすなんて・・・・・・なんて・・・」

自分の胸元をぎゅっと掴み、俯いた櫻の姿がふらりと傾いだ。
膝を付き倒れ込む櫻の足元から、五本の柱が彼女を包むように突き出された。

ソレと同時にヴィーパー達の足元からも、いつのまにか黒く染まった床から五本の柱が、
一瞬に自分達を掴み上げたそれは、巨大な手の平に見えて・・・。
彼女の居たところの背後からは、殺意を持った大きな紅い眼がこちらを睨みつけていた。












         ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆

「あれだっ!」

ゼンガーの叫びと、足元から響く激震はほぼ同時だった。
アクセルは後方から付いてきていた妹達を一旦留まらせ、キョウスケらとともに周囲を警戒する。

  ”OOOOOOOOOHHHHHHHHHHHHHHHNNNNNNNNNN

地面の下より響き上がるのは、雄たけびか遠吠えか。

皆が目指していた丘が崩れたかのごとく大きく凹み、内部から押し上げられ、丘がその形を歪める。
頂上部が一度大きく跳ね、金色の光を反射するチャクラムに似た輪が丘を斬り崩す。

続いて左右上下に大きく張り出した肩部、その間から前部に白い角を持ち羅刹のような風貌の頭。
胸部には大きなレンズがついた紺濃色の巨体が土砂を跳ね上げ姿を現した。
頭頂部まで八階建てのビルくらいはあろうかという。

金環を背負い、紅い切れ長の瞳でゼンガー達を睥睨する重厚な装甲を持つ巨神。
勢いよく身を起こしてまとわりついた土砂をふるい落とし、鋼の軋む音を振りまき山の残骸から一歩を踏み出す。

バーニングPTを知るアルフィミィとシュウは、実物大に相当するネオ・グランゾンにただ圧倒されるだけだ。
ブリット達も例外なく言葉を失って唖然と見上げている。

不意に、ネオ・グランゾンがゼンガー達の方へ足を一歩踏み出して膝を折る。
慌てて臨戦態勢をとる人間達の手前に、片膝立ちになり握った左手を彼らの前まで慎重に下ろし、開く。

「ッ、櫻っ!?」

力無くぐったりと仰向けに倒れている櫻を見るなり、
アルフィミィとキョウスケが慌てて駆け寄り、抱き上げてネオ・グランゾンの掌から降ろす。

すかさず近付いたシュウが軽く診察。

「安心してください。気絶しているだけですよ」

関係者が一斉に安堵のため息を吐く中、イルムガルドだけは周囲に鋭い視線を走らせる。

「ヴィーパー達が見当たらないな?」

「アレではないのか?」

アルカイドが頭上を指差す。

位置はネオ・グランゾンの顔の前に握られた右手だ。
そこから二つの凸がのぞかせているのが見てとれる。

ヴィーパーとその側近だろうと思ったイルムガルドは誰何してみる。

「観念するんだな、ヴィーパー!」

下から掛けられた声にキョロキョロするも、
ガッチリ固められた拳から抜けられるはずもなく、二人分の情けない悲鳴が聞こえて来る。

「たっ助けてくれぇっ!」

「く、くそォ。こうなったのも全部あんたのせいだ! さっさと見限ってりゃよかったぜ。このヘタレ議員め!」

「な、なんだとお!きっきき貴様ァ!? 拾ってやった恩も忘れおってええ!」

「唾飛ばすんじゃねえ! 腐れ野郎がッ! 
 おーい助けてくれ、コイツの脱税とか違法財産とか犯罪行為とか全部喋るからよう!」

「だだ黙れ貴様! 撃ち殺すぞっ!」

「おーやってみろ。自分じゃ何も出来ない赤ん坊がー!」

頭上で始まった小学生レベルの口喧嘩に、下に居た者達は脱力感をおこす。

ネオ・グランゾンが櫻を助けてくれたのはいいが、
なにを基準に行動しているのが判らないため、キョウスケが櫻を抱えてその場から距離を取る。

イルムガルドとアクセル、ゼンガーとアルカイドがその場に残ったものの、
ヴィーパー達をどうやって捕まえたものかと、頭を抱えた。

「がっ?!」「ぐぎゃっ!」

蛙が潰れたような悲鳴が上がり、見た目少しずつ拳が内側へ握り込められる。

「握り潰す気かっ?!」

金属が擦りあわされる音と微かに聞こえる肉や骨の軋む音。
じわじわとなぶるように圧力が掛けられていく。

「待てッ!」

威圧を込めて投げられたアルカイドの声に紅い視線が下を向く。

「そいつらは此方が預かる。下ろしてくれ!」

続いてイルムガルドが言葉を投げかけるが、
視線は此方側を向いているものの重圧は依然と変わらないらしく、握られているヴィーパー達の悲鳴がかすれてくる。

「マズいぞ。どうにかして止めないと」

「どうにかってどうやって?」

これもう俺たちの出る幕じゃなくね? とでも言いそうな爽やかな笑顔でアクセルが突っ込んだ。








ネオ・グランゾンの足元でイルムガルド達が救出作戦に脳味噌をひっくり返している時に、
アルフィミィ達は眠り姫を叩き起こそうとしていた。

「頭を打った様子もないようですし、手荒でいいのでは?」

シュウがにこやかに乱暴な事を推奨するあたり、さすが彼女の知人と言えるだろう。

名前を呼びながらアルフィミィが揺すってみたが、覚醒する様子もない。
肩を竦める幼なじみを見たブリットが、前振りもなくいきなりひっぱたいた。

いつも酷い目に遭わされている仕返しか、パシーン! というよりは、ばっちーん! 
と響いた音はアクセル達にも聞こえたらしく、此方を意外そうな顔で振り向く。

過剰反応したシスコンキョウスケと幼なコンアルフィミィで、非難を通り越した殺意の視線がブリットに突き刺さった。

ちなみに激しい一撃を喰らった当のお姫様は眼を開けていて、やや赤くなった頬を押さえ、ぼんやりと空を見上げていた。

「・・・いたい・・・」

「ブリットが殴りましたの」

「・・・そうなんだあ・・・」

誰に向けたわけでもない呟きにアルフィミィが返す。
後ろで「ちょっ!おまっ!?」とか声が上がったが聞かなかった事にした。



   「そんなもん潰しても汚い血でよごれるだけだぞー離せー」

    「ヒューヒュー(←文句を言いたいが呼吸がなんとか)」

     「豚箱に入れるよりは、いっそひと思いにしてやればいいのではないのか、これがな」

      「警察の言動ではないな・・・」

反対側では相変わらず銀行立て篭もり犯に対するネゴシエイションみたいなのが続いているが、
効果は見られず、人質二名の生命がレッドゾーンだ。



「・・・なんか・・・騒々しい」

「ネオ・グランゾンによって誘拐犯が挽き肉一歩手前ですの」

「・・・そうかー、ねおぐ・・・・・・・・・ネオ・グランゾンッ!?」

予備動作もなくいきなり跳ね起きた櫻と額が激突しそうになり、緊急回避して転倒しかけ、たたらを踏むアルフィミィ。

「危ないですのよ。櫻」

「おやおや」

「あ・・・シラカワのおじ様。・・・有難う」

急に立ち上がったためか、貧血でふらついた櫻を支えるシュウ。

目を擦って視界を整え、巨体を捉えた櫻の表情は苦虫をかみ潰した様。

「・・・げー・・・」

うんざりしたため息を吐き出して、諦めた顔から決意の光を瞳に灯し、ネオ・グランゾンへ歩を進める。

「・・・大丈夫か?」

「うん」

ゼンガーに頭を撫でられ、アルカイドの視線に頷いて返す。
皆が見守る中、此方を向いたままの紅い眼に視線を絡ませ、居丈夫に言い放つ。

「止めなさい、ネオ」

ギクリとした仕草で停止し、抗議するように瞬く紅瞳。

「確かに攻撃されたけどね。裁きを下すのはキミじゃないから。降ろしなさい」

しぶしぶといった感じで頷くと、右手を開いて二名を投げ落とす。

少し下がっていたとは言え、二m強の高さから受け身も取れずに投げ出された哀れな男達は、うめき声を上げあっさり気絶した。
イルムガルドとキョウスケがすかさず拘束し、シュウが一応診察を入れる。

「骨の二、三本は折れてますが、今すぐ命の危機にはならないでしょう」

ずいぶんと投げやりな判断にアクセルが苦笑いを浮かべる。

「適当だな」

「身の保身で女性を誘拐するような輩にはこれ位でいいのですよ」



周囲に軽い振動を感じ、皆が振り返ると一度立ち上がったネオ・グランゾンが、櫻の前に片膝を立てて跪いた所だった。
上下関係を匂わせるものの、跪いたとしても頭頂部まで校舎の屋上くらいある。
のぞき込まれているようにも見えた。

「この場はもういいから、戻って」

櫻が地面を爪先で突ついてジェスチャーし、
点滅した紅い眼に頷き返すと、まるで作業用の土台に乗った荷物のごとく下降し始めた。
正確にいうと黒い波紋を立てて、自らの影へズブズブと沈んでいく。

見ていた者達が有り得ない現象に自分達の現実を疑う中、
背中の金環まで埋もれた直径10mの影は、地面を滑りつつ30cmまで縮まり櫻の足元の影に融合。
自分の胸元に手を置き、目を瞑って確認するように頷く。

「うん、格納完了っと」

やれやれ、これで色々片付いて肩の荷が降りたーなどと呟いた櫻だったが、さらなる危機が待ち受けていた。
目の前に立ちふさがる兄三人+幼なじみのお説教である。

まず始めに長兄から頭に一撃。
目から火花が飛び出す衝撃に、少々うずくまって悶絶。

「何を考えている!この大馬鹿者がっ!!」

「子供が勝手に先走るな!大馬鹿がっ!!」

「俺達はそんなに頼りないか?!相談ぐらいしろっこの馬鹿っ!!」

「言うだけ言って反論も聞かずに勝手に行くなんて酷いですのよバカ櫻!コレは返却しますの!」

痛みが引いた頭に自分の携帯を投げつけられ、再びうずくまる櫻。
もはや涙目である。

「ううぅ~、アリィちゃんひ~ど~い」

「自業自得ですの!」

「まあまあ、こんなところで言い合いをするのも何ですし、帰りましょう。積もる話もあるでしょうから」

他人事なのでにやにやしながら、兄妹のやり取りを眺めていたシュウが仲裁に入る。
ウィーパーと側近は、アルカイドがフォルカ隊を呼び寄せ拘束して、すでに運び去っていた。

「俺は先に戻って、あいつらを同僚に引き渡す。ご協力感謝するよ、嬢ちゃん」

追い抜きざまに肩をポンと叩いたイルムガルドは、櫻にそう告げると走って行く。

「俺も職務に戻るか」

「俺も付き合うぜ。キョウスケ」

「ああ。・・・後、櫻」

「なぁに?キョウスケ兄さん」

「後で簡単な聴取をするかもしれん。言う事だけ纏めておけ」

「わかった」


イルムガルドを追って肩を並べ走り去る兄達を見送ったところで、ゼンガーが櫻の頭に手を置く。
そのままギリギリと締め付けてきたので、身を捩って苦しさを表現。

「痛い!痛い!割れるっ!割れるってば!!」

「悪い事をしたら罰がつきものだ。お前は昔から聞き分けがよかったからな。
 この際、二度とこの様な事が無い様に、しっかり言い聞かせておく必要がある」

「ゴメンナサイゴメンナサイもう無茶な行動は致しません頭蓋骨が割れちゃうからっ誓います誓いますから助けてぇ~!」

悲鳴にも似た懇願が途切れかけた頃に、ようやく万力の締め付けから解放され、半泣きのままゼンガーに頭を下げる櫻。

「・・・はははっ」

「フッ・・・」

「・・・ぷぷっ」

もう二度とこんな痛い事はゴメンだ、のごとく必死に謝る櫻の姿に、取り巻く者達には笑顔が浮かんでいた。













(あとがき)

あけましておめでとうございます。
思ってたより長くなったので、この辺で切って次で最終回にする予定です。
ロボットの重量感って表現するの難しいですね。ネオグランゾンってSD以外にデータが無くて・・・。
もうすこしだけ、つたない文章にお付き合いください。






[7259] 18 「呼び覚まされる心」
Name: C-K◆ae02f8a5 ID:27ec9c7b
Date: 2010/01/06 22:02



色あせた障子戸をゆるゆると開いて、少女は主の居なくなった部屋へ足を踏み入れた。

六畳間のこじんまりとした部屋の中には、年月が重ねられた艶を出す箪笥や鏡台が置かれている。
しかし生活感などはまるで無かった。ついさっきまで人が居たはずなのに。

部屋の中、畳の上にぽつんと置かれているのは大きめの封筒に、その上にある小さな走り書きの紙。

『後のことはこの方に頼みました。これを出しておきなさい』

封筒には筆書きで住所と行き先名『ハンス・ヴィーパー』の文字。
あの人は自分の事を『道具』と言った。
この人の所へ行って、道具として扱ってもらえと、そんなニュアンスが含まれていた。

あの人の言うことは絶対だ、自分はそれに従わねばならない。
そっと封筒を持ち上げた少女の中で、何かがチリッとその思考を否定した。

   ”チガウ”

先ほど何かが刻まれた胸の内側で、考えそのものを容認しない誰かが言った。
   
   ”自分達ハ何者ニモ束縛ヲ受ケナイ”

ハッと気がついて振り返った少女の視界に、鏡台の中央に映し出された蒼い異形の姿があった。
こちらを招くように手を差し出した姿勢で紅い瞳が少女を捉える。

   ”我ラハ汝 汝ハ我ラ 道具扱イナドサセハセン”

瞬きする間もなくそれは一角を持つ紅い異形へと、姿を変える。

   ”汝ノ自由ヲ奪ウ者在ラバ 我ガ撃チ抜クノミ”

次の瞬間、翼を持つ桃色の異形に姿を変え両手を広げる。

   ”汝ノ行ク先ノ障害ハ我ガ斬リ払オウ”




「いらない」

少女が感情の籠もらない声で異形に応えた。

鏡は元の役目を取り戻し、封筒を抱えた少女の姿を映す。
しばらくぼんやりと逆の自分を眺めていたが、のろのろと部屋を物色し始める。

記憶の中であの人が懐かしそうに話していた学生時代の友人がいた。
もしかしたら、道具扱いもされるかもしれない。突き放されるかもしれない。
それでもあの人の決めていた行き先よりはマシな気がした。
誰かの決めた事に従うよりは、自分の意志で行き先を選ぶ方が正しいと思った。

陽が中天に上がる頃には目的の連絡先を探し出した。
すぐに村長の所へ持って行き、新しい封筒に住所を書いてもらう。
村の郵便物はまとめて村長が出す物らしいので、そのまま預かってもらった。

ついでに事実を伏せ、あの人の失踪を伝える。
巳子神家にはよくある事らしく、痛ましそうな表情を見せた後、何かあったら相談する事を約束させられた。

家に戻り、散らかしたままだったあの人の私物を少しづつ庭で焼却した。

あれからゼンガー達が訪れるまで、何回か鏡に異形が現れ少女に手を差し伸べたが、全て断った。

そして気付く。自分の心が揺れている時に異形は現れると…。
そして、元々喜怒哀楽の少なかった少女はゼンガー達に馴染むまで全ての感情を凍らせ続ける。
ある遊戯に出会い、自分の内面を再び見つめ直す時が来るまで…。

















    ◇ ◆ ◇ ◆ sakura side ◇ ◆ ◇ ◆


もう黙っておく必要もないので洗いざらいぶちまけた。
あの人が消えた後から、兄さん達に保護して貰うまでの経緯を。

ややこしくなるから、あの子達の事は後で纏めるから抜いて。

途中で今まで黙っていた心苦しさに涙がでて、アリィちゃんの胸で大泣きしました。ふかふかだった、・・・ちくしょぅ。
兄さん達は何も言わないでいてくれて、撫でてくれたり、黙って抱きしめてくれたり、優しさが辛くてまた泣いて。
そしてそのまま家に着くまで眠ってしまったらしい。

徹夜でクソ遺伝子提供者に隙を見せないようにしてたからね!

寝る前の最後の記憶なんだけれど、夕方で家の近くで花火が轟いた気がしたけれど。

・・・今年も上げたのか、イングラム先生・・・。










目が覚めたら自分の部屋で朝を迎えていた。たしか文化祭振替休日で休みだったはずだけど。
シャワーだけ浴び、着替えて居間に行ったらゼンガー兄さんとブリット兄さんとアリィちゃんとシラカワのおじ様だけ居て。

キョウスケ兄さん達は事件の後始末とかで、後でブリット兄さんに聞くらしい。

冷蔵庫が空だったのでパンで簡単に朝食を済ませてから色々暴露する事になった。
冷蔵庫、文化祭の後に買い出し行こうと思ってたんだった。忘れてた。

朝食のさ中アリィちゃんが携帯のメールを見せてくれて。

「皆に櫻を無事に保護したと伝えておきましたの」

沢山の人から落ち着いたら連絡をくれるようにと来ていて、また涙がでてきちゃった。

「櫻。ずいぶんと泣き虫になりましたの」

「今更だけど、嬉しかったんだもん・・・」

くそぅなんか涙腺が緩い。マイ達に会ったらまた泣く、絶対泣く。
泣くのっていいなーと思う自分がいる。

あの時感情を凍らせた自分に後悔した。

兄さん達はこっちの光景見て、ずーっと楽しそうに笑っていたけど。










「さて、話を聞かせて貰う事にしましょう。
 ああ勿論、自分が話したくないことは言わなくて結構ですよ。
 それで櫻嬢を責める者など、ここにはいませんから」

皆を代表して、シラカワのおじ様が話を切り出してくれた。

たがしかし、秘密を暴露しようにもどっから話せばいいのか困ったので、質問に答えることにした。
私も自分のことだけれど感覚的に掴んでいる部分も多い。言葉にするのも難しい。

最初に顔を合わせた時みたいにあの子達に話して貰えば楽なのだろうけど。

ネオとのやり取りを見る限り会話が成立しているのは私だけのようだし。

「まずはあのネオ・グランゾンのことなのですが・・・」

兄さん達で協議の結果、シラカワのおじ様がまとめて聞く係になった。

「何処から出てきて何処へ帰ったのか? あれが遺産と言っていいのですか?」

いきなり答え難い所来たなぁ・・・・・・。
ネオについては一言ですむけど。

「・・・ええと~。あれ"も"遺産です」

「「「「もッ!?」」」」

あははー、驚いてる驚いてる。
あれだけ遺産じゃないのだ。あれも遺産の一部なのですよ。

感情を押さえつけていたタガが外れた私の中、はたしてこれを『中』と形容するのは自分でも良く判らないのだけど。
中のあの子達は私に危害を加える者達を敵性と判断し、排除にかかったのですよ。

遺跡前で僅かな喪失感があったため慌てて押さえたけど、間に合わなくて。
残っていた黒服さん達をバグスが襲ったらしい。

私への配慮は殺してないトコか・・・。
ヴィーパーは問答無用で握り潰すつもりだったみたいだけど。

「何処から出てきたのかと言うと私の中としか・・・?」

「中?」

私の主観でしかないけれど、脳裏の裏側に視点を代えると井戸の底のような図書室がある。
上の方から淡い光が射し込まれるそこは円筒形で。

壁は全て書棚になっていて本が詰まっている。

そこから一冊抜いて題名を見ると、ゲシュペンストmk‐Ⅱと書いてあり。
あとは本を外に持ち出すイメージをもたせるだけで・・・











    ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


唐突に櫻の影が部屋の南側、窓際まで広がった。

壁を覆い隠し、窓まで覆った影は壁紙も床のカーペットも光さえも遮って、真っ暗闇が奈落の底のように。

そこに半月状の赤い光が灯る。

心持ち後ずさった、櫻の対面に座っていたブリットの足元から鋭角の頭部が闇より浮上した。

両側左右に伸びたアンテナ状のものが、天井に突き刺さる直前に浮上が止まる。

紺色のカラスといった印象を受けざるをえないバイクのフルフェイスヘルメット状の頭部。顔の大半を占める赤い単眼。

時間にして一分もたった頃、出現した現象を逆再生して闇へ姿を消した。

同時に部屋を覆っていた影は櫻の足下へ戻り、居間はいつもの朝の風景を取り戻す。

いつもの光景に足りないのは騒がしい兄妹の団欒だけで。

妹は家を壊さないように慣れない制御をしていたため、息を付いて深呼吸。

兄達と幼なじみは呆然と今の光景を反芻し、シュウは「成る程・・・」と呟いた。








    ◇ ◆ ◇ ◆ sakura side ◇ ◆ ◇ ◆


「私も遺産の部屋で雫からの光を受けたら継承されたってだけで、コレがなんなのかなんて判りません」

「ふむ・・・。バーニングPTとの関連性はありますか?」

「むしろ最初アレ見てびっくりしましたよ~。中からデータ流出なんて有り得ないし・・・」

類似点を調べるために積極的に参加してみたんだけど、さっぱりです。

そうこうしているうちに機械が私の言う事を聞くってのに気づいて、
専門家に相談したいといったら、ゼンガー兄さんにシラカワのおじ様を紹介してもらったんだけど。

兄さん達は大体を納得してくれたらしく、それ以上追求してこなかったけど。

おじ様は知的好奇心を満足させるまで終わらないとでもいうように、いくつか質問があったけどね。

蔵書(格納)数とか、制御出来る数とか、やった事無いので全然判らない!
だいたい今の世の中に実物大で発砲可能なPTがでたらどーなる事やら、ねえ。



あとはアリィちゃんの取り出した写真。
校舎の壁に写っている私の影が、人とは違うものになっている件。

これはまあ・・・。
落ちるのに重力制御効かせて、衝撃を緩和したんだけど。

まさか写真に撮られてたとは…。
うちの新聞部侮りがたし。

「お前は自分がブラックリストのNo.2だってことを忘れるな」

いやいや、ブリット兄さんや。
No.1も兼任しているんですよ。秘密だけど。

「これの弁明はありますの?」

「ごめんなさい。もうしません」

「弱っ!?」

だって眼が笑ってないんだよ。
おもいっきり頭を下げて許しを乞う。
冷ややかな眼で私を睨んでいたアリィちゃんは、ため息をひとつ。

「言っても聞かなそうですけど。口約束を取り付けただけ、良しとしますの」

「・・・で。コレも遺産の副産物ですか?」

即、食いついてきますね。おじ様。

「えーっと。自分にPTを重ねるって言うかあ。・・・憑依?」

「成る程、グランゾンの重力制御を使えると。そう言う事ですね。それは他のPTも使用可能だと・・・」

流石おじ様理解が早い。
欠点は影がPT型になるだけですが。
勘のいい人はアリィちゃんみたいに気付いちゃうけど。

なんか人の顔見てニンマリと笑みを浮かべたおじ様は、とんでもない事をきりだした。

「櫻嬢、バイトをしませんか?」

「はい!?」

「私の仕事場にはそれなりに大きい倉庫とかもありますから。
 PTを研究することが出来れば、科学の進展に少しは貢献できるかもしれませんよ」

「それはPT出してバラさせろって事ですか!?」

「そこまでは言っていませんよ。櫻嬢とどういう繋がりがあるかも判らない物を、いきなり分解なんて」

いきなりじゃなければ分解するようにしか聞こえないのは、気のせい?

腕組みして難しい顔をするゼンガー兄さんに、視線でお伺いを立ててみる。
こんだけの騒動を引き起こした後だし、暫くは学校でも自重しろと言われそう。
あ、むしろキョウスケ兄さんが言うかも・・・。

「お前がやりたい事に反対はせん。・・・が、自分の行動が起こす影響はしっかりと見届けて、責任をとれ」

「それと・・・」と言いかけて、シラカワのおじ様をじろりと睨む。

「判っています。秘密の漏洩は私が責任を持って対処します。
 ゼンガー・ゾンボルトとアルカイド・ナァシュ二人を敵に回すようなことは、正直避けたいですから」

胸に手を当てて、兄さんに執事風な礼をするおじ様。
ナァシュの社長は関係ないと思うな。

「アレを関係ないとはいわないと思う」

「そうですの。おもいっきり車内で猫可愛がりしていましたの・・・」

そうなの?
バイト中もお菓子とかくれるから、何時もと変わらないと思うんだけどなー。

「とりあえず、考える時間を下さい」

「いい返事を期待しましょう」








大体、話すことが終わったらゼンガー兄さんとおじ様は仕事へ戻って行った。

帰る直前におじ様が、名称不明なのも扱いづらいですから
【機神図書館(マシン・ビブリオテーク)】とか名前を付けたらどうですか?
・・・とか。おお。なんかカッコイイ。

ブリット兄さんは事の顛末を、友人達や上級生達にかいつまんで(遺産の件は秘密)説明する為に出掛けて行った。



私はお留守番だけど、冷蔵庫空っぽだから後で買い出しに行かないと・・・。

わぅわぅ

きゅーん

暇なのでアリィちゃんと、ハガネとクロガネを抱きしめて頬刷りして撫で回して。

「ううーん。最近構ってやれなくてごめんねー」

まあ、私から見るとドリル艦と二角艦のぬいぐるみと言った感じだけど。

なぉーん

塀の上にでろーんと寝そべった虎王機が、私の無事を喜んでくれる。

「ハガネ達も犬には見えないんですのね?」

「うん。むしろ普通の人が言う犬って見たことがないなあ・・・」

撫で回す事で大体の輪郭は判るんだけど。
そもそも動物ってなんなのか分からない。

「ええと。こうですの」

地面にガリガリと輪郭を描くのはいいけれど、うんそれ戦車。
猫ですね。わかります。









二匹を一度地面に下ろす。
アリィちゃんに改まって向かい合い。頭を下げる。

「今回みたいにまた迷惑をかけるかもしれないけれど。見捨てないでね」

アリィちゃんもちょっぴり肩をすくめ、しょうがないと首を振る。

「何をいまさら。初めて会った時もそんな感じでしたの。
 だったら私が親友だったのを後悔させるくらいには、櫻の素行を取り締まってあげますの」

 わうぅ

わぅーん

「キミ達も賛同すんなっ!」

その後は何かツボに入ったのかアリィちゃんだけ大爆笑。
ええい! もうっ!










「買い出しに行く! ヤケ酒ならぬヤケ調理よ!」

「いってらっしゃいですの」

「うわ酷っ! 舌の根も乾かないうちに見捨てたっ!?」

「ヤケになった櫻には付いて行けませんの」

「ふふふ。グランゾンを使えば買い物の重量なんて屁でもないわ」

「今さっき自重すると言ったばかりですの! 反省を踏まえた進歩は無いんですの!?」

「この力を使えば、サイバスターでスカート捲りも容易に。くくくく・・・・・・ッて痛あっ!?! 耳を引っ張らないでえーっ!」

「やっぱり櫻には監視が必要ですの!」



ひとしきり騒いでから、買い出しへ行った。アリィちゃんつきあってくれなかったけどねっ!
大量の荷物になったけど配達してもらったともさ。
アリィちゃんからキョウスケ兄さんにバレて怒られるのが怖い。



でも大量に作り過ぎて、一週間の食事当番禁止を言い渡されました。




追伸,この能力を使いこなせるようになった頃、再びトンデモナイ出来事に遭遇するのですが…。
それはまた別の話になることに・・・。







   ◇ ◆ ◇ ◆ 完 ◇ ◆ ◇ ◆


















(あとがき)

はい、終わりです。
これ以上続けるとオリ主がチートにしかならないので此処で終わりです。
むしろもう話のネタが無いと言いますか。
後半オリ主と説明ばっかり、OGキャラ全然動いてません。
力量及ばず申し訳ない。

某HP運営者様、
「こんな夢を見たんですよ~。でも文章にしづらいですよね」
とグダグダ言っていた私に
「 書 け ! 」(←My主観)
と言ってくださらなかったらこのお話はありませんでした。
この場を借りてお礼申し上げます。感謝します!



夢から作り始めたこの話ですが、
三話あたりを執筆中から夢の方が断片的になり、六話あたりでまったく見なくなってしまいました。
なので、半分以上が断片を引き伸ばしたり、うろ覚えでくっつけたりした代物です。

私の半端な文章力。全20話も目を通してくださった方々、とってもとってもありがとうございました。








[7259] スパロボな日々外伝 『家政婦な日々』
Name: C-K◆ae02f8a5 ID:27ec9c7b
Date: 2009/06/05 18:40
拝啓、ゼンガー兄さん、キョウスケ兄さん、ブリット兄さん、アクセル兄ィ、アリィちゃん。
いかがお過ごしでしょうか?

私は環境も状況も変わりましたが元気にやっております。
それにしてもここは何なんですかね、いまだにさっぱり判りません。






たしか前日に普通に就寝したはずなのに、目が覚めてみたら黒いインナーを着ただけの姿で。
気絶した少女のまえに跪いていたし、私の他に四人の男女がいるわ、
私は四人を知らないのに向こうは私を知ってるわ、なんとかの騎士団の一員にされてるわーで状況不明。
とりあえず他の人達を叱咤して、少女をベッドに運び四人に説明して貰うことに。







ピンク髪ポニテのかっこいい女性は烈火の将シグナムさんと言うらしい。

「まったく、毎回毎回記憶を飛ばしてからに…」

「そうだぜ! 毎回自己紹介し直すこっちの身にもなってみろよ…」

赤毛三つ編みの少女は鉄槌の騎士ヴィータちゃん。
申し訳ない気持ちになって「ごめんなさい」って謝ったら、頬を染めてそっぽ向きながら

「べ、べつに謝れなんて言ってねぇよ…」

あ、この子可愛い。

「我は盾の守護獣ザフィーラ。改めてよろしく頼む」

すんなりと頭を下げたのは犬耳を付けたガタイのいいお兄さん。
…犬耳ィッ!? 誠実そうなのに変な趣味が!?

「毎回ザフィーラを見る目が変よね?」

ほんわかした笑顔で黄緑色な人が湖の騎士シャマルさん。
つか毎回? 前回があったのかすら知らないんだけど……?

「そしてお前が侍女のサクラだ。自分の事くらいきちんと覚えておけ」

なにその称号…、
ってゆーか侍女って何事さ…。
えーあれですか。王様にかしづいて身の回りの世話をする、劇とか映画とかに良く出てくるモブ?

その後に受けた説明が更によく判らないモノだった。
魔法? ベルカ式? 闇の書? 菟集? 管理局?
サッパリ聞き覚えがありません、と言ったら

「今回はいつにも増して酷いな…」

何も全員でため息つかなくてもいーんじゃないのさっ。
後々少しづつ説明してくれるそうです。

そもそも、基本的に私は何をすればいいのでしょう?

「お前の仕事は主の身の回りの世話だ」

…ですよねー。
侍女なら役目はそうですよねー。
専属騎士と侍女がいるって王侯貴族な風習っぽいね…。

さしあたってする事と言えば、気絶した主(少女)が目覚めてくれない事にはどうしようもありませんわ。
まずは朝食の支度でもしておくべきか…?









・・・・・・で、これがながーいメイドのような家政婦のような生活の始まりだったのです。


















(あとがき)

ついトリップさせてみました。不評ならば消します。
あと短いのは仕様です。

実際、リリカルな知識は第三期を動画サイトで、
あとはここの二次創作とWikiくらいでしか知りません。
二期はフルボッコシーンくらいしか・・・(;;




[7259] スパロボな日々外伝2 『メイドな日々』
Name: C-K◆ae02f8a5 ID:27ec9c7b
Date: 2010/01/12 21:12


赤い騎士はたった今、スクラップを造り上げたハンマーを一振りで元に戻すと鼻息荒く肩に構えた。

「これで終わりか。あっけねェな」

「だが、ヒヨっ子に任せるわけにもいかん」

四足歩行で近付いてきた同僚に頷くと振り返り、もう一人の同僚に尋ねる。

「ほかに反応は?」

「うーん・・・。変ねえ・・・」

「まだ残っているのか?」

手元の宙に浮いたディスプレイを見ながら首をかしげる緑の同僚。
幾つか追加項目を添えて周辺地図を拡大、走査したのちに眉をひそめる。

「離れたところにもう一機居たのだけれど、反応が消えちゃったのよ」

「離脱したんじゃねェのか?」

「直前までは把握したのだけれど。いきなり光点が消えてしまって・・・」

二人でう~んと考え込んだのを見ながら、建造物の方を見るもうひとり。

「あいつはどうした?」

「それなら近くに居るわよ。こちらに近付いて来てるけど」

”あいつ”の接近して来るであろう方向を指差すおっとりした女性。
赤い騎士と狼がそちらに視線を向けると、ビルの陰からくだんの人物が姿を現すところだった。

・・・宙に浮かびながら・・・。











「なんだそりゃッ!?!」

「え? 何だって言ってもさあ・・・」

黒いドレスにエプロン、いわゆるメイド服に身を纏った少女。少女というには騎士ヴィータより背は高い。

そばに突っ立ったままの守護獣ザフィーラにも反応がないところを見ると、軽く絶句しているのであろう。
さっきから彼女の足元を見ながらあんぐりと口をあけたままだ。

なんか握った手をわななかせ、言葉を選んでいるであろう騎士ヴィータを見て、
同僚の騎士シャマルだけは、ここは自分が突っ込むべきなのではと思った。

「そのガジェットはどうしたの?」

「OHANASHIして取り込んじゃったけど?」

何でそんなことを聞くのか? と、きょとんとした表情の少女。
守護騎士の一員サクラは、先程取りこぼしたカプセルに似た円錐型機械兵器、ガジェットドローンに座っていた。

さっきはザフィーラやヴィータに積極的に戦闘を仕掛けてきたのだが、それもない。
まるで自分の定位置はココだ。とでもいうようにサクラに椅子代わりにされてても、振り落としもしない。

ヴィータのなにかを我慢している様子を見て首を傾げ、「よっと」とガジェットより飛び降りる。
すると自分の役目は終わったと、レンズを点滅させて周囲の明りのせいで長く伸びたサクラの影へ沈んでいく。

「んじゃ、ガーくん。また用事あったらお願いね」

沈んでいくガジェットに軽く手を振ってにこやかに語りかけるサクラに、ヴィータが爆発した。

「・・・こ、こここここの馬鹿ァ野郎っ!!!」

「えーー」

反面、相手も長い付き合いだ。突然爆発する同僚にも慣れたもので、軽く受け流す。
無駄につま先だけで一回転、スカートをふわりと広げ、にこやかな笑顔でヴィータに接近。

「なんでー? 馬鹿って言った方が馬鹿だと思うのよ。ねぇ、ヴィータ」

「お、お前は仕事終わるまで離れてろって言っただろうがっ!」

至近距離で澄んだ黒瞳に見つめられ、頬を染めてそっぽを向く鉄槌の騎士。










   ◇ ◆ サクラSide ◆ ◇


私がなんだか良く分からない事情で守護騎士の一員となってから10年がたちますた。

最初はもはや家事手伝い。つまりメイドとして、八神家をはやて嬢と切り盛り。
何の事情も理解しないまま闇の書事件が始まり、魔女っ子大戦を経てリィンフォースの消滅をもって事件終了と。

戦闘能力が無いからって始終かやの外だったね! 

無い事も無いのだけれど、私の保有する【機神図書館(マシン・ビブリオテーク)】だと,
管理局法で質量兵器扱いだそうなので余計な罪状が増えたり、故意が無くても死亡者が出たりする可能性があるので
使えなかったそうな。って言うか、私が自己申告するまでそんなスキル持ってるのすら誰も知らなかったらしい。

その代わり、最後の最後にしか会うことが出来なかったリィンフォースについては「主を頼む」と握手された時に
プログラム情報を読み取り、最適化して【機神図書館】へデータをプール。

みんなの悲しみが一段落した頃に「こんなんなりました~」と公開したら、
絶句された後、泣くやら喚くやら喜ぶやら阿鼻叫喚の騒動に。


但し、変質はどうにもならなかったけれど。
私のビブリオ内の子供(メカ)達は私を『主』と呼ぶために、もう二度とはやてを『主』と呼ばなくなってしまった。

でも、はやてはそれでも構わなかったみたいだ。


それから、リィンフォースを参考にしてはやて専用ユニゾンデバイス、
リィンフォース・ツヴァイが作られ、八神家は更に騒がしい場所へ。

リィンが二人だと呼びづらいので、私の方をアイン、八神家の末っ子をツヴァイと呼んでいる。
そう呼称しているのは私だけだが。

シグナムとヴィータとザフィーラとはやては「アイン」「リィン」、
シャマルは「リィン」「リィンちゃん」と呼んでいるみたい。

でも肝心のツヴァイは私のことを「グランマ」と呼ぶのよね・・・。
アインがお母さんで、アインの主だからおばあちゃん、と・・・・・・・・・・・・。


あと私にも多少利益はあった。
リンカーコアが欠片もない私でも魔法が使えるようになったのだ。手順が少々ややこしいけれど。

まずアインを外に出す。
私のアインは消滅直前の夜天の書がデフォなので、そのデータ内には実体再形成前の守護騎士のプログラムがある。

そこから外部ユニットとして疑似リンカーコアを形成。その先の魔力チャージとコントロールはアインに一任。
私は射撃系のPTを自分に憑依。ヴァイスリッター辺りのライフルが丁度いいんだ。

後は弾核にチャージした魔力を装填、射出、
着弾した後にディアボリックエミッションとかサンダーレイジとかが発動するという仕組みです。

もちろん兎集したデータもあるので、
なのはちゃんのSLBやフェイトちゃんの魔法再現も出来るのですが、
疑似リンカーコアのチャージ出力の問題もあるので、
なのはちゃん並みの威力出そうと思ったら、チャージだけで凄い時間ロスに。

時間さえ稼げるのならば遠距離砲台としては使える、というレベル。

なので結果、普通には役に立たないと…orz
機会があったら守護騎士遠距離射撃担当、兼普段はカートリッジ蓄積係になりました。





私自身管理局には所属してないで、ザフィーラと同じく八神はやての保有戦力になっているのだ。
つまり使い魔扱い。当初はコレについてはやてがゴネました。
しかし、私は自己責任とかまっぴらごめんなので、この扱いで十分。


お仕事は、はやてとヴォルケンリッター達の身の回りのお世話。
新しい部署キドーロッカーとかゆー所では、小間使いということになっています。

お仕事手伝えればいいのですが、そちらツヴァイが担当することなので、基本的には自宅待機。
海鳴の実家に残るのも検討したんだけど、家族がバラバラになるのを嫌ったはやてにより却下。

故に普段はキドーロッカー内でお掃除とか、
食堂にお邪魔させてもらって、はやてやヴィータやツヴァイのためにデザート作りとか?


今回のヴィータ達の夜のお仕事も非常呼集とかで。
四人でご飯でも食べに行こうと、誘った矢先の事態だったのです。

「私は街中で待ってるよ~」

とは言ったのだが単体で魔力を持たない私には念話が使えなく、連絡するのが面倒との事なので一緒に付いて来たのですよ。
シャマルの感知範囲内で後方待機だったけど。

アインが念話使えるじゃないかと言われそうなのだが、
アインの存在は旧アースラクルーとなのは&フェイト以外には公表されておらず、
はやての許可がないと私でもそうそう使えない。

なので、街角でぼへーと待っていた所へガジェットが接敵してくるから、
仕方なく私の持つ固有スキルの副産物【機神(マシンマスター)】で魅了→虜→下僕、と三段コンボ。

それに乗っかってシャマル達へ合流したら、何故かヴィータがキレました。
・・・ホワィ?






   ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

最初のうちはヴィータが

「無茶やってんじゃねーよ!」

「BJも作れない奴がノコノコと前線に出てくんな!」

「なんかあったらはやてが悲しむだろーがっ!」

・・・と、説教をしていたのだが。
俯いたまま震えているサクラを見て、顔をひきつらせた。

「なっ! ばば馬鹿やろぅ。こんなんで泣く・・・」

言いかけた言葉は、突然に抱きすくめられた事によって遮られる。
本人的に言うと、 博 愛 固 め !

「サクラッ!? てめー泣き真似かっ!」

「違うよう~。ヴィータのツンデレ全開の優しさに感動した!」

「だから、ツンデレじゃねーって!」

「ああん、この抱きごごち。ハガネ達に匹敵するわぁ~」

「ワケのわかんねー事言ってねーで、さっさと離せ!」


珍騒動を一歩離れた所から見ていたシャマルは苦笑いでそれを眺めていた。

「最近忙しくて会ってなかったけれど。かわりはないみたいね」

問いかけるは、その脇で平然と騒動を見物するザフィーラ。

「毎日楽しそうにあんなものだ。主が加わる事でセクハラ度が倍増するが・・・」

「それは大変そうね・・・。シグナムとか?」

「後はテスタロッサだな・・・」

人型であれば哀愁すら漂ったであろう。背中の寂しさが物語っていた。

珍騒動の方はひとまずヴィータがサクラを引き剥がしたものの、背中から抱くような格好で身なりを整えさせられていた。

「また緊急要請が入らないうちにご飯食べに行こう。あ、ザフィーラは人になってね」

「誰のせいで時間食ったと思ってんだよ。ったく・・・。シャマルもザフィーラも助けろよな」

「楽しそうだったから」

「忙しいからと言ってなかなか帰って来ないから、たまに会うとこうなるのだ。今分かっただろう?」

「アイ~ン、ヴィータが冷た・・・・・・」

  「「「呼ぶなっ!!」」」












   ◇ ◆ サクラ side ◇ ◆


さて、それからいくらか日々が過ぎて、新人くん達が新デバイスで初出動を果たした翌日。
私が朝食後、隊舎の周りを竹箒で掃除しているときでした。

ちなみにこの竹箒、普通にホームセンターで売っていたものです。
まあ材質はプラスチックみたいだけど・・・。

魔法文化でもこういったものは変わらないと実感した。


「サクラさーん!」

そこへチビっ子二人がやって来た。

「・・・エリオくん。キャロちゃん?」

エリオくんとキャロちゃんなのだが、その昔フェイトちゃんが二人の保護者になった頃、
遊び出かける時のお弁当作ったり、一緒に遊びに行ったりで、初対面ではないのですよ。
課開式のとき、制服姿見てびっくりしたけど。

「リィン曹長に居場所聞いておいてよかったです」

「どうしたの二人とも。訓練じゃなかったの?」

「なのはさんがサクラさんを呼んできてくれって」

「・・・・・・は?」

何故訓練にメイドが必要になるんだろうか?
真面目ななのはちゃんが教え子放っといて、ひとり寛ぐなんてしないだろーし。

首を傾げていたら、キャロちゃんが手を引きエリオくんが背中を押してきた。

「行きましょう。みんな待ってますよ」

「早く早く」

「わ、わ、ちょっと待った。片付けてから行くから。少し待って」










訓練場までエリオくん達に引っぱられて行くと、なのはちゃんが満面の笑みで、
オレンジツインテールが何あんた? と言った態度で待っていた。

「「連れてきましたー」」

「ご苦労様」

「魔王様、話が見えません」

「魔王って言わないでください!」

軽く突っ込むが、文句言ってないで理由ぷりーず。
訓練生四人の輪に戻るキャロちゃん達。
青いのとオレンジ色のに何か言われているようだけど、私の素性だろう。

「魔王様の覇業を阻むような呼び出しは、とんと心当たりが無く。何のご用でしょう?」

「魔王関連から離れてくださいっ!」

声を荒げて突っ込むなのはちゃんが珍しいのか、横に立っていた眼鏡のお姉さん唖然としているが。

「はいはい、グランマ。なのはさんをからかうのもそれくらいにしてくださいですぅ~」

「ありゃ、ツヴァイ?」

居たんだ、気が付かなかった。
主に小さいとか小さいとか目立たないとか目立たないとか。

「とりあえず、こちら注目ですぅ」

とか言って全員が見渡せる中空、大体なのはちゃんの目線位を指差した。
ぱきょっとウィンドウが開き、課長室に居るはやてが映し出される。

慌てて敬礼する新人くん達。
苦笑いで手を振り、それを解除させるはやて。

 『サクラ?』

「はいはーい! 此処にいまーす。何かご用ですか、はやて。ってか私が呼ばれた説明を下さい」

 『まあ、あれや。ちょっとした経験みたいなもんでな』

「・・・はあ?」

 『なのはちゃんやフェイトちゃんも賛同してくれたし。リンディさんやクロノ君にも許可取った』

・・・・・・おいおい、もしかして。

 『サクラ。オールウェポン使用許可や』

「正気かっ!?」

 『本気や!』

「久しぶりに母様に会えますぅ」

つまりこんなとこでそれを言うって事は、エリオ達と訓練しろというのだろーか・・・。

私の【機神図書館】内では割と自由度の高いアインは、
色々と外部からデータを取り込んで、更なるバージョンアップを可能にしている。

「か、母様っ!? なんで小さくなってるんですかっ!」

私の首元、髪の影より姿を現したアインは、ツヴァイ並みの大きさだった。

これは本人からの申告で『チビがまとわりついてウザイ』、ことによって作り出された外部ユニットなのよね。
あれだ、STGの子機みたいなの。
アイン本体はまだ私の『中』に居る。

とりあえずこのユニットも使った事が無く、ぶっつけ本番にやってみるけど。
はやてやなのはちゃんも変な顔して驚いているが、近寄ってきたツヴァイも無反応な子機アインに戸惑い気味だ。

無反応なのはしかたがない。
疑似リンカーコア制御以外の機能、感情とか個性とか要らない部分は削りに削ったと言う戦闘用子機アインなので。

『そんなにツヴァイが嫌いか・・・?』と、これ作ったとき聞いたのだけど・・・・・・。
『母とか呼ばれるのが気恥ずかしいだけです』そんな答えが返ってきた。

間違いなくはやてブランドだこいつ。

まあそんなことはこっちへ置いといて。

「初めての人も居るから名乗っておこう。私はサクラ。ただのサクラ。
 見ての通りはやて専用メイド。これはアイン、子機だけどね。」

「こ、子機ですかぁ?」

「そ。ツヴァイがまとわりついてウザイんだって。制御用特化」

「・・・・・・う、ウザイ・・・・・・」

ガガーンと云う効果音とともに灰色の背景背負って、縦線がイッパイ降りてきて、空中で崩れ落ちるツヴァイ。・・・器用な。

「あ、はい! スバル・ナカジマ二等陸士です」

青髪バンダナの子が敬礼しながらデカい声で反応してくれるけど。
わたしゃー左官でもなんでもないから敬礼はいらないんだよ、階級も。

「ティアナ・ランスターです」

「私はシャリオ・フェノーニです。シャーリーって呼んでくださいね。それで・・・」

シャーリーが自己紹介の後、何か言おうとしたのをなのはちゃんが遮る。

「あのね、シャーリー。サクラさんのアインはデバイスと違うから。機器は組み込めないんだよ」

「そうなんですか・・・」

なぜそこで残念そうなんだ?

「スバルちゃんとティアナちゃんとシャーリーちゃんね」

「ちゃん・・・」

気が付いたらはやてのウィンドウ消えてるし、聞くなら一番偉い人。

「なのはちゃん一等空尉白い魔王様、それで私は何をすればいいの?」

「・・・はぁ、もぅいいです」

「ええと、グランマはとりあえずスバル達の仮想敵を勤めてもらいますぅ」

あ、ツヴァイ復活した。

「仮想敵? 4vs1で? それなんていじめ?」

なのはちゃんに視線を向けてみる。

「ええとですね。今の内に一度厄介な相手と戦っておいた方が、
 多少なりともこの子達のためになるかと思いまして。宜しくお願いします」

厄介なモノ扱いかい。殆ど虎の子のような、最後の切り札だから。とか、シグナムが言ってたんだけど。
後で将とか鉄槌とかにぐだぐだ言われても知らないぞー。

無言で居たのが拒否宣言と採られていたのか、ツヴァイが駄目押しの一言を。

「グランマに拒否権はないのですよ。何故ならば、はやてちゃんの命令だからです」

「・・・・・・げ」

はやての命令ならば、『守護騎士』の一人として従わない訳にはいかないなぁ。











結局は、訓練場である立体映像から立ち上がったビル街。
ッつーか、どうなってるのよこれ・・・。けったいな科学の進歩だよね。

の、メインストリートとも呼べる交差点の中央に立ち、新人君四人衆を待つことになった。

何でこんな見通しの良い場所で、狙われ易い所を陣地に設定したか、というと。
障害物なんぞ、あっても無くても変わらないからである。

私の右肩には横を向いて、両手を中空に差し伸べる子機アイン。
その延長上に浮く、直径1m程の光り輝く擬似リンカーコア。

左脇にはアインが並び立ち、擬似リンカーコアから生み出された魔力で周囲に十数個のスフィアを形成している。
ちなみに私自身は背中に、十字と丸を組み合わせた金色の背部ユニットを背負っている。
ネオ・グランゾンを憑依させている状態なのだが、これが今のところ自分で制御できる保有戦力ギリギリ。
ちなみに攻撃役アイン。私はG・テリトリー(ギリギリ質量兵器)で防御役。

なのはちゃんとかに例えるなら、自分のリンカーコアを制御→デバイスで効果的に排出。なのだろうけど。
私の場合、擬似リンカーコアを子機アインで制御→アインで更に変換して射出。ってことになる。

『中』より外に出してまともに制御できるユニットが、最大数三しかない。のが問題なのよ。
憑依のネオ・グランゾンで一つ、プログラムを最大限削った子機アインと擬似リンカーコアがセットで二つ。
攻撃役のアインで三つ。これ以上は出せないこともないのだが、鬼が出るか蛇が出るか。

訓練とはいえ、敵対する相手がいるから、攻撃力に特化した何かが勝手に飛び出してくると思う。
ジュデッカとか、クロガネとか、ジガンスクードとか。最悪セプタギンとか出てきたら眼も当てられません。









   ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ 

「ちょっ!? なんなのあの人?!」

ティアナ・ランスター達は攻めあぐねていた。

Aランク魔力相当の球体を背後に浮かべた、メイド姿の女性。
隣に立つ、リィン曹長を人間サイズにした目つきの悪い長身の女性。

周囲に浮遊する数百発以上の魔力スフィア。
このスフィアが攻撃防御を兼ねていて、ティアナの誘導弾をことごとく撃墜している。

はっきり言って防御が突き抜けられず、メインターゲットであるメイドまでダメージが通らないのだ。
中遠距離には情け容赦無くスフィアが降り注ぎ、運良く至近弾が通ってもメイド手前で四散する。

しかもあちらはこちら側なんぞ眼中に無く時折、隣の女性に話し掛けては笑みを見せている。

「あんた達あの人知ってるんでしょう? 戦い方とか判る?」

「いえ・・・。私もサクラさんが戦える人だなんて今日初めて知りました」

「僕もです」

フォーメーションを組み直すのに一度エリオとキャロを呼び戻し、尋ねるが有益な情報は得られなかった。
スバルが居ないのは、開始早々に突撃してあっさり無力化されたからである。

相手が十字路の中央に陣取っていたために、前後からスバルとエリオが突撃したのだ。
が、交戦距離まで接敵する直後、二人ともBJ解除、デバイスも待機状態にまでされた。

エリオは転がって距離を取れたが、
足の止まったスバルは良いマトでスフィア数十発の集中攻撃を喰らい路上で伸びている。

しかも地形のオペレートに干渉しているらしく、サクラ周囲のビル街が次々と消えていく。
これについて、なのはに問い合わせたが、あちらは一切手を加えてないとのこと。

「六課の、なのはさん自慢のフィールドシステムに干渉ってどういうレアスキルよ・・・・・・ッ?!」

慌てて散開したティアナ達が居た所に、魔力弾が雨アラレに降り注いだ。









   ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ 


「おーおーおー。苦戦してる苦戦してる」

「あいつらは典型的な『管理局』の魔導士だからな。サクラには傷ひとつ付けられぬだろう・・・」

隊舎の見晴らしの良い場所から、戦闘を眺めているヴィータとシグナムがいた。
長い付き合いの彼女らにはサクラとの模擬戦経験もあるが、
シグナムとヴィータの技量をもってしても、サクラの防御陣を抜くのは至難の業である。

そうこうしている内に、サクラ達の気配が変化を遂げていた。
周囲に浮かべるスフィアが先程より数を減らし、サクラの背面ユニットが五枚の羽に変わり、長いライフルを片手に。

「さっさと終わらせたいらしいぞ」

基本彼女の仕事は、隊舎の掃除やはやての世話だ。
あれでいて毎日楽しそうにしているのを、守護騎士達は知っている。

模擬戦なんぞに時間掛けている暇はないと、言ったところだろう。
しかし、第一射を放たんと向けられた方角を見て、ヴィータとシグナムは顔を引きつらせた。
















少し時間を戻して、監督として戦場の各自ステータスを見ていたなのはの方は。

「なんですかこれ? なんですかこれ?!」

目に見えるデータを拾っているシャーリーは、普通ではあり得ない数字の羅列に唖然としていた。
それでも手を止めない辺りは流石と言うべきか。

「あー・・・。サクラさんだからねえ・・・」

つい先程設定したばかりの戦場フィールドが、あちこち書き換えられていく。
コレがシステムにハッキングとして認識されて無いのが、彼女の恐ろしい所であるが。

ちなみに彼女には機械式の通信機を渡し、会話や独り言の一部始終を拾って記録中だ。
アインを中継とした念話にしないのは、アインがサクラの不利な会話を流そうとしないからである。

それでも、戦闘に関わるような事を、全く喋ってないのが彼女の彼女たる由縁か・・・。

 『アイン・・・』
 
 『なんでしょう?』

 『ツヴァイの事、あんまり邪険にしないであげてね?』

 『主が言うのならば善処しましょう』

 『・・・もう・・・』

その会話を聞いて滂沱するリィンがいたりするが、なのはは苦笑いだ。

 『主、先程の途中作業は私が引き継ぎましょう』

 『有難うね、アイン。だったらはやてにお茶いれてくれるかな?』

 『・・・・・・・・・・・・』

 『・・・ だ め ?』

 『わ、分かりました。お茶汲みごとき主の手ほどきを受けた私には、モノの手間では無い事を知らしめてやりましょう』

 『うん。お願いね』

この辺りのくだりでフリードがブラストフレアを撃とうとしたが、
誘導弾によりアッパーカットをくらい硬直した後、フルぼっこにされ沈黙した。

「グランマ、手加減無用ですね・・・」

「サクラさんじゃなくてアインさんが容赦ないんじゃ・・・」


なのは手元の戦場フィールド画面がいきなりめぐるましく変化した、
ティアナ達の行く手を遮るように壁が形成され、迷路のごとく地形を変え、逃げ道を無くしていく。

 『アイン、射撃モード』

 『判りました。防御へ20、80はチャージへ回します』

 『最初は何処撃とうか?』

 『でしたら、あちらなどどうでしょう?』

 『あっちって・・・・・・。烈火のごとく怒られそうだなぁ・・・』

 『それも私が引き受けましょう』

 『そお? じゃお願い』

 『はい』


かくして、何処かで見たような魔法陣で何処かで見たような色違いの砲撃が、
"隊舎から見物していた二名の職員"を掠めて空の彼方へ消えて行った。


 『ばばばばばかやろー!!あぶねーじゃねーかっ!!』

 『・・・高町。危険行為は監督している貴様にも責任があるぞ』

「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"・・・・・・」

即入った抗議の念話に、高町なのは一等空尉様は突発性頭痛を起こし、頭を抱えて現実逃避に走ったとか。
ティアナ達は極大威力砲撃によりあっさり意識を刈り取られ、全滅判定とされた。












「い、いやあ、アインがお茶淹れてくれるなんて・・・。ウチは幸せ者やなあ・・・」

数刻後、課長室ではやてのためにじっくりとお茶汲みに徹するアインがいた。
はやてとしては、満面の笑みでその幸せを噛み締めたいのだが。・・・だが、しかし・・・

【危険行為誘発による監督不行き届き】という始末書が手元にあり、
諸悪の権現の片割れがアインともあって、素直に喜べないでいた。

この一件により、サクラを戦闘訓練行為に関わらせる事案が、無期限停止されることとなる。











  ぱちぱちパチ

「ふつーに平和が一番だよねぇ」

  きゅくるー

「・・・・・・サクラ。フリードと落ち葉で芋焼いちゃダメだよ・・・」

「フェイトちゃんが冷たいんだよ。せっかくアルフに地球から芋送ってもらったのに・・・」

「ええっ!? し、しょうがないなあ・・・・・・アルフってば。もう」

「フェイトちゃん、騙されてる騙されてるよ・・・」(←滂沱)




 終われ















(あとがき)
ごめんなさいごめんなさい。
終わったのに外伝追加しました。
あちこち捏造設定と自分解釈だらけです。





[7259] スパロボな日々外伝3 『終末的な日々』
Name: C-K◆ae02f8a5 ID:27ec9c7b
Date: 2010/04/08 23:51



「ふむ。なかなか興味深い事例だ」

「そうですかねー?」

クラナガンの繁華街。場末の飲み屋に私達は居た。
居るのは私と飲み友達のジョン・スミスさん。

私の故郷じゃ偽名っぽいけども、魔法世界じゃあそんな名前もあるのかなって。
ジョンさんは金髪ロン毛にぐるぐる眼鏡、ヨレヨレのワイシャツとスーツズボンにいつも新品の白衣。

何処かの下っ端研究員らしい。
そもそもの出会いは彼が酔っ払って植え込みの中で爆睡していたのを介抱したのがきっかけだ。

機械工学や生物学を専門としているらしいので、おじ様の時のように時々相談に乗ってもらっている。

「効果範囲内の機械はすべからく、君の支配下に入るのかね?」

「声が届けば入るんじゃないですかね? 流石に距離まで測定したわけでもありませんが・・・」

「その辺を走り回っている交通系もキミの支配下にいるわけだね」

「例え運転手が居眠りをしていても、こっちに特攻はして来ないだけだと思いますがね」

「危害を加えない、邪魔にならないといった条件を満たさなければ、君が命令しない限り機械の本分を果たすわけだね」




だよねー。そもそもこの"現象"を制御しろってば、はやても無茶言うわあ。

前の模擬戦で、突撃してきたスバルちゃんとエリオくんのBJが強制解除になった理由がコレなのだ。

シャマルが言うには、デバイスを使うことを前提とした魔導士では私の敵にはなり得ないとか。
シグナムが言うには、デバイス無しで魔法を操り、
体術だけでフルドライブのフェイトちゃんを圧倒できる者が、私の敵になるらしい。


・・・・・・・・・何処に居るのよそんな化け物。










こんな話が上がった経緯なのですが、敵に戦闘機人とかいうサイボーグみたいなの? が居て。
それに対抗するために一番適任なのが私とか。

だがしかーし!
ここで懸念事項になるのが前線に出ている仲間のデバイスにすら干渉する私の能力が、味方を大混乱に陥る可能性だとか。





















一度遭遇した事例を上げると。
違法魔導士が人質を取ってたてこもる事件がありました。

勿論人質の中に私も入っていて。
つい、「ウゼェ・・・」とか言っちゃったのよね。

そうしたら犯人のデバイスが犯人の魔力を使い拘束(バインド)。
犯人の魔力が無くなるまで、犯人に魔力弾をぶつけまくるという・・・。

管理局史上類を見ない前代未聞の珍事件として記録され、未だに解決されてないとか。
まあ、私の事情を知っているフェイトちゃんが担当した訳でもないし、迷宮入りにもなるわな。













つまり、私を守るためにデバイスが術者を魔力タンクとして使用しかねない。
・・・という危険性を含んでいるんだよね。

はやては私の制御内能力だと思っているらしいのだが。
私にとっては勝手に発生する現象のようなものなんだよねぇ。

どうやって制御しろっちゅーねん。















「難しい事だねぇ・・・」

「難しいでしょう?」

私も色々と考えたのだが、ジョンさんに片っ端から却下されました。


1.他の職員を連れて行かない。
回答.機動六課の存在意義がない。

2.長距離砲撃魔導士に援護を頼む。
回答.該当者、白い魔王のみ。

3.魔導士を連れて行かなければいい。
回答.誰を連れて行くのか? その者達の安全は?

4.変装し正義の味方として戦闘に颯爽と登場。超重力砲撃により全てを葬り去る。
回答.まず間違いなくS級危険人物として指名手配が掛かる。

以下略・・・。

考えていくうちにだんだんテロリスト並の発想しか浮かばないのは、烈火の将の影響かなあ?















「いやはや、興味深い議題だね。仕事の合間にでも解決策を思案してみるとしよう」

別れ際にジョンさんがそんなことを。

「わ、ホントですか? お仕事忙しいのに大変じゃありませんか?」

「私にとっても人事じゃない気がするのだよ。大船に乗ったつもりでいたまえ」

そう言って、いつも迎えに来る美人の秘書さんに連れられて帰って行きました。
ジョンさん実は下っ端じゃなくて、所長さんじゃないんかな?
世の中には親切な人がいるんですねー。















・・・などと安易に他人を信用するのも、問題があった訳ですが、








   ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


公開陳述会から始まる大規模な襲撃事件の後、六課の行方不明者は三名。
ギンガ・ナカジマ
ヴィヴィオ
サクラ








「サクラも攫われたあ?!」

事後処理のクソ忙しいさ中、シャマル達の見舞いに赴いたはやては予想外の報告に驚愕していた。

襲撃中は非戦闘員をまとめて防御壁を張っていた筈だが、
シャマル達を人質に取られたらしく、ヴィヴィオもろとも戦闘機人達が連れて行ったとの事。

未だ擬装途中でドッグに係留中のアースラまで戻ったはやては、
更なる『ゆりかご浮上』の報告によってサクラがさらわれた理由が判明した。









「サクラさんがゆりかごを動かしている!?」

「攻守ともに完璧って奴かよ・・・」

出航したアースラ内での対策会議。
はやてがもたらした事実になのは達、主に古い付き合いの仲間達に動揺が走る。


『ゆりかご浮上』の時点でスカリエッティのアジトに潜入したヤサ男から、
何故か放置されていたヴィヴィオを、無事救出したとの報告が上がっていて、なのは達は安堵していたのだが。


「確かに、暗示でも掛けてしまえば奴らの操り人形となるでしょう」

憶測だが大体違わない方法を言い出したシグナムだが、心配事は違うところにあった。

「はやての管理下に居ないサクラですが、暴走の危険性があります」

「・・・・・・は?」

いきなりはやて命の将に突飛な発言をされ、はやてのみならず、なのはとフェイト、ヴィータまでも目が点になる。

事件の部外者が居る場で話すべきではないと思ったので、最悪の場合も踏まえ、念話ではやて達へ送った。

『お忘れですか? 我々は一度、夜天の書に再生されましたが、
 あそこに居なかったサクラは未だに闇の書の守護騎士なのですよ』

「・・・・・・・・・・・・・・」

当時、事件後ごく普通にしてたため、誰も気にしなかった問題点にエアリーダーが突っ込んだ。
しかも本来ならそのプログラムを制御するべき夜天の書の管制人格が、よりにもよって彼女の配下にある。

他にも一度だけ、彼女がシグナム達を助けるのに使った巨大な機動兵器。
質量兵器を満載し、似たような型が他にも数十機と所持されているらしい。

そんなものがミッドチルダの空を覆う最悪の未来を想像したはやて達以下五名の頭から、音を立てて血の気が引いていく。



無言状態から真っ青になる隊長陣の姿を、びびりながら観察していたティアナは、申し訳程度に手を挙げて発言した。

「あの~、内部に突入してあの人を助け出すというのは出来ないんですか?」

「難しいな・・・・・・」

真っ先に復活したヴィータがティアナの提案に難色を示す。

「お前らデバイス無しでガジェットと戦えるか?」

「えええっ!?」

いきなり地獄へ突き落とすようなヴィータの問い掛けに、よく考えもせずスバルがすっとんきょうな声を上げる。
ティアナは肘で小突いて黙らせてから、脳内シュミレートしたが、勝てる要素が何処にもなくあっさり首を振った。
エリオとキャロも顔を見合わせて戸惑っている。

「つまりはそーゆーことだ」

「サッパリ話が見えないんですが・・・?」

「どーすっかなあ・・・・・・」


視線をはやてに向けてアイコンタクト。
サクラのスキル情報は、使い魔として管理しているはやてに権限があるためにヴィータには話す事が出来ないのである。

衝撃の事実から復活したはやては今後これからのこともあるので、最悪以外の事は話すことにした。

「サクラは自力じゃ魔法が使えん。弱点はそこや」

「え? ですけど模擬戦は魔法飛んできて・・・え?」

「話は最後まで聞いてからにしようね。エリオ」

「サクラは管理局員の天敵でもある。アレの一番厄介な所はそこや」

ぶっちゃけ結論だけ蒔いたはやての言葉を、なのはが引き継いだ。

「模擬戦で実感したと思うけど、
 サクラさんは周囲の機械を全て味方にしちゃうの。フィールドのシステムもデバイスも例外なく」

苦笑いして告げるなのはだが、些細な行き違いからサクラと事を構えた過去があるだけに、その恐ろしさはよく知っている。

レイジングハートをあっさり奪われたあげく、訓練室の隅に追い詰められ、
さらにおしりぺんぺんの罰ゲームを映像に残す。・・・という辱めを受けたのはトラウマである。

フェイトやヴィータにしたって似たようなものだ。
唯一、最初から魔法無しで戦ったシグナムだけが、サクラの使う変則的な武術により散々苦労して引き分けである。

デバイスに頼りきった戦い方しかできない管理局員には荷が重い。

だからと言ってこのまま放置してもクロノ提督の指揮する艦隊群に木っ端微塵にされる可能性がある。

「とりあえず、なのはちゃんが外から長距離砲撃、フェイトちゃんはスカリエッティの方へ。
 ヴィータとシグナムはティアナ達を率いて戦闘機人の方へお願いや」

「「「「「「「了解!」」」」」」」

解決策に繋がるような案も無く、はやては問題を先送りにすることにした。
とりあえずは出来ることから始めようと。













   ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


「・・・フ・・・・・・・・・ウふ・・・」

一方、ゆりかごの玉座に据えられ、瞳からハイライトを無くした守護騎士メイドは・・・・・・。

「・・・ふ・・・・・・ふッ、フフ・・・・・・・・・」

スカリエッティのアジトに連れ込まれ、
衝撃の事実に茫然自失になったところで洗脳マシンに掛けられ、ゆりかごを起動させた。
と、スカ陣は認識していたが、マシンに頼った時点でアウトである。

たしかに騙される方が悪いのだろうが、飲み友達がスカリエッティだった事実を突き付けられ、
実の父親に脅迫紛いに誘拐された過去がフラッシュバックし、怒髪天を突く怒りで真っ白になっていた。

一応監視のために別の場所に乗っている眼鏡や砲撃娘なんぞ、
制御を奪われたガジェットにより全身の関節をぶっ壊されて箱詰めにし、首だけ出した状態で放置されている。


「・・・・・・ゆる・・・・・・さ、ん・・・」

前の世界から弾かれ、トリップのような形でこの世界に紛れ込んだサクラにはプログラムの暴走などは無縁である。
この操られているという状況を使って、暴走する大義名分が得られたことが状況を生んだスカリエッティの落ち度であった。

元々の世界でもやったことのない全機出撃と目標を定めての全力攻撃。

一番最初に命令だけ与えておけば、彼女の【機神図書館】内の配下達は従うのである。
問題は目的を達成した後がどうなるか不明瞭なことだが、
怒りに狂ったサクラには、そんな些細なことなど脳内には無い。

「オーダーはゆりかごの完全破壊。塵一つ残す事無くこの世から抹消」

暗黒大魔神と化した修羅は配下達へ命令を下す。
一応聞き入れてくれるかどうか「抹消したらすぐ撤収」と、付け加えて。

次の瞬間、足下から天井へ螺旋の衝角が突き上がった。













   ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


真っ先にそれを目撃したのは、ゆりかご周辺でガジェットの掃討に当たっていた航空武装隊と、
時折ディバインバスターを放っていたなのはだった。

「・・・なに・・・あれ・・・」

上甲板からドリルが突き出し、装甲板をぶち破り、押しのけ、引き剥がしながら螺旋の付いた黒い船体が姿を現した。
鬼子が自ら母親の腹を引き裂くかのごとく。

ゆりかごの内部から巨大なドリル付きの戦艦が生まれていた。

上からだけでは無く下からも、影の中より翼をもつ紅い戦艦。縦に二つの角をもつ茶褐色の戦艦が姿を現した。

追従して、大小様々な人型の機動兵器が、熟れた実が落ちるかの如く影から生まれ空に出現する。

遠く離れたアースラから、モニターに捉えられた光景を真っ青になって六課のメンバー、特にはやてが見つめていた。

「・・・さ、最悪や・・・・・・」

「な、・・・なんです・・・か・・・、あれ・・・?」




スバルらと共に戦闘機人をあらかた無力化したヴィータ達の頭上を、銀水色の鳥が弧を描いて飛んでいった。

「あれが・・・、サクラの・・・・・・」



エリオとキャロ、ルーテシアが茫然と見上げる中、
光輪を背負った紺濃色の人型と、大剣を肩に構えた武人がビルを軋ませながら着地した。

「こ、これ・・・」

「おっきい・・・」



目の前をゆっくり通過する、紫色で四つの砲門を持つ飛行体をアギトと融合したシグナムは剣を構えもせず、見送った。

『なんなんだよっ!こいつらっ!?』

「・・・敵意は・・・、ない?」



小さくても17m級、大きなモノでも50~60m級の機動兵器が総勢30体程、ゆりかごをとり囲む配置に付く。
三隻の戦艦達は甲板上に幾らかの機動兵器を載せ、ゆりかごのまわりを回っていた。

それぞれが砲門を向け、剣を構え、胸部装甲を開き、変形合体をするモノも有り。

それらの矛先が全てゆりかごに向けられたのを見て、茫然と眺めていただけの管理局員達は慌てて戦場から逃げ出した。
アースラからも退避勧告の指示が飛ぶ。

『暴走』の二文字が脳内に蔓延するはやては矛先が管理局に向けられなかったのに安堵する中、
サクラの救出すらままならないことに愕然とした。









   ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


真っ先に動いたのは黒の武人ダイゼンガーと赤の騎士Gコンパチブルカイザー。

大剣を振りかぶりゆりかごより高度まで上昇そして下降、
エネルギー波を纏い高速で突貫してきたコンパチブルカイザーとともに、ゆりかごを前部と後部に寸断した。


推進ユニットが無いためにゆっくりと落下する前部へ、エクサランス・エターナルのファイナルグランドクロス、
AMガンナーとヒュッケバイン、Mk‐Ⅱ、Mk‐Ⅲからブラックホールキャノンが炸裂。

圧壊して小爆発を起こし、落下する細かい欠片へ下から空から砲撃やミサイルが浴びせられる。



後部は下からジガンスクードのジガンテ・ウラガーノで浮かせられたところにエクスティムの重圧飛翔撃、
有り得ない力学で空中を回転しながら真横に吹き飛び、待ち構えていた三体の修羅機、
ヤルダバオト、ビレフォール、アガレスに蹴り上げられた。

歪んだ船体のあちこちから黒煙や炎を吹き上げながら、成層圏近くまで跳ね飛ばされたゆりかご後部に

ヴァルシオーネとヴァルシオンのクロスマッシャー

ガルムレイドブレイズGのターミナス・ブラスター

ハガネのHTBキャノン

ヒリュウの超重力衝撃砲

SRXの天上天下一撃必殺砲

ディス・アストラナガンのメス・アッシャー

サイバスターのコスモノヴァ

ぶち抜き、圧壊し、原型を留めぬ程ズタボロになった所へ上下から

ネオ・グランゾンとグランゾンのブラックホールクラスターが直撃。
爆光の中、黒い球体に圧縮され、波紋となって消失した。
















   ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


わずか五分も経たずに巨大な飛行物体が塵も残さず消え去った事に、
見物するしかなかった管理局員ら関係者は恐怖感を抱く。

数分間でクラナガンすら消え去るような質量兵器が余すところなく使われ、それが此方に向くような事があれば…。
誰もが最悪の懸念を思う中、各機周囲を警戒していたが、それぞれが地を空を蹴り戦艦へ向かう。

小さい機体から戦艦へ格納されて行くのを見て、人間達は安堵した。

ネオ・グランゾンとグランゾンが生み出し、空中に固定する闇の球体に三方から戦艦が突っ込み姿を消す。

最後にグランゾンが沈み込み、ネオ・グランゾンだけがその場に残る。



四方を見回す日輪背負った人型兵器とうっかり目を合わせてしまったヴィータは
重量を感じさせない機動で眼前に降り立ったネオ・グランゾンの前に、後ろのティアナとスバルを庇う様に立ちふさがった。

・・・が、ネオ・グランゾンが跪き両手にあるものを地面に下ろしたのを見て、慌てて駆け寄った。

「サクラッ!?」

戦闘機人達と同じスーツジャケットを着たサクラを苦労して掌から引きずり降ろす。
もう片手に乗っていた箱詰め戦闘機人二人は乱暴に落とされた。

役目は終わったとばかりに自らの影へ沈み行く人型兵器を見送ったヴィータは、
アースラへ任務終了とサクラの保護を伝える。


画面向こうで涙ぐみながら皆の無事を喜ぶはやてを見、事後処理とか後回しにして、サクラに甘いモノをねだろうと思った。














   ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


10日ほど眠り続けて目を覚ましたサクラは真っ先に武装隊監視の元、
フェイト含む三人の執務官に事情聴取を受ける処置となった。

最初は何処か軌道拘置所に軟禁するといった決定が成されたのだが、
あまりに自動化された所だと逆に乗っ取られる危険性があるために、本局で24時間監視体制が取られる事に。

この決定にははやて以下事件に貢献した者達からの嘆願書が提出されたが、
目の前であれだけの破壊力が吹き荒れた挙げ句、目撃者多数だったため、はやて達にはこの決定を覆すことは出来なかった。










執務官達から再三の尋問にサクラは「しりません」としか答えず三日もたったある日。
部屋に面会者がやって来た。

「・・・やあ、シグナム」

「元気そうだな。主はやては忙しいのでな私が代表だ」

「いやいや、嬉しい。それに丁度良かった」

「良かった・・・?」

訝しむシグナムの前に片腕を差し出すサクラ。
思わずその手を握ったシグナムの頭に声が響いた。

 『接触念話。体内で疑似リンカーコアを微生成させてこれが精一杯。話を適当にするさ。ここは全て監視されてるからね』

 『判った』

「はやて達は元気?」
 『結論だけ言っとく・・・』

「ヴィータがお前の作るお菓子が喰いたいと駄々をこねているな」
 『結論? なんのことだ・・・?』

「それは残念。苺アイスと見せかけて実は唐辛子アイスとか喰わせたかったのにねぇ」
 『無理しすぎた。闇の書のバックアップも無いし、後数時間で構成基幹からプログラムが崩壊する』

実際は【機神図書館(マシン・ビブリオテーク)】行使のし過ぎでこの世界から弾き出されるのだが、
その辺を説明すると、守護騎士でないところから話をしなけりゃならないので嘘を付く。

しかしシグナムは一瞬顔を歪めかけ、無理やりポーカーフェイスに戻す。

「ッ・・・、ぜひ止めてやれ」
 『アインは・・・、使えないのか・・・?』

握った手に力が篭もるのが嬉しかったが淡々と告げるしかない。
世界をとばされるのはこれが初めてじゃないのだ。

「じゃあ私の替わりにシグナムがつくってよ」
『うん、もう無理。みんなに宜しくいっといて』

「では、主はやてに作って貰うように言っておこう」
『狡い奴め。私に押し付けるのだな』

「えー、はやて忙しいでしょーが。貴女が作ってよ、烈火の将」
『いやいや、私達のしでかした事は貴女に責任が行くでしょ。烈火の将』

「こんな時だけ将呼ばわりか・・・、貴様は・・・」

「こんな時だからこそよ」

「・・・・・・ヴィータと全面戦争になったら貴様を恨むぞ・・・」

「・・・ま、頑張って。みんなに宜しく」
『あと、ありがとう。いつかまた・・・』


「ああ・・・。じゃあな・・・」

離された手をじっと見つめたシグナムは、真摯な目でサクラに向かい合った。

「ええ。ありがとうシグナム」

「将だからな・・・」

「違いないわ」









   ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


これより数時間後、本局の厳重な監視体制の中、サクラは姿を消した。
最後の監視映像には、ノイズとともに輪郭がブレ、光の粒が四散して消え去る過程が録画されていた。

ただ彼女の表情はずっと笑顔だったという。























(あとがき)
トドメが親分&食通や、SRXにならなかったのは、ゲーム時の背景しか浮かばなかったからです。
色々と不満もあるでしょうが、フルボッコしたからいいかなあ、と・・・。
あと放置していたため、ロボット名や技名をすっかり忘れていました。
中々動画のようには行かないものです。



[7259] 外伝 4 (以下色々クロスオーバー) ネギま編
Name: C-K◆ae02f8a5 ID:27ec9c7b
Date: 2010/04/05 00:06






拝啓

ゼンガー・ゾンボルト様

私がそちらを旅立ってから幾年月が経ちましたが、いかがお過ごしでしょうか。

私も旅先で【手紙を望んだ人へ届ける程度の能力】を得て、四通目になります。

兄様達は皆息災でしょうか?

お嫁さん貰ったり子供が産まれたり、老衰でお亡くなりになったりしてませんか?

実際この手紙が時空と空間を越えて届いているのか確認も出来ず、毎回半信半疑で出しています。

今回、また新しい世界に辿り着き、一見至って普通の世界かと思いきや、この年にもなって中学生をまたやる羽目になりました。

世の中の理不尽を感じてなりません。

それではまた、機会がありましたらお便り致します。

敬具

巳子神櫻 拝








微妙に失礼な彼女らしい手紙を前にして、ATX家の兄弟と隣家の兄妹は頭を抱えていた。
差出人はつい二日前に自室から忽然と姿を消したこの家の末妹である。


一日目は様子を見た。 家出にしろ、誘拐にしろ、彼女には世界最強のボディガードがついている。
何かあったらすぐ大騒ぎになるはずと思って。

しかし二日目の朝、ゼンガーの机の上に一通の手紙が置いてあった。
それから三時間おきに増えていくのである。
三通目などは皆が注目する中、中空に現れ落ちてきた。

Dr.シラカワに事の次第を説明したところ、さほど思案もせず彼の出した答えが。

「成る程、数十年単位で異世界を点在しているようですね。 しかも向こうで数十年がこちらの三時間程と・・・・・・」

つくづく数奇な人生を歩むのが好きな子ですねぇと、電話口の声は今にも大笑いしそうだったと思う。


「とりあえずは・・・・・・。 こちらから何も出来る事はありませんのね」

結局でた結論はアルフィミィの言葉通りだった。

普通の人間、些か人間のカテゴリーに当てはまらない者もいるが、櫻のように巨大ロボを操ったり出来る程の異能力者でもないし。

こちらから手紙を出せる方法もない。 精々手紙を心待ちにしながら、日常を過ごすくらいだ。
心配事の種は元気でやっているようだし。





しかしこのペースで一日八通以上の手紙が毎回ゼンガーの居る所に、(例えそこが連邦議会だったとしても)落ちて来ようとは、誰も想定しなかったと言えよう。















  ★★ スパロボ的な日々 外伝4 『 新しいスタート! 何回目? 』 ★★















   ◇ ◆ ◇ ◆ sakura side ◇ ◆ ◇ ◆



ゼンガー兄さんの顔を強く念じながら空に滑らせた手紙は、途中で溶けるように消えた。

「ホントに届いてんのかな。これ・・・・・・」

今まで数多く出した手紙にしても、自分では確認しようが無い。 あちらに同じ能力者が居るとは限らないからだ。

「つか、こんな一方的な能力、他に持ってる人なんか居ないって・・・・・・」

紫さんもなぁ。 その辺考慮してくれないしなあ。
喰えない笑顔の麗人を思い浮かべる。

しかし、届くって事はまだ生きているみたいだしねぇ。
こっちとあっちは時間の流れが違うみたいだし、何時か帰れればまた会えるのだろうが。

さて、こっちはこっちで自分の現実を直視しようか。 私は自室の扉を外からノックする音に机上の鞄を手にとった。











   ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆


「また手紙か」

「え? まあええ・・・・・・。 はい」

「そうか・・・・・・」

家から学校まで徒歩約30分。 三人でてくてく歩く中、会話はそれだけである。

・・・・・・って終わっちゃったらダメじゃん私!
今日こそまともな会話しようって決めたんだからさぁ。


今回は目が覚めたら学園都市。 また学園都市かーいっ!

ううっおうちかえりたいよー。 状況的によく判らない部分は、立場でしょう。
どこかの家族に勝手に加えられるパターンはこれで何回目だろうか・・・・・・。

家族だったり、仲間だったり、カテゴリーだったりするけど。
一度、カテゴリー”妖怪”だったときは本気で世界ぶっ飛ばそうと思った。

この場合向こうは私を知っているが、私は向こうを知らない。
毎日顔を合わせている人(私は初対面)に「あの~お名前は~?」なんて聞けるかああーッ!!

今回私の立場は目の前を歩く金髪幼女様の妹である。
一緒に歩く内のもう一人アンテナ耳飾りに長身の女性、こっちは「ちゃちゃまる」さんと言うらしい。

いい加減色々自分の能力を制御出来るようになった私には判る。
この人100%ロボット、人造人間。 まあ人種なんて関係ないけどねっ!

ちゃちゃまるさんであるが、時折私の腕を取ったりオデコに手を当てたり、人の顔をじーっとみたり。
どうもこの世界の私には病弱という称号がついていて、三日も連続で登校することすら稀だとか・・・・・・。

朝出掛ける時も、具合が悪くないかとか散々聞かれたし・・・・・・。
いや普通そんなんだったら病院に長期入院とかするよね?

この学園都市も登下校しか移動しないけど、流れる空気が何かオカシイ。
都市ド真ん中にどどーんと生えてるデカい樹とかねぇ。

クラスメートに聞いたところによると世界樹とかいうらしい。 どこの北欧神話よ。



考え込んでいたら何時の間にか学校に着いた。って会話してなーい!?

姉さん達は無言であるが、私は一応「おはようー」と声を掛けてから教室に入る。
しかし教室は直前の廊下まで聞こえてきた騒がしさが消音された。 あらら?

「・・・・・・?」

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・!!!」












   ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆


窓が震える程の歓声があがった。
小さな紙が飛び交い、ガッツポーズをとる者と、悔しさにうなだれる者。
教室にいた生徒は勝者と敗者と知らん顔で眺める者に分けられた。

「巳子神ちゃんよくやったー! 三日連続登校おめでとー! あとついでにオハヨー」

姉と従者に挟まれた自分の机におっかなびっくりやって来た櫻は、少数派の勝者和泉亜子と明石裕奈に褒め称えられた。
さすがに病弱な人間に突撃したり抱きついたりはしないものの、同じ勝者達が周りに集まり健闘を称える。


「つまり、私の登校を賭けていたと・・・・・・?」

「いやいや、巳子神ちゃんの健闘を称える儀式だよ。 平凡な学生生活に添えられた清涼剤みたいなものだね」

胴元であろう朝倉和美のよく判らない理由付けに苦笑いで答える。
が、意趣返しだけでもしようと思いワザと疲れた声で目を合わせずに、

「出来れば静かな反応がほしいな。・・・・・・心臓に悪い・・・・・・」


しかし顕著な反応が出たのは金髪幼女の方だった。
素人でも判るような薄ら寒い息苦しい気配、つまりは殺気に包まれ騒がしさが一瞬で消えた。
櫻の肩を支え茶々丸が寄り添い、呼吸、熱、脈拍を計り容態を確認する。

身がすくむような殺気をモロに浴びる事になった朝倉和美が蒼白になる中、間に桜咲刹那が割り込んだ。

 (素人に何を向けていますか!?)

 (櫻の健康を害さなければ良いことだろう。 どうだ、茶々丸?)

 (平熱より0.3℃高いようですが、問題ありません)

周囲に気づかれぬようコソコソ会話をし、茶々丸の診断を聞いてからようやく殺気を収める。
何が起きて何が収束したのか判らないまま、首を傾げる櫻から茶々丸が離れた。














   ◇ ◆ ◇ ◆ sakura side ◇ ◆ ◇ ◆


自分は健康の筈なんだけどね。 周りがなぜかすごい神経過敏になっていると、ホントに病人な気がして来た。

ここでいきなり健康になるのも怪しまれそうだし、適度に弱者の振りをしよう。

とりあえず、クラスメートと適度に会話する。
少し口ごもると皆、あんまり登校しないから名前を覚え切れてない、と勘違いしてフルネームで教えてくれたのでだいたい覚えました。

良心の呵責がスゴい痛いけど・・・。

姉さんの名前も判りました。
エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルと言うそうです。 AとKって何?

親しいなら「エヴァ姉さん」と呼ぶべきなんだろうか・・・・・・? 後でタイミング計って呼んでみよう。

しかし、「姉さん」姉さんかぁ。 「兄さん」ばっかりだったから新鮮な響き。
順調に行けば、エクセレンさんも「エクセ姉さん」と呼べる筈だったんだよねぇ・・・・・・。



姉さん達もアレなのですが、教室内にも妙な気配がちらちらと。

龍宮真那さん、どこが中学生!? と思うほど大人っぽい人なんですが。
どうも銃を携帯しているみたい。 私の感覚に引っ掛かるって事は、モデルガンじゃない実銃を。

桜咲刹那さん、貴女帯剣してますよね?
しかもなんかピリピリと周囲警戒してるし、なんとなく純粋な人じゃないっぽい。

長瀬楓さんも「ござる」とか言ってるし・・・・・・。 暗器かなんかもってるようなので、忍者?

ザジさんとか、どーゆー経緯でこんな日本くんだりまで来た人なのか謎だ。

だからと言って私も人のことをとやかく言えないので、考えなかったことにしよう。 うん。










・・・・・・で、何故か次の日には熱を出して寝込みました。
これはあれか、多次元放浪疲れとかそーゆー病状なのか?










姉さんと茶々丸は心配そうだったけれども、学校へ行ってもらいました。
そんなに高い熱でもないし、暖かくして寝てれば直るからと。

・・・・・・説得するのが大変だったけれど。 心配してもらえるっていいねー。

姉さん達に外へは絶対に行かないことと、何かあったらすぐ連絡する事で念を押されました。
連絡ってどうすればいいのだろうか? 携帯電話ってきらいなんだよねー、この世界ではまだ持ってもいないのに。
ここの立場は判ったけれど周囲の対処が不明なので、あんまりうろつくわけにはいかないからなあ。


しかし、家の中が静か過ぎて怖いわ。 前回が朝から晩まで異様に賑やかだったからねえ。
トラブルの種にも事欠かないし。解決はバカ力任せだし、同行者達も大変だったんだよ・・・・・・。




考えながら眠りに落ちて、目が覚めたら12時過ぎだった。
体のだるさも粗方取れたようだし、お昼はお粥でも作ろうか。

半纏をパジャマの上に掛けて下に降りると、キッチンに小さい土鍋が置いてあり、メモが挟まっていた。

『お昼に温めて食べてください』

茶々丸さんが作り置きしてくれていたみたいなので、これを頂くことにする。

ぐすっ・・・、心使いについ涙が・・・・・・。 ここ何回かそんな優しい人は稀だったからなあ。



目を擦っているうちに土鍋は第三者によって温められていた。 メイド姿に長身の銀髪に無表情の女性。

「・・・・・・アイン」

また勝手に出てきたわね、この子は・・・・・・。

「主はそこに座って待っていてください」

てきぱきと準備を整えて取り分け小皿とレンゲ、お箸を添えて私の前に置く。
随分とこの手のことに慣れちゃってまあ。

「苦労を掛ける主で御免ね。 アイン」

「それは言わない約束ですよ、主」

二人で顔を見合わせて小さく噴き出す。






手を合わせて「いただきます」して、お粥を口に運ぶ。
卵と僅かな塩味、誰かのご飯ってこんなにおいしいものなんだねぇ・・・・・・。

家族ってやっぱり良いなー。
ほっこりしながら食べる私を、アインは楽しそうに見つめていました。



















片付けはアインの手を断固拒否してキッチンで洗い物をしていると、
居間の方からなんか妙な笑い声と、ちょい暴れる音が。 ・・・・・・どたんばたんと。

「アイン、何か騒がしい・・・・・・音・・・・・・、が・・・・・・?」

「これは主。 失礼致しました」

片膝を付いて跪いたアインはまあいいとして、テーブルの上にバインドでグルグル巻きになっている人形は何?

「ケケケケ、ヨゥ目ハ覚メタヨウダナ。 闖入者」

「ちんにゅうしゃ?」

「この人形がそこの山から飛びかかってまいりまして。 捕獲しました」

指さした先には、戦車や飛行機やリオンや戦艦などのぬいぐるみの山が。
いやまあ、犬とか猫とかなんだろうけどさ。

「闖入者ってのは何?」

「ケケケケ、何デオ前ニソレヲイワナキャナラネェンダ?」

「ほう、どちらが有利か判らないと? セップク黒ウサギに改造しちゃうゾ♪」

「・・・・・・セップ? ナニ・・・・・・?」

「片目が取れかかっていて内蔵がはみ出ていて、口から血を垂らしているウサギよ。 サイズ的には丁度いいっぽい」

私の言葉に同調するかのように、憐れみの視線を向け、ハンカチで目元を拭うアイン。 演技細かいねキミ。

「オイ! ナンダソノ仕草!? テメェ俺ヲソンナモノニスルンジャネェ!」

「針と糸、黒い布。 この際雑巾でも良いや。 ウサギは黒くなくても別に・・・・・・」

「判ッタ、話ス! 話スカラソノ針ヲ仕舞エ!」

「『 仕 舞 え ?』 アイン、遠慮が無くなっても良いみたいよ」

「判りました。まずは分解ですか? 縫い目が分からないので引きちぎってと・・・・・・」

「待テ! 待ッテクダサイ! マズハ話ヲキイテクダサイ!」

アインが頭に手を置いたところでやっと素直になる人形。

そもそも何で動いてるのこの人形? アリスの人形とは違うようだけど・・・・・・。








「私は巳子神櫻。 こっちはアイン。 貴女は?」

「チャチャゼロダ・・・・・・」

改めてテーブルの上にチャチャゼロを置き、バインドを外す。
警戒状態のアインが横に立ち、火炎放射器を構える。

「悪魔カ・・・・・・、オ前ラ」

「悪魔が良ければマズは改造からするけど? 理科室の骨格標本SD版とかどうよ」

「止メテ下サイオネガイシマス!」

「じゃあ闖入者の理由をプリーズ」



で話を聞いてどうりでここの事がさっぱり判らない理由が判明。

どうやら10日前に此処のリビングに忽然と現れたらしいのだ、私が。
姉さんが偉い人と協議した結果、此処で預かることになり今に至ると。

学校の方とかがどうやって割り込んでたり、なんでまわりがあんなに溺愛してくれるのかが謎だけど。
ふむ、やはりカテゴリー『乱入者』だったみたいね。

「その辺の詳しいことは、帰って来た姉さんたちに聞くとして・・・・・・」

「オイ、今ノ説明聞イテ理解シタノカ?」

「うん、それがどうかした? それでチャチャゼロはどうやって動いているの?  コアが別にあってその体は遠隔操作とか? それとも人形の種族なのかな?」

「呆レタヤツダナ・・・・・・。 ソレデモ御主人達ヲ家族トシテ見ルノカ?」

「だって初めて起きたときに部屋で言ってくれたもん。 『どうした? お姉様に「おはようございます」も言えないのか?』って。 私、家族は大事にするよ」

たとえが相手が世界を敵に回そうとも、人間を生贄としか見て無くても。

「・・・・・・魔力ダ」

「はいっ!?」

「ソイツガ魔力ヲ垂レ流シニシテイタカラ、ソレヲ吸ッタダケダ」

指差されたのはアイン。 あーなるほど、アインの振り撒いてる余剰魔力を糧に起動したのか。
まあ、斬った張ったな騒ぎにならなくて良かったのかな? 

アイン単体でSランクに匹敵するくらい自己進化したから、うかつに魔力だけとか振り回されても、この大きさのログハウスならふっ飛ばすし・・・・・・。

「アイン、戻りなさい。 今後は私の命令無しで出てきちゃダメよ」

「ハッ! 申し訳ありません」

跪いて、臣下の礼をとるアインが自分の影へ沈んでいき、沈みきって残った影だけが床を滑って私の影に加わる。

それを確認して、中の【機神図書館マシン・ビブリオテーク】の書棚も確認。 収まっているのを見てから、チャチャゼロを持ち上げる。

「オイ? マダナニカアルノカ?」

「一緒に寝よう。 うん、それがいいね」

「チョッ・・・・・・。 マテオイッ! 俺ハ眠クナイゾ!」

「一人だとなんか寂しくてねー。 安心して眠れそう」

「・・・・・・寝首ヲカクカモシレネェゾ。 ソレデモ・・・・・・」

「信じてるよ。 だってチャチャゼロも、家族でしょ? 一緒に寝たっていいじゃない」

「ケッ。 勝手ニシロ・・・・・・」

「うん。 ありがとう」

















   ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆


夕方に帰宅したエヴァンジェリン達は、きちんと着替えて待っていた櫻を心配するも、その胸に抱かれていたチャチャゼロに眼を丸くした。

「大まかなことはこのチャチャゼロに聞きました。 できれば、細かいところの事情を聞きたいのです。エヴァンジェリンさん」

背筋を伸ばし、はっきりとした視線で尋ねる櫻の真摯な姿勢に顔を見合わせると、ため息をついた。

「その様子だと暗示は効いてないのだな?」

「暗示? 寝ているうちに何か掛けたのですか?」

「一度起きたときにかなり寝ぼけていたがな、そのときに名前を聞き出して状況を作り上げたのだ」

細かいところは省いて要約すると、エヴァンジェリンは吸血鬼で魔眼による暗示を掛けたらしい。
学校はクラスに軽い暗示で『病弱の転校生が来た』程度の認識らしい。
一応それを補佐するために、先生からは『転校生が入ったが病弱で来れない』と言うだけはしてあると。

「えーとぉ。 演技にしては随分と心配の度が過ぎていましたけれど・・・・・・?」

この質問にエヴァンジェリンは赤い頬を隠すようにソッポを向き、茶々丸が説明に回った。

「その、寝ている状態の様子を見ているうちに放っておけなくなりまして、私もマスターも貴女を守ることがだんだん優先されていったといいますか・・・・・・」

「何故かお前を見ていると、庇護欲が掻き立てられるのだ! 魅了でも持っているのかお前は!?」

立ち上がってビシィと指差された櫻はあっけにとられ、ポカンと口を開けていたが、すぐに噴き出した。

「な、何故笑う!?」

「い、いえ・・・・・・ソコまで、必死になら、なくても・・・・・・。 くっくっく・・・・・・」

何か気に障ったのか、背中を向けてしまったエヴァンジェリンに櫻は笑いを押し込めた。
茶々丸に眼を向けると、とまどいの表情で櫻をチラ見していた。

「事情はわかりました。 私の事情も話すから機嫌直して、エヴァ姉さん」

「な・・・・・・、何!?」

「や、私の事情は話すよ、長いから大まかな所だけかいつまんで・・・」

「そこじゃないっ! 私はもうお前に姉と呼ばれる資格すら・・・」

「ソレハ心配スルダケ無駄ジャネーノカ、御主人。 コイツ随分ト大物ダゼ」

「そういえば姉さんはどうして動いているのですか?」

「あー、私じゃないけど、ウチの配下が起動させちゃってね。 まさか人形が魔力で動くような世界だったとは・・・・・・」

「配下? 身一つしかないのに何処に居た?」

「コイツケッタイナ能力持ッテイヤガルゼ。 ケケケケケ」

「あー、ごちゃごちゃうるせえ! まず私の話を聞けやゴラァ!!」

「「「はい(ハイ)ッ!?!」」」















   ◇ ◆ ◇ ◆ sukura side ◇ ◆ ◇ ◆


かいつまんで多次元放浪をしている部分と、アインの事だけを話す。
最初にこっちに現れたとき、結構な怪我とやたらと強い魔力を漂わせていたらしいのだが。

前回の世界での最終決戦が原因だろうなあ、たぶん。
誰だあんなもん敵に回しやがった奴は。 あのバカ魔導士め・・・・・・。


「それじゃ改めて、巳子神 櫻です。 よろしくお願いしますね。 エヴァ姉さん、茶々丸、チャチャゼロ」

「エヴァンジェリン・アタナシア・キティ・マクダウェルだ。  ・・・・・・いいのか? 私は吸血鬼だぞ。 賞金も掛けられた事がある悪の魔法使いだぞ」

「絡繰 茶々丸と申します。 私も人間ではありませんが」

「それを言ったら私なんか異星人の末裔になってしまうんだけど。 ねえチャチャゼロ?」

「オ前、イイカゲン俺ヲコネクリ回スノヲヤメロ」

「家族の軽いスキンシップだよ。 一緒に寝た仲じゃないの」

「ほう、いいご身分だなチャチャゼロ・・・・・・」

え? 何今の怒る所? 眼にも止まらないスピードで私からチャチャゼロを奪い取ったエヴァ姉さんが、伸ばしたり縮めたりしてる。

「チャチャゼロってこの家で立場何? マスコット?」

「姉さんはマスターの第一の従者ですよ、櫻様」

櫻様は止めて欲しいんだけど、茶々丸にとってはこれが譲歩できる最低ラインだそうな。
ここは魔法使いの居る世界だったのか。 クラナガンみたいに大っぴらに出来るほどじゃないらしいけど。

「家族になったからには全力で! 出来ることがあったら何でも言ってね。エヴァ姉さん」

「そうだな、異界の力は頼りになりそうだ。 櫻の事はじじぃには黙っておこう」

「じじぃ?」

「ここの学園長だ。 妖怪仙人だが、まあ会った時には気をつけろ。 喰えん奴だ」

「う、うん。 わかった」

「それでは、遅くなりますが夕飯の用意でもします。 マスター、櫻様、少しお待ちください」

「あ、茶々丸、私も手伝う。 料理なら超自信があるよ。 まかせて」

「そうですか。 それでは一緒に作りましょう」

「うん。 すっごい美味しいの作ろう」








なんかひさしぶりに全力全開で料理をしたせいで、作りすぎちゃったけど。
エヴァ姉さんがとっておきの酒を開けたりしたものだから、途中から酒宴に・・・・・・。

ちょっと待て、コレは二日酔いでまた学校行けないパターン?
ますます病弱という方向で定着されるんじゃないのかな・・・・・・。


なんとなく、なつかしい顔を思い出したのでそちらにも手紙を出してみようかな。

私は家族を得られて幸せです、って。































   ◇ ◆ ◇ ◆ Hagaren side ◇ ◆ ◇ ◆


それはしとしとと小雨の降る秋のことでした。

東方司令部の一室で窓から外を眺めていた鋼の錬金術師は、ふいに顔に張り付いた紙にびっくりして窓から飛びのいた。
これには近くで准尉らと他愛のない会話をしていた、彼の弟の鎧甲冑もぎょっとした。

「どうしたぁ、大将?」

「なんだかいきなり紙が・・・・・・なんだこりゃ、なんか書いてある?」

かなり小さい達筆で、一文がしたためてあった。
室内に居た他の士官の一人がルーペを貸してくれたので、それをかざして見た。 そこには・・・


 ”これだけ小さければ読めるか? 元気? ”


「・・・・・・・・・・・」

「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」








     ◇   ◆   ◇   ◆



「ッ誰がっコオロギが読める本しか使えない豆柴ドチビかああああああ──ッ!!!!」

隣の部屋から絶叫とともに聞こえる物が飛び交う音と、悲鳴。
うずたかく積まれていた書類を嫌々ながら整理していたロイ・マスタングは額に手をあてた。

彼を逃げ出さないように監視、もとい補佐していたリザ・ホークアイは銃に手をかけていたりもするが。

「また鋼のか・・・・・・」

「・・・・・・そのようですが、おかしいですね?」

はっきり言って結果がわかりきっているのに、鋼の錬金術師を怒らせる行為をするものは、彼らの部下には居ないハズだ。

だとすれば、闖入者か他の原因か。 頷きあった二人は、一応銃を抜いて隣の部屋へ向かうことにした。





     ◇   ◆   ◇   ◆


「手紙一枚でこの騒ぎとは・・・・・・。少しは自重しろ、鋼の」

アルフォンスとハボックらが部屋の惨状を右往左往しながら片付けている中、鋼の錬金術師エドワード・エルリックは床に正座させられていた。

「いや・・・・・・悪かったってばさ、大佐・・・・・・つい・・・・・・」

苦笑いで頬を掻くエドワード。 床に落ちていた手紙と言えるか疑問がある一文を、目を凝らして見たリザは息を呑んだ。

「どうした? 中尉」

「この、筆跡・・・・・・」

震える手で手紙を見つめるリザの様子に、室内の全員がいぶかしげな視線を向ける中、
中空からひらひらと舞い降りた紙が、リザの手の中へ綺麗に落ちた。


 ”元気ですか? 笑えていますか? 私は幸せです ”


同じ筆跡で、こちらは普通に読める大きさで書いてあるそれを綺麗に畳んだリザ・ホークアイは胸に優しく抱え、安堵の笑みを見せる。

「ほう・・・・・・」

「「「「おおおおお!!」」」」

笑みひとつで室内の男性人の注目を集めたリザは、視線に気がつくと慌ててソッポを向く。

「手紙ひとつで中尉をああならせるとは、さすがにサクラか・・・・・・」

「ってこの手紙サクラかっ!?」

「文章ひとつで兄さんをおちょくるのはさすがサクラさんだねえ」

「アルフォンス! 感心するところはソコかっ!!」

惨劇の第二弾が兄弟喧嘩に発展しかけたところで、三枚目の紙が落ちてきて、ロイ・マスタングの頭にペタっと張り付いた。

「っと、今度は私か・・・・・・」

その場に居た全員が覗き込んだ手紙には、


 ”雨の日は何も出来ないんだからリザを困らせないで机で書類整理に命掛けてろ。ヘタロイ ”


「・・・・・・・・・・」

「「「「「「・・・・・・・・・・」」」」」」






トボトボ真っ黒な背景背負って扉の向こう側へ消えるロイ・マスタングを見送った一同は誰もが引きつっていた表情だったという。































(あとがき)
外伝4と5を連結しました。 基本的には変っていません。



[7259] 外伝 5
Name: C-K◆ae02f8a5 ID:27ec9c7b
Date: 2010/04/05 01:20





「おおおおおおおお・・・・・・」

不思議な感覚を経て、目を開けるとソコに広がっていた光景は
湖畔に建つ立派なお城。 清涼感漂う風光明媚なファンタジーでした。

「どうだ?」

「すごいすごいすごーい! カレンダーみたーい」

「か、かれんだー・・・・・・」

なんかエヴァ姉さんが呆れているけれど? いやー異世界に来て一番の醍醐味は、とんでもない絶景を見れたり感じたり出来る事でしょう。
前回の魔界の穴とかはゴメンこうむるけれど・・・・・。

「まあ、好きなだけ堪能するといい。 飽きるまで楽んだら教えてくれ」

「うん! おー水がきれーい。 あおーーい、すごーい!」

エヴァ姉さんは茶々丸が敷いたレジャーシートに座って、さっそくチャチャゼロと酒を注ぎ合いはじめる。
あ、ここだとチャチャゼロは普通に動けるのね。













★★ スパロボ的な日々 外伝 5 『 家庭内信頼度 』 ★★














ログハウスの地下にわざわざ仕舞って置いたのを掘り出してきたボトルシップ。 この中の空間なんだそうな、ここは。

姉さんたちと和解してから、二日酔いで学校をまたもや休む羽目になった日。
頭痛が治まってから、学校を「妹の看病」と言って休んでいた姉さん達と情報交換となった。

エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルと言う吸血鬼の大体のスペックと、現状とか。
登校地獄とか言う呪いでこの地に縛り付けられているとか。 呪いとかは専門外だからなあ・・・・・・。 

アインを出して聞いてみたけど、こっちも呪いについては専門外だそうな。
それでも闇の書になっていた前状態のプログラムを解析してみるとか言ってたけど。

あとはこっちの説明。 私が出来ることといえば、機械を自由自在に操れること。
機神図書館マシン・ビブリオテーク】の中にロボット系のデーターを無限に保存できて無数にコピーし放題だし、それを外に出して使えること。

ぶっちゃけ夜天の書の亜種で、機属類保存版みたいなもの?
あれから幾つかの世界を渡り歩いてこの能力の扱いにも熟知したんだ、私。
いっぺんに制御できる数も増えたけど、大量に必要なときは予め命令を与えておけばいいと。

そんなことを話したら、姉さんがそれを見てみたいと言う事になって、
デカモノはこんな学園都市で開放したら、大騒ぎになるって言ったら・・・・・・。

『広い空間があれば良いのだな。 ついて来い』

で、案内されたのがココな訳ですよ。












「うっわあ、すっごい透明度・・・・・・。お魚とかは居ないのかな?」

「少しよろしいですか、櫻様?」

「うん、いいけど。 姉さん達についていなくていいの?」

あっちの、もはやココから見るとフィギュアサイズにまで距離が離れちゃったけど、なんかコッチをニヤニヤしながら盃を傾けている。

「櫻様のはしゃぎまわる姿が肴だそうですよ」

「わたしゃー珍獣かっ!?」

湖を覗き込んでいた体を起こすけど、なんか茶々丸が落ち着かない視線をさまよわせてる姿が目に入った。

「うにゅ? なんか心配事?」

「あの、先ほど話していた事なのですが・・・・・・。 機械を自由に操る、と」

「うん、観覧車を高速回転とか。 ジェットコースターをノンストップとか」

一回やったことがあるのだ。 そうすれば見ててやきもきしていたカップルがくっ付くかなあと。
結果は両方とも目を回してしまい、惨敗に終わったけど。

「私を自由に操ったりは、なさらないのですか?」

「は? いや、なんでそういう発想に行き着くのか判らないんだけど。 茶々丸は家族でしょ。 私が家族を自由に操ったりする犬畜生にも劣る人格があるとでも?」

前は周囲の機械を勝手に支配下に置いていたけれども、あれは自分の能力を良く理解しなかったから。
いまは内にも外にも、キチンと制御している。 ガイノイドとかという茶々丸も無理に自由を奪うことはない。

「もし必要があったら、私を操ってもいいのですよ」

「そんなことできるかっ!!」

下から見上げることしか出来ないけど、茶々丸に詰め寄って文句を吐き出した。

「もう元居た世界にも私の血縁は居なくなってるけど、家族は何処にでも居る! 兄弟だったり姉妹だったり娘だったりするけど、家族の意思を捻じ曲げてまで、私の主張を押し付けたりしたことは絶対にない! それでも茶々丸は私の意志を捻じ曲げてまでも、自分を私の自由にさせてもいいの!? 私は嫌っ! 絶対何があっても貴女を私の意志で操るなんてしないから。 それだけは覚えておきなさいっ!!」

「・・・・・・申し訳ありません。 私は、私の言葉は貴女の意思を曲げていたのですね」

茶々丸は私の手を取って、自分の胸でぎゅっと抱きしめる。 貴女は私が守るから、もうこんな顔なんてさせないから・・・・・・。

「茶々丸も誰かにいじめられたら言ってね。 私がぶっ飛ばすから」

「はい、そのときは。 頼りにさせてもらいますね」

両手を繋いだまま顔を見合わせて、どちらからともなく笑った。














「なんだ? 随分とにぎやかだったようだが・・・・・・」

茶々丸と手を繋いで姉さんの居る所に戻ると、なんか不満そうな顔で出迎えてくれたよ。 うーん、姉さんも手を繋ぎたいとか?

「ケケケケ。 ヨゥ、随分ト表情違ウジャネェカ。茶々丸」

「はい、櫻様と良く話しまして、胸のつかえが取れました」

「チャチャゼロお酒臭い・・・・・・」

「ソウイイナガラ抱キシメルナッ!」

胸に抱え込むとジタバタ暴れるけど、此処だと何処から魔力供給してるんだろう?
空中に魔力散布でもしてあるんかな? そんなことを口にして姉さんに聞いてみる。

「そんなことか、チャチャゼロと私は従者としてラインが繋がっているからな。 私からの魔力供給が途切れることがない限りは。 この空間内ではだが・・・」

「うーん、それって外でも外界と遮断した空間であれば、呪いの効果をシャットアウト出来るって事?」

力加減を間違えると圧殺しちゃいそうだな。 出来なくもないけど・・・・・・。



「まあ、それは後にするとして、とりあえずは見せてもらおうか」

「うーん、それでどれが良い? でっかいのと中くらいのと小さいのと戦艦とか機動要塞とかがあるけれど。 機動要塞は大きすぎるからここじゃ無理そうだし。 戦艦はギリギリ出られるかな?」

「ずいぶんと数があるな。 私には判りかねるからお前が好きなものを出せ」

「それはそれで悩むなあ。 茶々丸とかチャチャゼロはなんかある?」

「私にはコレといって・・・・・・。 姉さんはどうです?」

「ケケケケ、ブッソウナ奴ガイイゼ」

・・・・・・物騒。 ずいぶんと抽象的な例えだなあ。
見た目物騒とか、武装が凶悪だとかでいいのかな?



目を閉じ、中に入って本棚から一冊、いや二冊でも良いかな。
開放を選択、私の足元から影が二つ分離。 左右に広がって直径20m前後の闇の円を形成。
そこから二体とも私の呼び出しに応じ、ゆっくり姿を現す。


片方は赤と白のボディ。 両肩に近接炸薬弾のラックを持ち、右腕に杭打ち機。
左腕に五連チェーンガン、頭部プラズマホーン用の角、近接武装の集中した機体。 別の世界ではキョウスケ兄さんの乗機、アルトアイゼン・リーゼである。


片方は頭部が出現した直後、高らかに吠えた。 アルトのようなメカメカしい外見とうって変わって、生物らしい特色を持つ虎の頭部。
腹部に埋まるは龍の造詣。 こっちはこっちでまた独立して生きているけれど、武器らしい武器は持っていないが見た目だけでも威圧感がある虎龍王。
これも別の世界ではブリット兄さんとクスハ先輩の乗機である。


アルトは23m、虎龍王は45mくらいあるはずだから、並べると身長差が・・・・・・。
アルトアイゼン・リーゼは出てきたときから特に動きもしないけど、虎龍王のほうはもう一度吠えると、ジャベリンを意味もなく取り出して地面に突き立てた。

「こらあッ! 虎龍王、床を壊さないの! 誰がそんなことしろといったああっ!!」

ジャベリン突き立ててある所、白い綺麗なところだったのに割れてめり込んでる。 私が怒鳴りつけると慌ててジャベリン仕舞って片膝を付いて、臣下の礼をとる。

「ごめんね、エヴァ姉さん床壊しちゃって。後でプライヤーズでも出して直すか・・・・・・ら?」

後ろを振り返って、姉さんに謝ろうとすると、三人ともポカンと口を真ん丸く開けて固まっていた。
・・・・・・ふむ、見慣れている私にはその驚きようは判らないなあ。















しばらくして復活した姉さん達とレジャーシートでお茶をしばく。
風光明媚な風景に、バックに控える重甲PTと超人機・・・。 なんちゅーお茶会だろーか。


「たしかに、こんなものを現実で振り回すと目立つな」

「うん、まあ。 図体がデッカイのばかりだからねえ。 対人戦には向かないかな」

所詮は戦争用とも言うものなのだろうけれど。
ちなみにチャチャゼロは相手が動かないのをいいことに、よじ登ったりして奇声を上げている。
あのサイズだと、公園の遊具みたいなもんなのかなー?

「ふむ、では今度は私がお前に魔法でも教えてやろう」

うわ、そうきたか。 だがしかし、それは絶対に無理。

「ゴメンね、エヴァ姉さん。 私、魔法の類は適正まったく無いの」

これもあちこち移動してたときに、散々試したことにより判明したのですよ。
魔法を使うための魔力の元ともいえる、根源がまったく無いのだ。 何の因果かアインと合一するための融合も使えない。

要は技術特化されたチートみたいなもので旅の間に一度出会った事があるのだが、魔力特化されたチート半身が居るのですよ。
その辺も踏まえて簡単に姉さんに説明をする。


「そうなのか。それは残念だな・・・・・・」

うわっ、あっさり納得した。 もっとしつこく来るかと思ったのに。

「それならば、お前のアインとか言うのが魔法を使えるのは何故だ?」

「アインはデバイスって言う魔法の杖みたいなものなんだよ、プログラムの集結体っていうか・・・・・・。 もう自己進化し過ぎて独立機動魔導兵器みたいになってるけど」

床をコンコンと叩くと、傍らからにょーんとアインが沸いた。
本人は呼ばれ方に不服があるようで、仏頂面をしてるけど。

「アイン内のデータにリンカーコアっていう魔法を使うための擬似器官があって、 それが魔力を生成してるの。 私にはまったく使えないけどね・・・・・・」

・・・・・・ん? 私には使えないけれど。 姉さんになら使えるのかな?

「あ、そうだ! アイン、デバイス出してデバイス!」

「はい? どうしました主?」

「エヴァ姉さんは魔力が供給されれば、封印状態でも魔力が運用できるんだよね?」

「あ、ああ・・・・・・。 魔力があればの話だがな」

「インテリジェントとストレージとどちらが良いですか?」

「カートリッジ使えるストレージで良いんじゃない? 魔法はエヴァ姉さんが個々に使うのがあるだろうし」

私はアインが取り出した、ライフルの薬莢みたいなものを姉さんに渡す。

「とりあえず此処なら魔法使えるんでしょ。 それに魔力詰めて」

「むう、良く分からんがやってみよう」


















で、改めて外に出てから実験開始。
生命活動に支障が無くて、魔法のみが低下させる呪いってのが良く分からないけれど。
たぶん管理局で使われている、部隊内ランク制限法のようなリミッターのようなモノだとみた。

体内魔力生成が吸血鬼という種の生命活動をギリギリ生かす程度の魔力しかないと思われる。
なら、外から供給させてしまえばリミッターには引っかからないんじゃないかと思ったわけなのだ。

ストレージデバイスは一々私の中から引っ張り出すのも面倒なので、外で作りました。
材料は市販の物と、適応しないものはしかたなく、レイジング・ハートコピー品を引っ張り出してから、私との接続を切って破k・・・・・・もとい分解。
流用して、アインと私でせっせっせっせと組み上げて、完成。 ぱぱらぱー!

あんまり派手に見えなくて、制服とか着てれば隠せるもの。 二の腕に付ける腕輪みたいなもの。 
変形も何にもしないから、外側にカートリッジ三つついているだけの無骨な奴だけど。


一応声紋チェックで姉さんの声にしか反応しないようにして、『カートリッジロード』って言えば良いだけだし。
実際使ってもらったわけだけれども・・・・・・。



その結果があれ。 カッキーンと凍り付いてる的用のガジェットⅠ型・・・・・・。
うわあ、あれはすごい。 氷漬けのマンモスみたいになってますよ、ガー君1号。



「ふ、フフフフフ・・・・・・。 ハァーハッハッハッハッハハハハハハハハッ!!」

使用者の姉さんは、お空に浮かんで高笑いを上げていたりする。
マントをはためかせて。 悪役みたいですねえ。

「マスターがあんなに楽しそうに。 ありがとうございます、櫻様」

「オカゲデコッチモチョットハ動ケルッテモンダ。 感謝スルゼ」

私はそれにニヤリと笑うと、建設現場で使うような手持ち式釘打ち機みたいなのを取り出した。
リボルバーシリンダーが付いている変形判だけど。

チャチャゼロを持ち上げて、胸にそれを当てて有無を言わさずにトリガーを引く。
ガシュッ! と空気の抜ける音がして、カートリッジの中の魔力がチャチャゼロに注がれ、シリンダーが回って薬莢を切り替える。

「オ? オオ? オオオオ!?」

手を離した私から落ちる際に空中でくるりと回って、華麗に着地。
そのまま「オーオー」と言いながらあちこちをぴょんぴょん飛び回る。

「アインの魔力だけど、チャチャゼロには充分でしょ?」

「コリャスゲェ! ソレガアレバ御主人ガ居ナクテモ、俺ハ自由ニ動ケルッテモンヨ!」

「ああ、姉さんまであんなに楽しそうに・・・・・・。 ますます櫻様に頭が上がらなくなりそうですね」

「家族に頭下げられたって、嬉しくも何ともないよ」

「そうでしたね。ありがとうございます、櫻様」

「あとはチャチャゼロが一回の供給でどれだけ動けるかと、 エヴァ姉さんがカートリッジ1個でどれだけの魔力量を確保できてるかなんだけど・・・・・・」

「それならば、このカートリッジとかひとつで全盛期の六分の一くらいか」

「わあっ!? びっくりしたあっ! いきなり後ろに立たないでよ。 高笑いはもう良いのエヴァ姉さん?」

「高わらっ・・・・・・。 いや、すまないな。 だがこれは中々良いものだな、大切に使わせてもらうぞ、櫻」

「三つ使って半分にしかならないのかー。 役に立ってるみたいだからいいか・・・・・・」

「ヨシッ! 次ハ茶々丸ヲ強化シヨウゼ櫻。 俺達ダケッテェノハ不公平ッテモンダロウ!」

頭に飛び乗ってきたチャチャゼロと私、姉さんの視線が提案された茶々丸へ向かう。
戸惑った表情から一変して「え?私ですか?」という顔になり、慌てて手を振り始めた。

「いえっ! 私は特にコレといって希望があるわけでもなくっ!」

「・・・機動戦士茶々丸。 それはいい提案だねチャチャゼロ(じゅるり)」

「いえ、あの櫻様? 正気に戻ってください!」

「茶々丸の外見をいじるのは私はどうかと思うんだが・・・・・・」

「それならば外骨格ですね。 ミューティアとかキャバリアーとか」

「ヨシソノ線デ行ケ櫻。 ドンドンヤッチマエ」

「あの姉さん、分かってて言ってますか?」

いっそのこと茶々丸をR-1にしてSRXを組み立ててしまえばいいんじゃなかろーか。










   ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆


学校へ行こう。 行かないとクラスメートにあらぬ誤解を受けてしまう。

登校中に姉さん達に聞いた話では、魔法先生やら魔法生徒やらが校内に紛れているので、校内で力を振り回すのは極力避けろと注意を受けた。
いや、どうやって見分けろちゅーねん。 カミングアウトしてバラした方が早いんじゃないんかなあ・・・。



教室でささやかな歓待(誤解が)を受けた後、近くの席の明石さんに「図書室って何処にあるの?」って尋ねてみた。

姉さんが「何故私に聞かない?」と言う顔をしていたけれど、交流よコミュニケーションよ?
明石さんは図書室ならば「本屋」とあだ名を持つ、宮崎のどかさんが詳しいと教えてくれました。

「図書館島探検部だからそっちも案内してもらえば?」

「なんでしょう? その不穏な響きの図書館は・・・・・・。 何故に図書館と島が同じ単語の中に?」

「巳子神さんは転校生だから知らないんだね。 いやあれは一度見てみるといいよ」

すごい笑顔で進められました。 あれですが施設の洗礼を受けないとこの学園ではやっていけないんでしょうか?
なのでお昼休みに姉さん達との昼食を早々に切り上げ、・・・・・姉さんが拗ねたけど。
600歳の吸血鬼が子供か・・・・・・。



教室にいた宮崎さんに早速話しかけてみた。

「宮崎さん。 図書室に詳しいと聞いたのですけれど、教えてもらえないでしょうか?」

「・・・・・・は、はいっ!」

「図書館島という所があると伺ったのですけれど、どのような所なのでしょう?」

「・・・・・・図書館、島っ!!?」

いや、なんでそんなにおよび腰なの? 何で周りの席の人も、吃驚した顔で私を見るの?










   ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆


高畑教諭が「転校生が来る予定でしたが、病弱でお休みです」と告げてから四日経ち、
やっと2‐Aに来た転校生は、髪が長く小柄でおとなしめながら、どこか年上っぽい雰囲気をもつ人だった。

朝倉和美情報によると、クラスでも浮いているマクダウェルさんの義理の妹で蝶よ花よと大事にされているらしい。
噂に違わず登下校時にあのどこか近寄り難いマクダウェルさんが気遣いながら一緒に居る姿を、多数の人が目撃していた。


ホントに病弱らしく、三日続けて来たと思ったら二日間休み。
二週間の内四度目の登校を果たした彼女は少しは元気になったようで、明石裕奈や雪広あやかとも会話を交わしていた。




そんな人にいきなり話しかけられた宮崎のどかは吃驚してしまい、しどろもどろになってしまう。

「巳子神さん。 図書館島に行きたいのですか?」

「ええ、どのようなものか一度は拝見してみたくて」

見かねた綾瀬夕映が間に入る。 転校して来て間もない彼女は図書館島が危険なことを知らないのだ。
そのあたりマクダウェルさんは教えてないのかと、疑問に思うが。

「それならば、ここは図書館探検部の出番だね!」

いきなり机の上に仁王立ちになって現れた早乙女ハルナに取り乱しもせず、
「図書館島とはは探検するような所なんですか? ここ・・・・・・」と、真顔で夕映に聞き返すあたり大物なのだろう。

後ろでぼそぼそと「あ、あの、図書館ならこの校舎にもあるから・・・・・・」と告げているのどかが居たのだが、近衛木乃香も騒ぎを聞きつけやって来て

「「「それじゃあ、放課後は巳子神さんに図書館島を案内してあげよう(あげるえ~)!」」」

と団結の掛け声を挙げるトリオがいたりする。











   ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆


「・・・・・・とまあ、そのような事になったから、先に帰っててね。 エヴァ姉さん」

放課後、ニコニコと楽しそうな櫻の様子を見せられては、さすがのエヴァンジェリンも「危険だから行くな」とも言えず。

「そうか、まあお前の好きに楽しんで来い」

「エヴァ姉さんも行かない?」

「いや、私は遠慮しておこう。 それよりも帰り道は分かるのか?」

櫻はまだこの学園内を登下校のときにしか動いておらず何処に何があるのかをまだ把握してなかったと、エヴァンジェリンは不安だった。
・・・・・・・・だったのだが。

「ああ、それならさっきここの学園管理サーバーに教えてもらって、正確な学園構造を全部把握したよ。 本当なら図書館島が何処にあるのかも知ってるけど、情報で知るよりは、人に色々と聞いたほうが為になるし」

「・・・・・・はあ?」

寝耳に水な事を聞かされて、エヴァンジェリンは目が点になった。
それはつまり、学園のシステムへ易々とハッキングを許した事を意味する。

「櫻様。 ハッキングを何処から?」

「え? ハッキングはしてないよ。 視聴覚室にあったパソコンから『ここの地図を教えて』って頼んだら管理サーバーが全部教えてくれたの。 結構地下通路とか多いのね、ここ」


ココに至ってエヴァンジェリンはやっと、櫻の言っていた『技術特化機類チート』の意味が分かった。
櫻を頂点としたヒエラルキーの下層に、全ての機械類が含まれることを。 彼女の頼みを機械は断らず、彼女の願いを機械は叶えようとするのだ、機械の意思で。

それは今の科学技術が発達した世界にとっては、凄まじく恐ろしい意味だという事を理解した。
コンピューター管理されたものは、全て櫻の下僕となりうるのだ。

彼女の意思ひとつで、世界中の発電所がその息吹を止めるのだろう。
核サイロなどは簡単に門戸を開くだろう。  情報の管理をコンピューター内に頼る世界に、櫻の知らない事など無いのだ。
櫻が望めば、明日にでも現実世界は滅ぶのだと、自分が妹にしたのはそんな恐ろしい存在なのだと・・・・・・。


エヴァンジェリンは口許に笑みが浮かぶのを、抑えることなど出来なかった。
学校内で高笑いするのは、雪広あやかの同類とみなされそうだったので。 家に帰って、この楽しみをチャチャゼロと分けあおうと思った

「何かあったらすぐに連絡はしろ」

「え、あ、うん・・・・・・」

今にもスキップしそうで、楽しそうな気配を全身から漂わせるエヴァンジェリンを妹と従者は怪訝な顔で見送った。

「エヴァ姉さん、なにかすっごい楽しい事でもあった?」

「いえ・・・・・・。 今日はいつも通りつまらなそうに授業を受けていましたが?」

何も心当たりがない二人は、揃って首をかしげた。











   ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆


「・・・・・・なんですか、このサン・ジョルジョ・マッジョーレ教会・・・・・・」

櫻が受けた第一印象の感想は、そんな一言だった。
湖の中に浮かぶ島というか。そんな感じの建物だったのだ、図書館島とは。

「湿気で本がダメになったりしないんですか?」

「いや、それどころか地下には湖があるという噂が・・・・・・」

呆れてモノが言えないといった表情をする櫻を見て、綾瀬夕映はさもありなんと苦笑いを浮かべた。
その後を、残念そうな早乙女ハルナが続ける。

「休日だったら装備を整えて地下にでも行けるんだけど、今日は時間もないし1階を見て回るだけになっちゃうんだ。 ごめんね巳子神さん」

「いいえ、案内して頂けるだけでもありがたいですから」

気にしないでください。 と、手を降る櫻を見て木乃香が不思議そうに首を傾げる。 

「巳子神さん、櫻って名前なんよね?」

「はい、そうですが?」

「櫻って呼んでもええか~?」

言われたことにキョトンとした櫻だったが、笑顔で頷いた。

「はい、どうぞ。 それでしたらこちらも木乃香さんと、呼ばせてもらってもよろしいですか?」

「ええよ~」

「あーあー、木乃香ばっかりずるいっ! 私も私もハルナって呼んで!」

「私も夕映でいいですから、櫻って呼んでもいい?」

「あ・・・・・・あのー、わ・・・・・・私も・・・・・・」

「はい、分かりました。木乃香さん、ハルナさん、夕映さん、のどかさん。 で、よろしいですね」

「いや、さん付けでなくても。 出来ればもう少し砕けた喋り方に変えてもらえると」

「申し訳ありません。 私はコレで普通なので、妥協していただくしか」

エヴァンジェリンやチャチャゼロが聞いたら、どの面下げてそういうことを言うかと、突っ込まれそうだったが、猫を被り通す気でいる櫻にはささいな事だった。
この状態で、滞在期間30年ほどを過ごしたところもあるのだ。 今更である。

内心舌を出しながら、しゅーんと気落ちした表情を作る。
泣きそうな櫻を見たハルナや夕映が、慌てて前言を撤回した。


その後は談笑しながら、図書館島の1階をぐるりと回り、深く潜るごとに罠が増えていくとか、探検部苦労話でおおいに盛り上がったりもした。
談笑しすぎで、下校時刻を大幅に過ぎてしまい、大慌てで図書館島を離れることになったけれど。

「ありがとうございます、のどかさん。 今度は普通の図書室の案内をお願いできますか?」

「は、はいっ! こちらこそたいしてお構いも出来ませんで」

綺麗なお辞儀で返すとあわあわしてるのどかさんが可愛いらしく、そっと微笑したところを夕映さん達に見られ、ハルナが「のどか×櫻! いいね!」とか言い出す始末。

とっぷりと暮れた夜空を見て、皆が「送るよ?」と言ってくれたりもしたが、「エヴァ姉さんに迎えに来てもらいますから」と断って、家路に付く櫻だった。










   ◇ ◆ ◇ ◆ sakura side ◇ ◆ ◇ ◆


「・・・・・・いやさすが、魔法学園都市。なにこれ・・・・・・」


脳内にメモリーした構造から、森を突っ切れば早いと思ったんですよ。
途中でなんか『キンッ!』って、音がしたと思ったら、周囲が殺気に満ちて、子鬼の群れが。

音はアレか、ユーノの人払いの広域結界かなんかみたいなのを越えたのかなあ。

だとするとこの結界を張った魔法先生だか生徒だかが、近くにいることになるんでしょうねえ。
わあ、やべえ。 姉さんに関わるなって言われたその日に関わっちゃたわな。

普通の人間なら逃げるを選ぶのだろうけど、私は病弱ってタグが付いてるからなあ。
ダッシュして逃げたら不自然でしょうねぇ。

魔法関係者が近くにいるって言うのならば、救援は早いかな?

面倒臭くなった私は、視界内に飛び掛ってきた子鬼を見、ソウルゲインを憑依させてから手の甲に気を通した。

「さて・・・・・・、修羅界直伝、総合我流技をとくと味わいなさいね」











   ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆


「・・・・・・なん、だあれ、は・・・・・・」

ライフルのスコープを覗き込みながら、龍宮真名は呆然と呟いた。
一歩前で、夕凪を抜いた姿勢で固まっている桜咲刹那も、例に漏れず唖然としている。

いつものように侵入者達に対処しようとしたところに、結界を越えた者が居た。
それがつい先日、闇の福音エヴァンジェリンが妹にした人物で転校生の巳子神櫻だった。

結界の中心よりは侵入者達に近く、これが普通の人間であれば目の前の光景に泣き叫び逃げ惑うと思っていたのだが、彼女は違った。

顔色を変えることもせず、思案する仕草を見せた後、逆に歩み寄ったのだ。
慌ててただの興味本位で近付いたのだと思い、救援に駆けつけようとした時。

飛び掛った子鬼が、あらぬベクトルで弾き飛ばされ、周囲の樹木に叩きつけられた。

軽い音と煙を立ててただの紙に戻るが、それにはまったく見向きもせず群れの中へ一歩。

飛び掛っていくモノ達を軽い仕草で避け、手の甲で軽く触れるように見えただけで次々に紙ふぶきのように飛ばされ、あらぬ方向へと散っていく。

内の一匹が、桜咲刹那の前にポテッと落ちたことで、二人はやっと正気に返った。


「・・・・・・ッ刹那!」

「あ・・・・・・、ああ!」

夕凪を構えて巳子神櫻と子鬼らの間に入った桜咲刹那は、横に薙ぎ払らい隙間を作る。

「危険です。 下がっていてください」

その呼びかけに悪戯っぽく笑い、巳子神櫻はきちんと御礼をした。

「ありがとうございます。 桜咲さん」

「後で理由を聞かせてもらいますから・・・・・・」

桜咲刹那がそう告げたときには、巳子神櫻の姿はすでに龍宮真名の横にあった。

「龍宮さんも、助けてくれてありがとうございます」

ぎょっとなって龍宮真名が横を向くと、その姿は数歩離れている所にあった。



そうしてわずか10分も掛からず、担当地域の侵入者を全滅させた二人は巳子神櫻を見失っていた。

「なんなんだ、彼女は・・・・・・」

「・・・・・・・・・」












   ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆


「ただいまー。エヴァ姉さん、茶々丸、チャチャゼロ」

「オウ、遅カッタジャネエカ」

「お帰りなさい、櫻様。 図書館島はどうでしたか?」

「うん、皆のおかげで興味が沸いた」

「・・・・・・待て櫻。 妙な残り香をつけているな?」

「あー、うん。 ちょっと失敗」

てへへ、とバツの悪い笑顔を見てエヴァンジェリンは予想していたのか、「しょうがないおてんば娘め・・・」と、呆れ顔でのたまった。











(なかがき)
やっと学生らしい?
図書館島は実際には良く知らないのです、作者は・・・。

以下リクエストがありましたので、ハガレン、リザ視点ダイジェスト版を御送り致します。












   ◇ ◆ ◇ ◆ liza side ◇ ◆ ◇ ◆


リザ・ホークアイにとって身近な人間と言えば父とその弟子のロイ・マスタング、隣に住む女だてらに機械工を営むサクラだけであった。
幼少の頃から姿が14~5歳のままから変わっていなかったが、何かあったときには気軽に逃げ込める場所だった。

「大丈夫?」 「どうしたの?」

・・・・・・と、いつも決まって問われる会話だったが、彼女の側はゆったりと時間が流れている。 日溜まりのような気持ちのいい所だったのを覚えている。

彼女の仕事は機械工というよりは、町の修理屋と言った方がいいくらいで、色々なものが作業場に持ち込まれていた。
車、ストーブ、農耕具、家財道具から台所用品まで。

時には近所の子供が壊れたおもちゃを持ってくることもあったが、彼女は泣く子に優しく話しかけ直せるものは直し、直せない物は新しく作る事までやっていた。

一度なぜそこまでするのか聞いてみたことがあった。 

彼女は突拍子もないことを初めて聞かれたように吃驚し、改めて考え込み「しいて言えば・・・・・・・、やりたかったからかな」と笑顔で答えてくれた。

父が亡くなった時も、何も言わずに葬式の準備から片付けまで手配してくれて、色々と考えることの出来る時間を作ってくれたと思う。

それから家族との思い出ある家から逃げるかのごとく軍に入隊してしまい、満足にお礼も言ったことがないのに気が付いた。

ロイ・マスタングと再会した後に一度町まで戻りサクラを訪ねた事があった。
すでに自分が居なくなった直後、なにやら迎えが来て去ったそうでお礼も言えなくなった事に愕然とした。

最後の自分の誕生日にくれたクマのぬいぐるみを抱きしめて、慟哭混じりに謝ったりしたように思う。




彼女と再会したのはそれから少し経ったイシュヴァール戦になる。

小雨の降るある日、怪我をした同僚と孤立無援状態になり、もはや肉を切らせて骨を断つ手段を選ぼうとした時だった。

周囲の地形が敵もろとも消失したのだ。
黒い巨大な球体が現れ、消えた後にはすり鉢状にえぐれた大地が残るのみ。

あまりの一方的な破壊力に恐れ、震えを隠せないとき、軽い足音が近寄ってきて懐かしい声を聞いたのだ。

「大丈夫? 怪我は無い?」

嬉しかったが恐れの方が優先され、顔も上げられないままに「・・・・・・はい」と答えるのが精一杯だった。
そのとき薄曇りの中、彼女の影が異形に見えたのは自分の心が弱かったのだと思いたい。


本陣に戻ったときに軍服に着られている少女は、大総統付きの【歪曲の錬金術師】と言うのだと聞いた。
あの姿でリザの倍も生きているなんて、誰が信じようか。

彼女が錬金術師だったというのに少し衝撃を受けたが、改めて今までの礼を述べようと彼女の天幕を訪れた。
副官もおらず、小さな天幕の中で彼女はリザが向かったときもちくちくと針仕事をやっていて、変わっていないと彼女の認識を改めさせられた。

改めてお礼を口にすると、微笑みながら首を振り、「私は自分のしたいようにやっただけだから」といつかと変わらないことを言う。

後【歪曲の錬金術師】と言うのは名前だけで、生まれたときから持っている特殊能力の説明が面倒くさいので、仕方なく錬金術師と名乗っているという事も教えてもらった。

その後は戦中に幾らか会話をしたが、戦後は全く会うこともなく噂を聞くこともなくなった。




最後に彼女と会ったのは、鋼の錬金術師が列車占拠事件を解決した後で。

同じ列車に乗っていたらしく、ホームに降り立ったときもエドワード君をからかっていて、此方に気付くと変わらぬ笑顔で挨拶を交わし合った。

大佐を「ヘタロイ」呼びにし、大総統命で赴任してきた【歪曲】の名前でエルリック兄弟は吃驚していたが。

その後のスカー事件の時、陥没した地面にスカーごと落ちた彼女の行方はぷっつりと途絶え、軍では殉職扱いになってしまったけれど・・・・・・。





先日貰った手紙を丁寧にたたんで、手帳に挟む。
今でもどこかに彼女の笑顔があると信じて、今日もヘタレ上司をどうやって机に縛り付けようか考えながら、クマのぬいぐるみを撫でてから、リザ・ホークアイは家を出る。



















(あとがき)
一部修正しました。 他は変わっていないと思いますよ?



[7259] 外伝 6
Name: C-K◆ae02f8a5 ID:27ec9c7b
Date: 2010/04/05 17:45









その日学園長室には関係者が集まり、ゲストの登場を待っていた。

場にいたのは学園長の近衛近右衛門、2‐A担任のタカミチ・T・高畑、桜咲刹那、龍宮真名。


やがてノックもせず蹴飛ばされるようにドアが開けられ、エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルと巳子神櫻が入室した。

「エヴァ姉さん、せめて一声掛けるくらいはしましょうよ」

「フンッ。 朝っぱらから呼び出されたのだ。 文句くらい言う権利はあろう」

「だからと言って扉に罪は無いでしょう?」

「・・・・・・分かった分かった。 律儀な奴だな、お前は」

「最低限の礼儀だと思いますよ」

至って普通な゛姉妹゛の会話に、四人は揃ってエヴァンジェリンが偽者なのかと疑った。

「ど、どうしたんだい? エヴァ・・・・・・」

「なんだ? タカミチ。 藪から棒に、意味が分からんぞ」

なんと問うたらいいのか言葉に詰まるタカミチ。

姉に対する欺瞞の空気をスルーした巳子神櫻は、学園長の前まで歩み寄り深々と頭を下げた。

「学園長先生。 この度は不審人物に過ぎない私を中学校に転入させて頂いて、ありがとうございます」

「お、おお・・・・・・。 もうクラスには慣れたかのう?」

「はい。 皆様、実に良くして頂いて気軽に呼びあえる友人もできました」

「2‐Aの生徒達は皆、元気ある良い子供達だからのう。 ちなみに誰と友人に?」

「はい。 綾瀬夕映さん、早乙女ハルナさん、宮崎のどかさん、近衛木乃香さんです」

最後の名前に室内の二人程がピクリと反応をしたが、櫻は気付かずエヴァンジェリンはニヤリと笑った。

「図書館探検部のメンバーだね。 という事は図書館島に行ったのかい?」

「はい。 昨日、1階だけ簡単に案内をして貰いました」

タカミチの問いに丁寧に答える櫻を制し、エヴァンジェリンはイラつきを隠さず口を開いた。

「世間話をしたい訳では無かろう。 いい加減用件を言え、じじぃ」










★★ スパロボ的な日々 外伝 6 『 色々と誤解が増える日 』










「実はのう。 昨日夕刻に侵入者に対し刹那君と真名君が対処していた担当区域に、巳子神櫻君が乱入したとの報告があったのじゃが・・・・・・」

「はい。 確かにその場に入ってしまいましたが。 それが何か?」

てっきりとぼけたり、ごまかしたりするかと予想していたタカミチらは、正直に認めた櫻に拍子抜けした。


「だから言っただろう。 何かあったら連絡しろと・・・・・・・」

「ですから、家までの直線距離上に結界があるなんて普通は予測いたしませんよ」

「面倒くさがって直線を選ぶお前が悪い。 ちゃんと道を歩け」

「はい。 以後気を付けるように致します、エヴァ姉さん」




「家族会話はそのくらいで、こちらの話を続けていいかの?」

「ああ、すまんな」

エヴァンジェリンは櫻の後ろに下がり、壁に寄りかかって腕を組む。 完全に傍観する姿勢だ。

「それでその侵入者を櫻君があしらったと言う話なんじゃが、それも肯定するかの?」

「あしらったとは違うのですが・・・・・・。 結果だけみれば是、となりますね」

「貴女は魔法使いなのですか?」

首を傾げて答える櫻に、痺れを切らした桜咲刹那が問う。
答える前に、後ろで天井を見上げていたエヴァンジェリンが噴き出した。

「クククククッ! 魔法使いかっ。 フハハッ! 私が保障してやろう桜咲刹那。 櫻は魔法使いにはなれん」

闇の福音の断言に、桜咲刹那達にはさらなる疑問がある。

ならば昨日、紙吹雪の如く吹き飛ばされた子鬼どもはなんなのか?
気配察知に長けた二人を持ってしても、捉えられない動きは何なのか? ・・・・・・と。

「櫻、お前が昨日何をやったのか。 こいつ等に教えてやれ」

「いいのですか?」

「言いたく無い事は言わなくて良いぞ」

「はぁ・・・・・・」


眉間にしわを寄せ、少し思案するもすぐに姿勢を正し、桜咲刹那達へ向き直る。

「昨日使ったのは気と歩法です」

「・・・・・・気が使えるのかい?」

「とは言いましても、攻撃に転化するだけの量もありませんので。 一点集中で防御へ回すだけですが・・・」

手の甲を指し円を描く仕草をする。

「このように渦を作り触れたモノを全て弾き飛ばします。 ただ、飛ばすだけで倒す手段にはなりません。 歩法の方は説明が難しいので省かせて頂きます」

実際は歩法というのとは違う、空間をねじ曲げて数mを一歩で渡っているだけなのだが、其処まで話してやる義理もない櫻は適当に答えた。

ちなみにここまでの受け答えは、エヴァンジェリン達の想定内にあった。
そのため、エヴァンジェリンは言われる前にこちらから提案を持ち出した。

「じじぃ、櫻を夜の警備員にすると言うならば、我らと行動を共にする条件さえ飲めば、やってやらんこともないぞ」

「いや、やってくれるなら、望んだり叶ったりじゃが・・・・・・。 エヴァの裁量で決めてしまっていいんかのう?」

「はい。 エヴァ姉さんが望むならその通りに。 家族に頼られるならば私の力は家族のために」




「それに・・・・・・」

さも呆れた顔でエヴァンジェリンはため息を付いた。

「こいつは魔法使いの常識など何も知らん素人だぞ。 一人にしたらそれこそ何を引き起こすか分からん」

「お言葉ですがエヴァ姉さん、私も一般常識は重々承知していますよ?」

「どこが、だ? 昨日も聞いたが防御に回った理由を答えてみろ」

「結界を張った人が居るならば、救援が来るかと思ったからですが」

「ならば、その辺をまったく考慮しなかったらどうする気だった?」

「相手は紙だったみたいなのでデミ・フレア・ナパームで焼き払ってしまえば、片付けるのは簡単なのですけれど」

この返答には、ナパームがなんなのか良く知っている、龍宮真名が硬直した。

「・・・・・・巳子神さん。 ひとつ聞いてもいいかな?」

「はい。 私で答えられるのであれば」

「ナパームというのは、焼夷弾の・・・・・・」

コクンと頷く櫻に、龍宮真名の頬は引きつった。

「では、デミ・フレア・ナパームと言うのは?」

「瞬間溶解焼夷弾の事です。 中学校舎くらいであれば、二発もあれば灰になりま・・・・・」

ゴッ! と鈍い音とともに櫻は頭を抱え床にしゃがみ込んだ。

「バカかお前はっ! 森ごと焼き払ってどうする気だっ!」

「・・・ッ・・・・・・・・・・・・」

痛みで声も出ないらしい。 封印状態と言えど、吸血鬼の力で殴られたのだからさもありなん。
そのまま後先考えて行動しろと、説教を始めたマクダウェル家に、タカミチは乾いた笑い浮かべた。

「ハ、ハハッ・・・・・・。 これがつい先週までのエヴァと同一人物とはね」

「彼女の存在はエヴァにいい影響を与えたようじゃのう」

感慨深く呟く大人達とは対照的に、桜咲刹那は思いっきり警戒していた。


「龍宮はどう思う?」

「あのようすを見る限り、エヴァンジェリンが彼女の手綱を握ってくれれば安心だと思うがね」

「・・・・・・・・・」


睨みつける刹那に気付いた櫻は、敵意を向けられる理由に思い当たらずキョトンとしていた。

「ではの。 もう授業が始まる時間じゃから、これで解散じゃ」

「先に行っていろ櫻。  私はもう少しこのじじぃと話がある」

「はい」


刹那達に続き、きちんと礼をして出て行く櫻を見送ったエヴァンジェリンは近右衛門と向かいあった。

「随分と大人びた子じゃな・・・・・・」

「見た目に騙されるなよ、じじぃ。 あんな容姿をしているが、お前の三倍は生きている」

「なんじゃと・・・・・・」









    ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆


クラスまでの道のりで、龍宮真名と名前を交換しあったものの、刹那にははっきりと信用出来ない発言を突き付けられた。

「わかりました」

「・・・・・・は?」

「・・・・・・いや、櫻。 刹那に反論はしないのかい?」

「どう足掻いても第一印象゛不審人物゛と言うのは拭えませんから。 好きなだけ警戒して下さって結構です」

「そ、そうか・・・・・・」

「今まで通り、桜咲さんと呼びますね」

「あ、ああ・・・・・・」











   ◇ ◆ ◇ ◆ sakura side ◇ ◆ ◇ ◆


一時間目はぎりぎりだったんで、休み時間に昨日の礼をハルナさん達に述べたら、名前呼びにクラスメート達が一斉に反応してほぼ全員と名前を交換する事に。
これが今時の中学生のパワーか・・・。

のどかさんが図書カードを作ってくれたらしく、教室でその旨知らせてくれました。

「ありがとうございます、のどかさん。 また機会がありましたらお願い致しますね」

夕映さん達と昨日聞けなかった話をしていると、あやかさんが紙の束を抱えて私達の所までやってきた。

「それにしても、期末考査は大丈夫ですの? 休んでばっかりですと後に響きますわよ」

あやかさんが私に言った言葉に、辺りの空気がピシリと凍った。
あー、期末考査って学期末テストだっけ。 中学を卒業したのって何百年前だったかな?
でも学園都市で行ってたのは中学だったからなあ、あそこのカリキュラムは随分普通と違うけど。

「あー。 あんまり自信ないですけれど・・・・・・」

苦笑いして答えたら、机の上に紙の束をドサリと置いてくれた。

「とりあえず、今学期ぶんのノートのコピーですわ」

「ご丁寧に、わざわざありがとうございます。 あやかさん」

解答しようがすまいがくれたっぽいな、これは。 丁寧に礼を返したらちょっと赤くなった。

「こっ、これ以上このクラスからバカレンジャーを出す訳には参りませんもの」

「ちょっ・・・!? 櫻にそんなことを教えなくてもいいじゃん! いいんちょーおーぼー!」

「お黙りなさいバカピンク!」

なんかまき絵さん達数人とあやかさんとで、口喧嘩の応酬が始まりました。

ばかれんじゃー?
微妙に○○と愉快な仲間達っぽい名前だなあ・・・・・・、なにそれ?






「妙に騒がしいな・・・・・・」

いつの間にか左隣に姉さんが座っていてふんぞり返っていた。

「あ、エヴァ姉さん。 あやかさんにノートのコピーを貰いました」

「そうか、わざわざすまないな。 雪広あやか」

「は? え? え、ええ。・・・・・・委員長として当然の事をしたまでですわ?」

鳩が豆でっぼう喰らったような顔をして疑問符で答えるあやかさんと、私と姉さんの机回りから一斉に引くみんな。

何故?

「マスターは普段から他の人と交流がありませんので・・・・・・」

妙な顔をしていたら前の席の茶々丸が、そう教えてくれた。
そりゃあまあねぇ、10数年も同じ処でぐるぐるしてればウンザリするわね。

しかし、『登校地獄』って学校に無理やり行かせる呪いでしょう?
それがなんでリミッターが掛かったり、学校の敷地から出られなかったりするのさ?

卒業したら効果切れるもんじゃないの?
流石に魔法は専門外なのでどうにもなりませんが。






授業受けて、休み時間に教科書とコピーを見直して~。
受けて~見直して~。 ふむふむ、こんな勉強だったかなぁ。





お昼は姉さん達と屋上でとる。 のは良いんだけど、12月はさすがに寒いっ!
んで、【機神図書館】の中より教室内蔵の恐竜メカを引っ張り出す。

「これなら寒くない!」

「「・・・・・・・・・」」

「どうしたの二人とも。 味付け失敗しちゃった?」

本日の弁当は私作。 弁当作るなんて懐かしい行動ですよ。

「いや・・・・・・。 もうなんでも有りだな、お前は・・・・・・」

誉められているのか呆れられているのか、判断に困る言われ方が。
因みに本来なら校舎屋上に赤い山となってて大騒ぎなのですが、上から光学迷彩が掛かっているので鷹目でもない限り見つからない仕様。




「櫻様、皆様話し掛け辛そうにしてましたよ」

「うん?」

「お前、あまりにもまっじーめに休み時間に自習していたろう」

「綾瀬さんや早乙女さん達が席の周りをウロウロしてましたよ」

「ありゃ? 気が付かなかったわ」

勉強もたまに手を着けると面白いんだけど、ここ最近は世界渡る度に、言語学の勉強しかしてなかったからねえ。



「あと来月になったら、ネギ・スプリングフィールドが来るそうだ。クククッ」

「葱?」

「櫻様、野菜の葱ではないと思います」

「あ、そうなの?」

じゃあ人の名前で葱? いやイジメられんじゃないの。 親御さんは何考えてるんだ。

「私にこの呪いを掛けた奴の息子だそうだ」

ほほう、じゃ私の敵。

「転校でもしてくるの?」

「いや。 教師としてくるらしいぞ」

「魔法先生?」

「ああ、そうらしいな」

「じゃ、ミスった現場を抑えて、さっさとオコジョになってもらおう。 校内の監視カメラとか全部支配下におけばいいね」

魔法バレしたらオコジョ。らしいのですがね。
ところでオコジョって見たことないんだけどどんなの?
むしろ何にみえるのかが問題。




















放課後に夕映さんとハルナさんに気付かずにごめんなさい、と謝っておく。

「うんにゃ、私達も勉強の邪魔をしたくなかったし・・・・・・」

「でも櫻、あれで判ったの?」

「はい、あやかさんのノートは良くまとまっていて分かりやすいです」

「むむむ、櫻勉強出来るんだねぇ」

「なんでしたら、図書館島のお礼も兼ねて勉強をお教えしましょうか?」

「うーん、じゃ少しだけでも・・・・・・」

「じゃあ、ウチとアスナも一緒してええ?」

帰ろうとした神楽坂さんと一緒にいた木乃香さんも、横から話に入ってきた。

「ちょっ!? 木乃香! 勝手にあたしを巻き込まないで!」

「はい。でしたら、みんなでやりましょう。 のどかさんも」

夕映さんの後ろで、何か言いたそうだったのどかさんにも声をかける。
顔を赤くしてあわあわしてる姿が可愛いくて、おもしろいわ。














「それでは櫻様、行きますが・・・」

「あ、はい。じゃあ皆様、また明日」

「櫻、絡繰さんに『様』付けで呼ばれてるの?」

「はい。茶々丸さんが姉さん個人のメイドさんで家族なんです」

さすがに従者です。なんていえないわな。

「それでは皆さんお疲れ様でした」

茶々丸を追いかけて教室を出ると、後ろからハルナさんが「櫻ってもしかしてすっごいお嬢様?」とか聞こえた。
これ、明日までにクラスに広まってたらどうしよう・・・・・・?












今日は茶々丸と買い物に行って、憩いの場所に案内してくれるそうなのでちょっと楽しみ。

姉さんは学園長と囲碁を差しにいったらしい。
ところであの学園長は人間なんだろうか? 骨格標本にしたら人類の神秘?





買い物の時、迷子を見つけて親を捜してあげる。
お婆さんがいたら、道を渡ったりする手伝いや荷物を持ってあげる。

「・・・・・・茶々丸親切~」

「いえっ!? これはたまたまでしてっ」

「えらい! なかなか出来る事じゃないよ~。 よっ、ガイノイドの鏡~」

実際私は荷物もっていただけだし、誉めちぎったらスタスタと早足で行ってしまった。

恥ずかしいという感情なのかどうか、持ってるのか良く分からないけど。







茶々丸の憩いの場は建物裏手の、物が色々転がっている空き地で。

たくさんの猫が・・・・・・。


猫か・・・・・・orz


「どうしました櫻様!? 具合でも!?」

「ごめん。現実に直面してうちひしがれた・・・・・・」


はあー・・・・・・。やはり戦車にしか見えねー。

前に、誰だっけ・・・・・・、ええとー、リーゼント・アリアとかいうのが猫に化けたのは戦車じゃなくて、猫をみたのはあれっきりだったなあ・・・。


虎王機に相当すんのは居ないや、戦車ばっかり。
茶々丸は餌をあげたり、話掛けては撫でてあげたり、優しい顔で世話をしている。

ふうん。ちょっと聞いてみよう。

「これ、そこの戦S・・・・・・じゃなくて猫」

  みゃうみゃう

「ほぉほぉ」

  にーにー

「なるほど~」

  にゃうにゃう

「櫻様?」

「うんうん、なんてやさしいの茶々丸。 お姉さん感動した!」

「・・・・・・はいっ?」

「茶々丸の真心に猫達も随分感謝してるって、これからも頑張って!」

くぅ~、猫にこんなに慕われているなんて、今時珍しい善人だよ。
戸惑ってるというか、恥ずかしがってるというか、微妙な表情だけど。



茶々丸を手伝って、あたりを掃除したり~、打ち捨てられたコンテナにレーザーカッターで穴を開けてみたり。
遊んでたんじゃないよ、こうすれば風雨凌げるでしょう。


気が付いたら、茶々丸が端の方でしゃがみ込んだまま微動だにしない。
ゼンマイが切れたのかと思ったら、腕の中に旧式の戦車抱え込んでいた。 キャタピラが片方外れかかって胴体にも凹みが出来てて。

老猫で足骨折、肋骨損傷内臓も逝ってるぽい。
車にでも跳ねられたかな? 虫の息よりはまだ生きてるね。

「どうしたら・・・・・・?」

「どうしたいの?」

「櫻様・・・・・・」

「茶々丸はその子どうしたい? 私は見捨てて、忘れる。 が一番いいとおもうけど?」












   ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆


櫻に言われた事がガイノイドが出来る最良の選択。
しかし茶々丸は手を離す気にはなれなかった。

『茶々丸の真心は猫に伝わってるよ』と告げられた時に、自分の何かが動いたのを覚えている。
このまま手を離したら、自分は櫻の家族だと言ってくれた茶々丸ではいられなくなってしまう。

「・・・・・・助けます」

「ありゃまあ、あっさりと」

「助けますから。櫻様の意向には添えません」

櫻は猫と、キッパリと自分の意見を言った茶々丸を交互に見て、ため息をついた。

「獣医までもちそうにないね」

「・・・・・・え?」

「助けるんだね?」

「はい!」

はーやれやれと頭を振った櫻は、比較的平らな地面に絵を描く。
二重丸に三角四角、記号に不可解な文字。

「魔法陣・・・・・・?」

「ちょっと違う。 その子置いて」

茶々丸が中に猫を置き、櫻が赤い石を添える、手をかざして再度ため息をつき。

「さて、何人分に相当するのかな?」

ストロボ並みの光と微細な電子反応。
バシュッ! と音が一瞬だけ響くと、辺りで様子を伺っていた猫達が跳びのいた。
光が消えた後には傷ひとつ残っていない猫と赤い石。

しかし、石は櫻が拾いあげるとその手の中で粉々に砕け散った。

「砕けたか・・・・・・。 ま、しょうがない。 ココに来るまでに一回使ってるし・・・・・・」

猫の方は、鼻を鳴らして起き上がると、茶々丸が与えた餌をもそもそと食べ始めた。
先ほどまでの弱々しさはかけらも見当たらない。
櫻は覗き込むようにしゃがみ、頭をいとおしそうに撫でた。

「キミは茶々丸に感謝しなさいよ。 もうちょっとで死んじゃうところだったんだから、ね」












   ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆


妹と従者が家に戻ったとき、先に帰宅していたエヴァはソファで本を読んでいた。
隣には、テレビのリモコンを我が物のように抱えるチャチャゼロ。

「オー、オカエリ」

「うん、ただいまー・・・・・・」

「すみません、マスター。 遅くなりました」

「ああ・・・・・・?」

数時間前よりはるかに気落ちした櫻の姿を見たエヴァは、眉をひそめた。
櫻は、ソファの横の床に腰を下ろすと、チャチャゼロを抱え上げた。

「ッテマタカッ! テレビクライユックリ見サセロ」

「・・・・・・うん・・・・・・」

「・・・・・・オイ、ドウシタ?」

「うん、ちょっとね・・・・・・」

チャチャゼロを抱え込んだまま沈黙した。
シャコ貝みたいになった妹を見て、さすがにただ事ではないと思ったエヴァは、キッチンの従者の元へ移動。

「おい、茶々丸」

「すみません、マスター。 夕食は少し遅くなります」

「それはいい。 なにかあったのか?」

「櫻様ですか? あったにはあったのですが・・・」

「なんでもいいから、話せ」

主人の要請に従い、買い物から人助けから猫とのやり取りから話す茶々丸。
最後の猫助けまで話し、「それから、あんな感じです」と言った。

「その赤い石が、アイツの琴線に触れたのか?」

「砕けたことに気落ちするより、使ったことに後ろめたさがあるような感じでした」

世界を渡りすぎて色々嫌なことにも直面しているのだろうと、考えたエヴァは、本人が言い出すまで放っておく事にした。
居間の方を見るとのぞくと、チャチャゼロと居ることで、緩和されているようではある。

「戦車がにゃーって。 はあ、ここでも戦車か・・・・・・」

「ワケガワカランゾ」













   ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆


年が明けたら葱が来た。

って、10歳の子供とは思わなかった。 この国の就労法はどーなっているんでしょう?
あ、学園都市だから治外法権なのか。


期末テストの勉強で集まったとき、基礎から判るまで教え込む、ということをやったら。
『勉強に対しては妥協しないスパルタ家庭教師』というタグがついた。
高畑先生のせいで『病弱』というタグが外れないのに、更に増えるのか・・・・・・。

それでもバカレンジャーはバカレンジャーだったと、あやかさんは語った。
アスナさんとか、あんなにあーんなに教え込んだのに。

エスカレーター式かどうかは知らないけど、高校行ったら落第しまくるんじゃない?


後、姉さんに、超鈴音さんと葉加瀬聡美さんと引き合わせてもらいました。
機動戦士茶々丸を作るんなら、製作者に相談しろと。
今の所、情報交換だけで実用には至っておりません、中でも作ってるんだけどねー。

核があるから、核パルスエンジンとかどうでしょう。 コロニー落とし~。









私の視線を映像記録に直結する方法を取ってたんだけど、入り口に引っかけられた黒板消しが葱の頭上で浮いた。

案の定、授業一回目は潰れた。みんな騒ぎ過ぎ。
姉さんを見ると「楽しそう」だったけども。

あと、アスナさんが「とんでもなく失礼なエロガキ」と憤慨してた。
さすが子供、思うままに何か人の琴線に触れる事を口走ったらしい。

一応校内外に一機ずつタチコマを置き、葱の動向を記録しろと命令してあるので、数日も経てば出るわ出るわ。
魔法を秘匿するって意識は無いんかい・・・・・・。









編集してDVDに焼き、ちょっと考えたけれど。

「直接持っていく事にしました」

「いいのか? お前自身がアイツに警戒される事になるぞ」

「どっちかって言うと、最初に出席を呼んだ時点で、エヴァ姉さんが警戒されると思ってたんだケド・・・」

『エヴァンジェリン・A・K・マクダうぇるううううう!?』 とか、目を丸くしながら言うのかと思ったら言わないんだもん。 拍子抜けだったわ。

「何故だ?」

「有名なんでしょ、闇の福音って? 10歳の子供には知られていない程度の知名度と」

「なっ・・・・・・」

「櫻様、最近はマスターに遠慮が無くなってきましたね」

「この姉にして妹あり、ですから」

「櫻っ!」

「おー、怖い怖い」


そのまま、まき絵さんの所まで避難する。

「どうしたの? エヴァちゃんが声上げるなんて?」

「いえ、少し怒らせてしまいまして。 時間をおいてからまた話をしますよ」

「そうなんだ。 二人とも仲良いから、喧嘩なんてしないと思ってた」

「これでも一緒に居ると軋轢が絶えないのですよ?」

「そうは見えないけど・・・・・・。 何処か行くの?」

「授業が進まないので、葱先生に苦情を申し立てて参ります」

「あ、はは、さすが櫻。 教師にもスパルタなんだ・・・・・・」

いや、英語くらいならぺらぺらーだから別にいいんだけどね。

















職員室に着いたら、高畑先生に指示されて何か書いてる所だったが、割り込んだ。

「葱先生、少しよろしいですか?」

「え? 貴女はウチのクラスの・・・・・・巳子神さん?」

「櫻君か、」

「お邪魔して申し訳ありません。 高畑先生」

「ああ、大丈夫だけど。 何かあったのかい?」

「はい。 遅々として進まない授業に苦情を言いに参りました」

「あ・・・・・・、ご、ごめんなさいっ!」

慌ててペコペコ頭を下げ始める葱先生。
適度になだめる高畑先生。 甘やかし過ぎだと思うのだが。

「あとこれをどうぞ」

DVDを透明ケースごと渡す。

「なんですかこれ?」

「ある方の頭上で黒板消しが停止する映像とか、モザイクは掛けてありますが女生徒の服をくしゃみで剥ぐ破廉恥な先生とか、 怪しげな薬を調合する子供とかの、マル秘映像が詰まっていますわ」

ビシリと石化する葱先生と、苦虫を噛み潰した顔の高畑先生。

「マスターデータは私が保管していますから、紛失したら仰って下されば幾らでもコピーしますね。 では、失礼致します」

職員室の出口でも礼をして廊下へ出ると、高畑先生が追いかけて来た。

「櫻君、少しいいかな?」

「何でしょうか?」

「あのデータは警告のつもりかい? エヴァの指示でやっているのか?」

「エヴァ姉さんは関係ありません」

「ならキミの意志かい?」

「ええ。実はオコジョというものを見たことがありませんので。 ただの好奇心ですから、お気になさらず」

人間が化けたヤツならちゃんと動物に見えるだろうと思ったんだけどね。

「・・・・・・」

「それでは次の授業がありますので」

なんか高畑先生絶句してた。














教室に戻ったらアスナさんに詰め寄られました。 千客万来で忙しいねえ。

「櫻っ! 高畑先生と何話してたの?」

あ、そっち・・・・・・。

「櫻、授業の進み具合に苦情しにいったんだってー。  真面目だよねー」

まき絵さんが横から代弁してくれたので頷いておく。

「アンタこの前の期末であれだけとって、この上まだ取ろうっての~?」

「まさかノートのコピーだけで、学年上位に食い込むとは、びっくりですね」

「「さすがお嬢様!」」

まき絵さん、夕映さん、その認識は間違いです。
どんどん妙な方向に誤解が重なっていく、言葉遣いと大人びた姿勢だけでお嬢様は酷い。
病弱じゃないんだけどー、時々チャチャゼロや姉さんに付き合ってお酒飲むと次の日あっさり二日酔いで休む程。

ど・・・・・・どうやって訂正すればいいのかな?

考えつつ、一歩左へ移動。 胴体があった場所を風を唸らせる豪拳が通過。
後ろを振り向くと、私より小柄な短めのツインテールと目が合う。

「古菲さん・・・・・・、出来れば不意打ちは勘弁して頂けませんか?」

「かなり不意を打ったハズなのに、櫻避けたアルよ~」

『病弱』じゃないと言って通じるのはこの子くらいだろう。
冬休み中に学園を散歩していたら、部活中の古菲さんが部員を千切り投げしてる場面に通り掛かり。
こっちにすっ飛んできた部員を、つい『渦飛(カヒ)』で跳ね飛ばした場面を見られたものだから、「手合わせがしたいアル~」と言って、時々仕掛けてくるようになった。

私は周囲に各種センサーを張ってあるから、どこに何があるかをほぼ把握している。
後ろから忍び寄ってきても、「見えて」いるのだ。

ああ、センサーと言えばアインに言われて確認することがあった。

「すみません。 アスナさん少しよろしいですか?」

「なによ? 櫻」

「その位置だと不都合なのでちょっと屈んで頂けると・・・・・・」







    ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆


「だからどうしたの」と言いかけたアスナを無視して、櫻が彼女を抱きしめた。

「な・・・・・・な、なななななな・・・・・・。 な───」

顔を赤くして硬直するアスナと、「キャー」と歓声を上げる周囲。

「櫻、そういう趣味がっ!」

まき絵達が親指を上げGJと称える。

「趣味なんて人聞きの悪い・・・」

抱きしめたまま平然と答える櫻。

反面、良い匂いがするやら、柔らかいやら、髪がさらさらやらで心ときめかせたアスナは傾きかけた自分に我に返り、暴れて櫻を引き剥がす。

「・・・・・・あら。 つれないですね。 アスナさん」

妖しく光らせる瞳を向けられたアスナは、「ヒイッ!」と悲鳴を挙げ、木乃香の背後へ逃げ込んだ。

「どうしました櫻。 随分と積極的になりましたね」

「それがですね、夕映さん。 アスナさんいつも元気でいらっしゃいますから。 ・・・精気でも分けて頂けるかと思った次第であるのですよ」

「喰われるっ!?」

ビビる木乃香の背後霊。
には目もくれず、「じゃあ、ボクたちが分けるよ~」と立候補した風香やアキラ達と包容を交わす櫻。
抱きしめ大会と化した教室で、一部の者達は教室の端から立ち昇る殺気にピリピリしていた。


















「・・・・・・・・・」

肩をいからせながらずんずん先に歩いていく姉を見ながら、櫻は首を傾げた。

「櫻様、マスターはイラついてます」

「あ、そうなの。 なんで?」

「櫻様が明日菜さんを抱きしめてからです」

「そっちの理由かー・・・・・・」

「・・・・・・どうして私の腕にしがみつくのですか?」

「だって茶々丸背高いじゃない。 スキンシップよスキンシップ」

「そういうものですか・・・・・・」

一方なかなか追いついてこない従者に振り返ったエヴァは、妹が楽しそうに茶々丸の腕を抱えるのを見て突撃し、引き離した。

「エヴァ姉さん横暴~」

「やかましい! 色ボケてないでさっさと帰れっ!」



結局家に帰った後もチャチャゼロに抱きつき、エヴァに怒鳴られるハメになる櫻だった。















    ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆


「見っ回り~、見っ回り~。たっのしい見っ回り~♪」

何が楽しいのか。 ハイテンションで歌いながら夜道を闊歩する櫻と、マクダウェル家がいた。

エヴァは黒頭巾と化したマント姿に、茶々丸は制服姿。
櫻も制服姿だが、腰の背からは白と黒の長い尻尾が生え、後ろに回した手には三節根が握られている。
ついでに頭にはチャチャゼロが乗っていた。

「浮カレテコケルナヨ」

「平気平気~♪」




「いいのですか?」

「何がだ?」

「この時期に姉さんを外に出したりして」

「構わん。 櫻はアイツと居た方が元気になっている」

ご機嫌な妹の姿に口元を緩めたエヴァだったが、ここではない場所で結界を多数踏み越える感覚を受け、思案する。

担当区域が違うが多過ぎる反応が気になり、現在の最大火力に様子を見に行かせる事にした

「櫻」

「はぁい」

呼ばれて子犬のように寄って来た櫻に方角と大体の距離を伝え、「行ってこい」と促した。

「くれぐれも火器は使うなよ」

「は~い」

前回、ミサイル乱舞で麻帆良の地形を変えかけた前科がある櫻に、特に念を押す。

「チャチャゼロはどうするの?」

「連れて行け。その方がお前の監視も出来る」

「うへぇ・・・・・・」

不満を口にするが、走り出した数歩で跳躍。 
指示された方角へ建物を飛び越えて、一直線に走り去った。

「あれの何処がお嬢様だ?」

「普段は特大の猫を被っていますから」

なんであーも極端な移動しかしないんだと呆れて見送った。





















一方、櫻の指示された場所で、大量の子鬼やら使役される鬼やらと、てんてこまいな対応を強いられていた刹那と真名だったが。

上空から聞こえてきた風切り音と、聞き覚えのある声に、慌ててその場から跳び退いた。


「ひっさあああぁつ!!ゲシュペンストキイイイイィーーック!!!!」


一番やっかいそうだった特大の鬼を、何処から得たのか分からない速度と破壊力でもって圧殺。
踏み抜かれた鬼は何故か大爆発を起こして、その短い生を終えた。


爆発の中から無傷で現れた櫻は、頭に人形をへばりつかせ、微笑みながら一礼する。

「お手伝いに参りましたわ。 真名さん、桜咲さん」

「・・・・・・どっから降ってきたんだい、櫻?」

「上からですわ」

生えた尻尾が抱えていた三節根を抜き放ち、近くの子鬼を纏めて吹き飛ばす。

「ケケケケ、俺ニモ殺ラセロ」

頭上から降り立ったチャチャゼロが包丁をギラつかせ、鬼の群へと突っ込んだ。











「やれやれ、随分と騒がしい病弱なお嬢様が援軍に来たものだな」

「あ、ああ」

この隙にとマガジンを代える真名、切り払う作業に戻るもある一点を意識してしかたがない刹那。

「ケケケケ」と楽しそうに斬り殺していく人形。

「ちょっ、チャチャゼロ突出し過ぎですわっ」

「エエイ斬リガイガネェ」

「もうっ、ソニックジャベリン!」

手持ち武器を鉾や三節根に形を変えながら掃討し、時々「がおー」と衝撃波で纏めて吹き飛ばす櫻尻尾付き。
最初の苦戦も払拭する騒がしい戦いぶりに、途中から口元に緩みを感じながら刹那達は馬鹿馬鹿しい一人と一体に呆れていた。














十分と経たずあらかた片付け、一息ついた刹那達へチャチャゼロを腕に抱いた櫻が近付く。

「そちら、怪我とかありませんか?」

「ええ。 巳子神さんは?」

「問題ありません」

「それにしても櫻。 病弱にしては派手な登場の仕方だったじゃないか」

「見ての通りですわ。 文句は最初にのたまった高畑先生に言って下さいまし」

「あ、あのっ! 巳子神さん」

真名と談笑する櫻へ、意を決した刹那が声をかけた。

「はい。何ですか桜咲さん?」

「そ、その尻尾は・・・・・・?」

刹那が指差した先、腰の上でピコピコ踊る白地に黒縞の尻尾。

「ああこれですか。 ちょっとした特異体質で時々生えるんです。 出来れば、他の人には秘密にして頂きたいのですけれど」

特異体質というか、能力の内な意味で言ったのだが、櫻はショックを受けている様子の刹那が、震えているのに首を傾げた。
真名は「人の秘密は厳守するさ」と了承する。

「それで辛い目にあったりは?」

いまいち言われた事が不明なのだが、刹那が大真面目だったため、しばし考えてから返答する。

「そうですね。 昔(別の世界で)は迫害されたりしましたが少なくとも姉さん達は何も言いませんし。 一人でも(能力の)理解者かいるだけで気にならないものですよ」

「・・・・・・強い、んですね」

「・・・・・・は?」

小さく呟いた刹那に聞き返そうとした櫻だったが、腕の中のチャチャゼロが櫻をぺしぺし叩き、動作を中止させるに至った。

「御主人ガ、用ガ済ンダラサッサト戻ッテ来イトヨ」

「あら、いけない。 エヴァ姉さんを待たせるわけには参りませんわ。 それでは真名さん、桜咲さん失礼致します。 おやすみなさい、また明日学校で」

「ああ、今日は助かったよ」

「お・・・・・・おやすみなさい」

駆け足でたったかたーと去っていく櫻を見送りながら、真名は俯いた刹那に声を掛けた。

「言いたい事は言えるうちが吉、とかじゃないのかい?」












    ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆


「どこまで狩猟しに行ったんだ。 あいつらは!」

腕を組んでイライラも最高潮といった雰囲気のエヴァの後ろで、何かに気づいた茶々丸が、「あ」と言い「なんだ」と言いかけたエヴァが不意に柔らかいものに包まれた。

「戻ッタゼ。 御主人」

「ただいまー。 エヴァ姉さん」

「ななななな、な────ッ!!」

しっかりと櫻の胸の中に抱きしめられている自分に、驚愕の叫び声を上げるエヴァ。

「どっから現れた! お前達!?」

「イヤ、普通ニ前カラ近ヅイタダケダゼ。 ナア?」

「うん、きちんと光学迷彩で姿消して。 ねえ?」

「足音が無ければ見逃すところでした。 あと熱感知もですが・・・・・・」

「ぬう、茶々丸ごまかすには歪曲歩で近づかざるをえないのね」

「だから何で私を抱きしめる理由になる!?」

ニヤリと意地悪な笑みを浮かべた櫻はもったいぶるように「えー」と不満を表す。

「だって、教室でうらやましそうにこっち見ていたでしょう。 エヴァ姉さん」

「・・・・・・そ、そんなわけあるかっ!」

イヤがってるようなのか、別の何かか分からなくなった櫻は、しぶしぶエヴァを放す。
茶々丸が、いまだに出ていた尻尾を撫でるようにしながら、声を掛けた。

「櫻様。 あちらを」

「うん?」

振り向いた櫻は、今来た方向から刹那が歩いてくるのを見て、眉をひそめる。
さっきの会話でなにか失敗したかと思いながら、彼女に近付いた。



「どうしました桜咲さん。 なにかありましたか?」

刹那はそれには答えず、ただ深く頭を下げた。

「・・・・・・はい?」

「すみません、巳子神さん。 私は一時の感情で貴女に失礼なことを言ってしまいました。  こんなところに似たような一族がいるなんて気がつかなくて。 申し訳ありません!」

(やっべぇ・・・・・・。何かまた誤解が増えた)

櫻が内心のグルグルした感情にパニックになる中、刹那は言いたいことだけ言うと、もう一度礼をして去っていった。



だらだらと脂汗を流して硬直する櫻の珍しい姿を見て、溜飲を下げたエヴァ。
茶々丸に命じて、引きずって持ち帰られる櫻に、チャチャゼロはため息を付いた。








   ◇ ◆ ◇ ◆ sakura side ◇ ◆ ◇ ◆


気を取り直して思い出した私は、家に戻ってすぐに姉さんに教えておくことにした。
昼間、何故明日菜さんに抱きつく羽目になったか、を。

「A.M.F ? なんだそれは?」

「アンチマギリンクフィールド。 効果範囲内の魔力結合を解いて魔法を無効化する範囲妨害型防御魔法。 アインの世界にあった技術のひとつ。 これに似たような波動を無意識に人体から微弱に放出してるみたいなんだけど、アスナさんが」

「それで抱きついていたのか・・・・・・。 分かった、覚えておこう」



それにしても桜咲さんは尻尾を見て態度変えてたけど、実は尻尾フェチとか・・・・・・。 んな訳ないか。

















(あとがき)
実は酷い主人公。 あと酒に弱い。
キックは最初「パン●ト流星脚」か「ゆにばーす」にしようかと悩みましたが、ノーマルになりました。
実際は虎龍王を憑依させたままなので正確にはゲシュペンストじゃないという。

外伝8&9を合体させて修正しました。



[7259] 外伝 7
Name: C-K◆ae02f8a5 ID:27ec9c7b
Date: 2010/04/06 01:10




良く分からないのですが、何故学園都市に侵入者があって、それを撃退する警備員が必要なのでしょうか?
そもそも侵入者は何のために、送り込んだり入ったりしてるわけ?

夜だけでも結界をガッチガチに出来ないものかと思い、高深度で学園内のシステムに潜り込む事にしました。
学園内を通っている電話線に、無理やり延長コードを接続、それを人気の無くなる夜の森の中にまで引っ張ってきてから、ダイブ。

体がお留守になるので、アインとガジェットに守りを任せます。
一応、R-1とゲシュペンストも出して、攻撃してきた奴は優先的に殲滅命令。

潜って、システムに情報を全て提示してとお願いして、分かった事は・・・・・・。









★★ スパロボ的な日々 外伝 7 『 疑惑とカードと狂戦士バーサーカー 』 ★★











「なんなんだこれ・・・・・・」

食堂棟の外のラウンジで、目の前に広げられるついさっきプリントアウトしてきた紙を見る。
簡単に言うと外環部だけで機能する、魔方陣だ。

専門外ですね、さすがに。 
ココの魔法使いって、学園長に、葱に、姉さん。 あと高畑先生、・・・・・・くらいしか知らない。
学園長と高畑先生は却下、葱は口が軽そうだしやっぱり姉さんしかいないか。

あと魔法の専門家となると、今何処にいるのか分からないあの馬鹿しかいない。
あんなのに頼るくらいなら素直に姉さんに持ってくしか無いわー。


「あ、おったえー」

紙を納めて、ラウンジを去ろうとしたら、おっとりした声が掛かった。
近所でキョロキョロしてたのは知ってたけど、探してたのは私か。

「アスナさん、木乃香さん。 こんにちわ、休日に私など探してどうしたんですか?」

「どうしたのじゃないわよっ! 学園中回るハメになるかと思ったじゃない・・・・・・」

「おじいちゃんが櫻をお呼びなんよ~。 学園長室まで向かってくれへん?」

「そうでしたか。 それはわざわざ休日の時間を潰してしまい、申し訳ありません」

一礼して、そこを離れようとしたら、アスナさんに再度呼び止められた。

「櫻、携帯持って無いの? それがあればすぐ連絡取れるんだけど」

「すみませんアスナさん。 私、携帯は持たない主義なんです。『たとえ離れても、思い出を持っていればまた会える』なんて実に馬鹿馬鹿しい希望だと思いませんか?」

「え・・・・・・」

面食らった顔をしているアスナさんに一礼して、学園長室に向かう最短距離を頭の中より引っ張り出す。
休日の昼間だと飛んだり跳ねたりできないからなー。 人目が多すぎる。















    ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆


ノックの後にしばし無音が続く、近右衛門が「いいぞい」と言ってからようやく扉が開き、呼び出した巳子神櫻本人が一礼して入室する。

部屋の中には、近右衛門とタカミチが居た。
その二人を見ても特に表情を動かさず、近右衛門の前に来て再び一礼した。

「木乃香さんに、承って来ましたが何の御用でしょう?」

「少し聞きたいんじゃが、キミはネギ君が教師をやるのに反対なのかね?」

櫻はしばし上を見上げてから「質問の意味が分かりかねますが?」とだけ答えた。
タカミチはディスクを取り出して、デスクの上に置く。

「キミがこれをネギ君に渡した真意が知りたい」

「それは高畑先生に言った通りです。 オコジョが見たい、と」

「それだけなのかな?」

「それだけですね」

ピリピリした空気が現実味を帯びたように、肌に刺さるナニカに変化した。
ポケットに手を突っ込んだまま直立不動のタカミチ。 特に何の動作もせず、ただ立っているだけの巳子神櫻。

近右衛門が「ヒョッ!?」気づいたが時遅く、衝撃波の拳が放たれ櫻手前で四散する。
いささかその反動で、後ろに下がるしかなかった櫻だが、表情は驚きで満ちていた。
逆にタカミチもまさか当たる前に四散するとは思わなかったのか、口にくわえた火の無いタバコを落としていた。

「ずいぶんな防御壁を持っているね・・・・・・」

「いえいえ、先生こそ。 まさかこちらのテリトリーを抜きかけるとは」

「あー、二人とも、ココで暴れられても困るのじゃが・・・・・・」

すっかりカヤの外になった近右衛門だったが、表情を消した二人の視線に晒され背筋の凍る感覚に襲われる。
しかし、タカミチが最初に居た位置に戻り、櫻も放出していた黒い気配を納めた。

「私は、家族に何の弊害もなければそれでいいんです」

「・・・・・・そうなのか。 いや、突然呼び出してすまなかったのう、あとは休日を楽しむといい」

「はい、それでは。 失礼致します」



櫻が出て行き、気配が遠ざかるのを感じた近右衛門は「ぶはー」と息を吐き、椅子に座り込んだ。

「高畑先生、こういうアクシデントはこれっきりにして欲しいのう」

「すみません。 しかし結構本気で打ち込んだんですが、まさか弾くとは・・・・・・」

「それにしても、ずいぶんと家族と言うものを大事にする娘じゃのう」

「逆に、エヴァ達に何かあった時がこわいですね」













 


「何っ!? タカミチと一戦やりあっただと!!」

学園町室から真っ直ぐ家に帰り、色々と報告を済ませた櫻にエヴァは詰め寄った。
本人は至って平然と事実だけを口にしたのだが、エヴァにしてみれば青天の霹靂だ。

「とは言っても衝撃波を弾いただけだけど、すごい威力だったねー」

「ケケケケ、怪我ハネェッテトコガスゴイナ。 アレト殺リアッテ」

「殺し合いじゃないからね、チャチャゼロ」

茶々丸が淹れてくれたお茶を飲み込み、ホッっと一息つく。

「あっちが引いてくれてよかったよ。 対人戦って良く分からないから・・・」

「さすがのお前もタカミチに勝つには難しいか」

「勝ち負けで言えば絶対に負ける。 勝負を抜けば勝てる」

「勝負を抜く・・・・・・ですか?」

「手段を選ばないから確実に殺しちゃうけど」

この答えにはエヴァも息を呑む。 茶々丸は平然としていたがチャチャゼロは面白そうに、笑い始めた。

「なに? 姉さん、私が『殺す』とか言うの意外?」

「いや、お前の過去を詮索するつもりはないが。 それなりに場数を踏んできたのだろう」

「『人間』なんて殺すのは簡単だよ。 環境を変えてしまえばイチコロだしね」

妹の瞳に危険な光が宿りかけたのを見て、エヴァはチャチャゼロを掴み櫻へ投げ渡した。
慌てて受け取ったが、チャチャゼロは「御主人・・・・・」と不満そうだ。

「今日はまだ半分残っている。 気分転換に少し散歩して来い」

櫻が家に帰って来たのは、報告のほかに昼食を食べるためだ。
遅くなったために作れなかったとぼやいていたので、茶々丸が夕食作成権を譲るまでむくれていたのである。

それに櫻が持ち込んだ、自分の封印に対する重大な資料もある。
少しは役に立てるかなあと不安な顔をしていたので、頭を撫でたら喜んでいた。
この辺は何故か犬のようだったと、エヴァは思う。


「チャチャゼロお酒買ってあげる。 何が良い?」

「ソウダナ・・・・・・」

「お店まで連れて行くから、チャチャゼロが選んでよ。 あんまり高くない奴」

「マテマテ、俺ニモ妥協点ッテノガアル。 ソノ辺は考慮シロ」


「あのへんは姉妹のようだな」

「どちらが、姉になるのでしょうか?」

「チャチャゼロだろう。 つまり茶々丸の妹か姉だということになるな」

いってきまーすの声にも気づかないほど、真摯に考える茶々丸にエヴァは噴き出した。
二ヶ月前とは違うぬるい空気だが、結構気に入っているエヴァだった。

















    ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆


明けて次の週、月曜日はハイテンションなチャチャゼロに付き合って、二日酔いで休んだ櫻だった。
火曜日から登校したとしても、校内の空気が変化していることに気が付く。

「・・・・・・期末か」

そんな中でも毎度毎度変わらぬ空気が流れる2-Aを、他人事のように眺めていた。
二学期は学年最下位だったので、このペースで行くとまた学年最下位からは逃れられぬ運命だろう。
櫻が高得点をとっても、平均点が二点ほどしか上がらないので、差が付くビリ2のクラスにも抗えぬのだ。



「あ、櫻がぼんやりしてる。 大丈夫、保健室行く?」

「少しは運動とかしたほうが良いと思いますよ。 探検でもします?」

「栄養付くモノ食べた方がいいネ。 ほい肉まん」

ちょっと大人しくしていると、何かと気遣ってくれるクラスメートがいるのが楽しかった。
顔を覗き込んでおでこに手をあててくる者、顔色を伺う者、お代を払って肉まんを受け取り心配してくれる人達へ「大丈夫ですよ」と返しておく。

視界の隅に捉えた銃の麗人は、「大変だな」とでも言うように苦笑いをしていた。
刹那のほうはと、視界以外で捉えた情報によると、木乃香とこちらにチラチラと視線を送っているようではある。

ふいにいたずら心が沸いた櫻は、虎龍王を憑依。 後ろからひょこんと尻尾を生やして見せた。
ビックリして慌てて立ち上がる刹那。 すぐにずかずかと突進してくる。

尻尾は即消したのだが、横に居たエヴァに本でコツンと叩かれた。
ソコに刹那が詰め寄ってきて、小声で囁かれる。

( 何を正体晒していますか!? )

( 大丈夫ですわ。 このクラスでしたらアクセサリーくらいにしか見えないと思います )

( 朝倉さんが居るんですよ! 少しは危機感を持ってください! )

それだけ言い含めると、ついと去っていった。

「あいつめ、お前をナニカの化身と誤解しているな」

「もう誤解受けまくりで、何処から解消したらいいのでしょうね?」

「お前のその特大の猫はどうにかならんのか?」









体育の時間、屋上でコートの取り合いからドッチボールの試合にまで発展した戦いを、茶々丸の隣でぽやーと見ていた櫻。
自分の意思以前に強制的に外されたのだが、手加減の度合いが分からない櫻にとっては好都合だった、

うかつにボールなんかぶん投げると、音速突破で相手を粉砕しかねない。
この辺は櫻の意思で自由にはならず、周囲に勝手に重力係数などが掛かるためである。

「櫻殿。 すこしよろしいか?」

「なんでしょう、楓さん?」

隣に『移動していた』長瀬楓の問いに、平然と返す櫻に観客組の中に沈黙が流れる。

「先ほどのことでござるが、尻尾が生えていたのではござらぬか?」

この問いに後ろで刹那が「はうあー」と悲鳴とも付かぬ声を上げて、真名が楽しそうな瞳で、古菲は何が起きたのか分からぬがこちらも楽しそうに。

「ええ、ちょっとした特異体質で。 秘密でお願いしますね、楓さん」

「普段の態度も本来の姿ではござらぬようだが?」

「ええ、まあ。 それは週末に山の中で夜営している楓さんも、変わらないのでは?」

「・・・・・・良く知っているでござるな?」

「ええ、少しは上にも注意を払っていたほうが良いですよ?」

種明かしは簡単である。 
衛星軌道を漂っているお友達の、スパイ衛星やら観測衛星に頼めば、麻帆良の全域を上から観察することなど造作も無いことなのだ。

「ま、了解したでござるよ」

「はい、ありがとうざいます」

この後、「だがらいったじゃないですかーっ!」と刹那に詰め寄られたりもしたのだが、櫻には些細なことである。














   ◇ ◆ ◇ ◆ sakura side ◇ ◆ ◇ ◆


数日後の夕方に、姉さんがもしもの必要性に契約を結んでおこうと言い出しました。
キスをするというので、つい舌を入れて蹂躙してみたら、ものっすっごい勢いで逃げた。
だからといって魔法を、どっかあああんと放つのは酷いと思います。

んで出来たカードのコピーを私が持ち、遠く離れても念話が出来るらしい。

「妙な絵柄になったものだな・・・・・・」

「あ、これすごい変なんだ。 よくわからないけどラテン語はちょっと」

姉さんによると、数字は10、色調は銀、魔方陣はなんか夜天の書のみたいで、名前は何故か苗字無しの櫻のみ。
称号が現象の破壊神、方位が中央、星辰性が恒星天、徳性が正義。

絵柄が私自身とその周囲に散らばるバイオリン、ハープ、ウクレレ、ギター、グランドピアノ、三味線、胡弓。
何この弦楽器の山?  え?  アデアットって言ったら出て来る? グランドピアノが?

星辰性が恒星天ってのは異星人の末裔だからか?
んで何故正義? 悪徳とかのほうが合ってそうな気もするんだけど。

「アデアット」とためしに呼んでみた。 適当にハープでいいやと思って。
出現したのは、オーケストラで使うような大型の奴ではなく、ケルティックハープ系、縦50cm程の中サイズだ。

「えーと、これ吟遊詩人が手に持ったりする、弦鳴楽器のハープだよね?」

「良く理解できんものがでてきたな。 とりあえず使ってみろ」

ためしに、ポロ~ンとか鳴らしたら姉さんが「べしゃああ」、と床にへばりついた。
あ、下の方が少し黒く染まってる。 なにこれ?

「大丈夫ですか? マスター」

「くっ、いきなり全身から力が抜けたような。 何が起きた?」

ポロロ~ン、ピヨピヨッ
姉さんが再び「べしゃああ」と突っ伏して、チャチャゼロが椅子から転げ落ちた。

「ど、どうしたの!? チャチャゼロ」

「クッ、魔力ガ足リネェ・・・・・・」

慌ててMP1(釘打ち式魔力注入機、マジックパイルバンカー1号機の略)を取り出して二発打ち込む。
ハープはというとちょっぴり黒とか灰色とかが増えている。

「あ、これか! 周囲の魔力吸ってるわ、このハープ」

「またお前のせいかーっ!!」

飛び掛ってきた姉さんをひょいひょいと避けて、そのまま家を抜け出す。
玄関口でピヨピヨっと鳴らすと、ガヅン! と入り口に激突音が。

「あははー。 おもしろーい」

いやいやこれはこれは、ちょっと悪戯に使ってみたいなあ。

「櫻様」

「あ、茶々丸。 ちょっと遊んでくるね」

「いえ、マスターから伝言が。 仕舞うときは「アベアット」と唱ろ、との事です」

「うん、わかった。 じゃあ行って来るね」













さて試すにしても、まずは結界が張られているらしい、学園最縁部まで行ってポロポロ鳴らしてみた。
変化は無いが少し下のほうに色が溜まってきた。
とはいえ、このまま斑模様ハープというのは見栄えが悪すぎる。

人から吸うにはやはり魔法使い、葱か。
女子寮に行くにしても夜も更けてきたし、はたして入れてくれるものか?

夜道を思案しながら歩いていたら、前方にこそこそしている一団を発見した。

光学迷彩を発動させ様子を伺うと、バカレンジャーと探検部と葱。
結構な荷物を持ちながら、人目を避けるように夜道を移動している。

尾行けってーい。 なにしてるんだろうー。



進行方向から分かっていたのだが、到着した先は図書館島だった。
道中聞き耳を立てていて理解した。 『試験に対抗するため』『深遠部に保管されている』『魔法の本』を探しに来たらしい。

・・・・・・馬鹿か? そんなモンで脳を活性化したら反動がものすごいだろーに。

ちょっかい掛けるにしても、音鳴らしただけでバレるだろうなあ。
楓さんもいるし、もうすでに尾行者に気づかれてそうだ。

実際、中に入ってすぐに小刀が飛んできた。 あぶなーい。

ためしに近くの本棚から一冊抜いて、剛速球で投げつけてみた。 葱へ向かって。
小刀で威力を減らされたあと、古菲さんの蹴りであさっての方へ飛んでった。

やめよう、姿を現しても気遣いを受けて皆の足を引っ張りそうだし。
外に居たハルナさんとのどかさんを姿を消したまま少し脅して、その場を離れた。










    ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆


案の定、潜っていったメンバーは行方不明で次の日には来なかった。

「馬鹿ココに極まれりですねー」

「なんだ櫻、心当たりでもありそうだな?」

「ええ、昨日・・・・・・」

かくかくしかじかと理由を説明。 本日の取り巻きは桜咲さんと真名さん。

「このちゃんが───っ!?」

「なんですか、この桜咲さんの取り乱し様?」

「なにか旧知の間柄らしいが。 詳しいことまでは知らん」

「淡白ですね。 真名さん・・・・・・」

刀を抜きかねない勢いで、教室を走り去って行ってしまった。
あのまま図書館島に殴りこみに行く気だろうか? なんちゅー突撃思考。

「愛ですねえ」

「愛か?」

しばらくしたらトボトボ戻ってきたよ。
何があったんだろう。 校舎出る寸前に新田先生にとっ捕まったとか?

「学園長がこの件はワシに任せろと・・・・・・」

私はそれに返す事無く、超薄型カードの録音機(この世界外の技術品)を取り出しスイッチオン。
先ほど録ったばかりの音声を音量小で再生させる。
そう、『このちゃんが────っ!?』である。

「なななな。 な────っ!!??」

「これ戻ってきましたら、『このちゃん』という方にお聞かせしましょう。 きっと喜びますわ」

「・・・・・・櫻。 キミ実は、鳴滝姉妹と同列の悪戯好きだろう?」

人の頭をこづいて、真名さんが呆れたように言うが止める気配も無い。
目を丸くして、顔を真っ赤にさせ、手をあわあわと振り回す桜咲さん。 可愛い。

シャッター音がしたので、振り向くと朝倉さんがカメラ構えて、ニヤニヤしていた。

「珍しいトリオに、珍しい光景ゲットv  櫻の周りは面白いね、いつも」

「あら、ありがとうございますね。 朝倉さん」

「いや、皮肉のつもりだったんだけど・・・・・・」

「写真に出来たら焼き増ししてくださいね。 二枚ほど」

「お、保存用と観賞用かい?」

「いえいえ、桜咲さん意中の方に差し上げようと思います」

「おお、それは大スク「違います! 朝倉もネガを渡せ!!」

再び朝倉さんを追いかけて、教室を飛び出していく桜咲さん。

「せわしないですねえ」

「判ってて言っているだろう、櫻」













    ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆


「ラウンジに居るエヴァ姉さんって結構レアかも・・・・・・」

「私はゲームの隠しイベント風景か!?」

クラス成績発表日のお昼に、ラウンジの端っこで姉さん達と昼食。
一通り読み上げていたのを聞いていたのだが、途中で学園長のミスで再集計とか流れて、2-Aが1位に。
食堂の方から大歓声が聞こえるけど、あれウチのクラスか。

「この学園面白いね。 何でもお祭り騒ぎで」

「クククッ。 こっちのお祭り準備も整ってきたところだ。 櫻、次はこちらの作業を手伝ってもらうぞ、あの坊主に目にモノ見せてくれる」

「了解しましたわ。 わが主、わが姉」

















んでまた後日の事です。 ちゃららちゃっちゃっちゃー♪

「茶々丸用、オプションパーツが完成しました」

私の横に浮かんでいるものを紹介する。

「こちら茶々丸用、フライトユニットにございます」

まあ、形状をはっきり言ってしまえば、D-3の飛行用のリフターそのものである。
ただし翼の下に付いているものは、マジミサイル二発。
命中すれば3m四方が吹き飛ぶ、殺傷力抜群な近代兵器の決定版。

かなりダウンサイズしたテスラ・ドライブが入れてあるので、自由自在に空が飛べるだろう。
茶々丸にリンクする様にシステムが組んであるので、何処からでも呼び出すことが可能。

ちなみに極秘なのだがこのユニット、非核三原則をおもいっきり無視しているシロモノでもある。
もし爆破することがあっても、緊急措置が取ってあるので放射能を撒き散らすことはない・・・・・ハズ。

さっそく合体して飛んでもらったら、トップスピードで10秒もしないうちに夜空の点になった。

しかし戻ってきて降り立った彼女の髪の毛は、爆発してライオンのようだった。
姉さんが大爆笑でー。 いや、私も噴いちゃったけどさ・・・・・・。







あとついでに姉さんのカートリッジを、インテリジェント仕様にしたデバイスに交換。
普段はあまり変哲の無いアクセサリー腕輪ですが、『起動』させると前回と変わらぬ腕輪になるのです。
弾数も三発から六発にUP。 これで封印中でも、全盛期の姉さんの再現が可能。

作るのに一日学校休んで、別荘の中に篭ってたけど、やー疲れた疲れた。
え? 誤解ですか。 もう諦めました。 そのうちばれるでしょう(←投げた)









    ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆


桜並木の樹木の元で気絶する、佐々木まき絵の姿を見下ろす妹。
エヴァはてっきり「こんなとこじゃ可哀相」とか「毛布かけてもいい?」とか、言い出すのかと思っていたがあっさり見捨てて来たのを見て、逆に心配になった。

「ん? この季節じゃ風邪引くことはあっても、肺炎になることは無いでしょ」

冷たい瞳でのべもなく答える櫻。
様子を伺うも、怒っているのを堪えている仕草も無い。 どうやら本当にどうでもいいと思っているようだ。 

この辺の切り替えに、櫻は一体どんな修羅場をくぐったのか強く知りたくなった。
いつか聞いてみようと思い、その夜はその場を離れた。








    ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆


「櫻、今日の護衛は茶々丸にやってもらう。 お前は先に帰っていろ」

「あ、うん。 ご飯作っておくね」

身体測定が終わった後の教室で、静かに座っていた櫻に声を掛けてエヴァは立ち去って行った。
定まらぬ視線を黒板に向けたまま、微動だにしない彼女の様子を、一部の生徒達は静かに見物していた。

「ああしてると櫻、すごい神秘的だよね~。 創作意欲が沸くわあ」

「何かあったのでしょうか? 一日あんな感じですが」

「身体測定で1mmも成長して無かったとか?」

「その辺を気にするような性分ではなかったはずでござるよ」

「聞くにしても近付けないよね、あれ・・・・・・」

ハルナ、夕映、鳴滝姉妹、楓の見ている前で大きなため息を付き、立ち上がって伸びをした櫻はそこで初めて見物人達へ顔を向け、尋ねた。

「さっきからそこで何をしているのですか? 皆様」

「あ、ははは・・・・・・。 べ、別に何をしてたって訳でもないんだけど。ちょっとねー」

櫻は鞄を持ってから何か思い出したように楓に歩み寄り、「はい」と小刀を差し出す。

「すみません楓さん。 これを返却するの忘れていました、長い間借りていて申し訳ありません」

「ああ、別に構わないでござるよ。 ・・・・・・あの時は櫻殿が?」

「試すような真似をしてしまって、すみません。 少々事情があって姿を見せる訳にはいかなかったので」

とってつけたような説明に、同じくそれが真実のような受け答えを返す楓。
それからその場に居る全員に頭を下げて、「ごきげんよう、皆様」と去っていく。

「なんですか楓、その刃物は?」

「少々資料用に、櫻殿に貸していたでござるよ。 おもちゃでござるがな」

すばやく入れ替えた小刀を、手の中でへにゃりと曲げてみせる。
鳴滝姉妹が面白がって取り合うのを見ながら、あの時飛んできた本を思い出し楓は薄ら寒い感覚に襲われていた。

あんなものが普通の人間に当たれば、怪我をする前に死んでしまう。
それを一般人も居るところに躊躇無く投げたのが櫻だった、という事実が信じられなかった。















    ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆

 
「魔法障壁を抜かれてアスナさんに蹴られた? AMFの事忘れたんですか、エヴァ姉さん」

「忘れてた訳ではない。 蹴られたのが神楽坂明日菜だったと言うだけだ」

「・・・・・・つまり蹴られるまで、突っ込んできたのがアスナさんだったと気付かなかったんですね?」

「・・・・・・・・・・」

図星を指されて押し黙るエヴァに、櫻はため息を付いた。
これでは何のためにクラスの注目や、不名誉なタグが付いてまでアスナに抱きついた意味がない。
それに姉の素性がバレてしまっている今、アスナにも警戒されてしまうだろう。
「魔法使い」の事を聞かれても、どういった反応を返せば良いものか。

「それと櫻は放課後、茶々丸と行動しろ」

「何故で・・・・・・、ああ、葱が各個撃破を狙うかもしれないから?」

「そうだ、いささか危険な所もあるが、他に頼めそうなものが居ない」

「なんならアインでも出すけれど?」

「あんな極大魔法兵器なんか歩かせれば、ほかの魔法関係者が警戒するわっ!」

エヴァの心配所は茶々丸の安全より、ネギ側の危険性にある。
加害者としてのネギが危険なのではなくて、被害者としてのネギの命の心配だ。

それと言うのも身内の中で、一番敵に対して容赦ないのが櫻だからだ。
家族に傷ひとつでも付けられれば、あっさり暴走するような思考回路しか持たない。
長い放浪生活の中で、よほど『家族』というものにしか執着しなかったことが伺える。

「いいか、先に言っておくがくれぐれも人は殺すなよ?」

「さすがに殺人罪で、石持て追われるのは勘弁したいなあ」

一応は釘を刺しておくが、実際場に直面してみないと櫻の沸点が判らない。
なるべく二人っきりにはさせないように行動しようと、決意するエヴァだった。












    ◇  ◆  ◇ sakura side ◆  ◇  ◆


次の日、一緒に登校したはずなのに、姉さんはサボリで屋上に行ってしまった。
葱はアスナさんに引っ張られて教室に来たけど、職員会議とかはないんだろーか。
あの子供は絶対、先生同士のコミュニケーションが不足してると思う。

茶々丸が話しかけたときは、蛇に襲われる鼠の様にビクビクしてたし、10歳の子供なら当然か。
授業中もぼんやりとしてたし、使えないね。



「茶々丸。 私、ジュース買って来るね。 先にエヴァ姉さんと食べてて」

お昼休みに、茶々丸に一言断って校舎外の自動販売機まで足を伸ばす。
中庭で昼食にしてる連中が、キャーキャー悲鳴上げてるけど、蛇でも出たのかな?

なんか小さいものが連中の中からすり抜けて、こっちへ突進してきた?
素早いけど見えないわけでもないし、渦飛で上に跳ね飛ばし、落ちてきた所を、
渦飛とG・テリトリーに挟み込んで潰してみた。 「はびゅっ」とか声を上げ、地面に落ちる襲撃物。

「あ、死んでない。 丈夫ですねえ?」

拾い上げてみると、目を回している真っ白いリューガンナー・デリンガーミニサイズだった。
・・・・・・なんぞこれ?




とりあえず、摘み上げたまま校舎に入ろうとしたら、前から葱が歩いて来た。

「あ、巳子神さん。 こんにちわ」

「こんにちわ、ネギ先生」

聞いてみるか、魔法先生といっても私みたいな特異体質じゃないし、これがなんなのかわかるっしょ。

「ネギ先生、これ何かわかりますか?」

葱の視線の高さに合わせると、ふるふると動き「ううっ」と言って目を覚ましたようだ。
・・・・・・って喋った!?  

「ね、ネギの兄貴・・・・・・」

「あーっ! カ、カモくん!?」

「ああ、お知り合いですか」

なんだ魔法生物か・・・。 そりゃ喋るわ。
とか思ったら、目を丸くして脂汗をだらだらとたらした葱がこっちをむいたまま硬直している。

「どうしました? ネギ先生?」

「ああああ、い、いえ、これはそのう・・・・・・。 こっ、この子は僕の友達のっ! カモ君っていってオコジョ妖精でっ! だからと言って、別に悪い人じゃなくてですね・・・・・・ううううっ」

いや、なにこのすっごい泣きそうなガキ。
姉さんも待ってるだろうし、さっさと離れよう。

「泣かなくても大丈夫ですよ、ネギ先生。 ちゃんと先生の秘密は録画してありますから」

涙目であうあう言っている葱はほっとこう。
そういえば、姉さんについてなにも聞いてこなかったなあ?






次の日、姉さん達と茶道部の帰りに合流して歩いてたら、高畑先生がやって来て学園長呼び出しで姉さんだけ連れて行かれちゃった。
吸血行為のことかな?

「今日はどうするの?」

「いつものコースで行きます。 よろしいでしょうか?」

「よろしいも何も、茶々丸のお好きなように。 私は付き合うだけだし」

上から観測すると、なんか尾行者がいるけど。
邪魔だったら排除すればいっか。










    ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆



カモミールの提案に旨く乗せられた明日菜とネギは、大通りを歩く茶々丸を見つけて尾行しようとしたが茶々丸と連れ立って歩く女生徒がいた。

「って、ひとりじゃねぇっ!?」

「あ、あれ?  あれウチのクラスの巳子神さんじゃないですか」

「あ、そういえば!」

ここで初めて気が付いた、というようにアスナが手を叩いた。

「櫻、たしかエヴァンジェリンの義妹だった筈よ。 なんだ、事の次第なら櫻にも聞けたんじゃないの・・・・・・」

「いもうとぉ!? じゃ、じゃあ巳子神さんも吸血鬼なんですかあ?」

吸血鬼二体に襲われるの図を思い浮かべたのか、ネギはもう涙目で震えていた。

「それはないんじゃない。 両親が亡くなってエヴァンジェリンが引き取ったって話だから。 それにあの子病弱なのよ、学校もちょくちょく休むし」

尾ひれが付いた噂の独り歩きなのだが、本人は知る由もない。

「あの姉さんなら会った時の感じからして、魔力らしきものはなかったぜ。 なあに、兄貴の実力ならちょっとどいてて貰えば済むさ」

気軽に言った言葉だが、ソレがどんな恐ろしい結果を生む事になるのかアルベール・カモミールは知らない。
今この場に居るのは、自分達だけでは無いのだという事を・・・・・・。





などと会話しつつ人気のない所まで機会を待つべく、尾行する二人と一匹の目に映る光景は。

少女を助けお婆さんを助け、川に流される猫までも助け、市民に人気な茶々丸の姿だった。
櫻はそのつど、木にぶつけた頭を撫でたり、周囲ではしゃぐ子供に飴をあげたり、濡れて汚れた制服を拭ってあげたりと、まるで姉妹のよう。

トドメは猫や鳥が無警戒に寄って来る餌やりだ。
櫻が腕に止まった鳥を見て、肩を落としていたのを茶々丸が頭を撫でて、慰めたりする場面もあったが。




アスナとネギはその光景を見て、感動していた。
しかし助言者であるところのカモミールは、止まらない。

「何感動してんですか兄貴! 相手はロボットですぜ、いっちょ派手にぶっこわしてエヴァンジェリンより優位にょるぐ!?!」

カモミールの言葉は唐突に途切れた。
ネギ達の背後から伸びた手が、カモミールを握り締めていたからだ。









「・・・・・・いま、なんて・・・・・・言いました、か?」


声を聞いただけで全ての動作が止まるよう。
いてつく寒さの息吹が叩きつけられるような殺気。
つい先日、エヴァンジェリンと対峙した時と同じかそれ以上の威圧感。

聞き覚えのある声が、つい先程教室の時とは違う圧力をもって、二人の背中に突き刺さった。
今、茶々丸の側に立っていたはずの櫻の姿はなく、本能的な恐怖で振り返ったすぐそこに彼女がいた。


片手に捕まえられたカモミールは、すでに白目を剥いて気絶している。
それを足元に落とした櫻は、躊躇無く踏みつけた。

「ぐええぇ」と悲鳴をあげる『モノ』には目もくれず、どこからともなく刀を抜き放ち、掲げる。


「茶々丸、を壊す? わたしの・・・・・・かぞくを・・・・・・う、ばう・・・・・・?」


視線は何処を向いているのか解らぬ程うつろだが体から立ち昇る尋常では無い気配、周囲には薄く黒い霧がふつふつと沸いている。
素人にはわかるものではないが、あまりの濃密さに殺気が物質化しているのだ。

蛇に睨まれた蛙か、喉元に包丁を添えられた鯉のごとく、身じろぎすら出来ないネギと明日菜。
二人の頭上、櫻の手元で刀が形を変え、身の丈倍の大剣になる。

あんなものを振り下ろされたら一瞬で自分達の命は終わる。
武器のことなどは解らぬが、結果だけは容易に理解できた二人。


動くに動けない明日菜達の命を救ったのは、二人を横から突き飛ばした茶々丸だった。

居なくなった場所にバターで切れ込みを入れるかのごとく、アスファルトに大剣が突き刺さる。


「?・・・・・・茶々丸、どうして、じゃま・・・・・・するの?」


「櫻様、お二人を殺すおつもりですか?」

心底不思議そうな顔で聞き返し、家族に笑顔を向ける。
恐怖を知らぬロボットすら後退する、クライ笑顔を。


「? だいじょうぶ、あの・・・・・・ふたりを、ころして・・・・・・・しまえば、茶々丸は・・・・・・しなな、くてすむ・・・・・・よ」


地面に転がったまま恐ろしい会話を聞いていた明日菜だったが茶々丸の視線を受け頷くと、震える体に喝を入れネギの手を引いて走りだした。

「ア、アスナさんっ!?」

「逃げるわよっ! ネギッ!」


脱兎のように逃げる明日菜達を見て、残虐な笑みを浮かべた櫻は、大剣を肩に担ぎ直す。


「えもの・・・・・・にげちゃう・・・・・・?」


「櫻さっ!?」

砲弾のごとく飛び出した櫻が、手に負えないと判断した茶々丸は、自分の主へ慌てて連絡を入れた。












一足飛びで、明日菜達の頭上を押さえた櫻は呟く。


「タチ、コマ、・・・・・・・えものの、あし・・・・・・・とめて」


主の命令を、ネギの追跡任務を受けていた忠実な従僕が承る。

不可視の物体から撃ち出された暴徒鎮圧用のゴム弾が、明日菜とネギの横っ腹に叩き込まれ、ベクトルを変え弾き飛ばす。

呼吸すら一瞬止まる程の衝撃に、意識を失いかけた二人は、空中を回転しながら林の中へ叩きつけられた。
朦朧とする意識の中、生きるための呼吸を咳き込みながら必死に行う明日菜達の前に、魔神は降り立つ。

「・・・・・・さ、さく・・・・・・ら?」


「あんしん、すると・・・・・・いい・・・・・・」


剣を大きく振りかぶった魔神は、冷たく言い放つ。


「・・・・・・たましいの・・・・・・いきつく、さきは・・・・・・みんな、いっしょ」


エヴァンジェリンより余程化け物らしい笑みを浮かべ、無慈悲に大剣を振り下ろした



















「いい加減に目を覚ませ!!こぉの大馬鹿娘があああっ!!!」


怒鳴り声と飛来した氷の矢80発が櫻に突き刺さると同時に、ネギの眼前まで数mmを残し刃が停止する。

ネギが抵抗虚しく切り刻まれる光景を覚悟していた明日菜は、流す涙も気づかぬまま、刃の下から気絶して泡を吹くネギを助け出し、その腕に抱きしめた。

「ネギ、・・・・・・アンタ死んじゃうかと、思っ・・・・・・」


大泣きする明日菜に、しばらくして気が付いたのかネギの子供らしい泣き声が重なる。





上空より降り立ったエヴァはやれやれと首を振り、ギリギリのタイミングに胸をなで下ろした。
あと二秒遅れていたら、惨殺死体が二つばかり出来上がる所だったと。

まさかつい先日作って貰ったばかりのデバイスで、カートリッジ一発分を身内の製作者に放つハメになろうとは。
傍らにそびえ立つ氷山を見上げて、大きくため息をついた。













追いついた茶々丸と、お子様二人が泣き止むのを待つ。

「ぐすっ・・・・・・エヴァンジェリン、助けてくれてありがとう。 一応礼は言っておくわ」

「ぼ、僕もですっ! 助けてくれてありがとうございます!」

二人に頭を下げられて、頬を赤くしたエヴァは、そっぼを向いたまま言い放つ。

「いや、こうなることがほぼ解っていながら、貴様等にも注意を促しておかなかったコチラにも責任はある」

「わかって・・・・・・いたですってぇ!?」

礼を言って損したとでも言うように明日菜が激高する中、エヴァは背後の氷山をコンコン叩く。

「コイツは少々問題があってな」





改めて、エヴァの背後にそびえるモノを見た明日菜とネギは、目を丸くし口をパカッと開けて硬直した。

高さ八m、幅十mもあろうかという氷山の中に、完全に凍り付いて封じ込められている大剣を振り下ろしかけた櫻がいた。

「ち、ちょっとエヴァンジェリン!?」

「なんだ? 神楽坂明日菜」

「幾ら何でも身内にこの扱いは酷いんじゃないの!? これじゃ櫻死んでるんじゃ・・・・・・」

「なんだ、殺されかけたのに加害者の心配か。 随分とお人好しだな神楽坂明日菜」

「それはそうだけど・・・・・・」

「心配せずともコイツはこの程度では死なん」




そこへ白い毛皮に靴跡を付けたカモミールをぶら下げた、茶々丸が歩み寄った。
これを探しに一度離れたのだ。

「マスター。 やはり原因はこれの言動のようです」

「このクソオコジョめが、事態をややこしくしおって・・・・・・」

ネギにカモミールを無造作に放り投げ、特大のため息を付く。

「櫻はな、家族に妄執を抱えた亡霊のようなものだ。 身内に手を出そうとする者、身内を傷付ける者には容赦せん」


「そのオコジョに何を吹き込まれたか知りませんが、身内を傷付けるような言動を吐くのなら、地球の裏側で言って下さい」


響いた声は氷山より。
目を剥いたネギ達の前で、下より突き出された巨大な槍、剣、鉾、獣爪により、木っ端微塵に砕かれた氷。

冷たい瞳のまま無事な姿を見せた櫻は、頭を振って氷を払い。





エヴァの跳び蹴りを食らって横に吹っ飛んだ。


暫く地面に倒れていたが、ネギ達がどうしたものかと泡喰う中、コメツキバッタのように起き上がり姉に食ってかかる。

「痛いじゃありませんか!? いきなりなんて所業をするんですかっ!?」

「やかましいっ! 我を忘れて人を殺しに掛かった奴の言う事かっ!?」

言われてから手で顔を覆い「あー」と呟いた。

明日菜達へ視線を向けると、先程の恐怖が蘇ったのか数歩下がる二人。
その二人の前へ地面に正座し、深々と頭を下げた。

DO☆GE☆ZAと言うやつである。

「失礼致しました、お二人方とも。 つい我を忘れて本気で殺しにかかってしまいました、誠に申し訳ありませんでした」

誠意で謝っているのは解るのだが、言ってることの物騒さに、エヴァすらも口元をひくつかせている。
目の前で級友兼生徒が土下座したことで呆けていた二人だったが、我に返ると慌てて櫻に歩み寄った。

「すっすみません! 僕の方こそ、家族を奪うなんて理不尽な行為をしようだなんて酷い事を!」

「とりあえず頭を上げなさいよ櫻! そりゃ私もいきなり斬り掛かられて怖かったし痛かったしもう最後を覚悟して死ぬかと思ったけど・・・・・・」

「お前らの方も落ち着け・・・・・・」

お互いに謝りあったり、言い訳をしたりで、放って置くと事態の収拾がつかないと判断したエヴァは、傍にぬぼーっと立ち尽くしている茶々丸に目で促した。
三人の間に割って入った茶々丸は手を叩いて、提案をする。

「ではこうしましょう。 やられたら三倍返しといいますから。 ネギ先生とアスナさんに借り三つづつということで。それでいいですか?櫻様」

「ええ、それで結構です。二人の気の済むまでは如何様にも」

暫し何か考えていたネギは笑顔で、地面に座りこんでいる櫻まで歩み寄ると

「じゃ、じゃあ、僕についてる監視を外して下さい」

「あー、はい。わかりました」

「ちょっと! コイツ監視なんかしてたの!?」

「魔法バラしまくってたじゃないですか」

「あとは、櫻さんって呼んでもいいですか?」

「それは私に許可取ることではないと思いますが・・・・・・」

「アンタ先生なんだから勝手に呼べばいーじゃない」

「それであとひとつは保留でいいですか?」

「はい。 ・・・・・・でアスナさんは? 三つとも保留ですか?」

「そうね・・・・・・、じゃあ私のことを名前で呼びすてにしなさいよ」

「えー」

「なによその反応」

「アスナさんをアスナって呼びましたら、教室の皆が呼び捨てにしろって言ってくるじゃありませんか・・・」

「いいじゃない別に、アンタよそよそし過ぎるし。 みんな名前呼び捨ての方が気が楽よ」

「わかりました。 善処しましょう」

「あとアンタ砕けた喋り方出来るんでしょう? そっちもね」

「・・・・・・はあああぁ。 わかりました、追々直すように致しますわ」

「被ってた猫が外れてよかったじゃないか、櫻」

「エヴァ姉さんも他人事だからって、面白がらないで下さい」

エヴァはしばし櫻に軽く説教をして、その場を離れた。

「ぼーや、これは貸しにしておいてやる」と、言い残して。






櫻は明日菜の手を借りて立ち上がると、地面に転がっていた大剣を一振りで刀へ戻し、自分の影へ落とした。

ずぶずぶと沈んでいく刀を、明日菜とネギが物珍しそうに見送る。

「そういえば、櫻も魔法使いなの?」

「うんにゃ、私は魔法の適正が無いから使えませんわ・・・・・・」

足元に伸びる影を指差したネギが質問をする。

「じゃあ、これは何かの魔法じゃないんですか?」

「・・・・・・私がトラウマを負う事になった特殊能力ですわ」

「「・・・・・・・・・・・・・・・・・」」

夕刻の学園をてくてくと歩きながら、痛い沈黙が三人を包む。 
分かれ道でネギ達に向けて深く一礼した櫻に、明日菜は思い出したように声を掛けた。


「そうだ! 櫻、誕生日何時?」

「たん・・・・・・・じょうび? そんなの聞いてどうしますか?」

「そりゃあ、お祝いするに決まってるじゃない」

「それは残念ですね」

「なんで残念なのよ?」

「もう二百数十年前のことなので忘れました」

「あー、そーなのそん、な前・・・・・・・・・」

「・・・・・・にひゃく・・・・・・?」



「「ええええええええっ!?!」」

























(あとがき)
パクテイオーカードはかなり適当です。 ごめんなさい。
主人公と仲のいいチームは、図書館探検部とバカレンジャー、龍宮と桜咲です。
基本は原作通りに進む予定・・・。 
前回の『渦飛(カヒ)』はオリジナル技です。
主人公TUEEEEEEEEE状態。 なんか妙に変な文章になったっぽいorz
ぶっちゃけ長い放浪生活で、エヴァの言ったように狂いかけている。

外伝10&11を合体させて一部を修正いたしました。



[7259] 外伝 8
Name: C-K◆ae02f8a5 ID:27ec9c7b
Date: 2010/04/06 01:16





あれと会ったのは三回目か四回目かに飛んだ世界だった。

私とほぼ同じ姿同じ声、違うのは髪の長さと持っている能力。

何故其れを知るハメになったかというと、近付くことによって共振共鳴で相互経験通信があったからだ。
奴が渡った世界で機類に相当する物が此方へ、私が渡った世界で精術神類に相当するモノが向こうへ。

アレはドッペルゲンガーかと呆然としていた私にこう言った。

「はじめまして私、お久しぶり私。 貴女は私、私は貴女、私達はオナジモノ。 裏と表、世界の1と0、創造と破壊、いつかまた出逢う者、いつかまたひとつに戻る者」

そして自分も世界をさまよっている事を告げ、対である私もサダメの世界を持たず永遠にさまよう者だと、言うだけ言って去って行った。

同族嫌悪、一言で表すとそんな奴だアレは。
あの後、もう一度会い、その時は戦力が足りなくて共闘する事になったが。

多分次に会った時、意見意志の違い次第では、手持ちのカードを全部切って死闘を行うハメになるだろう。















★★ スパロボ的な日々 外伝 8 『 誤解は続くよ何処までも? 』 ★★

















「おはよー櫻」

「おはようございます、・・・・・・アスナ」

「「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」」

「何なに!? なんでアスナだけ呼び捨てなの?!」

「(・・・・・・・ほらきた)ええ、色々ありまして」

「私も私も! 呼び捨てにして欲しいなー」 「ボクもー」 「不都合でなければ私も」

がしっ!

「櫻さん! なにがあったのか知りませんが、この凶暴女に脅されているなら正直に仰ってくださいね」

「あ、あやかさん。 ありがとうございます。 ・・・・・・実は・・・」

「ちょっと櫻ー! 人を勝手に恐喝魔にしないでくれるー!」

「ごめんなー、櫻。 アスナちょっと粗野なところあるけど、なんかあったらウチにも相談してなー」

「木乃香までー」

「ああ、木乃香さん、丁度良かった。 実は秘蔵のお宝音声がありまして、聞きます?」

「どんなん? あ、ウチも呼び捨てでええよー」

「桜咲さんがー「巳子神さんっ!!」

「せっちゃん、どうしたんやー?」

「あ・・・・・・いえ、お嬢様には関係ない事でして」

「せっちゃん・・・・・・? あーだからこの「巳子神さんっ!ちょっとお話しましょう!」

ずどどどどどっ!!

「・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・ねー櫻」

「なんでしょうか? アスナ」

「今アンタ、桜咲さんに手を引かれて行ったんじゃないの?」

「ええ、桜咲さんが手だけを持って行かれましたね」

「・・・・・・・・・」


                「ひやあああああっ?!」


「・・・・・・・・・」

「せっちゃんの悲鳴やー」

「ホラー映画のような造形に見せるのに、苦労したんですよーv」

「「「「「・・・・・・(櫻ってそういう人だったんだ・・・・・・)」」」」」












休日、明日菜の部屋に集まる一同。

「・・・・・・なんで巳子神の姐さんまでここに居るんですかい?」

「クソオコジョに一言忠告をしようと思って」

無表情で冷たい視線とともに投げられた言葉に、部屋の隅まで後退するカモミール。
つい先日、中身が出るところまで搾られて、死ぬ寸前まで踏み抜かれたことも記憶に新しい。
それに関しては何も言えないのか、乾いた笑いを浮かべるネギ&明日菜。
櫻の目から見ると、目をグルグルさせる白いデリンガーなのだが、そんなことは彼女にとっては些細な事。

「今後、ネギ先生の保護下に居るならいいけれど単独行動しているところを見つけたら、問答無用で捕獲して懇願無視で毛皮にするから」

「ヒイイイイィィィィッ!?!」

「ちなみに、私はこの学園内にいくつかの自立機動端末を放っているからそれに見つかっても同じ運命になるから。 魂に刻み込んで置くように」

「イヤアアアアアアァァァァ・・・・」

自分の行く末が容易に想像付くのか、体を捻って滂沱するカモミール。

「櫻、自分の家族がよほど大切なのね。 そこまで入れ込むのも尋常じゃないんじゃない・・・・・・・」

「私にはすがるものがソレしかなかったから、他に執着するものもないし」





「まあ、それはそれとして。 今日ココにきた本題は、別にあるんだけどね」

ひと拍置いて、気を取り直すように話を切り替える。
朝からこの部屋を櫻が訪れたのだって、「話がある」だったのだから。

「ネギ先生に悪いニュースと最悪なニュースがあります」

「悪いことしかないんじゃないの!」

「アスナには関係ないと思うんですけど」

「あたしはコイツの保護者だからいいのよ」

「・・・・・・・・・」

「あ、あの悪いニュースって言うのは?」

「エヴァ姉さんは未だにネギ先生の血を狙っているんですがー」

「ええええっ!?」

一瞬で壁に張り付いて、昆虫採集の虫みたいに硬直し驚愕の叫びを上げるネギ。
それを気付いてなかったのかと、眺める櫻。
ここでカモミールがまほネットの情報を提示して、ネギに更なる警戒を促す。

「で、更に悪いニュースって何よ?」

「科学の力で散々っぱら強化しましたので、戦闘能力が当社比倍くらいに跳ね上がってます」

「「「ええええええっ!?」」」

これには室内の櫻を除く者が壁に張り付いた。
ネギにいたってはもう半泣きである。

「ん? 櫻ってエヴァンジェリン側よね。 なんで私達にそれを教えてくれるの?」

「随分と察しが良くなりましたねえ、アスナってば。 バカレッドもそろそろ返上?」

「バカレッドって言わないで!」

「エヴァ姉さんに許可取っていますもの、公開提示範囲内情報ってところでしょうか。 悪の美学とか言ってましたよ、まあ私だったら予告なし闇討ちで片を付けますけどね」

真っ白になってカタカタと震え始めたネギを見やる。
こうなるともう、今までの話を聞いているのかどうなのかすら怪しいところだが。

すぐに顔をくしゃりと歪めると、杖を掴み泣きながら窓から飛び出していった。

「魔法隠す気無いでしょう。 あの先生は・・・・・・」

「ネギ────ッ!?」 「兄貴────ッ!?」

「どうするのよっ!? 櫻があんな事言うから飛び出して行っちゃったじゃないの!」

「まあ、言動的には私にも責はありますが、覚悟の無い先生も悪いと思いますよ。 戦いたくないのなら故郷にでも逃げ帰ればいいんですよ、逃げるのもひとつの手段。 其れが嫌なら戦う、どちらにしろ二者択一なんてどこにでも転がっている題材だと思いますがね」

「・・・櫻、アンタ・・・・・・」

「姐さん、そんなことしてねえで追わないと!」

「ああ、そ、そうね・・・・・・・」

どたどたと騒がしい足音が遠ざかっていく中、ゆっくりと明日菜の部屋を出た櫻は廊下の何も無い空間に向けて声を掛ける。

「葱の居場所を特定。 しかるのち、アスナ達に教えてあげなさい」

了解するように、空間がさざ波のような波紋を描き、消えた。














    ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆


「しかし、休日といっても空いた時間をどうしたものか・・・・・・」

櫻は伝え忘れていたのだが、エヴァのネギ襲撃に彼女自身は関与しない。
他の魔法関係者に秘密で動きたい姉に、同行を不可されているからだった。

先日の醜態から、余計なものに被害がでる可能性を嫌ったものではあるが、決行日が停電の日なのも理由で櫻はその日警備の仕事が入っている。
図書館島にでも行って、1階の本でも眺めれば有効な時間が作れるかと思い、進路を変更したところで向かいから歩いてきた人物達に声を掛けられた。

「あー、櫻~!」

「・・・・・・風香、史香。 こんにちは、さんぽ部ですか?」

「うーん、そうなのかそうでもないのか?」

「櫻は?」

「私は暇をもてあましまして、本でも読もうかと」

「え? でもこの先には図書館島しかないよ?」

「そうですね、図書館島にも本はありますよね」

「「・・・・・・・・・・・・・」」

首を傾げて考え、あっけらかんと答えた櫻を心配してか、双子は彼女の服の端をつまむ。

「じゃ、じゃあさ、暇なんだよね。 今日はボクらに付き合ってよ」

「ええ、かまいませんよ。 どちらへ参りますか?」

そのまま双子に付き合って、食事棟でお茶に話に一日費やした櫻達だった
















    ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆


学園中に放送が流れ学園が真っ暗な闇に包まれた直後、通常と変わらぬ佇まいを見せる場所があった。

「ナア櫻ヨ」

「どしたの?」

「今、ココ停電ダヨナ」

「そだよ。 姉さんが葱と決着つけるんだって出掛けってったでしょ? 私も出掛けるけど」

薄手のセーターとロングスカート、
とてもこれから戦闘の可能性がある所に行く、とは思えない姿で気軽に準備をする櫻。
これが普通なら止めるものなのだが、生憎この妹的存在に戦闘能力に関しては無用の心配である。

「ナンデウチダケ明カリツイテンダ?」

「自家発電してるから」

「ソウカ・・・・・・」

ここのログハウスだけは、室内のみならず外の灯りまで光々とついている。
実際は家の裏手に佇んでいるPTのメンテナンスハッチより、太いコードが変圧器を経由して家につながっているだけなのだが。

「じゃ行ってきますね」

「俺ハ留守番カ・・・・・・」

「うん、今日は桜咲さん達じゃない別の人と組むらしいんで、連れて行けないんだ。 その代わり私の端末をエヴァ姉さんに付けてリアルタイム映像をTVに繋げたから、それでも観てて」

「ワカッタ。 オ前モ気ヲツケロ」

「はぁい」

櫻が敬礼し、ウインクを飛ばして出掛けていくと、チャチャゼロは改めてソファに座り直した。
テーブルにあるリモコンには『姉さん達の中継はこれで切り替え』とシールがご丁寧にも張ってある。

ニヤリと笑ったチャチャゼロは冷蔵庫から先日櫻と買って来た酒を引っ張り出し、テーブル上にツマミと並べTVを中継に繋いだ。

映った画面には虚ろなメイド(茶々丸含む)を五人も侍らせ、ネギを挑発する主人がいた。

「マ、御主人モコノ十数年デズイブント久シブリニナッチマッタナ。 結末ハ悲劇カ喜劇カ・・・・・・」

酒をついっと煽り、今し方櫻の出てった扉をみる。

「ケケケケ、喜劇ニ賭ケルトスルカ」

メイド四人衆vsネギとなった画面へ視線を戻した。



















真っ暗な夜道を特に不自由なく進む櫻は端末より送られて来る情報を確認しながら、姉の位置をしっかり把握していた。
自宅へ映像中継に使っている端末三機、の他に邪魔者の排除用に二機、魔法痕跡の隠蔽用に二機。

普段からどれも光学迷彩で姿を眩ましているために、刹那や真名といった気配に敏感な者以外には見つけられにくい。
エヴァならあっさり見つかりそうだが、ネギとの戦いを楽しんでいるらしく、気付くかどうかも怪しい。



楽しそうな姉の様子に笑みを浮かべていた櫻だったが、前方にスーツ姿の人影が見えた事により位置情報以外のデータ通信を打ち切った。




口元の笑みはそのままに、小走りに待ち合わせ場所まで近付いて挨拶をする。

「こんばんは、瀬留彦先生」

声を掛けられたスーツ姿の平凡に埋もれてそうな人物は櫻を注視したのちに、目を擦ってから再度確認した。
そしてため息をつき、額に手を当てると

「巳子神君、今の時間生徒は外出禁止だろう」と言った。

これには櫻も不思議顔になる。
数日前に学園長から言われたのは『瀬留彦先生と組んで見回りにあたってくれ』だった筈。

「学園長先生から聞いていませんか? 今日は先生と組んで、と言われたのですが・・・・・・」

「いや、確かに今日は高畑先生の代理が・・・・・・、代理っ!?」

どうも学園長が面白がってワザと此方の情報を伝えてなかったらしい。
此方を一般生徒としかみてなかったらしく、普段病弱だと聞き及んでいるせいか、その視線は猜疑的だ。

「魔法は使えませんが、戦闘能力だけなら最強クラスだと自負できますよ」

腰に手を当て胸を張って、自慢気に言ってみる。

「いかんな、巳子神君。 その年で増長するようでは先が知れるものだよ」

年についてはどうこう言われる筋合いはないのだが、曖昧な苦笑で流す。

「とりあえず、瀬留彦先生と組め、と言われていますので、文句があれば後で学園長に苦言でも提出してください。 私は巡回ルートを知らないので先生に付いて行くだけです」

「わかった。足手まといと判断したら離脱してもらうよ」

「その時は先生の指示に従いましょう」




















    ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆


「ケケケケ、馬鹿カアノガキ」

映像の中、橋までおびき寄せ捕縛結界でエヴァ達を拘束したもののあっさり茶々丸によって解除され、流れを持って行かれるネギにチャチャゼロは呆れていた。
そこへオコジョを伴った神楽坂明日菜が突っ込み、易々とネギを奪われてしまう。

「御主人モ詰メガ甘クナッタモンダ・・・・・・」

画面構成が右上に四角くエヴァ達を映す中、メインで映るのは契約のキスをぶっちゅ~とかますネギ&明日菜。
チャチャゼロも少ししてから気が付いたのだが、画面右下に小さい赤い文字で【●REC】と出ている。
悪戯好きな櫻の考えそうな事だ。

「ケケケケッ」

2vs2となったがどうなる事やら。
新しい酒瓶を開けながら、一緒に飲み明かす奴が居ないのコトに少しつまらなさをかんじていた。

















    ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆


・・・・・・その頃のマクダウェル家妹。

「・・・・・・巳子神君、いい加減その辺で勘弁してやったらどうかと僕は思うんだが」

「そうですか。先生が言うんでしたらこの辺で止めましょう」

同じ男として同情するのか、油汗を滲ませながら目の前の惨状に涙する瀬留彦。
先程巡回ルートでバッタリと出会った数匹の式神を連れていた神主風の男、は泡を吹いて悶絶している。

瀬留彦が何かするよりも早く敵の背後に現れた櫻が、何処からともなく取り出した1番アイアンで股間を強襲したためである。
式神よりは術者を無力化するのがセオリーとは言え、あまりにも無慈悲な一撃であった。

櫻にしてみても殺傷力が高い攻撃よりは、と選んだ苦肉の策なのだが。
一撃入れた程度では式神が消えず、仕方なく二撃目を叩きつけて消えるのを確認した直後瀬留彦に制止させられたのだ。


「巳子神君、何処でそんな手段を覚えたのかな?」

「ずいぶん前、兄みたいにお世話になった人にですけど・・・・・・」

「そ、そうか。 済まないね悪いことを聞いた」

「はぁ・・・・・・?」

真相知るものは少ないが、櫻の背景は『家族を亡くしてエヴァに引き取られた』である。
瀬留彦とて例外ではない。

丸い目の筋肉質なゴツイ男にいつだったか言われた言葉を思い出し、こんな所で実演するハメになるとは予想外だった。


『いいか、お前みたいなニーズの少ない女に寄って来る奴は変態が多い。 声を掛けられる前に股間を蹴ってやれ』と言われた後、当時の姉に蹴り飛ばされていたはず。

思い出し笑いをしながら男の関節を外し畳んで縛る行為は悪魔の所業だったと後日、瀬留彦は語ったと言う。


















    ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆



闇と雷の同系統の魔法のぶつけ合いを、カートリッジ三発上乗せで競り勝ち目を回して倒れたネギを見下ろして、やっとここ数年のうっぷんが晴らせたようになったエヴァだったが。
間をおかずに停電が復旧し、封印が元に戻ったのを実感して舌打ちした。

「まさに間一髪だったか」

ちなみにネギが打ち倒されるまで、ミニステルマギ明日菜が何をしていたかと言うと、茶々丸から放たれたトリモチ弾で橋ゲタに貼り付けにされていた。

「ちょっとー茶々丸さん! なによこれー!!」

こちら側は戦闘が一段落して、気が抜けたのかやり取りはいつもと変わらない。

「櫻様に用意していただいた、特殊弾です」

「あんのぉ身内狂いがーーーっ!! 何作ってんのよーーっ!」

これに関しては茶々丸が明日菜を傷つけることを嫌ったため、櫻が作り置きしておいたある意味間に合わせの急造品である。

本人曰く、『耐用年数越えてなきゃいいけど・・・』、トリモチ以外にも、服のナイロンに反応し固める石膏弾。
ただし動くと石膏のごとく木っ端微塵になるため、対象を意図無しで全裸に剥く事になる。
何にでも貼り付ける接着弾。 剥がし剤行方不明の為、皮膚がコンクリに張り付いたらスプラッタ確実。
当たったら三日は悪臭が取れない、ドリアン弾。
発汗作用が数日は続く、兄貴の汗弾。 数kgは痩せられるが、以降皮膚病などに悩ませられる日々が続く。

ちなみにトリモチ弾の解除は、このどれかの弾をぶつけることである。
究極の選択を突きつけられて、明日菜は泣く泣く石膏弾を選んだ。

もっと簡単にエヴァに凍らせてもらう選択もあったのだが、誰もその方向性に思い当たらなかった事をココに記す。

結局服を剥かれ、エヴァにマントの切れ端を掛けて貰う事になったのだが。
八つ当たりで、茶々丸の持っていたバズーカーを蹴っ飛ばし、誤動作であらぬ方向に一発飛び出した。

透明な液体が、何もないところへ飛び散り、形を伴って空間に固定された。

「あ!」  「なんだ?」  「・・・・・・あれは」

空間にノイズが走り、円錐型機械が姿を現す。
カメラアイにあたる動体中央のレンズを、赤、青に点滅させていたがやがて黒い煙を一筋立ち上らせると、前触れも無く小爆発を起こして四散した。

「カートリッジロード」  『Load cartridge』

周囲に目を光らせたエヴァは、カートリッジをひとつ使用。
空間の揺らぎを二つ確認すると、そこに向かって氷の矢を幾つか叩き込む。
あっさり光学迷彩をはがされ姿を現すガジェットへ、貫通攻撃を容赦なくぶち込み、破壊する。

「な、なによこれ・・・・・・」

「ククククッ、こんなものを使うのは此の世で唯一人。 どうやらのんびりと観戦していたようだな」

「誰かに今までずっと覗かれていたってことぉ!? いったい誰よっ!」

「そんなのは後日自分で確認するがいい、私は帰る。 いくぞ茶々丸」

「ちょ、ちょっとおっ!?」

見捨てるように、踵を返すエヴァを見て明日菜は上ずった声をあげた。

「ああ、ボーヤに伝えておくと良い。 佐々木達はサービスで私が元に戻しておいてやるとな」

後ろでギャースカ喚く明日菜を完全に無視して、エヴァはその場を去った。
その後、明日菜がネギを叩き起こし人目につかず寮まで戻れたかは、観測者も居なくなり最後まで見ていたものも居ないので、神のみぞ知る。











    ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆


「あ、エヴァ姉さんおかえり~♪ 茶々丸もおかえり~♪」

エヴァ達が家に帰り着いたときは、居間に居たチャチャゼロとすでに酔っ払った櫻が出迎えた。
酒が注がれたコップで・・・・・・。

受け取って喉を潤したエヴァは、音符を飛ばしている状態の櫻になにを聞いてもろくな答えが返ってこないのを承知しているため、ガジェットの追求を諦めた。

「あいかわらず、もったいない飲み方をしおって・・・・・・・」

テーブルなど使わずに床で飲み食いしてる、妹と従僕を呆れて見るエヴァに赤い液体がなみなみと注がれたコップを、チャチャゼロが差し出した。

「マア御主人、新鮮ナウチニ飲メ」

「なんだまた輸血用か・・・・・・。 まったく」

チャチャゼロが差し出したのに、何の意図があるのか疑問に思わず一気に飲み干すエヴァに櫻が好奇心いっぱいの笑顔で詰め寄った。

「どうだったエヴァ姉さん! マズい? おいしい? 口に合わない?」

「まあ、そこそこだな。 なんだと言うんだ?」

イエ──ッ! と言いながらチャチャゼロとハイタッチを交わす櫻。

「ソレナリニ旨イッテ事ダゼ。 良カッタナ櫻」

「賭けはチャチャゼロの勝ちだねー♪ またお酒買いに行こうね」

どうやら負けた側のようだが、陽気になってるコレに何を言っても無駄である。

「まあいい茶々丸。 私も飲む、何かもってこい」

「はい、マスター」

一度着替えて祝杯を挙げようと、自室に向かったエヴァだったが、次の酔っ払い組みの一言で、盛大に階段を滑り落ちることになる。

「てっきりマズいって言われるかと思ったよ私の血 ♪」


どがしゃ!!






















   ◆  ◇  ◆  ◇ sukura side  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆


「うーん、ついていけませんわ・・・・・・・」

只今、いつものメンバー(図書館探検部&バカレンジャー&鳴滝姉妹)、四日後に迫った修学旅行に向けた買い出しと言う名目で、学園生協やら商店街やらを引っ張り回されております。

遥か昔には私もあんなんだったかなあと、思いを馳せる。

因みに姉さんには「こっちは気にせずきちんと参加して来い」と厳命されました。
お土産の注文書が容赦ない量になってるけど・・・・・・・。


・・・・・・ああ、そうそう。

「アスナー、アスナー」

風香と楓に服の事で論戦してる奴に声を掛ける。
「なによー」とこっち向いたトコを狙ってラッピングした小箱をそっと投げてやる。

が、思いの他豪速球になり、明日菜の顔面を強襲した。 ・・・・・・手加減して投げたのにこれだよ。



「痛いじゃないのよ! 櫻」

「あらあら、すまみせんね」

私に一通り文句を言うと、小箱を見て首を傾げた。

「なによこれ?」

「木乃香にもうすぐ誕生日だって聞きましたので。 ささやかな物ですけど」

とか言ったらアスナも驚いてたけど、一緒に行ったメンバーが明日菜凝視。


「ちょっと明日菜っ! 何でそういうことを早く言わないの!?」

「水臭いでござるな」

「わーいお祝いお祝い!」

・・・・・・とお祭り騒ぎが好きなのかどうか解らない、まき絵、楓、風香に引っ張られデザート専門の食堂棟へ。

「なんと嵐のような・・・・・・」

「ただ騒ぎたいだけですね」

客観的発言主夕映さんは、場面ごとにマイペースでいいですねえ。











何故だか最近は姉さん達だけで無く、桜咲さんや真名さんと夜番を組まされる事が多いこと。

なんでも桜咲さんが言うには京都には関西呪術協会とかいう組織が根を張っていて、私みたいな半人半獣は見つかったら問答無用で襲ってくるとか来ないとか?
なにそれ怖い・・・・・・。

つか、未だに誤解されています。
そのおかげで風当たりが弱まったからいいけど。



それで葱が特使として親書を渡しに行くとか。

・・・・・・いや私に喋ったらダメだろう。
スリたくなってしまうじゃないか、【技術特化】的に。



あと、なんか楓さんが私の事を警戒してるみたいなんだよね―。
小刀返してからだから、やはり図書館島で本を投げた事が気に障ったんだろう。

誰かと集まって出掛ける場合になると、必ず付いて来る。
桜咲さんがどうにかなったら今度はこっちかい・・・・・・。


あと葱だが、姉さんに負けた事で落ち込まずに普通にしている。
直接対面するとビビるみたいだけど。

でも姉さんより私が恐れられているのはなぜだろうか?
廊下で呼びかけたりすると、壁に張り付くように逃げ腰なんだ。

そう言えば先週の記憶がないんだけど、痴呆症になったのかな?
茶々丸が言うには「悪い夢でも見たとお忘れ下さい」だそうな、意味解らないし。















班別は六班、桜咲さんのトコ。
姉さんと茶々丸が居ないから圧倒的に班員が足りない

まあ結局、班別行動に支障がでるので、新幹線内で葱に言って振り分けて貰うことに。
私は超さんの所。 ザジさんはあやかさんの所、桜咲さんは木乃香の所。

小声で「頑張って愛を育んでねv」と言ったら真っ赤になってたし。

新幹線内では大人しく超さんから肉まんを買って、はむはむしてたんだが。
桜咲さんは「見回りしておきます」って行ってしまいました。



しょうがないので私も『機内把握』。
これは移動物体などを掌握して不測の事態がおきた場合、全制御が私の命令下に入る能力です。
とは言え、どこぞの情報統制都市よりは低レベル技術だからなあ、ここ。

私『お友達になって?』 → 新幹線『何なりとお命じ下さい、主』。 はい、終了~。
自分意識以外の部分で各車両監視してりゃーいいや。


なんか朝、姉さんに早く行ってこいと叩き起こされたんで眠い。
姉さんが行く訳では無いと思うけど、そんなにお土産が欲しいのかな?

アインで毎晩空輸してもらうか。










   ◆   ◆   ◆   ◆   ◆




「櫻はあっちに何かチョッカイ出すカ?」

うつらうつらし始めた櫻に、超は声を掛けてみた。
彼女は新幹線に乗ってから刹那と少し会話した程度で、特に誰とも関わらず席で静かにしている。

「・・・・・・どこへ悪戯を、するって?」

「何もしないのカ?」

いまいち噛み合ってない会話だが、目を瞑り、寝ている姿勢に居ながらも、後ろから視線が突き刺さる感覚。
まずいものに手を出した予感だけがして、超は身構えた。

鼻先に一通の白い封筒が突き出されたからだ。

「はい、悪戯の、成果・・・・・・」

「何ネ?」

櫻が指先だけで放った封筒をつい受け取って、超はそれをひっくり返し、呆けた。

「さっき葱からスったの。 返却お願い・・・・・・うにゅ・・・・・・」

学園長の達筆で書かれた宛先の、本来ならネギが持っていなければならない親書。
シナリオに無い行動を取る訳にいかない超は、櫻を起こして突き返した。













「なんか騒がしかったみたいですが、なんかありました?」

「カエルが沸きました」

「は?」

「カエルがいっぱい鳴いてしずな先生と亜子が気絶してびっくりした」

「よくあの中で寝てられましたね? 櫻は・・・・・・」

「騒がしいのは慣れていますので。 気にしないのですよ」

10分と経たずに目を覚ました櫻を、夕映とまき絵が覗き込んでいたので、
騒ぎの余韻が残る車両内に、疑問を抱いた彼女に二人は告げた。

席を立ち、前車両に歩き出す。
二人に「用を済ませてまいりますね」と残して。
















通路の小窓を観察すると、二両先にネギと刹那が向かい合っているのが見えた。
それだけ確認すると、前の通路で台車を押す、弁当売りの女性に声を掛ける。

「すみません、そこのお姉さん」

「・・・・・・ハイッ。 お弁当ですか?」

少し間が空いた後、こちらを振り向いた女性より手前で止まる。

「四両前の車両で、本来その台車を引くはずだった係員を席に座らせたのは何故ですか?」

「・・・・・・ッ!」

言葉に詰まった女性を前に、櫻は言葉を続ける。

「あと、貴女。 言葉の端々に妙な訛り入ってますよね? 京都の方の旧い奴」

「・・・・・・どうして」

「あいにくと、この新幹線内は全部見てますから。 変な行動とってる人は判りやすいですよ」

その女性の横を、悠々と通り過ぎてながら呟く。

「骨格と声紋で覚えさせて頂きましたので、次に見つけたら御目溢しはしませんよ?」

それだけ告げると、ネギ等の方へ向かって行く。
後ろに居ても櫻の視界内の女性は、唇を噛んで立ちつくしていた。











   ◆   ◆   ◆   ◆   ◆


「あ、あれっ!? これっ・・・・・・!」

ツバメの式神が運び去っていった親書を、刹那から渡されたネギは改めてソレに目をやり、そこに大きく書かれていた『おおはずれ』の文字に声を上げた。

渡した刹那もビックリして覗き込み、内心うかつさに舌を巻いた。
恐らくネギから奪いココに来るまでに、すり替えた奴が居るのだろうと。
通路に目をやって、奥から歩るいてくる櫻に気がついた。

「・・・・・・巳子神さん」

「櫻さん?」

「何か悪い事態ですか、桜咲さん?」

にこやかに近付いた櫻は、ネギの肩に乗るカモミールを一瞥すると、二人の間に入る。

「性悪小動物にそそのかされた担任の先生に、疑われているとか?」

「いやっ! そんなことはしてませんよっ!?」

櫻の一言に、慌てて見振り手振りで直前までの思考を否定して見せるネギ。
射殺す瞳でカモミールを震え上がらせ、「どーですかねえ」と小さく呟く。

「下心満載の小動物なんて信用に足りませんから。 ・・・・・・ああ、先生これ」

本物の親書をネギの手の中へ落とすと、口をパカッと開けて硬直した。
刹那までも飛び上がらん勢いで驚く。

「・・・・・・な、なんで櫻さんがこれを持っているんですかぁ?」

「先生がうかれていましたので、ちょっとスってみました。 何時気付くかと思ったんですけれど、まったく気付かないので幻滅しました」

そして刹那の手を取るとずるずると引っ張っていく。

「ちょ、ちょっと・・・・・・」

「木乃香が捨てられた子犬みたいですからね。 傍に居てあげましょうよ?」

「いえっ、私は遠くからお守りするだけで・・・・・・」

「じゃあ、この前の音声をぜひ『このちゃん』に公開しますけれど?」

「ソレは絶対ダメです!!」

「じゃあ、私の傍でキチンと見てないと隙を見て聞かせちゃいますよ」

「ぜったいにヤメてくださいっ!」


 








   ◇ ◆ ◇ ◆ sakura side ◇ ◆ ◇ ◆


京都に降りてから移動中、アスナに「ネギが元気無いんだけど、また櫻が何か言ったでしょ?」とか言われました。
いや、言ったけどね。 まず私を疑うのか・・・。


最初の観光は清水寺。
そういえば、1000年前ってコレあったかなぁ?
京都のこちら側はほとんど来なかったから記憶にないわ。

「夕映、清水寺って何時から建っているか知ってますか?」

「諸説は色々ありますが、今のようになったのは延暦17年程、778年ぐらいだと言われていますよ。もっとも火災も多く、今の本堂は寛永10年1633年頃ですね。 徳川家光の寄進により再建されたものである。 ・・・・・・と言われています」

「ありがとうございます(あんときもう建ってたんじゃん)」 

葱もアスナ達になだめられて、また浮かれた調子に戻ってるし、桜咲さんもクラスから一歩離れて警戒状態に戻ってるし、・・・・・・普通逆だろうこれ。

とか言ってるうちにクラスの大半は縁結びの滝水で酔っ払う。
桜咲さんと肩をすくめて呆れた。

で、新田先生にバレる前にバスに押し込み、旅館に放り込んだ。

ええい、余計な労力を使ったじゃないか。 あの女だなー、次見つけたらぷち殺~す。





ところが旅館入り口のホールで影から光学迷彩がーくん1号達を出して警備に散らしていたら楓がやって来て、私の手を掴むとズルズルっと引っ張ると廊下の奥まで連れて来られました。

「どうかしましたか? 楓さん」
 
「さっきから何をしているでござるか?」

鋭い声色で詰問してきた、溝が深いなあ・・・。
クラスに危害を加える側だと勘違いされてるみたい。

「誤解されているようですが、コレが見えるんですね。楓さんは」

指示する前で横に控えっぱなしだった、がーくん1号ことガジェットⅠ型をコンコンと叩く。
一度誰にでも見えるように姿を現し、すぐに光学迷彩を纏うコレ。

「何故そんなものをバラ蒔くでござるか?」

浴衣の懐に手を入れたまま、警戒体制を崩さない楓さん。
金属反応アリ、この前の小刀か・・・。

「警戒警備の為ですよ。カエルと言いお酒と言い、妙な事が連続してますからね」

「皆に危害を加えるためではないでござるな?」

「はあぁ~・・・・・・、どうして私が皆様に危害を加えないといけないのですか?」

肩を落として呆れると、やっと懐から手を抜いてくれた。

「や、済まんでござるよ」

「不審なのは楓さんもですね、何本小刀持っているのですか?」

「いやいや櫻殿、拙者はそんなものは・・・・・・」

「私の前で金属類は隠すだけ無駄です。 金属探知にいっぱい反応してますよ?」

「・・・・・・・・・櫻殿は何者でござるか?」

「ただの無駄に年食っただけの迷い子ですよ。 楓さんは忍者さんですよね?」

違うと言いかけるが、少し間が開いた後に小さく頷いた。

「出来れば・・・・・・」

「秘密事で、ですね。 私も同じ事を頼みましたので、お互い様ですよね」

笑って告げ、ガジェットを配置につかせてそこを離れる。
やれやれ、こっちの軋轢がやっと終わった。

脳内16分割警備画面には、木乃香を攫う猿の着ぐるみと、それを追う葱、アスナ、桜咲さんが見えた。
・・・・・・もー知らん。 勝手に捕り物でもなんでもやってください。











ああ、アイン。
ちょっと姉さん達に、お土産持って行ってくれる?
サイバスター使っていいから、お願いね。























(あとがき)
清水寺はWikiからです。
主人公の立ち位置が意外に難しいものです。

旧外伝12&13を合体させました。 こちらはさっぱり変っていません。



[7259] 外伝 9
Name: C-K◆ae02f8a5 ID:27ec9c7b
Date: 2010/04/07 21:32



こっちの班にいると葉伽瀬さんと技術系等の専門用語会話になり、四葉さんと調理の話に花が咲き、クーの攻撃を避け、超さんに観察されつつ、美空と真名を交えて甘味処の話が弾む。

「櫻! 少しは相手するアル!」

「観光地ですることじゃ無いと思いますよ・・・・・・」

奈良公園なのをいいことに襲いかかってきたクーちゃん。

直線打撃系を渦飛で右に流し、体ごと肘を入れてきたので下からの膝封じのために落とす。
無防備になった頭を両側から掴み、ぐーりぐりと梅干しを入れる。

「あきょーっ!?」

「持って行きなさい、ヴァルシオン」

近くにいた青いソレの頭にクーちゃんの襟首を引っ掛け、ビシッと指差すと、数機の青いのがどどどどっと、公園の端の方へクーちゃんを攫って行った。
いや、奈良公園だから鹿だと思うんだけど。 青いのは♂、赤いのは♀かな?

「・・・・・・今の鹿ですよね?」

「鹿以外の何に見えるネ?」

いや、見えないから聞くんだけどね・・・・・・。















★★ スパロボ的な日々 外伝 9 『 大瀑布にながされるまま 』 ★★















「・・・・・・・すごいな・・・」

「・・・・・・何がですか? 真名」

「鹿にモテまくりね。 ・・・・・・櫻」

「美空、代わりましょうか?」

鹿は四足獣で角有り、くらいしか知らないんだけど、青か赤のヴァルシオンが私を先頭にゾロゾロと。
まわりから写真撮られまくりなんだけど、しかも後から後から集まって来るし・・・・・・。

観光客の鹿煎餅に釣られて群を離れるが、食い終わると戻る。
遠くの鹿は走って群に合流してくる。

他の人は鹿で微笑ましいよね・・・。

私はヴァルシオンなんだよ、表情は無いわ私より頭頂が高いわ、後ろにタイポグラフ調に『ズゴゴゴゴッ!』って擬音があるみたいで怖い。
放っておくと旅館まで付いてきそうよ、この子達。
公園の係員が「お客さん、鹿を独り占めしないでくださいよ」とか言いに来た。

占有してる訳じゃないんだけど。


しかし、十数匹のヴァルシオン青が群を離れ、係員に詰め寄って行く。
「え?あれ?」と困惑する係員さんは、囲まれてつつかれている。
ここの鹿は文化圏に近いからある程度の人語訳ができるけど・・・・・・、

※鹿意訳

「何文句ツケトンジャ、ワレェ」

「コノ方ヲ誰ダト思ットルンジャ、ボケェ」

「舐メ腐ッタコト言ッテルトしめンゾォ、ア"ア"?」



「・・・・・・・・・・・・・orz」

「頭痛薬がいるカ?」

「いえ、あまりの口汚さに目眩が・・・・・・」

「?」



・・・・・・なんて口の悪い鹿。

「あーもー。 散って散って」

もう仕方なく、命令して散ってもらう。 手を振って追い払う。

朝倉さんなんかが残念そうだが、私から見るとウザいだけだ。
ゴツいし、可愛くないし、威圧感バリバリだし。

真名なんか文句言いたそうだが。

「なんですか?」

下から目線で不満そうにジロリと見上げると、笑いながら頭を撫でてきた。

「いや、羨ましいな。 と思ってな」

この人実は鹿煎餅を美空に分けて貰ったけど、鹿が全く寄り付かないので寂しそうにしていたのを知っている。

「真名は火薬の匂いであの子等に嫌われていますよ?」

「やはりな・・・・・・」

寂しそうに笑ったら気になるじゃないか、しょうがないなあ。
パンパンと手を叩き近くのヴァルシオーネを呼び寄せる。

真名を差して「この人から餌を貰いなさいね」と言っておくと、寄って行き、真名の持っていた鹿煎餅を食いつくす。

真名が楽しそうにあげる端からわらわらわらわらと、わらわらわらわらわらわらわらわらわらわらわらわら・・・・・・・、

「あーもー! 過度というものを考えなさいアナタ達はー!」

明らかに数量オーバーな数を引き剥がす。

ついヴァルシオンに見えるから「そこに直りなさい!」とか言って、鹿相手に説教をしてしまいました。
後で聞いた所によると、ずらーっと座り込んだ鹿が私の講釈を頷きながら聞く、と言う見せ物になっていたらしい・・・・・・・・・・・・。









修学旅行二日目、奈良行き。

昨夜の誘拐騒ぎは就寝時間前に四人とも戻ってきた。
桜咲さんに聞いたら、二刀剣士と術士の二人だそうな。 術士の方は新幹線の女か。

なんで西洋魔術士の葱を狙わないで、木乃香攫うのか不思議。
昨日は皆、飲酒で静かだったけど、今日は騒がしいんだろうなあ・・・・・・。


夕方からロビーの方へ出てみると、朝倉さんが騒いでいた。
その前には葱が外へでて、杖で飛んで行くとか・・・、もう馬鹿かアレ。

スクープがどうこう言っているパパラッチに近付いてみる。














   ◆  ◆  ◆  ◆  ◆


「何がスクープなんですか? 朝倉さん」

「見た見た! 櫻。 ネギ先生が杖で飛んで、オコジョが喋って。 魔法よまほっ!?」

  ダガンッ!!

何が起きたのか朝倉和美には解らなかった。
気が付いたら床が目の前にあって、背中と後頭部に掛けられた骨が軋む圧力。

頬のすぐ脇には肉厚のナイフ、半分から下は床に突き刺さっている。

「これだから、自分の好奇心を満足させるためにしか動かない奴は嫌いなんだ」

頭上から聞こえてくる声は先程まで隣で笑っていた人物で、今は鳥肌が立つような冷たい声。

「さ、くら・・・・・・アン、タ・・・・・・?」

「黙れ。 ・・・・・・さて朝倉和美、お前には選択肢が二つある」

脇に刺さっていたナイフが抜かれ、ほっとしたのも束の間、再び頬スレスレに床に刺さる。
ゾンッ! と恐怖を煽られる音と共に。

「今すぐ全てを忘れ、証拠を破棄し、何もなかったように日常へ戻る道・・・と」

背中に掛かる重みが更に増し呼吸が途切れそうになる、全身から冷や汗が吹き出し心臓の音が耳鳴りとして響く。

「もうひとつは今すぐ此処で無惨にも解体され、生を終わらせただの肉片になる事。 さあどっち?」

聞き返すまでもなく、ここで自分がNOとでも言ったら確実に行動に移す。
勘だったが、彼女の口調には実行するだけの威圧感があった。

それでも、震える声で聞いてみる。

「・・・・・・脅しの、つもり?」

「なら更に良いことを教えよう、歴史の裏で辛酸を舐めた組織を侮るなよ? この事を発表したとしてもお前はペテン師扱いされ、業界からは排斥される運命」

「・・・・・・分かった。 口外しないから」

一言だけで、朝倉和美の全てから重圧が消えた。
顔を上げると、いつも通り大人しそうな笑顔で巳子神櫻はそこに居た。
床に座り込んだ和美は、自分の観察眼に間違いがあったと脳内情報を訂正した。

「アンタ病弱じゃなかったんだ?」

「私自身、自分をそう言った記憶はありませんが、どなたですかそんな根も葉もない話をした人は?」

そう聞かれて思い出すのは初日の高畑先生だけ。

「アンタも・・・・・・魔法使いだから、こんなことをするの?」

「いいえ、ネギ先生には借りがありまして。 だいたい朝倉さんもこんな事公表したら、のどかさん達に恨まれますよ?」

「どうしてよ?」

「人に知られたらオコジョにされて強制帰国の刑だそうですよ。 明日になって朝倉さんのせいでネギ先生が国に帰ったとか言ったら、あやかさんやのどかさんがどんな反応をしますでしょうか」

絶句した朝倉に、背を向けた櫻がその場を離れようとする。

「あのさ、・・・・・・さっきの本気だった?」

「・・・・・・さあ? ああ、ネギ先生に聞くのは朝倉さんの自由でどうぞ。 あの世の中を舐め切ったガキには、少しお灸を据える必要がありますから」












   ◇ ◆ ◇ ◆ sakura side ◇ ◆ ◇ ◆


「櫻ちょっと来て!」

夕方に、姉さんに渡すお土産を部屋で選定していたら、アスナに攫われた。
ホールには葱と桜咲さん。

「なんですか? まったく・・・・・・」

「朝倉さんに魔法がバレたそうです」

「ああ、そうですか。 では失礼」

何で呼ばれたのかさっぱり分からん。
でも朝倉さん、あの後葱に突撃リポート掛けたんだねぇ。 行動力は感心するわ。

「ちょっ、ちょっと待ちなさい!」

「何ですかアスナ? 私は姉さん達に届けるお土産を選びたいんですが・・・・・・」

「ネギの魔法バレとお土産と、どっちが大事なのよ?」

「お土産。 話は終わりですね、では失礼」

「・・・・・・助けてください。櫻さーん」

で、今度は葱に引き留められると。
肩を落としてため息をつき、桜咲さんを見ると苦笑い。

「よくこんな馬鹿に付き合ってられますね? 桜咲さん」

「馬鹿!?」

「一応はお嬢様を護る協力者でもありますから」

「一応!?」

ショックを受けている葱はどうでもいいが。

「そもそも、バレた原因はなんですか?」

「えーっと猫を助けて・・・・・・」

「猫を助けるのに、何故車を吹っ飛ばす大掛かりな魔法を使いますか? ちょっと押してあげれば車体の下に入るでしょう、あのくらいの猫であればあの程度で怪我はしません。 更にその場を離れるのに飛ぶ必要がありますか? ここは過疎化の進んだ村じゃないんですよ? 人口数万人を有する都市です。 誰も彼もが地面を見つめて歩いている訳じゃないんです。 そこで飛ぶ? 自業自得じゃないですか。 自覚がないから魔法を日常的に使う。 使うからオコジョになる自然な流れでしょう? この際、一度オコジョになって自分の自覚の無さを再認識した方がいいんじゃないですか?」

詰め寄ってまくし立てたら、頭抱えて「あうあう」呟きつつ、壁に向かってしゃがみ込んじゃった。
ふっ、ちょろいお子様め。

「ちょっと櫻! ネギはまだ子供なのよ?」

「子供だから何です? 子供に免罪符があるとでも? 子供が人を殺したら罪に問われない? 経緯は知りませんが、社会に出てるならば自分の行動行為に責任が発生します。 それは自分で取るものです。 っつーか何で私が説教しなきゃならないんですか!?」

だーもー超イライラするっ!
そこへ朝倉さんとカモミールが来て、葱をサポートするとかなんとか・・・・・・。

「バラしゃあいいのに・・・・・・」

「いやっ! 櫻に殺されそうになったのよ?!」

「ああ、そうだったねぇ・・・・・・」

どういう事よ! と爆発しかけたアスナに朝倉さんが説明した。
私がナイフと殺気で優しく諭した事とか。

「ネギ先生はオコジョになれば済むけど、朝倉さんの人生はペテン師呼ばわりされていいものじゃないでしょう」

「櫻っ! ありがとう。 危うく人生を棒に振るところだったわ」

なぜか目から鱗が落ちたように感動する朝倉さん。 ・・・・・・え? 感動するのそこ?
あとそれと彼女の肩に乗っていたカモミールを捕獲、頭を持ったままじわじわと、圧力をかけつつ詰問する。

「ねぇ、クソ動物」

「ははははいっ! 何でしょうか巳子神の姐さん!」

「お前の欲で一般人を魔法なんてものに関わらせんじゃねぇよ」

「そそそれは重々承知しておりますからっ!」

「次にへんなことしたら闇討ちするからね」

「さささ、サー、イエッサー!」






   ◆  ◆  ◆  ◆  ◆


夜になって「ネギ先生唇争奪戦」が開始されカモミールと朝倉は、櫻の居る六班の部屋に中継を繋がない事で、自らに降り懸かる火の粉を回避しようとした。
しかし旅館の内外には、人の手が届かない位置に姿を消した櫻の端末が、16機も配備されている。

・・・・・・などとは知らない上に、繋がなくても機器類は彼女の専門である。
使用した時点で、彼女の知覚に察知される運びとなった。

子供先生の馬鹿さ加減にフォローする気もなくなった櫻はネギの偽物が騒ぎを拡大させた時点で、3-A部屋だけに中継されている映像を旅館全部屋に流した。
教員部屋だけでなく、従業員部屋、正座場所にあるホールのTVにまで。
流れて無いのは、すでに就寝しているザジに配慮した六班部屋くらいである。

部屋では電源の落ちたTVに落ちる自分の影に、声を掛ける櫻が居た。

「ゼルティア、映像通信を伝ってあちらへ実体化。 カモミールを捕らえなさい」

 グルルル







新田教諭に朝倉和美が捕らえられた後、部屋に残っていたアルベール・カモミールは宮崎のどかのきちんとした、パクティオーカードにご機嫌だった。

「よしよし、これで5万オコジョ$いただきだぜ。 クックックック」

カードを見ながら悦に入るカモミールは、消えていたTVがふいに起動した音で首をめぐらせた。

「オレっちは何もしてねぇが。 リモコン触ったか?」

動こうとしたカモミールだったが、横から漏れる紅い光に体を強張らせた。
月の光でもないその紅い光は、TV画面に映しだされた獣の瞳。

   グルルルルル・・・・・・

小動物の本能が警鐘を鳴らす。
これはマズい、捕食者の気配だ。 逃げろ一刻も早くこの場所から逃げろ!
本能に従い、一歩踏み出したカモミールは目の前で起きた現象に、目を疑った。

映し出されていた獣、青い猟犬がゆっくりと画面から抜け出し、実体化を始めていた。
二次元が三次元へ、平面が立体へ、躍動感が現実のものへ。
カモミールの命に現実の危機が迫ったと実感できたとき、その獣は獲物を前にして狩りの開始を告げた。

   ワオオオオオオオオオオオ────────────ンンンッ!!!!

「ヒイイイイイイィィィィィィッ!!!!!!」





















「ねえ、桜咲さん」

「どうかしましたか?」

「今なんか、犬の遠吠えみたいなのがしなかった?」

「・・・・・・いえ、聞こえませんでしたが」

「おっかしいわねえ・・・?」
















    ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆


「さて、重罪人アルベール・カモミール。 主観と偏見と独断と目障りだから死刑即殺す」

「いきなりヒデェェッ!?」

有無を言わさずにカモミールの首根っこひっ掴み、肉厚のナイフを構えた櫻にネギがすがりつく。

「だ、ダメです! 櫻さん。 カモくんを殺さないでくださいぃ~!」

「黙れ共犯者」

「きょっ、共犯者?!」

「ちょっと櫻! ネギは何にもしてないでしょうがっ!」

見かねた弁護人神楽坂明日菜が食ってかかる。 スルーしてカモミールを掲げ、ネギに問う。

「これは誰の使い魔なの?」

「え? ぼ、僕との契約がありますけど?」

「使い魔とは主に管理されるモノよ。 故にこれの罪は管理不行き届きで貴方の罪になるわ」

「うっ・・・・・・」

「そんな極端な・・・・・・『ドガッ!』ひぃっ!!?」

「なんか言いまして? 共謀者朝倉和美」

頸動脈すれすれに刺さるナイフを見て、青ざめた朝倉和美は横にずれてから、首を激しく振った。

「そもそもどうして巳子神さんは魔法に対してピリピリしているのですか?」

お札を提供した罪悪感から、同席していた桜咲刹那が恐る恐る聞いてきた。

「平穏でのんびりとした普通の日常が欲しいからよ」

わかるでしょ?と言う様な視線に心当たりがあるのか、つい刹那は同意した。

「エヴァ姉さんに聞いたけれども、葱の父ナギ・スプリングフィールドは英雄だと言うけれど。 ・・・・・・英雄って何の意味か知ってる?」


「英雄と言うならばやはり、羨望や希望・・・・・・でしょうか?」

刹那が目を輝かせて告げた言葉にその場に居た櫻以外が同意する。
・・・・・・が、櫻はすっぱりその意見を切り捨てた。

「それは表側しか知らない奴の願望よ。 英雄って言うのはね、倒して名を上げたい奴の恰好の獲物なのよ」

何やらいやな思いでもあるのか、ギリギリと強められる圧力でカモミールの顔色は真っ青だ。

「良かったわね、朝倉さん。 葱の事をネットでバラしていたら今頃麻帆良に悪人や名が売れたい賞金稼ぎ、戦争後も恨みを持った奴らが山津波のように押し寄せてきてたわよ」


笑いかけられたが目が笑っておらず、背筋に刃の差し込まれる感じに朝倉和美は壁にへばりついた。
この場に居た人間が、本気で櫻の過去に何があったのか知りたくなった瞬間だった。

自分を怯えて見つめる目に気付いたのか、大きくため息をつくとカモミールをネギへ投げた。

「あー、やなもん思い出した・・・・・・。 めんどくさい、もういいや」

「え? あ、あの? 櫻さん!?」

「特に何も無い。 葱の問題だしね、私はもう何も言いません。 あなたの好きなように、生徒を戦場へと導く生贄に出しなさい」

関心が失せたそぶりでその場を発つ櫻を見ながら、朝倉は首をかしげた

「てっきり生徒側を心配してるお人よしかと思ったんだけど、なんだろう?」

「櫻怒らすと生きた心地がしないわよ、まったく・・・・・・」

前例があるだけに実感が篭っている明日菜に、ネギとカモミールからは冷や汗が落ちる。








    ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆


「しかし、自由行動が多すぎるんだけど。 生徒の自主性に任せるって、いささか無責任過ぎる気がしないでもないですが」

「教員もわびさびを理解しない学生を連れ歩く気もないでござろう」

「そんな理由かなあ・・・・・・」

すでにこの班自体もバラバラである。
古都無差別間食巡りに参加するのは、四葉を先頭に櫻とクーと楓と美空。
葉加瀬は旅館で今朝から篭ってノートPCと向かい合っていた、超に至っては、旅館を出たところから行方不明。


「でも櫻はそんなにばくばく食べて平気?」

「ふふぉ? ・・・・・・んぐ」

味の研究と言って色々なものを一口づつ食べる四葉とは違い櫻はセットで買ってきては、あっさり食い尽くしてばかりいた。 

クラスメート達が小柄さがウリの彼女が、横に広がらないか心配するほどの健啖家である。
心配などとは程遠いクーに至っても、櫻と競争するかのごとく無茶喰いを繰り返している。

「大丈夫、おいしいものはエヴァ姉さんのお土産にするから。 後、ムシャクシャするから自棄食いの意味もある」

羨ましくなる位の純粋な笑顔で楽しそうに語る櫻に、美空と楓は苦笑いだ。
楓は彼女の本性のようなものを、うっすらと掴んでいるために、裏と表の隔たり具合に。
美空は普通に「エヴァンジェリンさんも大変だなあ・・・・・・」くらいに。


談笑しながら街を巡る中、櫻の傍に楓が並ぶ。

(またネギ坊主となにかあったでござるか?)

(少しはまともかと思ったのが、実はネズミだったと。 そんな感じですね)

(櫻は妙にネギ坊主に対して厳しいでござるな~)

(・・・・・・・・・・・・・・・・・・きっと・・・)

(・・・きっと?)

(あの豆粒ドチビに変なところが似てるからよ。 そうに違いない! エドワードの豆大将カバーーッ!!」

(・・・・・・豆?)

途中から声を大にして叫んだのすら気付いてなく、困惑する楓を置いて力強くどすどす歩く櫻を見、他のメンバーは頭を抱えた。

「あーあ・・・・・・、せっかく機嫌直ってたアルのに・・・・・・」

「ダメだよ楓。 櫻がなんか憤慨してたから、四葉さんが気分転換に誘ったのに・・・・・・」

「え? え?」と状況の分からない楓を置いてけぼりに、三人が協議しあう。

「食い物で釣るのはダメになったアルよ」

「エヴァンジェリンさんのお土産に力入れてるみたいだし、そっち回ってみようか?」

「最終手段は肉まん作りに協力してもらいましょう」

楓は旅館出発時に急遽加わったため、クーらの作戦を掴んでなかったのである。
櫻に至ってはやや機嫌が悪いくらいだったので、いつもの癇癪だろうと突っ込んだのがアダとなった。
それから駅前や観光地のお土産屋を回り、櫻の機嫌が幾らか回復するまで楓だけは肩身の狭い思いをすることになった。

















     ◆  ◆  ◆  ◆  ◆  ◆



時は色々すっとばして夕刻を過ぎた夜。
関西呪術協会の総本山が襲撃にあった頃、ネギからの緊急連絡を受けた近右衛門は
即現場に急行できる人物に、エヴァンジェリンを選択したが。

「櫻があっちに行っているだろう。 あいつに任せればいい」

と言ってパクティオーカードを取り出したエヴァンジェリンに期待した。 したのだが・・・・・・。

「ああ、私だ。 ・・・・・・・・・・そうだ、阻止すれば・・・・・・何? いや、ちょっとまて・・・・・」

会話をしているエヴァの顔がだんだんと困惑してきたのに気付き、眉をひそめた。

「どうしたんじゃ? 櫻君はなんと・・・・・・?」

「っち、あのクソ坊主め。 あいつを更に怒らせおったな、じじぃ、私をここから一時でいいから出せ。 櫻に任せるとマズい事になる」

「うん? 何かあったのかの?」

「櫻とネギの仲が悪化したらしい。 今のあいつに任せると京都が地図上から消えるかも知れん」

  ぶふぉっ!?

寝耳に水な発言に近右衛門は盛大に茶を噴いた。












     ◆  ◆  ◆  ◆  ◆  ◆


「なんでチャイナ服なんか着てるのよ。 楓・・・・・・」

「櫻も着たいでござろうか?」

「似合いまくってる楓と比べられたくないから遠慮します」

風呂上りにホールでダベっていたクーと櫻と楓。 いつもの胴着姿のクーと浴衣姿の櫻、何故かチャイナ服の楓。
楓の携帯が鳴り、夕映からの救援要請が入ったのはそんなときだった。








「バカリーダー? ・・・・・・ああ夕映。 じゃ、やっぱりさっきからいる葱他数人は替え玉ね」

「見ただけで良く分かるアルな、櫻」

「だって心音も無ければ、体内熱分布も無いもの。 あきらかに人間じゃないわ」

「妙な視点から見るものだな。 まるで嘘発見器みたいだ」

「心音とアドレナリン分泌の違いでしょ? 普通に見れるからできるよ」

その場に居たために、救援隊に加えられた真名は感心した。








櫻が着替えて集合した後は、六班の部屋窓から旅館を脱出。
市街地より離れた場所に移動した後、櫻が虎王機を影より呼び出した。

「私はちょっと姉さんから呼び出し。 この子で先に行っててくれる?」

「でっかい虎アル。 ・・・・・・強いアルか?」

「こらこら、ここで戦わない。 お願いね虎王機」

三人を背に乗せ、森の上を飛ぶように駆ける虎王機を見送った櫻はカードを取り出した。

「はいはーい。 妹でーす」

 『ああ、ちょっと関西呪術協会でやっかいなことがあったらしい。 見てこれるか?』

「は? いや今バカブラックの救援要請で、クーと楓と真名とそっちに向かってたんだけど」

 『なんだもう向かっているのか。 ならばお前の能力で何とかなるか?』

「それはぶっ飛ばす対象を見てみないと何とも言えないけど・・・。 エヴァ姉さん公認?」

 『ああ、阻止すればいい。 遠慮なくぶっ飛ばせ』

「じゃあ、ネギもろとも京都が半分くらい無くなっても良いよね?」

 『いやちょっと待て、・・・・・・なんと言った?』

「京都とネギもろとも最大出力でぶっ飛ばしてもいいよね。 お灸も据えられて一石二鳥! ──あれ? エヴァ姉さーん? 聞こえてますかー?」

 『・・・・・・わかった。 私が行くまで時間を稼げ、京都を地図から失くさなくていいからな!』

「はいはーい、りょーかーい」

カードをしまって、ニヤリと人の悪い笑みを浮かべた櫻は指を鳴らす。
夜の森は何処も影みたいなものではあるが、そこから人間大がひとつ、全高20m弱が五つ立ち上がった。

「・・・・・・さて。 巳子神櫻が命ず、貴様らの本分を存分に果たせ」

呼応するように赤とか黄色とかの光がその場を照らした。
















     ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


妖怪軍団の中で真名がガン・カタを披露し、クーの一撃で数匹が纏めて弾かれた頃。
軍団の端で固まっていた集団に上空から銀色の球体が落下、地面をすり鉢上に抉りながら周囲を吹き飛ばした。

「なんだ!?」

「新手か!」

刹那と真名が警戒心を強める。
妖怪達が遠巻きにする中、土煙が晴れたソコには黒い物体があった。


折り畳まれた黒が左右に開かれる。
巨大な三対の黒い翼を広げ、長身の女性が現れた。
長い銀髪に紅い瞳、黒い魔導服に幾重にも巻かれた魔術文字を刻んだ帯、周囲に軌道する剣十字を持つ杖、片刃の剣、長柄のハンマー。

「リィーンフォース・アイン。 我が主、巳子神櫻の命により助太刀する」

明日菜と刹那が驚愕する中、月詠と相対し、笑みを浮かべた真名が二人に先に行けと促す。
周囲に軌道を描くハンマーを掴み取ったアインは、ソレを掲げる。

「鉄の伯爵グラーフアイゼン。 鉄槌の騎士に代わり我と供に汝の本懐を果たせ!」

『Ja.』

カートリッジをニ発消費、巨大なハンマーへ姿を変える。

『Gigantform.』 「轟天爆砕!!」

足元に三角の魔方陣を展開、一振りで更にその大きさを増したハンマーを、妖怪達の真っ只中へ振り下ろした。
命中箇所に居た敵を圧殺したが、威力はそれだけに留まらずその場の岩盤を爆砕。
衝撃波で砕かれた岩盤が周囲に弾丸としてバラ撒かれ、一瞬にして空白地帯が出来上がった。


その空白地帯へ一時後退したクーと真名、アインが集まる。

「お姉さん強いアルね。 今度手合わせ頼みたいアル」

「主の許可があれば、の話だがな」

真名とは視線を交差させ、双方ともクスリと笑みを浮かべる。

「頼めるか?」

「元よりそのつもりだ」

弾丸を再装填する真名とその時間を稼ぐための守りに入るクー。
妖怪達の主格に対し一歩踏み出したアインは、片刃の剣を手に取った。

「炎の魔剣レヴァンティン。 烈火の将に恥じぬ様その力を示せ!」

『Jawohl. 』


 












     ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


ネギの最大威力攻撃、雷の暴風がリョウメンスクナノカミにあっさり弾かれ、天草が高笑いを上げた。

「そしてこの力があれば、いよいよ東に巣食う西洋魔術師に一泡吹かせてやれますわ!」

「・・・・・・それは随分と井の中の蛙発言だぁねえ」

「なんやて!」

リョウメンスクナノカミと湖に設置された祭壇を挟む森の上空、背に五枚の羽根を生やした櫻が浮かんでいた。
片手に下げたオクスタンランチャーを目標も見ずに三撃連射、ネギに迫る白い少年に着弾。
祭壇の足場もろとも空に吹き飛ばす。

一瞬の隙にカモミールの助言に従い、ネギはパクティオーカードで召喚。
神楽坂明日菜と桜咲刹那を呼び出した。

「って、櫻!?」

「そっちの葱サポートは知らん。 こっちの骨董品デカブツの相手は任せなさいな」

明日菜達を一瞥し、改めてリョウメンスクナノカミに向き直る







憤慨する天草に凄惨な笑みを浮かべた櫻は上空を指差した。

「なんや? 使い古された手に引っかかるかいな」

「忠告はしたが、また会いましたわね弁当屋のお姉さん。 私は足止めですがそれなりの屈辱をプレゼントしましょう」

櫻の頭上、キラリと光った紺烏のパーソナルトルーパーが、闇夜を切り裂き音速を突破。
衝撃波の音を振り撒きながらリョウメンスクナノカミに落下した。

ここには居ない他の誰かの絶叫を伴って。

「究極ウウゥゥ!!ゲェェシュペンストォォォキイイイィィッックウウゥ!!!」(CV.折笠愛)

顔面直撃を喰らったリョウメンスクナノカミは、封印されていた岩もろともひっくり返り湖に落ちた。
顔面を蹴ったのは良いが、勢いが付き過ぎていたゲシュペンストもろともに大瀑布のような水柱を立てて。

衝撃波の煽りに巻き込まれた天草は、木乃香と空中で切り離されたがソコを翼を広げた刹那が奪取した。

「ナイスアシスト」

「巳子神さん。・・・・・・ありがとうございます」

オクスタンを掲げる櫻に対し、刹那は頷いて一礼の代わりとしその場を上空へ逃れる。







「な、なんなんや!? アンタ! 何者やっ!」

「ただのしがない中学生ですよーっと。 第二弾いってみようか。 ねえ? SRX」

言い終わるやいなや、森をブチ割りリョウメンスクナに勝るとも劣らない巨体が姿を現す。
スキヤーのゴーグルを横に伸ばしたような頭部、青い上半身に赤い下半身、足首からは刃が天を向き、右腕には身長と同程度の直砲を携えて。

ようやっと起き上がったリョウメンスクナに、やや上空から直砲を向けエネルギーをチャージ。
砲身から溢れる黄金色の輝きがあたりを照らす。

引きつった顔でその光を見つめていた天草は、櫻に向かって叫んだ。

「ちょっ、ちょいまちぃ!! そんなモン撃ったらこの辺一帯がどうなるっていうんや! 足元にはアンタらのお仲間も居るんやでぇ! 一緒に吹っ飛ばす気かあっ!!?」

「・・・・・・馬鹿かお前、狂人なら狂人らしく笑って死になさいよ。 なに情に訴えてんの?」

ソレがさも当然の事だと言うかのごとく、ツマラナイ蟲に向ける視線まんまの感情の無い瞳。
ようやく目の前に居る者がどんなに危険な者かを理解した天草の前で、櫻は指を鳴らした。


「くらえぇ! 天下無敵の一撃必殺砲ぉっ!!!」(CV.三木眞一郎)


莫大なエネルギーを注ぎ込まれた砲撃がリョウメンスクナの左側を通過。
左腕二本と肩を消滅させ、背後の湖へ着弾。 水面を蒸発させ湖底へ突き刺さる。

体勢を崩したリョウメンスクナの背後で、湖がひっくり返るくらいの大瀑布が立ち昇った。
水と土砂がもろともに吹き上がる大爆発が湖面を割り、岸辺へ大津波が襲い掛かる。

今だ死力を尽くして戦っているネギ達も例外でなく。
明日菜が「ちょっ!? さくら──っ!!」と泣き叫ぶ所へドデカい津波が覆い被さった。





いち早く上空へ逃れた白い少年をつまらなそうに見つめる櫻。

「キミも、ずいぶんと危険な存在だね?」

「・・・・・・そっちは人間じゃないわね。 人形か」

眉をひそめた白い少年が櫻に向かい構えを取った瞬間、泥水が渦を巻く湖面を噴き上げゲシュペンストが空中へ躍り出た。
勢いのまま少年へ拳を突き出すが、あっさりと回避される。

「こんな攻撃がボクに通じると・・・、ッ!?」

「ウチのボーヤが世話になったようだな。 若造」

腕が通過した反対側、いつの間にか存在を許していた人影に腕を掴まれ驚愕する白い少年。
ドガンッ!!と生身で音速の壁を破る突き飛ばされ方で、湖面に叩きつけられる。


いくらか残っていた祭壇の傍に着地し、片手に抱えていたネギと明日菜を降ろすゲシュペンスト。

「し、死ぬかと思った・・・・・・」

「それはどうも、ごめんなさいね」

ネギがエヴァンジェリンの名を呼ぶ中、胸を撫で下ろした明日菜は上から被されたマントにきょとんとする。
ゲシュペンストの肩へ着地した当人を下から睨みつける明日菜。 笑い返す櫻。

「まあ、おかげで水の中に飲み込まれなくて済んだけど・・・・・・」



天草がしぶとくへばり付いているリョウメンスクナへ、フライトユニットに長バレルライフルを構えた茶々丸が、結界弾を打ち込んだ。
エヴァンジェリンの魔法【おわるせかい】によってリョウメンスクナは氷の彫像と化し、砕け散った。












     ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


櫻の足元へ、足元に広がった巨大な影の中へ。
SRXが分離したRシリーズ四体とゲシュペンスト一体が沈み行くのを、明日菜とネギはボケっとして眺めていた。

エヴァが学園結界から出られていると言う理由も聞き石化が進行途中だったネギを、パクティオーを実行した木乃香によって治療させひとまず安心する一同。

別れていた一堂が集結し互いに無事を確かめ合う中、一歩離れていた櫻はエヴァの背後に潜む陰に気がついた。
同じくエヴァの向かいで明日菜達と喜んでいたネギも同様に。

「エヴァンジェリンさんっ!!」 
「エヴァ姉さんっ!!」

エヴァを抱きかかえ自らを楯にするネギの背後、詠唱を終え構えた白い少年を見つけるエヴァ。
ネギを振り払うよりも早く歪歩で間に飛び込んだ櫻が、ネギとエヴァを突き飛ばし背後から数本の石槍に串刺しにされた。

「櫻ッ! 貴様アアアアアッ!!!」

自らをコウモリに分解、少年の背後で再構成。 悪鬼の形相で少年をぶっ飛ばした。
最初の一撃目より感情的な魔力を爆発させて、わずかに残っていた祭壇の一部すら消し飛ぶほどの威力である。












「櫻様っ!?」

「「「「櫻っ!」」」」

茶々丸により石槍を摘出され、エヴァの纏っていたマントに寝かされた櫻の様相は酷いものだった。
右胸と左のわき腹には大きな穴が開き、左足は膝のやや上で完全に断たれている。

夕映や明日菜が蒼白な顔で吐き気を堪え、同じく青い顔で木乃香がアーティファクトを振るうが、治療には至らなかった。
なぜならばひと目見て誰もが即死を疑う中、出血は意外に少なく傷口からはコードや金属骨が露出していたからである。

「・・・・・・いやいや、さすがに、すぐには死ねんのだよね、これ・・・・・・」

口許から血を流しながら、自分を呆れたように評価する櫻。

「お前ッ、わ、私は真祖の吸血鬼だぞ! あんな攻撃くらいで私が死ぬものかっ! 何故庇った!!」

「つい、・・・・・・うんうんつい動くものなんだよねこれ~、いやー、あいつを笑えんわな、これは・・・・・・」

自嘲するように「ハハハ・・・・・・」と笑う櫻に、その場がお通夜のように暗くなる。
茶々丸が櫻の手をとり、胸の中で握り締める。

「櫻様・・・・・・」

「・・・・・・大丈夫、しば・・・・・・らく・・・・・・機能停止、する・・・・・・だけらか、ら・・・・・・」

目をつぶったまま呟いた櫻の周囲が不自然なほど歪み、手を握っていた茶々丸が弾かれる。
不自然に集まった魔力をネギらが感じた直後、櫻の周囲に水が結集し氷柱へ封じ込めた



「まったく、こんな結果になるために貴女の所へ預けた訳じゃないのよ。 エヴァ」

背後から聞こえた不意の声に、武道派達がそれぞれ構える。
空中を滑った櫻入りの氷柱が声の主の所へ飛んで行き、静止した。

「貴様か・・・」

立ち上がったエヴァが力無く呟くと、氷柱の横に人影が現れる。
エヴァ以外の人間がその容姿に。 氷柱に封じられた櫻そのものの姿に驚愕する中。
二人目の櫻はスカートを摘み、どこぞのお姫様のように皆に向かって頭を下げた。


「始めまして皆様。 ・・・・・・そしてごきげんよう」

水面に波紋を残して氷柱もろとも掻き消えた。


「さ、櫻──────っ!!?」(×8)














(あとがき)
ネギ株は主人公の中で大暴落。
責任うんぬんを問うてますが、彼女が言えたギリじゃありません。

戦闘シーンにやたらと時間が掛かりました。
原作通りな所はほぼ省略してあります。 四葉とか美空とかよくわからないorz
雑談板の某スレにメチャクチャ凹みました。 読みにくい文章でごめんなさい。

雑談板の「些細な事だけど個人的に許せない」のに色々当てはまって凹みました。
読みにくいですか? 読みにくいですね・・・・・・orz



旧外伝14&15の合体品です。 変化ありません。
スニーカー様、間違い報告ありがとうございます。 訂正致しました。



[7259] 外伝 10
Name: C-K◆ae02f8a5 ID:27ec9c7b
Date: 2010/04/07 17:35





昔話をしよう。

かつて、私には自分の居場所があった。
普通に暮らして、家族や友人で笑い会える生活があった。
世間は平和で遠い空の下では諍いがあったり、テロで大勢の人が死んだりもしていたが。

ソレでも私の周りは平和と言えた。


私の世界には普通の人と優越者を選別するシステムがあった。

称号と呼ばれるそのシステムは、ある日突然世界によってその人を決定付ける『呪い』だ。
私の周りにも少数の人がその称号を持っていた。
【侍】、【騎士】、【魔術士】、【賢者】、【情報屋】、【鍛冶師】、【占術士】、
数え上げたらきりがない、惑星上に覚えきれないほどの種類の称号持ちがいた。

かく言う私も中学を卒業し、高校に進学する頃に称号を授けられた。
私に下された呪い名は、【魔王】だった。


信じられない。
それまで平々凡々に生きてきた小市民に【魔王】なんて。

私の周りはあっというまに大騒ぎになった。
家族や友人は大して変わらなかった、私の小市民ッぷりを知っていたからだろう。
自分でも分かっていた。 こんな自分に大それたことなんか出来ないと。

私は周囲の騒ぎを無視して、普段通りの生活を続けた。
騒ぎが沈静化するのは早かった、元々私は争いごとが嫌いだったし。

それでも【魔王】の名に脅威を抱いて、諸外国から自称勇者が何人も来た。
仕方なく私は魔王として自身に備わった能力をふるうことになった。
強大な魔力と魔を従える能力を、なるべく相手を傷つけないように穏便に振るった。

理解してくれる人は少なかったが、【魔王】が平和主義者だということは世界に伝わった。
ゼロにはならなかったが、自称勇者は減った。



私の周りは再び平和が戻った。今までとはいささか毛色の違ってはいる平和が。
私の周囲に集まる称号持ちを見て、人は魔王四天王と噂した。

自称勇者の一人で、負けてから勝手に私を主と仰ぐ弟分の【竜騎士】。

幼馴染の飼い犬だったけど、メンバー中唯一の常識人(犬?)である【精霊術士】

兄貴分の幼馴染で、頑固で融通の利かない【侍】

怪しい宗教法人の総帥並みに私を崇拝する【占士】

五人で街の些細な事件を解決したりもした。
こんなときばかりは魔王の持つ能力に感謝である。
五人で色々なことに首を突っ込み、喧嘩したり、危ない橋を渡ったりもしたが、いい思い出になった。

ずっとこんなことが続くと思っていた。

───そう、ずっと。




状況が一変したのは、それから二年も経たないうちだった。

私の住んでいた地域を中心として、大規模な地殻変動が襲った。
ほぼ全ての建造物が倒壊し、何万人もの犠牲者が出た。

私達は自分のもてる力を駆使して被害者の救済に手を尽くした。
近隣に在住する称号持ちも一同に会し、超常の能力を救助に費やした。

ところが被害にあった人々からは、この災害を【魔王】が起こしたと噂が流れ始めた。
どこかで誰かが言っていたことだが『人間は数が集まると馬鹿になる』の言葉通りに。
あっというまに反魔王感情が人々に蔓延した。

こうなってしまうと後はもう事態は転がっていくだけだ。
連日、世界中で【魔王】を非難する報道が流れ、世界中の指導者たちが私を糾弾した。
数日も経たない内に近隣の住民は疎開していった。

残ったのは、四天王の友人達と私の母親だけだった。


母親だけでも周囲から遠ざけたかったのだが、当人は頑として譲らなかった。
仲間達は最後まで付き合うといってくれた。
それどころか嫌われても突き放そうとした私を叱ってくれた。
「水臭いことを言うな」と。

世界中から称号持ちで構成された勇者パーティが組織されて、送られてきた。
仲間と身内を守るために戦うしかなくなった。
『不殺』だなんて言っていられなかった。
何しろ相手はこちらを滅ぼすつもりなのだ。殺らなければ殺られる話だ。

一人殺して吐いた。二人目は泣いた。
三人目は祈るしかなく、四人目はしかたがないと自分に言い聞かせた。

感情が持つのはソコまでだった。
相手は倒しても倒しても沸いてくる台所の裏の主、Gのよう。

十人も殺せば、作業が機械的になった。
五十人も殺せば、子供の頃庭でアリの巣穴に悪戯をした気分でしかなかった。
七十から先は数えることさえも止めた。



九日八晩戦い続けてふと気がつけば【占士】が息絶えていた。
彼は私たちの中で後方支援徹底型だ。 前衛に立たされればひとたまりもない。
手厚く葬ってから、ようやく戦線が途切れていたのに気がついた。

ようやくあきらめたのかと、一息付いていた所に最悪が降って来た。


人類史上最悪の兵器、『核』である。
それも一発どころではなく、何十発も。

悲鳴を上げる暇もなく、光と音が地上を破壊しつくした。
自身の全能力を駆使して何処に居るのかも判らない仲間を守るための障壁を張った。



数分か数時間か、ようやくクリアになった視界にはクレーターだらけの大地が映っていた。
私はロクに怪我も無く無事だった。

でも自分より仲間達が気がかりだった。
魔物たちを呼び出し、仲間達を探させた。何日も何日も探した。

私達の隠れ家だったところはクレーターがあった。
そこに隠れていたはずの母親もろとも何も無くなっていた。
魔物達は持ち主の居なくなった一本の槍を探し出してきた。
【竜騎士】の持っていたアーティファクトなのは明白だった。

私は言葉もなく、その場に立ち尽くした。

涙も出なかったが世界に呪いの言葉を吐いた。

・・・・・・殺してやる

殺してやる・・・・・・・殺してやる

殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる



そうだ、私は【魔王】だ。

何を遠慮してやる必要がある。

人間は私を【魔王】としたのだ。

ここは現実だ。御伽噺なんかじゃない。

御伽噺じゃない話にハッピーエンドなんかあるものか。

私にも、奴らにも。

【魔王】の守るものすら失わせた愚かな人間どもよ。 命を失ってからその所業を後悔せよ。



私は全ての魔物たちに命令した。
「生きとし生けるもの、命あるものに滅びを」、私は世界を殺しに掛かった。

私の命令に全世界に伝わる言い伝え、物語の舞台で魔物たちが起動した。
攻め込むのではなく、守りを固めた自領の内で魔物が発生するのである。
私自身が動かなくても、世界は大パニックになった。

伝説級や神話級などの大物から、邪竜、妖精、といったマイナーなものまで。
ありとあらゆる御伽噺や、童話の悪に分類されるものが人々を襲った。

私自身も大陸に渡り、目に付いた人類の文明を片っ端から破壊しつくした。
大陸からヨーロッパ、アメリカ大陸へと渡り、何もかも破壊した、何もかも殺しつくした。

悪意の群れは黒い壁となって、ことごとくを滅ぼした。

最後に残った称号持ちや軍隊と、オーストラリアで最終決戦になった。
数千の人間達vs数万の魔物を従えた【魔王】。
結果は明らかに見えている。

丸いビスケットに群がるアリのように戦線は少しずつ小さくなっていた。

最後に残ったのはかつて勇者の再来と謳われた【聖戦士】と個人的に交流のあった【聖女】。
特に交わす言葉もなく、あっさり打ち倒した。

しかし、いくらか息のあった【聖女】よりこの事件の真相が語られた。

私が【魔王】に選ばれた時、人類は緊張ギリギリにあった。
どこかの国が引き金を引けばそれこそ全世界規模の戦争が始まってしまうくらいには。

だから『世界』は【魔王】を生み出した。
人類を一致団結するための生贄としての【魔王】を。
そして【魔王】を【魔王】たらしめんとする引き金を引いた。あの地殻変動を。
あとは『世界』の筋書き通りに事が運び、【魔王】は文字通り人類の敵となった。
人類同士で滅亡しあう未来を回避するために。


普通、この場合パターンだと次は『世界』を相手に戦うのだろうけど。
『世界』とはどうやって戦ったらいいのか途方に暮れる。

結局私は手のひらの上の猿だったわけだ。
劇の敵役だったわけだが、劇の人員も観客も潰してしまった。


途方に暮れた私は故郷へ戻り、かつての仲間たちと母親の墓を作った。
そしてもう伝えるものも居ない、語り継いでくれることもない魔物達を自身の内へ封印し、この『世界』を去った。

これが私が、世界を次元を幾千も幾億も彷徨う羽目になった顛末だ。
そして悟ったことは、何処にも私のいる場所は無いことだ。




















★★ スパロボ的な日々 外伝 10 『 真実 』 ★★
















    ◇  ◇  ◇ sakura side ◇  ◇  ◇


・・・・・・何今の、他人の人生無理矢理体験版みたいな夢は。

目の前にある殻にフィードバックする感じで五感が体に宿る。
目覚めるたんびにこんなもんだし、これが生きてるって実感かなあ。


・・・・・・ええとなんだっけ、確かエヴァ姉さん庇って穴が開いて意識封鎖する前にあいつが来たよね。
起き上がって体をペタペタ触って確認してみるが、穴の開いた制服はそのままで、肌には傷一つない。


意識封鎖してからの時間は・・・・・・87時間?!
体組織の27%が消失してたのがそんな短時間じゃあ直らないでしょう?


・・・・・・んじゃあいつのおかげなのかな。


改めて周囲を見渡したみると、石造りの小部屋みたいなトコ。
私が寝ていたのは生け贄の祭壇みたいな鏡のような断面をもつ石の寝台。
あれだね、たまに新聞に載ってる小型カメラで撮影した遺跡内の王の間って所ね。 装飾も何もないけれど。


あと視界外のセンサーでさっきから捉えている、小部屋入り口に沈黙したまんまの生物。

寝台から降りて近付いてみると、茶色い毛並み、つぶらな黒瞳、四つ脚にくるんと輪を描く尻尾。
ええと、犬か? 犬ってこんなんだよね? 確認してくれる人が居ないから何とも言えない。
戦艦に見えないって事は犬に見えて犬じゃない訳ね。

  くう~ん

私を見て鳴いたそれは、顎をしゃくるような仕草をしてからトコトコ歩き出した。
付いて来い、かな? 随分尊大な態度ね。

後を付いて行く。

見渡す限り同じ風景ばっかり。
幅広い通路、等間隔て並ぶ小部屋入り口。
覗いてみるけど、私が居た所と何ら変わり映えしない部屋。
ホタルみたいに漂う灯り代わりだと思われる灯火。

時折高い天井から聞こえてくる何かの足音。
一度だけ横の壁に張り付いていたのが光に照らされたけど、8mはあるかというデカい蜘蛛。

しかし、進んでも進んでも終わらない光景にいささかうんざりしてきた頃、終点らしき光が前方に口を開けていた。

「やっと終点?」

出口か入り口か、どちらともつかない通路をくぐった先は斜面だった。

でてきた処を振り返るが、マヤ文明チチェン・イッツアの遺跡によく似たピラミッド形の建造物が建っている。
上空から見れれば解るんだろうけど、さっきから呼んでいるんだが、ウチの眷属達は反応がない。
居るには居るんだけど、皆眠っている感じ?

遺跡斜面に沿って階段があり、下にたどり着けば石畳と建造途中か何かの柱が幾本か。
視線を遠くに動かせば此処の遺跡周囲は森になっていて、その向こうはビルが乱立している。


なによこれ・・・・・・。
遙か昔にニュースで見たことがある光景なんだけれども。
麻帆良でもニュースで見たかも。

「ひょっとしてこの場所が明治神宮?」

「ご明察~」

楽しそうな声は上から降ってきた。




















    ◆  ◆  ◆ ? side ◆  ◆  ◆


いやいやもう何考えているのよあの子。

いくらメトセラだからって欠損した部位を機械で補うなんて正気の沙汰じゃないわよ。
でもそれだけ生きる意志が強いって事なのでしょうけど。

最初の頃の自分を見ているようでうらやましいやら今の自分が情けないやら。

《・・・・・・・・・・・・》

ああパル、あの子起きたのね。
じゃあ此方に連れてきてくれるかしら?

《・・・・・・・・・・・・・・・》

は? ややこしい?
いいじゃない、どっちも私で私。
もしかしたらあの子が私を務めてくれるかもしれないのよ?

《・・・・・・・・・》

ありがとう、お願いね。

そうして待つことしばし、あの子は遺跡と定めた場所の頂上口に姿を現した。
見回してそして気付いたようね、ココがなんなのか。

「ひょっとしてこの場所が明治神宮?」

「ご明察~」

空中に逆さまに座る私を見つけるや否や、敵意のある視線を向けてきたあの子。
・・・・・・はて、私はまだ何にもしてないんだけどな?
















    ◆  ◆  ◆   ◇  ◇  ◇


「お久しぶり、わt「ストップ!」

空中に逆さまに座りながら口を開いた同一人物を、櫻は遮った。

「私は巳子神櫻。 私は私だけで貴方じゃない」

「あらつれない。 そんな娘に育つだなんて、悲しいわね・・・・・・」

「アンタなんかに育てられた覚えもないわっ!!」

悲しそうに眉をひそめた逆さまに櫻は肩を怒らせて突っ込んだ。



「さっきの胸くそ悪い体験版夢は、貴女の人生ね?」

「手っ取り早く話を進めたかったのでね。 あれが私の始まりかしらね」

「だったら今は何をしているのよ」

「私の世界から外の事象を見物しているのよ」

遺跡の上より視線のみで風景を見渡した櫻、その仕草だけでにっこりと頷く逆さま。

「ヒキコモリ魔王が私に何の用よ? エヴァ姉さんの所へ帰りたいんだけど」

「酷い呼び名ねぇ。 貴女が帰りたいのはそこなのかしらぁ?」

「・・・・・・何が言いたい、」

「貴女が本当に帰りたいのはそこで良いのかしら?」

「ッ・・・・・・」

答えの代わりに射殺すような瞳で見返す櫻に、余裕の笑みで流すヒキコモリ魔王。

「・・・・・・帰りたい・・・・・・帰りたい、あの場所に・・・・・・」

「あら素直」

「・・・・・・兄さん達の所へ帰りたい。 私の居場所を奪ったのはお前かああっ!!」

突然の絶叫に目を見張るヒキコモリ魔王の前で、櫻の左腕が三つ又に展開。
中央のレンズから収束したレーザーが目標に命中、爆発した。

「そんなものを隠していたとはね。 〔斬/爆(Sword)!〕」

頭上の爆発に、口許を緩める櫻に聞こえた呟きとともに飛ばされた刃は、肩口から左腕を切断。
彼女を通り越し、遺跡に突き刺さったソレは破裂し背後から櫻を強襲した。

衝撃波で木の葉のように飛ばされた櫻は遺跡の斜面を転がり落ち、地面へと叩きつけられる。

「ガッ・・・・・・グ・・・」

切断された直後には大量の血飛沫が舞ったものの、組織閉鎖された今は無残な断面を晒すのみである。
遺跡の一部にはおびただしい返り血がこびり付いているが・・・・・・。



「ちょっとは話くらい聞きなさいよ、貴女」

「・・・・・・・・」

残った右腕で強引に体を起こし、片膝を立てて荒い息をつく櫻を見下ろして、魔王は遺跡の階段に降り立った。

「貴女の能力は使い過ぎると『世界』に異質物とみなされて、自動的に放逐されるのよ。 そして又違う『世界』に流れ着き、そこで不完全ながらも混ざり合う。 心当たりあるでしょ?」

「・・・・・・家族ね」

「嘘の虚像でまったく関係の無い者達相手の家族ごっこは楽しかった?」

「違う、」

「何も知らない、世界に惑わされただけの人達を騙すのは楽しかった?」

「違う、違う! 家族だった、あの時だけは家族だった!」

笑みを浮かべたまま、今までの生を全て否定する魔王に櫻は叫んだ。
手を掲げて自らの眷属に呼びかけるも、何も反応するものは居ない。

「来や、来やれ、グランゾンッ!!」

「さっきから援軍を期待しているようだけど、ここは私の領域よ。 貴女には何も出来ない、だから大人しく話を聞いてもらうわ」

「アンタの領域? ・・・・・・アンタと、私・・・・・・」

繰り返すようにぶつぶつと呟き始めた櫻を見、ようやっと諦めたのかとホッとため息を吐くヒキコモリ魔王





「何が何でも話を聞いてもらうわよ。 その為にわざわざここまでt・・・・・・」

魔王の講釈は突如背後から伸びた巨大な手に掴まれた事によって遮られた。

「嘘っ!? ここは私の領域よ! 出て来れるハズがっ!?」

振り向いた先には櫻の流血より差し出された腕。
魔王を掴みながらも、もがきつつ空間を歪ませてその全貌を出現させようとしていた。

「[光/爆(Shine)]」

上半身を露出させた所で爆光に包まれ、掴んだ手を放してしまうグランゾン。
空中に逃れた魔王に向かい、爆煙を斬り裂いて放電を纏った十字手裏剣が襲う。
装甲の焦げたグランゾンの背後、影よりヒュッケバインMK‐Ⅲが飛び出した。

周回してきたファングスラッシャーを空中で回収したMK‐Ⅲは、地面にうずくまったままの櫻の脇に着地。
その足元より鋭爪の手が櫻をすくい上げ、四本腕のジュデッカが浮上。

口元には鮫のような笑みを浮かべた櫻を見た魔王が再び[光/爆]を放つ。
が、ジュデッカの肩に居たアインが三重展開したブロテクションを二枚抜いたが阻まれた。

「・・・・・・なる程、『私』の領域ね?」

「なんですって?」

「さっきは否定したけど、・・・・・・『私は貴女、貴女は私』だとすれば簡単な事じゃん」

「真逆、一度否定した私を受け入れたと言うの? 貴女にとって自分が重要だったはずじゃないっ」

「『生きる為』に手段は選ぶものか、生き汚くてもソレが最良なら選択するだけだ! 来い我が眷属ども!!」

ジュデッカが掲げた手の上で、更に櫻が天に伸ばしたその背後の空間に無数のひび割れが走る。
内側から外側へぶっ壊すように虹色の噴射炎を曳いて獣の顎が飛び出した。

周囲の空間へひび割れを広げながら内側は真っ暗闇、そこに赤や黄色や青や緑の双眸が無数に灯る。

「いや、ちょっと待て! だから話・・・・・・ってえええッ!?」

回転しながら直進してきた獣の顎を紙一重で回避、したところに火の鳥が突っ込んできた。
六角形を三枚合わせた盾が出現。 斜めに構えたソレが火の鳥の軌道を火花を散らしながらズラす。

「ヒキコモリ魔王を叩き斬れ! ダイゼンガーッ! ヴァイサーガ! スレードゲルミル!!」

闇より刀やら大剣やら斬艦刀やらを構えた鎧武者と黒騎士と羅刹が飛び出して、蝿を追い回すがごとく魔王を追い回す。
櫻は忌々しそうにビル街を見渡すと、次々と闇の中へ命を下す。

「『私』のくせにこんな所に引き篭もるから歪んだ考えを持ってしまうのよ」

「待て待て、貴女だって親から貰った大切な体に機械とか埋め込んで、申し訳ないと思わないの!?」

「・・・・・・・・・(ぴきっ)」

「・・・・・・あ、なんか凄い嫌な予知が・・・・・・」


三体のPTが振り回す剣激をひょいひょい避けつつも、唯の同一人物上で口喧嘩をするカオス空間が広がっていた。

その背後では、滑らかな曲線を持ち、緑と白ともつかぬ生物的な容姿を持つ巨大戦艦ヘルモーザ・エハッドが出で、街を爆撃。
漆黒の堕天使とも言うべきアストラナガンがアキシオンキャノンを放ち、ビル街の一角を地面もろとも消失させ。
悪魔じみた有機的なシルエットのディス・アストラナガンは、メス・アッシャーであちこちの地面を穿つ。
ジガンスクードはギガ・ワイドブラスターで、一直線な傷跡を描くようにビル群を崩壊させる。

細長い首と四肢、複数の節をもつ翼、灰色にうごめくぼろ布のような翼幕を持つ巨大な起動兵器ケイサル・エフェスも出現し、
一撃づつがとてつもない破壊力で、都市の外苑部から無残にも消し飛ばしていく。


「ああああ貴女に・・・・・・あんな親を持ったあ、私の苦悩がああああ、解るかあああああああっ!!!

ブチ切れた櫻が理性を捨て、能力のタガを解放。
空間がはぜて艦隊が吐き出された。 ぶっちゃけるとゼ・バルマリィ艦隊である。
物凄い量の弾幕がビル街のみならず辺り一面に降り注ぎ、セプギダンが落下。
回転しながら箱庭都心大地を砕き割った。

ジュデッカに抱えられた櫻がヘルモーザに退避された後。
スレードゲルミルらがヒキコモリ魔王を残し離脱。

龍虎王と真・龍虎王が力任せな龍王移山法を行使。
砕き割られた半分の大地を、残った遺跡側に叩き落とした。


そこへ、ディス・アストラナガンがアイン・オフ・ソウルを、サイバスターがコスモノヴァを、
ネオグランゾンとグランゾンが、縮退砲とブラックホールクラスターを撃ち込んだ。




















    ◆  ◆  ◆   ◇  ◇  ◇


高エネルギーの圧縮四連撃からの爆発により、塵の漂う虹色の隔離空間と成り果てたヒキコモリ魔王の元居城。
無数の艦隊と無数の機動兵器が漂う中、櫻はジュデッカの掌の上で青い光球に説教を喰らっていた。

「いい? そもそも私はねえ、争うなんて一言も言って無いのになんですかこの所業は!」

「・・・・・・はい、申し訳ありません・・・」

この青い光球がヒキコモリ魔王の本体であり、本人そのものであるらしい。
果てしなく長い生の中で肉体は失ってしまったとか。
それでも先程まで彼女の姿は本来の形だったとか、厳密に言えばゴーレムの様な物で仮初の体だったと。

確かに戦闘力を奪うために腕切り落としたり、つい売り言葉に買い言葉で酷い事を言ったりもした。
ヒキコモリ魔王が対の櫻をココへ呼んだのは、元々話し合いと頼みたい事があったからだという。

「何回も話をしたいと言ったのに、全く聴く気も無くウチをこんなに綺麗にしてくれて。 小学校の通信簿に『人の話はちゃんと聞きましょう』と、書かれた事は無かったの!?」

「・・・・・・返す言葉もありません・・・」


完膚なきまでに箱庭都心大陸(浮遊島)を破壊し、我に返った櫻は傍に控えたアインに、
『なにか話を聞いてくれと言っていましたが?』と諭され、ヒキコモリ魔王を探したところ、塵芥となった空間で、未だにスレードゲルミル&ヴァイサーガに追い回されていた。
慌てて止めさせ、反撃しなかった理由とアインの注進を切り出したところ、愚痴から始まった説教になったわけだ。

それでもしなびて項垂れている櫻に溜飲が下がったのか、クスリと笑う(様な気配)。

「ま、いいわ。 ここは元々強固に繰くってあるから。 時間が経てば元に戻るでしょう」

「戻る!?」

「それで主に頼み事とはなんでしょう?」

話が進まないのに痺れを切らしたアインが話を元に戻す。

「あーそうだった、そうだった」

「忘れるな『貴女』」

「人の事言えないでしょ『私』?」

似たような性格だと理解した櫻の従者が長いため息を吐くと、ジュデッカの指先がアインの肩を軽く叩く。
無表情なので良く分からないが、どうやらなだめているつもりらしい。

「話なんだけど他でも無い。 そろそろひとつに戻りましょう『私』」

「ひとつに? 「そろそろ」? それはどうして?」

「たぶん私の方が精神系を担当してる分、そちらに記憶は無いのでしょうけれど。 遠い昔、私達はひとつだった。 同一人物だったが、それが何かの要因で二つに分かれた。 戦争で負けたか、自分に課した遊戯かは解らないけどね」

「ひとつになったらその記憶が戻るって事?」

「それは戻ってみない事には解らないわ。 どうせ人格の統合だって100年や200年で終わるとも思えないし」

「質問をよろしいですか? 主のドッペルゲンガー」

「どっぺるげんがーって・・・・・・。 何よ?」

あんまりなアインの呼称に恨みがましい目線(だと思う)で櫻を睨む。
こればっかりはどうにもならないと、肩をすくめることで答えを返す。

「先程から『ひとつになる』ことは随分貴女がないがしろにされているようですが?」

「そう言えば、どちらが主体とは言って無いね。 『貴女』が表?」

「いや、自分は裏でゆっくり『私』に融けさせて貰うさ」

「何故? 『貴女』の方が年長なんでしょ、どうしてそんなに消えたそうな事を言うの?」

櫻の怒った表情を見、苦笑い(の様に見える感覚)で返した魔王はポツポツ語った。
ヒキコモリになった理由は人に会いたくなくなったとか、人の心の醜さに直面するのが怖くなったとか。
裏側から能力アドバイスくらいするだけで、配下も能力も全て櫻に委ねると。

「じゃあ、私が人形を作る。 私のデフォルメしたやつ。 それに意思をコピーして一緒に居よう」

「あ? いやいや、私は独りのほうが気楽・・・・・・」

「孤独で居るから『人は醜い』だとか対人恐怖症になるのよ。 一緒に居れば楽しいよ」

魔王は助けを求めるようにアインを見るが、彼女はクスリと微笑んで櫻に賛同をする。

「そうですね、あそこは騒がしい。 誰か増えればやかましいでしょう」

櫻は青い光球を抱くように胸に包む、諦めた感じのある魔王は覆うように彼女の体を青い光で包んだ。

 『私の能力でまずは腕の再生だな』

「その後は、ちょっと行きたい所があるんだ。 付き合ってくれる?」

 『貴女の好きにしなさいな。 行動の決定も貴女が主体なのだから』

「相談くらいは乗ってよね。 ま・・・・・、そう言えば人だったときの名前は?」

 『・・・・・・魔王って名乗りたいけど、嫌な予感がするからやめる。 つばき、平沢 椿 よ』

「これからは、巳子神・H・櫻=椿とか名乗るべきかな?」

 『なんちゅー語呂の悪い。 やめなさい』

「あははは~。 これからよろしく椿」

 『こちらこそ。 ・・・櫻』





















    ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇


その日の朝食当番であるキョウスケ・ナンブは起きだした直後、廊下に違和感を感じた。

「・・・・・・? 気のせいか?」

妹が居なくなってから二カ月程が経とうとしている。
あれは兄弟にも気がつかないうちに、家の中を細かく掃除していたらしい。

今の家の中は気が付けばブリットかキョウスケが掃除するくらいであの頃よりは汚れていると思う。
それが今朝は何か輝きが違うような気がして、階段の手すりに手を滑らせる。

うっすらとした埃も感じさせぬ滑らかな手触り。

「なんでこんな急に?」

訝しげなキョウスケの嗅覚が、階下から漂ってきた懐かしい匂いを捉えた。
慌てて階段を駆け下りるのももどかしく、ひと跳びに一階に到達。 リビングへ駆け込んだ。

「ふぇ?」

そこには見慣れた小柄で髪の長い後ろ姿が、小皿で味見をしながら後ろを振り向きキョウスケと視線を交わす。

「あ、おはようキョウスケ兄さん」

のほほんとブランクがあると思えぬ普通の対応に、キョウスケは脱力感に包まれた。











    ◇ ◆ ◇ sakura side ◆ ◇ ◆


「で、なんで私は正座させられているんでしょう・・・・・・?」

つーか、また正座かよ。
朝からと言うよりこっちの世界に戻ったのは夜中だったけど。
掃除して、いや掃除したのは小妖精(ジーニ)だけどさ。

ご飯作ってたらキョウスケ兄さんが駆け込んで来て、人の顔見るなり信じられねぇって表情で脱力。
その後「こ、この馬鹿者―っ!」て殴られた。

あぶねぇ、ついウッカリ反撃してすっ飛ばす所だったぜ。
いやー、条件反射って怖いねえ。 



現在リビングにはゼンガー兄さん、無言で腕を組み目を閉じて威圧感振りまいてる。
キョウスケ兄さんも無言、こっちを睨みつけたまま。
ブリット兄さんも腕組んで無言、額に青筋が浮いている。

アクセル兄ィは笑顔だか目が笑ってない。
アリィちゃん。私の首を絞めるかのように抱きついて「心配しましたの―」と、号泣中。

・・・・・・いやー、帰って来たって気がするなあ。
 
 『帰って来た本人がそれぇ?』

別の世界でこのメンバー会ってるからね、あのときは感動より戸惑ったから。
私の中、なんかソファで寛ぎながらTVで外界を観るってイメージがある椿が呆れてる。



アリィちゃんが泣き止んだ頃に、裁判と言うか詰問が始まりますた・・・・・・。
「不良妹の二カ月間無断外泊について」とか、こっちじゃ二ヶ月しか経ってないんか。

「連絡無しで居なくなって今まで何処に行っていた?」

ゴゴゴゴゴッと迫力を背負った家長であるゼンガー兄さんの口火に、全員が一斉に質問をしてきた。

曰わく「手紙はどうやって送って来た?」だの。

曰わく「寝泊まりはどうしてた?」だの。

曰わく「仕事場で苛めにあって逃避するならケジメをつけろ」だの。

 『仕事?』

むう、そう言えばユーゼスとか怒ってるだろうなあ。無断欠勤だよ・・・・・。

 『社会人だったの!?』

そうそう、こっから吹っ飛ばされたの20歳の時だったのさ。
ほぼ便宜を図ってもらっての入社、アリィちゃんと一緒に。 社長秘書とかだったけどユーゼスにすげえこき使われた罠。

「聞いているのか、櫻!」

「あー、はいはい」

仕方なくここから飛ばされるハメになった理由と、その他諸々の経過を経て見た目そのままで神格位を得たことまで暴露してみた。
名実ともに最強チートの称号を手に入れた!

いや、知識はあるけど魔法を使用してないので実際に使用したらどんな違和感があるか判らないのとか。
どうやら融合した影響でステータスとかが底上げされてるみたいなので、慣れる必要があるとか。
問題が山積みなのよこれ。


「・・・・・・判った。それでお前はどうしたい?」

 『理解早っ!?』

一回ゲシュンペスト見せてたはずだからね。

「別の所で家族が待ってるんでそっちに帰りたいんだ。 私は生まれ故郷のココも大事だけど異世界に点在している家族も大事。 どれが一番とか比べられないけれど・・・・・・」

「相変わらず櫻の優先度は家族が高いんですのね」

横からしっかりとアリィちゃんに抱きしめられた。
ブリット兄さんはためらいの表情で人の頭をぐしゃぐしゃにしてくれるし。

「結婚式の招待状くらい出させろよ・・・・・・」

「は・・・?」

なんですとぉ~?
私の居ない二ヶ月の間にいったいどんなドラマがあったんだろーか。
アクセル兄ィによると来月結婚式だそうな。

私もあんまり長い時間此処に居られないしなあ。
留まる事は出来るのだが生まれ故郷のココだけは妙に世界の反発が強い、おそらくもう少し離れて緩和しないと滞在するのさえ億劫だ。

 『時差の問題もある、他の世界との差異がどの程度影響してるのかもわからないからねえ』

そうね・・・・・・。

「おめでとう、ブリット兄さん。 クスハ義姉さんにもよろしく言っといて」

「ああ、時間があったらたまには遊びに来い」

「うん。 ・・・・・・アリィちゃん、ユーゼスとかに説明宜しく」

「解りましたの」

最後にキョウスケ兄さんとゼンガー兄さんに軽く抱きついておく。
二人とも頭をぐりぐりっと撫でて、背中をバンっと叩いてくれた。

「行ってこい」

「偶には顔を見せろ」

「うん、いってきます」

ふわりとその場から浮かひ、足元に丸と三角四つの魔法陣。

 『今回は私がナビゲートするが、次は自分でやりなさいよ』

あいあい。 さて、帰ろ。

















    ◆  ◆  ◆  ◆  ◆  ◆


光の柱に消えて行く櫻を見ながら、アルフィミィはボロボロ涙を零し、アクセルが胸に抱え込んだところ再び泣き始めた。
ゼンガーは無表情のままリビングを後にし、キョウスケはソファに深く座り込むと深々と息を吐いた。
アクセルはひとりきょとんとしたブリットへ苦笑いを向けた。

「残念だったな。 晴れの舞台を見てもらえなくて」

「あ、ああ・・・・・」

兄達の行動が理解できていないといったブリットの表情に、アクセルは肩をすくめた。

「今のが櫻の嫁入りみたいなものじゃないのか? ・・・・・・これがな」

「・・・・・・は?」

「あとは自分で考えてみろ」

突き放す言動に首を傾げたブリットだが、嫁であるクスハに相談したところ。

「この世界から巣立っていったんじゃないのかな?」

と、言われ真相に気付くまで五日掛かり、なおかつ真っ白になったと云う。






















(あとがき)
思ったとおりに会話だらけになりました。
王道テンプレ・・・orz


コレにて外伝終了。

次はそのまま「ネギまモード」続きます。
主人公が完全態になったので、やっと【二部】と言えますが。

しかし、この先は終わりまで考えて無いわ、どうしよう・・・。

一部修正いたしました、全体的には変っていません。



[7259] 外伝 番外編
Name: C-K◆ae02f8a5 ID:27ec9c7b
Date: 2010/02/12 00:54
※注:キャラが把握しきれて居ないと思うので、違っていたらごめんなさい


















目を閉じて集中していた体操服姿の少女は、やおら中天に右手を掲げ、声高らかに命令を放つ。

「いでよ! ・・・りゅ~おーきっ!!」

彼女の足元の影が校庭のトラックを覆うまでに広がり、
波紋を打つように波立った闇の底より一対の羽根をもつ蒼い龍が浮上した。

頭頂部から尻尾の先まで32mはあり、四本の脚で立つ巨大な龍だ。

校庭のあちこちから感嘆とも悲鳴ともつかぬ黄色い声が響く中、
置物のように動かぬ龍の周りに白衣を着た大人が群がって測定を開始する。

「格納物体約96.7トン、出現完了まで18秒。 ・・・・・・評価レベル3」

はふ、と息を吐いた少女が手を振ると、出現した時の逆再生で波を立て影の中に沈んで行く龍。
その際には未だに影の上にある測定機器や、研究員達はまったく影響を受けぬままに。

つい先程まででっかい水柱が立ち上がっていたプールのある方を見、
校庭で文字通り跳んだり跳ねたり、器具を動かしている同じ服装の少女達を見て呟いた。

「・・・変な世界・・・」

















★ 外伝 番外編 『とある日々』




















ある喫茶店にて。
窓際でオレンジフロートをつつき、少女はボケっとしていた。
髪は首元で青いリボンに留められているが、座席でとぐろを巻くくらいに長い。

四人席で同席している二人の少女達を眺めながら、はふ、と再びため息をついた。

過剰とも言えるじゃれ合いで、他の客の注目を浴びていた二人は、
窓際の少女をきょとんとして見つめ、顔を見合わせた。

「どうしました? 櫻さん、具合でも悪いとか?」

「無理に私達につきあわなくてもよろしいんですのよ?」

窓際に座る同じ学園の最上級生。
にしては二人よりはやや小柄な身長の少女、巳子神櫻は苦笑いでなんでもないと手を振った。

「ごめんなさい、ちょっと考え事があって。
 心配してくれてありがとうね。 美琴ちゃん、黒子ちゃん」

「それならいいんですけど・・・」

「何かあったら相談くらい遠慮なく仰ってくださいまし」

「うん、その時は遠慮無く。 ありがとう二人とも」

内心『できるかああっ!!』と絶叫したい気持ちを封じて、外面笑顔で対応する。
突発的状況対応に慣れてしまった自分環境に諦める櫻だった。











彼女がこの世界で暮らすようになって数年になる。
前の世界を去った記憶がまだ新しいまま、気が付けば4LDKの部屋で独り立ち尽くしていたのだから。
しかし、そこには自分の他にもう一人の自分が居たが、二~三言葉を交わすと煙のように消えてしまった。

途方にくれるまでもなく、自分の置かれた状況を確認した櫻は、
ここが人間の能力を研究する機関が作り出した、学園都市だと理解した。

しばらくは都市内を観察しつつバイトなとをして過ごしていたが。

ある日自宅に全ての書き込み終了し、後は確認提出するだけの編入書類が届いた。
返信用封筒に入れて送り返した後は、立派な学生になっていたというわけである。













「お友達を紹介してくれるとかいってたけど?」

「ええ、こっちに招待したので、これからくるはずですの」

「あ、中に入ってくるのね」

学舎の園と言われる、常盤台中学他五校のお嬢様学校を有するこの学区は、
出入りが完全に管理されていて、外からの訪問者は、中の生徒に招かれねば入って来れないシステムである。

「面倒なシステムよねぇ。 出入りなんかどうでもいいじゃない」

「管理されているとしても、子供を見えない所で心配する親はいるものよ?」

窘めるように優しく笑顔を向けられて、バツが悪くなった気がした御坂は素直に頭を下げた。

「さて、そろそろ時間ですわね」

手帳を閉じ、席を立った白井を先頭に喫茶店を出た三人だったが、
少しも進まぬ内に櫻が後輩数人に呼び止められた。

「ごめんなさい、先に行っててもらえる? 後で連絡するわ」

頭を下げてお礼を述べる子に手を振って困ったように笑いかける櫻を見ながら、御坂達はその場を離れた。

「相変わらず下級生に人気なんだね、櫻さん」

「ファンの子達に辟易してるお姉さまと違って、親身になって相談に乗って下さいますから」







そのまま待ち合わせに向かった二人だが、佐天がびしょ濡れで現れたことから、
シャワー室に行き、着替えを済ませた頃にやっと櫻が合流する運びとなった。

「ごめんね、あの後沢山捕まっちゃって・・・」

あと預かりモノといって渡された封筒にゲンナリする御坂。

「・・・櫻さん・・・」

「ああ、ごめんなさいね。
 でも美琴ちゃんは一言でも返事はしよう、有名税みたいなものだしね」

さっきは持っていなかった紙袋を抱えた少女は佐天達に目を向けると、笑顔で頭を下げた。

「こんにちは、巳子神櫻と言います。 よろしくね」

「あ、う、初春飾利です。 よろしくお願いします」

「・・・佐天涙子です」

つられるようにペコペコ頭を下げる二人に小さく吹き出した。

「そんなに畏まらなくてもいいのに」

「いや、櫻さんの雰囲気は上級生のそれを越えてると思います」

「おばさんだと言うのね。 美琴ちゃん酷い」

実際精神年齢は此処に居る少女達の六倍以上なのだ。 おばさんどころかすでに老人である。
慌てておばさん発言を否定する御坂に、その場にいた皆が笑みを浮かべた。


佐天の持ち込んだ雑誌に載っているケーキ屋へ向かい、
店頭で悩みに悩んでいる初春を見ながら、櫻は苦笑いを浮かべた。

「今度は私が招待してあげるから、また来て違うのを頼めば?
 それか言ってくれれば、私が中で買おうか?」

「良いかもしれないですが、そこまで迷惑をかけるものでも・・・」

言いながら、ショーケースから目を離さない初春に、白井は呆れていた。
程なくして、初春達に風紀委員から出動要請があり連れ立って行ってしまう。



「慌しいなあ・・・」

「涙子ちゃん、私がテイクアウトで幾つか見繕うから、後で飾利ちゃんと分けてね」

「え? 悪いですよ、そんな・・・」

「佐天さん、櫻さんはいつもこうだから、遠慮すると押し付けられるよ」

諦めた顔で肩をすくめ、御坂は笑顔で店員に注文をする小さい先輩を見た。



一通り注文し、花摘みに立った佐天を待つ間、櫻と御坂は会話を楽しんでいた。

「困るものではないけれど、多いのも考え物かな?」

話題は櫻の持つ紙袋である。
中にはラッピングされた手作りのクッキーや、有名店のチョコレート等が幾つか入っていた。
お礼として一人ひとつづつくれた物ではあるが、
持てなくなったのを見かねた付近の女生徒が、紙袋をくれたのだ。

「櫻さん一人で食べられるんですか?」

「同居人もいるからね。 手伝ってもらってなんとか・・・」

櫻自体は学舎の園内外にある常盤台指定の寮でなく、普通のマンションに住んでいる。
最初に居た所なのだが、寮に移らなくても問題は無いらしい。

この辺本人も後で知ったのだが、彼女の存在自体が都市内で特別扱いになっていて、
本人すら知らないところで、情報規制が敷かれていた。

同居人というのはもちろんアインである。
この頃は家事も完璧にマスターし、櫻専属のメイド化していた。

「佐天さん遅いなあ、紅茶冷めちゃうよ・・・」

「確かに遅いね、トイレの中で貧血にでもなった・・・・・あれ?」

「どうしたんですか?」

「ああ、ちょっと気のせいだったかも・・・見てこようか」

「それなら私が行きます。 櫻さんはココに居てていーですよ」

すぐに戻ってくると思った櫻だったが、仰天した御坂の声が聞こえて慌ててトイレに向かった。















   ◆  ◆  ◆  ◆  ◆


「常盤台狩り?」

あの後倒れた佐天を運び込んだり、養護教諭を呼んだりとばたばたしていたが、
連絡を入れた白井達が来る頃にはようやく落ち着いて、事件のあらましを聞くことになった。

風紀委員室にあるノートPCの各被害者の供述などを見ながら、
事件の犯人について各個考察する中、櫻は納得したように手を叩いていた。

「あ、じゃあさっきのがたぶんそれだわ」

「はあ?」

白井が意味が解らないと疑問符を飛ばす中、説明が難しいんだけど、と前置きをして櫻は続けた。

「さっき涙子ちゃんを待ってるときに、トイレから見えない人影が店の中を通ってね。
 なんだろうって思ってたんだけど・・・。 ソレが犯人だね」

「見えない人影って・・・、巳子神さんは何で見えないと解ったんですか?」

初春の疑問に御坂と白井も「あ!」と気付く。

「そこのところが説明が難しいところなんだけどね・・・。 私の能力の副作用っていうか・・?」

「巳子神さんの能力って・・・?」

初春はすばやくノートPCを操作し、名前検索から個人能力データを引っ張り出す。
すぐさま提示された個人データには【影倉庫(シャドウコンテナ):LEVEL-3】と記載されていた。

「あれ? 櫻さん去年はレベル4じゃなかったんですか?」

コレに疑問を挟むのは、知り合いになって長い御坂である。
当人は頬をかきつつ、苦笑する。

「あー、今年はちょっと大人しめだったから。 去年みたいなのはまず無いかと・・・」

「おとなしめって・・・。 あれでですの!?」

同じ校庭で測定をしていたため、白井は出現した龍をばっちり見ている。

「去年は校庭にビルが生えて、大騒ぎになったじゃないですか」

「測定してた人に『もっとデカイのはないの?』って聞かれたからつい・・・」

普通の会話になってしまったため、初春は疑問も含めて再質問にした。

「それが何で副作用なんですか?」

「おとと、脱線しちゃった。 ごめんなさいね。 私の能力は影の中に機械類を格納することが出来るの」

これを聞いた白井は龍を思い出して「アレが機械!?」とか驚いていたが。

実際のところはまったく違うのだが、この世界での櫻に対する認識は《能力》と言うことになっているため、
ひとつに限定し、影を倉庫にして格納する、ということにしてある。

「それで、中にある機械の能力を幾つか使えるんだけど。
 センサーみたいなものが、常に視界をサポートしてくれるのよ。
 それで今回は、動体センサーと熱源センサーで、人の気付かないものが見えたわけ。 解った?」

櫻の説明で、頬杖を付いて考え込んでいた御坂が呟いた。

「センサーと監視カメラに映ってて、人には気付かない・・・、・・ッ!!
 初春さん! ちょっと調べて欲しい事があるんだけど?」

「はい?」








御坂の機転から【ダミーチェック】能力を持つ重福なる人物を特定はしたが、
データ登録ではレベル2だったため、当てが外れて皆が落胆したときだった。
気絶していた佐天が目覚め、倒れる前に鏡に映っていた者と重福が同一人物だと判明した。

まゆげが太めに描き足されている彼女の顔に、皆が含み笑いを隠せてないが・・・。

「・・・ップ・・くくく・・・」

「初春! 笑いたきゃ笑え!」

「いや、みんな・・・。 涙子ちゃんだって好きでこんなになったわけじゃないんだよ?
 ・・・笑ったら失礼でしょう・・・」

「巳子神さんはどうしてこっちを見てくれないんですか?」

「・・・笑ったら失礼でしょう?・・・」

大事なことなので(ry
ブチキレた佐天が風紀委員をも動かす原動力になろうとは、誰も想像して無かったとかあったとか。













「へえ・・・」

「なんかすごいね・・・」

「こうでもしないと、ここにある端末じゃ処理が追いつかないんです」

ノートPCにパソコンを数台繋げ、もの凄い勢いでプログラムが流れていくさまを見ながら、
櫻をはじめとする佐天、御坂は感嘆していた。

白井は上層部に、自分達の管轄街区である学舎の園での捜査権を取り付け、
初春が限定した区域内での監視カメラを、全て手の内に納めたところで犯人確保に乗り出した。

「この区域内に2000個もあったんだねえ、監視カメラ・・・」

「まがりなりにもお嬢様学区ですからねえ・・・」

















   ◆  ◆  ◆  ◆  ◆


あっさり特定され、佐天、白井が各個追い詰める中、
ある角を後ろを気にしながら曲がった重福は、硬い壁に激突し、後ろにひっくり返った。

「・・っつぅ~、な、なんでこんなところに壁・・・」

「あらあら~、前を見ないと危ないですよ?」

心配する声が聞こえる中、目の前に鎮座するソレを見上げ、認識した重福は唖然とした。
常盤台の制服を着た髪の長い少女が座っている、それはいいとして。

紺とも灰色ともつかない金属の光沢、左右に大地を踏まえる蛇腹のような無限軌道、
動体上部に360度回転する二門砲塔を持つ戦車がそこに居た。
少女が座るのは、乗員搭乗口のある回転基部である。

軋む音を立てて砲塔が下を向く。
車体後部もろとも浮き上がり、ぴったりと照準を付けられた重福は必死の表情で起き上がり、
悲鳴を上げて姿を消すことすら忘れ、逃亡した。

「うーん、ちょっと脅しすぎたかな?」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

首を傾げ、影に沈みつつある戦車の上で呟いた櫻を、佐天が引きつった顔で見ていた。
















「電気使いにスタンガンとはお粗末な結末で・・・」

ベンチに寝かされた加害者のはずな少女に手を合わせる櫻。
太い眉毛が理由の失恋騒ぎから発展した逆恨み、と言う犯行動機に呆れるも同情的な面々。


事件解決後に櫻は手提げ小箱を二人に渡した。

「「え? なんですかこれ?」」

「え、ケーキ。 あのお店の奴だけど、主観で三つづつ適当に選んだから
 好みが違ってたとしても恨まないでね?」

「「あ、ありがとうございます!」」




夕日の沈む中、柵川中学組と分かれた常盤台組だったが、
櫻が眉をひそめているのを見て、御坂が疑問を口に出した。

「どうしたんですか、櫻さん。 佐天さんたちに何か心配事でも?」

「うーん・・・。 涙子ちゃんあれで元気出してくれるかなあ・・・」

「大丈夫ですよ。 チーズケーキすごい楽しみにしてたみたいだし」

「いやね・・・、あのインク明日も消えてなかったら、彼女ショックだろうな、と思って・・・」

「消えないんですの?」

「そんな気がするんだけど。 あの子どっから手に入れてきたんだろう?」


その予感は次の日に判明されることになるのだが・・・。
櫻がソレを知るのは、数日後となる。


































(あとがき)
病んだ精神の主人公に引かれて心が辛くなったので、びふぉー版主人公です。
資料が少ないのでかなり個人個人が適当に・・・。
「この人はこんなんじゃねえっ!」と言う方もいらっしゃるとおもいますが、寛大な心で見逃してください。

音(NPC)様、とある編このようなものでどうでしょうか?

主人公はこの世界で渡るのは四つ目です。



[7259] Act.0
Name: C-K◆ae02f8a5 ID:27ec9c7b
Date: 2010/03/25 21:41
※ 捏造設定や自己改変部分があります。 ご注意ください。









○月△日 10時20分
第七学区商業エリア路上にて爆発事故発生
爆発の原因は不明、LEVEL-4能力者クラスによる爆発規模と断定
平日昼間だった為、負傷者は軽傷が二名、死者は無し


同日 10時30分
アンチスキル到着後、爆発現場近辺で不審な人物を拘束
学園内職員及び学生に人物の該当無し、侵入者と断定
不審人物は重症の為、アンチスキル監視下の中、病院へ搬送

周囲の聞き込みの結果、現場から走り去る人物が居たと情報アリ
最重要危険人物として学園都市内に緊急指名手配




○月▽日 16時10分
事件から二日後、不審人物の意識が戻る
事情徴収により名前は判明、しかしそれ以外の背景が全く不明


同日 20時10分
学園都市上層部より不審人物の身柄全権を預ける保護人物名が通達される
当該人物を検索するも当人は学園都市内中学を卒業後、学園を去っていた事が判明




── ある警備員の報告書より抜粋 ──



























★★ 【二部】スパロボ的な何か Act.0 『 とある学園の事件簿 』 ★★





















いやいや、たしかにナビゲート任せたよ。
だからひとッ飛びで麻帆良着くのかと思ったら、いきなり長閑な田園風景とはなんですか?

そこで正義の使者、守護巫女に見つかったよ。
追っかけまわされてからスキマ妖怪に宴会に誘われたよ。

なつかしい顔ぶれに酒が入って、騒がしい宴会になったからってさー。
いきなり1vs8で弾幕勝負とは何ですか。 いじめですかそうですか・・・・・・。

おかげで姉さんに挨拶もそこそこに、世界を急遽辞すことになったけどさ。





それでもって軌跡だけを頼りに跳んだものだから、ついた場所が薄暗い部屋。
閉じられた雨戸、見た事のある間取り、引かれたカーテン、覚えの有る空気の匂い、テーブルの上に置かれた古ぼけた封筒に入っていた部屋の鍵。

「・・・・・・学園、都市?」

   『そのようね、たぶん』

「・・・・・・アイン、出て来てくれる?」

「何用でしょうか? 主」

部屋の明りをつけて際立った私の影から、アインがずむむむーっと姿を現した。
アインを呼び出して確認させる。 この部屋に一番馴染み深いのが彼女だしね。


「ええ、確かに。 学園都市で暮らしていた部屋ですね」

「うーん、だとすると麻帆良跳ぶまでこの部屋使っていいのかなあ? ここを去ってどれくらいの年月が過ぎたのか」

「申し訳ありません。 去った日付までは覚えて無く・・・・・・」

肩に姿を現した五分の一スケール自分人形椿が、手を振りつつ電話機を指差した。

   『アインの謝る事ではないでしょう。 櫻、電話を今から言う番号に掛けなさい』

「はいはい。 何々、ゼロのよんきゅうぜろの・・・・・・」

十五桁の番号にかけて中継所を三カ所経由、しばし待ったのちに合成音声のような響きで相手が出る。

『ヤア、コノ番号デ掛ケテ来ルトハ椿カイ? ソレトモ櫻? 何ニセヨ丁度良カッタ』

「いや櫻ですけれども。 椿、誰よこれ?」

  『便利な相手だと思えば痛くもない腹を探られずに済むわ。 そちらの用事と我らの用件を交換して』

『イイダロウ』

  『こちらの用件は二つ、我等がここを去ってから経過した年月。 後はまたしばらくこの都市に居住する許可を頂戴』

『少シ待テ』

で、無音に。 椿人形に目を向けると肩をすくめて、何も言う事は無いぞとジェスチャー。
知りたきゃー融合した記憶を漁れと言うんだろうけど・・・・・・。

受話器の向こうで唐突に音が戻る気配。

『君ラガ去ッテカラ七十八日ガ経過シテイル。 居住ノ件ハOKダ、ソノ部屋ハ椿ガ永劫ニ買イ取ッタトコロダロウ』

  『・・・・・・そう言えばそんなだったかもしれないなわね』

「おいこら・・・・・・。 それでそちらの用事っていうのは何?」

『簡単ナ事ダ、不審人物ノ身元引受人ニナッテ欲シイ。 コレハ占術系能力者ヲ動員シタ結果、君等ガ最適ト算出サレタ為ダ』

「私等に最適な不審人物って何語よ?」

『身分証ハ直グニデモ届ケサセヨウ。 君等ハ警備員(アンチスキル)カ風紀委員(ジャッジメント)ヘ行ッテクレタマエ』

 『いつも済まないねぇ』

『呆ケタカ婆サン。 在界中ニ一遍顔ヲ出セ』 ブッ!

「・・・・・・言いたい事言って切っちゃったぞ」

  『・・・・・・あんのぉくそがきゃああぁぁ・・・・・・』

そりゃあ椿に対してであれば誰だって曾孫以上じゃん。
それにしても到着した直後に私が必要になる事態が待ち受けているって何ぞ? 作為的なものを感じるなあ。












にしても七十八日?
常盤台卒業してから二カ月ちょいしか経ってないのか。
あちこち時間の経過がバラバラだなぁ。

「アイン」

「はい、私は部屋の片付けなどをしています。 場合によっては不審人物が追加という事ですね」

「私はジャッジメントに行って来る。 多分、カードとかはそのまま使えると思うから」

「判りました。 お気をつけて、主」

そう言えば部屋の中が着地地点だったから土足のままだったね。



















    ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆


数日前の爆発事件での第一容疑者立場の不審人物。
第二容疑者として挙がっている身元不明の荒い写真のみの男性。
こちらは指名手配が掛かり、発見次第捕獲命令が出ている。

一番腑に落ちないのは第一容疑者の身元引受人に、この支部に関わり合いが深い人物名が挙がっている事である。

「白井さん。 ここにある巳子神櫻って・・・・・・、やっぱり櫻さんの事ですよねえ?」

「そうとしか思えませんですのね・・・・・・」

各風紀委員支部に回された通達文書に記されている身元引受人の名前欄を見て、初春飾利と白井黒子は揃って首を傾げた。

問題の彼女は卒業式を終えた翌日から連絡が付かなくなっている。
神隠しにでも会ったようにぷっつりと行方が知れないのだ。

本人の性格から言っても親しい友人、美琴や自分達に挨拶もしないでこの都市を出るとは考えにくい。
学園都市側に提出されている情報には、一身上の都合により転校したとなっているのが黒子達に不信感を抱かせる理由になっている。

「とりあえずは、櫻さまを探し出さない事には何ともなりませんですのねえ」

「それもそうなんですが、あの後も皆で探したじゃないですか。 これ以上何処を探せばいいんでしょう?」

真相は本人が次元移動をしてしまった事にあるのだが、使えるツテを全て使ったとしても探し出せないのは当たり前である。
初動捜査からすでに行き詰った感がある二人は、PC画面を覗き込み盛大に溜息を吐いた。









二人の憂鬱を覆す事象は数分もしないうちにやってくる事になった。
「たのもー!」と言う元気な声と共に、支部のドアが盛大な音を立てて内側へ吹っ飛んだ。

文字通り吹っ飛んだのである。 垂直横移動とも言う。
部屋の中央にまで移動した扉は音に驚いた初春と白井の前で停止し、重力に従い床に這いつくばった。

「あ、あれ・・・・・・? もしかして力加減間違えた?」

聞き覚えの有る声に二人のジャッジメントがドアのあった場所に視線を移すと、見覚えの有る人物が見た事のない制服を着て立っていた。
赤茶けたブレザーにチェックのスカート、膝まで伸びた黒髪は首元の青いリボンで括っただけ。 十人の美少女を並べれば真ん中位と称される美貌。
二ヶ月前に卒業を祝ったパーティで会ったその時となんら変らずの人物。
今まさに議題に上がっていた巳子神櫻、その人であった。

「・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・さ、櫻さ、ん?」

「あー、えーと・・・・・・。 ご、ごめんねー、壊すつもりじゃなかったんだよ。 ただちょっと加減の調整が効かないって言うか。 あははは・・・・・・」

頬をかきつつ視線を泳がす仕草に以前の様なおしとやかさは欠けているようだが、二人には間違いなく懐かしい出会いだった。
前触れも無く白井が櫻の頭上へテレポート。 行き成りの事で動揺する櫻の首根っこへ美琴にするように腕を回す。

「櫻さまあっ!」

「って、うわあっ!? ちょっちょっと黒子ちゃん!?」

「櫻さあああぁぁんっ!」

「ちょっ、飾利ちゃんまで飛びついて来ないでってっ!? えええええっ」

白井までは耐えられたのだがグラついた所へ初春の突進である。 
周囲にあった小物や書類、砂煙などを盛大に巻き上げて三人はもつれるように出入り口付近の床に転倒した。

「お久しぶりでございますわっ、櫻さまっ!」

「もうっ櫻さん、皆探していたんですよ! 一体何処へ行ってたんですか?」

「あー、あはははー。 ご、ごめんねー、さすがに私もコレばっかりはどうにもならなくてねー・・・・・・。 ご無沙汰してるわね黒子ちゃん、飾利ちゃん」

自分の胸や腹に顔を埋める少女二人の髪を梳きながら、弁明の苦しい言い訳を述べる櫻。
ひとしきりスキンシップをはかってから二人は離れて、櫻に手を貸して起き上がらせてくれた。

「何にせよ、櫻さまがこうして戻ってきてくれて丁度良かったですわ」

「タイミングバッチリです。 今ちょっとした事件がありまして」

「うーん、私もね風紀委員か警備員を訪ねてくれと言われてるだけなんだけど。 そもそも不審人物の身元引受人って何?」

「とりあえず詳しい事情をお話いたしますわ。 お入りになって下さいまし」

「お茶を入れますねっ」

「あー、その前に二人とも私に時間を頂戴」

「えっ、何かあったんですか?」

「壊したんだからドアを直すわ」

「「あ・・・・・・・」」


















「・・・・・・・・と言った次第でして、事件を解決しようにも第二容疑者を捕まえるか、櫻さまが来てくれないとどうにもならない有様だったのですわ」

「ふーん、爆発の原因は不明。 能力者の線も薄いと?」

「はい、当時のその時間それだけの爆発を起こせる能力者は皆アリバイがあるんです」

「そりゃ平日の昼間じゃ授業があるでしょーねー」

「事件のあらましは判ったけど、不審人物と私の関連性が分からないなぁ」

「それは占術系能力者による結果ですので、わたくし達には何とも言えませんわね」

「やはりここは容疑者に会うしか無いと思います」

パソコンの前で三人寄らば文殊の知恵とは言い難く、圧倒的に情報が足りなくて各々飛び出すのは憶測ばかり。
初春の言うように会ってみるしかないと腰を浮かせたところへ、二人目の客が来訪した。

「こんちは~。 初春居ますぅ? 変なモノ拾ったんで、相談があr・・・・・・・・・」

「あら、お久しぶりね涙子ちゃん。 お元気そうでなによりです」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「固まりましたね」

「まあ、当然の結果ですのね」

「これから先、会う人会う人この反応なのかと思うと頭が痛いね・・・・・・」



再び頭の下げあいから始まり、場が落ち着いたところで佐天から用件を切り出した。
例の事件現場を興味本位で通り、少し離れた所で拾ったモノを事件の関連性があるものかな? と差し出した。

少し大きめの厚いカード型、中央には円にバツ。
時折その部分が微かに点滅していた。

「なんですかぁこれ?」

「さあ?」

「機械・・・・・・ですのね?」

「んん~? どこかで見たような」

佐天から初春の手に渡ったソレよりも、近距離から脳内に響く弱々しいシグナルが気になっていた櫻。
身内内接続ラインより、今頃は買い出しか掃除をやっているであろうアインへ。
【機神図書館】に無数に存在する機動兵器類よりアインを頼ったのは、シグナルを聞いて浮かんだ直感だけである。

( アイン聞こえる? )

( はい、どうしました主? )

( このシグナルどこかで聞いたことあるかな? )

( ・・・・・・・・・確かに聞いた事はありますが、何故この世界で? )

( は? )

( 管理局規定の緊急遭難信号ですね )

「か、管理局規定ぃ?」

「わぁっ!?」

「ど、どうしたんですかいきなり?」

初春と佐天が驚き、宙に放り投げられたカードを掴み取った櫻はまじまじと見つめて確信した。

「ってやっぱりクロスミラージュじゃないっ! 何でこんなところに居るのよ!?」

《 It is after a long time. Kight.Sukura (お久しぶりです。騎士サクラ) 》

「「「カードが喋ったあっ!?」」」

つい、ここが何処だか忘れた櫻らの会話に三人の疑惑の視線が突き刺さった。

「そう言えば櫻さま。 この二カ月間行方不明で、何処に行ってらしたのですか?」

「そうですね。 連絡が途絶えて私達随分と心配したんですよぉ?」

「私達が心を痛めた分、きっちり話して頂けますよねー?」

「あー、・・・・・・はい」








もうこうなると隠し立てておく事も出来なくなり、細かいところは省いて大ざっぱに事情を説明する。
この世界の人間で無い事と次元をさまよっている事など、この学園都市で公式とされている能力者の定義とは違う事とかも含めて。


「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

「うん、今まで黙っててごめんなさい」

おおよそを話終えて黙り込む三人に頭を下げる。 
非難罵倒は覚悟の上だったが、この世界といえども他の世界でもそうなったためしは一度もない。 
各世界の友人にはお人好しが揃っている。

「え・・・・・・」

「え?」

「SFファンタジーって奴じゃないですかー! すごーい」

目を輝かせて佐天が櫻に詰め寄った。
引きつった笑みを浮かべつつ残った二人を見ると、双方とも特に気にした様子も無く安心感の有る表情でそこにいた。

「ふ、そんなことでこのわたくしが櫻さまを差別するとでも思ったんですの?」

「”私達 ” ですよ白井さん。 これは後でぜひにでも他の世界の話を聞かせてもらわないと」

「あ、・・・・・・ありがとう三人とも」


「ん、でもそうですわね。 その容疑者と言うのも異世界の方なのではないのでしょうか?」

「あ、そうだった! クロスミラージュ、貴方のマスターはどうしたの!?」

《 It got lost (はぐれました) 》 

「おい、デバイス・・・・・・。 と言っても病院に収容されている第一容疑者がティアナであればいいのだけれど」

「それでしたら早いうちに確認した方がいいんじゃないんですか? 案内しましょう」

「うん、お願いね飾利ちゃん、黒子ちゃん」




















    ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆


ティアナ・ランスターは現状を鑑みて途方に暮れていた。
手元に相棒も無ければこの世界の情報もなく、事件に関わっていたものの気が付けば現地の警察機関らしきものに拘束されてしまっている。
何度か脱走を試みたのだが、意を決するとタイミングよく病室内に警備員が入ってくるために抜け出せないでいた。

そもそもこの世界に流れ着いた経緯は執務官補として上司のフェイトとともによくある組織の摘発だった。
順調過ぎるほど順調だった、下っ端が自分だけ逃げるためにロストロギアを起動させるまでは。
フェイトの指示を蔑ろにして先行し過ぎていたティアナが爆発に巻き込まれた後、気が付けばこの有様である。





ノックの後に、何度か見た髪を首元で止めている妙齢のキツい印象を受ける女性が入室。

「待たせたね、やっとアンタの身元引受人が来たじゃん」

「・・・・・・はあ?」

いまこの人は何と言った?
身元引受人? 異世界で? それっていったいどんだけのお人好しか・・・・・・。

かくして女性の後からティアナより年下で制服姿の少女達がぞろぞろ入室し、最後尾が警備員の女性に頭を下げる。

「すみません黄泉川先生、ご迷惑をお掛けしました」

「いや、でも久しぶりに戻った巳子神も災難じゃん」

「そうでもありませんよ。 若い時の苦労は買ってでもしろと言いますし」 『・・・若い?』

「わざわざ苦労を背負い込む必要もないだろうに。 私等は外に居るから何かあったら知らせるじゃん」

「はい、ご足労をお掛けします」

振り返った紙袋を抱えた髪の長い少女を見たティアナは、思いがけない出逢いに言葉を失った。

「ッ・・・・・・・・・・」

「まあティアナどうしたの? 珍妙な顔して固まって」

「相変わらず意地の悪いところは変わっておりませんのね、櫻さま」

「異世界で再会。 運命の悪戯といった感じですねー、うーんすごいなー」

「佐天さん、他人事だからって浮かれ過ぎですよ。 こちらの人に失礼です」

ツインテールとロングと花付きの少女がワイワイと騒がしい中、我に返ったティアナはベッドから乗り出して櫻をまじまじと見つめた。

「ほ・・・・・・」

「ほ?」

「ホントに・・・・・・サクラさん?」

「夜天の書守護騎士メイド櫻、ここに推参。 これ以上の私の証明は無理なんだけどね、ゆりかごでも引っ張り出しましょうか?」

「櫻さんメイドだったんですか?」

「ええ、二百年程前に八神家にお仕えしてたんですよ」

「ぜひ聞かせて下さい!」

「飾利ちゃんはミーハーだねぇ」

「はいはい貴女達、とりあえず二人の会話は邪魔しないようにしませんと。 櫻さま、大まかな事情だけでもお願いしますわ」





手を叩いて初春と佐天を窓際まで下がらせた白井の視線を受けて、櫻は姿勢を正した。

「ごめんねティアナ、色々言いたい事はあるだろうけど何があったか手短に説明をお願いね」

「・・・・・・え? で、でも・・・・・・」

窓際で此方を興味深そうに見つめる三人の少女達を見る。
視線が絡み合った瞬間に戸惑いながら微笑みを向けてくれる彼女等は信用できると思った。 女の勘で。
しかし管理局の執務官が関わるような事件にでもなると守秘義務が発生する。
良心と管理局の使命とも言うべき心情で板ばさみなティアナの手を、そっと櫻が包みこんだ。

「大丈夫よティアナ、あの娘達は信用できるわ。 なんと言っても私の大事な友人達ですから」

「・・・・・・・・・サクラさん・・・・・・」

「それに管理局でなんか言ってきた奴が居たら私に教えてね。 ゆりかごで突っ込むから」

うかつにも胸に来た雰囲気が櫻の黒い笑みで台無しだった。
そういえば六課に在籍してた頃も、普通に会話しつつあの管理局の白い魔王を手玉に取っていた気もする。

ほどよく肩の力が抜けたティアナは、ここに至るまでのあらましを簡単に話す事にした。
後ろに居た少女達も真摯な態度で話を聞いていたが、大体の事情を理解して揃って溜息を吐いた。

「よりにもよって学園都市に入り込むとは、その犯罪者も気の毒ですのね」

「スキルアウトにでも因縁つけられてボコられていなければいいけど」

「LEVEL-5に見つかってぼろぼろに・・・・・・」

「初春、それは流石に冗談になっていませんわよ」

「どう言った意味ですか?」

「ミッドチルダ風に言うと都市まるごと魔導士しか居ない。・・・・・・かな?」

「六割はLEVEL-0ですけどねー。 って、櫻さんがそんな顔しなくてもっ!?」

自虐ぎみな佐天の発言に心配そうな顔になる櫻。
これを見た発言者がダメージをうけ、しどろもどろに言い訳をするはめになる。

白井は初春と幾つかの情報をアンチスキルに渡すことを協議していた。

「だいたいの事情は判りました。 犯人の顔写真でもあればよかったのですが、この際贅沢は言わない事に致しましょう」

「あ、それならクロスミラージュが持っているはずなんですけれど、今手元になくて・・・・・・」

「あ、ゴメン忘れてた。 はい、落とし物」

《 It was safe and good my master (無事でなによりです)》

ポンと渡された相棒を胸に抱いて喜ぶティアナ。
なんとなく複雑そうな佐天がちょいちょいと櫻の袖を引く。

「どうしたの涙子ちゃん?」

「あれってそんなに嬉しいモノなんですか?」

「始まりからとは言わないと思うけれど苦楽を共にしたパートナーだしね。 人間とか機械とか超えた友人みたいな」

「そうなんですかぁ、判ります。 年上でも友人が理由もなく居なくなると探しちゃいますからね」

「まったくもってごめんなさい」

再び頭を下げる櫻に手を振りつつ、気にしないでくださいと苦笑う。

クロスミラージュが映し出した3Dホログラフを、携帯で撮った初春はアンチスキルにも知らせるために廊下へ。
一応犯人の武装具合も尋ねられるが、ティアナの記憶の限りではデバイスの類は所持してないとの事。

病室の窓から見える空に赤いものが混じり始めたのを見て、白井は初春をうながした。

「わたくし達は今日の内に犯人の所在地域割り出しだけでもやってしまいますわ。 支部に戻りますわよ初春」

「判りました、急ぎましょう」

「あ、それでしたら私も・・・・・・」

「いいえ、ティアナはダメよ」

白井達が病室を出るのに追従しようとしたティアナは、強い口調の櫻に押し留められた。

「でもこの事件は私の仕事でっ!」

「管理局法が通用しない世界だから、ここは。 現地の人達に任せる事」


持っていた紙袋をティアナに押し付ける。

「これは?」

「着替え、管理局の制服は多分目立つから。 サイズ的には最後に会った時とそんなに変らないでしょう?」

着替えに関しては移動するときについでに買って来たのである。
お金は丁度買い物等で外に出ていたアインにカードと、部屋に届いていた身分証明書を持ってこさせて。
長袖のシャツにスカートと薄手の袖なしジャケットに着替えたティアナは目を丸くして「・・・・・・ぴったり」と呟いた。

「ふ、そうでしょうそうでしょう。 以前よりサイズプラス1か2といったところね」

「なんでサクラさんが私のサイズを知っているんですか? もしかしてシャマル先生から聞き出して?」

「そんなことしなくても、見れば解るし」

「「は?」」

疑問顔になった二人に簡単な説明をする。
普通の人間と違って櫻の視覚は物を見るだけの機能のみに留まらない。

人を見る場合、唯の視覚として捉えてる場合はいいが、観察という項目を加えるだけで外見から得られる詳細なデーターが脳裏に自動表示される。
身長とスリーサイズだけではなく骨格と肉付きから割り出した体重や、そこから導き出される諸々の詳細なデーターが出るのである。

骨格まで見えるのはX線とは違い人間を透過出来る術を有しているからであるが。 
この技術、本来の用途は医療用ではなく人体破壊用に作られた別世界の攻撃術だったりする。

この発言には二人とも両手で体を抱え、壁際まで後退した。 それを見ながらニヤリと哂う櫻に二人は悪魔の影を見た。

「も、もしかして櫻さん・・・・・・。 詳細なデーターって言うのは・・・・・・?」

「生憎と乙女のばらされたくない赤裸々な絶対領域。 体脂肪率までバッチリと」

耳元でボソっと呟かれた緻密な数値に佐天とティアナは真っ青になって崩れ落ちる事となる。



















    ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆


場所を櫻の部屋に移し、佐天とティアナは談笑していた。
多少の年の差はあれど同姓同士で初見に悪い印象も無く、打ち解けるのも早かった。

もちろん自分の仕事を放り出すようで気が引けていたティアナを、あっさりと説得出来た訳でも無いのだが。

ココが独立権限を持つ学園都市である事、ジャッジメントとアンチスキルという治安組織がある事。
ティアナがデバイスを持ち出しても逆に犯罪者扱いされる可能性がある事、機類上位権限で櫻がクロスミラージュに封印を掛けた事等を佐天と説明。
また、身元引受人として選ばれた櫻に迷惑が掛かる事もあってしぶしぶ納得してくれた。

ついでに部屋に招かれたときにアインに夕食に誘われ、佐天もこの場に居る理由である。
ちなみにティアナの怪我は腕骨にヒビと軽度の火傷くらいだったので、櫻の魔法ですでに完治済みだ。

「アインさんのご飯も久しぶりだなあ~」

「以前にもアインさんに食事を作ってもらった事が?」

「ええ、去年の事なんですけど。 この部屋に来た時はだいたいご馳走してもらってました」

にこやかに会話する佐天と逆にティアナは戸惑うことばかりだ。
ミッドチルダに居た時、アインに会う時間イコール戦闘行為でしかなかったのだから。

「まあ、ティアナが面食らうのも無理は無いわね。 あの頃のアインは戦闘補佐が出番だったから・・・・・・」

二人の前にお茶を淹れた櫻がティアナの疑問に幾らか説明を付け足す。

自分の能力を多用する行為は、その世界に滞在する時間を削るリスクがあると言う事を。
ミッドチルダから急に櫻が消える羽目になったのも、最後のゆりかごフルボッコ戦の大量召喚が原因だ。

そこから幾つかの世界を経由する度に実験をしながら旅をしてきた。
学園都市に在籍していた期間中、アインを常時出現状態にしておいたのもその理由である。 実際は三年も持たなかったのだが。

「今は紆余曲折を経て完全体になったので、いきなりすっ飛ばされる事も無いけれど」

「そういえばどうしてサクラさんはここに? はやてさんに会いに行くとかしなかったんですか」

「ああ、ティアナには説明してなかったね。 今は今の家族の元へ帰る途中でねー、迷子なのよこれが。 次元世界を身一つで渡るのも楽じゃないって事」

そこへアインがキッチンから現れ、テーブルの上に皿を置く。 皿には湯気を立てて野菜たっぷりのカレーが盛られていた。

「すみませんお待たせしました。 まだ少し片付いていないのでカレーくらいしか作れなくて」

「ご苦労様、ひとりでやらせてゴメンね」

「いえ、お気になさらず、主」

見事な主従ぶりに佐天がにんまりと笑う。
アインも同席し四人でテーブルを囲んで食事にする。

「それでティアナさんはこれからどうするんですか?」

「・・・・・・え?」

今始めてその問題に直面したように虚を付かれ硬直するティアナに佐天も面食らう。
聞いちゃいけない問題だったかと俯くと、櫻に肩を優しく叩かれる。

「涙子ちゃんが気にする事でもないでしょう? 間違った事言った訳じゃないんだから元気だしなさい」

「あー、はい。 変な事聞いてごめんなさい、ティアナさん」

「いえ、目先の事しか見てなくて帰還まで考えていなかった私に非があります。 佐天さんは悪くありません。 ・・・・・・それでサクラさん?」

「むぐっ、・・・・・・ん、なあに?」

「ここからミッドチルダまでは帰れると思いますか?」

スプーンを咥えたまま思案した櫻は、アインと顔を見合わせると気の毒そうな表情でティアナを見つめる。
それだけで何もかも察したティアナは肩を落として「そうですか」と力なく呟いた。
一瞬で食卓の空気が暗くなった事に気付いた佐天は、櫻に向き直り手を合わせてお願いをする。

「櫻さぁーん、なんとかならないんですか? これじゃあティアナさん可哀相じゃないですか」

「まあ、無い事もないんだけど・・・・・・。 確実に戻れる保証も無いのよねー」

ミッドチルダまで帰れない確証はある。 この世界に管理局の手が及ぶのならば櫻達はここに存在はしていないからだ。
理由は今まで移動した事のある全ての世界で管理局の名前を聞いた事が無かったからだ。 存在位置がやたらと深部だった事も有る。

逆にミッドチルダまで帰れる保障は無い訳でもない。 櫻と共に次元を超えれば到達できるだろう。 
しかしこれには色々弊害が付きまとう、それは今現在櫻が迷子であるという事実が理由のひとつである。
櫻が今まで次元移動した軌跡を探し出しソコへ向かって跳ぶ、という方法をやっているのだが今の世界は四回目に飛ばされた世界だ。
ちなみに前回飛ばされた【幻想郷】は六回目の世界だったりする。 実際一歩進んで二歩下がっているのが現状だ。

「これに関しては主の能力を使い、航路を確保する事で行き先の特定はやや楽になると思います」

もうひとつは櫻が同行者と共に次元突破をした経験が無いのも挙げられる。
結論だけを言うならば、同行者を伴って次元を抜けても命の保障が有るのか同じところに飛ぶ事が出来るのかと、疑問は尽きない。

「こればっかりは跳んでみない事にはどうにもならないわ。 ティアナが実験体一号という名誉に・・・・・・」

「そんな名誉職は嫌です!」











特に問題もなく夕食を終えたところでアインが佐天を送り届け、櫻とティアナが片付けをしてその日は終わりとなった。
別室では相当の疲れが出たのかティアナが深い眠りについている。
主従は部屋では無い所で今後の作戦会議だ。 櫻は手紙をしたためながら。

「最低でも二名、ティアナと犯人をミッドチルダまで送り届けなければなりませんね」

「・・・・・・にしてもアインも妙な事考え付くわ。 たしかにこれなら航路の割り出しは出来そうだね」

「いいえ、それも主の能力があってこそですよ」

アインの考え付いた方法は、櫻の持つ【任意の人物に手紙と届ける程度の能力】を使い相手の位置までの行程を解析するのである。
とりあえずフェイト宛に『ティアナを此方で保護しました』と言った内容の手紙を出してみる事になった。
それを解析するために次元系の能力を持ちうる機動兵器群を月衛星軌道上に幾つか呼び出し、追跡に当たらせる。 二人が居るのも同じ位置である。
次元系といってもアストラナガンやグランゾン&ネオ・グランゾン、ディス・アストラナガンと鋼や怒鬼といった異様な風体をもつ兵器だらけである。
後はもう櫻の感覚系次第であり、飛ぶ本人が軌跡を掴まないとどうにもならない。 機動兵器群は感覚増幅のための補助くらいだ。

グランゾンの掌で集中しながらアインの魔力でコーティングされた手紙を宙に滑らす。 行き先はフェイト、その一点に。
空間の隙間を抜け、次元の壁を越え、狭間を滑り、目的地に向かって一直線に手紙が舞う。
航路の中継を担うのはグランゾンの隣で唸りを上げティプラー・シリンダーを全開にしているアストラナガンである。
残りの機動兵器は主に主機関を全力運転、そのエネルギーを主に送っていた。 メインは行程を維持し航路を確立させるためである。

十を超える次元と空間の壁を経過した手紙がひとつの星を目指し降下、大気圏をすっ飛ばし街並みの中のビルを透過し金髪の女性の前に舞い落ちた。
・・・・・・舞い落ちた所までを認識した直後櫻の体が崩れ落ち、隣に居たアインが慌ててその体を抱きとめる。
エネルギー供給を中断した機動兵器達も、心配そうにグランゾンの掌を覗き込んだ。

「だー、つっかれたーっ! 何か眼球だけ飛んでった感じでキモチワルイ・・・・・・」

腕の中でぐったりと動かないまま愚痴を零す主に、噴き出すアイン。

「ふふふ、大丈夫ですか?」

「笑い事じゃないよ、これに慣れる根性は私には無さそう・・・・・・。 航路は覚えたけれど」

機動兵器達が虚空へ次々と消えていき、代わりに白銀の双胴船すなわちアースラが浮上する。
船へ今の航路データーを転送、そのまま月軌道上に待機させておく。


アインの転移で部屋まで帰還した二人は枕を並べて同じ布団へ横たわる。
この世界で例外的に家族を得られなかった櫻が、人恋しさに強引に決めた就寝方法である。
特にアインも拒否しなかったし、従者としては無防備状態の主に頼られるのは嬉しい事だから。
実状は無防備状態中【機神図書館】内部では命令無しで即出撃出来るように、数機のPTがスタンバっているのだが。

「後は白井様達が犯人を捕獲してくださるだけですね」

「話だけ聞くならばただのチンピラっぽいから、この都市内で恐ろしいテンプレ運命を辿りそうだけど」











翌日は午前中にティアナに街を案内して放課後に白井達と合流し、捜査の進展状況を聞く予定だったが。
余程疲弊していたのか彼女が起床したのは昼近くなってからだった。

何故か平身低頭するティアナをなだめて朝食兼昼食を取った後、街に出掛ける。 アインは留守番を申し出た。
住人の八割が学生なため待ち合わせ場所の公園は閑散としていたので、クレープを食べつつ雑談する。
雑談と言ってもほとんどは都市や能力者に対するティアナの質問を捌いているだけだったが。

「能力者って私でも成れるんですか?」

「それは素質があるか検査してカリキュラムを受けてみないことには何とも言えないわね」

「素質とカリキュラムですか・・・・・・」

「偽能力者の私が言ってもなんだけど。 授業内容はもう二百四十年前の事だしなー、記憶に無いけど」

前触れもなく櫻の背後に砂塵が渦を巻き、地面に広がった影より鋼の巨体がゆっくりと浮上する。
鎧甲冑を身に纏ったような装甲を持つ雄々しき鋼のサムライ、幅広の両刃剣を肩に担いだダイゼンガーである。

多少は増えてきた通りすがりの学生達が、その重厚感にあんぐりと口を開けて見上げる様をニヤニヤしながら眺める櫻。

「大丈夫なんですか? こんなの引っ張り出しちゃって・・・・・・」

「今すぐ武力行使しようって訳じゃないし、ただの視覚嗜好用置物モデルと思えばいいよ」

ざわざわとやや騒がしい野次馬が集まって来たことに冷や汗をたらすティアナ。

「フィギュアなら部屋に置けるくらいの小さいモノにしてくださいまし、櫻さま」

いつの間にかテーブルに片手を付いて呆れ顔の白井が立っていたのに驚愕するティアナ。

「あら、黒子ちゃん早いわね」

「『早いわね』じゃありません。 遠くからもまる見えですのよ、早いところ仕舞ってください」

身長は建物に換算すると十九階建てのビルに相当する五十五メートルなので目立たない方がおかしい。
ジャッジメントの腕章をチラつかせる白井に首をすくめ、鎧甲冑の黒武者が音も無く足元の影に沈み始めた時だった。
白井と同じ制服の女生徒が息を切らせて公園に駆け込んできた。

「黒子っ!!」

「お姉さま? そんなに慌ててどうかしたんですの?」

「どうかしたも何もないでしょ!? あのデッカイのまさか・・・・・・」

「やっほー、美琴ちゃんお久しぶり~」

座っていた為、白井の影に隠れていた櫻が立ち上がって手を振る。
驚きと嬉しさの混ぜこぜになった表情で御坂美琴は駆け寄った。

「やっぱり櫻さんじゃないですかっ! いきなり居なくなって心配したんですよっ!?」

「いやいや、その件に関しては昨日涙子ちゃんや飾利ちゃん黒子ちゃんにさんざん責められたから勘弁して頂戴」

頭を抱えていやいやと首を振る櫻の姿に、御坂の表情がピキっと引きつった。

「・・・・・・昨日ぉ?」

黒い笑顔を顔に張り付かせたまま首を巡らせ、傍らに居た白井に詰め寄っていく。

「お、おおおお、お姉さま・・・・・ど、どうぞ落ち着きになってくださいまし?」

「アンタ昨日櫻さんの事なんか一っ言も言ってなかったわよねえ」

「え? ええと・・・・・・そうだったでしょうか・・・・・・?」

パリパリッと御坂の周りに光り輝く雷条が集っていく様を見たティアナが目を丸くする。
やや太い雷光を右腕に纏った御坂が憤怒の表情で、容赦なくソレを振り下ろした。

   ばりバりぃっ!!

普段あまり聞いた事のない周波数で響き渡った衝撃音に、空中に縫い付けられた白井は陸に落ちた凧の様に倒れ伏した。
カエルの足に電流を通すようにピクピクする白井の惨状に恐れをなした野次馬達は、即座に距離を取る。

「ふむ、さすがは【超電磁砲(レールガン)】だねえ」

「あのサクラさん、彼女がさっき言ってた・・・・・・?」

「学園都市内に七人しか居ないLEVEL-5。その第三位御坂美琴ちゃん、雷撃能力者よ。 フェイトちゃんといい勝負するんじゃない?」

「いや、そんな馬鹿な・・・・・・」






佐天と初春が合流し、白井が復活したところで恒例の自己紹介と昨日の暴露話となった。
櫻が異世界人で次元放浪者で人外と聞いた御坂の反応は以下の通り。

「異世界って火星人は居るんですか?」

「美琴ちゃんは異世界をどういう目で見ているのよ?」




テーブルの上にノートPCを広げた初春が軽快にキーを叩く。

「ティアナさんお探しの人ですけど、見つけました」

「本当ですかっ」

「見つけるには見つけたんですが・・・・・・。 全治三ヶ月で入院してるそうです」

「「はいぃ!?」」

この発言を聞いた直後に目が泳ぐ御坂を目ざとく見た白井が「ははぁ~ん」と頷く。

「お姉さまがまたぶっ飛ばしましたのね?」

「いやっ! 私だけのせいじゃないわよっ!? 文句があるなら【一方通行(アクセラレータ)】にも言いなさいよ!」

「なるほど、一位と三位にダブルアタックされたと。 ・・・・・・なんて不幸な下っ端犯罪者」

「ええと、良く分からないんですが・・・・・・?」

「ティアナに解りやすく言うと【管理局の白い魔王】と【天然雷神】に集中攻撃されたと思えばいいよ」

「解りすぎるほどに解りました・・・・・・」

あまりの酷いたとえに力無くテーブルに突っ伏すティアナの頭を櫻が撫でる。
ほのぼのとした光景に集まった皆は誰からとも無く噴き出した。












    ◇  ◆  ◇  ◆ sukura side ◇  ◆  ◇  ◆


二日ほど学園都市に滞在してから次元移動を慣行。 長期滞在を避けたのは航路の維持がぎりぎりだったから。
電話先の人の所へ顔出したりしたけど、なにあの水晶コウモリの部屋。 お世話にはなったが趣味悪っ。
美琴ちゃん達には残念がられたが、また時間があったら遊びに来ると言う約束を強制的に・・・・・・。 現役中学生パワー恐るべし。

犯罪者の人は強制退院させてから、私の治癒魔法を少しと関節外して箱詰めにしてアースラへ。
アースラを使うが艦内に居るのはティアナと箱詰め君だけで、私は艦外からアストラナガンと転移する予定である。

アースラは航路を確定させているために万が一はぐれても単独航行させるために、アストラナガンは単なる増幅器の役目。

航路前方に【鏡】を出現させティプラー・シリンダー全開、アースラを押し出すように次元転移を開始したんだけど。

着地地点とか到着時間の差もありまくりで思いっきりはぐれました。 
後から聞いた話だとフェイト目掛けてやったために、目標が居たらしい本局にアースラが突っ込んだとか・・・・・・。
しまった、先触れのお手紙でも出しておくべきだったわ。

ちなみに私の方は全然違う地点で違う時間に落ちました。 とんでもない誤解からえらい事に・・・・・・、その辺りの顛末はまた別の話。























(あとがき)
禁書のほうはさっぱり解らないので主要人物の事情にはあえて触れていません。
英文はエキサイト翻訳から。 

今まで書いた中で一番長い文章に、普段の二倍です。 どおりで時間が掛かるわけでございます(反省

3/25:微修正



[7259] Act.0 その2
Name: C-K◆ae02f8a5 ID:27ec9c7b
Date: 2010/04/09 00:26





結論から言おう、アースラとはぐれた。
次元壁二枚くらい前から一緒に飛んでいたアースラが消失。

こっちはこっちで出現地点がドーム状の建造物内、火災超高温地獄のオマケ付き。 速攻で障壁をアストラナガンと私に。
まあアースラも眷属だから繋がっているし、同次元にいるのは解るんだけど何処行ったよ?

後何でここは高温火災になっている訳?
私等が突っ込んだのは関係ないよね。
ふいにアストラナガンが首を巡らせて体ごと横に向き直る。

「ん、何? 動態反応接近?」

んにゃ相手はテロ屋かなんかかな?

私が近付いて来るモノを判別するより遥かに先、私の安全を最優先とするアストラナガンが背面機関を起こし緑のエネルギー翼を広げる。
熱風を巻き上げて急加速、フィールドを纏ったまま接近する物体が侵攻してくると思われる通路区画に対して突撃した。
















★★  スパロボ的な何か Act.0 その2 『 顛末 』  ★★
















港湾区海上娯楽施設マリンガーデンが閉園後にマリアージュに占拠され、施設内で自爆炎上。
稀に見る大火災になりレスキュー部隊だけでは手が足りず、近隣の部隊や休暇で近くに居た職員まで自発的に協力する事態に。

その自発的に協力する部隊の中、職員でもないN2Rと言う隊があった。
過去JS事件と呼称される中で管理局と敵対していた戦闘機人の内、自分の罪を自ら認め社会復帰カリキュラムを受ける者達である。
四人ともが陸士108部隊のナカジマ三佐に養女として迎え入れられているが。



外円周部より消火剤を撒いていたチンク・ナカジマ達四人姉妹の頭上。
つい今し方BJを張り直して人命検索に飛び込んだエリオ・モンディアルが泡を食って飛び出して来たのを見た。

「どうした、モンディアル?」

「チンクさん!? 逃げて下さい!」

真下に居たチンクに悲鳴のようなエリオの叫び声が投げかけられる。
中で何かあったのかと邪推するチンクの頭上、施設の外壁が轟音とともに膨らんだ。

上げた視界の中、再びの轟音とまるで内側から差し込まれたかに10本の黒い突起が生える。
そこから左右へカーテンをかき分けるように、火災で脆くなったとは言え複合素材の外壁を容易く引き裂き、黒い巨体が姿を現した。

その場に居たエリオとチンク。 其処より少し離れた所に居たナカジマ姉妹達が黒い細身の巨体を唖然と見上げる。
全高40m程の全身漆黒の細身の機体。 エメラルドのエネルギーを撒き散らす翼付き堕天使を彷彿させるデザイン。

ゆっくりと下をチンク等を見下ろした紅い眼窩に強い光が灯る。

「全員散開しろっ!!」

不吉な予感を頼りに姉妹とエリオに投げ掛け、自身も言うがいなやその場から飛びずさる。
瞬間、黒い堕天使のこめかみ付近から撃ち出されたエネルギー散弾がその場に炸裂し、床を打ち抜き爆発させた。

ストラーダに引っ張られるようにして付近を飛んでったエリオには目もくれず、施設破壊壁から海上へ着水。
海上数m上を滑るようにしてナカジマ四姉妹に向き直る。

「こいつ、我らを狙っているっ!?」

背面の黒い翼を大きく広げると、エメラルドグリーンのエネルギー体結晶が周囲へばら撒かれる。
それが空中でくるくると回転しながら鋭い針のような形に変化を遂げる。

かなりの広範囲の頭上を塞さぎ、地べたを這い回るしかない蟲を始末するかのように黒い堕天使が大きく手を振り上げたその瞬間。
チンク達と黒い巨体の間に水柱が直立、水中から飛び出した後光を背負った藍い機体が黒い堕天使を殴り飛ばした。

あまりの異様な展開に四姉妹プラス一名が呆然とする中、藍い機体がこちらに向き直り背後でバカでかい水柱が上がる。
弾かれた黒い堕天使が海中に没した衝撃で周囲に波が広がり、ガラスが砕ける音と共にエネルギー結晶体がコナゴナに散る。







「ごめんなさいねえ、私達の最後の記憶は戦闘機人は敵だったから(今もだけど)。 アストラナガンは攻撃対象にしちゃって・・・・・・」

上から降ってきた聞き覚えの無い声にチンクは頭上を振り仰いだ。
白い滑らかな巨体をもつフリードが、キャロ・ル・ルシエと何処かで見たような少女を乗せて舞い降りて来るのが見える。
その顔を見たエリオが驚き、嬉しそうにフリードの元へ駆け寄る。

「サクラさん!!」

「やあ、エリオくん。 背が伸びたねー、もう私と同じくらいで。 立派になったんだねー、おめでとう」

背伸びして少女がエリオの頭を撫でる。 頬を染めた少年はするりと櫻の手から逃げ出した。

「でもびっくりしました。 こんな所でサクラさんに再会できるなんて」

「キャロちゃんもフリードもありがとうね。 上で貴女に会わなければアストラナガンが戦闘機人を潰すのを傍観してただけだと思うから」

フリードから降り立ったブレザーにスカート姿の少女がキャロの頭を撫でる。
その少女が三年前ゆりかごに組み込んだメイドである事をナカジマ姉妹達はやっと思い出した。

何よりもチンク達もとい、ジェイル・スカリエッティに恨みがあると思われる筆頭である。
彼女の背後に突っ立っている機動兵器らが、ゆりかごの大質量をあっさり消滅させたのも未だ戦慄の記憶となっている。
キャロ・ル・ルシエが止めてくれなかったら今頃自分達はスクラップになっていたかもしれないと思うと、冷や汗ものだ。

「それで貴女達は私と談笑してて良いの? この火事で防災担当かなんかだったんじゃないの?」

「「「「「「あっ!?」」」」」」

「そうだ! 人命検索!」

「いや中の確認要員は全員救出したはずだ」

「じゃ、あたしティアナのトコ行って来るっス」

「まだ出てきてねェのかよ! バカスバル!!」

「私はタンク交換してくすぶってるヤツの消火する」

「サクラさんはもう一度フリードに乗って下さい。 一応避難所へお連れします」

「ああ、手間掛けさせてごめんねーキャロ」

「出来ればその前にあそこのデカいのをなんとかしてくれないか?」

フリードに乗ろうとしていた櫻はチンクの発言に鋭い視線で返す。
エリオ達に向けていた笑顔とは違う、抜き身の刃みたいな気配に条件反射で構えを取る。

しかしチラ見しただけで海上に突っ立っていただけの碧い機体、ネオ・グランゾンに戻るように伝えた。
みるみるうちに水上にある自らの影に没していく碧い巨体。

それを見届けてから笑顔でキャロの頭を撫でてフリードに腰掛ける。
フリードが飛び立って行くのを見てからチンクはやっと冷や汗を拭う事が出来た。

「どうしたんだチンク姉?」

「・・・・・・いや、なんでもない。 とりあえず最後の鎮火作業だ、行くぞディエチ」

「了解」

















    ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇


キャロに車両が沢山集まっていた救護隊に連れて来られた櫻は、まず担当者に怪我の有無を聞かれた。
やんわりと担当者に「怪我人じゃありませんから」と返し、事態が終わるまでその辺で待たせてもらうことにする。
しかし、名前から人名検索を掛けていた現場担当官が妙にかしこまってテント内の椅子を勧めてくれたのに首を傾げることになった。

そこから見えていた海上施設。 マリンガーデンと言う遊園地らしいのだが。
あらかた鎮火し終わり、くすぶった白い煙が細くたなびくぐらいになってから状況終了となったらしい。

職員が次々と戻ってきて撤収作業が始められる。
そんな中櫻の居た救護テントへ先程見掛けた戦闘機人の一人に肩を貸し、見たことのある人物が運び込まれてきた。
他にも煤汚れた小さい少女も連れて。

「スイマセン。 コイツをお願いします」

「いやいや、あたしよりイクスが先に」

「何を言ってるんですか。 スバルさんの手当が先です!」

「このバカスバルッ! 怪我人も大事だけどなっ、テメェも怪我人だっつー自覚持て!!」

トリオ漫才のような聞いている人にも暖かみを感じさせる会話、しかし無茶した者の自分をかえりみない発言に櫻は席を立ち三人の前に。

「・・・・・・あ、あれ? サクラさ・・・・・・」

スバルが此方に気付き口を開き終わる前に無言で拳骨を落とした。

「な、スバルに何しやがんだテメェ!」

スバルを支えていたノーヴェが怒りを露わに櫻に牙を向くが、気にも留めず。

「スバルちゃん。 貴女、その支えている子の立場になったら真っ先に誰を心配するの?」

「・・・・・・え、」

「誰が見ても重傷者の貴女を放って置く人がここに居ると本気で思っているの?」

「あ、あの・・・・・・、ご、ごめんなさ・・・・・・」

「お馬鹿なトコロは変わらないんだからねぇ」

キツい視線に圧倒され尻込みするスバルとついでにノーヴェと少女。
手をスバルの胸へ伸ばし、ソコを中心にして八角形の白い法陣が蝶が掛かった蜘蛛の巣の様に広がる。

「[治/癒(regenerate)]」

スバルの胸に当てた櫻の手から淡い光の波動が体を包む。
流れていた血が止まり、裂けた皮膚から見えていた機械部分は宙から沸いた部品が融合され修復。
あちこち焼け爛れていた皮膚や肉は再生されていく。

「マジかっ!?」

「そんなっ!」

ノーヴェ達とともにその場に居合わせた救護の職員すらもそのデタラメな威力と効果に絶句する。
怪我らしい怪我も無くなったスバルも唖然とする中、光の波動が消える。

「六課の時スバルちゃんのデータ貰っておいて良かったわ」

データがあるから治るもんじゃーねーだろうと言いたい人間が大勢いたが、あっさりと言い張る少女が怖くて口を噤んだ。
目の前で見たものすら信じられない出来事に沈黙の空気が漂う。




イクスと呼ばれた少女が救護員に手当てされる音以外沈黙漂うテントへ、弾丸のように飛び込んで来た人物がいた。

「スバル無事!?」

「あ、ティアー」

あっけらかんと言うスバルが、怪我のひとつもなくピンピンしている様子に目を丸くするティアナ。

「えっ? あれ? アンタ怪我は・・・・・・」

「えへへー。 治して貰っちゃった」

「治してって・・・・・・、あれだけボロボロだったのに・・・・・・」

「ハイハーイ治しました」

ティアナが入って来た時には背中を向けていた為に気付かれなかった櫻。
発言したことから居るのに気付いてギョッとする。

「やあティアナ、四時間ぶり」

櫻の体感時間とティアナの到達時間とは随分と違っていたらしい。

「サクラさんお久しぶりです。 あの時は大変お世話になりました」

「そっちはちゃんと着いたんだね。 いつ?」

「二年半前です。 サクラさんはもしかして今?」

「ああうん。 つい今し方火災現場の中に着地して・・・・・・、そう言えばティアナにこっちの状況説明してもらってなかったねぇ」

疑問符を浮かべるティアナに出て来た時の騒動を一通り説明。
危うくエリオを潰すところだったとか、もう少して戦闘機人達を殲滅する寸前だったとか。
聞いていたティアナの顔がどんどん青くなっていく話ではあった。

「キャロちゃんに聞かなかったらプチっと殺ってたね」

「すっすみません!」

慌てて頭を下げる執務官に気にしてないからと手を振って謝るのを止めさせる。

「あ、後ちょっとお話が。 少し良いですか?」

「ん?いいよ」






ティアナに背を押されてキャリアトラックの裏手に連れて行かれた。
周囲をはばかるように声を落とすと話し始める。

「前に話して頂いたサクラさんの経歴ですが、あれ自体重要機密になったそうなので他の人には秘密にしてください」

「はああ!?」

「しーっ! しーっ!」

「あ、ごめん。 いったいなにがどうしてそうなったのよ?」

「私も詳しくはさっぱり。 詳細ははやてさんか騎士カリムに伺ってみて下さい、聖王教会には連絡しておきますので」

「何故に聖王教会・・・・・・?」

「見つけ次第報告しろと通達が来てますから。 私は自分の仕事へ戻りますので」

「あーっとごめん、もう一個いい?」

「ええ、私で答えられれば」

うちの子アースラは何処行った?」

「あ!」



















   ◇ ◆ ◇ ◆ sakura side ◇ ◆ ◇ ◆


   『いきなり接続してきて魔法制御丸投げにするなっ』

「いやいや、調整が良く分からなくてさあ。 スバルちゃんも助かったし良しとしよう。 にしても魔法ってすげえ」

   『お前が使う物なのだから、自分で何とかしなさいよ』

「追々ね。 エヴァ姉さんのトコ帰ってから練習するわ」


アースラはクロノ提督預かりで本局に係留されているそうな。
あとで広い所で呼び出して回収しよう。
なので現場の撤収作業が現在進行形で進んでいる中、海辺であちこち眺めていたらエリオくん達が寄って来た。

「仕事はもういいの?」

「私達は手伝いだけなので、本職は辺境自然保護隊なんです」

「丁度休暇取って此方へ来ていただけだったんですが、自分達に出来る事があるならばって」

何この勤労少年少女。
中学生くらいなのに随分としっかり者になっちゃって・・・・・・。
一時期面倒をみてた者としては嬉しいがやるせない。
もう少し遊んでてもいいと思うんだが。
世界的なものとしては口を出すだけ無駄なんだろうなぁ。

「サクラさんはこれからどうするんですか?」

「僕達はまだ休暇残っているのでミッドチルダに居ますけど」

「聖王教会に行かなきゃいけないらしいけど、その後は数日滞在してから・・・・・・、考えるよ」

って言うかなんて答えればいいのか分からない。
はやてか騎士カリムが手を回したんだろうが、この世界の私はどんな戸籍になってるんだ。
さっき畏まられたのがソレか、もしかして・・・・・・。


「あ、チンクさん。 お疲れ様です」

エリオが私の背後側から近付いてきた四人の集団に声を掛けていた。
戦闘機人達か、実際のところ私はこいつらに対しての警戒を緩める気は無い。
エリオ達は三年も経っていて、それなりに納めたり含めたりする感情にも決着が付いているのだろう。

私的にはこの世界より離れて二百年以上経ってはいるが、別モードで保管されているこの世界での記憶はつい先日までJS事件最中なのだ。
何もソコまで恨みを持たなくてもいいじゃないか、とかはやてには言われそうだけれど。
ジェイル・スカリエッティも込みで、私がゆりかごに組み込まれる時の出来事を思い出すと許す気も無い。

エリオ達は気の置ける友人として付き合いがあるのだろう、普通に歩み寄る。
私は間合いを取るためにエリオよりもやや後ろに下がる位置に立つ。
私の意図に気付いているらしい四人の代表格、たしかチンクとか呼ばれていた奴だけが眉をひそめていた。

「あの、サクラさん?」

「なに、キャロちゃん?」

エリオと一緒に戦闘機人達と談笑していたキャロが戻ってきて私の制服の裾をつまむ。
たぶん混ざって話したら楽しいですよ、とか言いたいんだろーな。 やさしいくてよく気が付く子だし・・・・・・。

「あ・・・・・・、ええと。 の、残りの休暇一度集まって話せませんか?」

「ああ、それくらいなら問題ないと思うよ」

「ええと、じゃあ連絡は・・・・・・、どうしましょう?」

考え込むキャロの前で地面から、正確には私の影からずむーっとアインが沸く。

「それでしたら主との連絡には私が受け持ちましょう」

「あ、アインさんお久しぶりです」

「ええ、ご無沙汰していますねキャロ」



「連絡したとかティアナが言ってたけど、聖王教会に行けばいいのかな」

「そうですね・・・・・・」

ええと空飛ぶには許可が要るんだよね? たしか。
だとすると後は短距離転移しかない訳で、お金がないから公共機関は使えないしね。

「来るのか分からないモノを待っていてもしょーがない、こっちから向かおう。 アイン転移補佐」

「判りました、聖王教会ですね。 座標は前のまま、しかし何処に出現するか解りませんよ?」

「壁の中じゃなければ別に構わないでしょ」

アインが術式を起動。
私達の会話を困惑して聞いていたキャロが、足元に展開された丸に三角のベルカ式魔法陣を見て慌てて離れる。

「大丈夫よキャロちゃんまで巻き込まないから」

「ど、どうするんですか?」

「今の話の通り聖王教会まで跳ぶのよ。 こっちの状況が落ち着いたらアインに念話させるから、ティアナ達に宜しく」

黒い魔力光が今度は地面と垂直に陣を描く。
それはゆっくりと私達を中心に周りを回転していたが、ある方向を定めると停止した。
これをくぐれば目的地のはずなんだが、どうだろう?

「探査完了、障害物有りません」

転移する先二メートル四方をアインが何も無いと確認する。
嫌な予感がするがキャロに手を振って法陣に踏み込んだ。



















    ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇


その場は丁度のんびりとした空気があった。

折しもマリンガーデンの災害救助に同胞が出動したと聞き、執事姿が板に付いたオットーが落ち着かないで居たが。
状況終了全員無事との知らせにカリムがお茶にしようと告げた。

直後にティアナから探し人サクラが到着したとの報告があったので、迎えをやったのだ。

二年半前にロストロギア関係で執務官補だったティアナが時空の歪みに捕らわれて、行方不明になる事件があった。
上司で担当者のフェイト執務官が責に押し潰されそうな程落ち込む中、彼女の元に走り書きの手紙が届いた。

『ティアナを保護しました。 近い内に届けるね byサクラ』

という手紙にフェイト執務官のみならず六課関係者がひっくり返る大騒ぎに。
しかし数日後に帰還したのはティアナと箱詰めにされた犯人だけで、はやてが首を長くした待ち人はとうとう現れなかった。

余談だが、目標をフェイトにしてあったらしく二人を乗せたアースラが彼女目掛けて出現した。
運悪くフェイトが本局に居る時にである。 至近距離に時空間転移して来たアースラは緊急停止を掛けたが間に合わず、本局に軽く接触。
本局は震度3の地震に見舞われたそうな。

ティアナの証言では出発した時は一緒だとの事なので到着がズレ込むのではないか? とはクロノ提督談。
長い目で待つしかないと言う結論に至り、三年も経ってやっとである。
この期間に色々と処理を終えた通達事項を語るのが楽しみなカリムだった。




まあそんな落ち着いた雰囲気でお茶の時間が進む中、カリムの執務室天井付近に斜めにベルカ式魔法陣が出現した。
執務室に緊張が走り秘書兼警護であるオットーがカリム前で警戒態勢を取る中、まずは魔法陣から一人落下した。

ドターンッ!! と黒い固まりもとい黒髪の少女が床に落ちる。
その後にふよふよとしゃぼん玉のように浮いた銀髪で長身の女性が舞い降りた。

「ッ──ったああっ、アインッ! 何処に開けてるのよっ!!」

「申し訳ありません主。 大丈夫ですか?」

目を丸くするカリムとオットーの前で腰に手を当てた櫻がアインに助け起こされる。
ぶちぶちと文句を言う主にペコペコと頭を下げる従者。

「あ-ええと・・・・・・」

なんて声をかけたものかと戸惑うカリムと警戒態勢のままのオットー。
櫻は居住まいを正すと胸に手を当て、カリムに頭を下げた。

「夜天の書守護騎士メイドサクラ、従者アインと共に参りました。 お久しぶりに御座います騎士カリム」

アインは軽く会釈しただけで主の一歩前で無言のまま佇んでいる。

「もうオットー、お客様なのよ。 いい加減警戒を解いて頂戴」

「はい、騎士カリム」

カリムに言われたオットーは構えを解き、執務机の脇に立つ。

「いらっしゃいサクラさん、お久しぶりですね」

「ええ、私的には二百四十年ぶり位にはなりますが。 何やら内々のお話があるとティアナに伺ったのですよ?」

にこやかに対応するカリムとは逆におどろおどろしい気配を撒き散らす櫻、正確には殺気立っているのは彼女の影内ではあるが。
光源を全く無視した影が壁に映し出されそこから赤や黄色、警戒色の眼が十数対も覗いていた。

カリムの視線の先に今気付いたように振り返り納得する。

「ああ、ウチの眷属達が失礼を。 なにぶんそこにいらっしゃる戦闘機人がかつて六課を襲撃した一員なもので怨みが募っているのですよ」

遠回しどころか直接的に自分の補佐に殺害予告を出され、カリムの笑顔が引きつった。
三年前以前に会った時ははやてに付き添って来るばかりで本音どころか多少の会話すらしたこともない人物だったが。

はやての話によると物静かで優しい人と聞いていただけにギャップに苦悩するカリム。
櫻も対応的にはここに居た時と変わっていない、麻帆良以外で被る猫を面倒になって止めただけである。

仕方なくオットーにお茶を淹れてもらい退出させて、仕切り直しとばかりに櫻に椅子を進めた。


カリムが繰り出した用件は櫻の微妙な立場の件だった。
三年前の時点で質量兵器群保有罪状で第一級危険人物指定されていたはずなのだが。

「マリンガーデンの時、妙に畏まれましたがそれなりの身分か地位にはあるという事ですか?」

「はい、貴女は今現在聖王教会所属の騎士となっています。 兼時空管理局八神はやて陸佐配下守護騎士にも当てはまりますけど」

「けど・・・・・・?」

「率直にお伝えしますと『現存する旧ベルカ時代S級ロストロギア』扱いで聖王教会が保護する事になりました」

「成る程。 【機神図書館ウチ】の眷属達は旧ベルカ時代の遺物となり、それの保有権利を聖王教会が主張したと言う訳ですね?」

「扱いについては心苦しいのですが概ねその通りです」

苦虫を噛み潰した表情で謝るように告げるカリムに、取り敢えずは管理局の職員等と事を構えないで済んだと安堵する櫻。

「なので貴女がティアナさんに語った経歴と、はやてに宛てた手紙に書かれた事柄については秘匿事項という事にしてください」

「私の処遇について詳しいところまで知る人はどれくらいですか?」

「私と聖王教会上層部、はやてと無限書庫司書長ユーノさんとなのはさん、フェイト執務官とティアナ執務官くらいですか」

「なのはとフェイト? ユーノが混じっているのは何故でしょうか?」

「なのはさんとフェイトさんは貴女の手紙をはやてと一緒に読んでしまったからです。 ユーノ司書長は貴女に対しての記述を見つけた事になっています」

後は管理局側の協力者として六課時代と変わらぬ顔ぶれが並んでいるそうだ。

「何その特別処置・・・・・・。 そもそも私一人に其処まで手回しする必要性があるんだろーか」

「貴女はもう少し他の方からの好意に敏感になった方が良いと思いますよ」

遠くから生暖かい目で見守るような視線を受け、背筋に薄ら寒いものを感じ身震いする櫻。
それまで無言で佇んでいたアインが手を挙げる。

「質問を宜しいでしょうか?」

「どうぞ」

「主は前回最後にこの世界から消え去りましたが、その辺りをどう説明するおつもりですか?」

「その辺りは苦しいのですが本来の存在場所に戻ったという事になっています」

「本来の場所ぉ? 夜天の書はもう無いし何処に戻れというんですか・・・・・・」

「まさかアルハザードとか言うのではないでしょうか、主」

   『アルハザード? そんな名前のところなら知ってるぞ、滅ぼしたけど』

「・・・・・・・・・・・・・椿・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・椿様、アルハザード滅亡の理由がやっと分かりました」

何気なしに会話に混ざった半身の発言に主と従者は顔を見合わせて大きな溜息を吐いた。
椿の会話は基本櫻達にしか聞こえないのでおいてけぼりなカリムは疑問符を浮かべている。





「あとはこれを持っていて下さい」

カリムは小さな箱に入った意匠の装飾がついたバッチを渡してきた。

「これはこれは騎士の証と言うモノですか?」

「この世界では聖王教会が貴女の身分と立場を保証します」

「管理してやるから問題を起こすなと言う事ですね。 わかります」

「・・・・・・アイン、少し黙ってて」

「は、失礼しました」

櫻がたしなめると一礼して後ろに下がる従者。
遠慮もなく言いたい放題なアインの態度に流石のカリムも笑顔を潜めざるをえない。

「ウチの眷属が失礼しました、騎士カリム。 一介の次元放浪者如きに賜る御厚意申し訳なく思います」

「いいえ、私やはやてが出来る事をしたまでです。 それと三年前はゆりかごを止めてださってありがとう」

「ただの八つ当たりでしたが」

「それでもです。 今日はもう遅いですからこちらで泊まって行って下さい。 質素ですみませんが」

「いえ、ありがたく」

案内の者を呼ぶとノックの後オットーが入室した、如実に剣呑な対応になるアインに落ち着いたままの櫻。

「教会内での刃傷沙汰はしないようにお願いしますね」

「善処しましょう」





夕陽の差し込む廊下をオットーの後に着いて歩く二人。

(宜しいのですか? あ奴を放っていて)

(許した訳じゃないけど、貴女達が怒ってるの見てたら馬鹿馬鹿しくなってきちゃったわ)

苦笑する主に異を唱えることなどせず剣呑な雰囲気を収めるアイン。
眷属達もざわつく気配を抑えて静かになる。
主がそこで納得しているならば自分達が口を出すこともしないとわきまえているからだ。

教会を一度でて隣接する建物に入り二階へ。
オットーは扉ばっかり並ぶ廊下のひとつに立ち止まりドアを開けて一礼した。

「今夜は此方でお休み下さい。 食事が必要でしたら運びますが?」

「そこまでしてもらわなくても結構よ、案内ご苦労様」

部屋を覗き込んでいた櫻が振り向きもせずに告げると、オットーは手に持っていた宅配ピザ大の箱をアインへ差し出した。

「カリム様のと同じ教会正装です。 出来れば受け取って下さると・・・・・・」

「分かりました。 騎士カリムにお礼を言っておいて頂けますか?」

「はい、それでは失礼致します」

扉を閉めベッドに座り大きな溜息を吐いた櫻は部屋を見回した。
小さな部屋だ、六畳一間といったところだろう。
窓際にベッドが二つ並び、間に小物などを入れるのであろう引き出しのついたミニ箪笥ッポイもの。

「アイン、エリオ達に連絡しておいて。 明日は会えるだろうと、場所や行き先はエリオ達に一任すると」

「了解」

「さて、麻帆良まで後何回飛べば帰れるものかしらね? それと椿」

『なんだ?』

櫻の肩に三頭身人形が腕を組んだ偉そうな状態で現れ、首を傾げる。

「さっきのアルハザードの事だけど、どういった経緯で関わっているの?」

『恥ずかしい話だが事故で転移した先が其処でな、捕まえられて実験体になっていたのだよ』

「椿があ!?」

『あらぬ誤解が有るようだが私とて無防備な時や無力な時もある。 そこに付け込まれてね』

「何されたのよ?」

『薬漬けになって予備のデータベースにされたな、数年程』

「そりゃまた随分と非人道的な・・・・・・。 滅ぼしたくもなるわね」

それ以上は話したくもないと黙った椿の頭を撫でて慰める櫻。 眼を閉じていたアインが櫻に向き直るのを見て頷くと口を開いた。

「連絡取り終わりました。 場所は昨日の現場近くのショッピングモールだそうです」











翌日、私達は約束の場所に1時間前から待つことになった。
エリオ達と連絡を取ってからすることもなく直ぐ休んだが、早く寝たせいで早く起きるハメに。
カリムに貰った箱に入っていたシスター服?、二着は私には大きくてアインに小さかったので錬成掛けてアイン用一着にしたり。

八神家だった頃ははやてからお小遣いを貰っていたので今の私達は当然のごとく無銭である。
然るに適当な端末を作り上げて空間通信システムからハッキング、数日くらいは遊んで暮らせるような金額をダウンロードした。
ハッキングの時点で犯罪であるがシステム類である機械は私の行動を違法行為と認識しないのでデータログには証拠が一切残らない。
高度な機械文明になればなるほど私にとっては天国になるという見本である。


あとは騎士カリムに朝食に誘われたり、出掛ける旨を伝えたら送ってくれると言われたが辞退した。
転移移動にはいい顔をしなかったが「移動先には充分注意してくださいね」、とか言われました。

昨日は忘れてたが人工衛星にアクセスして移動先の安全を確認してから跳ぶ方法を選択。

しかし待ち合わせ場所がショッピングモール前だったが私達はなんか浮いてる気がする。
私は麻帆良中の制服、着の身着のままだけど毎日汚れや埃を錬成で飛ばしているから綺麗なハズ…。
銀髪長身の麗人ことアイン。 こっちは先程のシスター服である、前回がワイルド系のヘビメタ調だったので私的には違和感があるなあ。
アインは何着ても綺麗だから似合うけどねっ!

適当にボーっとして集合時間十分前にエリオとキャロが赤兎連れてやって来た。

「あら?」「おや?」

赤兎は肩を怒らせながらズカズカ来ると私の胸元を掴むと下に引っ張った。

「サクラッ! テメェ!!」

「お久しぶりなのに随分な挨拶ねヴィータ。 この扱いは酷いんじゃない?」

顔を付き合わせる格好になって激怒する鉄槌の騎士。
はて? 何で怒られてるの私?

「こっち来てたんなら何で何も連絡しねぇんだよ! はやてがどんだけ心配したと思ってんだよっ!!」

昨日の今日でどうやって連絡しろってゆーんだろうか? 連絡先も判らないのに。
ほっとくとガクガク揺さぶられそうなので視線でアインに助けを請う。
激昂しているヴィータの背後に立ったアインは遠慮なく頭に鉄槌を落とした。・・・・・・肘で。

周囲に居た人達が思わず振り返る程響いた音で強打された赤兎は頭抱えて地面にうずくまっている。

「エリオくんが連れてきたの?」

「いえ、すぐそこで会ったんですけど。 サクラさんがこっちに来てるって連絡自体はスバルさんが、」

「広めたと・・・・・・、」

「たぶんそうだと思います。 昨日のお礼に今日は午後から合流するって言ってましたから」

キャロちゃんが申し訳なさそうに言うことじゃないと思うんだが。
頭痛を感じていると早くも復活したヴィータがアインに突っかかっていた。

「ナニしやがんだアインッ!?」

「貴女が主に危害を加えていたもので、排除するのが我々従者のお仕事」

「なんでアタシが排除対象ナンだよっ!」

「はぁいはい、そこで喧嘩腰にならないの。 それにしてもヴィータだけ? はやてや他のみんなは?」

私が促したが話が進まないので間に入る。 ヴィータは管理局の制服まんまだけど抜け出して来たのかね?

「はやては今ミッドには居ねえ、サクラは今回どれだけこっちに居られるんだ?」

「は?」

「そう言えばはやてさん達に聞きました。 サクラさんってアルハザードの遺産でしたんですね」

「凄いですねぇ」

エリオくんとキャロちゃんが目を輝かせて、・・・・・・目線が似たような高さになってるなー。 育つってすばらしい、私は育たないけど。
そうか、はやては知っててもヴォルケンリッターは私の正体を知らないのか。 
吹聴する気もないけれどアルハザードうんぬんは声を抑えて言って欲しいぞ。

「とりあえず2~3日の予定だけど、迂闊にアチコチ出歩いて何かに巻き込まれたら聖王教会に迷惑掛かるから動かないよ」

「はやてに会う気はねぇのかよ?」

「会わないとは言わないけど、私もちょっと別次元に人を待たせているのよ。 ミッドに来たのもティアナ送るついでだったし」

「おまっ!? はやては最優先にならねえのかよっ! 見損なったぞテメェ!」

言いたい事だけまくし立てて来た道を戻ってっちゃったよ、流石過剰はやて主義者。

「ナニあれ、面倒くさい生き物だなあ」

「良いんですかサクラさん? ヴィータさん行っちゃいましたけど・・・・・・」

「シフト無理やり開けて来たんでしょー、本当に言うだけで帰るとは」

心配そうなエリオくんの頭を撫でてあげる。

「確かにはやても大事な家族だけどね、仕事に真摯なところへ私の情報だけで手元を疎かにさせる訳にはいかないじゃない?」

「そういうものなんでしょうか・・・・・・」

「でも、会えるのと会えないのは随分と違うと思います!」

「なんて優しいの二人とも! いい子に育ったねぇ」

感激したんでまとめて抱きしめてみる。 エリオくん顔真っ赤にしてたけど楽しそうだったね。
午後にはスバルちゃんとヴィヴィオちゃんとも再会してみんなでお買い物に致しましたとさ。

エヴァ姉さんのミッド土産に香水とかどうだろうか。














    ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇


次の日は本局へ、アースラ受領のためである。
なんでもクロノ提督へ騎士カリムが連絡を入れておいてくれたらしく、案内人を寄越すからと。

・・・・・・で、なんで案内人になのはちゃんが来るのかな? 忙しいんじゃないんかい?

本局に着いてからクロノ提督の執務室に行ったらそこにフェイトちゃんまで居ましたよ。
ティアナのことをありがとうと頭を下げられました。 クロノ提督には本局地震の事でイヤミを言われたけどさ。

本局の施設を使わせてもらってはやてと通信だけでも繋げてもらいました。
あっさりと実に不運な要因が重なり合って10分と経たずに終わる会談でしたが・・・・・・。

 通信を繋げたらまずリィンが出た。 再会にむせび泣く。
    ↓
 泣いてるリィンに続きはやて登場、しかし号泣。
    ↓
 泣き終わるのを待ってから挨拶を交わすもシグナムが通信に登場。
    ↓
 はやてにやってもらわなければならない決済や指令書が山のように残ってるというので通信を切られた。

後ろで事の次第を眺めていたフェイトちゃん達が唖然とする出来事でした。 
うむ、やはり仕事の邪魔だったか。 余計な期待を残さなきゃ良いんだけど・・・・・・。

カリムにも伝えていたのだが明日にはこの世界を辞すと、こちら側にも伝えておく。
ひじょ──に残念がられたのだが、唯でさえ他の世界込みで経過日数が10日近くになっているのだ。 麻帆良に帰ったら10年とか経っていたらマジ笑えない。

他の世界もバラバラなんだけど経過時間の統一されているのかがさっぱりである。
この辺がティアナと切り離された原因なのだろう。
彼女はミッドの切り離された時間直後に、それでも消えてから五日経過して帰還しているのだ。
私はミッドから離れて二百四十年経過している分、此方では三年経っていたらしい。 同一時間に到達できなかった理由はそんなもんだ。








翌日、見送りはいらないからとカリムに二泊三日分のお礼を言いミッドを離れる事に。
再びミッドに戻るための『杭』は聖王教会に打ち込んだので、次は迷わずにココに落ちるはずである。

「こんなことなら麻帆良に『杭』をあらかじめ打ち込んで置けばよかったなー」

『私のせいだな、悪かった』

「ホントホント、新たな発見もあったからいいんだけどね別に」

足元に巨大なベルカ式、といってもヴォルケンリッター式魔方陣ではあるが、を展開。
コレに限ったわけでも無いのだが今の私の初期に関わる為、なんでもかんでもこの形式である。
あとは使い捨てみたいな役割を持つ増幅器が私の周りに四つ、大きさはマイクロバス大の青いひし形。
スペースシャトルの切り離すサブロケットブースターみたいなものである。
元々はガジェットを取り込んだときに所得したジュエルシードの劣化コピー品、四重共振で中心に巨大な歪みを作り出し局地的な次元カタパルトとして使う。
それら四つに火を入れようとした時、少女が私のところに駆け込んできた。

「私の友達を助けて!!」 ・・・・・・と。















    ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇


涙ながらに駆け込んできたのはヴィヴィオちゃんで、なんかこんなパターン前にも見た。
一旦中断してヴィヴィオちゃんに手を引かれ別の施設へ。

道中彼女に語られた事によると、火災事故の時スバルちゃんが助けた少女が機能不全で何時目覚めるともしれない眠りについてしまったとか。
イクスとか言うあの少女、旧ベルカ時代の群級大量殺戮兵器だそうで。
マリンガーデンの火災も彼女を求める従僕が起こしたものらしい。

まあヴィヴィオちゃんがここまで入れ込むあたり危険性のある兵器じゃないんだろう。
成る程、私のこの世界の設定と椿の奴隷時代の苦労がようやく報われると言うことですね。

『奴隷とか言うな! 屈辱感が沸いてくるわっ!』

着いた先の施設にあったのは冷凍睡眠カプセル容器に入ったいつぞやの少女。
まずは膨大な椿の記憶内からのアルハザード記録の検索でしょう。

「それでヴィヴィオちゃんはこの子をどうしたいの? 一口に助けてと言われてもいくつかあるんだけど。そもそも私なんか連れてきてナニさせようってのよ?」

詳しい情報を持つ者以外に言わせるとこの世界の私はアルハザードの遺物である。
旧ベルカ時代と交流があったかどうかは知らんがイクスヴェリアとは同じ製造場所で生まれた従姉妹か遠い親戚かもしれない。
しかし、同型でもなけれは造物主でもないのだがそのへんヴィヴィオちゃんは分かっているんだろうか?

「え? ええっと・・・・・・、サクラさんはアルハザードの人なんだよね?」

「メイド・イン・アルハザードなのは間違いないね、被造物であって造物主じゃないのだけど」

この答えに何か致命的な間違いに気付いたと思われるヴィヴィオちゃんは硬直。
いやこんな意地悪を言ってるのは彼女を泣かすためではないけれど、私を便利屋かなんかと勘違いされてる節があるからだ。
確かに八神家の時も軌道ロッカー時代も雑用係だったのは否定しないが。

安堵しかけていた顔が悲しみに歪みボロボロと涙を流す、白い魔王様が見たら砲撃でも飛んできそうですねえ。

「こらっ」

「ふえっ!?」

デコピンをして泣くのを中断させる。

「ヴィヴィオちゃんは何がしたいの? 泣いていれば誰かが自動的に手を差し伸べてくれると思っているの?」

「ひっく、・・・・・・ぐすっ。で、でもサクラさんはできないって」

「私には不可能などと言った覚えはないが。 さっきから何がしたいのかと聞いているでしょうが」

言葉で撹乱していたのは時間稼ぎでございます。
アルハザードの記録倉庫からイクスヴェリアに関する記述を探していただけで、決して泣かして遊んでいた訳ではない。
・・・・・・・・・遊んでないよ?

「じゃあイクスを助けてくれるの?」

「ヴィヴィオちゃんが言う助けるとは、何時目覚めるか分からない人生に終止符を打つ為にひと思いに命を断つことか? それとも、再び正常作動する大量殺戮兵器として修復する事なのかと、どっち?」

金の斧銀の斧童話みたいな問い掛けになっとるわな。
木こり役のヴィヴィオちゃんはふるふると首を振り、涙を拭って願いを述べた。

「イクスとお友達として明日を一緒に生きていきたいから、お願いします。 イクスを助けて!」

「よかろう、その願い承った」
















あれから1時間後、イクスヴェリアの人として生きていける部分を完璧に修復した私はミッドの上空、ぶっちゃけると雲の上で次元転移陣を再展開。
なんでこんな所で一人寂しくやっているかと云うと、イクスの件で関係者一同に激しく喜ばれたからである。
激しく喜んだ関係者一同は盛大に送り出してくれると申したので柄じゃないと気恥ずかしくなった私は逃げました。

準備を終えて行き先を麻帆良だと思われる先に定めたら、見送りがひとり。

「飛行許可も取ってねぇのに飛んでんじゃねーよ」

ハンマー担いだヴィータでした。

「文句は聖王教会までよろしくね」

「苦情の書類ははやてに行くんじゃねーの?」

「じゃそっちに弁明よろ~」

「自分でやれよなっ!」

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

周囲に満ち溢れるエネルギー、臨界点に至ることにより亀裂のはいる青クリスタル。

「悪かったな・・・・・・」

「お互い様」

最後に見えたものはデレたヴィータでした。
お宝映像として保存、次に来たらパネルで引き伸ばしてみんなにさらしてやろう。








追伸、次に跳んだところも麻帆良ではありませんでした。
草原のど真ん中って嫌がらせかコレ!

























(あとがき)
Sts後の偉い人たちの処遇がイマイチ分からない。
ストーリーのメイン軸はサウンドドラマCDーXを使用しています。
細かいところや詳しい部分についてはかなり適当なのでその辺は勘弁してください。
4/9微修正



[7259] 【二部】 スパロボ的ななにか Act.1
Name: C-K◆ae02f8a5 ID:27ec9c7b
Date: 2010/02/22 18:36




ネギの弟子入り試験当日。
と、いっても弟子入りの合格をネギに告げ、家に帰るのは早朝になってしまったが。

茶々丸とその頭に乗っかったチャチャゼロを従え、家に帰り着く頃になってもエヴァンジェリンはボヤいていた。

「まったく、あんな所で余所見をしおって・・・」

「申し訳ありません、マスター・・・」

「ソレニシチャ、楽シソウジャネーカ。 御主人」

「た・・・楽しそうだと!? 誰があんな未熟者なんぞの面倒を面白がる者が居ると言うのだ!」

赤くなった頬を隠すように早足で家までたどり着き、入り口の扉に手をかけたエヴァは眉をひそめた。

「茶々丸、鍵を掛け忘れているぞ」

「え・・・? そんなはずは・・・」

「侵入者カ? オレガナマス斬リニシテヤルゼ」

「だいたい泥棒なら櫻のかけた罠に引っかかるはずだろう・・・」

剣を二本手に取り、地面へ降り立ったチャチャゼロを見てエヴァは構わず扉を開けた。
中からふわっと漂ってきた味噌汁の良い匂いに、一瞬体を硬直させ、中に突撃した。

朝食の準備が整えられたリビングのテーブルに目を疑ったエヴァの視線の先。
キッチンへ続く通路から櫻が顔を出し、にっこりと笑顔を浮かべた。

「あ、お帰りなさいエヴァ姉さん。 朝ご飯できてるよ~」

「「「櫻(様)!?」」」

 『なんかつい最近にも同じような光景を見たような・・・』




















★★ 【二部】スパロボ的な何か Act.1 『 帰還 』 ★★
 











「帰ってくるなら帰ってくると連絡位しろっ! どんなに心配したか・・・」

「あー・・・、ごめんなさい。 帰ってくるまでが大変だったもので。 迷いすぎて・・・」

「ご無事で何よりです、櫻様」

「ドウシテオレノ定位置ハココニナルンダローナ・・・」

もったいないからと朝食を済ませた後、胸にチャチャゼロを抱いた櫻はエヴァに文句を言われていた。
茶々丸が片付けもそこそこに出かけて行ったのを見て、櫻は首をかしげる。

「茶々丸どうしたの?」

「ボーヤの所だろう。 ついさっきまでヤツを殴打していたからな、傷薬を持たせてやった」

「はあ・・・」

ネギのことと聞いて興味を失った櫻の全身を見て、エヴァはずずいっと詰め寄った。

「傷は平気なのか? それにアイツはどうした?」

「アイツ・・・? ああ、椿の事。 それならここに」

櫻が自分の肩を指差すとそこの空間がゆらりと歪み、当人の姿を模した三頭身くらいの人形が姿を現した。
憮然とした表情で目を丸くするエヴァを見上げている。

『・・・なによその目は? 私がこんな格好でココに居ちゃ悪い?』

指差したまま硬直し、脂汗を流しつつ口をパクパクさせるエヴァの姿に櫻は噴出した。

「えーとね、話せば長いんだけど・・・」

またコレを話さなきゃならないのかと、説明にウンザリしながらお茶を淹れ直した。

櫻と椿が対の存在で、元々はひとつの人物だったから融合した部分から始まり、
一度自分の故郷に戻ってから、再びこの世界にやって来るまでの経緯を。

「ナビゲート任せたら全然違う世界に四回も渡ってしまったとか・・・」

 『仕方ないでしょう、融合で貴女の持っている世界の位相と混ざっちゃったんだから』

「ちょっと待てお前らっ!!」

同一人物同士の愚痴の擦り付け合いに、エヴァは強制的に割り込んだ
怒っている様子に櫻と椿はきょとんとし、同時に頭上に「?」を浮かべた。

「櫻! 生まれ故郷に戻ったのだろうがっ、何故ソコで暮らさない!?
 お前はその為に『生きて』来たのだろうが! 何故又ココへ戻ってくる?」

まるで自分の事のように怒るエヴァを見つめ、困った顔で肩の椿へ視線を向ける。
視線を受けた椿は、ふいと視線を避けるようにその姿を消した。

「うん・・・、ココへ帰ってきたかったから。 確かに兄さん達の居る生まれ故郷は一番の故郷だよ。
 そこで暮らす方が私にとっても兄達にとっても、友人達や仲間にとっても一番大切なものかもしれない。
 ・・・でも私は世界を渡ったから、違う所にも偽りだったのかもしれないけれど家族が出来た。
 だから何処でも家族が居るところが私の故郷だって、ソレが一番無茶で一番大切な私なりの答えだと思う」

「だが、何故戻る場所がココなのだ?」

「え? ・・・だって。 まだエヴァ姉さんと家族になって半年じゃない。 そんな短くて別れる家族は嫌よ」

他の世界の故郷にももう何時でも渡れる様になってるしね、と嬉しそうに告げた。
つまらなそうなエヴァに笑顔が浮かぶが、繕う様にそっぽを向く。

「おおお、お前の好きにしろっ! チャチャゼロもお前が居ると楽しそうだしなっ」

「オイオイ、オレニ振ルノカヨ?」

「うん、ありがとうエヴァ姉さん。 あと、ただいま」

「オウ、オカエリダゼ櫻。 コレデヤットマトモニ動ケルッテモンヨ」

「おかえりだ、櫻。 良く戻ったな」













    ◇  ◆  ◇ sakura side ◆  ◇  ◆


「は? 葱を弟子?」

「そうだ。 まあ、色々あってだな・・・」

私の居なかった10日間の事をざっと聞いてみたところ、葱が弟子入りを申し込んできた他は特に何もなしだそうだ。
茶々丸と肉体言語で勝負して一撃でも入れられたら弟子入りを認める、とかいう破格(姉さん談)の条件を葱が通ったらしい。
青い演説のせいで。 ・・・青い演説って何だ?

肩の椿人形の事も聞かれたので、一応本人の人格をコピー封入したナビゲート人形と言うことになっている。
実際のところ椿の使う魔法神術の使い方は分かるが、コレばっかりは使ってみないとどれだけの威力が出るのか分からない。
ゲームで言うところの習得はしているが、熟練度はゼロのようなものだ。


あと椿に言われて判明した事なのだが、私達共通の能力のこともある。
この【機動図書館(マシン・ビブリオテーク)】、椿側は【侵喰】と言うらしいが、私の使い方は全く違うらしい。

私は物体のデーターを読み取りコピー(本化)して保管する物だと思っていたのだが、本来は対象を喰うらしいのだ。
椿は他の世界で、自分の力にしたい対象を次々に影に取り込んで喰らい、自分の能力を多様化してきたとの事。
この世界での魔法を習得したいのならば、少なくとも姉さんより1ランク下の魔法使いを喰えとか言われた。

いや、喰わないけどね。 あんな長いもの一々唱えていられるか、メンドくさい。

あと蓄積データ内で私にも椿にも使えないモノがあったのだが、融合したことでやっと使えるようなものも増えた。
ボルドーの魔導機械とか、錬金術とかだね。

あとで別荘を借りて幾らか引っ張り出してみよう。 でないと動くかどうかも解らん。






「主、私はどうしていればいいのでしょうか?」

シスター姿のアインが困惑した顔で私に聞いてきた。

アインに常時存在を許可し、さっき中から引き出してきたのだ。
シスター姿なのはここの世界にたどり着くまでに迷子になり、途中ミッドチルダに寄った時カリムにプレゼントされたからである。
しかし私的に二百数十年ぶりだったのが、あっちでは三年しか経っていない件について(ry・・・。

「別に好きにしなさい。 キッチンを占領しても良いし、その辺を散歩しても良い」

アインに常時存在を許可したのも理由がある。
放浪していたときに解ったことは、全力で能力を開放すると【世界】に拒絶され、強制的にそこから弾かれてしまうことだ。
だからこの世界に長く居るために能力を小出しにして、【世界】を誤魔化していたのだが。

融合したことにより神格というか霊的認識界位と言うものが上昇したそうなのだ。
簡単に言うと神様っぽいものになりましたと。 
・・・自分でも自覚無しだけどね、我を崇めよー、なんて言う気も無い。
おかげで【世界】より上位存在となり、能力をドカンと使っても弾かれることも無くなったと。

あと契約(パクティオー)とは少し違うけど、チャチャゼロとラインを繋ぎました。
コレによりチャチャゼロは常時フルスペックで動けるし、私も使わない時の魔力を遊ばせておくことも無い。
姉さんとのパクティオーカードは、名前の所が「櫻・椿」と変わっていただけで他の変化は無かったけど。

アインは少し考えた後、「影女にでもなるしか」とか言いました。 ・・・影女って・・・。
あれは独身男性の家を守る妖怪だと思ったが・・・、イヤ何も言うまい。 
好きにすれば良いと言ったの私だしな。






あとは学校のほうなのだが。
修学旅行三日目に具合を悪くして入院、面会謝絶状態になっているらしいのだ。
・・・ってか病弱タグが外れてない・・・。 更に酷くなってないか?

「大変だったのだぞ。 その場に居た者ならともかく、
 雪広あやかや鳴滝の双子が尋ねてきては病院を教えろだの、雪広系列の病院に移すだの・・・はあ・・・」

頭を抑えつつ溜息を吐く姉さん。 
あの雪広さんを押し戻すのはさぞかし精神的に疲れただろう、ご愁傷様です。

「あー、明日学校に行ったらどんな騒ぎになるのかなあ・・・・・・・・・・」

「まあ、頑張れ。 きっと津波のように突撃してくるぞ、あのクラスだからな」

うわあ、実にリアルで想像できそうな光景だわソレ。












・・・・・・・・・・・・・・ごめんなさい、リアルで想像できるどころではありませんでした。

「おはようございますー?」

と、教室に入ったとたんクラスの騒がしかった会話が止まり、私を無言で見つめてくる視線の山。
え”!? とか思ったのもつかの間、半数が涙目で雪崩のように押し寄せてきたのです。
迫力に負けてあっさりと黒板に追い詰められる私。

「心配いたしましたのよ、櫻さん!」
「「退院おめでとー♪」」
「具合の方はもういいんですか?」
「(あの時の怪我はもう完治したでござるか?)無事で何よりでござるよ」
「櫻─っ! あんた大丈夫なの! 動いて平気!?」
「巳子神さんっ! あの時はもう・・・もう・・・ぐすっ」
「櫻~、もう平気なんやね~?」
「元気になった祝いに肉まん食べるネ」
「櫻さん無事だったんですね! 僕もう死んじゃったかと・・・」
「完治祝いに餡蜜でも喰いに行くか?」

いやいっぺんに言われても聖徳太子じゃないんだから、何言ってるかわかんねえって。
あとどさくまぎれに葱に殺されたような気がするんだけど。 つかHR前なのに何処から沸いた?

 『人間に負けるな、情け無い』

人間じゃないのも混じってるってば、とりあえず色々誤解を解きたいが後でいいや。

「ご心配をおかけしました皆さん。 この通り五体満足ですから、また今後ともクラスメートとして宜しくお願い致しますね」

笑顔で皆の前で一礼する。 つい習慣で特大のネコ被ったままだけど・・・。
詰め寄せてきた人達はホッとした様子で、何人かが私に抱きついてきた。
それをあやかさんが手を叩いて追い払う。

「ホラホラ、櫻さんは病み上がりなんですよ。 負担になるような事はおやめなさいな」

「ありがとうございます、あやかさん」

「クラス委員として皆の健康を気遣うのは当然のことですわ」

「あと入院中、エヴァ姉さんに掛合いに来てくれたと聞きました。 善意を反故にするようで申し訳ありません」

「いいえ、備えあれば憂いなし。 櫻さんが無事にこうして戻って来てくれたのですわ、杞憂で終われば何よりです」

あやかさんと硬く握手を交わしてから席へ戻ると、姉さんがニヤニヤしながら私を待っていた。

「意地悪な顔をして・・・、何か言いたそうですね?」

「良かったな、人気者じゃないか」

「そうですね、融合して心身とも落ち着きました。 こういうのも懐かしくて良いものです」

 『私は貴女のその被った猫がおっかないわ・・・』

その言い方は失礼な。
腰を落ち着けて、超さんにもらった肉まんにかぶりついた。 うん、おいしい。








放課後はなんか廃墟っぽいところに結界を張ってから、葱他契約者を集めて底力を見るテスト?
何故かクー(葱の体術の師匠?)と夕映(自力で魔法の可能性にたどり着いたらしい)も居て妙な感じ。

「櫻も魔法使いなのですか?」

「うーん・・・。カテゴリーは何になるんでしょうか? ごめんなさい自分でも良く理解はしてないので」

枠に括ると何になるのやらさっぱり解らん。
しかし結界か、一発ぶっ放してみる?

  『注ぎ込む魔力は最小に抑えておきなさいよ。 ひと雫位に』

ひと雫ね・・・。 廃墟から立ち上がり、ぶっ倒れた葱より離れた位置に立つ。

椿の使う魔法神術は言語とイメージから成り立っていて、同じ攻撃術でもイメージの違いにより威力がピンキリだそうだ。
雷系は落ちるか広がるイメージがあるし、火系は爆発や爆風もありえるので却下。
風系は威力が広がり過ぎると結界の中で暴風が荒れ狂う可能性もあるので、素直に水系でやってみることに。

「なんだ櫻。 何かするのか?」

「ええ、少し練習を。 ちょっとだけいいですか?」

「まあ、ボーヤは気絶中だ。 存分にとはいかないがやってみろ」

体を半身にして右手を前に出し、構える。
本来なら構える必要も無いんだけど、未熟なんで目標を定めないと何処へ飛んでいくのか解らない。
興味津津で夕映やのどかがこちらを凝視している。

「[水/流(Splash)]」

水飛沫みたいなのをイメージして紡ぎ出してみた。
・・・・みたんだけど、掌の先から濁流みたいなのが出て、轟音とともに手前にあった廃墟の一部をぶっ壊した。
えええええっ!? なにこれ威力が違いすぎる。 とゆーかSplashじゃなくてStreamだろう今のは・・・。

 『魔力を加えすぎよ、ひと雫と言ったでしょう?』

いや、ホントに朝露みたいなひと雫だったんだけど・・・。
ポカンとした私の背後で「おー」と言う感嘆の声と共に、まばらに拍手が飛んできた。
苦笑いで振り向けば、姉さんを除いた一同が拍手をしてくれていた。
とりあえず一礼して姉さんの傍に戻る。

「随分な威力だな、アレくらいで普通なのか?」

「いえ、ちょっと予想外と言いますか・・・。 あれでも魔力は最小にしたつもりなんですが」

 『やはり融合の相乗効果で魔力の量も質も上がっているわね。 アレ以下に威力を落とすのは無理そうよ』

さいですか、極める道は遠そうだ。



「ネギ先生の魔法とは随分違いますね」

「基礎形態からして違いますからね」

私達のは精霊を必要としない、魔力から直接変換させるタイプだし。
精霊魔法系は有るけれど、広域影響or破壊型で空間内マナの少ない此処では周囲の精霊を根こそぎ消費するだろう。

いざとなったら魔法神術よりレーザーキャノンとかミサイルとか手もあるし。












夕映と話をしていたら、葱が復活して姉さんにアドバイスされていて、ドラゴンがどーのこーの。
明日菜が、夕映とのどかから朝に図書館島に入ったらドラゴンが居て行く手を阻まれたとか。

舌引き抜いたら錬金術の材料になるかしら?
葱が姉さんにバコーンと殴られた。

「21世紀の日本でドラゴンなんかと戦うことがあるかー!」

「それはいい考えですね。何がいいですか、葱玉?」

「「は?」」

私が口を挟んだら二人して、なにを言ってんだこいつ? 的な顔でクエスチョンマークを浮かべた。

「ドラゴンと戦いたいのでしょう。 ヒュドラですか、それともヤマタノオロチ? コカトリスとかでも有りですね」

手を振って足元に召喚魔法陣を展開。
影の中からにゅろ―んと出せばいーんだけど、見た目重視で演出。

「いえっ!いいです、遠慮しますっ!」

青い顔で首を振る葱玉。

「遠慮しなくても、パクッとやってもらいますよ?」

椿ストックで色々と悪い竜は取り揃えてあるんですよ~。











「あ、そうだ櫻―、これ・・・」

明日菜が半分に砕けた水晶のネックレスを見せてきた。
ああこれ、明日菜の誕生日にあげた・・・や、つ・・・?

「・・・・・・って砕けたあ!?」

「ごめん、せっかく貰ったのに・・・。 京都であの夜の騒ぎの時だと思うんだけど」

「いや、これ砕けるものなのですけれど。 危なかったですね、アスナ」

「え・・・?」

「護符なので、持ち主の重傷一回分肩代わりしてくれるんですよ」

「じゃ、じゃあこれがなかったら?」

「明日菜、今頃は入院してましたね。 渡しておいて正解でした」

目に見えてサーっと青くなる明日菜。
砕けた奴は受け取って、加工し直して返す事に。

「ふむ、面白そうだな。 もっと造れないのか?」

姉さんが手にとって眺め、私に聞いてくるけど、首を振る。

「材料が地球に無い物ばっかりで、これは私が持ち込んだ最後の一個」

とりあえず錬金術用に箱庭を作って、ザールブルグ大陸まるっとコピーしてこよう。
姉さんの箱庭みたいにして造ろう。
人の居ない生態系でどんな風になるかね?

















    ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆


「そういえば、エヴァ姉さん。 椿とは何処で?」

「記憶の中に無いのか? 二百年ほど前に少しな・・・」

「記憶はあるけれど、三億年分を何処から探せばいいのかと」

年齢尋ねられたらあれかね、何処かの青い人みたいに「三億と二百六十だ!」とか言わにゃーならんのかのう・・・。
それはそれでエライ自分のダメージがデカそうだ。
























(あとがき)
なんか融合説明で終わってしまったような。
話が全然進まないですけれどー。

本当は迷子から話を始めるはずだったのですが、資料が無くて適当な設定に突っ込まれるのが嫌で飛ばしました。



[7259] Act.2
Name: C-K◆ae02f8a5 ID:27ec9c7b
Date: 2010/04/13 17:21






学校から帰宅して、リビングで読書。
数日間程姉さんの別荘内でみっちり魔法神術の行使練習をし、大体の力加減と応用方法をマスターした。

読書といっても、内側の図書館から引っ張り出した椿の蓄積記憶。
あの女郎、二百年ごとに生涯記憶を複製人格(コピー)に圧縮して凍結保存していたらしいのだ。

最後に会ったときも、ここ四百年分くらいの記憶しか持ってなかったみたいだし。
こんなのが後150万冊もあるのかと思うと頭痛が・・・。

そもそも読んでいるというより、私の外部メモリに転写してるだけだしなあ。 人のことは言えない。
一冊終わるごとに手の中で灰になって消える。 そしてまた影から引き抜いて開くと勝手にページがめくれて行く。

何回か繰り返した頃に葱を連れて姉さんが帰宅。

「おかえりなさーい、エヴァ姉さん」

「ああ、帰った。 またいつものようにな」

「こ、こんにちは。 櫻さん」

おどおどした仕草で挨拶をする葱を完全無視して、胸に抱いていたチャチャゼロを離す。
茶々丸とチャチャゼロを連れ、葱と共に別荘のある地下室に下りる姉さん達を見送ってからソファから立ち上がる。



「アイン、ちょっとー」

「なんでしょうか、主?」

「ストーカーが来ているようだよ、七人ほど。 どうやって歓待したものかねぇ?」

周囲に散らしてあるステルスガジェットのカメラを直結した監視網から、家に近付く七人の女生徒の姿を確認した。
キッチンでマフィンだかを焼いていたアインを呼ぶ。 

アレからなんか気に入ったようで大抵は聖王教会のシスター服着てるけど、今日は、その上からヒヨコの絵柄の入った黄色いエプロン。
こんな姿のアイン見たら、はやて喜ぶだろうなあ・・・・・・。

家中の電気消してリビングにパル置いて準備完了、パルと言うのは、最後に椿に会った時の小さい柴犬だ。 
これがまた犬に見える分普通では無いのである。



















★★ 【二部】スパロボ的な何か Act.2 『 悪魔は食べられる 』 ★★


















    ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆


「・・・・・・あれ? 誰も居ない?」

明日菜は暗く静まりかえったエヴァンジェリンのログハウスを窓から覗き、一緒にやってきた六人と顔を見合わせた。
意を決して朝倉和美が扉を開け、こわごわと中に入る。
残りの六人がおっかなびっくりと室内に侵入したときだった。

 う~~わんっ!

「うわひゃああああああっ!?」(×7)

ふいに目の前の人形に埋もれたリビングの一角から上がった吠え声に、一斉に飛び上がった。
棚やソファの陰に隠れるも、クーが薄暗い室内を見渡してソレに気付く。

「・・・・・・なんだ、犬アルヨ」

テーブルの上にちょこんと座っている小さな柴犬。
威嚇するように未だ「う~」と唸っているが、体の小ささも影響してスゴんでいるとは思えない。


「わあ、可愛い~」

「エヴァンジェリンさんの飼い犬でしょうか?」

「うーん、エヴァちゃんよりは櫻のって気がするけどな~」

「・・・・・ッ!  皆さん! ソレに近付いてはッ!!


のどか、夕映、明日菜がそれぞれ近付くが、不穏な気配を感じた刹那が声を上げて危険を示す。
ブルッと震えた小さな柴犬が、メキメキッっと音を立てて肥大化したからだ。

変わったのは図体だけでなく、脱皮するように擬態を破り捨て中から凶悪な面構えを現す。
鋭い牙で構成された顎が二重の口を、昆虫のような複眼に変化した黄色い目を、前足は恐竜のごとく鱗の生えた鉤爪に。
後ろ足と腹をぶち破り、青白い触手が何本も突出し、尾は蠍の様な針を生やした節くれだったものに。
青い剛毛が体を覆い、耳からは山羊の様に捻子くれた角が飛び出し、頭頂部は天井に擦る様。


 UGOOOHOOOORRRRRRRRUUUUUUU・・・


地球上に存在する生物に当てはまらない唸り声を発しながら、先頭集団で硬直している三人へ顎を開口。
口内にびっしりと生えた繊毛のようなものを目の当たりにし、速攻で気絶するのどか。 
生物的特徴を口走りながら現実逃避する夕映、醜悪な嫌悪感から心が震えて動けない明日菜。

後ろに居た朝倉と木乃香も同じように恐慌状態に陥っていた。
友人を守るために飛び出そうとしたクーと刹那だったが、黄色い複眼と視線を交わしたと思った瞬間、訳も解らず膝が落ちた。
たったいま、その瞬間に筋肉弛緩剤でも注入されたように。

床に膝を付き体に力を込めたが動くことも出来ず、化け物の顎がのどかに向いた時。

部屋の照明が点灯した。

しゅるしゅるっと逆再生するように、その姿を小さな柴犬へ変化させる化け物。
後ろから差し出された人物の腕がその柴犬を抱え上げ、にっこりと微笑んだ。

「パルご苦労様。 そして七人とも用があるのでしたら呼び鈴を鳴らしてください。 住居不法侵入罪ですよ」

銀髪のシスターを脇に従えた櫻が柴犬を抱きしめ立っていたのを見て、安心と疲れで全員共崩れ落ちた。



















「か、歓待ぃ──っ!? あのおっそろしいのの、ど・こ・が・歓待なのよっ!!」

「人の家に無断で侵入してきたのは何処のどなたでしたっけ?」

「う・・・・・・」

のどかが気絶から回復し、櫻が「歓待のご感想は?」と告げて明日菜が櫻に食って掛かった。
が、正論にあっさり反論を封じられ、七人は素直に非礼を詫びる。

「・・・・・・で、ご用件は?」

「あ・・・・・・。 そうだった」

「ネ、ネギ先生はどこですか!?」

のどかが櫻に詰め寄るが腕の中で見上げる子犬を見て悲鳴を上げ、夕映の後ろに隠れた。

「くっくくく・・・・・・。 葱に会いに来たのですか、それならこっちへ」

先頭に立って家の中の地下室へ案内する櫻、薄暗い中に無数の人形が安置されているところを突っ切り、奥の小部屋へ。
球体の瓶の中に大小二本の塔が立っているミニチュアを提示した。

「何よコレ?」

「この中に居るから。 エヴァ姉さんもね」

櫻が指を鳴らすと、七人全員が存在を薄くさせその場から消えた。
ボトルシップを覗き込み、米粒以下の人影が小さい塔に居るのを確認した櫻は子犬を足元に下ろし、元来た道を戻る。

「はー、やれやれ。 あと一時間は誰も居ないからヒマだなあ」





「アイン、留守番頼むね~」

「は、エヴァ様達にはなんと?」

「外食とー、女子寮までお風呂」

「解りました、お伝え致します」

着替え諸々を入れたバッグを持ち、傘を差して外へ出た櫻。
空を見上げ、溜息を付くと女子寮目指して歩き出した。















    ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇


3‐A生徒数人とともに大浴場にやって来た鳴滝風香は、脱衣場で髪を結い上げていた櫻を見付けて走り寄った。

「櫻ー!」

「あら、風香、史伽。 ・・・・・・それに皆様も」

「櫻とここで会うのも珍しいね」

「ハルナ、今日は何か締め切りがどうとか言ってませんでしたか?」

「まあ、忙しいケドお風呂くらいはね・・・・・・」

静かだったのがあっという間に姦しくなってしまい、櫻内の椿は閉口した。

   『・・・・・・やかましい』

( いいじゃない、楽しくて )

「あ、櫻じゃん」

「あら、朝倉さんとクー。 もう一時間ですか、中は楽しかった?」

「ああ、まあ色々ね・・・・・・」

「いつも通り、騒がしいのは何処でも変わらないアル」

早々に湯船の端で腰を落ち着ける櫻の背後で、化粧水で騒ぎ始める3-Aの面々。

「櫻はこれ・・・・・・は必要なさそうだね? って言うか白すぎない?」

裕奈が勧めようとするが、あまりな肌の白さに逆に心配そうに聞いてくる。

「まあ、昔からこんなものですし。 ご心配には及びません」

「そうなんだ・・・・・・。 じゃ、ちょっと塗ってみる?」

「そうですね、ではちょっとだけ」

湯船から上がり、裕奈に分けてもらったソレを肩や腕に塗っている最中。

「おい、ちょっとそのぬるぬる中に入れてないよなー?」

とか言う疑問を上げる長谷川千雨の声に始まって、悲鳴を上げて風呂の中を逃げ惑うまき絵他数名。
妙な魔力の流れを目にした櫻は、千雨の傍に飛び込むと魔力を纏った手をお湯の中に突っ込んだ。


一方、ヘルマン配下のスライム三人衆の一匹ぷりんは、風呂の中の生徒にセクハラ狼藉を働いていた所を、
乱入者の櫻にいきなり水の流れごと強引に掴まれたため、水中で実体化して相手を怯ませようとしたのだが・・・・・・。
視線を合わせた相手の瞳、獣の目のごとく金色の光を見た瞬間、魔を構成している核ごと消し飛ばされた。

  『低級魔物ごとき《凶眼》で充分だろう』

残った二匹が櫻を脅威と感じたのか慌てて仕事をし、常人には感じさせない速度で朝倉、クー、のどか、夕映を湯船から連れ去った。
しかしながら常人などとは程遠い櫻には無意味である。
無言の命令に、足元の影より魚の様な図体が形を生じさせる。

( フォード、後の二匹を追いなさい )

《・・・・・・・・・・・・・・》

  『見つけたら喰っていい』

ぬるぬるの感触でまき絵が風呂場のふちで倒れたとき、千雨は湯船の櫻の足元に黒く長い影を見た。
ソレは櫻の傍を離れ、湯船の反対側まで移動しスッと消える。

「どうしましたか? 長谷川さん」

「あー、いや見間違いだったかも・・・・・・」

知らずに櫻を凝視していたのだろう、彼女に声を掛けられるまでボーッとしていた自分に気付き、首を振る。

  『なんだ今の魔物は・・・・・・。 追わなくていいのか?』

( フォードが片付けてくれるでしょ? )

たまには他の人達と談笑しながら湯につかりたかった櫻だったが、数分もしないうちにエヴァに呼び出される事となった。











    ◆  ◇  ◆ sukura side ◇  ◆  ◇


木の枝の上と言いますか、野外公開堂の良く見渡せる高台に呼び出された私はエヴァ姉さんと合流した。
そこには何故か楓も居たので軽く会釈を交わす。

「・・・・・・来たか。 何処へ行っていた?」

小雨が降る中だったので、シールドで頭上に天幕を作り周囲の水気を飛ばす。

「アインに言ったんだけどなあ、超包子行って女子寮のお風呂」

「櫻様、マスターは一緒に連れて行ってもらえなかったのが残念だそうですよ」

「誰がそんな話をしているかっ!?」

「櫻殿、小技が増えたでござるな」

「うん、魔法が使えるようになったのよ、本気を出せば麻帆良が吹っ飛ぶが。 出さなくても吹っ飛びますけれど」

アイン・ソフ・オウルとか、縮退砲とか、キャッチ・ザ・サンとかね。 終焉の銀河でもいいけど。

「ふっ飛ばす事に意味は無いでござろう?」

「意味がある日が来るかもしれないじゃない?」

楓との視線の間で火花が散る。 うむ、やはり根本的には楓とは相容れないか?

「雑談しとらんでアレを見ろ」

姉さんに促されて眼下の戦闘を見る。 さっきから視界の端でチラ見してたけどね。

コートを着た老紳士と葱と・・・・・・あの犬耳は京都で見たねえ。
人質にさっき風呂場から攫われた朝倉さん&のどか&夕映&クー。 

刹那は解るとして那波さんは何で捕まってるの?
あと半裸で触手プレイ途中の明日菜。 

あ、カモが捕まって水の中突っ込まれた。 役に立たない淫獣だなあ
まあ、あっちのスライムはすぐ片が付くだろう。

「爵位級の魔族ですね、あのお爺さん」

「やはりそうか、さてあの二人でどうにかなるかな・・・・・・クックックック」

口では笑っているけれど表情はすっごーい心配そうな姉さん。
茶々丸と視線を合わすと、肯定するように頷いてくれる。
なんだろうこれ、子犬の喧嘩に核ミサイルが参加しろってか?

どっちにしろあっちの四人には、脱衣場から持ってきた衣服を渡さなきゃならないし。
終わった後に行って「早く来い」とか言われるのも嫌だしなあ。
人質の方だけでもなんとかするか・・・・・・。

背後からの楓の視線を背中に感じつつ、普通に歩くように木の枝から空中に一歩踏み出した。


















    ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇


相手を上空へと打ち上げ、更に追撃しようと拳を構え突進する暴走ネギ。
そんなネギへ向かって、悪魔の本性体で相手の口から閃光が奔る。 その直後、真横から大質量が直撃し、悪魔を弾き飛ばした。

直撃したのは直径五mはあろうかと言うトゲとチェーンの付いた鉄球だ。
弾き飛ばされた悪魔は、放物線を描いて観客席の外側まで飛んで行き、落下した。

鉄球はと言うとチェーンに引き戻され、ブン投げた者の手元に戻る。
全高十五m以上、白ヒゲの赤青白のトリコロールカラーに身を包んだ巨大な機人がそこに居た。

それ自体は鉄球を回収すると、自身の影にずぶずぶと沈んで行き姿を消す。


ネギと小太郎の友情パワーともいうべきやり取りの中、再び公会堂前に戻ってきたヘルマンは観客が一人増えているのに気付いた。
おしくも五人がかりの「火よ灯れ」が行使され水牢が破裂、慌てたスライム二匹はその場にいつの間にか現れていた櫻に摘まれていた。

「なーんか助けに来る必要なかったなー・・・・・。 はいフォード、餌」

背後に放り投げたスライムは、コンクリートの地面から浮かび上がった頭が獅子の怪魚に咥えられ、飲み込まれた。

「・・・・・・キミを招待した覚えは無いのだがね」

「貴方の相手はあちら、無様に負けると良い。 そしたら喰ってやる」

友情タッグで突っ込んでくるネギと小太郎を指差し、バッグをおろした櫻は人数分のタオルと着替えを取り出した。
















     ★    ★    ★    ★


「着替えを届けてくれたのは良いんですが・・・・・・、出来ればもう少し早く助けに来て欲しかったですね」

「いやいや、夕映。 私もついさっきエヴァ姉さんに呼び出されたばっかりでしてね」

ネギの雷の斧で雨雲が吹き散らされ、星空が見渡せる舞台の上で櫻は夕映に非難の目線を向けられていた。
打ち倒したヘルマンは倒れ付したまま動かない。
ネギと何事か話しつつ、高笑いを上げ消えていこうとしたときその時。

地面から唐突に鎌首をもたげた黒く巨大な獣の顎がヘルマンを咥え、一息に飲み込んだ。
目を丸くして唖然とする一同の前で、げっぷをした黒い塊は地面の染みになり、滑る様に移動し櫻の影へ同化した。

つい今しがた何かを吹っ切った顔をしていたネギは、如何したら良いのか解らない表情で呆然としていた。

「ふむ、イマイチ何かを得られるモノでもなかったですねー」

「ちょ、・・・・・・櫻──っ!!?」

何かを台無しにされて凍りついたネギの代わりに、明日菜達が櫻へ突っ込んだ。


















    ◆  ◇  ◆ sukura side ◇  ◆  ◇


「なんかえらいつっこまれたわ」

「あれは私も自業自得だと思うぞ」

感動の台無しに流されたのがどうとか、明日菜たちに色々非難されたなあ。
折角着替えとか持って行ってあげたのに、恩を仇で返された気分・・・・・・。

家に戻ってきて姉さんはご飯とお酒、私はアルコール2%以下のほぼジュース。
融合しても私基準なため、お酒に弱いのは変わらないという。

「ああ、エヴァ姉さんにもコレ渡しておくね」

「ああ、スマンな」

「茶々丸にもね」

「ハイ、頂いておきます」

渡したのは横4cm縦2cm厚さ3mmのプラスチック板、キーホルダーになっていてそれぞれに名前が書いてある。
コレは錬金術で作り出した通信機で、使用方法は指で弾いた後に通信相手先の名前を言えばそこに繋がる仕組みになっている。

「一応、超さんと葉加瀬と真名には渡してあるんでそれだけ覚えておいてね」

「いいのか? 加担すれば他の魔法関係者に睨まれる事になると思うぞ」

「面白そうなので、その時はその時。 加担するとは言ってないよ通信機が欲しいって言うから作っただけでしょう」

故郷の文化祭ではいつもいつも騒ぎを起こす側だっただけに、たまには騒ぎに巻き込まれる側に回ってみたいのもある。
相当大掛りな上に規模もとんでもなくでかいと聞いたので普通に参加する側に回り、普通に楽しみたい。

「ああ、そういえば昔は先輩直伝クスハ汁とか作って配ったっけな。 たまには作るか」

「・・・・・・・マテ。 何か言葉の中に不穏な意思を感じるぞ、何を作る気だ?」

「出来てからのお・た・の・し・みv」

「「怖ッ!?」」

私のウインクに姉さんとチャチャゼロが瞬時に壁まで後退した。


























(あとがき)
外伝書いていた頃の勢いがなくなってしまいました。
正直、原作の何処まで食い込んだものか悩んでいる所もあるのですが、主人公がものぐさで動かない所が・・・。

ホワイトドールが居るのは櫻と椿でスパロボ系ゲーム世界を総舐めにした結果です。
ストーリー的には変化無いのでそっちのエピソードは考えてませんが。

4/13:幾らか修正しました。



[7259] Act.3
Name: C-K◆ae02f8a5 ID:27ec9c7b
Date: 2010/04/13 17:37





「櫻、ふぬけた面をしているな。 ちょっと来い」

「・・・はい?」

エヴァが追い立てるように妹を別荘に連れ込んだのは、中間テストも終わったその日の事だった。

















★★ 【二部】スパロボ的な何か Act.3 『 喧嘩上等 』 ★★

















『Load cartridge.』

「・・・え?」

手加減などを一切抜いて放たれた氷の矢99柱、カートリッジ二発分の魔力を丸々注ぎ込まれたソレは訳も解らず突っ立っていた櫻に直撃した。
爆発的な水蒸気と冷気が立ちこめる中、水煙の中を凝視していたエヴァはニヤリと笑みを浮かべる。

氷結した氷の塊に覆われながらも、何のダメージも負っていない櫻が姿を現す。
良く見れば、櫻の周囲にはうっすらと青白いシールドが囲み、氷はその表面を覆っているに過ぎなかった。

「ええと・・・。 つまり戦えと言う事ですか?」

「そうだ、お前があまりにも気が抜けているようなのでな。 少しはこの姉を楽しませて見せろ」

「えーと・・・、やらなきゃダメ?」

不敵な笑みを浮かべたエヴァから無言の圧力を受け、ひと跳びで間合いの外側に後退する。
冷や汗を垂らしながら更に間合いを空けようとする足元へ、無詠唱の闇の矢が幾本か。
横に飛んだ櫻の眼前をエヴァが占め、胸元を掴んで引き摺り倒された。

「ここに来た頃の抜き身みたいな感じが無くなっているぞ、お前」

「うぅ~、そ、それは・・・」

「少しは反撃をしろ」

「難しい事言わないでよ・・・」

受身を取って転がった櫻の腹上に乗り、鋭い眼光を向けてくる姉になすすべも無い妹。
それは見る者によっては別の光景にも見えたことだろう。

「ちょ、ちょっと何やってるんですか!?」

横から少年の声が二人を静止に掛かった。
エヴァ達が横を向くと、本日の修行にやってきたネギがあせった表情で此方にやってくるのが見えた。
同行者の明日菜とこのか、刹那も心配そうな顔で駆けつけてくる。

「姉妹喧嘩? 珍しいわね、エヴァちゃんが」

「姉妹は仲良くせえへんとあかんよ?」

呆れた顔で立ち上がったエヴァが仲裁に入ったネギを蹴飛ばした。

「渇を入れていただけだ、よけいな邪魔をするな!」

その隙に腕の力だけで後ろに跳んだ櫻は背後に魔方陣を起動、飲み込まれるようにその場から姿を消す。
去り際の無表情を見たエヴァは舌打ちをし、腹いせがネギへ向かった。

「この馬鹿ボーヤが! 櫻に逃げられただろーがあっ!!」

眼を三角にして怒る師匠にポキャア! と殴られ涙目になるネギの間に明日菜達が割り込んだ。

「ネギに当たることないでしょーがっ!」

「お二人が諍いなんて珍しいですね。 何かあったのですか?」

胸にネギを抱きかかえて庇う明日菜と、エヴァを覗き込む刹那。
仏頂面で「フンッ」とそっぽを向いたエヴァは、怪しい笑みを浮かべネギを睨みつけた。

「今日の修行は特別に厳しくしてやろう、フフフフ・・・」

いつもと違う狂気に彩られた眼光に晒された三人は、薄ら寒い予感に震え上がった。



















    ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆


「オ、モウ終ッタノカ」

「うん、逃げてきちゃった・・・」

別荘から強制的に離脱した櫻は、リビングでヒマそうにTVを見ていたチャチャゼロに声を掛けられた。
水仕事をしていた茶々丸もキッチンから顔を覗かせ、元気の無い櫻の側に近付き、解けかけていたリボンに気付いて結びなおす。

「ありがとね、茶々丸」

「マスターと何かあったのですか?」

「うーん、ちょっと・・・喧嘩・・・かなあ?」

「ハッ、珍シイ事モアッタモンダナア。 ドッチガ勝ッタ?」

「だから私の不戦敗。 敵前逃亡だってば」

血みどろの大惨事になるのが楽しそうに話掛けるチャチャゼロに、引きつった顔で言い返す櫻。
ソファ脇の定位置で座り込み、丸くなって溜息を吐く櫻の髪を茶々丸が撫でる。

「エヴァ姉さんから見ると私って甘くなったのかなあ・・・」

「前ヨリピリピリシテネェノハ確カダナ」

「マスターなりに心配してるんだと思います」

二対の視線の中、アルマジロのように丸まっていた櫻だったが。
しばらくすると立ち上がり、地下室の方を見て再びため息を付いた。

「エヴァ姉さんと顔合わせづらいから、しばらく外に出てる」

肩を落として玄関に向かう櫻を見送った二人は、顔を見合わせる。
チャチャゼロが頷き、茶々丸が頭を下げる意思疎通をすると、チャチャゼロが櫻の後を追った。

「マテ櫻、タマニハ俺ヲ外ニ連レテ行ケ」

「・・・え? いやいつも連れ出そうとすると怒るじゃない?」

「気ガ変ワッタンダヨ、今日ハ俺ヲ持ッテイケ」

「・・・じ、自分で歩く気無し・・・・・・」

いつもの胸前でチャチャゼロを抱え上げると、グランゾンの能力で作り出したワームホールにその身を突っ込んだ。



















    ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆


「・・・ほっと」

櫻が空間跳躍の後、出現した先は世界樹前の広場だった。
階段中央に突然出現した彼女の姿に、目撃した数人からざわめきが広がる。

中間テスト最終日とあっては、昼ごなしに多くの学生が集まり目撃した人間の数はそれなりに多い。
当人は全く気にせず、小声でチャチャゼロと会話をしていたりする。

「何処カ行ク宛ハアルノカ?」

「特には決めてないの。 ふらふらするだけ」

   『注目の的だな』

思案しながら近辺に見える学園都市の施設を見渡す。
特にピンと来るものが無く、諦めて適当に歩き出そうとした櫻の腕を横から伸びた別の手が掴んだ。

「ちょっと待ちなさい、貴女」

目線だけを向けた櫻の背後に、スーツ姿の男女が居た。
黒い肌に眼鏡を掛けた長身の男性、髪の長い眼鏡の女性の二名である。

( チッ、魔法教師ダゼ、コイツラ )

( 知ってる、データーは貰ったからね )

無言で自分達をねめつける櫻に、表情を険しくした教師達は小声で問いかける。

「貴女、魔法生徒ですね。 人目の多い所で魔法を使うなんて何を考えているんですか?」

「所属と名前は? 少し職員室まで来てもらおうか」

女性教師の手を振り払いざま、歪曲歩で二人の後方に移動。
驚愕の表情で振り返った二人に無表情で言い返す。

「・・・魔法? 何の話でしょうか? 貴女方には理解し得ない技術による移動方です、言いがかりはやめて貰いましょう」

「それでも一般人の前で疑われる行動を取ったのは事実だ。 おとなしく同行しなさい」

   『しつこいな、・・・殺すか』

( 殺ルナラ俺ニモ殺ラセロヨ )

( なんで二人ともそう好戦的なのよっ!? )

「貴女っ! ・・・ッ!?」

女性教師は再び櫻の腕を取ろうとし、その姿を瞬間的に見失ったのに目を見張る。
男性教師が周囲を警戒し、先程まで櫻の立っていた直線状にある建物の屋根に姿を発見した。

「子供の相手をする気は無いんです。 静かにしてもらえませんか?」

空間を捻って二人にだけ聞こえるように声を届かせ、そのまま建物の屋根を走り出した櫻。
認識障害の術を使って教師二人はその後を追った。














「すとーかーカ、アイツラ・・・」

「教師と言うのは存外大変なんだよ。 生徒を品性方向に仕上げるのがお仕事」

   『異議なし』

結局、二名の教師、ガンドルフィーニ教諭と葛葉刀子教諭と屋根の上で鬼ごっことしゃれ込むことになってしまい、櫻は頭痛を抑えた。
もはや鬼側は手段を選ばなくなり、時々後方から剣圧やら魔法の矢やらが飛んでくる。
櫻のグラビティフィールドに全て弾かれてはいるが。

「案外しつこいなあ~。 何処まで追いかけてくる気だろう・・・」

「ヨシ、反転シテ攻撃シヨウゼ」

「いや、私はただ落ち込みたい場所を探したいだけなんだけどね・・・」

   『普通に戦えば良かったじゃないか。 それでエヴァは満足するだろうからな』

「相手がエヴァ姉さんだと言うのが一番の問題」

「御主人モ別荘ノ中ジャ、チョットヤソットジャ死ナネェカラ、ドカント殺ッタレ」

「ソレが出来れば、落ち込みもしてねーってのっ!」

泣き笑いのような顔で腕の中にいるチャチャゼロに反論する櫻。
考え事をしようにも追っ手が邪魔で、だんだん腹の中に黒いものが溜まってきた櫻の鬼気に椿も突っ込みを控えた。

屋根の上で急ブレーキを掛け、追っ手と相対する。

「いいかげん、しつこいっ!」

言い放って影よりミサイルを発射、チャフ・スモークで自身の周囲と追っ手の足元へ適当に広がるように。
【機神図書館】内より幾つかの武装をセレクト。 目標を教師二人に設定して射出した。

「ぶった切れソードブレイカー!! 打ち砕けガン・スレイヴ!!」

光の刃の生えた鏃型の飛行体が六機、コウモリの羽のついた砲塔が六機、影より飛び出した。
空中を不規則な起動で飛び交い、それぞれが螺旋を描くようにして教師に襲い掛かる。

砲撃と斬撃により、空中と屋根の上で大爆発が起こり周囲の注目が頭上に集まる頃、煙と粉塵を利用して櫻は転移。
多少スーツの裾が焼け焦げた程度で済んだ二人の教諭は、苦い顔で爆発から離れた屋根の上に退避していた。

「・・・何者だ、あの少女?」

「分かりませんが、学園長に確認してみましょう」






















    ◇  ◆  ◇ sukura side ◆  ◇  ◆


だーもう、やっと撒いた。 ちょーウゼェ・・・。
ええーい屋根の上適当に逃げ回ってたら、結局女子校舎エリアまで回って来ちゃったじゃないか・・・。
さっき帰宅したばっかりなのに、用も無くまた来るとか暇人みたいだなあ。

   『やたらと追い立てられる日もあるものだな』

「・・・椿、口調がエヴァ姉さんみたいになってきたわよ。 最近・・・」

   『ほっとけ。 考え事がしたいなら教室へ行ったらどうだ? 一人は居るが静かだと思うぞ』

「ああ、幽霊の人が居たね・・・。 あれには話しかけて良いものかなあ」

前には解らなかったけど、融合してからああ云う存在が見えるようになった。
出席番号一番、相坂さよさん。 毎朝出席で呼んでいる葱はあの人が見えているのかな?

霊視とか魔眼とかの類らしいけど、魔力が高い人には無意識に見えるらしいとは姉さんの受け売りだけど。
それはそれとして椿と私の視覚は同等のはずなのに、猫が戦車に見えるのは私だけってどういう事よっ!?
これはもう私個人の呪いか【機神図書館】の特性か、・・・なんて不条理(涙

しかしこの学園何処もやかましいからなー、何処行っても静かなところが無いや。
結界作ってその中に閉じこもるか、図書館島行くか、後は山まで逃げるか宇宙に飛ぶか?
都市内に居るとまたあの二人組みに追い掛け回される可能性もあるし。







「さーくーらーっ」

とか呼び止められる人が多いしなあ、女子中体育館だったし。
呼びかけられた声と共に、後頭部目掛けて真っ直ぐ飛んできたボールらしきものを後ろ手にキャッチ。

後ろで「おおーっ」とか上がる感嘆の声が数人。
場所と声から誰なのか解っているけど、振り向いて文句くらいは言ってやる。

「予告無しにボールを投げつけると危ないですよ。 裕奈・・・」

「後ろも見ずに止めたじゃん」

GJとかいうポーズ付けて明石裕奈さん以下バスケ部の面々が・・・。
つか、バスケットボールって結構痛いぞ。 こんなもん投げつけるな!

「いや、だってさー。 櫻、体育館入ってきてから外を警戒するように覗いててさー。 その後ぶつぶつ呟いてるじゃん、注目の的」

裕奈の言葉に同調し、揃って頷くバスケ部の人達。
確かに緊急避難先に選んだよ。 他のコートからコッチ見てひそひそする行動取ってるのもいるけど、知ったことか。

「それはそれは失礼致しました。 少々見覚えの無い教師に言いがかりを付けられていたもので」

一応キチンと姿勢を正して、深く頭を下げておく。 
一部のメンバーはわたわたしながら似たように頭を下げるのも居るけれど、後輩の子かな?

「あー、櫻が礼儀正しいのはこれでノーマル状態だから、あんた達が恐縮することは無いよー」

「ノーマル以外だったらどうなるんですか私は・・・?」

「それにしても品性方向、成績優秀の櫻が教師に追いかけられるなんて珍しいねー」

「見覚えの無い人たちだったので・・・」

近寄っていってから「ハイ」とボールを手渡しすると、周りに居た後輩さん? 達が教師の特徴とかを聞いてきた。
素直にメガネでガングロと女の人で、と説明すると何人かの子達にガンドルフィーニと葛葉先生だと教えて貰う。
ガンドルさんは頭が固くて、葛葉さんはバツイチだとか。 それはそれで面倒な相手だなあ。



「よし、じゃあ櫻も混ぜて今日の練習いくかー」

「・・・すみません、裕奈。 どういう流れでそんな話になったのか説明してもらえませんか?」

つか、悩みたいんだよ。 最初の主旨だったはずなんだよ、どうしてこうなった!?
後輩さん達と普通に雑談してたはずなのに、なんで制服のままバスケコートの中に立ってるんだ私?
明石裕奈おそるべし、気が付いたら引き込まれてるなんて・・・。 エクセレンさん思い出す強引さ。

は~と、溜息をついた私に裕奈は肩を叩きながら言った。

「まーまー、体動かせば悩みなんか忘れるって」

「忘れたら問題先送りにしかなりませんよ」

「う゛っ・・・」

ジト目で睨みつける。

「乗ットケヨ。ウダウダ考エテルヨリマシジャネ?」

ボソッとチャチャゼロが妙に事を進めてくれた。

   『そうだな。私達は考え込むとドツボにハマるからな。 すっかり忘れた方がいい』

あう・・・、自分にダメ出しされた。
解ってるんだけどねえ。 どーせ考えたって、戦うか逃げるかの二択しかないし。





「櫻、人形持ってやるの?」

「ハンデだと思えばいいですよ」

「ハンデ?」

「この際だから言っておきますが裕奈。 私は病弱でもお嬢様でもありませんから遠慮はいりませんよ」

だいたいボールを、ネットの中にぶち込めば良いだけの競技でしょーが。
一投するだけで事が足りるわな。

3on1とかでやるとボール渡されたけど。
容赦なく笛鳴った直後にアンダースローで上に投げ、放物線を描いたそれはゴールをすこーんと通過した。
この間約三秒。 裕奈以下三名一歩も動けず。

「い、今のマグレでしょ? もう一回やろ、もう一回」

「結果は変わらないと思いますが、いいですよ」

で、二回目。
ピーッ! ぶんっ ひゅるるるる~ すこーん おわり。

「・・・・・・」

「もう一回やりますか?」

「・・・・・・(こくこく)」

その次は笛鳴った瞬間に一斉に襲いかかって来たので、加速装置。
簡単に説明しますと、一秒を五秒間に引き伸ばし、裕奈達の後ろに回り込んで普通にシュート。
ちゃんとドリブルもやったんだよ? はい終わり。

『お、大人気ないな・・・』

「一般人相手ニ容赦ネェナ・・・」

「獅子は兎を狩るのにも全力を尽くすと言う」

  『魔王が村人相手に全力を出すな』


コート内で膝を付いて項垂れる三人の部員(裕奈含む)。
裕奈だけがふらふらと立ち上がり、幽鬼のように近付いてきて私の肩を掴む。

「バスケ部に入りませんか?」

陰のあるハードボイルドタッチな表情でそう告げられた。 
いや三年じゃもう引退でしょうーが。 ・・・あ、ココ持ち上がりだから関係ないのか?
だからといって部活なんかする気も無いしなー。

「私に勝てたらいいですよ?」

「よっしゃー! さすが櫻、話せるぅ~」

すでに6-0なのだが、裕奈のハンデ希望を押し切られ六人vs一人でやる事に。
しかもチャチャゼロ持ってるから片手しか使えないと・・・。 






・・・で、途中をはしょって一時間後。 

103-0で勝ち。 ふ、魔法も使ってもう反則技の嵐ですぜ。
メンドくさくなって自陣側のコートから投げ入れるわ、床にバウンドさせて入れるわ。(←まだ普通の対応)
魔球(魔法で曲げた)を投げるわ、加速したり歪曲歩使ったり。(←ただのチート技併用)

バスケ部員全員 orz 体勢で打ちひしがれております。
ちょっとやりすぎたかもしれない・・・。

「コレハヒドイ」

   『もはやただの尻の毛まで毟り取る悪魔の所業だ・・・』

「貴方達どっちの味方?」

膝を付いたまま震えながら顔を上げ、滂沱の涙を流しながら親指を上げる裕奈。
私がやらかしたものながら、根性ですねえ。








で、もう夕方だし・・・。
家に帰りづらいが、帰らなきゃ茶々丸が心配するだろうなあ。
裕奈達に別れを告げてから家に帰る事にする。

いつぞやの世界に比べれば ”帰る所”があるだけ遥かにマシなんだろうけども。
エドワードの世界に居たときには街を行き来してるだけで、住居らしい住居もなかったなあ。
拠点は家じゃ無かったし、エンヴィーとかラストとかまだ元気なのかね・・・。

とっぷりと陽が暮れたり空と同じ重い気分に蓋をして、家にたどり着くとドア前に腕組みした姉さんが立っていた。

「・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

「・・・あ、あのね、」

「・・・まったく、せっかくの茶々丸達の料理が冷める。 早く帰って来い」

「あ、うん。 ごめんなさい」

怒られるかと思った、怖かった。

『魔王が・・・、いやもう何も言わん・・・』

「良カッタナ」

「うん、でも選択はしなきゃいけないよね・・・」









    ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆


翌日の放課後。
別荘内でネギが三人掛かりでぼこぼこにされ、吸血された後。

  『ぐだぐだ悩んだわりには実行に移すのは今日か・・・』

「思い立ったが吉日。 こういうのは勢いが大事」

今その姉であるエヴァはネギの腕に吸いついて血を補給中である。
以前に櫻の血を酔った勢いで飲ませたことがあるが、あの時は融合前で「普通」程度の味だったらしい。
今は血液中の魔力含有量が凄まじいので美味らしい。
のだが、依存症的な味なので余程の事が無い限り遠慮するとか言われたため、ネギが少し羨ましい櫻だった。

  『羨ましいか?』

「よろしいのですか主? エヴァ様と喧嘩するなどと・・・」

傍らに完全武装で立つアインが不安そうに見下ろしてくる。
闇の書暴走時のバリアジャケットに六枚の黒い翼、周囲に浮かぶ五個のデバイス。

「たまには姉妹喧嘩も必要かなと。 胸を借りるつもりでやらせてもらおう」

二百三十年の長きに亘り唯一人の主として櫻に仕えてきたアインは、彼女の心中を良く理解している。
何時自分の世界に戻れるのか解らない次元漂流の中、狂気に傾き始める心。
融合して自分の世界へ戻れると安定したが、双方の記憶から歪んだ感情。

それでも基礎本体は櫻な為、家族に依存する癖は変っていない。 その彼女が今現在の姉と戦おうとしている。 
自分の知る限り家族と争うなどとはしない主に、不安で胸がいっぱいなアインだった。

しかし、櫻は不安で揺れているアインを見上げて笑う。

「大丈夫だよ、アイン。 ちょっとした意思表示だから」

「・・・は?」

「エヴァ姉さんは安定して腑抜けになっている私が酷くもどかしい。 私は安定したからこそ落ち着いて居られる自分が良い、少し歪んでいるけどね。 私の感情とエヴァ姉さんの感情は反発してるんだよ。 口で言って解ってもらえるか怪しいので、実力で示そうかな~と」

「それで・・・喧嘩ですか?」

「うん、家族と喧嘩なんて始めてかも。 ブリット兄さんや、キョウスケ兄さんともしたことが無いからね。 ここはひとつ、持てる力を駆使してドカンと行きましょう。 アインはさっき言ったことお願いね?」

「・・・・・・わ、判りました」

アインの役目は戦闘になった時、茶々丸とチャチャゼロの相手だ。
クラールヴィント、グラーフアイゼン、レヴァンティン、レイジングハート・エクセリオン、バルディッシュ・アサルトの五本のデバイス。
これをなるべく非殺傷設定で使い、二人を無力化するのが彼女の役目である。

「それにこんな強力な能力、相手に出来るのってエヴァ姉さんくらいじゃない?」

たとえ、リミッター掛けまくりで本来の1/10程度であろうとも。
ネギへの吸血行為が終わった頃を見計らい、ディス・アストラナガンを憑依。 蝙蝠羽根を背中から生やしエヴァの前に進み出る。

「どうした? 櫻、随分と物々しいな?」

「うーんとね・・・」

「ああ」

「昨日の続きっ! [炎/爆(Braker)]!」

ひと息で片手に出現させた火球をそのまま投擲。
飛び退いたエヴァの居た場所で大爆発、唖然としていたネギを容赦なく吹き飛ばした。

「ほう、昨日とは気迫が違うじゃないか」

「昨日引きずり倒されて痛かった分の仕返し、だからね!」

空中に浮かんで不敵に見下ろすエヴァの高さまで飛び上がり、滞空しつつ四つの火球を生み出す櫻。

どちらの味方をしたものかとオロオロする茶々丸に、刃を収めて見物人になるチャチャゼロ。
其処より間合いを空けてバルディシュを構えるアイン。

妹の視線を受け、手を振って茶々丸ら従者の補佐を断るエヴァ。
重い溜息を吐いたアインはバルディシュ等デバイスを待機状態に戻し、茶々丸達と並び立って改めてプロテクションを張り巡らす。

「アイン、・・・良いのですか?」

「主にもエヴァ様に干渉されたくない事くらいありますから」

「真ッ向カラ勝負カ。 ドッチガ勝ツト思ウヨ?」

「出来ればマスターにも櫻様にも争って欲しく無いのですが・・・」

「ダメです! 姉妹で理由も無しに喧嘩だなんてっ!」

従者達の心配そうな会話に空気を読まないネギが割り込んだ。
「何言ってんだこいつ」な視線を全く無視して「僕止めてきます」と、走り出したネギは次の瞬間床と熱いキスをかましていた。

「ネギ先生、申し訳ありませんが大人しく見物していてください」 茶々丸はネギの頭部を鷲掴みにして片腕を極め床に押し倒し。

「誰ガテメェニ止メテクレト頼ンダヨ?」 チャチャゼロの刃物コレクションが、ネギの服を隅々まで床に縫いつけ。

「今すぐココで死ぬか? 小僧」 アインの手にあるバルディッシュのハーケンセイバーがネギの眼球すれすれを捕らえていた。

邪魔はしませんと従者達に誓ったネギは、縄とチェーンバインドにぐるぐる巻きにされ、床に転がされる結果となった。


「リク・ラク・ラ・ラック・ライラック、いくぞ櫻っ! 出し惜しみは無しだ!!」

床に転がされた芋虫にも気付かない程、双方に集中している姉妹の方はエヴァが楽しそうに始動キーを唱え始めた。

「手加減抜きで手段も選ばないからっ! ソードブレイカーッ!! [獄/炎(Flame Blaze)]!」

別荘内の空を埋め尽くす数の氷の矢と、光の刃を携えた遠隔兵器六機&火球四つと吹き上がる炎蛇が激突した。























まあ、結果として戦闘は五分と経たずにエヴァから強制終了が申し渡された。
あまりの破壊力な攻撃の数々に別荘内の施設が耐えられなかったのである。

小塔は根元から折れ、橋は完全に落下。
大塔の上面施設はほぼ壊滅で、側面は所々から煙が上がっている。
綺麗に整備されていた砂浜などは大きなクレーターで占められていた。

別荘内の空間にはオレンジ色のドラム缶型ロボットが無数に飛び交い、応急処置で各所を直していく。
櫻は作業用小妖精:働魔(ドーマ)を召喚し、応急処置されたところから細部の再生に掛かっていた。

エヴァ達は破壊され尽くした大塔の端でその作業風景を眺めていた。
その辺りだけは茶々丸とチャチャゼロを守る為にアインの張ったプロテクションで、施設の一部が無事だったからである。

ネギだけは主人に似たアインがまったく配慮しなかったため、爆破とか爆風の余波で撹拌されボロボロになって側に転がっていた。
黒焦げになった芋虫と言うか、まんまかりんとうのようである。



「クククク・・・・・・ハ、ハハハハハッ」

「マスター?」

杯を傾けながらプライヤーズの飛び交う様を眺めていたエヴァは、笑みを浮かべていた。
やがて、心底可笑しくて堪らないような笑い声を上げていく。

腹を抱えて笑い転げるエヴァに、どうかしたのかとうろたえる茶々丸とアイン。
似たように「ケケケケ・・・」と楽しそうなチャチャゼロ。

「クククク・・・。 どこが手加減抜きで手段も選ばない、だ。 あの大馬鹿めが・・・」

「エヴァ様?」

「至近弾や直撃は全て避け、周囲で誘爆させるだけか此方の魔法を迎撃するだけじゃないか。 アイン、お前の主は甘いな?」

「それが主の本質ですから」

「分かった分かった、もう腑抜けなどとは言わん。 こっちは本気で行ったというのに、妹に手加減されたとか私が無様じゃないか」

「判りました。 お伝えしておきます」

「先に出るぞ」と言い、黒焦げ芋虫を引きずって茶々丸らを連れて歩き出す。
橋はまだ直っていなかったので小塔まで飛び、櫻の前を通り過ぎて行く。
垂れた耳が見える犬のようにしゅんと気落ちした櫻の頭を撫でてから、外界と繋ぐ陣の修復をする。

「壊しまくっちゃってゴメンね。 エヴァ姉さん・・・」

「まったくだ。 キチンと直しておけ」

何でエヴァが笑みを浮かべているのか判らなくて、首を傾げる櫻の目の前で消える四人。
アインが先程の言葉をそのまま伝えると、安堵して大きく息を吐く。

「超怒られるかと思った・・・」

「さっきまでの強気は何処へ行ったんですか?」

「始めたらやっぱり怖くなって、・・・ねえ?」

   『感心してたのに、爆風だけで敵を倒す方法なんて聞いてくるなっ! この阿呆』































(あとがき)
よくよく考えたらスパロボ成分が全然ありませんorz

文章内にも少し書きましたがハガレン世界の主人公はウロボロス側でした。石作る人ですね。

原作に沿った話のはずだったのに、未だに学祭に入れません。
何をどう間違えたらこんな話になるのだろうか・・・。



[7259] Act.4 (書き直し)
Name: C-K◆ae02f8a5 ID:27ec9c7b
Date: 2010/04/16 21:56





「ノーパン喫茶とは、股下すれすれのスカートを履いたウェイトレスが客席を行き来する時にそこから覗くチラリズムを楽しm・・・・・・」

   すっぱああぁぁん!

「人が色々忠告を飛ばしているのに何を説明してるのかなっ?」

「なんで真名が叩くんですかっ!?」





「・・・・・・なんで知ってんだあの病弱お嬢様・・・・・・」
















★★ 【二部】スパロボ的な何か Act.4 『 幽霊騒動と魔術運用 』 ★★



















 
紆余曲折したのちに学園祭の出し物はお化け屋敷に。
メイドカフェぼったくりバーよりはましなのかなあ。 お化け屋敷か 昔大騒ぎになったよねたしか、主に私のせいで。

「エヴァ姉さん」

「なんだ?」

「人形使いでお化け屋敷・・・・・・」

「なんで私が有象無象のために腕を振るう必要がある?」

・・・・・・ですよねー。

ウチのお化けはペルゼイン・リヒカイトとかジュデッカかな?
どちらにしても教室には入らないか。

後はパル以下わんこシリーズを並べて置いて、人が通り過ぎる度に変形させればいいか。









お化けと言うと、白くてかろうじて人型でうぞーとした顔があってー、定番だよねぇ。
放課後に教室でみんなと被り物造り。
部活してないし、ここなら実行委員会に参加厳重注意とか言われんでも済む、被り物より造形はどうだろうか?

錬成陣書いて、その辺の紙とダンボールと粘土を錬成っと。
バシュッ って音とフラッシュくらいの光に幾人かがびっくりして逃げ腰になる。

「「きゃっ!」」

「あ、ごめん」

「び、びっくりしたあ。 ・・・・・・なにやったの櫻?」

「お面を作ってみました」

机の上に出来上がったソレを置いて、じゃじゃーんと晒してみる。
色塗ってないから、見た目は白い顔にダンボールの包丁が刺さってるだけだけど。

「うわ、リアル・・・・・・」

「グロいなー」

色をペタペタ塗っていると、まき絵とハルナが寄って来てまじまじと見つめ、そしてすぐ気付く。
面倒だったので近くに居た明日菜の顔を造形したのだ。
右目の辺りに包丁が刺さり、左目は上向きで頬はこけ、口が半開きで血が多量に飛び散っているといった表情だ。

「あれ? これってアスナ?」

「うん、ハルナ当たりですね。 お人よしのアスナはすぐこうなりそうで・・・・・・」

「人を勝手にスプラッタにしないでよっ!」

「折角作ったんだからこれを壁にずらーっと並べましょうよ」


とりあえず採用されました。 他の人のも作るって事で。
完成品明日菜デスマスクは桜子が持って、風香と史伽を追い回して遊んでいます。 あーあ・・・・・・。

第二弾は夕映をモデルにするよー、と言って夕映とのどか、桜咲さんと明日菜の前で練成。
顔面血みどろでムカデが這うと云った物にしたら、のどかが卒倒しました。 これは面白い。

「ちょっ、ちょっと櫻っ!」

「なんでしょうか、明日菜?」ぺたぺた

「皆の目の前で大っぴらに魔法使ったらマズいんじゃないの?」

「魔法じゃありません。 練成は技術です」塗り塗り

「そうは言っても誰かにバレたら大騒ぎになりませんか? ネギ先生にも迷惑がかかるのでは・・・・・・」

「そんなのは自業自得です、私は魔法使いじゃありませんしね~。 二つ目完成~」

もう明日菜も桜咲さんも心配性ですねぇ、これでも認識阻害の薄い魔力を周囲に散布しているのに。

三つ目を誰にしようかと教室内の人の顔を見回していると、端っこの方で霊圧が上昇する感覚。
そもそも魔法的とか霊的とかの部分は手に入れて間もないので、曖昧な感覚と言った表現で使わざるを得ないのである。
周囲の状況に照らしあわされた椿の部分が私にそう伝えてくるだけなので。 
この辺も修練が必要かも、どうやって練習したものか分からないけど。

霊圧上昇は相坂さんだった、何かするのかな?
見ているうちにまき絵の後ろに半実体化。 
まあ、ボーッとした人型のもやが教室に出現したとたん、もの凄い悲鳴が響き渡った。
教室に残っていた人数分なら音量も凄いわ。 

とっさに耳をふさいだけれど、教室内に残っていたほとんどの人間が取る物も取らず、脱兎のごとく逃げ出していった。
ちなみに相坂さんも皆の悲鳴に驚いて、壁をすり抜けてどこかへ行ってしまった。
・・・・・・おいおい、幽霊だか自縛霊だかがそれでいいんか?



しばらく待ってみたが誰も戻ってくる気配が無い。
霊障が発生した現場だしねー、中学三年生という少女達にはそこら辺の度胸はないのかな?

しかたなく皆が放り出した物を適当にまとめておく。
誰の机に置いておくべきか? まき絵とかの机上にまとめて置いておけば判るかな。

  『ひとり戻ってきたな』

「ん? なあに椿?」

椿の思念に顔を上げる。 ふらふら~と意気消沈した相坂さんが、黒板すり抜けて教室に戻ってきた所だった。
私一人が残っているのを見ると、慌てた様子でペコペコと頭を下げ始めた。
なんか小さい声で「ごめんなさいごめんなさい」とか聞こえるけど、作業の邪魔を謝ってるのかな?

  『・・・・・・で、どうするの? 櫻』

なんかニヤニヤしながらソファーに寝そべる椿が想像できてしょうがないんですが。
私の対応がそんなに面白いか。 自分だろうが、まったく・・・・・・。

「・・・・・・相坂さん」

「はっ? は、ははいっ!」

とっさに返事はしたけど戸惑ったまま私を見て、しばらくしてから飛び上がって吃驚した彼女。

「いや、そんなに吃驚しなくても良いと思うんだけど」

「で、でも。お話してくれた人なんて初めてで、わ、私、わたし・・・・・・」

その後はぐしゅぐしゅ泣き出しちゃって、なだめるのが大変だった。
ハンカチは・・・・・・渡してもすり抜けるな。 頭を撫でたりしてなだめるしかないね。




「改めて、巳子神櫻よ。 櫻でいいので、以後よろしくお願いしますね」

「あ、ああ相坂さよっです! よろしくお願いしますっ」

名前交換の挨拶だけですごい必死なのだけれど、こりゃもっと早く話しかけてあげれば良かったかもしれない。

「ごめんねー。 相坂さんが見えるようになったのはつい最近で、声掛けてあげられなくて・・・・・・」

「いえっ、私も先程は驚かせてごめんなさいっ!」

「ああ、頭下げなくても。 私にはちゃんと相坂さんが見えてたけど、他の人には人型のもやに見えたでしょうね」

誰か写真とっていたような? 明日の麻帆良新聞にでも載っちゃうかもしれん。
魔法先生とか魔法生徒とか居るからなあこの学園、退治とかされるんならとっくにされてるよね・・・・・・。

葱が来る前に高畑先生は出席取る時、相坂さんを飛ばさないで呼んでたから、明日にでも一度確認しに行ってみるか?

最終下校時刻の九時まで相坂さんと少し話をした。
六十年もこの教室で授業を受けているだとか、姉さんは十五年も中学生をやっているだとか。 いや、本人から聞いたけれど。
夜は教室が暗くて怖いから、近所のコンビニでひっそりと佇んでいるだとか。 ・・・・・・幽霊が??

「んー、じゃあコンビニまで移動するからそっちで話しようよ」

「ええっ!? いいんですか? エヴァンジェリンさんに怒られませんか?」

「大丈夫だと思うよ、時々夜の警備員の仕事とかもあるし。 遅くなっても文句は言われ・・・・・・」

『櫻ッ!! 貴様何処で油を売っているっ!?』

言いかけたところ、脳内に姉さんの怒り心頭の声が響き渡った。

「・・・・・・げ・・・」

「ど、どうしたんですか~?」

「ちょっ、ちょっと待ってね」

パクティオーカードを取り出して頭に当てる。 噂をすれば影、うーむ通信符じゃなくてカード通信で来たか。

「はい、櫻ですー。 どうしたのエヴァ姉さん?」

『いつまで夜遊びをしている気だ、早く帰って来いっ! 』

「夜遊びて・・・・・・。 学園祭の準備だって言ったと思うんだけど?」

『う・・・・・・、と、とにかくお前が居ないと落ち着かない奴が居るのだ。 さっさと帰れっ! いいなっ!』

捨てぜりふを最後に、反論するヒマも無くぶっつりとカード通信は切れた。
ところで、私が居なくて落ち着かないって誰? チャチャゼロは違うか、茶々丸の事かなあ?

心配そうにこっちを見つめている相坂さんに苦笑いを返し、両手を合わせて頭を下げる。

「ごめんねー、エヴァ姉さんが早く帰って来いって。 コンビニの件はまた今度でいいかな?」

「あ、いいえ。 エヴァンジェリンさんが心配しているのなら仕方ありません。 そのかわりまた今度絶対お話しましょう」

「うん。 ・・・・・・でも教室に相坂さん一人残していくのもねえ」

「大丈夫です。 またコンビニ行きますから」

双方向通信にはならないけど見たもの聞いたものを私に送れるヤツがいたよね、たしか。 

   『ソークだな、教室くらいの大きさなら出せるだろう』

「ん、ソーク、ソーク。 ちょっと出てきて~」

影に向かって呼びかける。 少し待つとずるずるとその身を影から抜け出してきた。
私の奇行を不思議そうに見ていた相坂さんだったが、ずるりと私の足元から出現したソレを見て硬直した。 ・・・・・・おや?

「相坂さん、この子ソークって言うんだけど。 この子が見た物聞いた事は私に伝わるから、ヒマだったら話しかけてみて?」

「あ、あ・・・・・・、ああああああ・・・・・・あの、そ、そっそそれっ!?」

「うん?」

足元から胴を半周して右肩に半身を乗せ、首を相坂さんの方に向かって伸ばす。 どうやら挨拶をしているらしい。
まあ、見た目は全長八mもあるようなアナコンダだけど、椿の眷属だっただけあってこれでも普通では無い。

「へ、へへへヘビ・・・・・・ですよ、ね?」

「うん、一見するとアナコンダだけど。 大丈夫、幽霊は喰わないから」

私が言ったとたん「ひっ!」と悲鳴だが一言だかを発し、硬直したまま後ろに倒れて姿を消してしまった。
・・・・・・やはり、幽霊とはいえ女子中学生に爬虫類はダメか?

ソークの方は頭を項垂れて縦線をいっぱい背負っていた。 どうやら女の子に拒絶されたのがショックだったらしい。

「ああああ、ソーク。 げ、元気出して。 ね? ね?」

今度は家に帰り