「強制動員真相究明ネットワーク結成総会」

とき:7月18日
場所:在日本韓国YMCA国際ホール
約100名
主催:「強制動員真相究明ネットワーク」準備委員会
案内人:同委員会共同代表ら、ほか

 歴史認識や戦後補償問題になると必ず「証拠がないではないか」などとおっしゃる方がいるのですが、今回の「強制動員真相究明ネットワーク」の結成でも分かるように韓国政府や在日団体はまさにその証拠を探すため一生懸命活動しているのです。
これは別に日本を困らせてやろうと思ってやっているのではなく、こうしている間にも次々と無念のうちに亡くなりつつある犠牲者達にあのときの真相を分かってもらうため、さらには東アジアの共通した歴史認識を持つため、そして東アジア共同体の布石を置くために取り組んでいることなのです。
 そんな彼らに対して日本政府は何をやっているかというと「プライバシー保護」や「資料の傷み」を理由に閲覧を禁止するなどしています。

関連ページ 「『戦後60年に向けて』真相究明・戦後補償問題の展望」



 7月18日,午後1時30分から同17時30分ころまでの間,在日本韓国YMCA国際ホールにおいて、約100人出席の下、「強制動員真相究明ネットワーク(以下、「ネットワーク」)結成総会」が開催されました。
 同「ネットワーク」は、神戸学生青年センター館長の飛田雄一さんや小林よしのり氏を裁判で粉砕した上杉聡さん(「日本の戦争責任資料センター」事務局長)など平素から北東アジアの平和と友好に尽力されている「日本人」が中心となり、強制連行問題に取り組んでいる団体・個人が連帯していくことを目指して準備されてきたものです。
1 開会あいさつ−内海愛子さん(恵泉女学園大学教授、「ネットワーク」共同代表)
 「これまで日本国内では遺骨調査など朝鮮人強制連行に関する多くの調査研究が進められてきました。当『強制動員真相究明ネットワーク』は、こうした日本国内での調査結果を韓国の『日帝強占下強制動員被害真相究明委員会』の活動に提供し、協力できるよう努めていきたいと思います」
2 記念講演1「戦時動員(強制連行)された朝鮮人とその遺族の戦後」−山田昭次さん(立教 大学名誉教授)
3 記念講演2「資料から明らかにされた強制動員の事実と課題」−樋口雄一さん(在日朝鮮人運動史研究会)
4 来賓あいさつ
○ 崔鳳泰さん(「日帝強占下強制動員被害真相究明委員会」事務局長)
○ 李鐘太さん(民団中央民生局長)
 「日本の企業や政府には未だに強制動員の物的証拠が残っています。これらを公開することによって日韓で同じ歴史を共有しなければならなりません。これが東アジアの平和のための第1歩です」
 「強制動員犠牲者の遺骨返還問題がまた盛り上がりを見せ始めています。私達は、遺骨を早急に返還することにも尽力するつもりです」
○ 洪祥進さん(「朝鮮人強制連行真相調査団」事務局長)
 6月に「朝鮮人強制連行犠牲者遺骨ホットライン」を開設しました。この結果、約2000人の遺体と約600柱の遺骨の情報が集まりました。こうした草の根的な結びつきが意外な成果を生み出すものです。だから今回の『ネットワーク』結成には大変期待しています」
○ 李熙子さん(「太平洋戦争被害者補償推進協議会」共同代表)
 「『ネットワーク』結成にあたって何か贈り物をしようと考えたのですが、韓国・国家記録院で記録されている強制連行者名簿の記録が一番いいと思いました。これは2003年に洪祥進氏が42万人の名簿を韓国に持ってきてくれたため、一気に延べ48万人分の名簿となりました。しかし、例えば連行者の一人である私の父の場合3回名前が出てきます。すなわち、かなり重複があるということであり、今後当協議会としてはこうした重複を調べて整理することが重要な仕事になると思います」
※ 韓国・国家記録院の強制連行者名簿を「ネットワーク」に贈呈。
○ 阿部知子議員(社民党政策審議会会長)
 「私の選挙区は、神奈川県藤沢市ですが、ここの名物には湘南海岸の他に拉致被害者家族会があります。彼らは、藤沢でかなり活発に活動しており、私の選挙事務所にもあいさつに訪れました。つい先日も横田夫妻の出席を得て集会が行われました。そういう風景を見る度に正直心が引き裂かれる気持ちになるのですが、韓国・朝鮮人はこれと同じ気持ちを60年間も味わってきたのです」
○ 石毛えい子議員(民主党衆議院内閣員会委員)
 「今、超党派で『恒久平和議連』というものを結成し、活動しています。超党派と言いつつもほとんど民主党がメインでやっており、与党議員はほとんどいません。会長は、我が民主党の鳩山由紀夫代表が努め、幹事長は私が務めています。現在、『恒久平和調査局設置法案』(↓)の立法作業に当たっています。しかし、今期通常国会での審議は難しく、先送りになる可能性が高いです」
恒久平和調査局設置法案(正式名:国立国会図書館法の一部を改正する法律案)
2004年6月9日衆議院提出・衆法第51号
提出者:鳩山由紀夫、石毛子、藤田幸久、石井郁子、土井たか子、横光克彦 賛成者187名
 国立国会図書館法(昭和二十三年法律第五号)の一部を次のように改正する。

第六章の次に次の一章を加える。

   第六章の二 恒久平和調査局
 第十六条の二 今次の大戦及びこれに先立つ一定の時期における惨禍の実態を明らかにすることにより、その実態について我が国民の理解を深め、これを次代に伝えるとともに、アジア地域の諸国民をはじめとする世界の諸国民と我が国民との信頼関係の醸成を図り、もつて我が国の国際社会における名誉ある地位の保持及び恒久平和の実現に資するため、国立国会図書館に、恒久平和調査局を置く。
 恒久平和調査局は、次に揚げる事項について調査する。
 一 今次の大戦に至る過程における我が国の社会経済情勢の変化、国際情勢の変化並びに政府及び旧陸海軍における検討の状況その他の今時の大戦の原因の解明に資する事項
 二 昭和六年九月十八日から昭和二〇年九月二日までの期間(以下「戦前戦中期」という。)において政府または旧陸海軍の直接又は間接の関与により労働者の確保のために旧戸籍法(大正三年法律第二十六号)の規定による本籍を有していた者以外の者に対して行われた徴用その他これに類する行為及びこれらの行為の対象となつた者の就労等の実態に関する事項
 三 戦前戦中期における旧陸海軍の直接又は間接の関与による女性に対する組織的かつ継続的な性的な行為の強制(以下「性的強制」という。)による被害の実情その他の性的強制の実態に関する事項
 四 戦前戦中期における旧陸海軍の直接又は間接の関与により行われた生物兵器及び化学兵器の開発、実験、生産、貯蔵、配備、遺棄、廃棄及び使用の実態に関する事項
 五 前三号に掲げるもののほか、戦前戦中期において政府又は旧陸海軍の直接又は間接の関与による非人道的な行為により旧戸籍法の規定による本籍を有していた者以外の者の生命、身体又は財産に生じた損害の実態に関する事項
 六 第二号から前号までに掲げるもののほか、戦前戦中期における戦争の結果生命、身体又は財産に生じた損害の実態に関する事項
 七 戦前戦中期における戦争の結果生命、身体又は財産に生じた損害について当該損害が生じた者に対し我が国がとつた措置及び当該損害に関し我が国が締結した条約その他の国際約束に関する事項
 館長は、前項各号に掲げる事項につき調査を終えたときは、その結果を記載した報告書を作成し、両議院の議長に対し、これを提出しなければならない。
 館長は、第二項各号に掲げる事項につき調査を終えるまで、毎年、調査中の事項についての報告書を作成し、両議院の議長に対し、これを提出しなければならない。
 第二項の調査及び前二項の報告書の作成を行うに当たつては、関係人の名誉を害することのないよう十分に配慮しなければならない。
 第一六条の三 館長は、前条第二項の調査を行うため必要があると認めるときは、関係行政機関の長及び関係地方公共団体の長に対して、資料の提出その他の必要な協力を要求することができる。
 館長は、前条第二項の調査を行うため特に必要があると認めるときは、同項各号に掲げる事項について学識又は経験のある者その他の前項に規定する者以外の者(国外にいる関係人を含む。)に対しても、必要な協力を依頼することができる。
 関係行政機関の長又は関係地方公共団体の長が第一項の要求に係る資料の提出を拒むときは、その理由を疎明しなければならない。その理由を館長が受諾し得る場合には、関係行政機関の長又は関係地方公共団体の長は、当該資料の提出をする必要がない。前項の理由を受諾することができない場合は、館長は、両議院の議長に対して、第一項の要求に係る資料の提出が国家の重大な利益に悪影響を及ぼす旨の内閣の声明を要求するよう求めることができる。
 前項の求めを受けた両議院の議長が同項の声明を要求し、これに対して同項の声明があつた場合は、第一項の資料の提出の要求を受けた関係行政機関の長又は関係地方公共団体の長は、当該資料の提出をしなければならない。
 前項の要求後十日以内に、内閣が第四項の声明を出さないときは、第一項の資料の提出の要求を受けた関係行政機関の長又は関係地方公共団体の長は、当該資料の提出をしなければならない。
 附 則
 1 この法律は、平成十七年四月一日から施行する。
 2 当分の間、国立国会図書館の職員(館長、副館長、休職者(これに準ずる者として館長が定める者を含む。)及び非常勤職員を除く。)の定員は、九百六十七人とする。
 理 由
 今次の大戦及びこれに先立つ一定の時期における惨禍の実態を明らかにすることにより、その実態について我が国民の理解を深め、これを次代に伝えるとともに、アジア地域の諸国民をはじめとする世界の諸国民と我が国民との信頼関係の醸成を図り、もつて我が国の国際社会における名誉ある地位の保持及び恒久平和の実現に資するため、国権の最高機関たる国会に置かれる国立国会図書館に、恒久平和調査局を置く必要がある。これが、この法律を提出する理由である。

 本案施行に要する経費
 本案施行に要する経費としては、平年度約二億五千万円の見込みである。
 このあと勝木一郎さん(岡崎トミ子民主党参議院議員秘書)、福田誠之郎さん(石毛えい子民主党衆議院議員秘書)などその他の来賓の方の紹介をしたあと、引き続き、吉川春子議員(共産)、金景錫「日帝強制連行被害者団体全国連合」代表、小林千代美議員(民主)、そして北海道札幌華僑総会からのメッセージが紹介されました。
 小林千代美議員はメッセージで「盧武鉉大統領に言われたからではなく、日本政府自らの課題として取り組むべき」と述べられ、また北海道札幌華僑総会のメッセージには「強制労働で死なせた人達の遺骨すら今日まで返還していない場合も多数あり、これを憂えた民間人・有志が今懸命に調査している。その間、日本政府当局は彼らの努力を傍観し、“平和日本”のイメージを落としている」と率直な気持ちが述べられていました。

5 「ネットワーク」活動方針説明および結成宣言
 福留範昭「ネットワーク」事務局長が、以下のとおり「ネットワーク」の目的、活動方針を述べられました。

@ 韓国の日帝強占下強制動員真相糾明委員会に協力し、日本において全国的な活動を進める。
A 強制動員に関する資料の収集・集約、研究等を行う。
B 日本政府、公的機関及び企業が保有する強制動員関係資料の公開を求めるとともに、政府等が自らの責任として真相究明を行うことを促す。
C 日本の社会において強制動員問題への関心を高め、東アジアの民衆と歴史認識を共有することを目指す。
D 強制動員被害者・団体と連帯し活動する。
E 「恒久平和調査局設置法案」などの制定運動に協力する。
F ネットワークに集約された資料を保管・展示する空間を作る。

 引き続き、各地域からの報告があったあと、上杉聡(「日本の戦争責任資料センター」事務局長、関西大学講師、「ネットワーク」共同代表)の閉会宣言がありました。

6 記者会見
 集会終了後、同じ会場で記者会見が実施されました。
 会見で「日帝強占下強制動員被害真相究明委員会」事務局長の崔鳳泰が「日本人自らがこうした団体を作ったことはとても意義深い。共に頑張りたい。なお、8月に『日帝強占下強制動員被害真相究明委員会』の東京事務所を設ける予定である」と述べられました。




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