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「生涯千葉」に非情…移籍の巻クビだった

千葉ー札幌戦の行われるフクダ電子アリーナに姿を見せた巻
千葉ー札幌戦の行われるフクダ電子アリーナに姿を見せた巻

 J2千葉FW巻誠一郎(29)が、クラブから戦力外通告を受けていたことが18日、分かった。複数年契約の切れる来季以降は契約する意思がないことを、6月の時点で伝えられていた。その後「オシム人脈」で、ロシア1部のアムカル・ペルミから獲得オファーが届いていた。千葉はこの日、完全移籍でクラブ間が合意に達したことを明かした。ただ、千葉で選手生命を全うしたいと願っていた巻にとっては、あまりにも悲しい移籍決定劇だった。

 残留要請ではなく、戦力外通告を突きつけられていた。6月に巻はクラブ幹部から「契約を延長するつもりはない」と告げられた。神戸テクニカル・ダイレクターは18日の札幌戦直前に「(来季契約の)結論は出していなかった」と言葉を濁した。だが一方で「出場機会も少ない。また高い給料でベンチにいるのは居心地が悪いはず」と、戦力外と見ていたことは認めた。

 今季の巻は13試合出場無得点と本領発揮できていない。だがW杯代表メンバー選考に残っていたFWにとって、寝耳に水の通告だった。その直後、アムカル・ペルミから完全移籍のオファーが届いた。同ダイレクターは「本人の意思を尊重し移籍を後押しした」と説明したが、実際巻には選択肢は残っていなかった。

 「生涯千葉」と誓う巻にとって、悲しすぎる決断だ。06年末には当時の日本代表5人が移籍するチームの危機にあって、自らも大宮などからオファーを受けながらも残留を決意。契約交渉では「自分の給料を削っていいから、練習環境をよくしてほしい」と言い、その後もドイツのクラブなどからオファーを受けても、残留を選んできた。

 しかし深い千葉愛は、クラブに届かなかった。むしろ「言いたいことを言う」「発言に対するサポーターの反響が大きすぎる」と疎まれる節すらあった。前セルティックMF水野にオファーを出さなかったのと同様「オシム色」を弱めたいクラブの方針も影響した。札幌戦の直前には、練習参加すら禁じられた。それでも巻は「クラブから話をしないように言われています」と律義に無言を貫いた。

 巻を救ったオファーの裏には、元千葉監督の恩師オシム氏の後押しがあった。かつて旧知のアムカル・ペルミ幹部に「誰かいいFWはいないか」と聞かれた際、オシム氏は即座に「巻」と答えた。それが今回のオファーにつながった。

 この日の札幌戦でベンチから外れた巻は、週明けにもビザを取得し、その後現地で正式契約するとみられる。ロシアではCSKA本田との対決も期待され、成績次第で、欧州CLなどにも道は開ける。だが巻が今後大成功しても、最愛の古巣に手ひどくフラれた事実に、変わりはない。

 [2010年7月19日8時28分 紙面から]


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