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◎潜水艦について |
つい先日、中国海軍の原子力潜水艦「漢(ハン)級」が日本の海域を侵犯してマスコミ を騒がせました。 そこで近代潜水艦についてちょっと・・・ 日本は原子力の兵器運用は認められていないので、海上自衛隊の保有する潜水艦は ディーゼル・エレクトリック潜水艦なんですね。 これは、パワーソースがディーゼルエンジンで発電した電気で電気モーターを回し推進 力を得るという方式のものです。 原子力潜水艦は、このディーゼルの部分が原子炉になっているだけで、基本的な構造は 一緒です。 一説によると、ディーゼル・エレクトリックは原子力に比べて格段に静からしいです。 潜水艦の能力はいくつかの要素によって決定されます。 一つは推進力、要はスピードです。早ければ早いほど良いですね。 もう一つは索敵能力、如何に敵を発見するかの能力で、主にソナー感度とソナー手の能 力に左右されます。 もう一つは静寂性、静なほど敵に発見されにくく生存率が向上します。 もう一つは潜水能力、深く潜れるほど良いですね。 もう一つは攻撃能力、如何に強力な兵器を搭載しているかですね。 それらの能力の総合値が高い潜水艦が優秀な潜水艦といえます。 では、具体的にそれぞれどれくらいの能力なのかというと、これがハッキリとは判らな いんです。なぜならば、攻撃型原子力潜水艦は海軍の最高機密に属するもので、例え友 軍でさえもその位置を知らせることは無い、といわれるほど情報漏洩には厳しいです。 ですが、一応は性能は公開されていますが、その信憑性は怪しいものです。 で、一般公開されている能力で比べると、次のようになります。 とそのまえに、攻撃型原子力潜水艦とはどんなものかというと、原子力機関の推進力を 有した核ミサイル装備の潜水艦ということになります。 最近の潜水艦は、潜航したまま一度も浮上せずに何ヶ月も作戦行動を続けられるらしい です。 機械の性能よりも、搭乗員のほうが先に可笑しくなってしまうらしいですね。 で、今のところ世界最高の原子力潜水艦はいくつか候補があって、一つはかわぐちかい じのマンガ「沈黙の艦隊」で有名になったアメリカ海軍の「シーウルフ」。 この潜水艦は最新鋭の電子機器を満載しており、かなり扱いやすい船らしいです。 で、何よりもこの船は速い。水中速度 40ノット以上が出せるという驚異的なスピードをたたき出します。因みに1ノットは時速1海里= 1.8kmです。つまり、水中速度 70km以上! はやい!魚雷の推進速度は約 50ノットですから、この船の驚異的なスピードがうかがい知れますね。 そして、この「シーウルフ」に匹敵する潜水艦があります。 それはロシア海軍の「アクラ級攻撃型原子力潜水艦」。この船は速度ではやや劣るもの の、その可潜能力がものすごい。「シーウルフ級」以前のアメリカ海軍の主力攻撃型原 子力潜水艦「改ロサンゼルス級」の可潜能力は 300m少々。「シーウルフ級」は約400m。これだけでも充分すごいんだけど、「アクラ級」はなんと 600m!魚雷の圧壊深度は約 500m。圧壊深度とは船体が水圧に耐えられずに崩壊する深度の事でこの深度を超えると確実に沈没する深度です。 つまり「アクラ級」がめいっぱい潜ると攻撃する手段が無くなる、ということです。 ロシア脅威の科学力、恐るべし・・・ さらに、可潜能力だけ見るならば、同じくロシア海軍の「アルファ級攻撃型原子力潜水 艦」はなんと 1000m以上! いったい何に使うんだ? 海洋調査か?という風にロシア海軍の潜水艦の可潜能力は他の追随を許さない圧倒的なものがありま すが、それもそのはず、日本の深海調査艇「しんかい 2000」のコックピットに使われている船体はロシア製なんですね。特殊なチタン合金を真球にして作るんですけど、この 技術を持っているのはロシアだけなんだそうです。いったいロシアの潜水艦の抗張力鋼 はどんな材質で出来てるんだ? 「アルファ級」のこの能力は「沈黙の艦隊」でも取り上げられていましたね。 しかし、深く潜れるというのは良い事なんですが、魚雷の圧壊深度以上に潜ると自分も 攻撃できないんですよね・・・ 次に、潜水艦の主兵装である魚雷について・・・ 魚雷自体は今更説明するまでもないんで、魚雷の推進方式について。 特殊な魚雷推進装置として、「アスロック」「サブロック」といわれる物があります。 「アスロック」は“アンチ・サブマリン・ロケット”の事で、対潜水艦用の兵器で、主 にイージス艦から発射される対潜兵装の一種です。 これは、弾頭部分に魚雷を搭載したロケットです。ではなぜ、魚雷をロケットで発射す るかというと、水中を泳がすよりも空中を飛ばすほうが遥かに標的までの到達時間が短 くなり、逃げられにくくなり命中率が高くなると共に、敵が反撃に移るまでの時間を短 くし反撃される危険度が減少するからです。 有名な対艦ミサイルの“ハープーン・ミサイル”がこれに当たります。 どんなものか見たい人は、かわぐちかいじ関係をみてれば確実です。 「サブロック」は“サブマリン・ロケット”の事で、水中から発射される以外はアス ロックと一緒です。ですがサブロックは深度が浅くないと発射できないという弱点があ るため、深深度戦闘が基本となっている現代の潜水艦戦ではまず使われないでしょう。 この“サブロック”を唯一映画で見た事がありますが、 20年以上前の映画で「復活の日」という映画の中に出てきました。後にも先にも、この映画以外で“サブロック”を 見た事がありません。他にもなんかで出てきていたら教えてほしいですね。 で、この“サブロック”には“シーランス”というのがありますが、ほとんど忘れられ た存在です。 それと、世間一般に知られている雷撃戦の表現はかなりいい加減です。水中での魚雷の 破壊力は絶大で、必ずしも接触してから爆発させる必要はありません。 魚雷の安全信管作動距離は大体 1500mくらいで、自艦から最低でも1500m離れないと爆発しないようになっています。なぜならば、魚雷が1 km以内で爆発すると、艦船はダメージを受けるからです。この距離が近ければ近いほど艦船に与えるダメージは増大します が、 100m以内で爆発したら相当深刻なダメージを受けることでしょう。ですから、魚雷は必ずしも着弾してから爆発させる必要はありません。敵艦に近付いた ら爆発させれば良いんです。 しかし、映画やアニメなどの雷撃戦は何故か着発式なんですよね。こんなのは大昔の魚 雷で、接触式の信管しかなかった時のものです。最近の魚雷は、魚雷自体にアクティブ ソナーが搭載されているので、自分で標的までの距離を計ることが出来、更には爆発さ せる標的までの距離も任意に変えられるんですね。 次に、潜水艦の目、というか耳となっているのは“ソナー”ですが、このソナーには大 きく分けて“パッシブソナー”と“アクティブソナー”の2つがあります。 “パッシブソナー”とは呼んで字の如く受動的音波探信法のことで、周りの音に聞き耳 を立てて探る方法です。ほとんどの場合この方法で索敵します。 しかしながら、この方法は敵艦が無音潜行していると発見しづらく、場合によっては音 のゴーストに撹乱されてしまう可能性がある不完全な方法です。 もう一つの“アクティブソナー”は、自ら“ピンガー”と呼ばれる探信音を発して、跳 ね返って来た音によって索敵する方法です。この方法はかなりの高確率で敵を発見でき るのですが、自艦も確実に発見されてしまうという諸刃の剣でもあります。 既に攻撃準備が整い、魚雷も装填済みで発射管も開いたような状態で、最後に確実に敵 艦の位置を把握したいときなどに使います。 次に、攻撃型原子力潜水艦がスタンドアローンで最強の兵器と言われるのは、戦略兵器 としての核ミサイルを装備しているからです。 この搭載数は船によって違いますが、アメリカ海軍最大の攻撃力を持っているのは「オ ハイオ級」攻撃型原子力潜水艦で、ロシア海軍では「タイフーン級」攻撃型原子力潜水 艦になります。この2隻は、たった1艦でも北米大陸を焦土にさせるほどの核弾頭を装 備しています。 「シーウルフ級」や「アクラ級」でさえも、たった1艦で、日本と韓国と北朝鮮と台湾 とヴェトナムとタイランドとカンボジアとそこら辺の国を壊滅させる攻撃力を持ってい ます。 冷戦時代に使われなくて、本当によかった・・・ |
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