全勝四力士が、中日を翌日にして勝ち進んだ。横綱大関が同様の星を上げて勝ち進むのは驚くまでもないことなのだが、鶴竜と豊真将の二人には驚かされている。
その上に、鶴竜と豊真将の2人には、今場所勝つべくして勝っている印象がある。いってみればけが勝ちがなく、あたかも当然のことだといわん表情で勝ち名乗りを受けている。
その勝ち方にもかかわっている話だが、豊真将という力士には、勝とうとする意欲が先に出すぎて、攻め損なう相撲が往々にしてあった。その点がこの力士の弱点だったのだが、その欠点が今場所は適当に引っこんでいる。言ってみれば、攻める、防ぐ、実に程が良いのだ。
元来、現在の地位より高いところにいても当然の力士であるし、それ相応の評価も期待も持っていた力士なのだから、今場所をきっかけにして、大きくはばたくような野心を持ってほしいものだ。
先日から、二、三度書いていることなのだが、周辺が不調にかこっていたり、本調子が出なかったりする時は、自分が先手を取る立場になって、勝ち運を自分の方に招き寄せる。この戦略こそ、こういう場所には威力を発揮するものだと思うがどうだろう。
鶴竜という力士は、私は相撲の巧みさでは群を抜いている一人だと思う。だから、毎場所大きな期待をもって相撲を見ているのだが、なぜか成績にムラが出て、これが鶴竜の実力を思う存分出した相撲というところに行きつかずに終わる。
そういった観点からすると、この二人はファンを消化不良の中に落としこんだりする面を持っている。そんな二人が前半戦、いつもの弱点も見せずに勝ち進んできた。二人とも六枚目、十三枚目と番位でも恵まれている位置にある。こうした運がついて来た時には、遠慮なくその勝ち運を生かすべきだろう。
もう一人、全勝の大関琴欧洲だが、流れるような勝ち相撲で、やることなすことすべてツボにはまっていて、稀勢の里との距離がだんだん開いていくように思えた。稀勢の里も取り損ないがあったりしたわけではないのだが、それこそ実力の差が出たものなのだろうか。
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