大宮−名古屋 後半、ケネディのゴールをアシストし笑顔の闘莉王=NACK5スタジアム大宮で
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名古屋グランパスが劣勢を跳ね返し、リーグ戦再開初戦を飾った。大宮とアウェーで対戦、前半40分過ぎに退場者を出し10人になったが、後半31分にDF田中マルクス闘莉王(29)の右からのクロスをFWケネディ(27)が頭で合わせて先制。終盤の相手の猛攻をしのぎきって、勝ち点を25に伸ばした。
磐田は前節まで首位の清水を相手に優勢に試合を進めたが決めきれずスコアレスドロー。川崎に競り勝った鹿島が勝ち点を27とし、同26の清水から首位を奪った。FC東京は終盤までの2点リードを守りきれず神戸と引き分けた。
◆名古屋1−0大宮
限界を超えていた。ピッチにひざまずいた闘莉王は、喜びの輪が解けてもすぐには立てなかった。審判から手を差し伸べられて、ようやく起き上がった。
疲労困憊(こんぱい)の肉体にむち打って、決勝点をアシストした。後半31分、CKのこぼれ球を、大宮DFに猛チャージをかけてボールを奪い返し、こん身の右足クロスでケネディのヘッド弾を呼んだ。
「あれで交代させてくれると思ったんだけど…、監督もなかなか頑固なんでね」
強行出場ならぬ“強制”出場に苦笑いだ。約2週間ブラジルで父・パウロ隆二さんを看病し、試合3日前に帰国したばかり。体調は万全に程遠く、時差ぼけも残る。試合当日の昼食前には、ストイコビッチ監督にベンチスタートを直訴したが、「考えておく」という指揮官の返事と裏腹に、ふたを開ければスタメンに名を連ねた。
「予想していなかったし、正直持つとも思っていなかった。フラフラしていた」
試合中も交代をアピール。ストイコビッチ監督も「後半で代えるプランもあった」と明かすが前半42分のブルザノビッチの退場で「それも難しくなった」と、終わってみればフル出場。芝生の上に大の字に寝転んだ。
W杯の激闘後、燃え尽きかけた。父の病にショックを受け、最愛の家族と共に過ごすために引退さえ考えたが「半端な気持ちで終わらせるな」と逆に励まされて奮起した。長髪を短くカットしてサイドを刈り上げ、心機一転。そして今、新たな誓いを胸にピッチに立つ。「秋に優勝争いをして、元気になったお父さんを日本に招きたい」。近い関係者には、そんな目標を打ち明けている。
気力を振り絞って数的不利をはね返し、清水との上位対決に弾みをつけた。チームメートやサポーターの喜ぶ姿からも、「これからも頑張らなきゃ」とエネルギーをもらった。「一日一日、人生の大切さを感じながらやっていきたい」。最愛の父に日本一の勇姿を見せるため、闘将が梅雨明けと共に再開したJリーグを熱くする。 (塚田陽一郎)
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