強制連行の歴史・文化を一冊に 在日韓国人2世の男性
2003/12/17

 神戸市在住の在日韓国人二世の男性が、十六世紀末の豊臣秀吉の朝鮮出兵で強制的に日本に連れて来られた朝鮮の人々の足跡をたどり、「四百年の長い道」(リーブル出版刊)を出版した。男性は「強制連行という形だが、結果として朝鮮人たちが日本でさまざまな文化や芸術を繁栄させる基礎づくりを担った」と話している。(高森 亮)

 韓国民団兵庫県地方本部事務局長の尹達世(ユンダルセ)さん(58)=神戸市長田区。尹さんは在日韓国人向けの新聞「統一日報」の記者だった一九八三年から、新聞連載の取材をきっかけに調査を始めた。

 秀吉は領土の侵略を目的に一五九二年と九七年の二度にわたり朝鮮へ出兵。出兵した大名らが朝鮮から陶工などの職人や知識人らを数万人規模で連れてきたとされる。

 尹さんは、全国各地の郷土資料や都道府県史などをひもときながら各地を訪ね、朝鮮人が残した足跡をたどった。関ケ原の戦いで出兵した大名が敗れ全国各地に離散したのに伴い、朝鮮人らも各地に散らばったという。

 著書では、韓国で現在も食べられているドングリの粉を煮固めた「ムッ」という食べ物が、高知県の「どんぐり豆腐」と似ているといった食文化の話や、大分県久留島藩の家老にまで出世した朝鮮人捕虜の話などを取り上げている。さらに、日露戦争で活躍した陸軍大将の乃木希典の祖先が、城崎郡城崎町の野木谷に住んだ朝鮮人捕虜だったという、これまで公になることがなかった説も紹介している。

 続編の出版も検討中といい、尹さんは「日の当たらなかった朝鮮人の歴史を掘り起こしていきたい」と話している。B6判、二百六十五ページ。千五百円(税別)。リーブル出版TEL088・822・3720

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