金髪を二つに結った女の子、貴女が出てくる夢を最近よく見るようになった。
ある時は、花が咲いた草原で花の冠を作る風景。
ある時は、暗いところで身体を弄ばれた風景。
二つの風景に覚えはないけれど、前者は微笑ましく後者は……何なのよ!?ち、知識はほんの少しだけ有るけど九歳の子供に見せるもんじゃあないでしょうが!
夢の中なのに、八つ当り。しかも後者に出た女の子はあたしに瓜二つ……聖祥の制服を着てたけど他人の気がしない。まるで、あれはあたしの別の可能性……そんな気がした。
場面は切り替わり、花の冠を作った女の子。母親らしき女性に駆け寄って……渡す、これ夢よね?夢のはずなのに何故か懐かしく感じて、眼から涙が零れた。
その女の子が呟いた言葉。
「……も……と……が、ほし…い……」
貴女は何が欲しかったの?
そこで夢は終わり、あたしは目が覚める。
「……また、あの夢ね……あたしは誰?」
自分はアリサ・バニングスだ。なのに、夢に出てくる女の子。あの子もあたしのように思える、だからそう言ってみた。うん、訳分かんないわね。頭がこんがらってきたわ、要するにあたしの中にもう一人のあたしがいるような感じかしら?夢によると二人、あたしを含めて三人のあたし。
何それ、こわい。
呼びにきた鮫島の言葉を聞いて、あたしは支度を始めた。
その支度の途中で、最近様子がおかしいなのはを問い詰めてやると誓う。すずかが見守ってあげようと言うけれど我慢の限界よ!
絶対、隠してる事を暴いてやるんだから。あたしたちは友達、悩んでいるのなら話してほしい。力になってあげたい、あたし達にも何か手伝えることはあるはずよ。
燃える闘志を漲らせる、それがまさかあんな事になるなんて思いもしなかった。
学校の何処でも、なのはの様子を見守る。口を開けば口論になる、あたしは気が強いみたいだから。なら、すずかの言う通り見守ろう。その上で問い詰めるチャンスを見つけたら突撃、完璧ね。
その様子を見たすずかと先生、クラスメイトは何故か引いたけど。なのはは気付いてないから問題ないわ、後こう言った男子。
「おいおい、アリサすとーかーになってるぞ?」
ストーカー?失礼ね、SPに処理を頼んでおきましょうか。
後日、その男子を見たものはいない。と言うのは冗談で、まるで生まれ変わったかのように聖人になったと言う。
放課後、結局チャンスがこなかった。なのはのくせに尻尾を掴ませないとは……やるわね、あの娘の雰囲気的には猫娘。どうでもいいことだけど。
すずかの誘いを断り、一人で帰るなのはの後を追う。あれ、フェレットのユーノが来て肩に乗った……
違和感、夢の中のあたしの記憶。
―なのはは肩に狐を乗せていなかったっけ?
ハッとしてなのはの後を追う、この先は海鳴臨海公園ね。
そこに何かの用事があるのかしら?
あたしは呆然と空を見ていた。
なのはが白い服を着て杖を持ち浮いている……驚くべきだけど、問題は向かい合う黒い服を着た金髪の女の子。何げに服がエッチな格好ね……って違う!あの娘は!夢に出てくる花冠の女の子に似てるじゃない!?また、違和感。頭に浮かぶ言葉。
「……も……と……が、ほし…い……」
何が欲しいのよ!うぅ、頭痛がしてきた。
不意に浮かんだ“なまえ”
―あたしは……
―私は……アリシア・テスタロッサ?
パズルが解けたみたいの爽快感、夢の答えが出せた。
そうか、あたしはアリサ・ローウェルでもありアリシア・テスタロッサでもあるアリサ・バニングスだったんだ。
そして思い出した私(アリシア)がお母さんに告げた約束、まだ覚えているのだろうか?もしかしたら、あの黒い服の女の子は―
確かめるためには行動あるのみね!アリサ・バニングス、行くわよ!!
金髪の少女は、ある輪廻転生した少女。それがこの先に起こる事件の結末を変える、少女は小さな約束を思い出した。今度は“お母さん”の番、ここから始めよう。
交わした約束を果たすために。
悲しくも優しい結末、母は二人の娘に見守られて逝く―
なまえをよんで、絆は確かに受け継がれた。